説明

手袋脱型方法、及びそれに用いる手袋脱型装置

【課題】ゴム製の手袋の製造効率を向上しうる。
【解決手段】並列状態の各手袋付き成形型2Aの両側から、手袋3の上端3uよりも上方で、剥離ローラ28を圧接させ、かつ下向きに回転させながら下降させることにより、各手袋3の上端3uを成形型2から剥離させるとともに、各手袋3の剥離部分3Jを、剥離ローラ28の下方に配されるクランパー39と該剥離ローラ28との間にそれぞれ挟んでクランプする。又クランプした部分を両側へ引張って手袋3の上端3u側を広げた後、クランプした部分を下方へ引き下ろすことにより、各成形型2から手袋3を裏表反転させながら同時に脱型させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製の手袋の製造効率を向上しうる手袋脱型方法、及びそれに用いる手袋脱型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、台所や各種作業に用いられるゴム製の手袋は、成形型を、ゴムや合成樹脂などからなるラテックス液のディップ槽に浸漬し、該成形型の表面に付着するラテックス液の薄い膜を乾燥固化させることにより形成される。そのため、成形型の表面に密着している手袋を、成形型から裏表反転させながら脱型させる必要がある。
【0003】
この脱型方法としては、下記の特許文献1のものが提案されている。この方法では、ノズルから空気を噴射することによって、手袋の袖部を一時的に膨らませ、該袖部を成形型から剥離させる。しかる後、L字状のフックを剥離した袖部から挿入して、該袖部を係止するとともに、この係止状態のままフックを下降させることにより、手袋を裏表反転させながら脱型させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3503865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような脱型方法では、L字状のフックで手袋の袖部を引っ掛けた後、そのまま下方に引き下ろしている。これにより、裏表反転時に、フックに引き下ろされた手袋の部分と、まだ成形型に密着している手袋の部分とが強く接触するため、大きな抵抗力が生じる。この抵抗力に打ち勝つため、袖部に過大な張力が加わり、手袋が破損しやすいという問題があった。
【0006】
また、このような脱型方法では、1つの手袋を剥離するのに、1台の装置が必要となる。このため、複数の手袋を同時に剥離するには、設備費が大幅に増大するおそれがある。また、1つずつ手袋を剥離するには、多大な時間がかかり、製造効率が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、複数本の前記手袋付き成形型を一列に並べた並列状態で、各手袋の上端を剥離させる剥離工程、各剥離部分を挟んでクランプするクランプ工程、クランプした部分を両側へ引張って手袋の上端側を広げた後、下降させて手袋を裏表反転させながら同時に脱型させる反転脱型工程を含むことを基本として、ゴム製の手袋の製造効率を向上しうる手袋脱型方法、及びそれに用いる手袋脱型装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明は、手袋用の成形型の表面にゴム製の手袋が形成された手袋付き成形型から、前記手袋を裏表反転させながら脱型させる手袋の脱型方法であって、複数本の前記手袋付き成形型を、その指先側が下方に向く下向き姿勢で互いに平行かつ同高さで一列に並べた並列状態で脱型位置まで一体に搬入する搬入工程、この並列状態の各前記手袋付き成形型に対して、各前記手袋付き成形型の両側から、前記手袋の上端よりも上方で、該手袋付き成形型に、水平軸芯廻りで回転可能な剥離ローラを圧接させ、かつその圧接した状態で、前記剥離ローラを前記手袋付き成形型に向かって下向きに回転させながら下降させることにより、各前記手袋の上端が前記成形型から剥離する剥離部分を形成する剥離工程、各前記手袋の前記剥離部分を、前記剥離ローラの下方に配されるクランパーと該剥離ローラとの間にそれぞれ挟んでクランプするクランプ工程、及び前記クランプした状態で、前記クランパーと前記剥離ローラとを、前記手袋付き成形型から離間する向きに後退移動させて、前記クランプした部分を両側へ引張って前記手袋の上端側を広げた後、この広げた状態にて前記クランパーと前記剥離ローラとを下降移動させて、前記クランプした部分を、前記手袋の前記指先よりも下方へ引き下ろすことにより、各前記成形型から前記手袋を裏表反転させながら同時に脱型させる反転脱型工程を含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明のように、剥離工程では、前記クランパーが前記剥離ローラとともに、該手袋付き成形型に圧接され、該クランパーと該剥離ローラとの間に、前記剥離部分を案内する空隙が形成されるのが望ましい。
【0010】
また、請求項3記載の発明のように、前記反転脱型工程は、前記下降移動に先駆けて、前記手袋の表面に水を噴霧する水噴霧工程を含むのが望ましい。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、手袋用の成形型の表面にゴム製の手袋が形成された手袋付き成形型から、前記手袋を裏表反転させながら脱型させる手袋脱型装置であって、複数本の前記手袋付き成形型を、その指先側が下方に向く下向き姿勢で互いに平行かつ同高さで一列に並べた並列状態で脱型位置まで一体に搬入する成形型移動手段及び前記脱型位置に配され、前記並列状態の前記手袋付き成形型を挟んだ両側で対置する一対の脱型具を具えるとともに、各前記脱型具は、昇降手段によって上下移動自在に支持され、かつ進退手段により前記手袋付き成形型に向かって前記進退移動自在に支持される支持板に、前記進退手段による前進移動によって前記手袋付き成形型に、前記手袋の上端よりも上方で圧接しうる水平軸芯廻りで回転可能な剥離ローラを有し、かつ該剥離ローラが圧接状態で、該手袋付き成形型に向かって下向きに回転しながら、前記昇降手段により下降することにより、前記手袋の上端が前記成形型から剥離する剥離部分を形成する剥離手段、及び前記剥離ローラの下方に配され、かつ該剥離ローラとの間で前記剥離部分をクランプするクランパーを有するクランプ手段を具え、前記脱型具は、前記剥離部分をクランプしたクランプ状態で、前記進退手段により、前記手袋付き成形型から離間する向きに後退移動しかつ前記昇降手段により前記手袋の前記指先よりも下方へ下降移動することによって、各前記成形型から手袋を裏表反転させながら同時に脱型させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5記載の発明のように、前記剥離ローラは、水平方向にのびる芯軸、及びこの芯軸の外周面を覆い、かつ水平方向に間隔を有して設けられる複数の管状のゴムローラ部から形成され、前記ゴムローラ部の間で露出する複数の芯軸の露出部分を、軸受部によって回転可能に支持するが望ましい。
【0013】
また、請求項6記載の発明のように、前記ゴムローラ部は、ゴム硬度が20〜40度のゴム材からなるのが望ましい。
【0014】
また、請求項7記載の発明のように、前記ゴムローラ部は、前記芯軸側に配される内のゴム材、及び該内のゴム材の外側に配され、かつ該内のゴム材よりもゴム硬度が大きい外のゴム材から形成されるのが望ましい。
【0015】
また、請求項8記載の発明のように、前記クランパーには、前記手袋付き成形型側へ付勢する付勢手段が設けられ、前記剥離ローラとともに前記手袋付き成形型を圧接し、該クランパーと該剥離ローラとの間に、前記剥離部分を案内する空隙が形成されるのが望ましい。
【0016】
また、請求項9記載の発明のように、前記昇降手段は、前記支持部を載置する昇降台と、該昇降台に固着されるボールナットと、該ボールナットに螺合され、かつ垂直方向にのびるボールネジと、該ボールネジを正逆回転させる電動機とからなるのが望ましい。
【0017】
また、請求項10記載の発明のように、前記脱型具は、前記下降移動に先駆けて、前記手袋の表面に水を噴霧する水噴霧手段を具えるのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の手袋脱型方法では、手袋付き成形型に手袋の上端よりも上方で圧接して、水平軸芯廻りで回転可能な剥離ローラと、その下方に配されるクランパーとを用いることにより、手袋の上端を成形型から剥離させ、かつその剥離部分を剥離ローラとクランパーとの間に挟んでクランプする。
【0019】
具体的には、剥離ローラを手袋付き成形型に向かって下向きに回転させながら下降させることにより、手袋の上端が成形型から剥離し、剥離ローラとクランパーとの間に挟まれてクランプされる。この剥離の動作は、人間が人差し指でめくる動作に近似する。また、クランプの動作は、人差し指と親指との間で摘む動作に近似する。これによって、手袋に傷等を与えることなく剥離−クランプすることができる。
【0020】
また、本発明の手袋脱型方法では、成形型から手袋を裏表反転させながら脱型させる際、クランパーと剥離ローラとを後退移動させ、クランプした部分を両側に引張って、手袋の上端側を広げた後、この広げた状態にてクランパーと剥離ローラとを下降移動させ、前記クランプした部分を下方に引き下ろしている。従って、反転時、引き下ろされた手袋の部分を、まだ成形型に付着している手袋の部分との接触抵抗を減じうるなど、クランプした部分を引き下ろす力を低減できるので、手袋の破損を抑制しうる。
【0021】
さらに、本発明の手袋脱型方法では、複数本の手袋付き成形型から、複数の手袋を同時に脱型できるので、製造効率を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の手袋脱型装置の一形態を例示する斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】(a)は本実施形態の剥離ローラの断面図、(b)は他の実施形態の剥離ローラの断面図である。
【図5】(a)は各手袋付き成形型が剥離ローラの幅方向に位置ズレして段差Mが生じた状態を示す平面図、(b)は(a)の各手袋付き成形型に剥離ローラを圧接した状態を示す平面図である。
【図6】ピニオン部及び駆動部を拡大して示す斜視図である。
【図7】(a)、(b)は、剥離手段を拡大して示す側面図である。
【図8】(a)、(b)は、剥離ローラ及びクランパーの動作を説明する側面図である。
【図9】(a)、(b)は、剥離工程を説明する側面図である。
【図10】(a)はクランプ工程を説明する側面図、(b)は、反転脱型工程におけるクランプ部分の拡張を示す側面図である。
【図11】反転脱型工程における、反転、脱型を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
【0024】
図1、2に示されるように、本実施形態の手袋脱型装置1は、手袋用の成形型2の表面にゴム製の手袋3が形成された手袋付き成形型2Aから、手袋3を裏表反転させながら脱型させる装置である。手袋脱型装置1は、複数本の手袋付き成形型2Aを、一列に並べた並列状態で脱型位置Pまで搬送する成形型移動手段4と、該脱型位置Pに配され、手袋付き成形型2Aを挟んだ両側で対置する一対の脱型具5、5とを有する。
【0025】
前記成形型移動手段4は、例えばチェーンコンベヤや、ローラコンベヤなどの周知の搬送手段4Aと、この搬送手段4Aによって間欠移動される移動台4Bとを有する。移動台4Bには、その下面に複数本(例えば6本)の手袋付き成形型2Aを、その指先3a側が下方に向く下向き姿勢で、互いに平行かつ同高さで一列に並べた並列状態で取り付けられている。そして、手袋製造ラインでは、1つの移動台4Bに取り付く複数本の成形型2を1ユニットとして、ラテックス液のディップ槽に浸漬することにより、1ユニットの成形型2の表面にゴム製の手袋3を一度に形成できる。そして、この移動台4Bを間欠移動することで、手袋付き成形型2Aを脱型位置Pまで順次搬送できる。
【0026】
各前記脱型具5、5には、昇降手段6により上下移動自在に支持されるとともに、進退手段7、7により手袋付き成形型2Aに向かって進退移動自在に支持される支持部8、8が設けられる。
【0027】
本実施形態の昇降手段6は、支持部8、8を載置する昇降台11と、該昇降台11に固着されるボールナット12と、該ボールナット12に螺合され、かつ垂直方向にのびるボールネジ13と、該ボールネジ13を正逆回転させる電動機14とを有する。
【0028】
前記昇降台11は、平面視略矩形状に形成され、その中央部には、手袋付き成形型2Aが並列状態で通る孔部11Hが形成されている。また、昇降台11の四隅には、その下方に形成される下板15から上方へのびる4本のシャフト16を挿通する貫通孔11aが設けられる。このシャフト16は、昇降台11の四隅の下面に固着される軸受部17によって直線運動可能に軸支される。また、下板15には、床面を転動可能な車輪18が設けられており、脱型具5、5を任意の位置に設置できる。
【0029】
本実施形態の前記ボールナット12は、昇降台11の下部に設けられる略U字型の支持枠21を介して、該昇降台11に固着されている。これにより、昇降台11は、ボールナット12、ボールネジ13及び支持枠21を介して、下板15に支持される。
【0030】
前記電動機14は、図示しない制御手段によって正逆転され、例えばプーリやベルト等を介してボールネジ13を正逆転させる。ボールナット12は、ボールネジ13の正逆転によって上下動され、昇降台11を上下動しうる。このような昇降手段6は、ボールナット12及びボールネジ13による直動送り機構で上下移動できるので、支持部8、8を精度良く上下移動させることができる。
【0031】
次に、本実施形態の前記進退手段7は、昇降台11に取り付けられた進退用シリンダ23と、支持部8をその両端で水平方向に摺動可能に支持するガイド部24とを有する。進退用シリンダ23は、手袋付き成形型2Aに向く進退用ロッド23Aの先端に、支持部8が取り付けられている。これにより、支持部8は、進退用シリンダ23及びガイド部24を介して、昇降台11に載置される。
【0032】
また、支持部8には、手袋3の上端3u側を成形型2から剥離する剥離手段26と、成形型2から剥離した剥離部分3Jをクランプするクランプ手段27とが設けられる。
【0033】
前記剥離手段26は、進退手段7による支持部8の前進移動によって、手袋付き成形型2Aに、手袋3の上端3uよりも上方で圧接しうる水平軸芯廻りで回転可能な剥離ローラ28を有する。
【0034】
図4(a)に示されるように、前記剥離ローラ28は、水平方向にのびる芯軸31、及びこの芯軸31の外周面を覆い、かつ水平方向に間隔を有して設けられる複数の管状のゴムローラ部32から形成される。ゴムローラ部32の間で露出する芯軸31の露出部分は、支持部8の上面に固着される軸受部33によって、回転可能に支持される。本実施形態では、剥離ローラ28の直径L1が、例えば20〜30mm程度に形成され、ゴムローラ部32のゴム厚さW1が、例えば5〜10mm程度に形成されるのが好ましい。
【0035】
本実施形態のゴムローラ部32は、ゴム硬度が20〜40度の比較的柔らかなゴム材が採用される。ゴムローラ部32のゴム材としては、特に限定されないが、例えば、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム等のゴム材を採用しうるが、耐久性及び加工性の観点により、クロロプレンゴムが好適に採用される。なお、本明細書においては、「ゴム硬度」は、温度23℃で測定したデュロメータータイプAによる硬さを意味する。
【0036】
図5(a)、(b)に示されるように、ゴムローラ部32は、比較的軟らかいゴム材が採用されるので、各手袋付き成形型2Aが剥離ローラ28の幅方向に位置ズレすることによって生じる段差Mに対して、柔軟に変形しうる。これにより、剥離ローラ28は、段差Mを吸収でき、各手袋付き成形型2Aを略均一に圧接しうる。しかも、本実施形態の剥離ローラ28は、軸受部33によって、該剥離ローラ28の幅方向の複数箇所で支持されているので、剥離ローラ28自体のたわみ等の変形が抑制され、略均一な圧接を確実におこないうる。
【0037】
また、図4(b)に示されるように、ゴムローラ部32としては、芯軸31側に配される内のゴム材32Aと、該内のゴム材32Aの外側に配され、該内のゴム材32Aよりもゴム硬度が大きい外のゴム材32Bとからなる2層構造にすることもできる。このような2層構造は、軟らかい内のゴム材32Aが段差Mによって変形し、かつ硬い外のゴム材32Bによって磨耗が抑制されるため、耐久性を向上しうる。なお、内のゴム材32Aのゴム硬度は10〜20度、外のゴム材32Bのゴム硬度は30〜50度が好ましい。
【0038】
図2及び図6に示されるように、剥離ローラ28の両端には、ピニオン部34が該剥離ローラ28と一体に回転可能に連結される。剥離ローラ28は、ピニオン部34を含む駆動部35によって、手袋付き成形型2Aに向かって下向きに回転される。駆動部35は、前記ピニオン部34と、剥離用ロッド36Aを成形型2に向けて支持部8に取付く剥離用シリンダ36と、該剥離用ロッド36Aの先端に固着され、かつピニオン部34に噛合するラック37とを有する。
【0039】
本実施形態の剥離手段26は、剥離用ロッド36Aが収縮してラック37が手袋付き成形型2Aから離間する方向へ水平移動することにより、剥離ローラ28は、ピニオン部34と一体に下向き回転する。また、剥離用ロッド36Aが伸長することによって、剥離ローラ28を上向き回転できる。
【0040】
次に、前記クランプ手段27は、図3に示されるように、支持部8に取り付けられたクランプ用シリンダ38と、剥離ローラの下方に近接して配されるクランパー39とを有する。クランプ用シリンダ38は、手袋付き成形型2Aに向く進退用ロッド23Aの先端に、クランパー39が取り付けられている。
【0041】
前記クランパー39は、クランプ用ロッド38Aの先端で鍔状に形成されるフランジ部41と、該フランジ部41から手袋付き成形型2Aに水平方向にのびる板部42と、該板部42の端部で、垂直方向にのびる爪部43とから形成される。
【0042】
本実施形態の前記フランジ部41には、クランプ用ロッド38A側に配される第1のプレート41Aと、手袋付き成形型2A側に配される第2のプレート41Bと、該第1、第2のプレート41A、41B間を水平のびて該第2のプレート41Bを水平移動可能に案内、支持する案内ボルト41C、及び該第1、第2のプレート41A、41B間で水平方向に伸縮可能に配されるバネ部41Dとから形成される。第2のプレート41Bは、バネ部41Dによって、手袋付き成形型2A側へ付勢される。これにより、クランパー39には、手袋付き成形型2A側へ付勢する付勢手段44が形成される。
【0043】
図7(a)に示されるように、クランプ前において、クランプ用シリンダ38のクランプ用ロッド38Aは、伸張状態にある。このときクランパー39の爪部43は、剥離ローラ28の前端よりも手袋付き成形型2A側に突出している。図7(b)に示されるように、進退手段7(図3に示す)が作動して、支持部8を手袋付き成形型2A側へ移動させると、まず最初にクランパー39が、手袋付き成形型2Aを圧接する。このとき、クランパー39は、付勢手段44によって、圧接状態を維持したままクランプ用ロッド38A側へ押し戻され、剥離ローラ28を、手袋付き成形型2Aに、手袋3の上端3uよりも上方で圧接しうる。クランパー39と剥離ローラ28との間には、空隙45が形成されている。この空隙45は、付勢手段44によって、クランパー39がクランプ用ロッド38A側へ過度に押し戻されることがないため、その大きさを減じることなく維持できる。
【0044】
図8(a)に示されるように、この状態において、剥離ローラ28を、手袋付き成形型2Aに向かって下向きに回転しながら、昇降手段6により下降することにより、手袋3の上端3uが成形型2から剥離する剥離部分3Jを形成できる。この剥離の動作は、人間が人差し指でめくる動作に近似する。
【0045】
図8(b)に示されるように、手袋3の剥離部分3Jは、剥離ローラ28の回転により、空隙45へと案内される。クランパー39は、クランプ用シリンダ38のクランプ用ロッド38Aの縮小によって後退移動されることにより、剥離部分3Jが該クランパー39と剥離ローラ28とに挟まれてクランプできる。このクランプの動作は、人差し指と親指との間で摘む動作に近似する。これによって、クランプ手段27は、手袋3に傷等を与えることなく剥離−クランプすることができる。なお、クランプ用シリンダ38を伸張して、クランパー39を成形型2側へ移動させるとともに、剥離ローラ28を逆回転(上向き回転)させることで、クランプした剥離部分3Jを開放できる。
【0046】
本実施形態の脱型具5には、昇降手段6による手袋3の指先3aよりも下方への下降移動に先駆け、手袋付き成形型2Aの手袋3の表面に、水を噴霧する水噴霧手段46が設けられる。この水噴霧手段46は、支持部8に、手袋3に向かって噴霧口を開口させたノズル47(図3に示す)が設けられる。このノズル47は、電磁弁などの開閉弁を介して水供給源に接続されている。
【0047】
次に、図9〜11に、本実施形態の手袋脱型装置1を用いて、手袋付き成形型2Aから手袋3を裏表反転させながら脱型させる方法を説明する。この脱型方法は、搬入工程S1、剥離工程S2、クランプ工程S3、及び反転脱型工程S4とを含んでいる。
【0048】
図9(a)に示されるように、前記搬入工程S1では、複数本の手袋付き成形型2Aが、手袋3の指先3a側が下方に向く下向き姿勢で、互いに平行かつ同高さで一列に並べた並列状態で、脱型位置Pまで一体に搬入される。
【0049】
前記剥離工程S2では、図9(b)に示されるように、この並列状態の各手袋付き成形型2Aに対して進退手段7を作動し、支持部8を手袋付き成形型2Aに向かって前進移動させる。これにより手袋付き成形型2Aの両側から、手袋3の上端3uよりも上方に、剥離ローラ28が圧接される。
【0050】
しかる後、前記剥離手段26の駆動部35(図6に示す)を作動し、図10(a)に示されるように、圧接状態にて剥離ローラ28を、手袋付き成形型2Aに向かって下向き回転させながら、昇降手段6(図1に示す)によって下降させる。これにより、各手袋付き成形型2Aには、各手袋3の上端3uが成形型2から剥離する剥離部分3Jが形成される。この剥離部分3Jは、クランパー39と剥離ローラ28との間に形成される空隙45(図8(b)に示す)の中へ案内される。
【0051】
前記クランプ工程S3では、剥離工程S2後に、クランパー39を後退移動させることにより、剥離部分3Jが、剥離ローラ28とクランパー39との間に挟まれてクランプされる。
【0052】
前記反転脱型工程S4では、図10(b)に示されるように、前記剥離部分3Jをクランプした状態にて、進退手段7を作動して支持部8を後退移動させ、クランパー39と剥離ローラ28とを手袋付き成形型2Aから離間させる。これにより、剥離部分3Jを両側に引っ張り、手袋3の上端3u側を広げることができる。
【0053】
しかる後、図11に示すように、前記手袋3の上端3u側を広げた状態にて、昇降手段6(図1に示す)を作動し、クランパー39と剥離ローラ28とを下降移動させる。これにより、クランプした部分が、手袋3の指先3aよりも下方へ引き下ろされ、各手袋3を、各成形型2から裏表反転させながら同時に脱型させることができる。なお、脱型後は、クランプ用シリンダ38により、クランパー39を成形型2側へ移動させるとともに、剥離ローラ28を逆回転させることによって、手袋3を開放しうる。なお、開放された手袋3は、図示しないコンベア等によって、自動的に運搬されるのが好ましい。
【0054】
このように、前記反転脱型工程S4では、手袋3の上端3u側を両側に広げた後、引き下ろしているため、反転時、引き下ろされた手袋の部分と、まだ成形型2に付着している手袋3の部分との接触抵抗を減じることができる。そのため、引き下ろし時に手袋3に作用する張力を低減でき、この張力に起因する手袋3の破損を抑制できる。また引き下ろし時の手袋3の伸びも減じうるため、装置高さを低減でき、装置の小型化を達成しうる。また、本実施形態の手袋脱型方法では、1台の手袋脱型装置1で、複数本の手袋付き成形型2Aから、複数の手袋3を同時に脱型できるので、製造効率を向上しうる。
【0055】
また、前記反転脱型工程S4では、前記下降移動に先駆けて、水噴霧手段46を作動し、手袋付き成形型2Aの手袋3の表面に、水を噴霧する水噴霧工程S3a(図10(B)に示す)を含む。これにより、反転時、引き下ろされた手袋3の部分と、まだ成形型2に付着している手袋3の部分とが滑りやすくなって接触抵抗をさらに減じることができ、手袋の破損抑制効果を高めるとともに、装置のさらなる小型化を達成しうる。
【0056】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0057】
図1に示される手袋脱型装置を、表1の仕様に基づいて試作し、その製造効率を確認した。なお、その他の仕様は次の通りである。
剥離ローラの直径L1:25mm
ゴムローラ部のゴム厚さW1:5mm
【0058】
<製造効率>
10本の成形型を1つの移動台へ取付けて、各成形型の表面にゴム製の手袋を形成するとともに、各手袋付き成形型の段差Mの最大値を0.0〜5.0mmの間で変化させて、供試剥離脱型装置を用いて各手袋を脱型した。評価は、各段差Mの最大値ごとに、手袋を脱型できた成功率(%)で示し、数値が大きいほど製造効率が良好であることを示す。
テストの結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
テストの結果、実施例の剥離脱型装置は、製造効率が優れることを確認できた。
【符号の説明】
【0061】
2 成形型
2A 手袋付き成形型
3 手袋
3a 指先
3u 上端
3J 剥離部分
P 脱型位置
S1 搬入工程
S2 剥離工程
S3 クランプ工程
S4 反転脱型工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋用の成形型の表面にゴム製の手袋が形成された手袋付き成形型から、前記手袋を裏表反転させながら脱型させる手袋の脱型方法であって、
複数本の前記手袋付き成形型を、その指先側が下方に向く下向き姿勢で互いに平行かつ同高さで一列に並べた並列状態で脱型位置まで一体に搬入する搬入工程、
この並列状態の各前記手袋付き成形型に対して、各前記手袋付き成形型の両側から、前記手袋の上端よりも上方で、該手袋付き成形型に、水平軸芯廻りで回転可能な剥離ローラを圧接させ、かつその圧接した状態で、前記剥離ローラを前記手袋付き成形型に向かって下向きに回転させながら下降させることにより、各前記手袋の上端が前記成形型から剥離する剥離部分を形成する剥離工程、
各前記手袋の前記剥離部分を、前記剥離ローラの下方に配されるクランパーと該剥離ローラとの間にそれぞれ挟んでクランプするクランプ工程、
及び前記クランプした状態で、前記クランパーと前記剥離ローラとを、前記手袋付き成形型から離間する向きに後退移動させて、前記クランプした部分を両側へ引張って前記手袋の上端側を広げた後、この広げた状態にて前記クランパーと前記剥離ローラとを下降移動させて、前記クランプした部分を、前記手袋の前記指先よりも下方へ引き下ろすことにより、各前記成形型から前記手袋を裏表反転させながら同時に脱型させる反転脱型工程を含むことを特徴とする手袋脱型方法。
【請求項2】
前記剥離工程では、前記クランパーが前記剥離ローラとともに、該手袋付き成形型に圧接され、該クランパーと該剥離ローラとの間に、前記剥離部分を案内する空隙が形成される請求項1に記載の手袋脱型方法。
【請求項3】
前記反転脱型工程は、前記下降移動に先駆けて、前記手袋の表面に水を噴霧する水噴霧工程を含む請求項1又は2に記載の手袋脱型方法。
【請求項4】
手袋用の成形型の表面にゴム製の手袋が形成された手袋付き成形型から、前記手袋を裏表反転させながら脱型させる手袋脱型装置であって、
複数本の前記手袋付き成形型を、その指先側が下方に向く下向き姿勢で互いに平行かつ同高さで一列に並べた並列状態で脱型位置まで一体に搬入する成形型移動手段及び前記脱型位置に配され、前記並列状態の前記手袋付き成形型を挟んだ両側で対置する一対の脱型具を具えるとともに、
各前記脱型具は、昇降手段によって上下移動自在に支持され、かつ進退手段により前記手袋付き成形型に向かって前記進退移動自在に支持される支持部に、
前記進退手段による前進移動によって前記手袋付き成形型に、前記手袋の上端よりも上方で圧接しうる水平軸芯廻りで回転可能な剥離ローラを有し、かつ該剥離ローラが圧接状態で、該手袋付き成形型に向かって下向きに回転しながら、前記昇降手段により下降することにより、前記手袋の上端が前記成形型から剥離する剥離部分を形成する剥離手段、
及び前記剥離ローラの下方に配され、かつ該剥離ローラとの間で前記剥離部分をクランプするクランパーを有するクランプ手段を具え、
前記脱型具は、前記剥離部分をクランプしたクランプ状態で、前記進退手段により、前記手袋付き成形型から離間する向きに後退移動しかつ前記昇降手段により前記手袋の前記指先よりも下方へ下降移動することによって、各前記成形型から手袋を裏表反転させながら同時に脱型させることを特徴とする手袋脱型装置。
【請求項5】
前記剥離ローラは、水平方向にのびる芯軸、及びこの芯軸の外周面を覆い、かつ水平方向に間隔を有して設けられる複数の管状のゴムローラ部から形成され、
前記ゴムローラ部の間で露出する芯軸の露出部分を、軸受部によって回転可能に支持する請求項5に記載の手袋脱型装置。
【請求項6】
前記ゴムローラ部は、ゴム硬度が20〜40度のゴム材からなる請求項5に記載の手袋脱型装置。
【請求項7】
前記ゴムローラ部は、前記芯軸側に配される内のゴム材、及び該内のゴム材の外側に配され、かつ該内のゴム材よりもゴム硬度が大きい外のゴム材から形成される請求項5に記載の手袋脱型装置。
【請求項8】
前記クランパーには、前記手袋付き成形型側へ付勢する付勢手段が設けられ、前記剥離ローラとともに前記手袋付き成形型を圧接し、該クランパーと該剥離ローラとの間に、前記剥離部分を案内する空隙が形成される請求項4ないし7の何れかに記載の手袋脱型装置。
【請求項9】
前記昇降手段は、前記支持部を載置する昇降台と、該昇降台に固着されるボールナットと、該ボールナットに螺合され、かつ垂直方向にのびるボールネジと、該ボールネジを正逆回転させる電動機とからなる請求項4ないし8の何れかに記載の手袋脱型装置。
【請求項10】
前記脱型具は、前記下降移動に先駆けて、前記手袋の表面に水を噴霧する水噴霧手段を具える請求項4ないし9の何れかに記載の手袋脱型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−216041(P2010−216041A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64931(P2009−64931)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】