説明

抗アレルゲン組成物及び抗アレルゲン部材

【課題】 アレルゲンをより安全,安価で低減化し、さらにポリー4−ビニルフェノール,タンニン酸等に比べ抗アレルゲンに有効且つ安定して優れた効果が発揮できる抗アレルゲン組成物及び抗アレルゲン部材を提供する。
【解決手段】 フェノール誘導体のフェノール性水酸基の数を2又は3として、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に、該フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生活環境のなかに存在するアレルゲンを不活性化させる抗アレルゲン組成物及び抗アレルゲン部材に関する。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省の調査では日本人の3人に1人が何らかのアレルギー症状に悩んでいるとされる。以前は子供の頃のアレルギーは成長するにつれて低減化していくと言われていたが、最近では花粉症の発症、加齢後の難活化、重傷化の報告も多い。最も重篤なアレルギー疾患である喘息では年間6000人もの死亡報告がされ、アトピー性皮膚炎ではその症状が社会生活に支障をきたすことも多くなっている。こうしたアレルギーを起こす原因物質はアレルゲンと呼ばれ、ストレスや食物、ハウスダストが主な原因といわれている。近年、住宅の省エネ化の観点から高気密性の住宅が増え快適性が向上してきているが、この快適性はハウスダスト中のダニにとっても適した環境になっている。ダニが増殖することにより虫体のみならず死骸,抜け殻,糞が増え、ダニアレルゲンを増やす原因となっている。このダニアレルゲンは最も多くの患者がいるアレルギー疾患である喘息,鼻炎に対して50%〜80%、小児喘息の90%を占めるため、早急な対策が求められている。
ダニを減らす方法として、これまで掃除機で吸い取ったり水洗いしたり、ダニアレルゲンがタンパク質から成っていることから60℃以上の熱をかけたり、或いは布団の中で繁殖しないよう高密度の織物を使用する等の対策が講じられてきた。しかし、WHOの発表によると、アレルギーによる喘息発作誘発の閾値は10μg/gfine dustであり、またダニアレルゲンは虫体のみならずその死骸や糞までもアレルゲン反応を起こすという特徴を有し、完全除去が不可能であることから抜本的な技術対策が求められている。斯る現状から近年、アレルゲンの構成物質であるタンパク質の変性,吸着という観点で研究が進められ、これまで例えば次のような技術が提案されてきた(特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−3040号公報(以下、「引例1」という。)
【特許文献2】特公平2−16731公報(以下、「引例2」という。)
【0004】
引例1はダニアレルゲン低減化物質としてフェノール性水酸基を持つ物質がアレルゲン反応を抑制するという発明技術を提案し、引例2はタンニン酸が有効である旨提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引例1で提唱しているポリ−4−ビニルフェノールやポリチロシンは高価であるため広く普及するのが難しいと考えられる。また引例2のタンニン酸は、本発明者等の追認試験によれば安定した抗アレルゲン効果を得ることが困難であった。加えて、従来の抗アレルゲン組成物は例えば不織布等の基材に安定保持させ、水洗いしても落ちず、繰り返し使用できるようにするのが難しかった。
【0006】
本発明は上記問題点を克服するもので、アレルゲンをより安全,安価で低減化し、さらにポリ−4−ビニルフェノール,タンニン酸等に比べ抗アレルゲンに有効且つ安定して優れた効果が発揮できる抗アレルゲン組成物及び抗アレルゲン部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、フェノール誘導体のフェノール性水酸基の数を2又は3として、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に、該フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有することを特徴とする抗アレルゲン組成物にある。
請求項2の発明たる抗アレルゲン組成物は、請求項1で、フェノール誘導体がピロカテコール又はピロガロールであることを特徴とする。
請求項3の発明たる抗アレルゲン組成物は、請求項2で、リグノフェノール誘導体に係る1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール誘導体をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有することを特徴とする。
請求項4の発明たる抗アレルゲン組成物は、請求項2又は3で、リグノフェノール誘導体に、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有することを特徴とする。
請求項5の発明たる抗アレルゲン組成物は、請求項4で、架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグノフェノール誘導体を含有することを特徴とする。
請求項6に記載の発明の要旨は、下記(a)〜(e)の抗アレルゲン組成物の群から選択される少なくとも1つの抗アレルゲン組成物を基材に保持させてなることを特徴とする抗アレルゲン部材にある。
(a)フェノール誘導体のフェノール性水酸基の数を2又は3として、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に、該フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有することを特徴とする抗アレルゲン組成物。
(b)前記(a)のリグノフェノール誘導体がピロカテコール又はピロガロールである抗アレルゲン組成物。
(c)前記(b)のリグノフェノール誘導体に係る1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール誘導体をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有する抗アレルゲン組成物。
(d)前記(b)又は(c)のリグノフェノール誘導体に、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有する抗アレルゲン組成物。
(e)前記(d)の架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグノフェノール誘導体を含有する抗アレルゲン組成物。
【0008】
前記請求項1〜5に係る抗アレルゲン組成物は、環境負荷に影響を及ぼす石油化学製品と違って植物資源由来の原料を用いているので安全にして安価で、しかも、タンニン酸等に比べ抗アレルゲンに有効且つ安定して優れた効果を発揮する。
本発明者等はリグノフェノール誘導体の製法等の発明をし、その用途開発を進める過程で、フェノール性水酸基をもつポリマーがタンパク質からなるダニアレルゲンと多数の弱い結合を起しアレルギーを抑制する現象に注目し、植物由来のリグノフェノール誘導体にもフェノール水酸基が存在することから、該リグノフェノール誘導体にもアレルゲン低減効果があるのではないかと鋭意研究を行った結果、植物のリグニン成分に由来したリグノフェノール誘導体のなかでも、フェノール性水酸基の数を2又は3とするフェノール誘導体を導入するリグノピロカテコール等のリグノフェノール誘導体、及びそのクマラン誘導体(低分子化物)・架橋前駆体及び架橋体(メチロール化物質)に、際立って高いダニアレルゲン低減化効果が得られることを見い出した。さらに基材に保持させた状態にして繰返し水洗いした際、性能低下が著しいタンニン酸と異なり抗アレルゲン機能を継続維持する新規アレルゲン低減物質を見い出した。請求項6のごとく、フェノール性水酸基が2又は3のリグノフェノール誘導体及びその熱分解物・その架橋前駆体及び前駆体・その低分子化物を含有する抗アレルゲン組成物と、これを活性炭素繊維を初めとする不織布等の基材に保持(添着)させる抗アレルゲン部材(例えばフィルター)とを発明するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗アレルゲン組成物及び抗アレルゲン部材は、アレルゲンを温和な条件でより安全且つ低コストで不活性化,低減化し、さらに従来のポリ−4−ビニルフェノールやタンニン酸等に比べアレルゲン低減化に有効且つ安定して優れた効果を発揮し極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る抗アレルゲン組成物及び抗アレルゲン部材の一実施形態について詳述する。
【0011】
I.抗アレルゲン組成物
(1)リグノフェノール誘導体:
本発明の抗アレルゲン組成物たるリグノフェノール誘導体とは、特開2001-261839公報記載と同じように、木粉等のリグノセルロース系材料にフェノール誘導体が溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去し(フェノール誘導体の収着工程)、次いで該リグノセルロース系材料に酸を混合しセルロース分を酸に溶解させることによって、該フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位の炭素原子がリグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体であって、前記フェノール誘導体のフェノール性水酸基の数が2又は3のものである。
フェノール性水酸基の数が2のフェノール誘導体には、カテコール,アルキルカテコール,レゾルシノール,アルキルレゾルシノール,ハイドロキノン,アルキルハイドロキノン等がある。フェノール性水酸基の数が3のフェノール誘導体には、ピロガロール,フロログルシノール等がある。
フェノール性水酸基が2又は3のフェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加して混合し、セルロース分を酸に溶解させ、リグニンと該フェノール誘導体が反応したリグノフェノール誘導体相がセルロース成分を溶解した酸の相から相分離されて、その後、この相分離した反応液から不溶区分を回収して所望のリグノフェノール誘導体が得られる。具体的製法は、リグノセルロース系材料に、フェノール性水酸基が2又は3の例えばピロカテコール、ピロガロールが収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加して混合し、所定時間反応後、水(例えば10倍量の水)で希釈し反応を停止させる。この段階で、リグノピロカテコール又はリグノピロガロールは水中で浮遊しており、従来法の水洗による脱酸(デカンテーション)を行うと水に溶解し消失してしまうので、デカンテーションに代え、次に遠心分離操作又は濾過操作により脱酸処理し不溶区分を分離する。続いて、該不溶区分を凍結乾燥又は窒素置換乾燥により粉末化させることによって、リグノクレゾールに比べて顕著なアレルゲン低減効果があるリグノピロカテコール等のリグノフェノール誘導体を得る。
ピロカテコール又はピロガロールは、p-クレゾールと異なり水に易溶で、デカンテーションを行わずとも前記水の希釈で大半が除去され、また精製しなくても前述のようにして得られたリグノピロカテコール等のリグノフェノール誘導体は、抗アレルゲン物の用途として十分である。しかるに、前記乾燥に関しては、従来法の送風乾燥を行うと、リグノピロカテコール又はリグノピロガロールは酸化されてしまい、抗アレルゲン効果が得られなくなる。これに対し、前記不溶区分を凍結乾燥又は窒素置換乾燥等をすれば酸化されなくなり、抗アレルゲン効果を発揮する所望のリグノフェノール誘導体含有化物が得られる。
【0012】
リグノフェノール誘導体の基本的な製造方法は特開2001-131201にあるが、収着するフェノール誘導体としてピロカテコールやピロガロールを用いたときは、p−クレゾールを使用したときとは異なり、硫酸処理後の水洗時にリグノフェノール誘導体の固形物が浮揚するため、デカンテーションによる脱酸処理を行おうとした場合に流出し収率が著しく低下するという問題があった。これについては、従来のデカンテーションによる水洗処理の代わりに遠心分離機や減圧ろ過機、フィルタープレス等を利用することにより、収率を下げることなく安定したリグノフェノール誘導体を得ることができることが明らかとなった。
また、水洗処理後のリグノピロカテコールやリグノピロガロールは、リグノp−クレゾールに比べフェノール性水酸基が多いため、酸化されやすく上記特開2001-131201に示されているような通常の乾燥方法では直ちに酸化されてしまう問題があった。このとき、酸水洗後のリグノピロカテコール及びリグノピロガロールは、焦茶色の固形物となり、水、酸、アルコール、有機溶媒に溶解しなくなり、抗アレルゲン物としては利用できなくなる。このような酸化を抑えながら、乾燥を行う方法として、鋭意研究を行った結果、凍結乾燥機等を利用することによって、抗アレルゲン組成物として有効な薄桃色の粉末を得ることができた。
本発明でいうリグノフェノール誘導体は、特開2004-210899,特開2004-137347,特開2004-115736,特開2003-268116,特開2001-261839,特開2001-131201,特開2003-181863,特開2001-64494,特開2001-34233,特開平9-278904号,特開平2-23701号等の公報記載の公知のリグノフェノール誘導体、粗リグノフェノール誘導体、精製リグノフェノール誘導体、リグニンのフェノール誘導体にあって、その導入フェノール誘導体のフェノール性水酸基の数を2又は3とするものである。斯る導入フェノール誘導体のフェノール性水酸基の数が2又は3のリグノフェノール誘導体(粗リグノフェノール誘導体と精製リグノフェノール誘導体を含む。)は、フェノール性水酸基の数が1のリグノクレゾールと比較して際立って優れた抗アレルゲン効果を発揮する(後述)。
【0013】
(2)前記リグノフェノール誘導体の低分子化物:
導入フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基の数が2又は3である前記リグノフェノール誘導体の低分子化物も抗アレルゲン効果を示す。この低分子化物とは、前記製法によって得たリグノピロカテコール等のリグノフェノール誘導体を、アルカリ溶液に溶解させた後、加熱することによって得られた物を、さらに酸性にして得た不溶区分を水洗することによって得られる二次変換物(クマラン誘導体)である。前記(1)のリグノフェノール誘導体に係る該1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール誘導体をクマラン化してなるクマラン誘導体である。該リグノフェノール誘導体の低分子化物は例えば次のようにして得られる。
先ずリグノピロカテコール等のリグノフェノール誘導体を0.5NのNaOHに溶かし、これをフッ素樹脂で内張したステンレス製のオートクレープ容器に入れ電気炉にて170℃で2h加熱する。その後、室温まで冷却後0.5NのHClでpH2にし、このときに析出した沈殿物を遠心分離機で繰り返し洗浄する。続いて、この試料を五酸化リンをデシケーターにて保管することにより脱水し、所望の二次変換試料たる低分子化物を得る。
【0014】
(3)前記リグノフェノール誘導体のメチロール化物等:
導入フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基の数が2又は3である前記リグノフェノール誘導体のメチロール化物も抗アレルゲン効果を示す。該リグノフェノール誘導体をホルムアルデヒドを含むアルカリ溶液に溶解させてヒドロキシメチル化させたものである。リグノピロカテコール等の前記リグノフェノール誘導体のうち、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有するリグノフェノール誘導体である。このメチロール化物は例えば次のようにして得られる。
先ず、リグノピロカテコール等のリグノフェノール誘導体を0.2NのNaOH溶液に溶解後、35%ホルムアルデヒド溶液を加え、窒素雰囲気下60℃で60分撹拌しながら加温して、リグノフェノール誘導体の分子中にメチロール基を導入する。反応終了後、塩酸を使用してpH2として析出後、中性になるまで水洗、乾燥して所望のメチロール化物を得る。
【0015】
(4)架橋性反応基が架橋されたリグノフェノール誘導体
前記(3)のフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位の架橋性反応基が、熱を加えることによって架橋されて架橋体になるリグノフェノール誘導体を含有するものである。フェノール性水酸基に架橋性反応基が備わることによって、熱可塑性性状を有するリグノフェノール誘導体が熱硬化性に性状変化するので、抗アレルゲン効果のある成形体だけでなく、熱硬化する段階で基材と一体化する抗アレルゲンコーティング材等としても用いることができる。
リグノクレゾール等の架橋体の製法は特開2004-265622公報等で知られ、該公報の段落0012,0013には、『…リグニン誘導体の1種であるリグノフェノール誘導体は、リグニン含有材料をフェノール化合物で溶媒和後、酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物による誘導体である。この反応過程によりリグニンのアリールプロパンユニットのベンジル位(側鎖C1位、以下、単にC1位という。)にフェノール化合物がグラフト(導入)されたリグニン誘導体を得ることができる。フェノール化合物は、そのフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位にて前記C1位の炭素原子に結合する。この結果、1,1−ビス(アリール)プロパンユニットがリグニン中に形成される。この反応において、フェノール化合物は、前記C1位に対して選択的に導入されるため、出発原料であるリグニン含有材料におけるC1位における様々な結合を開放し、リグニンマトリックスの多様性を低減し、また、低分子量化することができる。さらに、この結果、従来のリグニンにはなかった各種溶媒への溶解性、熱流動性、熱可塑性など各種の特性を発現することが既に知られている。…本発明者らはこれまでの研究により、濃酸による炭水化物の膨潤に基づく組織構造の破壊と、フェノール化合物によるリグニンの溶媒和とを組み合わせてリグニンの不活性化を抑制しつつ、リグノセルロース系材料を炭水化物とリグノフェノール誘導体とに分離する方法を開発している(特開平2−233701号)。この方法で得られたリグノフェノール誘導体の活用法としては、例えば、セルロース系ファイバー等の成形材料に適用し成形体を作製することが報告されている(特開平9−278904号)。かかるリグノフェノール誘導体は、1,1−ビス(アリール)プロパンを高頻度構成単位として有するリグニン系ポリマーであって、高粘結性を潜在的に有していることがわかっている(特開平9−278904号)。さらに、かかるリグノフェノール誘導体は、メチロール化することにより架橋性を付与でき、リニアあるいはネットワーク状の架橋構造を構築できると同時に、アルカリ処理によって、再び低分子化して溶媒中に溶解されることも、本発明者らにより見出されている(特開2001−261839号公報)。』との記載がある。導入フェノール種は本発明のピロガロールやピロカテコール等でも同じようなリグノ多価フェノール架橋体の製造が可能であり、リニアあるいはネットワーク状の架橋構造を構築する抗アレルゲン組成物が得られる。
【0016】
II.抗アレルゲン部材
前記(1)〜(4)の抗アレルゲン物はそのまま用いることができるが、通常、固体担体たる基材又は液体担体に保持させて使用される。前記(1)〜(4)の抗アレルゲン物質の含有量は通常、0.01重量%〜50重量%であり、より好ましくは1重量%〜30重量%にして抗アレルゲン組成物として供される。本発明の抗アレルゲン物質の使用形態は、環境中のアレルゲンを不活化できる処理が可能であれば、液状或いは粉体状,ペースト状等どのような形態も採ることができる。取扱いの観点からすれば液状とするのが容易で有効である。これらの低減化物質を均一に分散するために必要な溶剤は単独又は2又は3の混合溶媒として使用できる。溶剤の種類は特に限定されない。リグノピロカテコール等の前記リグノフェノール誘導体を含有する抗アレルゲン組成物を適宜、アルカリ,水,アセトン,アルコールに溶解したものを、不織布,活性炭素繊維等に添着する。前記抗アレルゲン組成物を例えば不織布からなるフィルター等の基材に保持させる方法は含浸や滴下に限ることなくいかなる方法であってよい。またこれらの抗アレルゲン組成物を溶解させるための溶液の種類や基材である不織布等の材質を適宜選定して低減化効果を大きくすることができる。
【0017】
[熱硬化物が基材に一体化した抗アレルゲン部材]
本発明では多孔性又は網目構造の不織布等の基材へ、フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基の数が2又は3の前記リグノフェノール誘導体に熱を加えて架橋性反応基をつけ熱硬化させることによって、これが基材の多孔性又は網目構造に絡みつき基材に強固に一体化し、アレルゲン低減効果のある有用な抗アレルゲン部材が出来上がる。当初、基材に熱硬化物として架橋させてしまうとフェノール水酸基の活性自由度がなくなりアレルゲン低減効果がみられないと思われたが、アレルゲン低減効果を維持するのを実験確認している。
この熱硬化物は架橋段階で基材にからんで基材との一体化が強固になり、永く基材に保持されて抗アレルゲン機能を維持する。該熱硬化物は水溶性でないので、洗浄等によっても流れ落ちずフィルタ等の用途に最適となる。基材に一体化した架橋性誘導体からなるリグニン誘導体は基材を一層丈夫なものにし、さらに水洗い等では流されず抗アレルゲン作用を持続させるなど優れた抗アレルゲン部材をつくる。従来型の抗アレルゲン物は基材へいかに結合一体化させるかが問題になっているが、本発明ではリグノフェノール誘導体の架橋性誘導体を架橋させてしまえば網目構造のフィルタ等の基材に入り込んで硬化物となって容易に結合一体化する。フィルタなどの基材に絡んだこのリグノフェノール誘導体は、基材への定着が簡単にして、しかも揉んだりしても剥がれ落ちないため実用的で極めて有益となっている。
【0018】
また、本発明の抗アレルゲン組成物は、単独でまた他のものを添加混合させて、アレルゲン低減効果のある、塗料やコーティング剤、また窓枠,ブラインド等の樹脂成形物とすることができる。その他にも机,椅子,棚,パーティション等といった事務用品、テーブル,チェア,シート,ベッド,食器類,照明器具,箪笥などの収納家具等の家庭用品、さらに枠組などの住宅構造,畳のコア材等の芯材,床板張り,床材等にコートするコーティング剤,階段,窓周りの部材等の住宅関連設備等あらゆる生活空間を構成するこれらの各基材(物品)に、本発明の抗アレルゲン組成物を単独でまた他のものを添加混合させてアレルゲン低減効果のある商品(抗アレルゲン部材)とすることができる。
[実施例1]
【0019】
I.ダニアレルゲンの調製方法
生化学工業製 精製ダニ抗原(DerfII)を50μgに500μlの蒸留水を加えてよく溶解し、その溶液をマイクロチューブに25μlずつ分取し、−80℃で凍結保存した。実験に使用する際には凍結した希釈精製ダニ抗原を25μlに対し、2.975mlのリン酸バッファー(pH7.4)で希釈し3mlとした。この溶液を希釈ダニ抗原(抗原A)とした。
【0020】
II.ダニアレルゲン量の測定および測定精度について
i)測定方法(メーカー説明書より一部変更)
測定にはアサヒフードアンドヘルスケア株式会社製「アサヒダニスキャン」を使用した。ダニアレルゲンを測定したい面(10cm×15cm)を約1分間、縦横に塵採取部で擦り、アレルゲンを捕捉する。採取後、塵採取部を上にして水平にダニスキャンを置き、塵採取部に現像液をゆっくり5滴しみ込ませる。10〜15分経過後、表示部にあるC(コントロール)及びT(テストライン)の位置に現れる赤線の濃さを比較し、Tがほとんど見えないか、見えない場合(Tなし)を判定1、Cに比べてTが薄く発色した場合(T<C)は判定2、Cに比べてTがほぼ同じ濃さで発色した場合(T=C)は判定3、Cに比べてTが濃く発色した場合(T>C)は判定4とする。それぞれの判定内容は以下の通りである。
【0021】
・判定1 Tなし…ダニアレルゲンの汚染はありません
・判定2 T<C…ダニアレルゲンの汚染はありません
・判定3 T=C…汚染が進んでいます!再度掃除しましょう
・判定4 T>C…非常に汚染されています!丹念な掃除とダニの駆除を!
(メーカー説明書より抜粋)
【0022】
また、これらの判定を細分化し精度を上げる為に、1つのサンプルの測定を8人の充分にアサヒダニスキャンの判定方法を理解した人に、お互いに他の人の判定結果とサンプル名が分からない状態で判定を記入してもらい、その総和平均を判定結果とした。また標準誤差(SE)を算出した。この方法により判定1か2など、テストラインが見えるか見えないかなどの微妙な判定を区別でき、結果として測定精度を上げることができた。
【0023】
ii)ダニアレルゲン測定精度について
上記Iで調製した抗原A、3mlのうち0.75ml、不織布(呉羽テック製8056)(大きさ:10cm×15cm)になるべく均一に滴下塗布した。30℃で2時間乾燥した後、アサヒダニスキャンを用いて上記方法にてダニアレルゲン量を測定した。既出の8人の測定者が、アサヒダニスキャンにて測定したサンプルを判定したところ、何れも判定結果は3であった。
【0024】
III.リグノピロカテコール、リグノピロガロールの合成
i)合成
アセトンにて脱脂したヒノキ木粉100gに対し、含有リグニンC9単位あたり3倍mol量となるように、ピロカテコール55g、ピロガロール63gをそれぞれ700mlのアセトンに溶解した溶液を作り1日浸漬し収着させた。この試料をロータリーエバポレーターでアセトン臭がなくなるまで減圧乾燥し、ピロカテコール、ピロガロールを木粉に均一にそれぞれ湿潤収着させた。この木粉に対して400mlの72%硫酸をゆっくり加えながら攪拌し、粘度が下がるまでよく練り上げた。粘性が下がった時点で攪拌機にて攪拌し、硫酸投入後から30分間反応させた。その後、加えた硫酸の10倍量のイオン交換水に投入、濃酸反応を停止させた。このとき、リグニン成分は希硫酸溶液のなかで浮遊した。さらに1時間攪拌を続けた後、遠心分離(4000G、10分間)で固液分離した(遠心分離後には、リグニン区分は水不溶なので固形物、硫酸と糖質は加水分解されて上澄みに存在する)。遠心分離によりできた上澄みを除去し、新たにイオン交換水に投入して攪拌後、再度遠心分離(4000G、10分間)を繰り返し、上澄みの液性が中性付近になるまで洗浄・遠心分離(固液分離)を繰り返した。酸及び未反応のピロカテコールやピロガロールを除去し、得られた固形物の試料を乾燥するにあたり、40℃の送風乾燥機を使用したところ、容易に酸化が起こり茶褐色の固形物が生成してしまい、ダニアレルゲン低減効果に役立つと考えられるフェノール性水酸基の活性が下がってしまった。そこで、酸化を抑えた乾燥を行うべく、中性まで洗浄できたそれぞれの固形物を3日間凍結乾燥したところ、薄桃色の粉末を得ることができ、フェノール性水酸基の酸化を抑えることができた。得られた粉末をそれぞれリグノピロカテコール粗精製物、リグノピロガロール粗精製物とした。これら粗精製物をアセトン、メタノール、エタノールにて抽出したそれぞれの溶液を、本出願ではリグノピロカテコール・アセトン溶液、リグノピロカテコール・メタノール溶液、リグノピロガロール・アセトン溶液等と呼ぶこととする。繰り返し説明を行うと、以前の製法技術(例えば特開2001-64494 実施例1:リグノフェノールの製造方法)では、酸洗浄時にデカンテーション法を用いるが固形物が分離し難いため、リグノピロカテコール、リグノピロガロールの収率が極端に悪くなった。また、中性まで洗浄できた試料を乾燥する際に40℃の送風乾燥を用いた場合、リグノピロカテコール、リグノピロガロールの酸化等が進み、水や有機溶剤等に不要な物質に変性してしまった。したがって、リグノピロカテコール・ピロガロールを硫酸を触媒にして合成する為には、遠心分離や濾過による完全な固液分離と粗精製物の乾燥時に凍結乾燥等の酸化抑制ができる手法を選択する必要がある。乾燥処理には該凍結乾燥に代え、酸素を使用しないか極力抑える減圧乾燥,窒素置換乾燥,真空マイクロ波乾燥等でも対応できる。減圧下で乾燥すれば酸素濃度が希薄になり、乾燥中に酸素による障害は殆どない。減圧下におく場合、200Pa以下、より好ましくは40Pa以下が良い。またスプレードライは短時間で乾燥終了するため酸素による障害を受け難いので、これに代えることができる。
【0025】
ii)分子量分布測定
リグノピロカテコール粗精製物、リグノピロガロール粗精製物をそれぞれ、アセトン、メタノール、エタノールに溶解し、ドライアップして出来たリグノピロカテコール・リグノピロガロール区分をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定することにより反応に関与しなかったピロカテコール、ピロガロール (リグニンに導入するフェノール種)の有無、および分子量分布測定を行った。カラムはShodex製 KF-801,KF-802,KF-803,KF-804を4本直列に接続したものを使用した。検出器は島津製作所製UV-Detector SPD-6Aを使用し、単波長280nmで吸光度を測定した。検量線は東ソー製 TSK standard POLYSTYRENE(Mw:1110000,707000、397000,189000,98900,37200,17100,9490,5870,2500,1050,500)とp-Cresol:108から求めた。移動相は精留したTHFを使用した。その測定クロマトグラムを図1,図2に示す。
【0026】
GPC測定クロマトグラムから分かるように、リグノピロカテコール、リグノピロガロールのアセトン、メタノール、エタノールの各抽出区分にはリグノピロカテコール、リグノピロガロールの生成反応に関与しなかったピロカテコールやピロガロールは検出されなかった。これは未反応のピロカテコールやピロガロールは水溶性であるため、触媒である硫酸を洗浄する際にp−クレゾールと比較して容易に除去されるためであると考えられる。既存の技術(特開2001-64494)に記載されているクレゾールやフェノールを用いた相分離反応システムにおいて、この未反応のフェノール種を洗浄する為に大量のジエチルエーテルなどの有機溶媒で洗浄する方法が考案されているが、残存する溶剤の問題や製造コストがかかりすぎる問題を抱えていた。リグノピロカテコール、リグノピロガロールの本製法は斯る問題を解決する。またアセトンに比べてメタノール、エタノールは35分以降に検出される低分子化合物にピークが少なくなっている。一般にフェノール性低分子化合物は臭いの元となったり、有害性や内分泌攪乱作用があるとい言われるが、メタノールやエタノールで抽出したリグノピロカテコールやリグノピロガロールは、これら低分子化合物が少ないので安全性が高いと言える。
【0027】
iii)抽出効率
アセトン、メタノール、エタノールによって抽出されるリグノピロカテコールやリグノピロガロールの量を測定する為、リグノピロカテコール、リグノピロガロールをアセトン、メタノール、エタノールでそれぞれ抽出した。抽出を促進するため超音波水浴中(38kHz)で行った。それぞれの抽出溶液を一晩放置し不溶部を自然沈降させ、予め恒量既知のガラス製バイアルにそれぞれの抽出溶液の上澄みを5ml入れ、105℃で1日ドライアップし、シリカゲルを入れたデシケーター中で放冷、重量差より抽出率を算出した。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
この結果からリグノピロカテコール、リグノピロガロールはアセトンよりエタノール、エタノールよりメタノールの方が抽出率が高いことが分かる。また、上記で述べた「分子量分布測定」においてアセトンよりメタノール、エタノールの方が低分子化合物の割合が少なかったことから、アレルゲン低減化物質として利用する場合メタノール、エタノールで抽出することが好ましいことが判った。
【0030】
IV.既出のアレルゲン低減化物質との性能比較
ポリ4-ビニルフェノールとリグノクレゾール(特開2001-64494に記載の方法により調製したもの)及びリグノピロカテコール、リグノピロガロールのダニアレルゲン低減化効果を比較した。
基材には呉羽テック製8056(15cm×10cm)を用いた。「 iii)抽出効率」に述べた方法と同様にポリ4-ビニルフェノール(分子量8000、20000)、タンニン酸、リグノクレゾール、リグノピロカテコール、リグノピロガロールをアセトン、メタノールおよびエタノールにそれぞれ溶解後、一晩放置し不溶部を自然沈降させた。試料の添加量が45 mgとなるように、所定量の各試料溶液の上澄みを先述の基材に均一に塗布した。40℃で乾燥させ溶媒を除去した後、「I.ダニアレルゲンの調製方法」に述べた、精製ダニ抗原(DerfII)溶液(抗原A)を0.75ml、均一に塗布した。再度、40℃で完全に乾燥させた後、ダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンを用いて測定した。その結果を図3に示す。
【0031】
図3中、Cont:コントロール、p4vp 8k:ポリ4ビニルフェノール(分子量8000)、p4vp 20k:ポリ4ビニルフェノール(分子量20000)、TA:タンニン酸、LC:リグノクレゾール、LPC:リグノピロカテコール、LPG:リグノピロガロールを示す。また /Acはアセトンにて溶解、/Meはメタノールにて溶解、/Etはエタノールにて溶解を意味する。
図3で、リグノフェノール誘導体のアレルゲン低減化効果については、リグノクレゾール<リグノピロカテコール<リグノピロガロールとなった。これは、タンパク質変性によるダニアレルゲン低減化効果が、フェノール性水酸基の絶対数に依存しているためと考えられる。特にリグノピロガロールではタンニン酸と同等の効果を示し、その中でもエタノールにおいてはタンニン酸を上回り、有害性のあるアセトンや劇物であるメタノールを使用しない安全な用途開発を行うことができる。一方、モノフェノールであるポリ−4−ビニルフェノールでは顕著な効果は見られなかった。
[実施例2]
【0032】
[フィルター洗浄した後のアレルゲン低減化効果]
タンニン酸、リグノピロカテコールおよびリグノピロガロールを基材(呉羽テック製8056)に添加し、実施例1の方法でアレルゲン低減化試験を行った前記の試料(フィルター)を、1Lのイオン交換水を入れた1L容ビーカー中で3分間揉み洗いすることにより、ダニアレルゲンを洗い流した。そして、40℃の恒温乾燥機にて乾燥を行った。乾燥後、先に述べた方法で抗原Aを再び0.75ml添加し、乾燥した後、アサヒダニスキャンにてアレルゲン量を測定した。その結果は図4の通りであった。
タンニン酸に関しては、洗浄後にアレルゲン低減化効果は殆どなくなってしまった。これはアレルゲンを洗い流した時に一緒に流出してしまったためであると考えられる。一方、リグノピロカテコールとリグノピロガロールに関しては、洗浄後も効果が持続する傾向が見られ、先ほどの結果と同じようにフェノール性水酸基の数の多いリグノピロガロールの方が、リグノピロカテコールよりも効果が見られた。さらに、リグノピロカテコールとリグノピロガロールのメタノール抽出物に関しては、アレルゲン低減化効果が下がらないため、繰り返し使用出来ることを確認した。
【0033】
[実施例の効果]
実施例1,2にみられるように、リグノピロカテコール,リグノピロガロール等を含有する抗アレルゲン組成物及び抗アレルゲン部材は、アレルゲン低減化に優れた効果を発揮する。抗アレルゲン組成物として知られるポリ4-ビニルフェノールよりも優れ、また本発明者等が植物由来で安全性が高くて抗アレルゲン組成物としてこれまで注目してきたリグノクレゾールに比し、リグノピロカテコールが格段に優れ、リグノピロガロールはさらに優れた効果を発揮する。
【0034】
また、タンニン酸と本発明品を比較すれば、タンニン酸は実施例1に示すごとく確かに初回に効を奏する。しかし、実施例2に示すように水洗い等で、急速にアレルゲン低減効果が薄れる問題がある。これに対し、リグノピロカテコール,リグノピロガロールは水洗い等によって効果がさほど低下しない。リグノピロカテコール,リグノピロガロール等を含有する抗アレルゲン組成物及び抗アレルゲン部材の方が実用的である。また架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグノフェノール誘導体を基材に保持させた抗アレルゲン部材にすれば、基材との一体化が一層強固になり実用上極めて有効となる。
さらにいえば、タンニン酸が植物中の樹皮の一部から造られ絶対量が少ないのに対し、本発明の主構成要素たるリグニンは植物中に約30%存在するため工業的活用でき、資源の有効利用の途を開くものになっている。加えて、本発明の抗アレルゲン組成物を形成するリグノフェノール誘導体は、均一的な物質を造る技術が既に確立しており(特開2003-268116等)、品質的に安定供給できるなどさまざまな点で勝っている。
【0035】
尚、本発明においては前記実施形態,実施例に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】リグノピロカテコール粗精製物の上澄み抽出物のGPC測定クロマトグラムである。
【図2】リグノピロガロール粗精製物の上澄み抽出物のGPC測定クロマトグラムである。
【図3】アレルゲン低減化物質の性能比較図である。
【図4】フィルター洗浄後のアレルゲン低減化物質の性能比較図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール誘導体のフェノール性水酸基の数を2又は3として、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に、該フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有することを特徴とする抗アレルゲン組成物。
【請求項2】
前記フェノール誘導体がピロカテコール又はピロガロールである請求項1記載の抗アレルゲン組成物。
【請求項3】
前記リグノフェノール誘導体に係る1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール誘導体をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有する請求項2に記載の抗アレルゲン組成物。
【請求項4】
前記リグノフェノール誘導体に、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有する請求項2又は3に記載の抗アレルゲン組成物。
【請求項5】
前記架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグノフェノール誘導体を含有する請求項4記載の抗アレルゲン組成物。
【請求項6】
下記(a)〜(e)の抗アレルゲン組成物の群から選択される少なくとも1つの抗アレルゲン組成物を基材に保持させてなることを特徴とする抗アレルゲン部材。
(a)フェノール誘導体のフェノール性水酸基の数を2又は3として、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に、該フェノール誘導体に係るフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有することを特徴とする抗アレルゲン組成物。
(b)前記(a)のリグノフェノール誘導体がピロカテコール又はピロガロールである抗アレルゲン組成物。
(c)前記(b)のリグノフェノール誘導体に係る1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール誘導体をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有する抗アレルゲン組成物。
(d)前記(b)又は(c)のリグノフェノール誘導体に、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有する抗アレルゲン組成物。
(e)前記(d)の架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグノフェノール誘導体を含有する抗アレルゲン組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−206845(P2006−206845A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24503(P2005−24503)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年(平成17年)1月4日 「読売新聞」に発表
【出願人】(594156880)三重県 (58)
【出願人】(594095338)株式会社マルトー (5)