説明

抗菌弾性繊維の作成プロセス

抗菌弾性繊維を作成するプロセスを開示する。このプロセスは、ZnO、SiOおよびアルカリ金属酸化物を含み、0.1μm〜5μmの平均粒子径を有する抗菌剤としてのガラス化合物を分散剤と混合するステップと、前記混合物をサンドグラインドまたはミルにかけるステップと、前記グラインドされたまたはミルにかけられた混合物をセグメント化ポリウレタンポリマーの溶液に加えて、弾性糸を作成するステップと、を含む。前記プロセスにより、紡糸性が改善され、糸の変色が防止できるという有利な効果を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌弾性繊維を作成するプロセスに関し、より具体的には、ZnO、SiOおよびアルカリ金属酸化物を含み、0.1μm〜5μmの平均粒子径を有する抗菌剤としてのガラス化合物を分散剤と混合するステップと、前記混合物をサンドグラインドまたはミルにかけるステップと、前記グラインドまたはミルにかけられた混合物をセグメント化ポリウレタンポリマーの溶液に加えるステップと、を含む抗菌弾性繊維の作成プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン弾性繊維は、弾力性および弾性回復に優れている。これらの利点により、ポリウレタン弾性繊維は、ストッキング、女性下着および柔軟繊維用材料に広く使用されており、それらの用途は、エアロビクス用の衣類および水着にまで広がり続けている。
【0003】
様々な種類のバクテリアやカビが衣服に付着し、人体から分泌された様々な物質上に生育する。これらのうち、バクテリアやカビによっては繊維に付着し、次いで、衣服を損ない、変色および/または汚染し、身体に直接危害を加えずに悪臭を発するものもある。重症例では、バクテリアやカビによっては、直接、身体を損なうものもある。特に、弾性繊維から作られたガードルやブラジャーなどの女性下着の場合には、バクテリアやカビが汗などの分泌物上に生育し、弾性繊維中で成長する。
【0004】
ポリウレタン弾性繊維に抗菌性を付与するための試みが提案されている。例えば、米国特許第4,837,292号は、脂肪族ジオール類から選択されたポリカーボネートジオールであるポリ(ペンタン−1,5−カーボネート)ジオールまたはポリ(ヘキサン−1,6−カーボネート)ジオールまたはその共重合体を柔軟なセグメントとして使用することにより弾性繊維に抗菌性を付与するプロセスを開示している。このプロセスは、さらに抗菌剤を加えることなく、原料に固有の物理的性質を利用することにより、抗菌性が達成されるという長所を有するが、抗菌性効力が乏しいという問題を有する。
【0005】
さらに、韓国特許第93−5099号公報は、ポリウレタン弾性繊維に抗菌性を付与するために、殺菌力のある金属イオンを有する無機抗菌剤として、多孔性結晶アルミノシリケートゼオライトのイオン交換を教示している。しかし、ゼオライトは、水の吸着が強いため、弾性繊維の作成の間、弾性繊維ポリマー(つまり、ポリウレタン)を架橋する機能をする。この架橋によって、重合生成物の粘性が増加し、ゲルの形成が引き起こされ、紡糸の際、濾過圧力の急激な上昇および糸の破損が頻繁に発生する。
【0006】
そこで、韓国特許第103406号は、弾性繊維に抗菌性を付与するために、抗菌性成分として銀またはジルコニウムを含む非多孔性無機セラミックを使用することについて記載している。しかし、銀は、200℃以上の高温での紡糸中に、弾性繊維の不適切な黄変を引き起こす。
【0007】
さらに、韓国特許第445313号は、弾性繊維に抗菌性を付与するために、ZnO、SiOおよびアルカリ金属酸化物を含むガラス金属化合物を抗菌剤として使用することについて記載している。200℃以上の高温での紡糸中における弾性繊維の黄変は生じないが、抗菌剤は、弾性繊維用材料であるポリウレタンのための極性溶媒としてのジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド中で凝集する傾向がある。凝集の結果として、吐出圧の増加が引き起こされ、紡糸中に糸の破損が頻繁に生じ、抗菌性繊維の長期間における安定した紡糸を維持することが困難になる。したがって、抗菌剤は、そのサイズがポリウレタンへの添加に適切なものとなるように、抗菌剤粒子のサイズを制御するために、ミルまたはサンドグラインドを受けなければならない。具体的に、抗菌剤粒子は15μm以下の第2の凝集粒子径を有しなければならない。この目的を達成するために、長時間にわたる抗菌剤のミルが必要となる。この段階では、抗菌剤は灰色に変色し、そのことが、最終的な抗菌弾性繊維の色を灰色にする。
【0008】
したがって、優れた抗菌性を維持しながら、紡糸性または繊維の色に影響を及ぼすことなく、抗菌弾性繊維を作成するプロセスを開発する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明は、ZnO、SiO、アルカリ金属酸化物等を含むガラス金属化合物を抗菌剤として使用し、抗菌剤をミルまたはサンドグラインドにかける間に分散剤を使用することにより、優れた抗菌性を維持し、糸の変色を防止しながら、優れた紡糸性を有する抗菌弾性繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様によれば、ZnOを50〜78モル%、SiOを21〜49モル%およびアルカリ金属酸化物を1〜10モル%含み、0.1μm〜5μmの平均粒子径を有する抗菌剤としてのガラス化合物を分散剤と混合するステップと、前記混合物をサンドグラインドまたはミルにかけるステップと、前記グラインドまたはミルにかけられた混合物をセグメント化ポリウレタンポリマーの溶液に加えて、弾性糸を作成するステップと、を含む抗菌弾性繊維の作成プロセスを提供する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、前記プロセスによって作成された抗菌弾性繊維を提供する。
【0012】
本発明を以下に詳細に説明する。
【0013】
本発明のプロセスで使用される抗菌剤は、ZnO、SiOおよびアルカリ金属酸化物を含み、0.1μm〜5μmの平均粒子径を有するガラス金属化合物であることを特徴とする。
【0014】
抗菌剤は、非多孔性であることが好ましい。水の吸着が強い多孔性抗菌剤を使用する場合、弾性繊維ポリマー(つまり、ポリウレタン)は、弾性繊維を作成する間に架橋される。この架橋によって、重合生成物の粘性が増加するとともに、ゲルが形成され、濾過圧力が急激に上昇したり、紡糸の際に糸の破損が頻繁に発生する。
【0015】
具体的に、抗菌剤は、ZnOを50〜78モル%含むことが好ましい。ZnO含有量が78モル%を越える場合、ガラス化合物に抗菌剤を形成することは困難である。一方、ZnO含有量が50モル%未満である場合、抗菌剤の抗菌性は不十分である。
【0016】
抗菌剤は、ガラス形成用の成分であるSiOを21〜49モル%含むことが好ましい。SiO含有量が49モル%を越える場合、抗菌剤の水溶性が高く、それにより、抗菌性が劣ることとなる。一方で、SiO含有量が21モル%未満である場合、安定したガラス化合物を得るのは困難である。
【0017】
SiOは、抗菌剤中でガラス形成のための必須な成分として使用されるが、SiOの一部は、ガラス形成用の他の成分と置換されてもよい。そのような成分として、例えば、P、Al、TiOおよびZrOを使用することができる。好ましい成分量は、0.1〜19モル%の範囲である。
【0018】
抗菌剤は、アルカリ金属酸化物を1〜10モル%含むことが好ましい。アルカリ金属酸化物の含有量が1モル%未満である場合、抗菌剤の抗菌性が低下する。一方、アルカリ金属酸化物の含有量が10モル%を越える場合、抗菌剤の水溶性は高く、したがって、抗菌性が劣ることとなり、抗菌剤の変色抵抗が損なわれる。
【0019】
本発明のプロセスで使用可能なアルカリ金属酸化物としては、Na、KおよびLiの酸化物が挙げられる。これらの酸化物は、単独で用いてもよく、あるいは2つまたは3つの酸化物の混合物として組み合わせて用いることもできる。
【0020】
本発明のプロセスでは、抗菌剤は、糸の重量に対して、0.2〜5重量%の量で加えることが好ましい。抗菌剤を、0.2重量%未満の量で加えると、抗菌性効果を保証することができない。抗菌剤を、5重量%を越える量で加えると、抗菌弾性繊維の物理的性質が低下する可能性がある。
【0021】
抗菌剤は無機材料であるため、弾性繊維ポリマー(ポリウレタン)に加える前に抗菌剤を分散する必要がある。抗菌剤は、弾性繊維ポリマー(ポリウレタン)のための極性溶媒としてのジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシド中で凝集する傾向があるため、押出圧力が上昇し、紡糸中に糸の破損が頻繁に発生する可能性が高い。従って、ポリウレタン溶液に抗菌剤を加える前に、15μm以下の抗菌剤の第2の凝集粒子径を維持するために、長時間にわたる抗菌剤のミルまたはサンドグラインドが必要となる。上述するように、抗菌剤はこの段階で灰色に変色する可能性がある。
【0022】
本発明のプロセスによれば、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステルまたは脂肪族アルコールなどの分散剤を加えて極性溶媒中で抗菌剤の分散性を改善し、それによって、抗菌剤のミル時間を短くし、抗菌剤の変色を防ぐ。すなわち、分散剤は、ミルの最中に生じる抗菌剤に対する摩擦を低減し、抗菌剤の流動性および分散性を改善する。さらに、分散剤を抗菌剤の表面上に被覆させることで、上記効果を向上してもよい。
【0023】
適切な脂肪酸類として、炭素数3〜40の直鎖または分岐の分子炭化水素を有するモノカルボン酸およびジカルボン酸を例示することができる。具体的な例としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびベヘン酸が挙げられる。
【0024】
脂肪酸塩は、式RCOOM(ここで、Rは、アルキル基またはアルケニル基、好ましくは、炭素数3〜40の直鎖または分岐の炭化水素であり、Mは、金属、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である)によって表わすことができる化合物である。具体的な例としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウムおよびステアリン酸アルミニウムが挙げられる。
【0025】
好適な脂肪酸エステル類の例としては、モノステアリン酸グリセリンおよびオレイン酸グリセリンが挙げられる。
【0026】
脂肪族アルコールは、炭素数3〜40の直鎖または分岐の炭化水素の1価または多価脂肪族アルコールである。好適な脂肪族アルコールの例としては、アルカノール類、例えば、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクチルアルコール、2−オクタノール、メチルヘプタノール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコールおよびステアリルアルコール;シクロアルカノール類、例えば、シクロヘキサノールおよびメチルシクロヘキサノール;アルカンジオール類、例えば、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ピナコール、1,2−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;ポリオール類、例えば、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0027】
より好適な脂肪族アルコールの例としては、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、カプリルアルコール、オレイルアルコール、ペンタエリスリトールおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
脂肪酸類、脂肪酸塩類、脂肪酸エステル類および脂肪族アルコール類から選択された分散剤および抗菌剤は、ミル工程またはサンドグラインド工程の間に1:10〜1:1の重量比で加えられることが好ましい。糸中の抗菌剤の含有量は、0.2重量%〜5重量%の範囲であるため、糸中の分散剤の含有量は、抗菌剤の含有量に比例して、0.02重量%〜5重量%である。重量比が1:10未満である場合、分散効果はごくわずかである。一方、重量比が1:1を越える場合でも、過剰の分散剤は分散効果のさらなる向上に寄与することはない。
【0029】
当該分野において周知であるように、本発明のプロセスによって弾性糸を作成するために使用されるセグメント化ポリウレタンポリマーは、有機ジイソシアネートと重合体ジオールを反応させてポリウレタン前駆体を得て、有機溶媒中に前駆体を溶解し、前駆体とジアミンおよびモノアミンとを反応させることによって生成される。
【0030】
適切な有機ジイソシアネート類として、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートおよび水素化P,P’−メチレンジイソシアネートを挙げることができる。適切な重合体ジオール類として、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリカーボネートジオールを挙げることができる。ジアミン類は、鎖延長剤として使用され、それらの具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミンおよびヒドラジンが挙げられる。一方、モノアミン類は、連鎖停止剤として使用され、それらの具体例は、ジエチルアミン、モノエタノールアミンおよびジメチルアミンが挙げられる。
【0031】
他の添加剤として、さらに、UV安定剤、酸化防止剤、NOxガス黄変防止剤、染色促進剤、耐塩素剤等を使用することができる。
【0032】
これらの添加剤は、抗菌剤と混合して加えてもよい。添加剤をまず加え、次いで、抗菌剤を紡糸の直前に加えることがさらに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を、以下に実施例を参照してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、例示の目的で挙げられ、本発明の範囲を限定するものとして解釈するものではない。
【0034】
抗菌剤A−Fを、調製実施例1〜6においてそれぞれ作成した。抗菌剤の第2の凝集粒子のサイズは、下記手順によって評価した。
<抗菌剤の第2の凝集粒子のサイズの評価>
抗菌剤スラリーをミルによって作成した後、スラリー2kgをサンプリングした。サンプリングしたスラリーを、上方から空気圧を加えることが可能で、直径が3.6cmであるステンレスふるい(細孔サイズ:15μm)が下排出口に設けられた密閉タンクに供給した。ふるいを通ってのみスラリーが排出されるように圧力を加えた。2分間でふるいを通過したスラリーの量を、1.5kgf/cmの空気圧を加えながら測定した。スラリーの全量(2kg)がふるいを通過したとき、抗菌剤は、15μm以下の第2の凝集粒子径を有すると考えられる。スラリーサンプルの全量(2kg)がふるいを通過した場合、サンプルは「通過した」と判断した。スラリーサンプルの一部が残った場合、サンプルは「通過しなかった」と判断した。
調製実施例1:抗菌剤スラリーA
ジメチルアセトアミドに抗菌剤9.76wt%およびステアリン酸2.44wt%を溶解した溶液を、ジルコニアボール(直径:0.5mm)を有する装置(DCP−SUPERFLOW 170、Drais Mannheim、ドイツ)内でミルにかけて、抗菌剤スラリーを分散させた。本例において使用した抗菌剤は、ZnOを62.1モル%、SiOを31.1モル%、Pを2.5モル%、Alを2.3モル%およびNaOを2.0モル%含むガラス金属化合物であり、3.5μmの第1の平均粒径を有していた。具体的に、抗菌剤0.1トン、ステアリン酸0.025トンおよびジメチルアセトアミド0.9トンを、スラリー作成タンクに加えた。その後、24kg/分の速さでタンクとミル装置の間のパイプを通じてスラリーを循環させながら、スラリーの分散を600rpmでミル装置内で行った。40時間のミル後、分散されたスラリーをふるいに通過させることで濾過テストを行なった。その結果、ふるいを通過する抗菌剤スラリーの量は2kgであり、したがって、抗菌剤スラリーは「通過した」と判断した。スラリーの色は白であった。
調製実施例2:抗菌剤スラリーB
ジメチルアセトアミドに抗菌剤9.76wt%およびステアリン酸マグネシウム2.44wt%を溶解した溶液を、ジルコニアボール(直径:0.5mm)を有する装置(DCP−SUPERFLOW 170、Drais Mannheim、ドイツ)内でミルにかけて、抗菌剤スラリーを分散させた。本例において使用した抗菌剤は、ZnOを62.1モル%、SiOを31.1モル%、Pを2.5モル%、Alを2.3モル%およびNaOを2.0モル%含むガラス金属化合物であり、3.5μmの第1の平均粒径を有していた。具体的に、抗菌剤0.1トン、ステアリン酸マグネシウム0.025トンおよびジメチルアセトアミド0.9トンを、スラリー作成タンクに加えた。その後、24kg/分の速さでタンクとミル装置の間のパイプを通じてスラリーを循環させながら、スラリーの分散を600rpmでミル装置内で行なった。45時間のミル後、分散されたスラリーをふるいに通過させることによって濾過テストを行なった。その結果、ふるいを通過する抗菌剤スラリーの量は2kgであり、したがって、抗菌剤スラリーは「通過した」と判断した。スラリーの色は白であった。
調製実施例3:抗菌剤スラリーC
ジメチルアセトアミドに抗菌剤9.76wt%およびステアリン酸ナトリウム2.44wt%を溶解した溶液を、ジルコニアボール(直径:0.5mm)を有する装置(DCP−SUPERFLOW 170、Drais Mannheim、ドイツ)内でミルにかけて、抗菌剤スラリーを分散させた。本例において使用した抗菌剤は、ZnOを62.1モル%、SiOを31.1モル%、Pを2.5モル%、Alを2.3モル%およびNaOを2.0モル%含むガラス金属化合物であり、3.5μmの第1の平均粒径を有していた。具体的に、抗菌剤0.1トン、ステアリン酸ナトリウム0.025トンおよびジメチルアセトアミド0.9トンを、スラリー作成タンクに加えた。その後、24kg/分の速さでタンクとミル装置の間のパイプを通じてスラリーを循環させながら、スラリーの分散を600rpmでミル装置内で行なった。48時間のミル後、分散されたスラリーをふるいに通過させることによって濾過テストを行なった。その結果、ふるいを通過する抗菌剤スラリーの量は2kgであり、したがって、抗菌剤スラリーは「通過した」と判断した。スラリーの色は白であった。
調製実施例4:抗菌剤スラリーD
ジメチルアセトアミドに抗菌剤9.76wt%およびステアリルアルコール2.44wt%を溶解した溶液を、ジルコニアボール(直径:0.5mm)を有する装置(DCP−SUPERFLOW 170、Drais Mannheim、ドイツ)内でミルにかけて、抗菌剤スラリーを分散させた。本例において使用した抗菌剤は、ZnOを62.1モル%、SiOを31.1モル%、Pを2.5モル%、Alを2.3モル%およびNaOを2.0モル%含むガラス金属化合物であり、3.5μmの第1の平均粒径を有していた。具体的に、抗菌剤0.1トン、ステアリルアルコール0.025トンおよびジメチルアセトアミド0.9トンを、スラリー作成タンクに加えた。その後、24kg/分の速さでタンクとミル装置の間のパイプを通じてスラリーを循環させながら、スラリーの分散を600rpmでミル装置内で行なった。45時間のミル後、分散されたスラリーをふるいに通過させることによって濾過テストを行なった。その結果、ふるいを通過する抗菌剤スラリーの量は2kgであり、したがって、抗菌剤スラリーは「通過した」と判断した。スラリーの色は白であった。
調製実施例5:抗菌剤スラリーE
ジメチルアセトアミドに抗菌剤9.76wt%およびグリセリンモノステアレート2.44wt%を溶解した溶液を、ジルコニアボール(直径:0.5mm)を有する装置(DCP−SUPERFLOW 170、Drais Mannheim、ドイツ)内でミルにかけて、抗菌剤スラリーを分散させた。本例において使用される抗菌剤は、ZnOを62.1モル%、SiOを31.1モル%、Pを2.5モル%、Alを2.3モル%およびNaOを2.0モル%含むガラス金属化合物であり、3.5μmの第1の平均粒径を有していた。具体的に、抗菌剤0.1トン、グリセリンモノステアレート0.025トンおよびジメチルアセトアミド0.9トンを、スラリー作成タンクに加えた。その後、24kg/分の速さでタンクとミル装置の間のパイプを通じてスラリーを循環させながら、スラリーの分散を600rpmでミル装置内で行なった。43時間のミル後、分散されたスラリーをふるいに通過させることによって濾過テストを行なった。その結果、ふるいを通過する抗菌剤スラリーの量は2kgであり、したがって、抗菌剤スラリーは「通過した」と判断した。スラリーの色は白であった。
調製実施例6:抗菌剤スラリーF
ジメチルアセトアミドに抗菌剤10wt%を溶解した溶液を、ジルコニアボール(直径:0.5mm)を有する装置(DCP−SUPERFLOW 170、Drais Mannheim、ドイツ)内でミルにかけて、抗菌剤スラリーを分散させた。本例において使用される抗菌剤は、ZnOを62.1モル%、SiOを31.1モル%、Pを2.5モル%、Alを2.3モル%およびNaOを2.0モル%含むガラス金属化合物であり、3.5μmの第1の平均粒径を有していた。具体的に、抗菌剤0.1トンおよびジメチルアセトアミド0.9トンを、スラリー作成タンクに加えた。その後、24kg/分の速さでタンクとミル装置の間のパイプを通じてスラリーを循環させながら、スラリーの分散を600rpmでミル装置内で行なった。
【0035】
72時間のミル後、分散されたスラリーをふるいに通過させることによって濾過テスト(抗菌剤の第2の凝集粒子のサイズ評価用)を行なった。その結果、ふるいを通過する抗菌剤スラリーの量は200gであり、したがって、抗菌剤スラリーは「通過していない」と判断した。スラリーの色はグレーであった。
[実施例1]
ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート518gを、90分間攪拌状態で、85℃で窒素ガス流下において、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量:1800)2328gと反応させて両端にイソシアネート基を有するポリウレタン前駆体を作成した。ポリウレタン前駆体を室温に冷却した後、ジメチルアセトアミド4643gに溶解して、ポリウレタン前駆体溶液を作成した。次いで、プロピレンジアミン54g、ジエチルアミン9.1gおよびジメチルアセトアミド1889gの溶液を、10℃以下の温度で、ポリウレタン前駆体溶液に加えて、セグメント化ポリウレタンポリマーの溶液を作成した。エチレンビス(オキシエチレン)ビス−(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)−プロピオネート)1.5重量%、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン0.5重量%、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ジセミカルバジド1重量%、ポリ(N,N−ジメチル−2−アミノエチルメタクリレート)1重量%、二酸化チタン0.1重量%を、ポリウレタンポリマー溶液に加えた。これらの添加剤の重量割合は、ポリウレタンポリマー溶液の固形分の全重量に基づいている。次いで、調製実施例1において作成された抗菌剤スラリーを、ポリウレタンポリマー溶液に加えた。したがって、糸中の抗菌剤の含有量は、1.5重量%であり、糸中の分散剤(ステアリン酸)の含有量は、0.375重量%であった。得られた紡糸ストック溶液から泡を取り除き、次いで、250℃の紡糸温度で乾燥紡糸して、40デニール/4フィラメントの弾性糸を生成した。弾性糸は、丸編装置(KT−400、直径:4インチ、400ニードル、永田精機株式会社、日本)を使用して、100%スパンデックスで筒状の織物に編んだ。通常の精練プロセスを使用して、スパンデックス筒状織物を精練した。精練した織物の物理的性質を、次のそれぞれの手順によって評価した。その結果を表1に示す。
(1)抗菌作用の評価
筒状織物の抗菌作用を、下記手順に従って評価した。黄色ブドウ球菌(ATCC6538)および大腸菌(ATCC8739)を、抗菌作用の評価用のテストバクテリアとして使用した。抗菌作用は、韓国工業規格(KS)K0693−2001のテスト方法に従って決定した。
抗菌作用(静菌性割合、%)
=[参照サンプル中で18時間培養後に生存するバクテリアの数−試験サンプル中で18時間培養後に生存するバクテリアの数)/(参照サンプル中で18時間培養後に生存するバクテリアの数)]×100
試験サンプル:スパンデックス筒状織物
参照サンプル:コットン(韓国工業規格K 0905−1996で定義)
(2)白色度の評価
筒状織物の白色度を下記手順に従って評価した。筒状織物の明るさ(「L」)値を、以下の試験条件で、色視分光測光器(BYK−Gardener、米国)を使用して測定した。
機器の配置=45°/0°、(光源/観測者=D65/10°、11mmのサンプルポート口径、測定数:3)
[実施例2〜5]
調製実施例2〜5で調製した抗菌剤を使用した以外は、実施例1と同様にしてスパンデックス筒状織物を作成した。織物の物理的性質を評価し、得られた結果を表1に示す。
[比較例1]
調製実施例6において調製した抗菌剤を使用した以外は、実施例1と同様にしてスパンデックス筒状織物を作成した。織物の物理的性質を評価し、得られた結果を、表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
「L値」が高いほど、白色度は良好である。
【0038】
表1に示す結果から分かるように、本発明のプロセスによって作成された抗菌性スラリーを使用するスパンデックス織物は、抗菌作用、紡糸性および糸の色において優れていた。
【0039】
上記記載から明らかなように、本発明のプロセスによって作成された抗菌弾性繊維は、優れた抗菌性を維持し、糸の変色が抑制されているとともに、優れた紡糸性を示す。
【0040】
本発明の好適な実施形態を実例の目的のために開示したが、添付の請求の範囲に開示するように、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、様々な修正、追加および代用を、当業者が可能であることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZnOを50〜78モル%、SiOを21〜49モル%およびアルカリ金属酸化物を1〜10モル%含み、0.1μm〜5μmの平均粒子径を有する抗菌剤としてのガラス化合物を溶媒中で分散剤と混合するステップと、
前記混合物をサンドグラインドまたはミルにかけるステップと、
前記グラインドまたはミルにかけられた混合物をセグメント化ポリウレタンポリマーの溶液に加えて、弾性糸を作成するステップと、を包含することを特徴とする抗菌弾性繊維の作成プロセス。
【請求項2】
前記ガラス化合物は、さらにP、Al、TiOおよびZrOからなる群より選択される少なくとも1つの材料を0.1〜19モル%含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記抗菌剤は、非多孔性であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記分散剤は、脂肪酸類、脂肪酸塩類、脂肪酸エステル類および脂肪族アルコールからなる群より選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記弾性繊維の重量に対して、前記抗菌剤を0.2〜5重量%加えることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記分散剤および前記抗菌剤を、混合の間およびミルまたはサンドグラインドの間に、1:10〜1:1の重量比で使用することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
混合後およびミルまたはサンドグラインド後、およびセグメント化ポリウレタンポリマーの溶液に加える前に、前記抗菌剤の第2の凝集粒子径は、15μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかのプロセスによって作成される抗菌弾性繊維。

【公表番号】特表2008−525653(P2008−525653A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548049(P2007−548049)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000988
【国際公開番号】WO2006/070971
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(501434948)ヒョスン・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】HYOSUNG CORPORATION
【Fターム(参考)】