説明

抗凝固剤/滅菌剤組成物と方法

【課題】液体配送系、例えば注排液口系、カテーテル系または注排液口−カテーテル系の液体接触面の血栓形成を予防する組成物および方法を提供する。
【解決手段】液体配送系は、患者に液体を供給するために患者に連結される。本方法は、タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物、さらに抗凝固剤を含む血栓症防止液と前記表面を接触させることを含む。また別の実施態様では、液体配送系の液体接触面を抗凝固剤含有溶液と接触させ、その後でタウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液と接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体配送系(例えばカテーテル系および注排液口系(port system))の使用時または当該系によって惹起される血栓症の予防方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤配送系は、医薬、栄養物または他の活性薬剤を含み得る液状物質を患者に導入するために医療では広く用いられている。そのような系はしばしばカテーテルを用いることを必要とするが、多くの適用例で、これは外科手術を用いてまたは静脈内に配置され、所望する物質の長期投与にふさわしい場所に縫合される。典型的な配送系には、中心カテーテル(例えば短腸症候群の治療の場合に(患者の一生にわたって)完全非経口栄養法(TPN)のために用いられる)、カテーテル/ドレイン(血液透析および末期的腎不全の患者の腹腔透析の場合)、および皮下に埋め込んだ注排液口(ポート)系(例えば悪性疾患の治療に用いられ得る)が含まれる。
【0003】
液体配送系(例えば注排液口またはカテーテル主体系)の使用に伴う問題の1つは、これらの系によって感染が発生し、順次、感染性心房内血栓、塞栓症、静脈炎、敗血症、僧帽弁心内膜炎、房室口感染、敗血症性肺膿瘍、および/または化膿性敗血症性肺梗塞につながることである。この問題の解決の1つは、抗菌剤タウロリジンおよび/またはタウラルタムを含む溶液を使用するものである。例えば、非経口栄養法を受けている患者の敗血症性合併症を防止するために、タウロリン溶液の長期連続輸液が推奨されている(非特許文献1)。最近になって、注排液口系またはカテーテルで敗血症を予防または軽減するために、一時的封入または洗浄としてタウロリン溶液を使用することが特許文献1で示唆された。
【0004】
タウロリジンおよび/またはタウラルタムは特に、細菌感染に対抗するだけでなく、細菌毒素の遊離を防止するとともに存在する可能性がある一切の毒素を不活化させる効果をもつ。これらの化合物はメチロール転移剤で、細菌の細胞壁成分と反応して共有結合を形成することによって抗菌活性を示す。したがって、当該薬剤配送系における極めて長期に及ぶ設置期間の可能性にもかかわらず、耐性が生じることはなかった。
【0005】
液体配送系の使用に伴うまた別の問題は、特に長期間の使用に際しフィブリン鞘沈着物による被覆形成のために配送管に塞栓が生じる可能性である。この被覆は、カテーテル周囲のフィブリン含有血栓から始まり、血管形成線維性結合組織の中に進行していく。この鞘は線維芽細胞およびコラーゲンを含む。フィブリン溶解性薬剤は結合組織を溶解することはできない。
【0006】
フィブリンおよび/またはコラーゲン沈着物は配送管を著しく狭め、重大な場合には完全な閉塞をもたらす。液体配送系におけるフィブリンおよび/またはコラーゲン沈着物形成の結果はしたがって明らかに危険である。さらにまた、薬剤配送系の取り外しまたは交換は、外科的に行われて、更なる入院および出費が必要となり得る。
【0007】
特にカテーテル終了部に位置する血栓の除去は困難であり、血栓溶解剤、例えばウロキナーゼ、ストレプトキナーゼなどでは溶解することができず、合併症が続いて発生しがちである。大静脈カテーテルの場合の合併症には、血栓症、塞栓症、静脈炎および敗血症が含まれ得る。大腿部カテーテルの場合の合併症には、血栓症、致死的な肺塞栓症および敗血症が含まれる。鎖骨下カテーテルの場合の合併症には、穿刺不能閉塞、不正確なカテーテル配置による血栓症、敗血症性合併症、鎖骨下静脈の完全閉塞、および深部損傷(カテーテルと血管壁との間の壁側血栓形成)によって生じる血栓性変化が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第99/2807号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Blenkharn, Clinical Nutrition,6(1):35-38(1987); Johnston et al., Clinical Nutrition, 12(6):365-358(1993))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって液体配送系で血栓症を予防する方法および組成物に関する技術がなお必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にしたがえば、液体配送系の液体接触面上の血栓形成を予防する組成物および方法が提供される。この液体配送系は、患者に液体を供給するために患者と連結される。実施態様の1つは、タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む血栓予防液と当該表面を接触させることを伴い、この血栓予防液はさらに抗凝固剤を含む。また別の実施態様は、抗凝固剤を含む溶液と配送系の液体接触面を接触させ、さらにその後タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物と接触させる。本発明の組成物は上記の方法を実施するために利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物および方法は、液体配送系、例えばカテーテルおよび注排液口系(血液透析で使用する皮下注排液口系を含む)での血栓形成を予防する。本発明の組成物は、抗菌的に有効な量のメチロール転移剤、例えばタウロリジンおよび/またはタウラルタムを含むことができる。本明細書で用いるタウロリジンおよび/またはタウラルタムという用語は、化合物タウロリジン、タウラルタムおよび実質的な生物学的同等物を指す。タウロリジンおよび/またはタウラルタムは、好ましくは医薬的に許容できる液体として存在し、特に好ましい実施態様ではそれは等張な食塩水溶液である。
【0013】
本発明の組成物は、血栓症予防量の抗凝固剤を含有する液体を含むことができる。この抗凝固剤は、例えばクエン酸ナトリウムまたはヘパリンであろう。本発明の組成物および本発明の方法で利用することができる組成物に含むことができる他の抗凝固剤には、アプロチニン、ヒルジン、デシルジン、ダナパロイド、ダナパロイド−ナトリウム、ペントサン、ペントサンポリスルフェート−ナトリウムと、チエノピリジン誘導体、例えばチクロピジン、クロピドグレルなど、そしてこれらの混合物が含まれる。
【0014】
実施態様の1つにしたがえば、本発明の方法は、タウロリジンおよび/またはタウラルタムを適切な等張または高張溶液中で添加抗凝固剤とともに併用することによって、フィブリンおよび/またはフィブリン/コラーゲンネットで構成された血栓の沈着を防ぐ方法を提供する。この方法は、カテーテル敗血症と患者にとって重篤な結果を予防するために役立つ。この併用はまた、カテーテル塞栓を予防し、したがって血栓の除去およびカテーテルの交換のための危険性の高い外科手術を避けるために役立つ。
【0015】
デシルジン(遺伝子組換え(リコンビナント)ヒルジン)は実施態様の1つによる効果的な抗凝固剤であり、ヘパリンと比較した場合、遊離トロンビンおよびフィブリン結合トロンビンの直接的および選択的抑制物質として作用する。ヒト血漿の凝固時間はこの薬剤によって延長される。タウロリジン溶液またはタウロリジン/クエン酸ナトリウム溶液に数mgの用量、例えば約0.1−10mg、好ましくは約1−2mgを添加するだけで十分である。
【0016】
ヘパリン−ナトリウムとは別の凝固抑制物質は、ダナパロイド(danaparoid)−ナトリウムであり、これはヘパランスルフェート84%を含む効果的な抗血栓剤である。この製品はブタの粘膜に由来し、精製工程のためにヘパリンおよび/またはヘパリンフラグメントを含まない。このため、ヘパリン誘発血小板減少症の場合に極めて許容性がありヘパリン−ナトリウムの代替物として有用である。用量としては、約7.5から15抗Xa因子単位を100mlのタウロリジン溶液に添加できる。
【0017】
血小板凝集抑制物質を含む溶液または、抗凝固剤をさらに添加された溶液、例えばクエン酸塩−デキストリン溶液、クエン酸塩−リン酸塩−デキストロース−アデニン溶液、クエン酸ナトリウム−クエン酸溶液またはヘパリンなどは、好ましくは生成後にろ過滅菌して、10から100mlのバイアルに無菌的に充填しなければならない。添加された抗凝固剤とタウロリジン/タウラルタムとの可能な相互反応を回避するために、本発明の溶液はまた2段階で間欠的に投与し、カテーテル内で凝固およびプラーク形成を回避することもできる:
1)抗凝固剤を含む滅菌等張塩化ナトリウム溶液の注入。所望の場合は、この溶液は再度吸引することができる。
2)その後、滅菌等張塩化ナトリウム溶液でカテーテルを洗浄し、続いてタウロリジン2%溶液を注入(ロック式による)。所望の場合は、このタウロリジン溶液は約1時間後に再度吸引することができる。
【0018】
したがって本発明の特徴の1つは、液体配送系、例えば注排液口系またはカテーテル主体系(血液透析系を含む)で使用するために適した溶液を提供することであり、この溶液は抗凝固剤とともにタウロリジンおよび/またはタウラルタムを含む。
【0019】
好ましい溶液は、重量で0.5から3%のタウロリジン、または重量で1から7.5%、この化合物の溶解性に応じて有利には3から5%のタウラルタムを含むであろう。重量でタウロリジンを1.0から2.0%、好ましくは約1.0%含む溶液が好ましい。
【0020】
クエン酸ナトリウムは無水クエン酸ナトリウムの形で用いることができるが、好ましくは二水和物の形で用いられるであろう。好ましい溶液は重量で0.5から3.0%、好ましくは1.0から2.0%のクエン酸ナトリウムを含むものである。重量で約1.5%、例えば1.45%のクエン酸ナトリウムを含む溶液はさらに電解質を添加しなくとも等張であることが判明し、特に本発明での使用に適している。
【0021】
本発明の実施態様の1つでは、この溶液はヘパリン、ヘパリン誘導体または類似体、例えばペントサン−ナトリウム、特にヘパリン−Naまたはヘパリン−Caを含むであろう。ヘパリンの望ましい量は患者によって変動するが、当業者には容易に決定できるであろう。ヘパリンの平均濃度は、1から15U/mlヘパリン−Na、好ましくは1から2U/mlの範囲であると予想できる。
【0022】
本発明の溶液は一般に発熱因子非含有滅菌水で生成され、さらにそれらを等張にするために例えば無機もしくは他の塩または成分を含むこともできる。陽イオンおよび陰イオン、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、乳酸イオン、マレイン酸イオンおよび重炭酸イオンが電解質として適切である。塩化ナトリウムは、例えば重量で約0.45%で特に適切である。
【0023】
非経口的に許容できる例えばポリオールも、タウロリジンの全体的静脈内耐性を高めることが見られるので添加できる。適切なポリオールには、炭化水素、例えば、グルコースおよびフルクトース(またはこれらの混合物、例えば転化糖)のようなヘキソース、キシロースのようなペントース、または多糖類、例えばデキストランまたは加水分解澱粉;グリセロールおよび糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトールまたはキシリトールが含まれる。
【0024】
ポリオールの濃度は通常は重量で3から40%の範囲であることができる。グルコースの場合は、その濃度は重量で10から30%の範囲、好ましくは20%であろう。
【0025】
本溶液はまたポリビニルピロリドン(PVP)を含んでもよい。これは当該溶液に重量で例えば約4から7%の濃度で混和することができる。5%のPVPを含有する溶液が好ましい。これは、活性物質の可溶化を助け、さらにまた溶液の腫脹圧にも寄与する。PVPの分子量は50,000を越えるべきではなく、好ましくは10000未満、例えば7000から9000の間である。BASFから市販されているコリドン17(特に精製されたもので、PCT/GB97/00069で教示されたように実質的に過酸化物を含まない)が比較的迅速に再吸収され、さらに腎臓から排出される。
【0026】
溶液のpHは好ましくは7から8の範囲で、例えば約7.3−7.4であろう。溶液に存在するいずれの成分も所望のpHの溶液を生成するために用いることができるが、通常の緩衝液またはpH調整剤も用いることができる。
【0027】
そのような溶液は、液体配送系、例えばカテーテル系および注排液口系とともに本発明にしたがって用いられる。そのような溶液は、液体配送系に充填し、これを洗浄し、また当該配送系を使用しないときにはこれに封入されるために用いることができる。好ましくは、これらを用いて、各々所望の液体物質(例えば化学療法剤または栄養物)の投与の合間に、または貯蔵器から任意の血液サンプルを取り出した後で、当該液体配送系に効果的に封入することができる。化学療法剤または他の活性もしくは栄養物質の投与のために液体配送系を用いることを所望しない期間があるとき(化学療法剤の循環的供給時または完全非経口栄養法の場合にしばしば必要とされる)は、当該液体配送系を本発明の溶液で満たし、抗菌性封入物として機能させることができる。比較的少ない容積(数ミリリットル、例えば3mlの規模)の溶液がこのために必要である。接触時間は最低限望ましくは約1時間であるが、封入は12時間まで、またはそれ以上実施できる。実施態様の1つによれば、本発明の溶液は、液体配送系内に少なくとも約12時間封入される。液体配送系に封入される本発明の溶液は毎日交換できる。これらの行為のいずれも、常在菌による細菌性毒素、例えばLPSおよび内毒素の耐性の発生または蓄積をもたらすことなく実施できる。本発明の溶液は生体内(in vivo)で良好に許容され、毒性がなく副作用も認められなかった。
【0028】
したがって、本発明の別の特徴では、液体配送系における血液凝固を予防または軽減するために一時的封入として、本明細書で開示する溶液の使用が提供される。
【0029】
本発明のまた別の特徴では、皮下埋め込み液体配送系の使用に伴う血液凝固を軽減または予防するため、本明細書で開示する溶液の使用が提供される。
【0030】
本発明の溶液は、心脈管系につながるカテーテルを介して貯蔵器から医薬を配送する系(例えば化学療法時に用いられるようなもの)で特に適切である。癌化学療法剤を導入する前に、例えば本発明のタウロリジン溶液(一時的封入として存在する)をカテーテルから除去するか、または食塩水を用いて血流中に洗い出す。所望の癌化学療法剤を続いてチャンバー内に注射し、時間をかけて体内に注入する。そのような薬剤の例には、アルキル化剤、例えばヌミスチンヒドロクロリドおよびシクロホスファミド;抗代謝剤、例えばフルオロウラシル、シタラビンおよびメトトレキセート;抗腫瘍性抗生物質、例えばブレオマイシンスルフェート、ダウノルビシンヒドロクロリドおよびイダルビシンヒドロクロリド;アルカロイド、例えばリンクリスチンスルフェート、ならびにシスプラチン、例えばカルボプラチンが含まれる。これらの薬剤は、注排液口系により種々の製剤として数回におよぶ短期および長期輸液またはボーラス注射として投与される。
【0031】
本発明のさらにまた別の特徴では、液体配送系、例えば注排液口系またはカテーテル主体系(血液透析系を含み、そのような系では血液凝固を抑制するために有効な量の本発明の溶液で系は洗浄および/または封入される)の使用時の、または使用に伴う血液凝固を抑制する方法が提供される。
【0032】
上記に示したように、実施態様の1つにしたがえば、本発明で使用する抗凝固剤は、タウロジンおよび/またはタウラルタム溶液との混合調製物として投与される。しかしながら、当該処置の性質上、他の実施態様では当該抗凝固剤溶液は、タウロリジンおよび/またはタウラルタム溶液の投与前、投与中、または投与後に別々に投与される。
【0033】
例えば、実施態様の1つでは液体配送系を、先ず血栓予防量の上記の抗凝固剤を含む溶液と接触させるが、これは、例えば抗凝固剤溶液で装置を洗浄するか、または抗凝固剤溶液を装置に注射し、続いて抗凝固剤を、例えば吸引または洗浄によって除去することによって実施される。その後で、タウロリジン含有溶液を液体配送系中に注入し、さらに好ましくは少なくとも約1時間その内面との接触を維持する。
【0034】
カテーテル系内の血栓予防のためおよび感染予防のためにも、タウロリジン、タウラルタム、クエン酸ナトリウムおよび/または有機抗凝固剤を併用することによる顕著な利点は、必要とされる抗凝固剤の量が予想外に少量であるということである。すなわち、数百ミリリットル当たりそれぞれ数ミリグラムが、カテーテル系内のフィブリン/コラーゲン沈着物を予防するために要求される。
【0035】
この併用溶液は生成物の安定性について予想外に有利であることが判明した。この併用溶液は0.1−0.2μmフィルターで濾過滅菌した後、無菌的に10−100mlの血清瓶に充填される。
【0036】
存在する一切の微生物(生物学的荷重)を不活化するために十分であって、生成物の抗凝固特性を不活化または実質的に低下させなることなく、蒸気を用いて、併用溶液を充填した瓶を短時間滅菌してもよい。
【0037】
加熱滅菌に抵抗性のない抗凝固剤を用いるときは、本発明の溶液は、溶液の滅菌のために十分な小孔を有するフィルター、例えば0.1−0.2ミクロンの滅菌フィルターによって無菌的条件下でろ過してもよい。このようにしてろ過した溶液を続いて10−100mlのバイアルまたは瓶に充填し、ゴム栓およびアルミキャップで密栓する。
【0038】
本発明のまた別の特徴では、したがってタウロリジンおよび/またはタウラルタムの溶液と抗凝固剤含有溶液とを含む生成物が提供される。この抗凝固剤は、クエン酸ナトリウム、アプロチニン、ヒルジン、デシルジン、ダナパロイド、ダナパロイド−ナトリウム、ヘパリン、ペントサン、ペントサンポリスルフェート−ナトリウムと、チエノピリジン誘導体、例えばチクロピジン、クロピドグレルなどと、その混合物とから選ばれる。低用量、例えば0.1−10mg、好ましくは約1−2mgの抗凝固剤を用いることができる。
本発明の血栓予防液は、重量で約0.01から約5%の範囲内の量で上記の抗凝固剤を含むことができる。
【0039】
本発明は、液体配送系でタウロリジンおよび/またはタウラルタムを使用する具体的な参照例を用いて説明したが、本明細書で述べた特定の抗凝固剤は、液体配送系での、特に配送管内でのフィブリンコラーゲン沈着物の形成を予防するために用いることができる。
したがって本明細書で開示するように、本発明は、液体配送系、例えば注排液口系またはカテーテル主体系で血液凝固を予防する抗凝固剤の使用を提供する。本発明はまた、以下の非限定的実施例によってさらに詳述されるであろう。
【実施例】
【0040】
実施例1以下のように本発明にしたがって2%タウロリジン溶液および3%タウロリジン溶液を調製する。
【0041】
【表1】

【0042】
タウロリジンおよびクエン酸三ナトリウム二水和物を水に60℃で溶解し、冷却してpHをクエン酸一水和物および水酸化ナトリウムで7.4に調節する。溶液をろ過滅菌し、10−100mlの血清瓶に充填する。望ましくない相互作用を避けるために、滅菌は、例えば英国薬局方(付録XVIII, 1998)に記載されているように生物学的問題物とFo概念との関係で好ましくは迅速にかつ121℃以下で実施されるべきである。
【0043】
【表2】

【0044】
タウロリジンおよびクエン酸三ナトリウム二水和物を水に60℃で溶解し、冷却してpHをクエン酸一水和物で7.0−7.2に調節する。溶液をろ過滅菌し、無菌的に10−100mlの血清瓶に充填する。
上記の製剤のそれぞれに下記の凝固剤の1つまたは2つ以上を添加できる:
=ヘパリン−ナトリウム
=アプロチニン
=ヒルジン
=ヘパリン
=ペントサン−ナトリウム
=デシルジン
=ダナパロイド−ナトリウム
【0045】
別々に調製する場合は、上記の成分は蒸留水に溶解し、ろ過滅菌して瓶に充填し、生物学的荷重に応じて100−121℃で15分間オートクレーブで滅菌する。
【0046】
実施例2:注排液口系
患者は、胸筋の小嚢内に移植した小さなチタンプレート上に載せた約0.5cm3容積のポリウレタンチャンバーを含む注排液口配送系を有する。このチャンバーから出る直径が約0.3mmのカテーテルの先端が主要静脈の1つに挿管され、右心房に入る大静脈の入口近くに配置される。埋め込み後、重量で0.9%の滅菌塩化ナトリウム溶液(800IUのヘパリンを含む)の2mlでチャンバーを洗浄した。
【0047】
続いて約3mlの実施例1の溶液をチャンバーに充填する(特殊な注射筒でチャンバーに注入)。続いてこの装置に12時間、または化学療法剤の投与が必要となるまで封入する。
【0048】
各薬剤で処置した後、または静脈血サンプルを取り出すためにチャンバーを使用した後、この薬剤配送系を滅菌した10mlの0.9%塩化ナトリウム溶液で注意深く洗浄する。続いて実施例1の溶液2mlをチャンバーに導入し、注射針を取り除く。続いてこの注排液口系に、微生物感染に対抗して有効に封入が行われる。食塩水で洗浄後、所望する場合はその後さらに医薬を導入し、この手順を繰り返す。また別には、この注入溶液はさらに医薬を導入する前に吸引することができる。
【0049】
実施例3:カテーテル配送系
完全非経口栄養法を受けている患者に既知の技術により中心カテーテルを装着させる。栄養物は睡眠中に供給されるが、日中はカテーテルに約3mlの実施例1の溶液が封入される。これによって、効果的にカテーテル敗血症が予防され、さらに配送管内のフィブリンおよび/またはコラーゲン沈着が防止される。さらにまた、栄養補給がおそらく数時間後に一晩再開され体内を通過するときにこれは副作用をもたらさない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のA)およびB)から成る群から選ばれる施療法を含む、患者に液体を供給するために患者に連結された液体配送系の液体接触面上の血栓形成を防止する方法:
A)タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含み、かつ抗凝固剤を含む血栓症予防液と前記表面を接触させること;および
B)最初に血栓症予防量の抗凝固剤を含む溶液と前記表面を接触させ、その後でタウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液と前記表面を接触させること。
【請求項2】
タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液または液体を前記表面と少なくとも1時間接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液または液体が、少なくとも12時間前記液体配送系に封入される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体配送系に封入されるタウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液または液体が少なくともほぼ毎日交換される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
最初に前記表面を抗凝固剤溶液と接触させるとき、前記表面を前記抗凝固剤含有溶液で洗浄する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液が、前記表面と少なくとも約1時間接触させられる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液が、前記配送系中に少なくとも約12時間封入される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記配送系に封入されるタウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液が少なくともほぼ毎日交換される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗凝固剤含有溶液が、前記液体配送系に前記抗凝固剤含有溶液を注入し、続いて前記液体配送系から前記抗凝固剤含有溶液を除去することによって前記表面と接触させられる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液を前記表面と少なくとも約1時間接触させる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液が前記配送系に少なくとも約12時間封入される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記配送系に封入されるタウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液が少なくともほぼ毎日交換される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含む溶液または液体が、タウロリジンを重量で約0.5から約3%、またはタウラルタムを重量で約1から約7.5%含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記抗凝固剤が、クエン酸ナトリウム、アプロチニン、ヒルジン、デシルジン、ダナパロイド、ダナパロイド−ナトリウム、ヘパリン、ペントサン、ペントサンポリスルフェート−ナトリウム、チクロピリジン、クロピドグレル、およびその混合物から成る群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗凝固剤が約0.1−10mgの範囲内の量で存在する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
タウロリジン、タウラルタムまたはその混合物を含有し、さらに抗凝固剤を含有する医薬的に許容できる液体を含む、請求項1の方法で使用する組成物。
【請求項17】
前記抗凝固剤が、アプロチニン、ヒルジン、デシルジン、ダナパロイド、ダナパロイド−ナトリウム、ペントサン、ペントサンポリスルフェート−ナトリウム、チクロピリジン、クロピドグレル、およびその混合物から成る群から選ばれる請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗凝固剤がヘパリンである請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗凝固剤がクエン酸ナトリウムである請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記タウロリジンが重量で約0.5から約3%の量で存在するか、またはタウラルタムが重量で約1から約7.5%の量で存在し、さらに前記抗凝固剤が重量で約0.01から約5%の範囲内の量で存在する請求項16に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−152448(P2011−152448A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108288(P2011−108288)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2000−91771(P2000−91771)の分割
【原出願日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(500140219)エド・ガイストリッヒ・ゼーネ・アクチェンゲゼルシャフト・フュール・ヒェミッシェ・インドゥストリー (10)
【氏名又は名称原語表記】Ed. Geistlich Soehne AG fuer chemische Industrie
【住所又は居所原語表記】Bahnhofstrasse 40, P.O. Box 157, 6110 Wolhusen, Switzerland
【Fターム(参考)】