説明

抗菌剤を有するカメラ

【課題】 本発明の目的は、特定の抗菌剤を有することによって、主にプラスチックで構成されているカメラ本体部の表面や内部を変質させたり、金属部品や電気部品を劣化させたり、さらには装填される未露光フィルムの写真特性や物理特性に悪影響を与えたりすることがなく、防菌防黴性を顕著に改良したカメラ(所謂レンズ付フィルムユニット)を提供することにある。
【解決手段】 カメラ本体部に無機系抗菌剤を含有する事を特徴とするカメラ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカメラに関し、更に詳しくは、特定の抗菌剤を有することによって防菌防黴性を顕著に改良したカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】カメラに黴が発生することは極めて問題であり、それがレンズに係わる光学系であると、撮影画面に欠陥を与え、写真フィルムが装填されているカメラ内部であると、その黴が写真フィルムに転移して撮影画像に欠陥を与える。したがって従来、ユーザーはカメラの取り扱いに極度の注意を払わざるをえなかった。
【0003】近年、カメラはより日常的に用いられるというユーザーのニーズによって、より防塵化、防滴化、防水化が進み、密閉度が向上してきている。そのため写真フィルムが装填されているカメラ内部では、ゼラチンや水分を有する写真フィルムにとって、黴が発生しやすい状況になっている。
【0004】近年、簡易なプラスチック製カメラにハロゲン化銀カラー感光材料を装填した状態で販売される、所謂レンズ付フィルムユニット(以下本カメラともいう)が普及して来ている。これは、通常のカメラにフィルムを装填する煩わしさや装填ミスによる失敗から解放し、又、その簡便性から写真撮影機会の増大をもたらした。又、撮影目的に合わせてストロボ付き、望遠型、超広角型などが開発、実用化されている。
【0005】レンズ付フィルムユニットは周知の如くメーカーにより予め感光材料が装填された簡易型カメラであって、ユーザーは装填された1本の感光材料の撮影にのみ使用し、撮影終了後にはレンズ付フィルムユニットは感光材料を収めたままの状態で現像所に送られるものであることから、カメラは極めてシンプルな構造に造られており低価格化が図られている。
【0006】したがってレンズ付フィルムユニット本体および一部の部品は軽量なプラスチックでてきており、携帯に便利であると言う長所も備えている。
【0007】レンズ付フィルムユニットは通常、ユーザーが撮影後、露光済みフィルムが入ったままの状態で現像所に送られ、そこでフィルムがカメラ本体部から分離されて現像、プリントされ、ユーザーに渡される。一方カメラ本体部は現像所から回収されて一部または前部が再資源化のために破壊される。
【0008】回収されたカメラ本体部にそのまま未露光フィルムを再装填して、再度レンズ付フィルムユニットとしてユーザーに提供する方法が最も有効な再利用方法(リユース)であり、望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一度ユーザーが使用し回収されたカメラ本体部に未露光フィルムを装填し市場に供給すると、該レンズ付フィルムユニットによって得られた写真は、斑点状のムラが発生したり、著しくカビが発生したり、さらには原因不明のかぶり、減感、変色などが発生したりして、好ましくないことがわかった。
【0010】一般的には、回収後にカメラ本体部の清掃、殺菌、消毒を行なえばよいが、殺菌剤や消毒剤を用いると、主にプラスチックで構成されているカメラ本体部の表面や内部を変質させたり、金属部品や電気部品を劣化させたり、さらには装填される未露光フィルムの写真特性や物理特性に悪影響を与えたりして実用に耐えない。
【0011】したがって、本発明の目的は、特定の抗菌剤を有することによって、主にプラスチックで構成されているカメラ本体部の表面や内部を変質させたり、金属部品や電気部品を劣化させたり、さらには装填される未露光フィルムの写真特性や物理特性に悪影響を与えたりすることがない、防菌防黴性を顕著に改良したカメラ(所謂レンズ付フィルムユニット)を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
【0013】(1) カメラ本体部に無機系抗菌剤を含有する事を特徴とするカメラ。
【0014】(2) カメラ本体の一部または全部が無機系抗菌剤を含有するプラスチックを成型したものであるカメラ。
【0015】(3) 未露光の写真フィルムを撮影可能な状態に包装した撮影ユニットカメラのカメラ本体部が無機系抗菌剤を含有するプラスチックを成型したものである事を特徴とするカメラ。
【0016】(4) 前記無機系抗菌剤が、抗菌性ゼオライトである(1)、(2)または(3)に記載のカメラ。
【0017】(5) 前記無機系抗菌剤が、抗菌性ガラスである(1)、(2)または(3)に記載のカメラ。
【0018】(6) 前記無機系抗菌剤が、超微粒子無機系抗菌剤である(1)、(2)または(3)に記載のカメラ。
【0019】(7) 前記無機系抗菌剤が、リン酸カルシウム・銀、アミノ酸金属セッケン、リン酸亜鉛カルシウム・銀、セラミックス・銀、リン酸ジルコニウム・銀から選ばれる少なくとも1つである(1)、(2)または(3)に記載のカメラ。
【0020】(8) 前記撮影ユニットカメラが、撮影終了後、回収、検査されたのち、再度未露光の写真フィルムを撮影可能な状態に包装してリュースされるものである(3)〜(7)のいずれか1項に記載のカメラ。
【0021】本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
【0022】本発明において無機系抗菌剤とは、無機材料に金属を複合させたものであり、特に銀を無機担体上に担持したものが好ましい。
【0023】抗菌性ゼオライトとは、ゼオライト中に銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属イオンを取り込んだものである。ゼオライトとは結晶性アルミノケイ酸塩の一種でアルミニウム、ケイ素、アルカリ金属から構成され、空孔をもった結晶構造をしている。抗菌性ゼオライトは市販されており、特に銀・ゼオライトは有用である。
【0024】抗菌性ガラスとは、ガラス中に銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属イオンを取り込んだものである。担体がガラスであるために透明性にすぐれており、本発明においてはカメラ本体部に不要な着色を呈することが少ないので好ましい。
【0025】超微粒子無機系抗菌剤とは、抗菌性金属イオンと無機イオン交換体が強く結合した構造をしており、平均粒径が0.5μm以下の微細かつ均一な微粒子であり、かつ変色しにくいので、本発明においてはカメラ本体部に不要な凹凸を与えることがなく、またカメラ本体部に不要な着色を呈する事が少ないので好ましい。
【0026】その他の無機系抗菌剤として、リン酸カルシウム・銀、アミノ酸金属セッケン、リン酸亜鉛カルシウム・銀、セラミックス・銀、リン酸ジルコニウム・銀等がある。
【0027】本発明において、これら無機系抗菌剤は耐薬品性、耐洗濯性、耐酸・アルカリ性、耐溶媒性等にすぐれているため、特にカメラ本体部を洗浄したりしても効果が低下することがないし、また装填されている写真フィルムと接触しても写真特性に悪影響を与えることがないので安心である。
【0028】本発明においてカメラ本体部に添加される無機系抗菌剤の量は、添加されるプラスチックに対して、10ppm以上1万ppm以下、好ましくは20ppm以上5000ppm以下、特に好ましくは50ppm以上2000ppm以下である。少ないと防菌防黴効果が小さく、多すぎると表面物性に影響を与えたりすることがあって好ましくない。
【0029】本発明においては、カメラ本体部に無機系抗菌剤とともに有機系抗菌剤を併用してもよい。
【0030】本発明において有機系抗菌剤とは、言うまでもなく、前記無機系抗菌剤に対して有機化合物による抗菌剤である。代表的なものとしては、ハロゲン系、フェノール系、イミダゾール系、チアゾール系、グアニジン系、ピリジン系、有機砒素系、アミド系等があり、具体的には、「微生物の滅菌・殺菌・防黴技術」(衛生技術会)、「防菌防黴ハンドブック」(日本防菌防黴学会)、「防菌防黴剤事典」(日本防菌防黴学会)、「防菌防黴の化学」(堀口 博)等に記載されている。
【0031】本発明においては、カメラ本体部が無機系抗菌剤を含有することが特徴であるが、有機系抗菌剤を組み合わせて含有することも効果がある。無機系抗菌剤と有機系抗菌剤とを最適に使用することによって、実用性を維持したまますぐれた防菌防黴効果を発揮するものである。
【0032】次に、本発明において好ましく用いられる撮影ユニットについて説明する。
【0033】本発明において好ましく用いられる撮影ユニットとしては、予め未露光フィルムを収納したカメラ本体と、該カメラ本体の前面に取り付けられた前カバーと、該カメラ本体の背面に取り付けられた裏蓋とを有するレンズ付きフィルムユニットにおいて、前記前カバー若しくは前記裏蓋の少なくとも何れかが、微小紙片と樹脂との混合物により成形されたことを特徴とするレンズ付きフィルムユニット、少なくとも、フィルムを巻き上げる巻上機構と、シャッタをチャージするチャージ機構と、シャッタを開閉するシャッタ開閉機構とを組み込んだカメラ本体が、微小紙片と樹脂との混合物により成形されたことを特徴とするレンズ付きフィルムユニット、予め未露光フィルムを収納し、該フィルムをスプールに巻き付けたレンズ付きフィルムユニットにおいて、該スプールが、微小紙片と樹脂との混合物により成形されたことを特徴とするレンズ付きフィルムユニット、又は、パトローネを収納する容器本体と、該容器本体の開口を閉鎖する蓋とにより構成されるパトローネ収納ケースにおいて、前記容器本体若しくは前記蓋の少なくとも何れかが、微小紙片と樹脂との混合物により成形されたことを特徴とするパトローネ収納ケース等が挙げられる。
【0034】上記レンズ付きフィルムユニット及びフィルム用カートリッジ収納ケースについて図1〜図5に基づいて、詳細に説明する。
【0035】先ず、レンズ付きフィルムユニットについて図1〜図4に基づき、説明する。
【0036】図1はレンズ付フィルムユニット(以後、本ユニットともいう)の外観を示したものであり、12は撮影レンズ、20は前カバー、30は裏蓋である。
【0037】本ユニットには予めフィルムを装填した状態で販売され、撮影終了後には巻戻しをすることなくフィルムをユニットに収めたままの状態で現像所に送られてフィルムがカメラより取出され、フィルムの現像とプリントが行われる。
【0038】本ユニットに使用される未露光のフィルムはスプールに巻付けた状態で装填され、撮影の都度、巻き上げによってパトローネ内に巻込まれるようになっている。従って、現像所においては撮影済のフィルムを明室においてカメラから取出すことが出来る。
【0039】また、撮影済フィルムの取出しは裏蓋の一部を折曲げることにより容易に可能であるので、カメラ部分についてのチェックを行い、新たに未露光フィルムを装填して裏蓋をメーカーサイドで交換すれば、再使用即ちリユースを行うことが可能となる。
【0040】以下は小型パトローネを説明するが、通常のパトローネを用いたレンズ付フィルムユニットでも適用し得るものである。本ユニットに装填されるパトローネは、一般に使用されるパトローネ(JISK7528)とは異なる外径であるφ20.6mmのパトローネが用いられる。その中に100〜140μmの比較的薄手のフィルムが10mm前後の径のスプールに巻かれて収納されている。その結果、巻き上げ荷重は大きくなるが撮影レンズを有した鏡胴部を除いてカメラの厚さを24mm前後に抑えることが可能となり、超薄型のコンパクトカメラを実現している。
【0041】本ユニットはその外面の一部に、商品名や簡単な使用方法等を表示した厚紙製の紙カバー80を装着して提供される。
【0042】図2は本ユニットの構成を示す展開図である。
【0043】10,20および30はそれぞれ本ユニットの主要構成部材であるカメラ本体、前カバーおよび裏蓋であり、また40は内蔵されるストロボユニット、さらに50,60及び70はそれぞれフィルム巻上、セクタチャージおよびフィルムカウンタの各機構である。
【0044】カメラ本体10は単体時においてフィルム巻上機構50ならびにセクタチャージ機構60、フィルムカウンタ機構70を構成する各部材が装着され、さらにセクタを収めるシャッタケース11が取付けられる。シャッタケース11は両側部に突設した爪11Aをカメラ本体10前面の係止部10Aに係合して固定され、セクタを前記のセクタチャージ機構60に連係させる。
【0045】更に、シャッタケース11の前面には撮影用レンズ12が落し込まれ、ガイドピン11Bに係合する摺割13Aを備えたレンズ押え13によってカバーされる。
【0046】カメラ本体10とシャッタケース11は、前カバー20、裏蓋30を含めて何れも若干の弾性を備える黒色艶消のプラスチック材によって成形されている。
【0047】一方、ストロボユニット40は、カメラ本体10前面のガイドピン10Bと10Cにそれぞれ係合する基板上の穴40Aと40Bを基準として装着支持される。ストロボユニット40は一体とする上下の電池接片41をカメラ本体10上下のスリット穴10Dを挿通してカメラ本体10背面の電池室に突出させてストロボ充電電源としての単3電池である電源電池Eを挟持する。また、一体とするメインコンデンサCはシャッタケース11下部に形成したコンデンサ室に格納される。
【0048】レンズ押え13とストロボユニット40のカメラ本体10への固定一体化は、前カバー20のカメラ本体10への装着によって完成される。
【0049】前カバー20はカメラ本体10への装着に先立って予めその前面にファインダの対物レンズ21を落し込み、化粧カバー22の係合によって固定している。化粧カバー22は背面にガイドピン22Aと4本の爪22Bを突設していて、それぞれを前カバー20前面の穴20Aと4個所の係止部20Bに係合して取付けられる。また、前カバー20は背面にファインダの接眼レンズ23を係合して取付けた上でカメラ本体10の前面に装着される。更に、前カバー20は背面に穴20Cと爪20Dとさらに3個所の係止部20Eを備えていて、それぞれをカメラ本体10前面のガイドピン10Eと爪10Fおよび側面の係止部10Gに係合して取付けられる。その他に、前カバー20のカメラ本体10への係合装着により、レンズ押え13ならびにストロボユニット40がカメラ本体10に対して固定される。
【0050】前カバー20を装着したカメラ本体10は、その背面に形成したパトローネ室とスクロール室(何れも図示せず)にそれぞれパトローネP1と未露光フィルムFの先端を係止されたスプールS2が装填される。フィルムFの先端はパトローネP1内のスプールS1に係止されて、スプール径はカメラを小型化にするため9〜11mmφとしており、フィルム装填後パトローネ内のフィルムを一旦スプールS2によって巻き上げても上記他端はスプールS1に係止されているのでパトローネP1内に撮影完了毎に巻込みが出来る。フィルムFを装填したカメラ本体10の背面には裏蓋30が装着されてフィルムFの遮光とピント面位置への規制が保たれる。
【0051】裏蓋30は側面に係止用の穴30C,30D,30Eとを備えていて、カメラ本体10の爪10K,10L,10Mに係合して固定される。
【0052】裏蓋30の装着後、所定のフィルム巻上操作が行なわれて撮影可能の画面がセットされ、図1に示したカートンを装着して完成される。
【0053】次にフィルム巻上機構50、セクタチャージ機構60、フィルムカウンタ機構70の各細部について説明する。
【0054】図3は各機構部をカメラの背面側より見た背面斜視図である。
【0055】カメラ本体10には、露光部である画面枠16を挟んで両側の同一平面内に、フィルム巻取用およびフィルム装填用の2つの収納室としてパトローネ室15Aおよびスクロール室15Bが設けられていて、図4に示す収納容器であるパトローネP1に巻き込まれたJ135フィルムFが装填されるようになっている。
【0056】使用されるフィルムFは、一般のカメラ同様ロールフィルムJ135や若干薄手の130〜140μmのロールフィルムを、パトローネを収納容器として予め暗室内等でパトローネP1のスプールS1にその端部を固定して所定駒数が撮影可能の長さ巻き込み、パトローネP1のフィルム引き出し口からは一定の長さフィルムが出た状態となっている。この状態のフィルムをカメラに装填することになるが、装填方法について次に述べる。
【0057】パトローネP1をパトローネ室15Aに、パトローネP1のスプールS1が巻上用フォーク52の二又部に係合する様に装填する。一方、スプールS2もスクロール室15Bに挿入する。そして、フィルムFのフィルムノッチFNの先端が、下側レール面の下部の指標17Aに合う迄フィルムFを引き出し、フィルムFの先端をスプールS2のスリットSLに差し込んでフィルムFのパーフォレーションPを爪Hに係止する。なお、フィルムノッチFNはフィルム先端のベロ部に設けた数個の穴によりフィルムの乳剤ロット番号等を表示するようにしたものである。
【0058】次に、裏蓋30を被せて蓋をし光密にする。そして、この状態の本ユニットをフィルム巻取装置に取り付け、フィルムF全部(但し他端がパトローネP1のスプールS1から離脱しない範囲で)をスクロール室15BのスプールS2に巻き取ってフィルムの装填は終ることになる。すなわち、この様にフィルムFを装填することによりフィルムFは撮影毎に順次パトローネP1の中に巻き込まれることになり、所定駒数の撮影が終了した後、2駒の空送りを行うと、フィルムFの先端部はパトローネ内に巻き込まれることなく必要長さを残して撮影済みフィルム部分は完全にパトローネP1の中に巻き込まれることになる。従って、このパトローネは明室において本ユニットから取り出すことが出来る。
【0059】次に、本体部の機構を説明する。
【0060】カメラ本体10には撮影用レンズ12を始めとするフィルム巻上機構50、セクタチャージ機構60、それにフィルムカウンタ機構70の主要機構が組み込まれている。
【0061】まず、フィルム巻上機構、セクタチャージ機構の説明を行う。
【0062】51はフィルム巻上ノブで、前述の様に装填されたフィルムFはフィルム巻上ノブ51を反時計方向に回すことによって巻き上げられる。フィルムFのパーフォレーションPと噛み合っている8枚歯のスプロケット歯車54と同軸の、下部に扇形カム部55Bを有するカム55は、フィルムの巻上によって反時計方向に丁度1回転する様になっている。
【0063】即ち、フィルムはスプロケット歯車の歯数である8ケのパーフォレーションの長さを1駒として巻き上げられ、駒サイズは所謂フルサイズの駒サイズで24×36mmである。
【0064】カム55の反時計方向の回転により、前述の様に当然のことながら扇形カム部55Bも反時計方向に回転し、その過程で扇形カム部55Bによりチャージレバー61を、チャージレバー軸63を回転軸として反時計方向に付勢するチャージレバーバネ64のばね力に抗して時計方向に回転し、チャージレバー61に設けられた三角形状のケトバシ61Cにより、セクタレバー65の立上り部65Bを押圧し、やがて立上り部65Bを乗り越えて図示の状態の様にセクタチャージ機構をチャージする。
【0065】セクタレバー65のピン65Cとカメラ本体10に設けたピン18Cの間にはセクタバネ67が張設してあり、セクタバネ67による引張力により、セクタレバー65の長穴を摺動回動自在に案内するカメラ本体10に設けたピン18Bに前記長穴の左端を当接し、且つセクタレバー65に設けられた腕部65Dをカメラ本体10に設けたピン18Eに当接する様になっている。またカメラ本体10に設けたセクタピン18Dにより軸支されたセクタ66を作動するセクタ駆動ピン65Aがセクタ66の二又部に挿入されている。
【0066】後述する様に、撮影終了後のカムストッパ62の突出部62Dは、カム55の溝部55Aより抜けており、巻上ストッパ57の腕部57Aは、図示の状態から変化してチャージレバー61の腕部61A及びカムストッパ62の腕部62Aの各エッジより外れ、時計方向に付勢する巻上ストッパバネ58のばね力により前記腕部61Aの端面に当接している。そして、フィルム巻き上げによりカム55が前述の様に丁度1回転してカム55の溝部55Aが最初の位置に戻ると、チャージレバーバネ64の先端水平部によるカムストッパ62を時計方向に付勢するばね力によりカムストッパ62の突出部62Dは前記溝部55Aに飛び込むことになる。そして、この飛び込み作動により、この時点ではカムストッパ62の腕部62Aの端面に係止されていた巻上ストッパ57の腕部57Aの係止が外れる。
【0067】フィルム巻上ノブ51の外周円筒面はラチェット歯車となっており、前記係止の外れにより巻上ストッパ57の先端のV形突起部が、巻上ストッパバネ58の前記ばね力により前記ラチェット歯車51Aの歯溝に飛び込み、フィルム巻上ノブ51の反時計方向の巻上回転を阻止することになる。即ち、フィルムの巻上完了によりフィルム巻上ノブ51はそれ以上の巻上回転を阻止されることになる。
【0068】また、カメラ本体10には樹脂材の弾性を利用した逆転防止爪53の先端が前記ラチェット歯車51Aに圧接されており、フィルム巻上ノブ51の巻上反対方向の回転は阻止する様になっている。
【0069】前カバー20のレリーズ釦25を押すことによりレリーズ釦25の裏面に植設されたレリーズ釦ピン25Aの先端は矢印A方向に作動する。すなわち、前カバー20をカメラ本体10に取り付けた時は、図において巻上ノブ51上に記した矢印A方向のレリーズ釦ピン25Aの先端の作動により巻上ストッパ57は巻上ストッパバネ58の前記ばね力に抗して反時計方向に回転する。そして、巻上ストッパ57の腕部57Aの端面よりチャージレバー61の腕部61Aのエッジが外れてチャージレバー61が従って、カムストッパ62がチャージレバーバネ64のばね力により反時計方向に回転する。
【0070】そして、セクタバネ67より強力なチャージレバーバネ64のばね力によるチャージレバー61の反時計方向の回転により、チャージレバー61のケトバシ61Cは、セクタレバー65の立上り部65Bをたたき、そして立上り部65Bから外れる。従って、セクタレバー65はセクタレバーの長溝中のピン18Bを中心に、セクタバネ67の引張力に抗して時計方向に回転し、そしてセクタバネ67の引張力により元に戻る。従って、セクタ駆動ピン65Aはセクタ66をセクタピン18Dを中心に回転してフィルムに露光を与えた後閉じることになる。
【0071】一方、カムストッパ62も前記の様にチャージレバー61と一緒に反時計方向に回転し、カムストッパ62の突出部62Dはカム55の溝部55Aより抜けることになる。そこでレリーズ釦の押圧を止めても、巻上ストッパ57の腕部57Aは巻上ストッパバネ58のばね力により時計方向に付勢されているが、チャージレバー61の腕部61Aの端面に阻止されて停止し、巻上ストッパ57の先端のV形突起部は巻上ノブ51のラチェット歯車51Aを係止しない。従って次のフィルム巻き上げが可能となる。
【0072】次に、フィルムカウンタ機構について説明する。
【0073】72は前述の様に、スプロケット歯車54と一体的に回転するカム55に植設されたカム軸56の上方先端に設けられたV溝56Aと噛み合い、フィルムが1駒巻き上げられカム軸56が1回転する毎に1歯ずつ時計方向に回転する指数盤歯車である。
【0074】指数盤歯車72の上面には指数盤71が一体成形品として印刷されていて、フィルムの撮影可能残数を前カバー20の上面のフィルムカウンタ窓26より表示する様になっている。
【0075】指数盤歯車72の下面には突出部72Aが設けられ、所定駒数の撮影が終了後の次のフィルム巻き上げにより、突出部72Aはチャージレバー61の突出部61Eとカムストッパ62の別の突出部62Eの間に割って入り込む様になっている。そして、突出部72Aが両突出部61E、62Eの間に入り込むことにより、フィルムが1駒分巻き上げられ、カム55が1回転してセクタのチャージが終了しても両突出部61E、62Eが指数盤歯車72の突出部72Aに動きを阻止されて、チャージレバー61は作動出来ず、カムストッパ62の突出部62Dもカム55の溝部55Aには飛び込めないことになる。そして、カムストッパ62の腕部62Aの端面に巻上ストッパバネ58の前記ばね力により巻上ストッパ57の腕部57Aが当接し、巻上ストッパ57の先端のV形突起部はラチェット歯車51Aを係止しないし、またチャージレバー61を作動してセクタを開閉してフィルムに露光を与えることも出来ない。
【0076】この様にして、2駒のフィルムの空送りが行われると、指数盤歯車72は2歯分回転するが、この回転により指数盤歯車72の突出部72Aは、前記突出部61Eをいぜん押さえてチャージレバー61の動きは阻止するが、カムストッパ62の別の突出部62Eからは外れる様になっている。従って、突出部62Dはカム55の溝部55Aに飛び込み、巻上ストッパ57の係止が外れ、巻上ストッパ57による巻上ノブ51の係止が行われ、フィルムの巻き上げは出来なくなる。そして、前述の様にチャージレバー61の動きは阻止されているのでフィルムへの露光も出来ない。この様にしてフィルム先端がパトローネの中に巻き込まれてしまうことが防止される。
【0077】図5はパトローネ収納ケースの図である。パトローネP1は容器本体91に収納され、容器本体91の開口91aは蓋92により閉鎖される。
【0078】以上のレンズ付きフィルムユニットにおけるカメラ本体10、前カバー20、裏蓋30、フィルム巻上ノブ51、スプールS2等はPS(ポリスチレン)で成形されていて、パトローネ収納ケースにおける容器本体91、蓋92はPE(ポリエチレン)で成形されていたが、前述の如く防黴性に問題があった。そこで、本願発明は前述の部材の少なくとも何れかに無機系抗菌剤を添加するものである。
【0079】なお、本材料は必要に応じて、PSやABS(アクリルニトリル・ブタジェン・スチレン)もバインダーとして用いることができる。
【0080】また、本材料の成形には、射出成形、押出成形、押出プレスが可能である。従って、容易に任意の形状に成形できる。
【0081】本発明のレンズ付フィルムユニットは、製造後、使用までの間、プラスチックケースや防湿性の袋等によって密封包装されることが好ましい。密封包装される内は25℃での相対湿度が30〜70%、好ましくは40〜60%、特に好ましくは45〜55%であり、更に不活性ガスの充填によって酸素分圧を大気より低くすることもできる。
【0082】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0083】実施例1レンズ付きフィルムのカメラ本体部を形成するカーボン入りプラスチックに、下記抗菌剤をそれぞれ100ppmずつ添加して、プラスチック試料1〜6を作成した。
【0084】〈抗菌剤〉a;2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニル−ピリジンb;2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールc;5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンA;“ゼオミック”(品川燃料(株)製)
B;“イオンピュア”(石塚ガラス(株)製)
C;“ノバロンAG300”(東亜合成(株)製)
〈防カビ効果評価法〉防カビ効果の評価は、JIS Z 2911を参考にして以下の様に行なった。
【0085】下記5種の菌株の斜面倍地より胞子を一白金耳採り、それぞれ殺菌済み水(Tween 80,0.05%添加)5mlに懸濁させ、単一胞子懸濁液を調製した。
【0086】■Chaetomium globosum:ATCC 6205■Cladosporium herbarum:IAM・F・517■Trichoderma:T−1 ATCC■Aspergillus Penicillodes:IAM 2772■Aspergillus restrictus:AHU 7422これを等容量ずつ採って混合し、混合胞子懸濁液とする。次に、乾熱殺菌した直径90mmのペトリ皿の中央に、50mm×50mmのプラスチック試験片を平に置き、前記混合胞子懸濁液0.5mlを噴霧し、温度28±2℃、相対湿度95〜99%に保った場所に1週間置いてカビの生育状況を判定した。
【0087】評価は菌糸の成長程度を目視観察し、以下の4段階にて行なった。
【0088】
A:極めて良好(カビ発生が全くない)
B:良好(ごく僅かにカビが発生)
C:やや不良(多少カビが発生)
D:不良(多数カビが発生)
以上の結果を表1に示す。
【0089】
【表1】


【0090】表1から明らかなように、カーボンが添加されたカメラ用プラスチックに対して、本発明の無機系抗菌剤を添加したプラスチック試料は極めて優れた防黴性を示すことがわかる。
【0091】実施例2実施例1のプラスチック試料1〜6を用いて、それぞれ図1に示すカメラNo.1〜6を作成した。フィルムを装填し、モニター10名に1週間以内に任意撮影をしてもらい、返却後、新しいフィルムを再装填して再撮影してもらうリユースを4回繰り返し、回収したカメラを30℃65%RH雰囲気下に3日間放置して、黴の発生具合と、表面に存在する菌を培養して調べた。さらに写真性能もチェックした。
【0092】〈防菌効果評価法〉培養によって確認された菌がA:まったく認められなかったB:わずかに認められたC:多数認められた以上の結果を表2に示す。
【0093】
【表2】


【0094】表2から明らかなように、本発明のものは、レンズ付フィルムユニットのリユース、リサイクルにおける防黴、防菌効果も優れており、かつ写真フィルムへの影響もないことがわかる。
【0095】
【発明の効果】本発明により、特定の抗菌剤を有することによって、主にプラスチックで構成されているカメラ本体部の表面や内部を変質させたり、金属部品や電気部品を劣化させたり、さらには装填される未露光フィルムの写真特性や物理特性に悪影響を与えたりすることがない、防菌防黴性を顕著に改良したカメラ(所謂レンズ付フィルムユニット)を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】レンズ付きフィルムユニットの外観斜視図である。
【図2】レンズ付きフィルムユニットの構成を示す展開斜視図である。
【図3】レンズ付きフィルムユニットのフィルム巻上機構等を示す背面斜視図である。
【図4】レンズ付きフィルムユニットに装填されるフィルムの説明図である。
【図5】パトローネ収納ケースの図である。
【符号の説明】
P1 パトローネ
S1,S2 スプール
10 カメラ本体
20 前カバー
30 裏蓋
51 フィルム巻上ノブ
91 容器本体
92 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カメラ本体部に無機系抗菌剤を含有する事を特徴とするカメラ。
【請求項2】 カメラ本体の一部または全部が無機系抗菌剤を含有するプラスチックを成型したものであるカメラ。
【請求項3】 未露光の写真フィルムを撮影可能な状態に包装した撮影ユニットカメラのカメラ本体部が無機系抗菌剤を含有するプラスチックを成型したものである事を特徴とするカメラ。
【請求項4】 前記無機系抗菌剤が、抗菌性ゼオライトである請求項1、2または3に記載のカメラ。
【請求項5】 前記無機系抗菌剤が、抗菌性ガラスである請求項1、2または3に記載のカメラ。
【請求項6】 前記無機系抗菌剤が、超微粒子無機系抗菌剤である請求項1、2または3に記載のカメラ。
【請求項7】 前記無機系抗菌剤が、リン酸カルシウム・銀、アミノ酸金属セッケン、リン酸亜鉛カルシウム・銀、セラミックス・銀、リン酸ジルコニウム・銀から選ばれる少なくとも1つである請求項1、2または3に記載のカメラ。
【請求項8】 前記撮影ユニットカメラが、撮影終了後、回収、検査されたのち、再度未露光の写真フィルムを撮影可能な状態に包装してリユースされるものである請求項3〜7のいずれか1項に記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平9−297342
【公開日】平成9年(1997)11月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−114757
【出願日】平成8年(1996)5月9日
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)