説明

投射型画像表示装置

【課題】ランプの点灯成功確立・寿命の増加及び高圧パルスノイズの削減を可能にした投射型画像表示装置を提供する。
【解決手段】光源ランプ13と、光源ランプ13の点灯を制御する光源ランプ点灯制御回路部14と、投射画像を形成する投射画像形成部17と、光源ランプ13を冷却するための冷却部15と、装置の電源ON・OFF等の操作を行う操作部18と、電力を供給する電源部10と、コンデンサを有しAC電源遮断時でも各部に電力を供給できる副電源部11と、マイクロプロセッサと不揮発性メモリを有し各部の制御を行う制御部12、光源ランプ点灯状態検出部と、AC電源の接続と遮断を検出するAC電源接続検出部と、副電源部のコンデンサの電圧値を検出するコンデンサ電圧検出部と、光源ランプ13の冷却時間を検出する光源ランプ冷却時間検出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型画像表示装置に関し、特に光源ランプの点灯フローや冷却方法の改善によって、光源ランプの点灯成功確率・寿命の増加及び高圧パルスノイズ削減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置では光源ランプ(以下ランプ)として、主に高圧水銀灯などの高圧放電灯を使用している。この高圧放電灯は始動時に高圧放電灯の電極に高圧パルスを印加して、電極間の絶縁破壊を行う必要がある。しかしながら高圧放電灯はある温度以上であると、高圧パルスを高圧放電灯の電極に印加しても電極間の絶縁破壊に失敗する場合がある。
【0003】
このため、従来の投射型画像表示装置では高圧放電灯がある温度以上である場合、長時間高圧パルスを印加することになり、高圧放電灯の劣化と投射型表示装置内に高圧パルスノイズが発生する時間が増加する問題があった。
【0004】
上記を鑑みて、特許文献1ではランプ点灯中にAC電源が遮断された後AC電源を再接続する時に、AC電源遮断中に起動する副電源によってAC電源遮断中のランプ冷却時間のカウントを行い、AC電源遮断中のランプ冷却時間を基にランプの温度を算出しランプ点灯前のランプ冷却時間をコントロールする手段、または温度センサをランプ付近に設置しランプが規定温度になるまでランプを点灯させない手段が開示されている。

また特許文献2では、ランプ点灯中にAC電源が遮断されたら異常終了と判断し、不揮発メモリに異常終了されたことを記録し、次回ランプ点灯時はランプ点灯前に一定時間ランプの冷却を行う手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-5287号公報
【特許文献2】特開2006-32111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、AC電源遮断中にAC電源遮断中のランプ冷却時間をカウントしなければならないので、その分AC電源遮断中の副電源の負荷が増加してしまい、限りある副電源の電力容量を逼迫させてしまう。また温度センサを設置することによってコストが増加してしまう。
【0007】
また特許文献2では、ランプの温度を検出する手段がないため異常終了された後のランプ点灯時にランプの温度に関わらず一定時間ランプを冷却するので投射型画像表示装置の起動時間が無駄に増加してしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、低コストでかつ副電源の負荷を抑え、またランプ始動時間を最小限に抑えたまま、ランプの点灯成功確率・寿命の増加及び高圧パルスノイズの削減を可能にした投射型画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の投射型画像表示装置は、
光源ランプと、
光源ランプの点灯を制御する光源ランプ点灯制御回路部と、
光源ランプの光を利用して投射画像を形成する投射画像形成部と、
光源ランプを冷却するための冷却部と、
装置の電源ON・OFF等の操作を行う操作部と、
AC電源から電力を変換し各部に変換された電力を供給する電源部と、
コンデンサを有しAC電源接続中に電源部から供給された電力を前記コンデンサに蓄えてAC電源遮断時でも各部に電力を供給できる副電源部と、
マイクロプロセッサと不揮発性メモリを有し各部の制御を行う制御部、
光源ランプの点灯状態を検出する光源ランプ点灯状態検出部と、
AC電源の接続と遮断を検出するAC電源接続検出部と、
副電源部のコンデンサの電圧値を検出するコンデンサ電圧検出部と、
光源ランプの冷却時間を検出する光源ランプ冷却時間検出部と、
を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、以下の効果が得られる。ランプ点灯時にAC電源が遮断された場合、AC電源接続検出部がAC電源遮断を検出する。制御部によって装置が異常終了されたという情報を不揮発性メモリに記録し、冷却部への電力供給を電源部から副電源部に切り替えてランプを冷却する。再びAC電源が接続され、操作部よりランプ点灯操作を行った時に、制御部は不揮発性メモリに前回の終了状態が異常終了であった事が記録されていた場合、副電源部のコンデンサの残電圧をコンデンサ電圧検出部によって検出する。コンデンサの残電圧によって制御部はランプの冷却状態を判断し、ランプ点灯前のランプ冷却時間を決定することによって、ランプの点灯成功確率を上げる事が可能である。
【0011】
また請求項1記載の発明によれば、以下の効果も得られる。ランプ消灯後のランプ冷却中にAC電源が遮断された場合、AC電源接続検出部がAC電源遮断を検出する。制御部によって装置が異常終了されたという情報とランプ冷却時間検出部によって検出されたランプ消灯後のランプ冷却時間を不揮発性メモリに記録し、冷却部への電力供給を電源部から副電源部に切り替えてランプを冷却する。再びAC電源が接続され、操作部よりランプ点灯操作を行った時に、制御部は不揮発性メモリに前回の終了状態が異常終了であった事が記録されていた場合、副電源部のコンデンサの残電圧をコンデンサ電圧検出部によって検出する。コンデンサの残電圧と前回終了時のランプ消灯後のランプ冷却時間によって制御部はランプの冷却状態を判断して、ランプ点灯前のランプ冷却時間を決定することによって、ランプの点灯成功確率・寿命の増加及び高圧パルスノイズの削減を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プロジェクタの構成
【図2】AC電源遮断時の制御フロー
【図3】AC電源接続からランプ点灯までの制御フロー
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
[実施例1]
図1は,本発明の一実施例に係るプロジェクタ(投射型画像表示装置)の構成を示している。図1において、プロジェクタ1は以下の機能を備えている。AC電源から電力を変換し各部に変換された電力を供給する電源部10。コンデンサを有しAC電源接続中に電源部10から供給された電力を前記コンデンサに蓄えてAC電源遮断時でも各部に電力を供給できる副電源部11。マイクロプロセッサと不揮発性メモリを有し各部の制御を行う制御部12。光源としてのランプ13。ランプ13の点灯を制御するランプ点灯制御回路部14。ランプ13を冷却するための冷却部15。ランプの点灯状態を検出するランプ点灯状態検出部と、AC電源の接続と遮断を検出するAC電源接続検出部と、副電源部11のコンデンサの電圧値を検出するコンデンサ電圧検出部と、ランプ13の冷却時間を検出するランプ冷却時間検出部を有する検出部16。ランプの光を利用して投射画像を形成する投射画像形成部17。装置の電源ON・OFF等の操作を行う操作部18。
【0015】
このプロジェクタ1のAC電源遮断時の制御フローを図2、AC電源接続からランプ13点灯までの制御フローを図3に示す。
【0016】
図2において、初めにステップ101では、制御部12が検出部16のAC電源接続検出部によってAC電源の接続・遮断を検出し、AC電源が遮断と検出されたら、ステップ102に移行する。
【0017】
ステップ102では、制御部12はプロジェクタ1がスタンバイ状態であればステップ106に移行し、スタンバイ状態でなければステップ103に移行する。
【0018】
ステップ103では、制御部12は検出部16のランプ冷却時間検出部によって検出されたランプ消灯後のランプ冷却時間を制御部12の不揮発性メモリに保存し、ステップ104に移行する。(ランプ13が点灯中にAC電源が遮断されたらランプ消灯後のランプ冷却時間は0となる。)。
【0019】
ステップ104では、制御部12はプロジェクタ1が異常終了のフラグを制御部12の不揮発性メモリに保存し、ステップ105に移行する。
【0020】
ステップ105では、制御部12は冷却部15への給電を電源部10から副電源部11に切り変え、冷却部15は副電源部11からの給電でランプ13の冷却を行いステップ106に移行する。
【0021】
ステップ106では、制御部12はプロジェクタ1のその他の終了処理を行う。
【0022】
以上のように図2の制御フローでは、ランプ13点灯中もしくはランプ13消灯後のランプ13冷却中にAC電源遮断されたときに、ランプ消灯後のランプ冷却時間と異常終了のフラグを制御部12の不揮発性メモリに保存することを特徴としている。また、この時AC電源遮断中のランプ13の冷却は副電源部11からの給電によって行われる。
【0023】
次に図3において、初めにステップ201では、制御部12はAC電源が接続された時に、冷却部15が副電源部11からの給電によって動作していた場合、引き続き動作を継続させる。
【0024】
ステップ202では、制御部12は操作部18によってプロジェクタ1の起動ボタンが押下されていたらステップ203へ、押下されていなければステップ201へ移行する。
【0025】
ステップ203では、制御部12は自身の不揮発性メモリに異常終了フラグが保存されていたらステップ204へ、保存されていなければステップ206へ移行する。
【0026】
ステップ204では、制御部12は検出部16のコンデンサ電圧検出部より副電源部11のコンデンサの残電圧を検出しステップ205に移行する。
【0027】
ステップ205では、制御部12は図2のステップ103において自身の不揮発性メモリに保存されたランプ消灯後のランプ冷却時間とステップ204によって検出された副電源部11のコンデンサの残電圧を基にランプ13の冷却状態を判断し、ランプ点灯前ランプ冷却時間を算出・設定しステップ207に移行する。
【0028】
ステップ206では、制御部12はランプ点灯前ランプ冷却時間を0に設定しステップ207に移行する。
【0029】
ステップ207では、制御部12は主電源部10から冷却部15へ給電を行い、冷却部15を起動させる。また、冷却部15の起動と同時にステップ205・206で設定されたランプ13の点灯前ランプ冷却時間のカウントを開始し、ステップ208へ移行する。
【0030】
ステップ208では、制御部12はステップ205・206で設定されたランプ点灯前ランプ冷却時間のカウントが終了したらステップ209へ移行する。
【0031】
ステップ209では、制御部12はランプ点灯制御回路部14にランプ点灯信号を送信し、ランプ13の点灯を行う。
【0032】
以上のように、図2、図3の制御フローを行うことによってランプ13が十分に冷却されてからランプ13の点灯を行うので、ランプの点灯成功確率・寿命の増加及び高圧パルスノイズの削減を可能にできる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 プロジェクタ
10 電源部
11 副電源部
12 制御部
13 ランプ
14 ランプ点灯制御回路部
15 冷却部
16 検出部
17 投射画像形成部
18 操作部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ランプと、
光源ランプの点灯を制御する光源ランプ点灯制御回路部と、
光源ランプの光を利用して投射画像を形成する投射画像形成部と、
光源ランプを冷却するための冷却部と、
装置の電源ON・OFFの操作を行う操作部と、
AC電源から電力を変換し各部に変換された電力を供給する電源部と、
コンデンサを有しAC電源接続中に電源部から供給された電力を前記コンデンサに蓄えてAC電源遮断時でも各部に電力を供給できる副電源部と、
マイクロプロセッサと不揮発性メモリを有し各部の制御を行う制御部、
光源ランプの点灯状態を検出する光源ランプ点灯状態検出部と、
AC電源の接続と遮断を検出するAC電源接続検出部と、
副電源部のコンデンサの電圧値を検出するコンデンサ電圧検出部と、
光源ランプの冷却時間を検出する光源ランプ冷却時間検出部と、
を備えていることを特徴とする投射型画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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