説明

手袋

【課題】親指に掛かる窮屈感を軽減するとともに、親指袋が容易に破れることのない手袋を提供する。
【解決手段】掌材と甲材を縫合した手袋1において、人差指側端縁A5と手首側端縁A4との交点より形成される角の一部11f1を、手首から親指の第二関節に渡って落とした掌材11と、親指の第二関節から指先に至る形状に符号する掌面親指材12と、掌面中指材13と、掌面薬指材14と、手首から親指の指先までに沿った形状の甲面親指材15と、甲材16とを備えたことを特徴とする手袋1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋に関し、詳しくは、親指に掛かる窮屈感を軽減するとともに、親指袋が容易に破れることのない手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手袋6は、図6に示すように、掌材61、掌面親指材62、甲面親指材63、甲材64、中指材65、薬指材66、袖部67がそれぞれ別個に裁断された生地をそれぞれ縫合して製造されている。前記掌材61の親指の付根に対応する位置には、掌面親指材62の下端縁62aと甲面親指材63の下端縁63aとが縫合されるための親指穴68が設けられている。掌材61の親指穴68に、掌面親指材62と甲面親指材63とが縫合されると、掌材61に親指袋が形成され、その縫目69は、丁度、手の親指の付根の周縁に表れることとなる(図7)。
【0003】
前記縫目69のある生地部分は、糸で固く縫い付けられていることもあって、剛性が高く、縫代部分に段差が生じる。そのため、従来の手袋6を装着して長時間作業すると、剛性が高い縫目69の箇所が、親指の付根部分と擦れて、違和感や痛みを伴うという問題があった。
【0004】
さらに、前記縫目69では、固い縫い付けによって、生地部分の伸縮性が失われ、縫目69の周辺生地の伸縮が阻害された状態となる。そのため、親指を動かす場合、縫目69の周辺が十分に伸ばされず、親指を押さえつける状態となり、手袋6を装着した作業者は手の親指を楽に動かすことができず、窮屈感を感じるという問題があった。
【0005】
そこで、例えば、実用新案登録第3054132号公報(特許文献1)には、平側主体材、甲側主体材、補強材などの手袋生地を縫合してなる縫製手袋であって、前記平側主体材には、親指平面被覆部と、人差指平面被覆部と、該親指平面被覆部及び人差指平面被覆部間の指股面被覆部とが連続状態で一体裁断されているとともに、前記親指平面被覆部と人差指平面被覆部と指股面被覆部とにまたがって1枚ものの指平・指股面補強材が縫着されていることを特徴とする縫製手袋が開示されている。当該構成により、親指袋と人差指袋間の指股部分に補強材の縫い目を無くすることができ、該指股部分に補強材を取付けたものでも装着感覚が悪くならないとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3054132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、従来の手袋6に用いられない補強材を新たに設けることによって、親指袋と人差指袋との間の指股部分に補強材の縫い目を無くすることができるため、当該補強材に対応する生地を必要とし、コストが掛かるという問題ある。
【0008】
又、従来の手袋6を製造する場合、掌材61に設けられる親指穴68の生地は、通常、円又は楕円の形状に近いため、他のパーツに代用することが出来ない。そのため、手袋6の製造現場では、掌材61から切り取られた親指穴68の生地はそのまま破棄しており、破棄した生地の分だけ生産性が悪いという問題がある。
【0009】
更に、従来の手袋6では、当該手袋6を装着して作業すると、親指袋と掌材61の親指穴68との縫目に張力が加わり易く、当該張力によって縫製糸が解けたり切れたりするという問題がある。特に、伸縮性の乏しい厚手の生地で作成された手袋6では、前記縫目69に手袋全体の張力が伝播し易く、容易に破れてしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、親指に掛かる窮屈感を軽減するとともに、親指袋が容易に破れることのない手袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る手袋は、掌材と甲材を縫合した手袋を前提とする。当該手袋において、人差指側端縁と手首側端縁との交点より形成される角の一部を、手首から親指の第二関節に渡って落とした掌材と、親指の掌側の第二関節から先端に至る形状に符号する掌面親指材と、親指手首から指先までに沿った形状の甲面親指材と、甲材とを備える。
【0012】
角の一部の形状は、三角形、四角形、多角形等、どのような形状でも構わない。
【0013】
角の一部は、手首から親指の第二関節に渡って掌材から(切り)落とされるのであるが、この親指の第二関節の位置は、厳密な位置でなくてもよい。即ち、掌材の人差指側端縁の上方から下方へ向かって直線に裁断する際に、裁断箇所の一部がほぼ親指の第二関節の位置に該当すればよい。掌材に形成される掌面親指材の一部(第一関節からほぼ第二関節までの部分)に対応して掌面親指材が裁断される。
【0014】
上述した掌材、掌面親指材、甲面親指材、甲材はそれぞれ縫合される。
【0015】
当該構成により、手袋の親指袋における親指の付根部分が無縫製となるので、当該付根部分の縫目による親指の窮屈感を軽減することが可能となる。又、前記付根部分の生地は生地本来の伸縮性を維持することとなるため、激しく親指を動かしたとしても、親指から当該付根近傍まで問題なく伸縮することとなり、手を自由に動かすことが可能となる。
【0016】
又、親指の付根部分が無縫製となるので、親指袋と掌材の親指穴との縫目に張力が伝播し、縫い糸が解けたり切れたりする問題が発生することがない。そのため、親指袋が手袋から容易に破れることがない。特に、厚手の生地を採用した手袋には好適である。
【0017】
更に、当該構成では、従来の掌材に必ず設けていた親指穴を設ける必要がないため、親指穴に対応する生地を破棄する必要がなくなり、手袋を作成する際に、無駄になる生地を少なくすることが可能となり、コストダウンを図ることが可能となる。
【0018】
又、掌材の人差指材の甲側端縁が一直線状であれば、当該掌材を生地から切り出す際に、例えば、人差指材の掌側端縁が一直線状である甲材、その他のパーツに近接した位置の生地から掌材を切り出すことが可能となり、生地から抜き出せるパーツの数を増やすことが可能となり、更に、コストダウンを図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の手袋によれば、親指に掛かる窮屈感を軽減するとともに、親指袋が容易に破れることがなく、耐久性を向上させることが可能となる。更に、従来の手袋と比較すると、無駄となる生地の発生を抑えて、コストパフォーマンスを高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る手袋の各パーツの展開図である。
【図2】本発明の実施形態に係る手袋の底面図(図2(A))と平面図(図2(B))である。
【図3】本発明の実施形態に係る手袋の締結バンドを開いた状態を示す平面図(図3(A))と切欠に備えられた三角布を外部へ出した状態を示す平面図(図3(B))である。
【図4】他の実施形態に係る手袋の各パーツの展開図である。
【図5】他の実施形態に係る手袋の底面図(図5(A))と平面図(図5(B))である。
【図6】従来品の手袋の各パーツの展開図である。
【図7】従来品の手袋の底面図(図7(A))と平面図(図8(B))である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明に係る手袋の実施の形態を図面に基づき詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、以下に示す図面の手袋は左手用であるが、これが右手用であっても実質的に差異はない。
【0022】
図1は、縫製前の本発明の手袋の各パーツの展開図である。又、図2は、本発明の実施形態に係る手袋の底面図(図2(A))と平面図(図2(B))である。図3は、本発明の実施形態に係る手袋の締結バンドを開いた状態を示す平面図(図3(A))と切欠に備えられた三角布を外部へ出した状態を示す平面図(図3(B))である。
【0023】
尚、図1乃至図3の上下方向が手袋の各パーツ及び手袋1の上下方向に対応し、図1乃至図3の左右方向が手袋の各パーツ及び手袋1の左右方向に対応する。
【0024】
又、図2乃至図3では、手袋に存在する縫目のうち、本発明に係る主要な縫目について破線で表示し、他の縫目は省略している。又、図1乃至図3に示す掌側付根位置bと甲側付根位置gと右側切り込み位置cは一点鎖線で示すが、破線で示される縫目とは異なる(後述する)。又、図1では、手袋の生地に示す破線は、屈曲線等である(後述する)。尚、図4、図5の一点鎖線、破線の表示は、上述した図1乃至図3の表示と同様である。
【0025】
図1に示すように、本発明の手袋1の主な生地は、人差指側端縁A5と手首側端縁D1との交点より形成される角の一部11f1を、手首から親指の第二関節に渡って落とした掌材11と、親指の第二関節から指先(先端)に至る形状に符号する掌面親指材12と、掌面中指材13と、掌面薬指材14と、手首から親指の指先(先端)までに沿った形状の甲面親指材15と、手の甲面の生地である甲材16と、伸縮性に富む袖部17と、柔軟性に富む三角布18と、締結バンド19と、面ファスナー20とから構成される。尚、前記生地は、皮革、人工皮革等、種々の生地を使用しており、特に限定されるものではない。
【0026】
掌材11は、図1に示すように、人差指材端縁C1の上方から下方への延長線a1と手首側端縁D1の左方から右方への延長線a2との交点より形成される角の一部11f1を、掌面の手首から親指の第二関節に渡って(切り)落とされた形状となっている。そして、掌材11には、人差指材と親指材との付根に対応する掌面人差指材11aの下側に切り込みdが設けられ、掌面人差指材と掌面親指材とが形成される。当該構成とすると、掌材11の親指の掌側付根に対応する位置b(以下、掌側付根位置bとする)から、親指の第一関節から第二関節までの掌面親指材の一部11e(11e1、11e2)が連続した形状となる。尚、掌材11から角の一部11f1が落とされると、掌面親指材の一部11eの下端縁が、掌面の手首から親指の第二関節に渡る端縁A2となる。掌側付根位置bは、従来の掌材の親指穴の左側切り込み位置bに対応するため、掌材11には、従来の掌材の親指穴の左側切り込みを形成する必要がなくなり、親指の掌側付根部分を無縫製とすることが可能となる。
【0027】
又、親指の第一関節から第二関節までの掌面親指材の一部11eが、掌側付根位置bから掌材11の人差指材端縁の延長線a1まで延びた形状であるので、生地から掌材11を裁断する場合、掌材11の人差指材の先端から手首側に向かって一直線に裁断し、上述した切り込みdを設ければ、前記掌面親指材の一部11eを掌材に形成することが可能となり、裁断作業が容易となる。尚、掌面親指材の一部11eの右側端部A3が、親指の第二関節にほぼ位置する。
【0028】
又、掌材11の人差指材の右側端縁C1、A3が一直線状であれば、当該掌材11を生地から切り出す際に、例えば、人差指材の左側端縁C1‘、A5‘が一直線状である甲材16、その他のパーツに近接した位置の生地から掌材11を切り出すことが可能となり、生地から抜き出せるパーツの数を増やすことが可能となり、更に、コストダウンを図ることが可能となる。
【0029】
又、親指の第一関節から第二関節までの掌面親指材の一部11eは、従来の親指穴に対応する部分11e1と当該親指穴の右側切り込み位置cから前記延長線a1に至るまでの部分11e2とから構成される。そのため、従来では破棄していた親指穴の生地11e1を前記掌面親指材の一部11eに有効利用することが可能となり、破棄する生地の発生を抑制することができる。
【0030】
ここで、掌材11に連続する掌面親指材の一部11eが掌側付根位置bで掌面側に折り曲げられると、掌材11に従来の親指穴が生じ、従来の掌材に対して、当該親指穴の右側切り込み位置cから手首側に至るまでの手首側端縁A4と当該右側切り込み位置cから人差指材の右側に至るまでの右側端縁A5とに囲まれた部分11f(11f1、11f2)が欠落することになる。
【0031】
ところで、掌材11に連続する掌面親指材の一部11eに対して、親指の第二関節から親指先端までに対応する掌面親指材12は、当該掌材11とは別の箇所の生地から裁断される。裁断された掌面親指材12と、掌材11に連続する掌面親指材の一部11eの前記延長線a1とを縫合することによって掌面親指材が完成する。
【0032】
又、掌材11には、人差指袋を構成する掌面人差指材11aと小指袋を構成する掌面小指材11dがそれぞれ連設されており、当該掌材11に上述した掌面中指材13と掌面薬指材14が縫合されて、各指に対応する掌面指材が形成される。
【0033】
掌材11の中指材に対応する生地には、人差指材の側面部(襠ともいう)11a1が設けられており、人差指材の側面部11a1の下側に切り込みeが設けられ、この切り込みeの先端部e1から人差指の先端部e2までの屈曲線11a2で人差指材の左側面部11a1が折り曲げられ、掌面人差指材11aが形作られる。
【0034】
又、掌材11の薬指材に対応する生地には、前記人差指材と同様に、小指材の右側面部11d1が設けられており、その小指材の右側面部11d1の下側に切り込みfが設けられ、この切り込みfの先端f1から小指の先端f2までの屈曲線11d2で小指材の右側面部11d1が折り曲げられ、掌面小指材11dが形作られる。
【0035】
又、掌材11の小指材の手首近傍では、所定の位置k1から掌面側に向かって所定の手首位置k2まで裁断され、掌材11の小指材の手首近傍に、上方を鋭角とする略直角三角形の切欠kが形成されている。当該切欠kは、三角布18で覆われることになる(後述する)。
【0036】
掌面中指材13及び掌面薬指材14は、それぞれ掌面部13b、14cと当該掌面部13b、14cの左右両側に側面部13b1、13b2、14c1、14c2を一体裁断して形成される。掌面中指材13では、掌面部13bと左側面部13b1とを区分する屈曲線13b3、掌面部13bと右側面部13b2とを区分する屈曲線13b4が設けられ、縫製時において二本の屈曲線13b3、13b4で折り曲げられ、掌面中指材13が形作られる。又、掌面薬指材14では、掌面中指材13と同様に、掌面部14cと左側面部14c1とを区分する屈曲線14c3、掌面部14cと右側面部14c2とを区分する屈曲線14c4が設けられ、縫製時において二本の屈曲線14c3、14c4で折り曲げられ、掌面中指材14が形作られる。
【0037】
ところで、甲面親指材15では、甲面の手首から親指の先端(指先)までに沿った形状となっている。当該構成により、甲面親指材15が、上述した掌材11の欠落部分11f(従来の掌材では、甲面に位置する部分)を、親指の甲側付根に対応する位置g(甲側付根位置g)から延設させた形状となる。当該甲側付根位置gが、従来の掌材の親指穴の右側切り込みcに対応するため、本発明の掌材11には、従来の掌材の親指穴の右側切り込みを形成する必要が無くなり、親指の甲側付根部分を無縫製とすることが可能となる。
【0038】
又、甲材16は、人差指と中指との間、中指と薬指との間、薬指と小指との間にそれぞれ切り込みh、i、jが設けられて、甲面人差指材16a、甲面中指材16b、甲面薬指材16c、甲面小指材16dが形成される。
【0039】
次に手袋の縫合手順について説明する。
【0040】
まず、掌材11に連続する掌面親指材の一部11eの右側端縁A3が掌面親指材12の下端縁A3‘に縫合されて、親指先端から第一関節までの掌面親指材が掌材11に形成される。
【0041】
次に、掌材11に形成された掌面親指材が掌側付根位置bで掌面側に折り曲げられ、更に、甲面親指材15が甲側付根位置gで甲面側に折り曲げられ、掌面親指材と甲面親指材とが合わされる。そして、掌材11の人差指材の下端縁A8と、掌面親指材の一部11eの上端縁A1と、掌面親指材12の右側周端縁A6と、掌面親指材12の左側周端縁A7と、掌面親指材の一部11eの下端縁A2とが、甲面親指材15の甲側付根位置gから延設された部分11fの上端縁A8‘と、甲面親指材15の右側周端縁A1‘、A6‘と、甲面親指材15の左側周端縁A7‘、A2‘とにそれぞれ縫合されて、親指袋が形成される。当該縫合作業では、従来の掌材の親指穴に沿って円形を描くような縫合作業をする必要がないため、縫合作業が容易となる。
【0042】
続いて、掌面中指材13と掌面薬指材14とがそれぞれの屈曲線13b3、13b4、14c3、14c4で折り曲げられ、側面部13b1、13b2、14c1、14c2がそれぞれ形成される。又、掌材11の人差指材の左側面部11a1と、小指材の右側面部11d1とがそれぞれ屈曲線11a2、11d2で折り曲げられる。そして、掌面中指材13の掌面部13bの下端縁B1が掌材11の人差指側の切り込みeの中指側上端縁B1‘に縫合され、掌面薬指材14の掌面部14cの下端縁B2が掌材11の小指側の切り込みfの薬指側上端縁B2‘に縫合される。更に、掌面中指材13の右側面部13b2の下端縁B3が掌材11の人差指材の左側面部11a1の下端縁B3‘に縫合され、掌面薬指材14の左側面部14c1の下端縁B4が掌材11の小指材の右側面部11d1の下端縁B4‘に縫合される。最後に、掌面中指材13の左側面部13b1の下端縁B5が掌面薬指材14の右側面部14c2の下端縁B5‘に縫合されて、掌材11に掌面人差指材11a、掌面中指材13b、掌面薬指材14c、掌面小指材11dが形成される。
【0043】
その後、各指材がそれぞれ形成された掌材11と、既に各指の甲面部をそれぞれ有する甲材16とが以下の手順により縫合されて、手袋1が縫製される。
【0044】
まず、掌材11に縫合された甲面親指材15の右側端縁A5‘‘が、掌材11の人差指材の人差指材の上方から下方へ延びた延長線a1に合わされて、掌材11の人差指材の右側端縁A5に対応付けされる。次に、甲面親指材15の右側端縁A5‘‘と、掌材の人差指材の右側周辺縁C1と、左側周辺縁C2とが、甲材16の人差指材の左側端縁A5‘と、甲材16の人差指材の左側周辺縁C1‘と、右側周辺縁C2‘とにそれぞれ縫合され、人差指袋が形成される。
【0045】
次に、掌材11の中指材の右側周辺縁C3と、左側周辺縁C4とが、甲材16の中指材の左側周辺縁C3‘と、右側周辺縁C4‘とにそれぞれ縫合され、中指袋が形成される。
【0046】
中指袋と同様に、掌材11の薬指材の右側周辺縁C5と、左側周辺縁C6とが、甲材16の薬指材の左側周辺縁C5‘と、右側周辺縁C6‘とにそれぞれ縫合され、薬指袋が形成される。
【0047】
最後に、掌材11の小指材の右側周辺縁C7と、左側周辺縁C8とが、甲材16の小指材の左側周辺縁C5‘と、右側周辺縁C6‘とにそれぞれ縫合され、小指袋が形成される。ここで、掌材11の小指材の下方左側端縁C9と、甲材16の小指材の下方右側端縁C10とは相互に縫合されない。そのため、手袋1の小指側の手首近傍に切欠kが形成される。尚、当該切欠kの両端縁には、三角布18の端縁が縫合される(後述する)。
【0048】
親指袋、人差指袋、中指袋、薬指袋、小指袋が形成されると、掌材11の下端縁D1、甲面親指材15の下端縁D2、甲材16の下端縁D3が、袖部17の上端縁D1‘、D2‘、D3‘に、連続して一周するように縫合される。前記袖部17の左側端縁E1は、右側端縁E2と縫合されず、袖部17が縫合された後は、上述した切欠kと連続した大きな切欠k‘が設けられることとなる(図2(A)、図2(B))。
【0049】
設けられた大きな切欠k‘を構成する左側端縁、つまり、掌材11の小指材の左側端縁C9と、袖部17の左側端縁E1の一部E3は、三角布18の右側端縁C9‘、E3‘に縫合される。そして、大きな切欠k‘を構成する右側端縁、つまり、甲材1の小指材の右側端縁C10と、袖部17の右側端縁E2の一部E4は、三角布18の左側端縁C10‘、E4‘に縫合される。当該構成により、大きな切欠k‘が手袋の手への着脱を容易にするとともに、三角布18が大きな切欠k‘を覆うこととなり、外部への手の露出を防止する(図3(A)、図3(B))。
【0050】
更に、袖部17の左側端縁E1に締結バンド19の端縁F1が縫合される。締結バンド19が縫合された後に、手袋1が裏返される。手袋1が裏返されると、締結バンド19の裏面には多数の係着子からなる接着面ファスナー20aが縫い付けられる。そして、前記接着面ファスナー20aが当接する袖部17の位置には、他方の係着子からなる被接着面ファスナー20bが縫合され、両者の面ファスナー20a、20bによって締結バンド19の取り付け状態を調整することが可能となる。これにより、作業者毎に手袋1のフィット感の調整が可能となる(図2、図3)。
【0051】
このようにして、手袋1の本体が出来上がる。
【0052】
上記のように、本発明に係る手袋1は、人差指側端縁A5と手首側端縁A4との交点より形成される角の一部11f1を、手首から親指の第二関節に渡って落とした掌材11と、親指の第二関節から指先に至る形状に符号する掌面親指材12と、掌面中指材13と、掌面薬指材14と、手首から親指の指先までに沿った形状の甲面親指材15と、甲材16とを備える。
【0053】
当該構成により、手袋1の親指袋における親指の付根部分が無縫製となるので、当該付根部分の縫目による親指の窮屈感を軽減することが可能となる。又、前記付根部分の生地は生地本来の伸縮性を維持することとなるため、激しく親指を動かしたとしても、親指から当該付根近傍まで問題なく伸縮することとなり、手を自由に動かすことが可能となる。
【0054】
又、親指の付根部分が無縫製となるので、親指袋と掌材の親指穴との縫目に張力が伝播し、縫い糸が解けたり切れたりする問題が発生することがない。そのため、親指袋が手袋から容易に破れることがない。特に、厚手の生地を採用した手袋には好適である。
【0055】
更に、当該構成では、従来の掌材に必ず設けていた親指穴を設ける必要がないため、親指穴に対応する生地を破棄する必要がなくなり、手袋を作成する際に、無駄になる生地を少なくすることが可能となり、コストダウンを図ることが可能となる。
【0056】
尚、本発明に係る手袋1では、掌材11に連続する掌面親指材の一部11eは親指の掌側付根から第二関節までに対応し、別個の生地として設けられた掌面親指材12と当該掌面親指材の一部11eとが縫合されることにより、一の掌面親指材を完成させるよう構成したが、他の構成でも構わない。例えば、掌材に、親指の掌側付根から親指先端までの完全な掌面親指材を掌側付根位置bから延設するよう構成しても構わない。
【0057】
又、本発明の手袋1では、甲面親指材12と掌面親指材13とを掌材11に縫合した後に、中指材13、薬指材14を縫合した甲材15を当該掌材11に縫合したが、本発明の目的を損なわない範囲で、当該縫合手順を変更しても構わない。また、本発明の手袋1では、掌材の人差指材と甲材の人差指材とを縫合してから、各指材を縫合し、最後に掌材の小指材と甲材の小指材とを縫合したが、本発明の目的を損なわない範囲で、当該縫合手順を変更しても構わない。
【0058】
又、本発明の手袋1では、掌材11に人差指材11aと小指材11dとを連設させ、別個の生地として掌面中指材14と掌面薬指材15とを用意したが、他の構成でも構わない。
【0059】
図4は、他の実施形態に係る手袋の各パーツの展開図である。図5は、他の実施形態に係る手袋の底面図(図5(A))と平面図(図5(B))である。
【0060】
例えば、本発明の目的を損なわない範囲で、図4乃至図5に示すように、掌材11に中指材13bと薬指材14cとを連設させるよう構成し、更に、人差指材の左側面部11a1と中指材の右側面部13b2とからなる第一の側面材21a、中指材の左側面部13b1と薬指材の右側面部14c2とからなる第二の側面材21b、薬指材の左側面部14c1と小指材の右側面部11d1とからなる第三の側面材21cを別個の生地として用意するよう構成しても構わない。そして、袖部17と三角布18とを削除して、甲材の所定の位置k3に締結バンド19を縫合するための、上方を鋭角とする略直角三角形の切欠kを設けて、当該切欠kの一方の端縁G1に締結バンドの端縁F1を縫合し、更に、当該締結バンド19の裏面に接着面ファスナー20aを、接着面ファスナー20aが当接する甲材15の位置に被接着面ファスナー20bを縫い付けるよう構成しても構わない。尚、縫製手順は、上述と同様であるため、その説明は割愛する。
【0061】
又、本発明の手袋1では、本発明の目的を損なわない範囲で、甲材16の中央近傍に左右に伸縮自在なゴムバンドを縫い付けて、手袋1の手へのフィット感を向上させるよう構成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかる手袋は、スポーツ用手袋はもちろん、家庭用に用いられる手袋から、漁業、土木作業、建築作業等種々の作業において使用される手袋に有用であり、親指に掛かる窮屈感を軽減するとともに、親指袋が容易に破れることのない手袋として有効である。
【符号の説明】
【0063】
1 手袋
11 掌材
12 掌面親指材
13 掌面中指材
14 掌面薬指材
15 甲面親指材
16 甲材
17 袖部
18 三角布
19 締結バンド
20 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌材と甲材を縫合した手袋において、
人差指側端縁と手首側端縁との交点より形成される角の一部を、手首から親指の第二関節に渡って落とした掌材と、
親指の第二関節から指先に至る形状に符号する掌面親指材と、
手首から親指の指先までに沿った形状の甲面親指材と、
甲材と、
を備えたことを特徴とする手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219910(P2011−219910A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93855(P2011−93855)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3155127号
【原出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【特許番号】特許第4771495号(P4771495)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(594068099)富士グロ−ブ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】