説明

抗菌性トルマリンセラミックスの製造方法

【目的】水・空気の浄化、改質、土壌の改良、動物(人を含む)の健康に貢献する、抗菌性トルマリンセラミックス材料および同セラミックス体を提供する。
【構成】1.トルマリンを主原料に、チタン酸バリウムを副原料として、粘着剤および可塑性原料と混練し、約800°Cの低温で焼成して、抗菌性トルマリンセラミックス材料を得る。
2.抗菌性トルマリンセラミックス材料に可塑性原料および媒熔剤を添加して、混練、成形後約930°Cの低温で焼結し、一体化した抗菌性トルマリンセラミックス成形体を得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トルマリン(電気石)粉末に抗菌性金属酸化物を混合し、これを焼成して添着させ、空気、水の浄化および改質、動物(人を含む)の健康保持および増進、植物の育成の助長、土壌の改良に好影響を与える抗菌性トルマリンセラミックス材料の製造および同材料を基礎原料とした抗菌性トルマリンセラミックス体の製造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トルマリン(電気石)は、950〜970°Cで硼素が放失され、1000〜1100°Cで熔融する。陶磁器を1150°Cで焼成した場合、その焼成品素地中には認められない。すなわち、熔化して焼成素地中に熔けてしまい、著しく素地を着色する。物理的特性としては、圧電効果(ピエゾ効果)により、圧電気(ピエゾ電気)を生ずる。また、過熱すると「ピロ電気」を生ずる焦電効果もある。なお、圧電効果とは、ピエゾ効果ともいい、イオン結晶が外力による応力に対応して、電気分極を生ずる現象をいい、焦電性とは、温度変化に対応して物質表面に電荷が現れる現象をいう。化学的特性としては、水中において、ヒドロキシルイオン(H)を生成する性質がある。すなわち、水(2HO)は、一般的には、11中にH(水素イオン濃度。ヒドロニウムイオン)が10−7モル、OH(水酸イオン濃度、水酸化物イオン)が10−7モル宛電離しており、そのイオン積は、H×OH=K(一定)と定まっている。従って、10−7×10−7=10−14であるが、上式のうち、極く僅かであるが、H×H↑=Kが存在することが知られている。この2HO→H×H↑に分解された結果、水は界面活性化され、水中にある金属を不動態化させて、スライム等を抑制する(水道水の場合は、赤錆水が出ない)。その理由は、水表面に単分子膜が形成されるので、微量な存在量に比べて、効果が倍加される。最近では、トルマリンの永久電極の応用が研究され、その応用例としては、マイナス空気イオンの生成が確認されており、動物(人を含む)の健康増進(血圧降下、快眠)等についての開発が促進されつつあり、トルマリンと銀を添加した抗菌製品等が発売されているが、いずれも開発途上のようであり、十分に満足するだけの技術的評価を得るまでには至っていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のトルマリンを基材にした水に対する浄化および改質に関する技術的な評価は、開発途上の関係もあるが、高い評価を得ていない。また、空気に関しては、全く新製品の開発が発表されていない。市販の水質改善用トルマリンペレットや浄化用トルマリンセラミックボールを調べてみても、水中で約6〜8ケ月位で、水の界面活性化作用が著しく減少する。一方、銀を含有する化合物または添着物は、空気中あるいは水中の酸素や光等の作用により、着色、変色、褪色等を起こす現象は、古くから知られている。在来のトルマリンセラミックボールやトルマリンペレット等に関しても、同様な現象が見受けられる。
【0004】上述の欠点をいかに克服するかについて、鋭意研究の結果。
(1)トルマリンが及ぼす水の界面活性化作用の劣化に対処する方法として、チタン酸バリウム(BaTiO)を添加(混合)することとした。チタン酸バリウムは、水晶、電気石に次いでピエゾ電気の発生量(静電容量)が大きく、現在、電子工業では広く利用されている。
【0005】(2)銀を含む化合物または混合物の欠点である、着色、変色、褪色などに対する処置としては、銀を化合または混合、あるいは添着しないで、これに代わるものとして、抗菌性金属を1種以上添加(混合)することとした。現在知られている抗菌性金属群としては、Ag・Au・Cu・Zn・Hg・Sn・Fe・Ti・Cr・Cd・Pb等があり、このうちCu・Cr・Zn・Snが特に有効であることを知った。前述のHの発生に必要なピロ電気、ピエゾ電気の発生をできるだけ妨げない抗菌性金属として、ZnおよびFeを添加(混合)することとした。これ等はPbを除いて、他の抗菌性金属よりも電気抵抗値が高いからである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、抗菌性トルマリンセラミックス材料の製造、および当該材料を出発原料として、他原料物質と混合し、所望の形状に成形すると共に、これを低温焼成して、一体化した成形体の製造に大別される。材料の製造は、その原料の配合比率および焼成工程によって、その効率が大きく変化するが、高効率と思われる配合および製造方法は次のとおりである。
【0007】(1)抗菌性トルマリンセラミックス材料の製造方法。
a.トルマリンの電気的特性の発揮させ易い平均的な粒経は、3〜10μmであるので、7μm付近が望ましく、使用量は、50重量%を基準とする。
b.チタン酸バリウム(BaTiO)は、トルマリンの電気的特性を増幅させるために、添加(混合)するものであって、BaO+TiO→BaTiOを1350°Cで焼成して得る。使用量は20重量%を基準とする。
c.抗菌性金属としては、四三酸化鉄(Fe)5重量%、亜鉛華(ZnO)5重量%を使用基準とする。
d.粘着剤および可塑性材としては、有機性粘着剤5重量%、可塑性材として蛙目粘土10重量%、木節粘土5重量%を基準とする。有機性粘着剤、可塑性材に水50重量%を加え、十分に撹拌の後、上記a,b、cを加えて、ボールミル(ポットミル)で約5時間混練し、乾燥後、800゜C±10゜Cで5〜6時間焼成し、窯出し後、所望の粒度に調整して、粗砕、粉砕、摩砕して、抗菌性トルマリンセラミックス材料を得る。
【0008】(2)抗菌性トルマリンセラミックス焼結体の製造方法。抗菌性トルマリンセラミックス材料70重量%、無鉛低温フラックス10重量%、低温可塑性原料20重量%を湿式混練、乾燥後、粉体として所望の形体をした金型等で成形し、あるいは泥漿として、流込成形を行う等、一般陶磁器製造方法に準じて、成形、乾燥、焼成すれば所望の焼結体を得る。焼成温度は、トルマリンのもつ電気的特性を失わない範囲の温度でなければならない。従って、950゜C未満である。好ましくは930゜C付近の焼成温度が望ましい。
【0009】
【作用】本発明に係る抗菌性トルマリンセラミックス材料および同セラミックス体には、下記のとおりの物理的化学的特性および作用がある。
(1)物理的特性および化学的特性。中性(PH6.9〜PH7.2)。圧電性、焦電性、抗菌性を有する。
(2)作用。
a.トルマリンおよびチタン酸バリウムによるピロ電気、ピエゾ電気によって、水との接触表面における水の表面活性化とそれに伴う水中金属の不動態化作用。
b.同上の電気作用により生ずる、空気のマイナスイオン化。
c.焼成添着された抗菌性金属酸化物による抗菌作用。
以上を複合化させることによって、水の浄化、改質、空気のマイナスイオン化をより効率的にするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
【実施例1】抗菌性トルマリンセラミックス材料の製造方法。
(1)(チタン酸バリウムの製造)
酸化バリウム(BaO)1、酸化チタン(TiO)1の割合で、乾式混合し、当該混合粉体を匣鉢に入れて、1350゜Cの酸化焔で5時間焼成して、チタン酸バリウム(BaTiO)を得た。
(2)(抗菌性トルマリンセラミックス材料の製造方法)
配合表(重量%)
1.トルマリン 50% 200g2.チタン酸バリウム 20% 80g3.四三酸化鉄 5% 20g4.亜鉛華(酸化亜鉛) 5% 20g5.CMC 5% 20g6.蛙目粘土 10% 40g7.木節粘土 5% 20g合 計 100% 400g以上のうち5〜7までの原料に水200g(50重量%)を入れ、十分撹拌後に1〜4までの原料を乾式混合して、上記5〜7の注水済原料に投入し、再度撹拌した後、これをポットミルに入れて、約5時間混練し、乾燥後、匣鉢に入れて、800°Cで約5時間焼成し、窯出し後、粒度調整をして、380gの抗菌性トルマリンセラミックス材料を得た。CMCは有機性であるので、焼成すると揮発する。
【0011】
【実施例2】(抗菌性トルマリンセラミックス焼結体の製造)上記で得た抗菌性トルマリンセラミックス材料を出発原料として、下記のとおりに配合した。
1.抗菌性トルマリンセラミックス材料粉体 70重量% 210g2.無鉛低温フラックス 10重量% 30g3.低温粘土 20重量% 60g 合 計 100重量% 300g以上の原料をポットミルに入れ、湿式混練(約4時間)して、乾燥後に、所定の金型で成形して、窯詰め、930°Cで約5時間焼成して、296gの焼結体を得た。
【0012】
【発明の効果】本発明に係る抗菌性トルマリンセラミックス材料および同成形体は、従来のトルマリンセラミックス体に比べて、(1)トルマリンにチタン酸バリウムを添加したため、ピロ電気、ピエゾ電気の静電容量が大となり、ヒドロキシルイオンの発生量を多くした結果、水中金属の不動態化およびマイナス空気イオンの生成化が増大され、従来品に比べ、より高効率になった。
(2)銀に代わって、抗菌性金属酸化物を使用したため、銀の欠点である変色、着色、褪色がなくなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】トルマリン(電気石)の粉末と抗菌性金属酸化物を低温焼成で添着し、複合化してなることを特徴とする抗菌性トルマリンセラミックス材料。
【請求項2】前記抗菌性トルマリンセラミックス材料を、所望の形状に成形すると共に低温焼成して、一体化することを特徴とする抗菌性トルマリンセラミックス体。