説明

投光器

【課題】横長な被照射面の全域を均一に照明する投光器を提供すること。
【解決手段】筐体10内に光源を有し、平面状の被照射面5の上下いずれかの一側縁側に配置されて、前記光源により前記被照射面5を照射する投光器1において、前記光源が複数個のLEDパッケージ17を備え、前記筐体10内に、前記被照射面5側に迫り出した両側に傾斜面30を有し前記傾斜面30のそれぞれの先端側及び基端側にLEDパッケージ17を配置する主台座部19と、前記主台座部19の先端側のLEDパッケージ17および基端側のLEDパッケージ17のいずれか一方に対応させて配置され横方向の遠距離に配光する遠距離用反射鏡40Aと、他方に対応させて配置され横方向の近距離に配光する近距離用反射鏡40Bとを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトアップ照明や、看板又はサイン広告の投光照明などに供される投光器に係り、特に、横長の照射面を照射する投光器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャノピー看板やパラペット看板、ファサード看板等の各種看板、或いは、サイン広告などを照明する投光器が知られている。また一般に、看板やサイン広告(以下、「被照射面」という)の横幅が1台の投光器の照明可能範囲を超える場合、複数台の投光器を被照射面の横幅に沿って配列し、これらの投光器で被照射面の全域が照明されている。しかしながら、投光器の台数が増えると、投光器のイニシャルコストがかかり、また、ランニングコストや消費電力も増加する、という問題がある。
一方、照明分野では、ワイドな配光を実現した各種の照明器具が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−275112号公報
【特許文献2】特開平07−045113号公報
【特許文献3】特開平11−126502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、看板やサイン広告を投光照明する場合、所定距離の所から被照射面の全域を照度ムラ無く均一に照明することが望まれる。しかしながら、従来の投光器は、横長の被照射面を均一に照明するに適した配光を実現できておらず、横長の被照射面を均一に照明する場合には、結局は、複数台の投光器を用いて照明する必要があった。
【0005】
特に従来の看板灯は、大型の看板面を上又は下から照射する場合、看板面からの出幅が制限されることが多く、投光器から縦方向(出幅の2〜5倍)に距離のある看板面の照度を確保することが難しいため、縦方向の照度を確保しながら横方向では均等間隔で複数の投光器を配置して看板面の照度を確保している。しかし、パラペット看板やファサード看板など小型の看板は、横長の小さな看板面が多く、縦方向が出幅の1〜2倍に対して、横方向が出幅の4倍程度の大きさであり、低W(ワット)の投光器を数台並べて照明しており、照明率は低かった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、横長な被照射面の全域を均一に照明する投光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、筐体内に光源を有し、平面状の被照射面の上下いずれかの一側縁側に配置されて、前記光源により前記被照射面を照射する投光器において、前記光源が複数個のLEDを備え、前記筐体内に、前記被照射面側に迫り出した両側に傾斜面を有し前記傾斜面のそれぞれの先端側及び基端側にLEDを配置する台座部と、前記台座部の先端側のLEDおよび基端側のLEDのいずれか一方に対応させて配置され横方向の遠距離に配光する遠距離用反射鏡と、他方に対応させて配置され横方向の近距離に配光する近距離用反射鏡とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記投光器において、前記台座部の傾斜面に配置されたLEDが白色LEDであり、一対の白色LEDから発光する黄色を打ち消すLEDが、前記台座部の稜線と交わるLED配置面に配置され、この黄色を打ち消すLEDを配置したLED配置面に対応させて稜線方向に配光制御する反射鏡を配置したことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記投光器において、遠距離用反射鏡を経た光と、近距離用反射鏡を経た光が重なる部位の光量を抑えるように前記遠距離用反射鏡及び前記近距離用反射鏡の反射面の粗度を変化させたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記投光器において、前記筐体が各LEDを覆うグローブを備え、前記グローブのうち、少なくともLEDに対向する部位が、偏曲点なく連続する湾曲面を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筐体内に、被照射面側に迫り出した両側に傾斜面を有し前記傾斜面のそれぞれの先端側及び基端側にLEDを配置する台座部と、前記台座部の先端側のLEDおよび基端側のLEDのいずれか一方に対応させて配置され横方向の遠距離に配光する遠距離用反射鏡と、他方に対応させて配置され横方向の近距離に配光する近距離用反射鏡とを備える構成とした。
この構成により、遠距離用反射鏡及び近距離用反射鏡で配光制御された光によって、横長な被照射面の全域を照明することができる。特に、本発明によれば、台座部のLEDごとに配光を制御できるため、被照射面の照度ムラを効果的に解消し均一に照射できる。また、ランプを光源とした従来の投光器においては、被照射面の四隅のうち投光器が配置された側の両側の隅部で照度低下が顕著に見られるが、本発明によれば、遠距離用反射鏡の配光制御により、かかる隅部に効果的に配光できるため、隅部での照度低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る投光器の外観構成を使用態様と共に示す側面図である。
【図2】投光器本体の正面図である。
【図3】組付ベースの構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図を示す。
【図4】投光器本体から反射ユニットを取り外した状態を示す図であり、(A)は投光器本体の正面図、(B)は投光器本体の断面視図である。
【図5】反射ユニットの構成を示す図であり、(A)は反射ユニットの正面図、(B)は反射ユニットの側面図である。
【図6】図5(A)のA−A’断面図である。
【図7】図5(A)のB−B’断面図である。
【図8】LEDパッケージの構成を示す図である。
【図9】LEDパッケージの発光部を拡大して示す模式的に示す図である。
【図10】グローブの正面、側面、前面及び背面を共に示す図である。
【図11】高さ1m、横幅4mのサイン広告を照明したときの照度分布を示す図であり、(A)は実施形態に係る投光器の照度分布を示し、(B)は従来の投光器の照度分布を示す。
【図12】本発明の主台座部の変形例を示す図である。
【図13】本発明の主台座部の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。この実施形態では、照明器具の一例として、サイン広告や看板の投光照明に用いて好適な広告用の投光器を説明する。
図1は、本実施形態に係る投光器1の外観構成を使用態様と共に示す側面図である。
投光器1は、棒状に延びた所定長さのアーム2と、このアーム2の先端に設けられた投光器本体3とを有している。アーム2は、照明対象のサイン広告4が設置された建物に設置されて、投光器本体3を該サイン広告4の上縁4U側から前方に所定距離だけ突出配置するものであり、この突出位置から投光器本体3がサイン広告4の広告面(以下、「被照射面」と言う)5の全域を照明する。なお、被照射面5としては、サイン広告4の広告面の他、商用施設等の建物に設けられるキャノピー看板やパラペット看板、ファサード看板、或いは、横方向に長い形状の各種広告が挙げられる。また、投光器本体3をサイン広告4の下縁4D側に配置してサイン広告4の下側から被照射面5を照明しても良い。
【0014】
図2は、投光器本体3の正面図である。
投光器本体3は、正面視箱形の筐体10と、この筐体10をアーム2に取り付けるためのアーム取付具11とを有している。アーム取付具11は、筐体10の両側を挟持するコ字状部材であって筐体10に回動自在に取り付けられている。アーム取付具11に対して筐体10を回動させることで被照射面5に対する筐体10の設置角度が調整される。本実施形態では、図1に示すように、筐体10が被照射面5に正対して(首振り角度γ(図11)がゼロ度)で設置されている。
筐体10は、熱伝導性に優れるアルミダイカストで成形されており、内部には組付ベース60が着脱自在に設けられている。
【0015】
図3は、組付ベース60の構成を示す図であり、図3(A)は正面図、図3(B)は側面図を示す。
組付ベース60は、電源ユニット18(図4(B)参照)やLEDパッケージ17(図4(A)参照)を組み付けるためのベース体であり、筐体10と同様に高熱伝導性を有するアルミダイカストで成形されている。この組付ベース60の裏面61は、筐体10の底面に密着する形状に形成されている。これにより、組付ベース60に組み付けられたLEDパッケージ17の熱が組付ベース60から筐体10にロスを少なくして伝熱される。
このように、組付ベース60に電源ユニット18やLEDパッケージ17を組み付けて筐体10に納める構成とすることで、既存の投光器1の組付ベース60を、所望の光出力や配光に合うようにLEDパッケージ17が組み付けられた組付ベース60に交換するだけで、投光器1の性能を簡単に変えることができる。
【0016】
上記筐体10の下側の基部12には、組付ベース60に組み付けられた電源ユニット18が配置され、また筐体10の上側の光源部13には、組付ベース60にLEDパッケージ17を組み付けて構成した光源ユニット14が配置されている。この光源部13の正面にはアクリル製のグローブ15が設けられている。上記アーム取付具11は、基部12の両側を挟むように設けられており、図1に示すように、投光器1を被照射面5の上縁4U側に設置する時には、投光器本体3を上下逆にして上側に基部12、下側に光源部13が位置する姿勢で設置される。これとは逆に、投光器1を被照射面5の下縁4D側に設置する時には、上側に光源部13、下側に基部12が位置する姿勢で設置される。
【0017】
光源ユニット14は、筐体10の正面から両側に亘る横長のエリアに光を放射するものであり、アルミニウム等の高反射特性を有する材料で形成された配光制御用の反射ユニット16を備えている。
図4は、投光器本体3から反射ユニット16を取り外した状態を示す図であり、図4(A)は投光器本体3の正面図、図4(B)は投光器本体3の断面視図である。また図5は、反射ユニット16の構成を示す図であり、図5(A)は反射ユニット16の正面図、図5(B)は反射ユニット16の側面図である。図6は図5(A)のA−A’断面を示し、図7は図5(A)のB−B’断面を示す。
【0018】
図4(B)に示すように、筐体10の側面が光源部13の上側10A、左側10B及び右側10Cのそれぞれで切り落とされており、光源部13の正面のみならず、左右側面、及び天面からも光が照射される。
光源ユニット14は、図4(A)及び図4(B)に示すように、複数のLEDパッケージ17を光源に備え、これらLEDパッケージ17を配置する主台座部19及び副台座部20とを備えている。これら主台座部19、及び副台座部20は、図3に示すように、組付ベース60に一体形成されている。
【0019】
図8は、LEDパッケージ17の構成を示す図である。
LEDパッケージ17は、矩形の面状に白色光を放射する発光素子モジュールである。具体的には、LEDパッケージ17は、金属板22Aの表面に絶縁層22Bを設けたLED基板22と、このLED基板22の絶縁層22Bの上に形成され、24×3個のLED23を格子状に配置してなる正面視略矩形の発光部24とを備え、この発光部24からLED基板22の法線方向に面状光を放射する。なお、同図において、符号25はLED基板22に形成されたアノード電極、符号26はカソード電極を示す。この投光器1では、LEDパッケージ17に約1400[lm]の出力を有するものが用いられており、5個のLEDパッケージ17で光源ユニット14の光源が構成されている。
【0020】
図9は、LEDパッケージ17の発光部24を拡大して示す模式的に示す図である。
発光部24は、格子状に配列された上記LED23を、封止体27で封止して構成されている。LED23は青色光を発光する青色LEDである。また封止体27は、青色光の光を受けて黄色の蛍光を発する蛍光体が散布された樹脂材であり、均一な厚みで各LED23を覆っている。かかる構成の下、LED23が発光すると、このLED23の青色光により封止体27が黄色の蛍光を発し、これら青色光と黄色光の混色によって白色光が発光部24からLED基板22の法線方向を照射方向Hとして面状に放射される。
【0021】
前掲図4に示すように、LEDパッケージ17は、主台座部19、及び副台座部20それぞれに取り付けられている。主台座部19は、投光器1からみて被照射面5の遠距離を照射する遠距離照射用のLEDパッケージ17(以下、遠距離照射用LEDパッケージ17Aと言う)、及び近距離を照射する近距離照射用のLEDパッケージ17(以下、近距離照射用LEDパッケージ17Bと言う)が取り付けられる部材である。
具体的には、主台座部19は、被照射面5側に略三角形状に迫り出した左右対称の山型に構成され、その稜線を筐体10の中心線Mに合わせ、両側面たる傾斜面30を筐体10の左右に向けて設けられている。そして、これら傾斜面30には、高熱伝導性及び絶縁性を有するセラミック板31がそれぞれ貼着され、このセラミック板31上に主台座部19の基端側に上記遠距離照射用LEDパッケージ17A、先端側に上記近距離照射用LEDパッケージ17Bがそれぞれ配置されている。
【0022】
この主台座部19は、筐体10と一体にアルミダイカストにより成形されており、主台座部19と筐体10の間の熱抵抗が抑えられている。これにより遠距離照射用LEDパッケージ17A、及び近距離照射用LEDパッケージ17Bの発熱が高熱伝導性のセラミック板31を通じて主台座部19から筐体10に伝熱されて効率的に放熱される。また、この主台座部19は中空ではなく中実に形成されており熱容量の増大が図られている。
【0023】
傾斜面30に配置された遠距離照射用LEDパッケージ17A、及び近距離照射用LEDパッケージ17Bにあっては、図6に示すように、傾斜面30の傾きθaの分だけ、照射方向Hが被照射面5の法線方向Jに対して被照射面5の左端側、及び右端側に傾けられる。これにより、例えばLEDパッケージ17を光源部13の底面に同一平面状に並べて照射方向Hが被照射面5の法線方向Jと一致するように正対配置した構成よりも、被照射面5の左右の遠距離まで広範囲に照射されることとなり、1灯で照射可能な被照射面5の横幅を拡張することができる。
遠距離照射用LEDパッケージ17A、及び近距離照射用LEDパッケージ17Bのそれぞれの放射光は、反射ユニット16で配光制御されるが、かかる構成については後述する。
【0024】
副台座部20は、被照射面5の正面を照射する正面照射用のLEDパッケージ17(以下、正面照射用LEDパッケージ17Cと言う)が取り付けられる部材である。
具体的には、副台座部20は、正面視矩形の横方向に平らなLED配置面32を有し、このLED配置面32が主台座部19の上側で当該主台座部19の稜線と交わる位置に配置されるように筐体10に設けられている。そして、これらLED配置面32には、高熱伝導性及び絶縁性を有する上記セラミック板31が貼着され、このセラミック板31上に上記の正面照射用LEDパッケージ17Cが配置されている。この副台座部20も主台座部19と同様に、中空ではなく筐体10と一体にアルミダイカストにより中実に成形されており、正面照射用LEDパッケージ17Cの発熱がセラミック板31を通じて副台座部20から筐体10に効率的に伝熱されるようになっている。
この正面照射用LEDパッケージ17Cは、図7に示すように、副台座部20のLED配置面32に配置されることで照射方向Hが被照射面5の法線方向Jに対して平行に配置され、被照射面5の正面に向けて光を照射する。また、この投光器1が被照射面5の左右の中央部Oに正対配置されることで、正面照射用LEDパッケージ17Cが被照射面5の中央部Oを主として照射することとなる。
【0025】
これら主台座部19の傾斜面30、及び副台座部20のLED配置面32は、図4(B)に示すように、被照射面5の上縁4U又は下縁4Dの側から遠距離照射用LEDパッケージ17A、近距離照射用LEDパッケージ17B、及び正面照射用LEDパッケージ17Cのそれぞれの光を被照射面5の高さ方向略中央に指向させて高さ方向の全域を照射可能にすべく、水平方向Sに対して所定の仰角θbで傾斜している。
【0026】
反射ユニット16は、例えば高反射特性を有するアルミニウム板から形成され、上記主台座部19、及び副台座部20を共に覆い、遠距離照射用LEDパッケージ17A、近距離照射用LEDパッケージ17B、及び正面照射用LEDパッケージ17Cのそれぞれの光の配光を制御することで、被照射面5の全域を照度ムラを抑えて照明する。
具体的には、反射ユニット16には、遠距離照射用LEDパッケージ17A、近距離照射用LEDパッケージ17B、及び正面照射用LEDパッケージ17Cに対応して、図2に示すように、遠距離用反射鏡40A、近距離用反射鏡40B、及び正面用反射鏡40Cが形成されている。これら遠距離用反射鏡40A、近距離用反射鏡40B、及び正面用反射鏡40Cのそれぞれは、図5〜図7に示すように、LEDパッケージ17の対向位置に発光部24の形状及びサイズに合せて形成された矩形開口41の四方に反射面42を配置して構成されている。
【0027】
遠距離用反射鏡40Aは、図6に示すように、サイン広告4の左端4L側又は右端4R側の遠距離エリアDaに遠距離照射用LEDパッケージ17Aの光を配光し、近距離用反射鏡40Bは、遠距離エリアDaから中央部Oに亘る近距離エリアDbに近距離照射用LEDパッケージ17Bの光を配光制御する。また正面用反射鏡40Cは、図7に示すように、中央部Oを含む後述する黄色過多エリアDcに正面照射用LEDパッケージ17Cの光を配光制御する。
このように、遠距離照射用LEDパッケージ17A、近距離照射用LEDパッケージ17B、及び正面照射用LEDパッケージ17Cに対応して、遠距離用反射鏡40A、近距離用反射鏡40B、及び正面用反射鏡40Cを設けることで、これら遠距離照射用LEDパッケージ17A、近距離照射用LEDパッケージ17B、及び正面照射用LEDパッケージ17Cごとに独立して配光を制御できるため、被照射面5の照度ムラを効果的に解消し均一な照明が実現できる。
特に、ランプを光源とした従来の投光器においては、被照射面5の四隅のうち投光器1が配置された側の両側の隅部で照度低下が顕著に見られるが、この投光器1によれば、遠距離用反射鏡40Aの配光制御により、かかる隅部に効果的に配光できるため、隅部での照度低下を防止できる。
【0028】
また、配光制御を反射型光学系である遠距離用反射鏡40A、近距離用反射鏡40B、及び正面用反射鏡40Cで行う構成としたため、例えばレンズ等の透過型光学系で配光制御する場合に比べて色収差に起因する照度ムラを抑えることができる。また、遠距離用反射鏡40A、近距離用反射鏡40B、及び正面用反射鏡40Cは、レンズ等の透過型光学系に比べ形状(反射面積や反射角度)を可変し易いため、配光を簡単かつ正確に制御し、横長な被照射面5の均一な照明が実現できる。
【0029】
次いで、上記黄色過多エリアDcについて説明する。
LEDパッケージ17の構成においては、光照射範囲の縁部で光が黄色に偏ることがある。さらに詳述すると、LEDパッケージ17は、上述の通り、LED23の青色光と封止体27の蛍光による黄色光の混色によって白色光を得ているため、LED23の発光色と封止体27の蛍光色のバランスが崩れ蛍光色成分が強くなると、混色によって得られる光が黄色に偏る。すなわち、図9に示すように、LED23から上記照射方向H(LED基板22の法線方向)に向かう光成分K1と、照射方向Hに対して斜め方向に向かう光成分K2との間で、封止体27を通過する際の経路長L1、L2を比較すると、斜め方向の光成分K2の経路長L2の方が長くなることから、光成分K2の方向では、光成分K1の方向に比べて封止体27の蛍光が強くなる。
LED23の照射方向Hに対する角度をαとし、LED23の発光色と封止体27の蛍光色のバランスが崩れて黄色に偏る閾値角度をαthとした場合、経路長Lは角度αが大きくなるほど長くなることから、180度≧閾値角度αthの範囲(以下、「蛍光色過剰範囲β」と言う)から放射された光は黄色に偏ることとなる。
【0030】
一方、光源ユニット14にあっては、図6に示すように、略三角形状に迫り出した主台座部19の両側の傾斜面30に遠距離照射用LEDパッケージ17A、及び近距離照射用LEDパッケージ17Bを配置して光源が構成されている。上述の通り、これら遠距離照射用LEDパッケージ17A、及び近距離照射用LEDパッケージ17Bにおいても、180度≧閾値角度αthの範囲である蛍光色過剰範囲βで光が黄色に偏るため、被照射面5に色ムラを生じさせる。特に、近距離エリアDbにあっては、投光器1からの距離が近いため、遠距離エリアDaに比べて蛍光色過剰範囲βの光に起因する色ムラが顕著に目立つ上記黄色過多エリアDcが生じてしまう。
そこで、この投光器1にあっては、正面照射用LEDパッケージ17Cの白色光を正面用反射鏡40Cによって、黄色過多エリアDcに配光することで、この黄色過多エリアDcの黄色を打ち消し色ムラを目立たなくしている。
【0031】
ところで、主台座部19の頂点(稜線)に平面部を形成するように断面視略台形に形成して、この平面部に上記の正面照射用LEDパッケージ17Cを配置し、両側の傾斜面に遠距離照射用LEDパッケージ17A、及び近距離照射用LEDパッケージ17Bする構成も考え得る。しかしながら、この構成にあっては、正面照射用LEDパッケージ17Cの分だけ、主台座部19が横方向に延びてしまい、筐体10が横方向に拡大する。このとき筐体10の横方向の拡大を抑制すると、遠距離用反射鏡40A、及び近距離用反射鏡40Bにおいて、反射鏡の底部に相当する矩形開口41から先端部の開口までの距離Q(図6参照)が制限されてしまうことから配光の制御角も制限されてしまう。特に、遠距離エリアDaに配光する遠距離用反射鏡40Aにおいては、遠距離エリアDaの隅部を含め均一に照射するために、大きな制御角を要するものの、配光の制御角も制限されることで、遠距離エリアDaの均一性が低下することとなる。
これに対して、主台座部19を三角形状に構成し、この主台座部19の稜線に交わる位置に正面照射用LEDパッケージ17Cを配置する構成としたため、遠距離用反射鏡40Aの制御角が制限されることがなく、遠距離エリアDaを隅部を含めて均一に照明することができる。
【0032】
また、反射ユニット16においては、遠距離用反射鏡40A、及び近距離用反射鏡40Bを構成する各反射面42のうち、図5に斜線で示した反射面42には、例えば艶消し等の表面の粗度を変える表面加工が施され、粗度の変化により反射率を他の反射面42よりも低くして光量が抑えられるように構成されている。この斜線で示した反射面42は、遠距離エリアDa、近距離エリアDb、及び黄色過多エリアDcにおいて、遠距離用反射鏡40A、近距離用反射鏡40B、及び正面用反射鏡40Cの配光が重なるエリアに光を配光するものである。かかる反射面42の正反射率を落とすことで、エリアの重なり個所での照度を抑えてハレーションを防止し、より均一な照度で被照射面5が照明されることとなる。
【0033】
図10は、グローブ15の正面、側面、前面及び背面を共に示す図である。
ランプを光源に備える従来の投光器にあっては、グローブの各所に偏曲点を設けた形状とすることで、ランプとの間に距離を取って当該ランプが発する熱から保護することが一般的である。しかしながら、グローブの偏曲点は光の集光作用を生じることから、各編曲点を経た光によって被照射面5に照度ムラが生じる、という問題がある。
これに対して、光源をLEDパッケージ17で構成した場合、グローブ15に与える熱的影響はランプよりも抑えられることから、当該グローブ15をLEDパッケージ17に近づけることができる。このため、光源ユニット14の光を透過する面内に偏曲点を設ける必要がない。
【0034】
すなわち、グローブ15にあっては、図10に示すように、少なくとも反射ユニット16の各LEDパッケージ17に対向して覆う領域(図中ハッチングで示す)たる透光面50が、点Xを頂点とした円錐の周面に一致するように形成されることで、この点Xからグローブ15の縁部51の各点に向かうそれぞれの線が直線的に傾斜することとなり、偏曲点が無く連続する湾曲面としての透光面50が形成される。これにより、透光面50を透過時に光が集光されることなく、照度ムラを低減し、均一な照明が可能になる。
なお、透光面50を構成する円錐の頂点たる点Xは、図4(B)に示すように、透光面50が光源ユニット14の各LEDパッケージ17の照射方向Hに略垂直な面となる位置に設定されている。これにより、LEDパッケージ17の光が透光面50を透過する際の反射を抑え、器具効率が高められる。
【0035】
図11は、高さ1m、横幅4mのサイン広告4を照明したときの照度分布を示す図であり、図11(A)は投光器1の照度分布、図11(B)は従来の投光器90の照度分布を示す。なお、従来の投光器90は、この寸法のサイン広告4の照明に一般的に使用されている照明器具であって光源に160Wのセルフバラスト水銀ランプを用いた器具であり、図11(B)の照度分布は、4台の投光器90を横方向に等間隔に配置したときの分布である。
【0036】
サイン広告4の平均照度は、従来の投光器90を用いた図11(B)では312[lx]であるのに対して、本実施形態の投光器1を用いた図11(A)では316[lx]が確保されており、この投光器1では、160Wのセルフバラスト水銀灯を4台設置したときと同等以上の明るさが確保されている。
すなわち、従来では、4台の投光器90を用いて照明していた高さ1m、横幅4mの横に長いサイン広告4の全域を、1台の投光器1でも十分な明るさで照明できるワイド(横長)配光が実現されていることが分かる。
また、複数のLEDパッケージ17で光源を構成した場合でも、各LEDパッケージ17の照射範囲の違いによる照度ムラが十分に抑えられていることが分かる。
なお、図11(A)に示す配光では、投光器1が配置された上縁側の左右両端部に照度の落ち込みがみられるが、これは、投光器本体3の首振り角度γがゼロ度だからであって、首振り角度γをゼロ度より大きくすることで、この左右両端部での照度が高められる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、遠距離用反射鏡40A及び近距離用反射鏡40Bで配光された光によって、横長な被照射面5の全域を照明することができる。特に、主台座部19のLEDパッケージ17ごとに配光を制御できるため、被照射面5の照度ムラを効果的に解消し均一に照射できる。また、ランプを光源とした従来の投光器においては、被照射面5の四隅のうち投光器1が配置された側の両側の隅部で照度低下が顕著に見られるが、この投光器1によれば、遠距離用反射鏡40Aの配光制御により、かかる隅部に効果的に配光できるため、隅部での照度低下を防止できる。
【0038】
また本実施形態によれば、主台座部19の傾斜面30に配置された一対の近距離照射用LEDパッケージ17Bから発光する黄色を打ち消す正面照射用LEDパッケージ17Cが、主台座部19の稜線と交わるLED配置面32に配置され、このLED配置面32に対応させて稜線方向に配光制御する正面用反射鏡40Cを配置する構成とした。
これにより、被照射面5の色ムラを効果的に抑えることができる。
【0039】
また本実施形態によれば、遠距離用反射鏡40Aを経た光と、近距離用反射鏡40Bを経た光が重なる部位の光量を抑えるように遠距離用反射鏡40A及び近距離用反射鏡40Bの反射面の粗度を変化させる構成とした。
これにより、光が重なる部位での照度を抑えてハレーションを防止し、被照射面5の照度ムラを防止できる。
【0040】
また本実施形態によれば、筐体10が各LEDパッケージ17を覆うグローブ15を備え、このグローブ15のうち、少なくともLEDパッケージ17に対向する部位たる透光面50を偏曲点なく連続する湾曲面として構成した。
これにより、透光面50を透過時に光が集光されることないため、被照射面5での照度ムラが低減し、均一な照明が可能になる。
【0041】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、主台座部19の形状は、被照射面5に向かって迫り出し、両側に傾斜面を有する形状であれば、上述の断面三角形状に限らない。
例えば、図12に示すように、遠距離照射用LEDパッケージ17Aを配置するための傾斜面130Aと、近距離照射用LEDパッケージ17Bを配置するための傾斜面130Bとを両側に段違いに備える形状の主台座部119を構成しても良い。
また例えば、図13に示すように、遠距離照射用LEDパッケージ17Aを配置するための傾斜面230Aに対して、近距離照射用LEDパッケージ17Bを配置するための傾斜面230Bの傾斜角を異ならせた形状の主台座部219を構成しても良い。特に、この主台座部219の構成において、近距離照射用LEDパッケージ17Bを配置するための傾斜面230Bの傾斜角θcを小さくすることで、近距離照射用LEDパッケージ17Bの蛍光色過剰範囲βの光が照射する個所が被照射面5の中央部Oよりも左右端側に移動し被照射面5までの距離が延びることから、被照射面5での色ムラを抑え目立たなくできる。
【0042】
また例えば、本発明の投光器は、被照射面5から離れた位置に配置され該被照射面5の全域を均一に照明する用途であれば、サイン広告4の照明に限らず、例えば、被照射面の全域を背後から照明するバックライトや建物壁面の投光照明といった用途にも応用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 投光器
3 投光器本体
5 被照射面
10 筐体
12 基部
13 光源部
14 光源ユニット(光源)
15 グローブ
16 反射ユニット
17 LEDパッケージ(LED)
17A 遠距離照射用LEDパッケージ
17B 近距離照射用LEDパッケージ
17C 正面照射用LEDパッケージ
19、119、219 主台座部(台座部)
20 副台座部
30、130A、130B、230A、230B 傾斜面
32 LED配置面
40A 遠距離用反射鏡
40B 近距離用反射鏡
40C 正面用反射鏡
41 矩形開口
42 反射面
50 透光面
Da 遠距離エリア
Db 近距離エリア
Dc 黄色過多エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に光源を有し、平面状の被照射面の上下いずれかの一側縁側に配置されて、前記光源により前記被照射面を照射する投光器において、
前記光源が複数個のLEDを備え、
前記筐体内に、前記被照射面側に迫り出した両側に傾斜面を有し前記傾斜面のそれぞれの先端側及び基端側にLEDを配置する台座部と、前記台座部の先端側のLEDおよび基端側のLEDのいずれか一方に対応させて配置され横方向の遠距離に配光する遠距離用反射鏡と、他方に対応させて配置され横方向の近距離に配光する近距離用反射鏡とを備えたことを特徴とする投光器。
【請求項2】
前記台座部の傾斜面に配置されたLEDが白色LEDであり、一対の白色LEDから発光する黄色を打ち消すLEDが、前記台座部の稜線と交わるLED配置面に配置され、この黄色を打ち消すLEDを配置したLED配置面に対応させて稜線方向に配光制御する反射鏡を配置したことを特徴とする請求項1に記載の投光器。
【請求項3】
遠距離用反射鏡を経た光と、近距離用反射鏡を経た光が重なる部位の光量を抑えるように前記遠距離用反射鏡及び前記近距離用反射鏡の反射面の粗度を変化させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の投光器。
【請求項4】
前記筐体が各LEDを覆うグローブを備え、前記グローブのうち、少なくともLEDに対向する部位が、偏曲点なく連続する湾曲面を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の投光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−54115(P2012−54115A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196180(P2010−196180)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】