説明

抗体を得る方法

本発明は、治療用品質の組換え抗体の製造に関係する。特に、本発明は、培養宿主細胞検体に凍結‐解凍処理ステップを受けさせて、大規模醗酵からの機能性抗体の収量を増加させる方法に関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性組換え抗体、特に治療用抗体の生産及び単離における収量(yield)を増加させる方法に関する。この方法は、特に治療用抗体の大規模な工業的製造に適する。
【背景技術】
【0002】
組換えDNA技術は、急速に発展しており、抗体、特に治療用抗体の製造に有用である。組換え遺伝子を発現系は当業者には良く知られている。これは、哺乳動物細胞、昆虫細胞、菌類細胞、細菌細胞及び形質転換動物及び植物での発現を含む。発現系の選択は、コードされたタンパク質の特徴、例えば翻訳後修飾に依存する。その他に考慮することとして、必要な品質の物質の必要な量の生産に必要な時間、及び、特に、コストが含まれる。この後者を考慮することは、当局の承認を得るために必要な品質及び非常に多数の患者を治療するのに必要な量の治療用抗体を製造する場合に特に重要である。
【0003】
組換えタンパク質の製造に最も広く使用されているシステムは、Escherichia coli(E.coli)における発現に基づいている。E.coliを使用することにより遭遇する特別な問題は、治療に必要な品質及び数量の物質の製造が困難であることである。特に、必要な時間と費用が法外になることがある。注目すべき一つの特別な問題は、E.coliから抗体を抽出する際に受ける抗体の収量の損失である。この後者の問題の一部を取り扱い、治療的な使用に受け入れられる抗体の生産を可能にする方法は、US 5,655,866に記述されている。この方法は、非機能性抗体から抗体の機能的Fab’フラグメントの後の単離を促進するために熱処理を使用することを含んでおり、この熱処理は醗酵又は培養の間のいつでも、又は抗体の抽出及び精製のいずれの段階においても行われる。室温より高い温度において、機能性抗体は著しく安定であるが、一方、宿主細胞タンパク質、及び遊離の軽鎖及び重鎖、及び抗体の非機能フラグメントを含む他の多数のタンパク質は、沈殿及び/又は凝集を形成し、これは濾過又は遠心分離又は流動床クロマトグラフィーのような主要な精製操作の間に機能性抗体から容易に分離される。比例してではあるが、精製コストは治療用抗体の製造総コストの一部であり、精製コストの比率は、上流の製造コストが低下するにしたがって一層増加するであろう。したがって、抗体の回収及び精製における改良は、製造の手段と関係なく、製造コストを一層低下させるであろう(Humphreys & Glover, Curr.Opin.Drug Discovery & Development,2001,4:172−185)。したがって、治療用抗体製造、特に精製に、例えば収量の増加により時間及び/又はコストの節約をもたらす方法に対するニーズがある。
【0004】
醗酵又は培養当たりの低収量は、しばしば主要な抽出段階において注目される特別な問題である;抗体の発現は細胞内では高いが、主要な抽出段階における高いパーセンテージの回収は達成するのが著しく困難である。US 5,665,866は、熱処理ステップを含めることによる、主要な精製の収量の増加を記述しており、このステップは、非機能性抗体を除去することにより精製操作を補助するものである。
【0005】
WO2005019466(本出願の優先日の後に公開された)は、醗酵の後、下流の操作の前に中断ステップ(interruption step)を含めることによる、組換えタンパク質の収量の増加を記述している。
【0006】
本明細書で記述する本発明は、熱処理と組み合わせた凍結‐解凍処理が、主要な抽出段階における機能性抗体の収量の50%に及ぶ増加をもたらす、すなわち、機能性抗体の収量は熱処理のみの収量を超えて増加したという驚くべき、予想されなかった観察結果に基づいている。これにより、治療用品質の機能性抗体の大量生産の時間及びコストを非常に有効に節約することができる。またそれは、必要な量を製造するためにわずかなバッチ数を要求するので、醗酵のバッチ間の変動の影響を少なくする。
【0007】
したがって、組換え抗体分子をコードする発現ベクターで形質転換された宿主細胞検体を培養し、この検体を、凍結‐解凍処理ステップに供することを含む組換え抗体分子の製造方法が提供される。
【0008】
好ましい実施例において、組換え抗体分子は、少なくとも抗体軽鎖の一部と、少なくとも抗体重鎖の一部とからなり、その結果、発現された軽鎖及び重鎖の少なくとも一部が結合して機能性抗体を形成することができる。
【0009】
最も好ましい態様において、この方法はさらに、検体を24時間までの間30℃から70℃の範囲内に上昇させた温度に供することを含む。したがって、本発明はまた、検体から単離された機能性抗体分子の収量を増加させる方法であって、検体が、可溶性、機能性抗体分子、及び非機能性抗体分子を含有し、検体を24時間までの間30℃から70℃の範囲内の上昇させた温度に供することを含み、検体を、この温度上昇に供する前に、凍結‐解凍処理ステップに供することを特徴とする、方法を提供する。
【0010】
特に、この方法は、生産される機能性抗体及び使用される発現系の特別な特徴を考慮して、要求に応じて変更することができ、当業者により理解される温度範囲及び処理条件において単離された機能性抗体の収量を増加させる。
【0011】
本明細書で使用される際、「機能性抗体」とは、それを生じさせた抗原(コグネイト抗原)を特異的に認識し、それと結合する能力を維持している抗体分子を含む。機能性抗体の製造は、抗体の予想される分子量に相当する非還元SDS−PAGE上の単一バンドの存在、又はBIACoreを使用する直接結合アッセイ又は当業者に知られている他の方法、例えば、限定はしないが、ELISAにより示される。非機能性抗体は、コグネイト抗原を認識しないフラグメントを含み、また正しくフォールドされていない又は正しく組み立てられていない抗体、遊離の重鎖及び軽鎖、及びそれらのフラグメントを含み、これには、コグネイト抗原を認識しない又はそれに結合しない抗体の部分的に分解したフラグメントが含まれる。
【0012】
本発明の方法において、検体は、醗酵の生産物、例えば、限定せずに、細菌、又はイーストを含む醗酵、細胞培養、例えば、限定せずに、哺乳動物又は昆虫細胞培養であり得る。最も好ましいのは、検体が組換え抗体を発現するE.coliを含む醗酵の生産物であり、該抗体は機能及び非機能性抗体であり得る。必要があれば、宿主細胞は醗酵培地から採集することができ、例えば、宿主細胞は遠心分離、濾過又は濃縮により検体から採集することができる。特に、本発明の方法は、治療用品質の抗体の大規模工業生産に適している。
【0013】
好ましくは、宿主細胞は醗酵又は培養から、例えば、遠心分離により採集され、そして細胞検体が凍結されるのに充分な低温に置かれる。一態様において、液状の細胞検体は−20℃から−70℃のフリーザーの中に置かれる。好ましくは、検体は−20℃で凍結保存される。その他には、検体を−70℃で凍結し、保存する。最も好ましくは、凍結は徐々に行う。本明細書で使用される際「徐々に凍結」とは、低い温度、例えばフリーザーの中に置かれ、フリーザーに入れられる前に瞬間凍結、例えば、ドライアイス上に置くとか、液体窒素中に入れるなどをしない検体を含む。一態様において、細胞検体は保存される前に、例えばフリーザー中で、瞬間凍結される。
【0014】
その他に、採取された宿主細胞は、緩衝塩、例えば、限定せずに、Tris、酢酸塩又はリン酸塩などを使用する緩衝液に懸濁される。この溶液のpHは、例えば、pH2とpH10の間、最も好ましいのはpH6とpH8の間である。最も好ましい緩衝液は、Tris緩衝液、pH7.4であり、これは凍結‐解凍処理ステップを受ける前に、さらに任意にEDTAを含むことができ、例えば、限定せずに、10mM EDTAを含有する100mM Tris、pH7.4である。
【0015】
本発明の方法において、凍結検体は、適する期間、例えば、1又は2時間から1又は2週間まで凍結保存することができる。一態様において、検体は室温に解凍される前の2から4時間凍結保存される。別の態様において、検体は室温に解凍される前の2、3又は4日凍結保存される。さらに別の態様において、検体は室温に補助なしで解凍される前の終夜、例えば12から18時間凍結保存される。その他に、解凍を、例えば水浴又は加温オーブンを使用して補助することができる。
【0016】
したがって、組換え抗体遺伝子をコードする発現ベクターで形質転換された宿主細胞検体を培養し、この検体を、緩徐な凍結ステップ及び/又は緩徐な解凍ステップからなる凍結‐解凍ステップに供することを含む、組換え抗体分子の製造法が提供される。したがって、本発明の方法の一態様において、機能性抗体分子及び非機能性抗体分子を含む検体から単離される機能性抗体分子の収量を増加させる方法であって、この検体を、24時間までの間30℃から70℃の範囲内の温度上昇に供することを含む方法において、この検体を、緩徐な凍結ステップ及び/又は緩徐な解凍ステップからなる凍結‐解凍ステップに供することを特徴とする、方法が提供される。
【0017】
最も好ましくは、熱処理ステップは30℃から70℃の範囲内で行われる。温度は必要に応じて選択することができ、精製に対する抗体の安定性によるであろう。別の態様において、温度は40℃から65℃、又は好ましくは40℃から60℃の範囲内、より好ましくは45℃から60℃の範囲内、さらにより好ましくは50℃から60℃の範囲内、そして最も好ましくは55℃から60℃である。したがって、最低温度は30℃,35℃又は40℃であり、そして最高温度は60℃,65℃又は70℃である。加熱処理の長さは、好ましくは1から24時間の間、より好ましくは4から18時間の間、さらにより好ましくは6から16時間の間、そして最も好ましくは10から14時間、例えば12時間である。したがって、加熱の最短時間は1,2又は3時間であり、そして最長時間は20,22又は24時間である。
【0018】
特別な態様において、熱処理は50℃から60℃において12から16時間、そしてより好ましくは50℃で14時間行われる。温度及び時間は対象となる検体及び製造される抗体の性質に適するように選択することができることを当業者は理解するであろう。
【0019】
本明細書で使用さる際「抗体」とは、機能的に活性なフラグメント、誘導体又は類似物を含み、限定せずに、ポリクロナール、モノクロナール、2価‐、3価‐又は4価‐抗体、ヒト化又はキメラ抗体、一本鎖のFvフラグメント、Fabフラグメント、Fab’及びFab’フラグメントのような一本鎖抗体、抗イディオタイプ(anti−Id)抗体及び上記のいずれかの抗原決定基結合フラグメントであり得る。これらの抗体及びそのフラグメントは天然に存在する、ヒト化、キメラ又はCDR移植の抗体であり得、そして必要に応じて修飾、アミノ酸又はドメインの追加又は削除をするために標準的分子生物学の技術を使用することができる。ヒト化抗体は、1以上の非ヒト種の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子のフレームワーク領域を有する非ヒト種の抗体分子である(例えば、US 5,585,089を参照)。本発明の方法を使用して精製される抗体分子は、いずれかのクラス(例えば、IgG,IgE,IgM,IgD及びIgA)又は免疫グロブリン分子のサブクラスの抗体であり得る。
【0020】
これらの抗体分子の製造法は当業者に良く知られている(例えば、Shrader et al.,WO92/02551;Ward et al.,1989,Nature,341:544;Orlandi et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:3833;Riechmann et al.,1988,Nature,322:323;Bird et al,1988,Science,242:423;Queen et al.,US 5,585,089;Adair,WO91/09967;Mountain and Adair,1992,Biotechnol.Genet.Eng.Rev,10:1−142;Verma et al.,1998,Journal of Immunological Methods,216:165−181参照)
【0021】
モノクロナール抗体は、当業者に知られているいずれかの方法、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler & Milstein,1975,Nature,256:495−497),トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al.,1983,Immunology Today,4:72)及びEBV−ハイブリドーマ法(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp77−96,Alan R Liss,Inc.,1985)により製造される。
【0022】
キメラ抗体は、軽鎖及び重鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから構成されるように遺伝子操作された免疫グロブリン遺伝子によりコードされた抗体である。これらのキメラ抗体は、抗原性が少ないようである。2価抗体は当業者に知られている方法により作ることができる(Milstein et al.,1983,Nature 305:537−539;WO93/08829,Traunecker et al.,1991,EMBO J.10:3655−3659)。2価‐、3価‐及び4価‐抗体は多重特異性を含むこともあり、また単一特異性のこともある(例えば、WO92/22853参照)。
【0023】
また抗体配列は、Babcook,J.et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843−7848及びWO92/02551により記述されているように、特異抗体の生産のために選択された単一リンパ球から作られた免疫グロブリン可変領域の分子クローニング及び発現に基づく単一リンパ球抗体法を使用して造ることもできる。この後者の方法は、個別の抗体生産細胞を単離し、次いでこのクローンを拡大し、次いで同族抗原を認識する抗体を生産するクローンをスクリーニングし、そして、必要があれば、可変重鎖(V)及び可変軽鎖(V)の遺伝子配列を同定することによる。その他には、同族抗原を認識する抗体を生産する細胞を培養し、次いでスクリーニングすることもできる。
【0024】
本発明の方法を使用して製造された抗体は、最も好ましくは、患者に投与された場合に抗体の半減期を延長するトキシン、薬物、細胞毒化合物又はポリマー又は他の化合物と結合することができるヒト化抗体である。
【0025】
組換えタンパク質を発現する方法は当業者に良く知られている。例えば、上記のように作られた抗体を発現させるための宿主細胞の適する例は、グラム陽性又はグラム陰性細菌のような細菌、例えば、E.coli,又はイースト細胞、例えば、S.cerevisiae,又は哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞及び骨髄腫又はハイブリドーマ細胞系、例えばNSO細胞を含む。最も好ましくは、本発明の方法において、組換え抗体は、細菌、例えば、E.coliで生産される(Verma et al.,1988,J.Immunol.Methods 216:165−181;Simmons et al.,2002,J.Immunol.Methods 263:133−147参照)。
【0026】
E.coli宿虫細胞は天然に存在するE.coli又は組換えタンパク質を生産することができる突然変異株であり得る。特定の宿主E.coli株の例は、MC4100,TG1,TG2,DHB4,DH5α,DH1,BL21,XL1Blue及びJM109を含む。また例には、修飾E.coli,例えば、代謝変位株及びプロテアーゼ欠乏株も含まれる。一つの好ましいE.coli宿主は、組換えタンパク質醗酵のために多く使用されているホスト株であるE.coli W3110(ATCC27,325)である。本発明の方法を使用して生産された組換え抗体は、タンパク質の性質及び生産規模によって、典型的にE.coli宿主細胞の周辺腔又は宿主細胞の培養上清のいずれかの中に発現される。これらのコンパートメントを標的としたタンパク質のための方法は当業者には良く知られており、総説としてMakrides,Microbiological Reviews,1996,60,512−538.を参照。タンパク質をE.coliの周辺腔に指向させるのに適するシグナル配列の例は、E.coli PhoA,OmpA,OmpT,LamB及びOmpFシグナル配列を含む。タンパク質の分泌を生じさせるために自然の分泌経路により又は外側の膜の限定された漏出の誘導によりタンパク質は上清を指向することができ、その例としては、pelBリーダー、タンパク質Aリーダー、バクテリオシン放出タンパク質、培養培地へグリシンの添加をともなうマイトマイシン誘導バクテリオシン放出タンパク質そして膜透過性のためにkil遺伝子の共発現がある。最も好ましいのは、本発明の方法において、組換えタンパク質が宿主E.coliの周辺腔に発現されることである。
【0027】
E.coli宿主細胞中の組換えタンパク質の発現は、誘導可能なシステムの調節の下に行うことができ、それによりE.coli中の組換え抗体の発現は誘導可能なプロモーターにより調節されている。E.coli中で使用するのに適した多数の誘導可能なプロモーターが当業者にはよく知られており、そしてプロモーターによって、組換えタンパク質の発現は、例えば、温度又は増殖培地中の特別な物質の濃度のような種々の因子により誘発され得る(Baneyx,Current Opinion in Biotechnology,1999,10:411−421;Goldstein and Doi,1995,Biotechnol.Annu.Rev,105−128)。誘導しうるプロモーターの例には、ラクトース又は非加水分解ラクトース類似体、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導することができるE.coli lac,tac及びtrcプロモーター,及びリン酸塩、トリプトファン及びL−アラビノースでそれぞれ誘導されるphoA,trp及びaraBADプロモーターが含まれる。発現は、例えば、誘発物質の添加又は誘導が温度依存性の場合には温度の変化により誘導することができる。組換えタンパク質の誘導の場合には、発現は培地へ誘発物質を添加することにより行われ、誘発物質は醗酵システム及び誘導物質により適する方法、例えば、誘発物質の1回または複数回添加、または徐々に供給することにより添加することができる。この誘導物質の添加と実際のタンパク質発現の間には遅れがあり得る、例えば、誘発物質がラクトースである場合に、ラクトースの前に予め存在する炭素源が利用されているが、タンパク質発現の誘導が生じるまでに遅れがあり得る。
【0028】
E.coli宿主細胞培養(醗酵)はE.coliの増殖及び組換えタンパク質の発現を支持するいずれかの培地中で培養することができる。培地は、Pirt S.J.(1975)Principles of Microbe and Cell Cultivation,Blackwell Scientific Publicationsに示されているような、そしてこの中に記述されている増殖速度に適する改良がなされた、化学的に規定されたいずれかの培地であり得る。適する培地の例は、Humphreys et al.,2002,Protein Expression and Purification,26:309−320に記述されている「SM6E」である。
【0029】
E.coli宿主細胞の培養は、必要な生産スケールにより振とうフラスコのような適当な容器又は醗酵装置の中のいずれかで行うことができる。1,000リットルより大きく、約100,000リットルまでの容積の種々の大規模な醗酵装置を使用することができる。好ましくは1,000から50,000リットル、より好ましくは1,000から10,000リットルの醗酵装置が使用される。0.5から1,000リットルの容積を持つ小規模な醗酵装置も使用することができる。
【0030】
E.coliの醗酵は、求めるタンパク質と収量によっていずれかの適当なシステム、例えば、連続式、バッチ式又はバッチ投入モードで行うことができる(Thiry & Cingolani,2002,Trends in Biotechnology,20:103−105)。バッチ式モードでは、必要な場合に、栄養素又は誘発物質を一度にまとめて添加することができる。その他には、バッチ投入式培養を使用することができ、誘導前のバッチ式において最大比増殖速度で増殖した培養を、最初に醗酵装置の中に存在した栄養素及び1回以上栄養素の追加法を使用して維持し、醗酵が完了するまで増殖速度を調節することができる。バッチ投入モードを誘発前に使用することができ、E.coli宿主細胞の代謝を調節し、そして高い細胞密度にすることができる(Lee,1996,Tibtech,14:98−105)。
【0031】
本発明の各態様の好ましい特徴は、必要な変更を加えればそれぞれ他の態様である。特許及び特許出願に限らず本明細書に言及されている出版物は全て、完全に記述されていたものとしてここに引用により取り入れられるべく個別の出版物が特別にそして個別に示されていたものとして引用によりここに取り入れられている。
【0032】
本発明は、以下の実施例を参照して記述されるが、これは単に説明のためのものであり、いずれにしても本発明の範囲を制限すると解釈してはならない。
【実施例】
【0033】
実施例1:抗体Aの収量に対する凍結‐解凍の効果
抗体AをコードするDNAを挿入したベクターpTT0Dを使用して、抗体A(Fab’)をE.coli W3110細胞中で発現した。醗酵(DD53中)を25℃で、OD600が111.6になり、回収ができる状態まで行った。室温で回収培養分割液50mlを遠心分離した:一つの細胞ペレットを−20℃に4時間置き、第2のペレットを培養上清5mlプラスHO 29ml及び100mMEDTAを含有する1M Tris,pH7.4 5mlの中に懸濁し、次いで170rpmで14時間攪拌しつつ50℃の熱処理を行った。熱処理の後、再懸濁した細胞ペレットをBeckman J.6遠心分離機中4200rpmで30分間4℃において遠心分離して澄明にした。機能性抗体Aを含有する上清を、20mMリン酸緩衝液中プロテインG HPLC分析を使用して、Fab’についてアッセイした。注入時のpH7.4からpH2.5へ減少するpHグラジエントを使用して抗体Aを溶出した。機能性抗体の収量は、標準Fab’濃度と比較することにより算出した。
【0034】
凍結‐解凍を行わなかった検体に比較して、凍結‐解凍検体において機能性抗体の収量の増加を認めることができる(図1)。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、機能的抗体Aの収量に対する凍結‐解凍処理の影響を示す棒グラフである。それぞれのバーの上の数字は、機能的抗体Aの収量をmg/澄明化再懸濁のリットルで示す。バー1は、凍結しない対照再懸濁のFab’収量を示し、そしてバー2は凍結‐解凍を行った再懸濁のFab’収量を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え抗体分子をコードする発現ベクターで形質転換した宿主細胞検体を培養し、該検体を凍結‐解凍処理に供することを含む、組換え抗体の製造方法。
【請求項2】
前記発現ベクターが、少なくとも抗体軽鎖の一部と、少なくとも抗体重鎖の一部とをコードし、該軽鎖及び重鎖抗体分子の少なくとも一部が分泌され、結合して、機能性抗体を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凍結‐解凍処理ステップが、前記検体を、緩徐凍結及び/又は緩徐解凍に供することからなる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記凍結検体が、マイナス20℃からマイナス70℃の間で保存される、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記凍結検体がマイナス20℃の温度に置かれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記凍結検体がマイナス70℃の温度に置かれる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
さらに少なくとも一つの精製ステップを含み、該精製ステップが前記方法の後に行われる、上記請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記組換え抗体分子が、天然、ヒト化又はキメラ抗体、又はそれらのフラグメントである、上記請求項のいずれか一つに記載の方法。


【図1】
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【公表番号】特表2008−520226(P2008−520226A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542092(P2007−542092)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004429
【国際公開番号】WO2006/054082
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】