手袋、及び殺菌方法
【課題】衛生管理が必要な作業において用いられて、手に装着したまま紫外線で殺菌しつつ使用する手袋と、同手袋に対する殺菌方法とを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂20に紫外線遮蔽成分を配合して樹脂シート11’、12’を作成し、樹脂シート11’、12’を手袋の外郭線にそって打ち抜き、あるいは熱溶断して、手袋1の開口部に当たる部分以外の外郭線13で熱溶着して手袋1を作成する。熱可塑性樹脂としてはポリエチレンなどを、紫外線遮蔽成分としては酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄のうち少なくとも一つを用いるとし、紫外線遮蔽成分の配合比率は0.1重量%から50重量%の範囲内とする。手袋1を手に装着したままの状態で240nmから280nmの範囲に属する紫外線を手袋1の表面に照射することによって、手袋1を殺菌する。
【解決手段】熱可塑性樹脂20に紫外線遮蔽成分を配合して樹脂シート11’、12’を作成し、樹脂シート11’、12’を手袋の外郭線にそって打ち抜き、あるいは熱溶断して、手袋1の開口部に当たる部分以外の外郭線13で熱溶着して手袋1を作成する。熱可塑性樹脂としてはポリエチレンなどを、紫外線遮蔽成分としては酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄のうち少なくとも一つを用いるとし、紫外線遮蔽成分の配合比率は0.1重量%から50重量%の範囲内とする。手袋1を手に装着したままの状態で240nmから280nmの範囲に属する紫外線を手袋1の表面に照射することによって、手袋1を殺菌する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋、及び殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、食品産業や医療等の現場では厳しい衛生管理が求められる。そのなかで特に注意深い衛生管理が必要とされ、対策の構築が強く求められる対象がノロウィルスである。今日においてノロウィルスによる食中毒の患者数は全食中毒患者数のほぼ半数を占めている。さらに、1990年代から確認され始めたノロウィルスによる食中毒の患者数は、他の病原菌による食中毒の患者数が減少する傾向があるにも関わらず、横ばい又は増加の傾向がみられる。
【0003】
今日得られている知見によればノロウィルスに対する対策が難しい点は、ノロウィルスの大きさが他の菌等と比べても極めて微小であることや、ごく少量で感染することのほかに、従来の逆性石鹸やアルコール系などの消毒液による消毒が効果がないことがあげられる。したがって手洗いだけでない、より効果的な殺菌システムの構築が必要である。
【0004】
例えば下記非特許文献1では、新たに開発された手指熱風消毒器の性能が検証されている。同装置は医療従事者などの手指に手洗い後に熱風を吹き付けると同時に紫外線も照射することにより、手指の乾燥と殺菌とを同時におこなうことを目的とした装置である。同文献では、この装置によって十分な殺菌効果が得られるとともに、紫外線の照射が手指にも被害を与えないと論じられている。
【0005】
上記方法は素手の殺菌を想定したものだが、手袋を用いたシステムも提案されている。例えば下記特許文献1には、医療現場などで用いられることを想定した手袋脱却装置が開示されている。同文献では使用済み手袋を自らの手を使うことなく、簡単に衛生的に取り外すことができるので、衛生管理を容易にする効果があると主張されている。
【0006】
【非特許文献1】末柄、安井、山口、斧:手指熱風消毒器の消毒・殺菌効果、“病院設備”、44巻、2号、279−281頁(2002年3月)
【特許文献1】特開2005−160628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1の殺菌方法の場合、紫外線による殺菌なのでノロウィルスなどにも効果的な可能性がある。しかし非特許文献1に示された装置を用いる場合、素手に対する紫外線の照射が人体に悪影響を与える可能性がある。確かに同文献には、ACGIH(米国労働衛生専門会議)による労働環境での許容照度の範囲内であることと主張されているが、従来より紫外線の人体への照射は皮膚がんや免疫機能の低下などの問題を引き起こす可能性があると指摘されている。したがって安全性を重要視する立場に立つならば、紫外線の照射による殺菌を行う場合には素手に対する紫外線照射は避けるべきであろうと考えられる。
【0008】
一方特許文献1の技術は使い捨て手袋の使用を前提としたシステムである。使い捨て手袋を用いる場合には汚れたら廃棄すればよいので殺菌方法の構築を考える必要はないが、使い捨て手袋には次のような問題がある。まず使い捨て手袋は衛生度を向上させるために頻繁に取り替えると大量に廃棄されることとなる。したがって資源の有効利用が求められる今日の状況においては望ましくない側面がある。逆に使い捨て手袋をある程度使用してから廃棄する場合には、使用している途中に汚れが進行して衛生的でなくなる可能性がある。
【0009】
したがって上記文献の問題点を克服する方法として例えば、手袋を使い捨てにせずに、汚れたと判断されたごとに紫外線で殺菌しつつ使用することが考えられる。その場合手に装着したまま殺菌できれば利便性が高いが、手を紫外線から守るために手袋によって紫外線を十分遮蔽する必要がある。従来文献ではこうした点全てを考慮して構築された殺菌技術の提案はない。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、衛生管理が必要な作業において用いられて、手に装着したまま紫外線で殺菌しつつ使用する手袋、及びその手袋の殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る手袋は、衛生管理が要求される作業において使用され、240nmから280nmまでの範囲に属する波長を含む紫外線の照射による殺菌を手に装着したまま行う手袋であって、液体を透過させず、柔軟性を有し、熱可塑性樹脂又はゴムから作成され、前記熱可塑性樹脂又はゴムには、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を遮蔽するための紫外線遮蔽物質が含まれ、前記紫外線遮蔽物質は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄のうちの少なくとも一つであることを特徴とする。
【0012】
これにより本発明に係る手袋では、手袋を手に装着したままの状態で240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射して殺菌するので、手袋を脱ぐ手間を省いて、かつ殺菌効果の高い240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射して効率的な殺菌が行える。手袋を脱がなくてもよいので、脱いで殺菌した後に再び装着する際に手袋の衛生状態が悪くなることも回避できる。また本発明の手袋は使い捨て手袋ではないので、資源の有効利用の効果も奏する。また手袋は熱可塑性樹脂又はゴムから作成されて、液体を透過させず、柔軟性を有するので各種作業に好適であり、手袋には240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を遮蔽するための紫外線遮蔽物質が含まれているので、紫外線の照射による殺菌を行っている間に、紫外線が手袋を透過して手の皮膚に照射されて、皮膚に悪影響を与えることが回避できる。また紫外線遮蔽物質は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄のうちの少なくとも一つなので、容易に入手可能な材料によって紫外線遮蔽を達成できる。
【0013】
また前記紫外線遮蔽物質は前記熱可塑性樹脂又はゴムに0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合され、前記紫外線遮蔽物質は、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を90%以上遮蔽するとすればよい。
【0014】
これにより紫外線遮蔽物質は、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を90%以上遮蔽するので十分な遮蔽効果が得られる。また紫外線遮蔽物質は熱可塑性樹脂又はゴムに0.1重量%以上の割合で配合するので紫外線を効果的に遮蔽でき、紫外線遮蔽物質を50重量%以下の割合で配合するので、手袋は十分な柔軟性を有して各種作業に適する手袋となる。
【0015】
また前記手袋は、前記紫外線遮蔽物質が0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合された前記熱可塑性樹脂又はゴムの2枚の薄膜を重ねて、手袋外郭線で熱溶断するともに熱溶着成形されて作成されたとすればよい。
【0016】
これにより、紫外線遮蔽物質が0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合された前記熱可塑性樹脂又はゴムの2枚の薄膜を手袋外郭線で熱溶断するともに熱溶着成形するので、簡易な方法で紫外線遮蔽性能を有する手袋が作成できる。
【0017】
また上記の手袋と、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射する紫外線照射装置とにより、前記手袋が手に装着されたままの状態で前記紫外線照射装置によって240nmから280nmまでの範囲に属する波長を含む紫外線を照射して前記手袋を殺菌する殺菌方法を用いるとすればよい。
【0018】
これにより本発明に係る殺菌方法では、手袋を手に装着したままの状態で240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射して殺菌するので、手袋を脱ぐ手間を省いて、かつ殺菌効果の高い240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射して効率的な殺菌が行える。手袋を脱がなくてもよいので、脱いで殺菌した後に再び装着する際に手袋の衛生状態が悪くなることも回避できる。また本発明の手袋は使い捨て手袋ではないので、資源の有効利用の効果も奏する。また手袋には240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を90%以上遮蔽するための紫外線遮蔽物質が含まれているので、紫外線の照射による殺菌を行っている間に、紫外線が手袋を透過して手の皮膚に照射されて、皮膚に悪影響を与えることが回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る手袋の一実施例である。手袋1は、樹脂シートあるいは樹脂フィルムから作成された手のひら部11と、手の甲部12とが手袋の外郭線13の部分(ただし手を挿入する開口部15以外)で一体化されて形成されている。
【0020】
手袋1の作成方法が図2に示されている。まず、2枚の樹脂シート11’、12’が重ねられた状態で、手の外郭線に沿って2枚揃って切断する。その方法は、例えば打抜刃によって打ち抜く、あるいは熱溶断刃によって熱溶断すればよい。これによって上記手のひら部11、手の甲部12が作成される。そして手のひら部11、手の甲部12において、手袋の外郭線(ただし手を挿入する開口部15以外)を例えば溶着(熱溶着)することによって手袋1は作成されるとすればよい。その際に熱切断と熱溶着とは略同時に行うとしてもよい。図1では外郭線13が可視の部分は実線で、不可視の部分は点線で示されている。
【0021】
手袋1あるいは樹脂シート11’、12’は、例えばポリエチレンなどの熱可塑性樹脂20で作成されているとすればよい。これにより手袋1は液体を透過させないので、調理現場や医療現場などでの使用に適することとなる。なお手袋1の製法は上記製法に限定されない。例えば、手袋1の外郭線13にそって熱溶断した後に切断刃などで外縁にそって切断してもよい。また上記のように手のひら部と手の甲部とに分けて形成せずに、プラスティック成形によって手のひら部と手の甲部とを一体に成形してもよい。なお熱可塑性樹脂ではなく例えばゴムでもよい。
【0022】
後述するように手袋1の表面を殺菌するために、手袋1を手に装着したまま紫外線を照射する。その際に手袋1内の手まで紫外線が達すると、皮膚がん等の悪影響が懸念される。したがって、手袋1あるいは樹脂シート11’、12’には熱可塑性樹脂20とともに紫外線を遮蔽するための紫外線遮蔽成分21(紫外線遮蔽物質)が含まれているとすればよい。
【0023】
紫外線遮蔽成分21としては、例えば酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物のうちの少なくとも一つを含むとすればよい。後述するように本発明では、ノロウィルスなどの殺菌に有効な波長の紫外線を照射することによる殺菌をおこなう。例えば酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物を用いれば、この波長の紫外線を遮蔽する十分な効果が得られるので好適である。
【0024】
上記金属酸化物の粒径は、例えば平均粒径が0.1μm以下とすれば、手袋1を透明にする場合に好適である。しかし手袋1の透明性が特に必要でない場合は、上記金属酸化物の粒径に特に制限を課す必要はない。ただし上記金属酸化物の粒径が0.03μm未満とすると上記金属酸化物の粒子間の凝集する傾向が強くなり、分散する性質が低減する。そこで熱可塑性樹脂シート10、11内に均一に上記金属酸化物を分布させる場合には粒径が0.03μm以上とすればよい。
【0025】
熱可塑性樹脂20に酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物の紫外線遮蔽成分21を含む方法としては、熱可塑性樹脂20に粉末の形態の紫外線遮蔽成分21を配合(混合)してシート状に形成したものを熱可塑性樹脂シート11’、12’とすればよい。混合の比率等については後述する。同シートを形成する際には、Tダイ法、インフレーション法などの従来方法で形成すればよい。
【0026】
なお紫外線の遮蔽(あるいは阻止)とは、紫外線の拡散と紫外線の吸収との両方を含む概念であるとする。紫外線の拡散とは紫外線を拡散させることであり、紫外線の吸収とは分子内に紫外線を閉じ込めることである。ともに紫外線を透過させることを阻害する機能を有するので、紫外線の遮蔽(や阻止)に含まれる。
【0027】
また手袋1には検出体14が装備されている。検出体14を後述する紫外線照射装置内に装備された検出センサが感知して、殺菌の際に適正な位置に手袋1が存在しているか否かを検出する。検出体14は手袋1の例えば手のひら部11の表面の開口部に近い位置に貼付すればよい。
【0028】
検出体14は記号でもよい。検出体14が記号の場合、記号が印刷されたシート片やシールを手袋1の表面に貼付してもよい。また手袋1の表面に記号を直接印刷してもよい。このように検出体14を記号などとすれば、検出体14に記号等によって情報を付加することができる利点がある。
【0029】
図3は、本発明における殺菌方法の例を示している。なお殺菌とは、病原菌のうちの一部を殺す、すなわち減菌も含むとする。
【0030】
手袋1は、例えば調理現場、医療現場などの高い衛生管理が要求される現場において、作業員Pが作業する際に手に装着する。そして手袋1が汚れたと判断されるたびに作業員Pが、殺菌装置3によって手袋1を殺菌する。殺菌装置3には2つの挿入口が形成されており、この挿入口から作業員は手袋1を手に装着したままの状態で両手の手袋1を挿入する。
【0031】
殺菌装置3内には紫外線を照射する紫外線照射ランプが配置されており、同ランプから紫外線が照射されて、手袋1の表面が殺菌される。その際、上述のとおり手袋1には紫外線遮蔽成分が配合されているので、紫外線は手袋1によって十分に遮蔽されて、手袋1を透過して皮膚に照射される紫外線の量は十分低減される。これによって紫外線の人体の皮膚への照射による皮膚がんや免疫機能低下などの影響が回避できる。
【0032】
手袋1において、熱可塑性樹脂20に紫外線遮蔽成分21を配合する比率を決めるための考え方について以下で説明する。殺菌すべき対象として、近年特に問題となっているノロウィルスに焦点を絞って説明する。ノロウィルスは実験施設内で細胞や動物を用いて人工的に培養できないので、その代わりにノロウィルスに近似したネコカリシウィルスを代替ウィルスとして用いて検証することが一般に行われている。
【0033】
例えば下記非特許文献2には、ネコカリシウィルスに対して紫外線照射による殺菌効果を調べる実験の結果が示されている。同文献では、ネコカリシウィルス液1mlから3mlをシャーレに入れて静置した後に紫外線を照射した後に生存ウィルス量を測定している。
【0034】
その結果、照射していない段階でのウィルス量が約10の6乗のときに、1平方cm当たり12.5mJ照射した場合、生存ウィルス量は10の4.3乗から5.7乗の範囲の値となった。また1平方cm当たり25mJ照射した場合、生存ウィルス量は10の3.8乗から5.2乗の範囲の値となった。1平方cm当たり50mJ照射した場合、生存ウィルス量は10の3.9乗から4.7乗の範囲の値となった。以上の数値から、ノロウィルスを少なくとも99%程度死滅させるためには、最低でも1平方cm当たり25mJ程度の紫外線の照射が必要であると判断される。
【0035】
【非特許文献2】S. Nuanualsuwan et al: UltravioletInactivation of Feline Calicivirus, Human Enteric Viruses and Coliphages,Photochemistry and Photobiology, (2002)76:406-410
【0036】
次に紫外線の皮膚への影響について述べる。この問題に関しては、どれだけの紫外線を皮膚に照射するとどのような悪影響が出るかといった明確な結果は現状では得られていない。しかし当該分野の研究者の知見によれば、1平方cm当たり800μJ程度の紫外線照射で十分人体の細胞は死滅するとされる。
【0037】
本実施例では、この知見を1つの論拠として、紫外線の照射による殺菌作業において、手袋1を透過して人体に照射される紫外線線量の上限を、安全性を加味して1平方cm当たり250μJと設定する。このとき、上述のとおりノロウィルスの殺菌のために1平方cm当たり25mJ程度の紫外線を照射するので、手袋1の紫外線透過率の上限は1%、言い換えると紫外線遮蔽率は99%以上必要と算出される。
【0038】
次に、この紫外線遮蔽率99%を達成するために、熱可塑性樹脂20に対する紫外線遮蔽成分21の配合比率を決定する。発明者の実験による知見では、熱可塑性樹脂20としてポリエチレンを使用し、紫外線遮蔽成分21としての酸化チタンを0.5重量%配合して膜厚45μmのシートを作成したところ、主波長254nmの紫外線を20%透過、つまり80%遮蔽した。
【0039】
同フィルムを2枚重ねて膜厚を90μmとしたら、主波長254nmの紫外線を4%(=20%の2乗)透過、つまり96%遮蔽した。同フィルムを3枚重ねて膜厚を135μmとしたら、主波長254nmの紫外線が0.8%(=20%の3乗)透過、つまり99.2%遮蔽した。このように膜厚と紫外線透過率とは膜厚をn倍にすると紫外線透過率はn乗で低減するとの規則性に従う。したがって膜厚から紫外線透過率は容易に算出できる。
【0040】
さらに同様の実験により紫外線遮蔽成分の配合比率が0.1重量%以上で、シートの膜厚が100μm程度以上ならば、主波長254nmの紫外線に対し90%以上の紫外線遮蔽率を達成できた。上記実験から容易に理解されるように、ある配合比率で紫外線遮蔽率が十分高くない場合は、十分な紫外線遮蔽率となるまで膜厚を大きくすればよい。
【0041】
上記金属酸化物(紫外線遮蔽成分)の重量%や樹脂シートの膜厚の上限は紫外線遮蔽性能の観点からは特に制限はない。金属酸化物(紫外線遮蔽成分)の重量%が大きい程、樹脂シートの膜厚が厚い程、紫外線遮蔽性能は向上する。しかし、手袋1を手に装着して各種作業をおこなう際に必要となる手袋1の柔軟性のためには、上記金属酸化物(紫外線遮蔽成分)の重量%は50重量%以下、膜厚が数百μm程度以下とすれば好適である。
【0042】
調理現場や医療現場などで紫外線を照射する装置によって殺菌をする状況を想定する場合、あまり長い照射時間は好ましくない場合が想定される。例えば作業現場が一刻一秒を争う場合があると考えられる。また、多くの作業員が1つの照射装置を共有する場合などもあると考えられる。したがってあまり長い照射時間は、作業の効率性を阻害しないとの観点から好ましくないと言える。したがって本実施例では1つの目安として、紫外線の照射時間を10秒程度と設定する。
【0043】
照射時間を10秒程度として、かつ紫外線の照射線量を1平方cm当たり25mJとする場合、紫外線の照射量は1平方cm当たり2500μWと算出される。この紫外線照射量は、例えば低圧水銀ランプ(殺菌ランプ)によって十分可能である。例えば市販されている低圧水銀ランプでは、定格ランプ出力6Wの比較的低出力のランプに対しランプから6cm程度の距離で紫外線の照射量は1平方cm当たり2500μWとなる。
【0044】
つまり1平方cm当たり2500μWの照射量は、比較的低コストの紫外線ランプで困難なく達成できる照射量である。またノロウィルス等を対象とする殺菌にとって有効な紫外線の波長は240nmから280nmあたりであることが知られているが、低圧水銀ランプでは254nmの波長の紫外線を放射するので、殺菌に効果的である。
【0045】
本実施例では以上の考察、検証をまとめることにより各種数値を例えば以下のとおり設定すればよい。まず手袋1のもととなる樹脂シート11’、12’は、熱可塑性樹脂20としてポリエチレンを使用し、紫外線遮蔽成分21としての酸化チタンを0.5重量%配合して膜厚135μmの樹脂シートを作成すればよい。これにより紫外線遮蔽率は99%以上となり、また手袋としての柔軟性も問題なく好適である。
【0046】
そして紫外線照射装置3においては6Wの低圧水銀ランプを使用し、手袋1の表面における紫外線照射線量は1平方cm当たり2500μWとし、照射時間は10秒とする。これにより低コストのランプを用いることができ、かつ手袋1への紫外線照射量は1平方cm当たり25mJとなってノロウィルスを99%死滅することができる。また短い照射時間なので殺菌作業が迅速に完了できる。さらに手袋1の紫外線遮蔽率が99%以上で手袋1への紫外線照射量は1平方cm当たり25mJなので、手の表面への紫外線照射量は1平方cm当たり250μJ以下となり、人体への紫外線照射量を問題のないレベルまで低減できる。
【0047】
なお上記では手袋1の紫外線遮蔽率を99%以上としたが、さらに厳しく99.9%以上としてもよい。これは上の実施例では樹脂シートの膜厚をさらに厚くすれば可能である。上記のとおり樹脂シートの膜厚をn倍にすると紫外線透過率はn乗で低減するので、この規則性から、要求される紫外線遮蔽率を達成するシート膜厚を算出すればよい。また逆に紫外線遮蔽率を95%以上、あるいは90%以上まで緩和してもよい。上記99%という数値は十分な安全率を加味して得た数値であるので、95%以上、あるいは90%以上でも実用上妥当な紫外線遮蔽率とみなされる。
【0048】
次に紫外線照射装置3(照射装置)について説明する。図4には照射装置3の斜視図、A−A断面図、B−B断面図が示されている。A−A断面図に示されているように照射装置3は、筐体30の中にルーバ33(紫外線ガイド部)、紫外線放射ランプ37(紫外線照射ランプ、ランプ)が配置されている。筐体30には挿入口31が2ヶ所設けられ、筐体30から挿入口31の内部へと連続するかたちで壁部32が形成されている。照射装置3には挿入口31以外には開口部は形成されていないとする。これにより装置外部への紫外線の漏出が抑制される。
【0049】
図3のように挿入口31から例えば作業員Pが手袋1を装着したまま手を挿入する。そして、手袋1を照射空間S内に位置させて紫外線を照射して殺菌する。図4のB−B断面図のとおり、ルーバ33、ランプ37は床面36と天井面39の間に配置されている。
【0050】
図4のとおりランプ37は鉛直方向に3個ずつ配置された列が3列配置されている。上述のとおりランプ37は例えば6Wの低圧水銀ランプとすればよい。これによりノロウィルス等に対する殺菌に効果的とされる254nm近傍の波長を有する紫外線を照射することができる。
【0051】
ルーバ33は奥行き方向(A−A断面図では図示上下方向)に間隔を置いて複数個(図4では5個ずつ4列)が配置されている。図6にはルーバ33の詳細が示されている。同図のとおりルーバ33は、筐体30の壁に対して角度θの姿勢で平行配置されている。図6Aでは角度θが90度の場合が、図6Bでは角度θが45度の場合が示されている。
【0052】
図6には矢印でランプ37からの紫外線の放射が示されている。同図に示されているように挿入口31の方を手前側、その逆を奥側とする。図6Aの場合、ランプ37から手袋1へ向かう紫外線はルーバ33で妨げられずに直進して手袋1へ向かうのに対して、ランプ37から放射されて挿入口31の方へ向かう紫外線はルーバ33によって反射される。したがってルーバ33は殺菌のための手袋1への紫外線照射は妨げず、ランプ37から放射された紫外線が直接挿入口から装置外部へ放射されることは防ぐ。よって十分な殺菌と、紫外線の外部漏出が同時に達成できる。
【0053】
また図6Bの場合、角θを45度としたことによりルーバ33によって反射されて、ランプ37から放射された紫外線がランプ37と直交方向か、より奥側へしか向かわず、手前側へは向かわない。したがってランプ37から放射された紫外線が挿入口31から外部へ漏出することが抑制される。
【0054】
図6A、図6Bともに、ランプ37から放射されて照射装置3内で反射する前の紫外線(直接光)は、そのまま挿入口31から照射装置3の外部へ直接放射されない。よって、外部にいる人等へ紫外線が悪影響を与えることが回避できる。当然挿入口31から作業員Pがランプ37を直視する可能性もないので、紫外線が直接目に照射される危険も回避される。
【0055】
なお角度θは、ランプ37から放射された紫外線が手前側へ向かわない、さらには直接光が挿入口31から外部へ放射されない、との条件を満たせば90度や45度に限らなくともよく、例えば30度から100度の範囲でもよいとの知見を得ている。またルーバ33の機能はこれとは別に、ランプ37から放射された紫外線がルーバ33がない場合よりもある場合の方がより均一に手袋1の表面に照射されるとの機能も有する。
【0056】
さらに上述のとおり横向きに配置されたランプ37が鉛直方向に3本並べて配置してあるので、紫外線照射の鉛直方向に関する均一性も達成されている。これにより手袋1の表面の各部で殺菌の程度にばらつきが発生することが回避できる。
【0057】
照射装置3の壁部32には挿入感知センサ34(センサ)が装備されている。センサ34は手袋1の検出体14の存在を検出するセンサである。また照射装置3は制御部38を備えている。そして制御部38は表示部38a、入力部38b、スピーカ38cを備える。例えば制御部38はマイコンや記憶部を装備しており、照射装置3の各種動作は、明示しない限り制御部38によって予め記憶されたプログラムにより実行されるとすればよい。
【0058】
また入力部38bを用いて各種入力が行えるとし、表示部38bには各種情報が表示できるとする。スピーカ38cからは音声が出力されるとする。入力部38bには照射装置3全体に対する電源スイッチがあるとすればよい。そして電源スイッチがオンとなったら、作業員が殺菌のために手袋1を装着した手を挿入することを待機する状態になるとすればよい。そして表示部38aに「待機中」などと表示すれば現在の状態が報知されるので利便性が向上する。
【0059】
図5には、図4のA−A断面図に手袋1を装着した手が挿入された様子が示されている。同図のとおり手袋1を装着した手はルーバ33の列の間の照射空間Sに挿入される。手袋1が照射装置3内で紫外線殺菌を行う際の正規の位置にあるならばセンサ34が検出体14の存在を感知し、正規の位置にないならばセンサ34が検出体14の存在を感知しないように、センサ34の位置は調節されているとすればよい。
【0060】
上述のとおりランプを6Wの低圧水銀ランプとし、殺菌の際の手袋1の正規な位置を、手袋1の表面がランプ37から6cm程度以内の距離とすれば、手袋1表面への紫外線の照射量は1平方cm当たり2500μW以上となり、10秒の照射でノロウィルスなどの殺菌に十分な照射量となる。
【0061】
センサ34が検出体14の存在を感知したら、ランプ37からの紫外線放射を自動的に開始するように、そしてセンサ34が検出体14の存在を感知しない場合はランプ37からの紫外線放射を開始しないように、制御部38が制御することとすればよい。これにより手袋1を装着していない場合や、装着していても手袋1が正規の位置にない場合には紫外線照射が行われない。
【0062】
これにより素手に対して、あるいは紫外線遮蔽性能をもたない手袋に対して紫外線を照射して皮膚に悪影響を与えることが回避できる。さらに手袋1が正規の位置にない場合には紫外線の照射が行われないので、手袋1の表面に適性な照射量とならない紫外線の照射が回避できる。したがって例えば殺菌が不十分となることが回避できる。紫外線照射中は、例えば表示部38aに「照射中」「殺菌中」などと現在の状態を表示することとすればよい。
【0063】
また制御部38にはタイマを備えるとし、照射装置3の照射時間を予め設定しておき、設定された照射時間が終了したら自動的に照射を終了するとすればよい。これにより誤って適正でない照射時間としてしまうことを回避できる。さらに照射を終了させるための操作を省略できる。照射時間は例えば入力部38bを用いて入力できるようにしてもよい。
【0064】
また照射装置3による照射が開始された後に、設定された照射時間が終了する前に、センサ34が検出体14の存在を感知できなくなったらスピーカ38cから警報音声を出力するとしてもよい。さらに表示部38aに「殺菌不十分」などの表示をおこなってもよい。これにより例えば照射時間が終了する前に誤って手を引き抜く等して殺菌が不十分となることが抑制できる。
【0065】
さらに、照射が開始された後に、設定された照射時間が終了する前に、センサ34が検出体14の存在を感知できなくなった場合に、ランプ37は照射を一旦終了してもよい。そして制御部38で所定の照射時間が残りどれだけかを算出し、再び手袋1が挿入口31から挿入されセンサ34が検出体14を検出できるようになったら、残りの照射時間分だけ照射して、その後照射を自動的に終了するとしてもよい。このように照射時間を制御すれば、照射時間が終わる前に誤って手を引き抜いてしまった場合にも、再び手を挿入すれば残りの時間分だけ照射される合理的なシステムとできる。
【0066】
なおセンサは複数個配置して、センサ34では手袋1が照射空間Sに入ったこと検出することのみをおこなうとして、これとは別のセンサを用いて照射中に手袋1が照射空間Sから出たことを検出するとしてもよい。例えば、照射中に手袋1が照射空間Sから出たことを検出するためのセンサは挿入された手袋1の指先近傍の位置に装備する。こうした場合手を挿入後に手首をねじるなどして検出体14が検出できなくなって手を抜いたと誤認識することが抑制できる。
【0067】
本実施例におけるセンサ34はいわゆる近接センサとすればよく、センサ34と検出体14との組合せは、位置検出が可能な組合せならば何らの制限なく用いることができる。したがって例えばセンサ34を誘導型近接センサとし、検出体を鉄、アルミニウム、銅などの金属としてもよい。またセンサ34を静電容量型近接センサとし、検出体を金属としてもよい。センサ34を磁気式近接センサとし、検出体を磁石としてもよい。
【0068】
図7には照射装置3の別の実施例が示されている。同図は図5に対応する。同図の照射装置3では、両側のランプ37が斜め方向に配置されることによって、ランプ37の間の間隔が照射装置3の奥側になるほど狭くなっている。上述のとおりランプ37の間の間隔が紫外線の照射空間Sを形成し、この照射空間S内に手袋1を装着した手が挿入される。
【0069】
通常人間の手は手首部位から指先部位に向かうにつれて、手のひらと手の甲との間の厚さが小さくなる。図7の照射装置3においてランプ37の間の間隔が照射装置3の奥側になるほど狭くなっている、すなわち照射空間Sが奥側ほど狭くなっているのは、これに対応するためである。すなわち図7のランプ37の配置位置によって、ランプ37から手袋1の表面までの距離が、図5の場合と比較して、手首部位から指先部位にかけて、より均一となっている。したがって手袋1の表面への紫外線の照射がより均一になるので、手袋1の部位ごとの殺菌程度のばらつきが抑えられて、手袋1の全表面で十分な殺菌が行われる。
【0070】
図8には照射装置3の別の実施例が示されている。この実施例ではランプ37が縦置きされ、照射装置3の奥行方向に図8では3本ずつ間隔を置いて配置されている。これによりランプ37から照射される紫外線の上下方向に関する均一性が確保される。また図8ではルーバ33は手前側にのみ配置されて奥側には配置されていない。こうしたルーバ33の配置でも、図8で点線で示されているように、ランプ37から放射された直接光が挿入口31から外部へ放射されることは回避できる。これによりルーバ33の個数が削減できる。
【0071】
上で図4の照射装置3を図5のように変形したが、これと同様の変形を施した例が図9に示されている。つまり図9では奥側に向かう程照射空間Sが狭まっている。これにより通常人間の手が先端ほど手のひら側と手の甲側の間の厚さが小さくなることに対応できて、手の表面に照射される紫外線を指先側と手首側とで均一にできる。なお図8においても図4の様にルーバ33を奥行方向全てに配置してもよい。また図4において図8の様に奥側のルーバ33の配置を省略してもよい。
【0072】
なお本発明の手袋は五本指タイプの手袋でなくともよく、人差し指から小指までがつながったタイプでもよい。また本発明の手袋は手首までの長さの手袋でなく、ひじまでの長さを有するタイプでもよい。手首とひじの間の中途位置までの長さを有するとしてもよい。これにより、より厳しい衛生管理に適することとなる。なお本発明の手袋は手に装着したまま殺菌するので、手袋の長さが長くて着脱しにくいことは殺菌作業に障害とならない。
【0073】
また手袋1の開口部の周方向にゴムが埋め込まれて、ゴムの弾性によって開口部が閉まるようにしてもよい。これにより手袋1の装着をより確実にできる。また手袋1の表面にはエンボス加工を施すとすれば、滑り止めの効果を有して各種作業に好適である。
【0074】
また本発明の殺菌方法においては、さらに洗浄装置を備えるとしてもよい。洗浄装置を用いて、手袋1を手に装着したままの状態で洗浄液や水などの液体で洗浄することを上記紫外線照射装置による殺菌と併用すればよい。これにより目視できるごみなどが付着した場合など、紫外線照射による殺菌よりも液体による洗浄の方が適した汚れにも対処できる。
【0075】
なお上記実施例では、紫外線遮蔽成分の金属酸化物の候補を酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄としたが、本発明はこれらに限定されずに、広く別の金属酸化物を用いることができる。例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどのうちの少なくとも一つでも上記と同等の効果が得られる。
【0076】
あるいは紫外線遮蔽成分を金属酸化物とせずに、パラ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシルエステル、ベンゾイミダゾール、ジノキサート、パラメトキシ桂皮酸エチルヘキシルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、オキシベンゾゾン、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、5−クロロウラシル、グアニン、シトシンなどの有機成分のうちの少なくとも一つとしても上記と同等の効果が得られる。
【0077】
また本発明では検出体14及びセンサ34の配置場所は上記実施例で示した配置場所に限定されず、手袋1が紫外線照射のために適切な位置範囲にあるときにセンサ34が検出体14を検出でき、手袋1が紫外線照射のために適切な位置範囲にないときにはセンサ34が検出体14を検出できない条件を満たす設置場所であればよい。
【0078】
また照射装置3は金属製とすれば紫外線を装置内部で反射させて効率よく手袋1に紫外線を照射できて好適である。照射装置3の内部を鏡面仕上げとすればこの目的のためにさらに好適である。ルーバ33を金属製とすれば上で述べた紫外線の誘導に好適である。
【0079】
なお上記実施例ではルーバ33とセンサ34をともに装備した照射装置3を示したが、本発明はこれに限定されず、センサ34は装備するがルーバ33は装備しない照射装置でもよく、センサ34は装備しないがルーバ33は装備する照射装置であっても、当然上記のセンサ34、ルーバ33個々の効果は得られる。
【0080】
なお以上の説明ではランプ37は直線状(I型)のものが用いられているが、これを図10に示すように変更してもよい。図10(1)のランプ37aはU字形状、図10(2)のランプ37bはジグザグ形状(山谷形状)、図10(3)のランプ37cは渦巻形状、図10(4)のランプ37dは面形状(板形状)である。これらの形状によって効率的に紫外線の照射ができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例における手袋を示す図。
【図2】手袋の製造工程を示す図。
【図3】殺菌方法を示す図。
【図4】紫外線照射装置を示す図。
【図5】紫外線照射装置に手袋を挿入した様子を示す図。
【図6】ルーバを示す図。
【図7】紫外線照射装置の別の実施例を示す図。
【図8】紫外線照射装置の別の実施例を示す図。
【図9】紫外線照射装置の別の実施例を示す図。
【図10】ランプの別の形状を示す図。
【符号の説明】
【0082】
1 手袋
3 紫外線照射装置
14 検出体
20 熱可塑性樹脂
21 紫外線遮蔽成分
33 ルーバ
34 挿入感知センサ
37 紫外線照射ランプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋、及び殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、食品産業や医療等の現場では厳しい衛生管理が求められる。そのなかで特に注意深い衛生管理が必要とされ、対策の構築が強く求められる対象がノロウィルスである。今日においてノロウィルスによる食中毒の患者数は全食中毒患者数のほぼ半数を占めている。さらに、1990年代から確認され始めたノロウィルスによる食中毒の患者数は、他の病原菌による食中毒の患者数が減少する傾向があるにも関わらず、横ばい又は増加の傾向がみられる。
【0003】
今日得られている知見によればノロウィルスに対する対策が難しい点は、ノロウィルスの大きさが他の菌等と比べても極めて微小であることや、ごく少量で感染することのほかに、従来の逆性石鹸やアルコール系などの消毒液による消毒が効果がないことがあげられる。したがって手洗いだけでない、より効果的な殺菌システムの構築が必要である。
【0004】
例えば下記非特許文献1では、新たに開発された手指熱風消毒器の性能が検証されている。同装置は医療従事者などの手指に手洗い後に熱風を吹き付けると同時に紫外線も照射することにより、手指の乾燥と殺菌とを同時におこなうことを目的とした装置である。同文献では、この装置によって十分な殺菌効果が得られるとともに、紫外線の照射が手指にも被害を与えないと論じられている。
【0005】
上記方法は素手の殺菌を想定したものだが、手袋を用いたシステムも提案されている。例えば下記特許文献1には、医療現場などで用いられることを想定した手袋脱却装置が開示されている。同文献では使用済み手袋を自らの手を使うことなく、簡単に衛生的に取り外すことができるので、衛生管理を容易にする効果があると主張されている。
【0006】
【非特許文献1】末柄、安井、山口、斧:手指熱風消毒器の消毒・殺菌効果、“病院設備”、44巻、2号、279−281頁(2002年3月)
【特許文献1】特開2005−160628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1の殺菌方法の場合、紫外線による殺菌なのでノロウィルスなどにも効果的な可能性がある。しかし非特許文献1に示された装置を用いる場合、素手に対する紫外線の照射が人体に悪影響を与える可能性がある。確かに同文献には、ACGIH(米国労働衛生専門会議)による労働環境での許容照度の範囲内であることと主張されているが、従来より紫外線の人体への照射は皮膚がんや免疫機能の低下などの問題を引き起こす可能性があると指摘されている。したがって安全性を重要視する立場に立つならば、紫外線の照射による殺菌を行う場合には素手に対する紫外線照射は避けるべきであろうと考えられる。
【0008】
一方特許文献1の技術は使い捨て手袋の使用を前提としたシステムである。使い捨て手袋を用いる場合には汚れたら廃棄すればよいので殺菌方法の構築を考える必要はないが、使い捨て手袋には次のような問題がある。まず使い捨て手袋は衛生度を向上させるために頻繁に取り替えると大量に廃棄されることとなる。したがって資源の有効利用が求められる今日の状況においては望ましくない側面がある。逆に使い捨て手袋をある程度使用してから廃棄する場合には、使用している途中に汚れが進行して衛生的でなくなる可能性がある。
【0009】
したがって上記文献の問題点を克服する方法として例えば、手袋を使い捨てにせずに、汚れたと判断されたごとに紫外線で殺菌しつつ使用することが考えられる。その場合手に装着したまま殺菌できれば利便性が高いが、手を紫外線から守るために手袋によって紫外線を十分遮蔽する必要がある。従来文献ではこうした点全てを考慮して構築された殺菌技術の提案はない。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、衛生管理が必要な作業において用いられて、手に装着したまま紫外線で殺菌しつつ使用する手袋、及びその手袋の殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る手袋は、衛生管理が要求される作業において使用され、240nmから280nmまでの範囲に属する波長を含む紫外線の照射による殺菌を手に装着したまま行う手袋であって、液体を透過させず、柔軟性を有し、熱可塑性樹脂又はゴムから作成され、前記熱可塑性樹脂又はゴムには、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を遮蔽するための紫外線遮蔽物質が含まれ、前記紫外線遮蔽物質は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄のうちの少なくとも一つであることを特徴とする。
【0012】
これにより本発明に係る手袋では、手袋を手に装着したままの状態で240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射して殺菌するので、手袋を脱ぐ手間を省いて、かつ殺菌効果の高い240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射して効率的な殺菌が行える。手袋を脱がなくてもよいので、脱いで殺菌した後に再び装着する際に手袋の衛生状態が悪くなることも回避できる。また本発明の手袋は使い捨て手袋ではないので、資源の有効利用の効果も奏する。また手袋は熱可塑性樹脂又はゴムから作成されて、液体を透過させず、柔軟性を有するので各種作業に好適であり、手袋には240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を遮蔽するための紫外線遮蔽物質が含まれているので、紫外線の照射による殺菌を行っている間に、紫外線が手袋を透過して手の皮膚に照射されて、皮膚に悪影響を与えることが回避できる。また紫外線遮蔽物質は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄のうちの少なくとも一つなので、容易に入手可能な材料によって紫外線遮蔽を達成できる。
【0013】
また前記紫外線遮蔽物質は前記熱可塑性樹脂又はゴムに0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合され、前記紫外線遮蔽物質は、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を90%以上遮蔽するとすればよい。
【0014】
これにより紫外線遮蔽物質は、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を90%以上遮蔽するので十分な遮蔽効果が得られる。また紫外線遮蔽物質は熱可塑性樹脂又はゴムに0.1重量%以上の割合で配合するので紫外線を効果的に遮蔽でき、紫外線遮蔽物質を50重量%以下の割合で配合するので、手袋は十分な柔軟性を有して各種作業に適する手袋となる。
【0015】
また前記手袋は、前記紫外線遮蔽物質が0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合された前記熱可塑性樹脂又はゴムの2枚の薄膜を重ねて、手袋外郭線で熱溶断するともに熱溶着成形されて作成されたとすればよい。
【0016】
これにより、紫外線遮蔽物質が0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合された前記熱可塑性樹脂又はゴムの2枚の薄膜を手袋外郭線で熱溶断するともに熱溶着成形するので、簡易な方法で紫外線遮蔽性能を有する手袋が作成できる。
【0017】
また上記の手袋と、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射する紫外線照射装置とにより、前記手袋が手に装着されたままの状態で前記紫外線照射装置によって240nmから280nmまでの範囲に属する波長を含む紫外線を照射して前記手袋を殺菌する殺菌方法を用いるとすればよい。
【0018】
これにより本発明に係る殺菌方法では、手袋を手に装着したままの状態で240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射して殺菌するので、手袋を脱ぐ手間を省いて、かつ殺菌効果の高い240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射して効率的な殺菌が行える。手袋を脱がなくてもよいので、脱いで殺菌した後に再び装着する際に手袋の衛生状態が悪くなることも回避できる。また本発明の手袋は使い捨て手袋ではないので、資源の有効利用の効果も奏する。また手袋には240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を90%以上遮蔽するための紫外線遮蔽物質が含まれているので、紫外線の照射による殺菌を行っている間に、紫外線が手袋を透過して手の皮膚に照射されて、皮膚に悪影響を与えることが回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る手袋の一実施例である。手袋1は、樹脂シートあるいは樹脂フィルムから作成された手のひら部11と、手の甲部12とが手袋の外郭線13の部分(ただし手を挿入する開口部15以外)で一体化されて形成されている。
【0020】
手袋1の作成方法が図2に示されている。まず、2枚の樹脂シート11’、12’が重ねられた状態で、手の外郭線に沿って2枚揃って切断する。その方法は、例えば打抜刃によって打ち抜く、あるいは熱溶断刃によって熱溶断すればよい。これによって上記手のひら部11、手の甲部12が作成される。そして手のひら部11、手の甲部12において、手袋の外郭線(ただし手を挿入する開口部15以外)を例えば溶着(熱溶着)することによって手袋1は作成されるとすればよい。その際に熱切断と熱溶着とは略同時に行うとしてもよい。図1では外郭線13が可視の部分は実線で、不可視の部分は点線で示されている。
【0021】
手袋1あるいは樹脂シート11’、12’は、例えばポリエチレンなどの熱可塑性樹脂20で作成されているとすればよい。これにより手袋1は液体を透過させないので、調理現場や医療現場などでの使用に適することとなる。なお手袋1の製法は上記製法に限定されない。例えば、手袋1の外郭線13にそって熱溶断した後に切断刃などで外縁にそって切断してもよい。また上記のように手のひら部と手の甲部とに分けて形成せずに、プラスティック成形によって手のひら部と手の甲部とを一体に成形してもよい。なお熱可塑性樹脂ではなく例えばゴムでもよい。
【0022】
後述するように手袋1の表面を殺菌するために、手袋1を手に装着したまま紫外線を照射する。その際に手袋1内の手まで紫外線が達すると、皮膚がん等の悪影響が懸念される。したがって、手袋1あるいは樹脂シート11’、12’には熱可塑性樹脂20とともに紫外線を遮蔽するための紫外線遮蔽成分21(紫外線遮蔽物質)が含まれているとすればよい。
【0023】
紫外線遮蔽成分21としては、例えば酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物のうちの少なくとも一つを含むとすればよい。後述するように本発明では、ノロウィルスなどの殺菌に有効な波長の紫外線を照射することによる殺菌をおこなう。例えば酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物を用いれば、この波長の紫外線を遮蔽する十分な効果が得られるので好適である。
【0024】
上記金属酸化物の粒径は、例えば平均粒径が0.1μm以下とすれば、手袋1を透明にする場合に好適である。しかし手袋1の透明性が特に必要でない場合は、上記金属酸化物の粒径に特に制限を課す必要はない。ただし上記金属酸化物の粒径が0.03μm未満とすると上記金属酸化物の粒子間の凝集する傾向が強くなり、分散する性質が低減する。そこで熱可塑性樹脂シート10、11内に均一に上記金属酸化物を分布させる場合には粒径が0.03μm以上とすればよい。
【0025】
熱可塑性樹脂20に酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物の紫外線遮蔽成分21を含む方法としては、熱可塑性樹脂20に粉末の形態の紫外線遮蔽成分21を配合(混合)してシート状に形成したものを熱可塑性樹脂シート11’、12’とすればよい。混合の比率等については後述する。同シートを形成する際には、Tダイ法、インフレーション法などの従来方法で形成すればよい。
【0026】
なお紫外線の遮蔽(あるいは阻止)とは、紫外線の拡散と紫外線の吸収との両方を含む概念であるとする。紫外線の拡散とは紫外線を拡散させることであり、紫外線の吸収とは分子内に紫外線を閉じ込めることである。ともに紫外線を透過させることを阻害する機能を有するので、紫外線の遮蔽(や阻止)に含まれる。
【0027】
また手袋1には検出体14が装備されている。検出体14を後述する紫外線照射装置内に装備された検出センサが感知して、殺菌の際に適正な位置に手袋1が存在しているか否かを検出する。検出体14は手袋1の例えば手のひら部11の表面の開口部に近い位置に貼付すればよい。
【0028】
検出体14は記号でもよい。検出体14が記号の場合、記号が印刷されたシート片やシールを手袋1の表面に貼付してもよい。また手袋1の表面に記号を直接印刷してもよい。このように検出体14を記号などとすれば、検出体14に記号等によって情報を付加することができる利点がある。
【0029】
図3は、本発明における殺菌方法の例を示している。なお殺菌とは、病原菌のうちの一部を殺す、すなわち減菌も含むとする。
【0030】
手袋1は、例えば調理現場、医療現場などの高い衛生管理が要求される現場において、作業員Pが作業する際に手に装着する。そして手袋1が汚れたと判断されるたびに作業員Pが、殺菌装置3によって手袋1を殺菌する。殺菌装置3には2つの挿入口が形成されており、この挿入口から作業員は手袋1を手に装着したままの状態で両手の手袋1を挿入する。
【0031】
殺菌装置3内には紫外線を照射する紫外線照射ランプが配置されており、同ランプから紫外線が照射されて、手袋1の表面が殺菌される。その際、上述のとおり手袋1には紫外線遮蔽成分が配合されているので、紫外線は手袋1によって十分に遮蔽されて、手袋1を透過して皮膚に照射される紫外線の量は十分低減される。これによって紫外線の人体の皮膚への照射による皮膚がんや免疫機能低下などの影響が回避できる。
【0032】
手袋1において、熱可塑性樹脂20に紫外線遮蔽成分21を配合する比率を決めるための考え方について以下で説明する。殺菌すべき対象として、近年特に問題となっているノロウィルスに焦点を絞って説明する。ノロウィルスは実験施設内で細胞や動物を用いて人工的に培養できないので、その代わりにノロウィルスに近似したネコカリシウィルスを代替ウィルスとして用いて検証することが一般に行われている。
【0033】
例えば下記非特許文献2には、ネコカリシウィルスに対して紫外線照射による殺菌効果を調べる実験の結果が示されている。同文献では、ネコカリシウィルス液1mlから3mlをシャーレに入れて静置した後に紫外線を照射した後に生存ウィルス量を測定している。
【0034】
その結果、照射していない段階でのウィルス量が約10の6乗のときに、1平方cm当たり12.5mJ照射した場合、生存ウィルス量は10の4.3乗から5.7乗の範囲の値となった。また1平方cm当たり25mJ照射した場合、生存ウィルス量は10の3.8乗から5.2乗の範囲の値となった。1平方cm当たり50mJ照射した場合、生存ウィルス量は10の3.9乗から4.7乗の範囲の値となった。以上の数値から、ノロウィルスを少なくとも99%程度死滅させるためには、最低でも1平方cm当たり25mJ程度の紫外線の照射が必要であると判断される。
【0035】
【非特許文献2】S. Nuanualsuwan et al: UltravioletInactivation of Feline Calicivirus, Human Enteric Viruses and Coliphages,Photochemistry and Photobiology, (2002)76:406-410
【0036】
次に紫外線の皮膚への影響について述べる。この問題に関しては、どれだけの紫外線を皮膚に照射するとどのような悪影響が出るかといった明確な結果は現状では得られていない。しかし当該分野の研究者の知見によれば、1平方cm当たり800μJ程度の紫外線照射で十分人体の細胞は死滅するとされる。
【0037】
本実施例では、この知見を1つの論拠として、紫外線の照射による殺菌作業において、手袋1を透過して人体に照射される紫外線線量の上限を、安全性を加味して1平方cm当たり250μJと設定する。このとき、上述のとおりノロウィルスの殺菌のために1平方cm当たり25mJ程度の紫外線を照射するので、手袋1の紫外線透過率の上限は1%、言い換えると紫外線遮蔽率は99%以上必要と算出される。
【0038】
次に、この紫外線遮蔽率99%を達成するために、熱可塑性樹脂20に対する紫外線遮蔽成分21の配合比率を決定する。発明者の実験による知見では、熱可塑性樹脂20としてポリエチレンを使用し、紫外線遮蔽成分21としての酸化チタンを0.5重量%配合して膜厚45μmのシートを作成したところ、主波長254nmの紫外線を20%透過、つまり80%遮蔽した。
【0039】
同フィルムを2枚重ねて膜厚を90μmとしたら、主波長254nmの紫外線を4%(=20%の2乗)透過、つまり96%遮蔽した。同フィルムを3枚重ねて膜厚を135μmとしたら、主波長254nmの紫外線が0.8%(=20%の3乗)透過、つまり99.2%遮蔽した。このように膜厚と紫外線透過率とは膜厚をn倍にすると紫外線透過率はn乗で低減するとの規則性に従う。したがって膜厚から紫外線透過率は容易に算出できる。
【0040】
さらに同様の実験により紫外線遮蔽成分の配合比率が0.1重量%以上で、シートの膜厚が100μm程度以上ならば、主波長254nmの紫外線に対し90%以上の紫外線遮蔽率を達成できた。上記実験から容易に理解されるように、ある配合比率で紫外線遮蔽率が十分高くない場合は、十分な紫外線遮蔽率となるまで膜厚を大きくすればよい。
【0041】
上記金属酸化物(紫外線遮蔽成分)の重量%や樹脂シートの膜厚の上限は紫外線遮蔽性能の観点からは特に制限はない。金属酸化物(紫外線遮蔽成分)の重量%が大きい程、樹脂シートの膜厚が厚い程、紫外線遮蔽性能は向上する。しかし、手袋1を手に装着して各種作業をおこなう際に必要となる手袋1の柔軟性のためには、上記金属酸化物(紫外線遮蔽成分)の重量%は50重量%以下、膜厚が数百μm程度以下とすれば好適である。
【0042】
調理現場や医療現場などで紫外線を照射する装置によって殺菌をする状況を想定する場合、あまり長い照射時間は好ましくない場合が想定される。例えば作業現場が一刻一秒を争う場合があると考えられる。また、多くの作業員が1つの照射装置を共有する場合などもあると考えられる。したがってあまり長い照射時間は、作業の効率性を阻害しないとの観点から好ましくないと言える。したがって本実施例では1つの目安として、紫外線の照射時間を10秒程度と設定する。
【0043】
照射時間を10秒程度として、かつ紫外線の照射線量を1平方cm当たり25mJとする場合、紫外線の照射量は1平方cm当たり2500μWと算出される。この紫外線照射量は、例えば低圧水銀ランプ(殺菌ランプ)によって十分可能である。例えば市販されている低圧水銀ランプでは、定格ランプ出力6Wの比較的低出力のランプに対しランプから6cm程度の距離で紫外線の照射量は1平方cm当たり2500μWとなる。
【0044】
つまり1平方cm当たり2500μWの照射量は、比較的低コストの紫外線ランプで困難なく達成できる照射量である。またノロウィルス等を対象とする殺菌にとって有効な紫外線の波長は240nmから280nmあたりであることが知られているが、低圧水銀ランプでは254nmの波長の紫外線を放射するので、殺菌に効果的である。
【0045】
本実施例では以上の考察、検証をまとめることにより各種数値を例えば以下のとおり設定すればよい。まず手袋1のもととなる樹脂シート11’、12’は、熱可塑性樹脂20としてポリエチレンを使用し、紫外線遮蔽成分21としての酸化チタンを0.5重量%配合して膜厚135μmの樹脂シートを作成すればよい。これにより紫外線遮蔽率は99%以上となり、また手袋としての柔軟性も問題なく好適である。
【0046】
そして紫外線照射装置3においては6Wの低圧水銀ランプを使用し、手袋1の表面における紫外線照射線量は1平方cm当たり2500μWとし、照射時間は10秒とする。これにより低コストのランプを用いることができ、かつ手袋1への紫外線照射量は1平方cm当たり25mJとなってノロウィルスを99%死滅することができる。また短い照射時間なので殺菌作業が迅速に完了できる。さらに手袋1の紫外線遮蔽率が99%以上で手袋1への紫外線照射量は1平方cm当たり25mJなので、手の表面への紫外線照射量は1平方cm当たり250μJ以下となり、人体への紫外線照射量を問題のないレベルまで低減できる。
【0047】
なお上記では手袋1の紫外線遮蔽率を99%以上としたが、さらに厳しく99.9%以上としてもよい。これは上の実施例では樹脂シートの膜厚をさらに厚くすれば可能である。上記のとおり樹脂シートの膜厚をn倍にすると紫外線透過率はn乗で低減するので、この規則性から、要求される紫外線遮蔽率を達成するシート膜厚を算出すればよい。また逆に紫外線遮蔽率を95%以上、あるいは90%以上まで緩和してもよい。上記99%という数値は十分な安全率を加味して得た数値であるので、95%以上、あるいは90%以上でも実用上妥当な紫外線遮蔽率とみなされる。
【0048】
次に紫外線照射装置3(照射装置)について説明する。図4には照射装置3の斜視図、A−A断面図、B−B断面図が示されている。A−A断面図に示されているように照射装置3は、筐体30の中にルーバ33(紫外線ガイド部)、紫外線放射ランプ37(紫外線照射ランプ、ランプ)が配置されている。筐体30には挿入口31が2ヶ所設けられ、筐体30から挿入口31の内部へと連続するかたちで壁部32が形成されている。照射装置3には挿入口31以外には開口部は形成されていないとする。これにより装置外部への紫外線の漏出が抑制される。
【0049】
図3のように挿入口31から例えば作業員Pが手袋1を装着したまま手を挿入する。そして、手袋1を照射空間S内に位置させて紫外線を照射して殺菌する。図4のB−B断面図のとおり、ルーバ33、ランプ37は床面36と天井面39の間に配置されている。
【0050】
図4のとおりランプ37は鉛直方向に3個ずつ配置された列が3列配置されている。上述のとおりランプ37は例えば6Wの低圧水銀ランプとすればよい。これによりノロウィルス等に対する殺菌に効果的とされる254nm近傍の波長を有する紫外線を照射することができる。
【0051】
ルーバ33は奥行き方向(A−A断面図では図示上下方向)に間隔を置いて複数個(図4では5個ずつ4列)が配置されている。図6にはルーバ33の詳細が示されている。同図のとおりルーバ33は、筐体30の壁に対して角度θの姿勢で平行配置されている。図6Aでは角度θが90度の場合が、図6Bでは角度θが45度の場合が示されている。
【0052】
図6には矢印でランプ37からの紫外線の放射が示されている。同図に示されているように挿入口31の方を手前側、その逆を奥側とする。図6Aの場合、ランプ37から手袋1へ向かう紫外線はルーバ33で妨げられずに直進して手袋1へ向かうのに対して、ランプ37から放射されて挿入口31の方へ向かう紫外線はルーバ33によって反射される。したがってルーバ33は殺菌のための手袋1への紫外線照射は妨げず、ランプ37から放射された紫外線が直接挿入口から装置外部へ放射されることは防ぐ。よって十分な殺菌と、紫外線の外部漏出が同時に達成できる。
【0053】
また図6Bの場合、角θを45度としたことによりルーバ33によって反射されて、ランプ37から放射された紫外線がランプ37と直交方向か、より奥側へしか向かわず、手前側へは向かわない。したがってランプ37から放射された紫外線が挿入口31から外部へ漏出することが抑制される。
【0054】
図6A、図6Bともに、ランプ37から放射されて照射装置3内で反射する前の紫外線(直接光)は、そのまま挿入口31から照射装置3の外部へ直接放射されない。よって、外部にいる人等へ紫外線が悪影響を与えることが回避できる。当然挿入口31から作業員Pがランプ37を直視する可能性もないので、紫外線が直接目に照射される危険も回避される。
【0055】
なお角度θは、ランプ37から放射された紫外線が手前側へ向かわない、さらには直接光が挿入口31から外部へ放射されない、との条件を満たせば90度や45度に限らなくともよく、例えば30度から100度の範囲でもよいとの知見を得ている。またルーバ33の機能はこれとは別に、ランプ37から放射された紫外線がルーバ33がない場合よりもある場合の方がより均一に手袋1の表面に照射されるとの機能も有する。
【0056】
さらに上述のとおり横向きに配置されたランプ37が鉛直方向に3本並べて配置してあるので、紫外線照射の鉛直方向に関する均一性も達成されている。これにより手袋1の表面の各部で殺菌の程度にばらつきが発生することが回避できる。
【0057】
照射装置3の壁部32には挿入感知センサ34(センサ)が装備されている。センサ34は手袋1の検出体14の存在を検出するセンサである。また照射装置3は制御部38を備えている。そして制御部38は表示部38a、入力部38b、スピーカ38cを備える。例えば制御部38はマイコンや記憶部を装備しており、照射装置3の各種動作は、明示しない限り制御部38によって予め記憶されたプログラムにより実行されるとすればよい。
【0058】
また入力部38bを用いて各種入力が行えるとし、表示部38bには各種情報が表示できるとする。スピーカ38cからは音声が出力されるとする。入力部38bには照射装置3全体に対する電源スイッチがあるとすればよい。そして電源スイッチがオンとなったら、作業員が殺菌のために手袋1を装着した手を挿入することを待機する状態になるとすればよい。そして表示部38aに「待機中」などと表示すれば現在の状態が報知されるので利便性が向上する。
【0059】
図5には、図4のA−A断面図に手袋1を装着した手が挿入された様子が示されている。同図のとおり手袋1を装着した手はルーバ33の列の間の照射空間Sに挿入される。手袋1が照射装置3内で紫外線殺菌を行う際の正規の位置にあるならばセンサ34が検出体14の存在を感知し、正規の位置にないならばセンサ34が検出体14の存在を感知しないように、センサ34の位置は調節されているとすればよい。
【0060】
上述のとおりランプを6Wの低圧水銀ランプとし、殺菌の際の手袋1の正規な位置を、手袋1の表面がランプ37から6cm程度以内の距離とすれば、手袋1表面への紫外線の照射量は1平方cm当たり2500μW以上となり、10秒の照射でノロウィルスなどの殺菌に十分な照射量となる。
【0061】
センサ34が検出体14の存在を感知したら、ランプ37からの紫外線放射を自動的に開始するように、そしてセンサ34が検出体14の存在を感知しない場合はランプ37からの紫外線放射を開始しないように、制御部38が制御することとすればよい。これにより手袋1を装着していない場合や、装着していても手袋1が正規の位置にない場合には紫外線照射が行われない。
【0062】
これにより素手に対して、あるいは紫外線遮蔽性能をもたない手袋に対して紫外線を照射して皮膚に悪影響を与えることが回避できる。さらに手袋1が正規の位置にない場合には紫外線の照射が行われないので、手袋1の表面に適性な照射量とならない紫外線の照射が回避できる。したがって例えば殺菌が不十分となることが回避できる。紫外線照射中は、例えば表示部38aに「照射中」「殺菌中」などと現在の状態を表示することとすればよい。
【0063】
また制御部38にはタイマを備えるとし、照射装置3の照射時間を予め設定しておき、設定された照射時間が終了したら自動的に照射を終了するとすればよい。これにより誤って適正でない照射時間としてしまうことを回避できる。さらに照射を終了させるための操作を省略できる。照射時間は例えば入力部38bを用いて入力できるようにしてもよい。
【0064】
また照射装置3による照射が開始された後に、設定された照射時間が終了する前に、センサ34が検出体14の存在を感知できなくなったらスピーカ38cから警報音声を出力するとしてもよい。さらに表示部38aに「殺菌不十分」などの表示をおこなってもよい。これにより例えば照射時間が終了する前に誤って手を引き抜く等して殺菌が不十分となることが抑制できる。
【0065】
さらに、照射が開始された後に、設定された照射時間が終了する前に、センサ34が検出体14の存在を感知できなくなった場合に、ランプ37は照射を一旦終了してもよい。そして制御部38で所定の照射時間が残りどれだけかを算出し、再び手袋1が挿入口31から挿入されセンサ34が検出体14を検出できるようになったら、残りの照射時間分だけ照射して、その後照射を自動的に終了するとしてもよい。このように照射時間を制御すれば、照射時間が終わる前に誤って手を引き抜いてしまった場合にも、再び手を挿入すれば残りの時間分だけ照射される合理的なシステムとできる。
【0066】
なおセンサは複数個配置して、センサ34では手袋1が照射空間Sに入ったこと検出することのみをおこなうとして、これとは別のセンサを用いて照射中に手袋1が照射空間Sから出たことを検出するとしてもよい。例えば、照射中に手袋1が照射空間Sから出たことを検出するためのセンサは挿入された手袋1の指先近傍の位置に装備する。こうした場合手を挿入後に手首をねじるなどして検出体14が検出できなくなって手を抜いたと誤認識することが抑制できる。
【0067】
本実施例におけるセンサ34はいわゆる近接センサとすればよく、センサ34と検出体14との組合せは、位置検出が可能な組合せならば何らの制限なく用いることができる。したがって例えばセンサ34を誘導型近接センサとし、検出体を鉄、アルミニウム、銅などの金属としてもよい。またセンサ34を静電容量型近接センサとし、検出体を金属としてもよい。センサ34を磁気式近接センサとし、検出体を磁石としてもよい。
【0068】
図7には照射装置3の別の実施例が示されている。同図は図5に対応する。同図の照射装置3では、両側のランプ37が斜め方向に配置されることによって、ランプ37の間の間隔が照射装置3の奥側になるほど狭くなっている。上述のとおりランプ37の間の間隔が紫外線の照射空間Sを形成し、この照射空間S内に手袋1を装着した手が挿入される。
【0069】
通常人間の手は手首部位から指先部位に向かうにつれて、手のひらと手の甲との間の厚さが小さくなる。図7の照射装置3においてランプ37の間の間隔が照射装置3の奥側になるほど狭くなっている、すなわち照射空間Sが奥側ほど狭くなっているのは、これに対応するためである。すなわち図7のランプ37の配置位置によって、ランプ37から手袋1の表面までの距離が、図5の場合と比較して、手首部位から指先部位にかけて、より均一となっている。したがって手袋1の表面への紫外線の照射がより均一になるので、手袋1の部位ごとの殺菌程度のばらつきが抑えられて、手袋1の全表面で十分な殺菌が行われる。
【0070】
図8には照射装置3の別の実施例が示されている。この実施例ではランプ37が縦置きされ、照射装置3の奥行方向に図8では3本ずつ間隔を置いて配置されている。これによりランプ37から照射される紫外線の上下方向に関する均一性が確保される。また図8ではルーバ33は手前側にのみ配置されて奥側には配置されていない。こうしたルーバ33の配置でも、図8で点線で示されているように、ランプ37から放射された直接光が挿入口31から外部へ放射されることは回避できる。これによりルーバ33の個数が削減できる。
【0071】
上で図4の照射装置3を図5のように変形したが、これと同様の変形を施した例が図9に示されている。つまり図9では奥側に向かう程照射空間Sが狭まっている。これにより通常人間の手が先端ほど手のひら側と手の甲側の間の厚さが小さくなることに対応できて、手の表面に照射される紫外線を指先側と手首側とで均一にできる。なお図8においても図4の様にルーバ33を奥行方向全てに配置してもよい。また図4において図8の様に奥側のルーバ33の配置を省略してもよい。
【0072】
なお本発明の手袋は五本指タイプの手袋でなくともよく、人差し指から小指までがつながったタイプでもよい。また本発明の手袋は手首までの長さの手袋でなく、ひじまでの長さを有するタイプでもよい。手首とひじの間の中途位置までの長さを有するとしてもよい。これにより、より厳しい衛生管理に適することとなる。なお本発明の手袋は手に装着したまま殺菌するので、手袋の長さが長くて着脱しにくいことは殺菌作業に障害とならない。
【0073】
また手袋1の開口部の周方向にゴムが埋め込まれて、ゴムの弾性によって開口部が閉まるようにしてもよい。これにより手袋1の装着をより確実にできる。また手袋1の表面にはエンボス加工を施すとすれば、滑り止めの効果を有して各種作業に好適である。
【0074】
また本発明の殺菌方法においては、さらに洗浄装置を備えるとしてもよい。洗浄装置を用いて、手袋1を手に装着したままの状態で洗浄液や水などの液体で洗浄することを上記紫外線照射装置による殺菌と併用すればよい。これにより目視できるごみなどが付着した場合など、紫外線照射による殺菌よりも液体による洗浄の方が適した汚れにも対処できる。
【0075】
なお上記実施例では、紫外線遮蔽成分の金属酸化物の候補を酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄としたが、本発明はこれらに限定されずに、広く別の金属酸化物を用いることができる。例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどのうちの少なくとも一つでも上記と同等の効果が得られる。
【0076】
あるいは紫外線遮蔽成分を金属酸化物とせずに、パラ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシルエステル、ベンゾイミダゾール、ジノキサート、パラメトキシ桂皮酸エチルヘキシルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、オキシベンゾゾン、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、5−クロロウラシル、グアニン、シトシンなどの有機成分のうちの少なくとも一つとしても上記と同等の効果が得られる。
【0077】
また本発明では検出体14及びセンサ34の配置場所は上記実施例で示した配置場所に限定されず、手袋1が紫外線照射のために適切な位置範囲にあるときにセンサ34が検出体14を検出でき、手袋1が紫外線照射のために適切な位置範囲にないときにはセンサ34が検出体14を検出できない条件を満たす設置場所であればよい。
【0078】
また照射装置3は金属製とすれば紫外線を装置内部で反射させて効率よく手袋1に紫外線を照射できて好適である。照射装置3の内部を鏡面仕上げとすればこの目的のためにさらに好適である。ルーバ33を金属製とすれば上で述べた紫外線の誘導に好適である。
【0079】
なお上記実施例ではルーバ33とセンサ34をともに装備した照射装置3を示したが、本発明はこれに限定されず、センサ34は装備するがルーバ33は装備しない照射装置でもよく、センサ34は装備しないがルーバ33は装備する照射装置であっても、当然上記のセンサ34、ルーバ33個々の効果は得られる。
【0080】
なお以上の説明ではランプ37は直線状(I型)のものが用いられているが、これを図10に示すように変更してもよい。図10(1)のランプ37aはU字形状、図10(2)のランプ37bはジグザグ形状(山谷形状)、図10(3)のランプ37cは渦巻形状、図10(4)のランプ37dは面形状(板形状)である。これらの形状によって効率的に紫外線の照射ができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例における手袋を示す図。
【図2】手袋の製造工程を示す図。
【図3】殺菌方法を示す図。
【図4】紫外線照射装置を示す図。
【図5】紫外線照射装置に手袋を挿入した様子を示す図。
【図6】ルーバを示す図。
【図7】紫外線照射装置の別の実施例を示す図。
【図8】紫外線照射装置の別の実施例を示す図。
【図9】紫外線照射装置の別の実施例を示す図。
【図10】ランプの別の形状を示す図。
【符号の説明】
【0082】
1 手袋
3 紫外線照射装置
14 検出体
20 熱可塑性樹脂
21 紫外線遮蔽成分
33 ルーバ
34 挿入感知センサ
37 紫外線照射ランプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生管理が要求される作業において使用され、240nmから280nmまでの範囲に属する波長を含む紫外線の照射による殺菌を手に装着したまま行う手袋であって、
液体を透過させず、柔軟性を有し、熱可塑性樹脂又はゴムから作成され、
熱可塑性樹脂又はゴムには、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を遮蔽するための紫外線遮蔽物質が含まれ、
紫外線遮蔽物質は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄のうちの少なくとも一つであることを特徴とする手袋。
【請求項2】
紫外線遮蔽物質は熱可塑性樹脂又はゴムに0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合され、
紫外線遮蔽物質は、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を90%以上遮蔽する請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
手袋は、紫外線遮蔽物質が0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合された熱可塑性樹脂又はゴムの2枚の薄膜を重ねて、手袋外郭線で熱溶断するともに熱溶着成形されて作成された請求項1又は2に記載の手袋。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の手袋と、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射する紫外線照射装置とにより、
前記手袋が手に装着されたままの状態で前記紫外線照射装置によって240nmから280nmまでの範囲に属する波長を含む紫外線を照射して前記手袋を殺菌する殺菌方法。
【請求項1】
衛生管理が要求される作業において使用され、240nmから280nmまでの範囲に属する波長を含む紫外線の照射による殺菌を手に装着したまま行う手袋であって、
液体を透過させず、柔軟性を有し、熱可塑性樹脂又はゴムから作成され、
熱可塑性樹脂又はゴムには、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を遮蔽するための紫外線遮蔽物質が含まれ、
紫外線遮蔽物質は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄のうちの少なくとも一つであることを特徴とする手袋。
【請求項2】
紫外線遮蔽物質は熱可塑性樹脂又はゴムに0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合され、
紫外線遮蔽物質は、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を90%以上遮蔽する請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
手袋は、紫外線遮蔽物質が0.1重量%以上50重量%以下の割合で配合された熱可塑性樹脂又はゴムの2枚の薄膜を重ねて、手袋外郭線で熱溶断するともに熱溶着成形されて作成された請求項1又は2に記載の手袋。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の手袋と、240nmから280nmまでの範囲に属する波長の紫外線を照射する紫外線照射装置とにより、
前記手袋が手に装着されたままの状態で前記紫外線照射装置によって240nmから280nmまでの範囲に属する波長を含む紫外線を照射して前記手袋を殺菌する殺菌方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−24572(P2010−24572A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186380(P2008−186380)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(308022922)株式会社ワークソリューション (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(308022922)株式会社ワークソリューション (3)
【Fターム(参考)】
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