説明

手術室の換気装置およびその方法

温度制御空気層流を用いた手術室の換気方法が提供される。下向き層流の速度は、供給空気と手術台のレベルでの室内空気の間の空気温度差によって決定される。手術台のレベルの室内空気温度が測定され、この測定に関連して清浄供給空気温度が制御される。一定の下向き清浄空気層流速度を維持するため、手術台のレベルでの室内空気温度と供給空気のより低い温度との間で温度差を一定に維持する。手術台作業場領域を取り巻く清浄空気ゾーンを形成する均一かつ安定な下向き空気層流を作り出す換気装置も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、外科手術室の手術台作業場領域に清浄空気のゾーンを提供するための装置および方法に関し、特に、温度制御された空気層流 (laminar air flow)を利用する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術部位感染(SSI)は、院内感染の2番目に多い原因である。外科手術の1.5%から20%は、外科手術のタイプおよび創傷分類に依存して、手術部位感染(SSI)をもたらす。
【0003】
SSIを発症している患者は、著しく衰弱し、リスクが増大している。SSI患者は、SSIに罹患していない患者と比較して、病院への再入院の可能性が5倍高く、かつ、死亡するリスクが2倍高い。
【0004】
SSIに対する社会的コストは相当なものである。ヨーロッパの研究は、感染患者の滞在の平均延長日数が9.8日であることを示した。SSI患者1人あたりのコストは、病院コストだけの中での直接コストとして、1,862ユーロから4,047ユーロの間である。年間30ミリオンの外科手術から、得られたSSIの数は0.45から6ミリオンになり、ヨーロッパでの総SSIコストは1.47から19.1ビリオンユーロ/年の間のあたりになる。USA発の研究は、感染患者の滞在の平均延長日数が7から10日の間のあたりの同様の数字を示した。SSI患者1人あたりのコストは、間接コストを含めて8,200ドルから42,000ドルの間である。年間約0.5ミリオンSSIの症例で、USAの総SSIコストは1ドルから10ビリオンドル/年の範囲である。
【0005】
手術部位感染(SSI)の発症に対する主因は、一般に、手術室内空気の細菌汚染であると考えられ、直接的に患者の創傷を汚染するか、または、間接的に、滅菌手術器具を汚染する。
【0006】
また、一般に、手術室内空気の細菌汚染の起源は、ほとんどが外科チーム員から脱離した皮膚片であると認識されている。
【0007】
手術前措置がSSIのリスクを低減するのに有効であることが証明され、予防的抗菌薬投与、患者の準備、外科チーム員の手/前腕の消毒、および感染または保菌手術要員の管理 (management of infected or colonized surgical personnel)が含まれる。手術後切開ケアおよび手術後監視もSSIのリスク低減に有効であることが証明された。
【0008】
SSI防止のための他の有望な施策は、手術室内での手術中の活動に着目する。周囲の表面の清浄および除染、微生物のサンプリング、手術器具、手術着および手術用ドレープの滅菌、ならびに、無菌および手術技術の向上が全て報告されている。特に興味深いことは、手術室の清浄空気の換気の向上がSSIのリスクを低減すると示されたことである。Charnleyらは、垂直空気層流システムおよび排気服がSSIに至るリスクを9%から1%にまで低減できることを報告する。Lidwellらは、空気層流システムの効果と、8,000もの 人工股関節および膝関節置換術 (total hip and knee replacements)の研究における予防的抗菌薬投与とを比較して、単純に空気層流システムの使用により、SSI率は3.4%から1.6%に低減すると見積もった。今や、一般に、手術室内の垂直空気層流(LAF)システムは、手術領域内の細菌保持粒子数を低減するために最も有効なテクニックを提供すると理解されている。
【0009】
しかしながら、垂直空気層流システムには、いくつかの問題点がまだ残っている。細菌保持粒子(皮膚フレーク)の主たる源はその手術室内の要員である。肉体的に最も活動する手術要員が空気層流の実際の境界内で作業する。
【0010】
手術要員/人体から脱離した皮膚片が患者の露出した創傷に達することを妨げなければならない。これを達成するために、降り注ぐ空気層流は、手術要員の温かい人体から発生し、感染した可能性のある皮膚フレークを運ぶ軽く/温かい空気対流を断絶し、即座に下に持って行かなければならない。これらの粒子は、ついで、床レベルで退去させられる。
【0011】
人体対流を断絶するのに有効とするために、下向き空気層流の速度は患者の開放創のレベルで測定して少なくとも約0.25m/秒である必要がある。この下向き速度は、全手術を通して一定に維持される必要がある。約0.25m/秒を上まわる速い速度は、すきま風や手術要員の脱水症状といったありがちな問題を生じ、さらに、空気乱流を引き起こして、層流システムの利点を毀損する。
【0012】
限定された断面の自由に流れる垂直空気層流の速度は、空気流と周囲の静止している空気の固まりとの間の温度差に依存して、強められるか抑えられる。冷い空気は暖かい空気よりも高い密度を有し、その逆も同じである。自由に流れる垂直空気層流は、周囲の空気の固まりよりも相対的に冷たく、密度(温度)におけるこの差が維持される限り、降り注ぎ/落ちる。等しいかまたは低い温度の空気の固まりを抜けて流れる(落ちる)下向き(垂直)空気層流を確立するために、間の距離が比較的詰まった空気供給および排気の装置を整列させるセットアップが要求される。手術室において、これは高価であり、空間を必要とし、手術手順や手術要員を制限することになる。
【0013】
より進んだLAFシステムは、空気供給温度を設定温度に一定に保持することによって冷却し、制御し、それは、手術要員の要請や手術手順のタイプに応じて調節できる。しかしながら、これらのシステムは、天井搭載型LAF送気装置の下で働く手術要員のために温度制御することを意図している。それらは、手術室内の温度の変化に応じて空気供給温度を調節しない。実際に実施する上で、室温変動が、手術要員、手術用照明、他の電気機器、周囲表面およびいくつかの場合には日光からの熱を含む熱負荷の変化により、起こり得る。さらに、これらの先行技術のLAF装置は、下向き空気速度を制御するためのドライビングフォースとして強制吹き出しを利用する。この強制吹き出しは、通常、手術台にて所望する速度の少なくとも2倍の高い初期空気速度を必要とする。これは、今度、例えば、換気装置と作業場領域との間に存在する手術用照明その他の器具から生じるかく乱効果、例えば、乱流をもたらす。この乱流は、汚染された周囲空気の清浄空気流への混ざり込みに関連する。高い空気速度は、作業場領域の外部に強力な二次空気流も作りだし、それら空気流は保菌粒子その他の粒子を懸濁させ続け、作業場領域の汚染リスクを増大させる。高い空気速度は、また、人々をすきま風 (draughts)や高い騒音レベルにさらす。さらに、室温変動は、手術中および間の実際の下向き速度の変動をもたらすであろう。
【0014】
強制吹き出しシステムに関連する問題は、温度制御空気層流の使用によって回避できる。温度制御空気層流(TLA)の原理は、層流が、手術台のレベルで空気供給と周囲の空気との間で気温差によって発生されることである。周囲の空気よりも高い密度を有する、ろ過されたより冷たい空気の層流はゆっくりと降り注ぎ、手術台作業場領域を包み込む。
空気供給流は、実質的に層であり、周囲空気との混ざり込みは最小限化されるので、気温差は降下の経路を通して維持される。最小限の刺激が空気供給流に与えられるのみであり、出口ノズルでの抵抗に打ち勝つのに十分である。
【0015】
ここに、改良された空気供給装置ならびに温度制御空気層流換気の方法を記載し、手術領域を包み込み、手術領域の外部では等しく制御された環境が手術室全体を覆う、強制温度および速度制御空気流を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明のいくつかの具体例は、温度制御空気層流を用いた手術室の換気方法を提供する。
下向きの清浄空気層流の速度は、空気供給と手術台のレベルでの室内空気温度との空気温度差によって決定される。手術台のレベルでの室内空気温度が測定され、この測定に関連して清浄空気供給温度が制御される。一定の下向き清浄空気層流速度を維持するため、一定の温度差が、手術台のレベルでの室内空気温度とそれより低い空気供給温度との間で維持される。好ましい具体例において、この一定温度差は少なくとも0.25m/秒の下向き空気層流速度を提供し、ある部分、加熱または冷却空気を清浄空気ゾーン外部に供給する空気供給ユニットの使用により周囲空気温度の変動を最小限化することによって維持される。また、手術台作業領域を取り囲む清浄空気ゾーンを形成する均一かつ下向きの空気層流を作り出す換気装置も提供される。好ましい具体例は、閉鎖パターン、例えば、円形に配列された多数の空気供給ユニットならびに、それら空気供給ユニット間に配置された空気止めおよびガイドユニットを含み、広く広がる、均一かつ安定、下向きで、合成された空気層流を作り出す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の換気装置およびそれによって発生する空気流の概略側面図。
【図2】空気供給ユニットならびにそれら空気供給ユニット間に配置された空気止めおよびガイドユニットが付随する、図1の換気装置用のコンテナーの若干拡大した側面図。
【図3】空気供給ユニットならびに空気止めおよびガイドユニットが付随する図2のコンテナーの平面図。
【図4】図2の部分の拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい具体例の詳細な説明
いくつかの具体例において、本発明は、手術室の換気方法であって、
手術台作業場領域の上方に配置された空気供給装置を通して精製された気流を、供給空気と手術台のレベルでの周囲空気との間の空気温度の差によって決定される速度を持つ実質的に層状の下降空気流として、放出し、ここに、供給空気と手術台のレベルでの周囲空気との間の空気温度における一定差が、周囲空気温度の変動を最小限化するために、ある部分、加熱または冷却供給空気を手術領域の外部に供給する空気供給ユニットの使用により維持されることを含む、換気方法を提供する。
【0019】
図1は、本発明の方法の実施に適した換気装置のひとつの好ましい具体例を示す。図1に示される装置は、清浄空気のゾーン1を換気装置と作業場領域、ここでは、手術室の手術領域2との間に作り出すことを意図する。換気装置は、従来型でよく、前記清浄空気ゾーン1を構成することが意図された空気層流を発生するように適合した空気供給ユニット3を含む。
【0020】
大きく広がって、そのなかで、要員が作業のために自由に動き回れる大きな領域を与える全空気流を達成することが有利である。いくつかの好ましい具体例において、本発明の換気装置は、3つの空気供給ユニットからなる閉鎖三辺パターンに配置された少なくとも3つの空気供給ユニット3を含む。その結果、清浄空気ゾーン1は、空気供給ユニット3の下に、断面において実質的に空気供給ユニットの前記閉鎖パターンによって形作られる表面およびそのパターン内の表面に対応する広がり、すなわち、実質的に図1で示される広がりを有する。
【0021】
清浄空気ゾーン1を取り巻き、保菌粒子その他の汚染物質の粒子を含有する空気が、互いに隣接する空気供給ユニット3の空気流によって清浄空気ゾーン内に発生する陰圧およびその結果の吸引力によって、空気供給ユニットの間および清浄空気ゾーン内に引き込まれることを防止するか減じるために、いくつかの好ましい具体例は、さらに、対応する数、すなわち、少なくとも3つの空気止めおよびガイドユニット4を含み、それらは、互いに隣接する空気供給ユニットの対の各々の間に配置される。
【0022】
上記のように三辺形または円形であることに加えて、空気供給ユニット3の閉鎖パターンは、例えば、楕円、四角、長方形であってもよく、5、6またはそれ以上の辺、異なる形状の組合せを有していてもよい。そのような場合、空気止めおよびガイドユニット4は、互いに隣接する空気供給ユニット3の間で形作られる空間内に対応するパターンで適宜配置される。各空気止めおよびガイド4は、また、有利には、2つの互いに隣接する空気供給ユニット3の間の全空間を充填する。
【0023】
空気供給ユニット3の個数ならびにそれらの間に配置された空気止めおよびガイドユニット4の個数は、それぞれ、好ましくは3から15の間であり、換気装置でまかなわれるべき領域の所望の広がりに依存する。図面に図示される好ましい形態において、空気供給ユニット3ならびに空気止めおよびガイドユニット4の個数は、それぞれ、8である。
【0024】
図示される形態において、空気供給ユニット3ならびにそれらの間に配置された空気止めおよびガイドユニット4は、コンテナー5に搭載される。コンテナー5は、作業場領域が存在する部屋の天井、すなわち、ここでは、手術台8を規定するかまたは構成する手術領域2が存在する手術室7の天井6に、恒久的に取り付けられる。
【0025】
コンテナー5は、有利には、部屋7からおよび/または部屋外部の少なくとも一つの場所から空気を取り入れるために、少なくとも一つの空気吸入口を含むか、または、空気ダクト9を介してそれに連結される。かくして、例えば、部屋の床11またはその付近の空気吸出口10を通って部屋7から引き出される空気のいくらかを、換気装置内の空気供給ユニット3に戻すことができる。空気は、部屋7の天井6またはその付近の空気吸入口(図示せず)から運ばれてもよい。
【0026】
コンテナー5は、有利には、空気を供給し、空気供給ユニット3を通してそれを流すファン装置(図示せず)を含むか、または、好ましくは、同じ空気ダクト9に同様に連結される。
【0027】
相応して、コンテナー5は、清浄空気ゾーン1に洗浄空気を発生するための空気処理装置を含むか、または、好ましくは、同一の空気ダクト9に連結される。この空気処理装置は、簡便な形態において、空気供給ユニット3への空気を濾過するためのフィルター装置(図示せず)を少なくとも一つ含み、空気を清浄にし、清浄空気ゾーン1を構成することができるようにし、また、前記フィルター装置からの空気を部屋7の温度よりも低い温度にまで冷却する装置(図示せず)も含み、清浄空気ゾーンを構成することが意図された清浄空気を、清浄空気ゾーンを取り巻く空気の温度よりも、例えば1〜2℃低い温度にして、清浄空気ゾーンの清浄空気が作業場領域、ここでは、手術領域2に向かって下向きにゆっくりと沈んでいくようにする。より高い密度のより冷たい空気をこのように利用して、下向き速度を制御する。いくつかの具体例において、低い速度、すなわち、周囲と供給空気との間の空気温度の差を小さく、例えば、0.3およびTCの間、または0.5とおよびTCの間に維持することが有利である。ろ過された空気は、典型的に、空気供給ノズルおよび装置の残余における抵抗を克服するに十分なだけの動圧で空気供給ユニットから強制的に出される。この初期速度は、即座に周囲空気の静圧によって妨害されて、供給ユニットから数センチ離れた連続下向き降下の供給空気が空気温度差によって決定される。空気温度差は、清浄空気ゾーンを維持するために作業場領域にて要求される速度を提供するのに十分であることのみが必要である。供給空気流は実質的に層であって、周囲空気との混ざり込みが回避されている場合、空気温度差は降下の経路を通して維持される。
これによって、作業場領域外部の撹乱効果、乱流および二次空気流の発生がより少なくなり、作業場領域の汚染のリスクが少なくなる。低い空気速度は、高い効率の遅い空気流を生じ、人にとっては、すきま風のない静かな作業環境が得られる。
【0028】
部屋7の取巻き空気に対して清浄空気ゾーン1内の空気の好ましく定常的に低い温度レベルは、有利には、調節装置(図示せず)によって維持される。その調節装置は、換気装置の一部を形成し、それゆえ、清浄空気ゾーン内の清浄空気の温度を調節して清浄空気ゾーン内の清浄空気の速度を調節する。この目的のため、調節された装置は適当な型の空気温度センサーによって制御される。好ましい具体例において、一つのセンサーを、手術室の清浄空気ゾーンように供給清浄空気(8)内に配置し、第2および可能性として第3のセンサーを清浄空気流の外部で手術台(19)のレベルで室温を測定するために配置する。手術台のレベルで室温を測定するために2つのセンサーを含ませると、平均値の計算につき、エラーの危険性が減少する。それは、センサー間の差が高すぎるときにアラームを発することもできる。センサーは、好ましくは、離して、すなわち、手術台の各側の対向する壁に取り付ける。
【0029】
空気供給ユニット3ならびにそれらの間に配置された空気止めおよびガイドユニット4は、コンテナーの形状が空気供給ユニットならびに空気止めおよびガイドユニットが形成する閉鎖パターンと異なるならば、好ましくは、コンテナー5の外周縁またはその近くに取り付けられる。
【0030】
図1に図示されるように、1以上のランプ12が付随し、アーム13で懸架された照明装置がコンテナー5の近くに存在してもよい。
【0031】
図示された好ましい形態において、コンテナー5は、空気供給ユニット3ならびにそれらの間に配置された空気止めおよびガイドユニット4がコンテナーの下側に取り付けられたコンテナー14の形態をとる。コンテナー14は、ここでは、直径が約1から4mの円形である。空気供給ユニット3ならびに空気止めおよびガイドユニット4の閉鎖円形パターンは、コンテナー14の外周縁に沿って近くに延在する。
【0032】
換気装置の各空気供給ユニット3は、例えば、出典明示して、その全体が本明細書に含まれるとみなされるPCT/SE2004/001182に記載された型のものでよい。かくして、各空気供給ユニット3は、側面から見て、好ましくは、少なくとも部分的に半球状または実質的に半球状のものであってよく、各空気供給ユニットからの明確に限定された広がりを持つ明確な清浄空気ゾーンを生じる。各空気供給ユニット3は、好ましくは、実質的な円形断面も呈する。各空気供給ユニット3は、空気層流を発生するように適合された、発泡プラスチックもしくは同様の多孔質物質または布の本体15を有し、それによって、清浄空気ゾーン1を取り巻く空気が清浄空気ゾーンに侵入することを最小限にする。本体15は、内側エレメントおよび外側エレメントを含んでいてもよく、内側エレメントは外側エレメントよりも大きな圧力降下を空気の流れにもたらす。内側エレメントは発泡プラスチックもしくは同様の多孔質物質または布であってよく、外側エレメントは、例えば、チューブ状の通過流ダクト (throughflow duct)の形態をとる。これらの通過流ダクトの長さは、有利には、それらの幅の4〜10倍であって、少なくとも清浄空気流ゾーン1の外部における乱流を可能な限り最小限にすることを保証する。それにもかかわらず、所望する適当な機能を有する別の適当な型の空気供給ユニットを本発明の換気装置に用いることができる。
【0033】
各空気止めおよびガイドユニット4の形態は、所望の機能に対して適切であろう。図示する形態において、各空気止めおよびガイドユニット4は、したがって、少なくとも一つの空気止め面16を含み、それは、清浄空気ゾーン1から離れた方に面し、隣接する空気供給ユニット3の間および清浄空気ゾーン内に、清浄空気ゾーンを取り巻く空気が引き込まれるのを防止または減じる。各空気止めおよびガイドユニット4は、少なくとも2つの第1空気ガイド面17も含み、それらは、隣接する空気供給ユニット3の間の空気止め面16から延在し、お互いに向かって集まり、さらに、隣接する空気供給ユニット3からお互いに向かう各空気流の部分をお互いから離し、かつ、清浄空気ゾーン1の中心から外へと導く。各空気止めおよびガイドユニット4は、少なくとも2つの第2空気ガイド面18も含み、それらは、清浄空気ゾーン1の中心に向かって内側、かつ、第1空気ガイド面17に面し、お互いに向かって集まり、さらに、隣接する空気供給ユニット3からお互いに向かう各空気流の部分をお互いから離し、かつ、清浄空気ゾーンの中心に向かって内側へと導く。この好ましい形態の空気止めおよびガイドユニット4は、空気供給ゾーン3の間で出会う空気流の間での乱流の可能性を最小にすることを達成し、保菌粒子その他の汚染物質の粒子が清浄空気ゾーン1内に引き込まれるのを防止する。
【0034】
図示される好ましい形態の各空気供給ユニット3は実質的に形状が円形なので、各空気止めおよびガイドユニット4、特にそれらの第1空気ガイド面17は、隣接する空気供給ユニットの周縁に沿って少なくとも約90゜にわたって延在する。
【0035】
空気止めおよびガイドユニット4上の空気止め面16は、有利には、少なくともその面および空気供給ユニット3を通る断面において、清浄空気ゾーン1から見て、空気供給ユニットの最外側部分を結ぶ線の外形と一致する外形を有する。図3に示すように、円形に配置された空気供給ユニット3で図示された好ましい形態において、空気止め面16は、したがって、断面において、空気供給ユニットの半径方向で最外側部分を通る環状線の曲率と一致する曲率を有する。空気止め面16は、好ましくは、各空気止めおよびガイドユニット4が間に設置されている互いに隣接する二つの空気供給ユニット3の一方の最外側部分の近くから前記二つの空気供給ユニットの他方の最外側部分の近くまで延在するような長さのものでもある。これは、互いに隣接する空気供給ユニット3の対の各々の間の空間の最適充填に寄与する。
【0036】
図3に示されるように、円形に配置された空気供給ユニット3で図示された好ましい形態において、各空気止めおよびガイドユニット4上の第1空気ガイド面17は、断面で見て、好ましくは、隣接する空気供給ユニット3の断面形状に対応するようにお互いに向かって集まる。すなわち、それらの面はお互いに向かい、かつ、清浄空気ゾーン1の中心に向かって内側に延在し、したがって、隣接する空気供給ユニットと同一の外形を有しているので、第1空気ガイド面と空気供給ユニットとの間の距離は一定である。
第1空気ガイド面17も、縦断面で見て、互いに向かって集まる。すなわち、それらの面はお互いに向かい、かつ、清浄空気ゾーン1内の作業場領域2に向かって下向きに延在する(図2および4を参照)。
【0037】
最後に、第2空気ガイド面18は、上記のように、第1空気ガイド面17に向かい、清浄空気ゾーン1の中心から外向き、かつ、清浄空気ゾーン内の作業場領域に向かって下向きに延在する(図2〜4を参照)。それらは、また、互いに向かい、かつ、作業場領域に向かって下向きに延在する(図2および4を参照)。
【0038】
清浄空気ゾーンの外部、作業場領域2の保菌粒子その他の汚染物質の粒子のレベルを制御し、そのような粒子を懸濁させ続ける二次空気流の「渦流」のいかなる発生をも防止するかまたは減じる目的のためにも、清浄空気ゾーンの外部でも制御されて空気が供給されれば、それが有利である。この目的のため、本発明によれば、好ましくは上記の型のさらなる空気供給ユニット3を少なくとも一つ、部屋7内に配置して、部屋に空気を供給する。この空気は、有利には、清浄空気ゾーン1内の空気の温度を超える温度を維持し、それによって、特に、清浄空気ゾーン1によって引き起こされる冷却効果を埋め合わせる。図示される好ましい形態において、部屋7内であって(コンテナー5の上に)、最初に言及した空気供給ユニット3ならびに空気止めおよびガイドユニット4の全周囲に、複数のさらなる空気供給ユニット3を配置して、部屋の清浄空気ゾーン周囲に清浄空気ゾーン1内の空気よりも若干暖かい空気を供給する。前記さらなる空気供給ユニット3は、少なくとも、上記したように、ファンおよびフィルター装置をそれ自体有するか、またはそれらに適当に結合される。
【0039】
したがって、手術室の温度制御空気層流換気の方法も提供される。手術台のレベルでの室内空気温度はセンサー19によって測定され、この測定に関連して供給空気温度が制御され、それによって、所望のレベルで対応する下向き空気層流を制御する。一定の下向き清浄空気層流速度を維持するため、一定の温度差が、手術台のレベルでの室内空気温度とそれより低い空気供給温度との間で維持される。好ましい具体例において、この一定温度差が少なくとも0.25m/秒の下向き空気流速度を与え、加熱または冷却空気を手術領域の外部に供給する空気供給ユニットによって維持される。ここで用いるとき、温度に付される用語「一定」は+/−0.5℃以内のレベルをいう。温度差に付される用語「一定」は+/−0.5℃以内に維持されるレベルをいう。室温に付される用語「一定」は1℃以内に維持されるレベルをいう。空気流速度に付される用語「一定」は+/−40%以内に維持されるレベルをいう。好ましい具体例において、さらなる清浄空気供給装置は、制御して、加温したまたは冷却した空気を導入することによって一定室温に維持する。例えば、PCT/SE2004/001182に記載された空気供給装置を用いて、60%の供給空気(周囲室内温度よりも低い固定された空気温度で供給空気を提供して、正確な下向き速度を保証する)を、本発明の換気装置を用いて供給できる。さらに40%の供給空気は、高い温度にて供給空気を提供して要求される室内温度を維持する外部空気供給装置によって供給できる。室内温度は、温度差、そして、手術のポイントでの下向き速度に影響することなく、手術要員または手術手順によって要求されるいずれかのレベルに調整できる。
【0040】
本発明の換気装置は調節装置(図示せず)を含み、それは、清浄空気ゾーン1を取り巻くように部屋7に供給された空気の温度を調節し、および/または、清浄空気ゾーン1を取り巻くように部屋7に供給された空気の速度を調節する。それによって、部屋7の全体の温度が調節できる。調節装置は、部屋7の内部かつ清浄空気ゾーン1の外部に設置した温度センサー(図示せず)によって制御される。
【0041】
本発明の換気装置は、本発明の概念および目的から逸脱することなく特許請求の範囲に記載の範疇で修正および変形し得ることは、当業者にとって明白である。かくして、例えば、ファン、フィルターおよび冷却装置を、目的に対して適当ないかなるやり方でも構成し配置することができ、また、調節装置も同様である。空気供給ユニットならびに空気止めおよびガイドユニットの個数、型および形状は、上記したものを越えて変えることができ、お互いに対してどのように配置するか、換気装置用のコンテナー上にどのように配置するかについても同様である。コンテナーの形状は、上記したものを越えて変えることができ、すでに示したように、空気供給ユニットならびに空気止めおよびガイドユニットによって構成される閉鎖パターンと同じでもよいし同じでなくてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術室の換気方法であって、
手術台作業場領域の上方に配置された空気供給装置を通して精製された気流を、供給空気と手術台のレベルでの周囲空気との間の空気温度の差によって決定される速度を持つ実質的に層状の下降空気流として、放出し、ここに、供給空気と手術台のレベルでの周囲空気との間の空気温度における一定差が、周囲空気温度の変動を最小限化するために、ある部分、加熱または冷却供給空気を手術領域の外部に供給する空気供給ユニットの使用により維持されることを含む、換気方法。
【請求項2】
手術室の換気方法であって、
手術台のレベルでの室内空気温度と手術台の上に供給される低い温度の清浄空気との間の一定温度差を維持することによって、手術台作業場領域上に一定の下向き空気層流速度を提供し、ついで、
手術台作業場領域を取り巻く清浄空気ゾーンの外部に加熱または冷却空気を提供する空気供給ユニットの使用によって、手術台のレベルで一定の室内空気温度に維持することを含む、換気方法。
【請求項3】
下向き空気流速度が0.25m/秒以上で一定に維持される、請求項1または2の方法。
【請求項4】
清浄供給空気と手術台のレベルでの室内空気温度との空気温度差が約1から2℃の範囲に維持される、請求項1または2の方法。
【請求項5】
清浄供給空気と手術台のレベルでの室内空気温度との空気温度差が約0.3から1℃の範囲に維持される、請求項1または2の方法。
【請求項6】
清浄供給空気と手術台のレベルでの室内空気温度との空気温度差が約0.5から2℃の範囲に維持される、請求項1または2の方法。
【請求項7】
部屋(7)内で、当該換気装置と前記部屋内の作業場領域(2)との間に清浄空気ゾーン(1)を提供し、清浄空気ゾーンを構成するように意図された空気層流を発生するように適合した空気供給ユニット(3)を含む換気装置であって、ここに、
空気供給ユニット下の清浄空気ゾーン(1)の断面における広がりが実質的に空気清浄ユニットの当該閉鎖パターンによって形作られる表面およびそのパターン内の表面に対応するように、閉鎖パターンで配置された、少なくとも3つの空気供給ユニット(3);ならびに
互いに隣接する空気供給ユニット(3)の対の各々の間に、それらの空間を実質的に充填するように配置された対応する個数の空気止めおよびガイドユニット(4)であって、各々が、
清浄空気ゾーン(1)から離れた外方に面し、隣接する空気供給ユニット(3)の間および清浄空気ゾーン内に、清浄空気ゾーンを取り巻く空気が引き込まれるのを防止または減じる、少なくとも一つの空気止め面(16)、
隣接する空気供給ユニット(3)の間の空気止め面(16)から延在し、お互いに向かって集まり、さらに、互いに向かう隣接する空気供給ユニット(3)からの空気流の部分をお互いから離し、かつ、清浄空気ゾーン(1)の中心から外へと導く、少なくとも2つの第1空気ガイド面(17)、および
清浄空気ゾーン(1)の中心に向かって内側に面し、第1空気ガイド面(17)およびお互いに向かって集まり、さらに、互いに向かう隣接する空気供給ユニット(3)からの空気流の他の部分をお互いから離し、かつ、清浄空気ゾーンの中心に向かって内側へと導く、少なくとも2つの第2空気ガイド面(18)を含む、空気止めおよびガイドユニット(4)
を含むことを特徴とする換気装置を用いて実施する、請求項1または2の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−507321(P2012−507321A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533848(P2011−533848)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007286
【国際公開番号】WO2010/049803
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(508160211)エアソネット アーベー (5)
【Fターム(参考)】