説明

投射型アクティブマトリクス液晶表示装置及びその製造方法

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、画素電極毎に能動素子を配置した投射型アクティブマトリクス液晶表示装置及びその製造方法に関するものである。
[従来の技術]
液晶ディスプレイは、近年その低消費電力、低電圧駆動等の特長を生かしてパーソナルワードプロセッサー、ハンドヘルドコンピューター、ポケットTV等に広く利用されている。中でも注目され、盛んに開発されているので、画素電極毎に能動素子を配置したアクティブマトリクス液晶表示装置である。
液晶ディスプレイに用いられる液晶表示素子として、当初は、DSM(動的散乱)型の液晶を用いた液晶表示素子も提案されていたが、DSM型では液晶中を流れる電流値が高いため、消費電流が大きいという欠点があり、現在ではTN(ツイストネマチック)型液晶を用いるものが主流となっており、ポケットTVとして市場に現われている。TN型液晶では、漏れ電流は極めて小さく、消費電力が少ないので、電池を電源とする用途には適している。
[発明の解決しようとする課題]
アクティブマトリクス液晶表示装置をDSモードで使用する場合には、液晶自身の漏れ電流が大きい、このため、各画素と並列に大きな蓄積容量を設けなくてはならなく、かつ、液晶表示素子自体の消費電力が大きくなるという問題点を有していた。
TNモードにおいては、液晶自身の漏れ電流は極めて小さいので、大きな蓄積容量を付加する必要はないし、液晶表示素子自体の消費電力は小さくできる。
しかし、TNモードでは、2枚の偏光板を必要とするので、光の透過率が小さいという問題点を有している。特に、カラーフィルターを用いてカラー表示を行う場合には、入射する光の数%しか利用できないこととなり、強い光源を必要とし、そのため結果として消費電力を増加させてしまう。
また、画像の投影を行う際には極めて強い光源を必要とし、投影スクリーン上で高いコントラストが得られにくいことや、光源の発熱による液晶表示素子への影響という問題点を有している。
[問題点を解決するための手段]
本発明は、前述の課題を解決すべくなされたものであり、画素電極毎に能動素子を設けたアクティブマトリクス基板と、対向電極を設けた対向電極基板との間に液晶樹脂複合体が保持された液晶表示素子と、投射用光源と、投射光学系とが備えられた投射型アクティブマトリクス液晶表示装置であって、光硬化性ビニル系化合物と液晶と光硬化開始剤とが含まれ、均一に溶解された溶液が、対向電極とアクティブマトリクス基板とシールとが備えられたセル内に注入され、アクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に置かれた溶液に光照射が行われ、光硬化性ビニル系化合物が硬化せしめられて液晶樹脂複合体が形成され、この液晶樹脂複合体の樹脂の屈折率が、使用する液晶の常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)または液晶がランダムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するようにされ、液晶により樹脂が膨潤され、かつ、液晶樹脂複合体の比抵抗が5×109Ωcm以上とされ、駆動電圧が画素電極と対向電極との間に印加され、動画の階調表示が行われることを特徴とする投射型アクティブマトリクス液晶表示装置、及び、画素電極毎に能動素子を設けたアクティブマトリクス基板と、対向電極を設けた対向電極基板との間に液晶樹脂複合体が保持された液晶表示素子と、投射用光源と、投射光学系とが備えられた投射型アクティブマトリクス液晶表示装置の製造方法であって、光硬化性ビニル系化合物と液晶と光硬化開始剤とが含まれ、均一に溶解された溶液が、対向電極とアクティブマトリクス基板とシールとが備えられたセル内に注入され、アクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に置かれた溶液に光照射が行われ、光硬化性ビニル系化合物が硬化せしめられて液晶樹脂複合体が形成され、この液晶樹脂複合体の樹脂の屈折率が、使用する液晶の常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)または液晶がランダムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するようにされ、液晶により樹脂が膨潤され、かつ、液晶樹脂複合体の比抵抗が5×109Ωcm以上とされ、駆動電圧が画素電極と対向電極との間に印加され、動画の階調表示が行われることを特徴とする投射型アクティブマトリクス液晶表示装置の製造方法を提供するものである。
本発明の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置では、アクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に挟持される液晶材料として、電気的に散乱状態と透過状態とを制御しうる液晶樹脂複合体を用いているため、偏光板が不要であり、透過時の光の透過率を大幅に向上できる。このため、明るくコントラストの良い投射型表示が得られる。
また、TN型液晶表示素子に必須の配向処理や発生する静電気による能動素子の破壊といった問題点を避けられるので、液晶表示素子の製造歩留りを大幅に向上させることができる。
さらに、この液晶樹脂複合体は、硬化後はフィルム状になっているので、基板の加圧による基板間短絡やスペーサーの移動による能動素子の破壊といった問題点も生じにくい。
また、この液晶樹脂複合体は、比抵抗が従来のTNモードの場合と同等であり、DSモードのように大きな蓄積容量を画素電極毎に設けなくてもよく、能動素子の設計が容易で、かつ、液晶表示素子の消費電力を少なく保つことができる。従って、TNモードの従来の液晶表示素子の製造工程から、配向膜形成工程を除くだけで製造が可能になるので、生産が容易である。
液晶樹脂複合体の比抵抗としては、5×109Ωcm以上とする。さらに、漏れ電流等による電圧降下を最小限にするために、1010Ωcm以上が好ましく、この場合には大きな蓄積容量を画素電極毎に付与する必要がない。
画素電極に設けられる能動素子としては、トランジスタ、ダイオード、非線形抵抗素子等があり、必要に応じて1つの画素に2以上の能動素子が配置されていてもよい。このような能動素子とこれに接続された画素電極とを設けたアクティブマトリクス基板と、対向電極を設けた対向電極基板との間に上記液晶樹脂複合体を挟んで液晶表示素子とする。
投射用光源、投射光学系は従来から公知の投射用光源、レンズ等の投射光学系が使用でき、通常は上記液晶表示素子を投射用光源と投射レンズとの間に配置して用いればよい。
これにより、本発明では、液晶表示素子として透過−散乱型の液晶樹脂複合体を挟持した液晶表示素子を用いているため、明るく、高いコントラストが容易に得られるという特長を有している。
本発明の液晶表示素子は、電気的に散乱状態と透過状態とを制御しうる液晶樹脂複合体を挟持したものであれば使用できる。
具体的には、本発明では、液晶表示素子として細かな孔の多数開いた樹脂マトリクスとその孔の部分に充填された液晶とからなる液晶樹脂複合体をアクティブマトリクス基板と、対向電極基板との間に挟持し、その電極間への電圧の印加状態により、その液晶の屈折率が変化し、樹脂マトリクスの屈折率と液晶の屈折率との関係が変化し、両者の屈折率が一致した時には透過状態となり、屈折率が異なった時には散乱状態となるような液晶表示素子が使用できる。
この細かな孔の多数開いた樹脂マトリクスとその孔の部分に充填された液晶とからなる液晶樹脂複合体は、多孔質の連通孔を有する樹脂マトリクスに液晶を含浸したような構造であってもよいし、マイクロカプセルのような独立液泡内に液晶が封じ込められた構造をしていてもよい。
このような液晶樹脂複合体を使用した液晶表示素子の応答時間は、電圧印加の立ち上がりが1〜20msec程度、電圧除去の立ち下がり3〜30msec程度であり、従来のTNモードの液晶表示素子よりも速い。
また、その電圧−透過率の電気光学特性は、従来のTNモードの液晶表示素子よりも比較的なだらかであり、階調表示のための駆動も容易である。
なお、この液晶樹脂複合体を使用した液晶表示素子の透過状態での透過率は高いどよく、散乱状態でのヘイズ値は80%以上であることが好ましい。
具体的には、電圧を印加していない状態又は印加している状態のいずれか一方で、樹脂マトリクスを構成するところの硬化させられた樹脂の硬化物の屈折率が、使用する液晶の常光屈折率(no)、異常屈折率(ne)または液晶がランダムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するようにされる。
これにより、得られた硬化物の屈折率と液晶の屈折率とが一致した時に光が透過し、一致しない時に光が散乱(白濁)することになる。この素子の散乱性は、従来のDSモードの液晶表示素子の場合よりも高いので、投射した場合にはコントラストが高く見える。
得られる樹脂の硬化物の屈折率を、使用する液晶の屈折率のnoまたはneと一致させておくことにより、電圧が印加されていない場合は、配列していない液晶と、樹脂の硬化物の屈折率の違いにより、散乱状態(つまり白濁状態)を示す。このため、本発明のように投射型表示装置として用いる場合には、電極のない部分は光が散乱され、スクリーンに到達しないため、黒く見える。このことにより、画素電極以外の部分からの光の漏れを防止するために、画素電極以外の部分を遮光膜等で遮光する必要がないこととなり、遮光膜の形成工程が不要となるという利点も有する。
この場合、液晶として誘導異方性が正のネマチック液晶を用い、その樹脂マトリクスの屈折率が、使用する液晶の常光屈折率(no)と一致するようにされることが最も高性能の素子が得られるため好ましい。
これに電圧を印加した場合には、液晶が配列し、液晶の屈折率(noあるいはne)と硬化により得られた硬化物の屈折率とが一致することにより透過状態を示すことになり、所望の画素で光が透過することとなり、スクリーンに明るく表示される。
この素子に、この硬化工程の際に特定の部分のみに充分に高い電圧を印加した状態で硬化させることにより、その部分を常に光透過状態とすることができるので、固定表示したいものがある場合には、そのような常透過部分を形成してもよい。
このためには、未硬化の化合物と液晶とを混合して、これを硬化させて製造すればよい。具体的には、未硬化の化合物と液晶との混合溶液から硬化させられればよい。
具体的には、未硬化の化合物として光硬化性化合物を用い、これを液晶に溶解した溶液を用いて、光硬化することにより本発明の素子を容易に得ることができる。本発明では、特に、光硬化性化合物の内、光硬化性ビニル系化合物を用いるので、耐久性の良い液晶樹脂複合体が容易に製造できる。
また、本発明で用いる液晶表示素子は、硬化させられた硬化物の屈折率が、使用する液晶がランダムに配向した場合の屈折率(nx)と一致するようにされることもできる。ここでいうランダムに配向するとは、全ての液晶分子が基板面に対して平行又は垂直に配列しているのでなく、硬化物の樹脂マトリクスを構成する網目もしくはカプセルの影響により種々の方向を向いていることを表わす。
この場合には、電圧が印加されていない場合は、配列していない(ランダムに配向)液晶と、硬化物である樹脂の屈折率が一致しているために、透過状態を示し、スクリーンには明るく表示されることとなる。
逆に、電圧を印加した場合には、液晶が配列し、液晶の屈折率(noあるいはne)と樹脂マトリクスとの屈折率とが一致しなくなり、散乱状態(つまり白濁状態)を示すこととなり、スクリーンには黒く表示される。
これにより電圧を印加しない状態で明るく表示される素子が得られるが、光硬化により得られた硬化物が網目状もしくはカプセル状に存在し、液晶がこの硬化物である樹脂の影響を受けランダムに配向しているのと同様の状況にあるため、均一な状態とすることが難しという問題点がある。
これは、前述のように垂直または水平に配向された場合には、均一に配向させやすいが、ランダムに配向させるのは、マクロ的にみればランダムであっても、部分的にみれば配向状態が微妙に異なり、屈折率の差を生じ、これがムラとなって見え易いためである。
このタイプの素子は、この硬化工程の際に特定の部分のみにしきい値電圧以上の電圧を印加した状態で硬化させることにより、その部分が常光散乱部分となり、スクリーンに黒く表示されることになる。このため、画素電極以外の部分をこのような処理をして硬化させることにより、画素電極以外の部分に遮光膜を形成したと同様の効果を得ることができる。
なお、本発明ではこの硬化物である樹脂の屈折率と、使用する液晶の屈折率(no、ne、nxのいずれか)とを一致させた液晶樹脂複合体を挟持した液晶表示素子を用いるものであり、その屈折率は完全に一致させることが好ましいものであるが、透過状態に悪影響を与えない程度に、ほぼ一致するようにしておけば使用可能である。具体的には、屈折率の差を0.15程度以下にしておくことが好ましい。これは、液晶により樹脂マトリクスを構成している硬化物である樹脂が膨潤して、硬化物が本来持っていた屈折率よりも液晶の屈折率に近づくため、この程度の差があっても、光はほぼ透過するようになるためである。
また、本発明の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置は、カラーフィルターを設けることによりカラー表示を行うことができる。このカラーフィルターは、1個の液晶表示素子に3色設けてもよいし、1個の液晶表示素子に1色設けてもこれを3個組み合わせてもよい。このカラーフィルターは、基板の電極面側に設けてもよいし、外側に設けてもよい。
また、液晶樹脂複合体中に染料、顔料等を混入しておくことにより、カラー表示を行うようにしてもよい。
第1図は、本発明の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置の断面図である。
第1図において、1は液晶表示素子、2は投射用光源、3は投射光学系、4は投射するスクリーン、5はアクティブマトリクス基板用のガラス、プラスチック等の基板、6はITO(In23-SnO2)、SnO2等の画素電極、7はトランジスタ、ダイオード、非線形抵抗素子等の能動素子、8は対向電極基板用のガラス、プラスチック等の基板、9はITO、SnO2等の対向電極を示しており、これらアクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に液晶樹脂複合体10が挟持された構造を有している。
この能動素子としてTFT(薄膜トランジスタ)等の3端子素子を使用する場合、対向電極基板は全画素共通のベタ電極を設ければよいが、MIM素子、PINダイオード等の2端子素子を用いる場合には、対向電極基板はストライプ状のパターニングをされる。
また、能動素子として、TFTを用いる場合には、半導体材料としてはシリコンが好適であり、特に多結晶シリコンを使用することが好ましい。
また、電極は通常は透明電極とされるが、反射型の投射型液晶表示装置として使用する場合には、クロム、アルミニウム等の反射電極としてもよい。
本発明の液晶表示装置は、このほか赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター等を積層したり、文字、図形等を印刷したりしてもよいし、複数枚の液晶表示素子を用いたりするようにしてもよい。
さらに、本発明では、この液晶表示素子の外側にガラス板、プラスチック板等の保護板を積層してもよい。これにより、その表面を加圧しても、破損する危険性が低くなり、安全性が向上する。
本発明では、前述の液晶樹脂複合体を構成する未硬化の化合物として光硬化性ビニル系化合物を使用する。
具体的には、光硬化性アクリル系化合物が例示され、特に、光照射によって重合硬化するアクリルオリゴマーを含有するものが好ましい。
本発明で使用される液晶は、ネマチック液晶であり、単独で用いても組成物を用いてもよいが、動作温度範囲、動作電圧など種々の要求性能を満たすには組成物を用いた方が有利といえる。特に、正の誘導異方性を有するネマチック液晶と樹脂マトリクスの屈折率がその液晶の常光屈折率(no)と一致するような樹脂マトリクスとの組み合わせが好適である。
また、液晶樹脂複合体に使用される液晶は、光硬化性化合物を用いた場合には、光硬化性化合物を均一に溶解せしめて用いる。光露光後の硬化物は溶解しない、もしくは溶解困難なものとされ、組成物を用いる場合は、個々の液晶の溶解度ができるだけ近いものが望ましい。
液晶樹脂複合体を製造する際、光硬化性化合物と液晶とは5:95〜75:25程度の混合物とすればよく、液状で用いる。
液晶樹脂複合体を製造する場合、従来の通常の液晶表示素子のようにアクティブマトリクス基板と対向電極基板とを電極面が対向するように配置して、周辺をシール材でシールして、注入口から未硬化の液晶樹脂複合体用の混合液を注入して、注入口を封止して製造する。
基板間ギャップは、印加電圧、オン・オフ時のコントラストを配慮すれば、液晶樹脂複合体の場合には4〜40μmの範囲のなかで、能動素子により駆動可能で、かつ所望の表示を得られるように設定する。
本発明の液晶表示素子は、液晶中に2色性色素や単なる色素、顔料を添加したり、硬化性化合物として着色したものを使用したりしてもよい。
本発明では、液晶樹脂複合体として液晶を溶媒として使用し、光露光により光硬化性化合物が硬化させることにより、硬化時に不要となる単なる溶媒や水を蒸発させる必要がない。このため、密閉系で硬化できるため、従来のセルへの注入という製造法がそのまま採用でき、信頼性が高く、かつ、硬化物である樹脂が2枚の基板を接着する効果も有するため、より信頼性が高くなる。
このように液晶樹脂複合体とすることにより、上下の透明電極が短絡する危険性が低く、かつ、通常のツイストネマチック型の表示素子のように配向や基板間隙を厳密に制御する必要もなく、透過状態と散乱状態とを制御しうる液晶表示素子を極めて生産性良く製造できる。
この液晶表示素子は、基板がプラスチックや薄いガラスの場合にはさらに保護のために、外側にプラスチックやガラス等の保護板を積層することが好ましい。
本発明で用いる液晶表示素子は、駆動のために電圧を印加する時には、液晶が配列が変化するような交流電圧を印加すればよい。具体的には、能動素子で駆動し10〜1000Hz程度の交流電圧を印加すればよい。
[作用]
本発明によれば、液晶表示素子が透過状態の部分では光が透過し、スクリーンが明るく表示され、散乱状態の部分では光が散乱され、スクリーンは暗く表示され、これにより所望の表示が得られる。
[実施例]
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
実施例1 ガラス基板(コーニング社製7059基板)上にクロムを60nm蒸着して、パターニングしてゲート電極とした。引き続きシリコンオキシナイトライド膜と非晶質シリコン膜をプラズマCVD装置で堆積した。これをレーザーを用いてアニールした後、パターニングして多結晶シリコンとした。これにリンドープ非晶質シリコン、クロムを夫々プラズマCVD、蒸着装置を用いて堆積し、多結晶シリコンを覆うようにパターニングして、第1層目のソース電極、ドレイン電極とした。
さらに、ITOを蒸着した後、パターニングして画素電極を形成した。続いて、クロム、アルミニウムを連続蒸着して、画素電極と第1層目のソース電極、ドレイン電極を接続するようにパターニングして、第2層目のソース電極、ドレイン電極とした。この後、再び、シリコンオキシナイトライド膜をプラズマCVD装置で堆積し保護膜とし、アクティブマトリクス基板を作成した。
全面にベタのITO電極を形成した同じガラス基板による対向電極基板と、前に製造したアクティブマトリクス基板とを電極面が対向するように配置して、注入口を除き周辺を、エポキシ系のシール材でシールして空セルを製造した。
2−エチルヘキシルアクリレート7部及び2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリルオリゴマー(東亜合成化学(株)製「M−1200」、粘度300,000cps/50℃)24部、光硬化開始剤としてメルク社製「ダロキュアー1116」0.9部と液晶としてBDH社製「E−8」64部とを均一に溶解いた。次いで、14μmのスペーサーを加えて分散させて、液晶・光硬化性化合物の混合液を製造した。
この混合物を、上記方法により製造した空セルに注入口から注入し、注入口を封止した。
上記の混合液が置かれたこのセルに紫外線を30秒間照射し、光硬化性化合物を硬化させ、液晶樹脂複合体を備えた液晶表示素子を作成した。
この液晶表示素子は、電圧を印加しない状態で散乱状態であり、電圧印加した状態で透過状態になった。
この液晶表示素子の表示をOHPを用いてスクリーンに投射したところコントラスト比が約100であった。この駆動電圧はAC5Vであった。
比較例1 実施例1の液晶樹脂複合体の代りに、ネマチック液晶を注入し、TN型液晶表示素子とし、これを備えたアクティブマトリクス液晶表示素子を製造した。
この液晶表示素子の表示をOHPを用いてスクリーンに投射し、投射型アクティブマトリクス液晶表示装置を構成したところコントラスト比が約10であった。
[発明の効果]
本発明の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置では、アクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に挟持される液晶材料として、電気的に散乱状態と透過状態とを制御しうる液晶樹脂複合体を挟持した液晶表示素子を用いているため、偏光板が不要であり、透過時の光の透過率を大幅に向上できる。このため、明るくコントラストの良い投射型表示が得られる。また、光源も大型化できる。
また、偏光板を用いなくてもよいため、光学特性の波長依存性が少なく、光源の色補正等がほとんど不要になるという利点も有している。
また、TN型液晶表示素子に必須のラビング等の配向処理やそれに伴う静電気の発生による能動素子の破壊といった問題点を避けられるので、液晶表示素子の製造歩留りを大幅に向上させることができる。
さらに、この液晶樹脂複合体は、硬化後はフィルム状になっているので、基板の加圧による基板間短絡やスペーサーの移動による能動素子の破壊といった問題点も生じにくい。
また、この液晶樹脂複合体は、比抵抗が従来のTNモードの場合と同等であり、従来のDSモードのように大きな蓄積容量を画素電極毎に設けなくてもよく、能動素子の設計が容易で、有効画素電極面積の割合を大きくしやすく、かつ、液晶表示素子の消費電力を少なく保つことができる。
さらに、TNモードの従来の液晶表示素子の製造工程から、配向膜形成工程を除くだけで製造が可能になるので、生産が容易である。
また、この液晶樹脂複合体を用いた液晶表示素子は、応答時間が短いという特長も有しており、動画の表示を行うことも容易である。さらに、この液晶表示素子の電気光学特性(電圧−透過率)は、TNモードの液晶表示素子に比して比較的なだらかな特性であるので、本発明では投射型アクティブマトリクス液晶表示装置に組み込んで、階調表示を行うものである。
本発明は、この外、本発明の効果を損しない範囲内で種々の応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置の基本的な構成を示す断面図である。
液晶表示素子:1
投射用光源:2
投射光学系:3
スクリーン:4
基板:5、8
画素電極:6
能動素子:7
対向電極:9
液晶樹脂複合体:10

【特許請求の範囲】
【請求項1】画素電極毎に能動素子を設けたアクティブマトリクス基板と、対向電極を設けた対向電極基板との間に液晶樹脂複合体が保持された液晶表示素子と、投射用光源と、投射光学系とが備えられた投射型アクティブマトリクス液晶表示装置であって、光硬化性ビニル系化合物と液晶と光硬化開始剤とが含まれ、均一に溶解された溶液が、対向電極とアクティブマトリクス基板とシールとが備えられたセル内に注入され、アクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に置かれた溶液に光照射が行われ、光硬化性ビニル系化合物が硬化せしめられて液晶樹脂複合体が形成され、この液晶樹脂複合体の樹脂の屈折率が、使用する液晶の常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)または液晶がランダムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するようにされ、液晶により樹脂が膨潤され、かつ、液晶樹脂複合体の比抵抗が5×109Ωcm以上とされ、駆動電圧が画素電極と対向電極との間に印加され、動画の階調表示が行われることを特徴とする投射型アクティブマトリクス液晶表示装置。
【請求項2】液晶樹脂複合体の液晶として誘電異方性が正のネマチック液晶を用い、その樹脂マトリクスの屈折率が、使用する液晶の常光屈折率(no)と一致するようにされたことを特徴とする請求項1記載の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置。
【請求項3】基板間ギャップが14μmとされ、駆動電圧がAC5Vとされたことを特徴とする請求項1または2記載の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置。
【請求項4】反射型の電極が備えらえたことを特徴とする請求項1、2または3記載の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置。
【請求項5】能動素子として多結晶シリコンTFTが用いられたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置。
【請求項6】光硬化性ビニル系化合物として光硬化性アクリル系化合物が用いられたことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の投射型アクティブマトリクス液晶表示装置。
【請求項7】画素電極毎に能動素子を設けたアクティブマトリクス基板と、対向電極を設けた対向電極基板との間に液晶樹脂複合体が保持された液晶表示素子と、投射用光源と、投射光学系とが備えられた投射型アクティブマトリクス液晶表示装置の製造方法であって、光硬化性ビニル系化合物と液晶と光硬化開始剤とが含まれ、均一に溶解された溶液が、対向電極とアクティブマトリクス基板とシールとが備えられたセル内に注入され、アクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に置かれた溶液に光照射が行われ、光硬化性ビニル系化合物が硬化せしめられて液晶樹脂複合体が形成され、この液晶樹脂複合体の樹脂の屈折率が、使用する液晶の常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)または液晶がランダムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するようにされ、液晶により樹脂が膨潤され、かつ、液晶樹脂複合体の比抵抗が5×109Ωcm以上とされ、駆動電圧が画素電極と対向電極との間に印加され、動画の階調表示が行われることを特徴とする投射型アクティブマトリクス液晶表示装置の製造方法。

【第1図】
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【特許番号】第2775769号
【登録日】平成10年(1998)5月1日
【発行日】平成10年(1998)7月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−249020
【出願日】昭和63年(1988)10月4日
【公開番号】特開平2−96714
【公開日】平成2年(1990)4月9日
【審査請求日】平成5年(1993)6月21日
【出願人】(999999999)旭硝子株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭61−196229(JP,A)
【文献】特開 昭62−28712(JP,A)
【文献】特開 昭63−137211(JP,A)
【文献】特表 昭63−501512(JP,A)
【文献】実表 昭61−502286(JP,U)