説明

抗CCPおよびインターロイキン6の測定による慢性関節リウマチの評価方法

本発明は、慢性関節リウマチの評価を補助する方法に関する。該方法は、特にインビトロにおける慢性関節リウマチの有無の評価に用いられる。該方法は、例えば、試料中の抗CCPとインターロイキン6の濃度を測定すること、および測定された濃度を慢性関節リウマチの有無と相関させることを含む生化学的マーカーの解析により行なわれる。本発明の方法におけるRAの評価を更に改善するために、一つ以上のさらなるマーカーのレベルが、抗CCPおよびインターロイキン6とともに決定され得、RAの有無と相関され得る。本発明はまた、慢性関節リウマチの診断における抗CCPおよびインターロイキン6を含むマーカーパネルの使用に関し、本発明の方法を実施するためのキットを教示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性関節リウマチの評価を補助する方法に関する。該方法は、特にインビトロにおける慢性関節リウマチの有無の評価に用いられる。該方法は、例えば、試料中の抗CCPとインターロイキン6の濃度を測定すること、および測定された濃度を慢性関節リウマチの有無と相関させることを含む生化学的マーカーの解析により行なわれる。本発明の方法におけるRAの評価を更に改善するために、一つ以上のさらなるマーカーのレベルが、抗CCPおよびインターロイキン6とともに決定され得、RAの有無と相関され得る。本発明はまた、慢性関節リウマチの診断における抗CCPおよびインターロイキン6を含むマーカーパネルの使用に関し、本発明の方法を実施するためのキットを教示する。
【0002】
慢性関節リウマチ(「RA」)は罹患した関節、特に手および足にその最も顕著な症状を生じる、慢性で、炎症性で、全身性の疾患である。慢性関節リウマチの開始は、数週間から数ヶ月の範囲で徐々に起こり得るか、または病状は急性の様態で急速に現れ得る。
【0003】
RAは世界的な分布を有し、全民族集団を巻き込んでいる。該疾患はいかなる年代においても発症し得るが、罹患率は年齢に伴って増加し発病率のピークは40代から60代の間である。概算の罹患率は、北米人口の0.3%から1.5%で変動する。今日、米国だけで2,500,000人以上が慢性関節リウマチを有すると診断されており、一部の統計は、650万〜800万人が潜在的に該疾患に苦しんでいることを示す。女性は男性よりも2〜3倍の頻度で罹患している。
【0004】
慢性関節リウマチの初期症状は、大部分が関節の腫脹または圧痛を伴う関節痛等の関節特異的であるが、また硬直、熱、皮膚下の結節および疲労のようなむしろ非特異的な症状も含み得る。非常に特徴的なのは関節の対称性の関与である。最終的に臀部、肘および肩の関与を伴い、手、足、膝および手首の関節は、ほとんどが共通に罹患している。疾患が進行にするにつれ、いかなる種の動作も非常に苦痛で、困難になり、最終的には関節が関与する機能の消失が引き起こされる。慢性関節リウマチのより重症の場合には激しい痛みおよび関節の破壊が引き起こされる。関節炎に関係した関節の破壊による痛みおよび動作の消失を緩和しようとする努力の中で、年間約300,000例の骨および関節の置換の外科的手術が行われている。
【0005】
RAを分類するために最も広く用いられるシステムは1987年にRAの分類の基準を改定したアメリカリウマチ学会である。(Arnett, F. Cら、Arthritis Rheum. 31 (1998) 315-324。これらの基準(ARA基準として公知である)により、患者が以下の7項目1)朝少なくとも1時間の硬直、2)3箇所以上の関節部の関節炎、3)手関節の関節炎、4)対称性の関節炎、5)リウマチ様結節、6)血清リウマチ因子(「RF」)、および7)ラジオグラフィーの変化、の基準の少なくとも4項目を満たすのであれば患者はRAを有すると言われ、個々で、この場合基準1〜4は少なくとも6週間存在しなければならない。これらの基準はおよそ90%の感度と特異性を有する。
【0006】
一般的に受け入れられ、RAの診断を補助する唯一の生化学的マーカー(上記ARA基準参照)は、血清中で検出されるリウマチ因子(RF)である。
【0007】
RAの組織学的変化は、疾患特異的ではなく主に関与した器官に依存している。主たる炎症性関節障害は滑膜に関与する。電子顕微鏡により観察した際における最も初期の変化は、管腔の閉塞、内皮細胞の腫脹、および内皮細胞間の間隙を伴う滑膜の微小血管系に対する傷害である。この段階は通常、表面管壁細胞層の緩やかな増殖に関連がある。二つの細胞型:マクロファージの特徴を有する骨髄由来A型滑膜細胞、および間充織性B型滑膜細胞が、滑膜管壁を構成する。両細胞種は、滑膜の肥厚に寄与し、これは、二種細胞間のパラクリン相互作用を示唆する。炎症のこの段階は、鬱血、浮腫、およびフィブリンの滲出に関連がある。疾患の初期に細胞の浸潤が起こり、最初には主にTリンパ球を含む。炎症の結果として、滑膜は血管および滑膜繊維芽細胞の増殖由来、ならびに滑膜並列層の増加および拡大由来の肥厚化をなす。
【0008】
肉芽細胞は軟骨に拡張し、パンヌスとして知られている。組織は滑膜と骨の間の辺縁における関節周囲の骨および軟骨を活発に侵し、破壊し、これは糜爛性RAとして公知である。
【0009】
RAの関節の症状は二つの部類:炎症性の滑膜炎に関係する可逆的な徴候および症候、ならびに滑膜炎により生じる不可逆的な構造的損傷に分かれ得る。この概念は、疾患の病期分類および予後の決定のみならず、医学的または外科的処置の選択にも有用である。典型的な患者における構造的損傷は通常、疾患の一年目および二年目の間に数回起こる(Van der Heijde, D. Mら、Br. J. Rheumatol. 34 (1995) 74-78)。滑膜炎は、変動的なパターンに従う傾向があるが、構造的損傷は以前の滑膜炎の一次関数として進行する。
【0010】
RAにおける初期の事象の病因論は捉えにくいままである。自己免疫の構成要素は、今日広く受け入れられているが、他の要素はいまだ議論されている。バクテリアまたはウイルスの感染の可能性が激しく追及されている。単離、電子顕微鏡または分子生物学による、感染要因とRAを関連付ける全ての努力が失敗している。RAの単一の主要な原因は無いことならびに種々の機構が最初の組織障害を引き起こし、滑液の炎症に陥らせ得ることの可能性がある。
【0011】
滑膜炎の臨床的徴候は微妙であり得、しばしば主観的である。熱を持ち、腫れた、明らかに炎症を起こした関節は通常、炎症性滑膜炎の最も活発な時期のみにおいて見られる。軟骨の消失および関節周囲の骨の腐食は、構造的損傷の特徴である。構造的損傷に関する臨床的特徴は、機能的および解剖学的な進行性の悪化が特色である。関節に対する構造的損傷は不可逆的および付加的である。
【0012】
慢性関節リウマチの効果的処置は、一般的に投薬、運動、休養および適当な関節の保護治療の組み合わせを含む。特定の患者に対する治療は、疾患および関与する関節の重篤さに依存する。炎症および関節の破壊を軽減するために、非ステロイド性の抗炎症薬、コルチコステロイド、金の塩、メトトレキサートおよび全身性免疫抑制剤が広く使用されている。ステロイドおよび免疫抑制剤の使用は、しかしながら潜在的な致死の状況に対する毒性および脆弱さの両観点において重大な危険性と副作用を有する。さらに最近「生物学的製剤」に基づいた治療法がRA治療に導入されている。かかる治療法は、例えば、炎症を有意に軽減させるTNF-αに対する可溶性受容体または抗体である。非常に有望であるにもかかわらず、生物学的製剤は費用が高いために依然使用が制限されている。
【0013】
長期的な臨床的および疫学的な研究によるデータは、処置についてのガイドラインを提供する。これらの研究において1)初期診断の必要性、2)前兆となる要素の同定、および3)初期の積極的な処置が強調されている。症候の開始後最初の数ヶ月内が好ましいより早期の診断および処置は、不可逆的な関節の損傷を防ぐことに有用であり得る。
【0014】
特に生化学的パラメーターに基づいた慢性関節リウマチの評価を補助する方法の必要性が存在する。インビトロにおける慢性関節リウマチ有無の評価のかかる方法および試薬が本発明により提供される。方法はまたRAに苦しむ患者における処置の効力をモニターすることにおいても補助するであろう。
【0015】
本発明は、試料中の抗CCPおよびインターロイキン6の濃度を測定することならびに決定された濃度と慢性関節リウマチの有無を相関することを含む、生化学的マーカーによる、インビトロにおける慢性関節リウマチの評価の方法に関する。
【0016】
本発明はまた、RAの診断において少なくとも抗CCPおよびインターロイキン6を含んだマーカーパネルの使用に関する。
【0017】
本発明はまた、少なくとも、抗CCPおよびインターロイキン6それぞれを特異的に測定するための試薬ならびに測定を行うために任意の補助試薬を含む本発明の方法を実行するためのキットを提供する。
【0018】
第一の好ましい態様において本発明は、試料中の抗CCPおよびインターロイキン6の濃度を測定することならびに決定された濃度と慢性関節リウマチの有無を相関することを含む、生化学的マーカーによりインビトロにおける慢性関節リウマチの評価を行うための方法に関する。
【0019】
本明細書中で使用される際、以下の用語はそれぞれ、本セクションにおける用語に関連する意味を有する。
【0020】
冠詞「a」および「an」は本明細書中において冠詞の文法上の目的語の一つまたは一つ以上について(すなわち、少なくとも一つについて)言う際に用いられる。例によると、「a marker」は一つのマーカーまたは一つ以上のマーカーを意味する。
【0021】
用語「マーカー」または「生化学的マーカー」は本明細書中で使用される際、患者の試験試料を解析するための標的として用いられる分子について言う。かかる分子標的の例は、タンパク質またはポリペプチドそれ自身および試料中に存在する抗体である。本発明中でマーカーとして用いられるタンパク質またはポリペプチドとしては、任意の前述タンパク質のバリアントならびに特に免疫学的に検出可能な断片が挙げられる。前述タンパク質または前述バリアントの断片を含むことが予期される。当業者は、例えば炎症の際にかかる断片に分解または切断され得るような、細胞により放出されるかまたは障害を受ける細胞外基質中に存在するタンパク質を認識しよう。ある種のマーカーは不活性な形態で合成され、これはタンパク質分解により連続的に活性化され得る。当業者が認識するよう、タンパク質またはそれらの断片はまた、複合体の一部分として存在し得る。本発明の意味において、かかる複合体はまた、マーカーとして用いられ得る。マーカーポリペプチドのバリアントは、それの遺伝子によりコードされているが、PIもしくはMW、または両方(例えば、mRNAまたはmRNA前駆体の選択的プロセッシング、例えば選択的スプライシングまたは制限されたタンパク質分解の結果として)が異なり、加えてまたは選択的に、種々の翻訳後修飾(例えば、糖付加、アセチル化および/またはリン酸化)の結果として生じる。
【0022】
本発明により上記される際に、用語マーカーはまた、試料中に存在する抗体にも関する。RAの場合において、抗体は自己抗体、すなわち、患者試料中で患者自身の細胞中または上に存在するかまたは細胞に産生される抗原に結合する抗体である。
【0023】
用語「試料」は本明細書中で使用される際、インビトロにおける評価の目的のために入手する生物試料について言う。本発明の方法において、試料または患者試料は好ましくはいかなる体液をも含み得る。好ましい試験試料には血液、血清、血漿、尿、唾液および滑液が挙げられる。好ましい試料は、全血、血清、血漿または滑液であり、血漿または血清が最も好ましい。
【0024】
当業者が認識するように、任意のかかる診断はインビトロでなされる。患者試料は後に廃棄される。患者試料は本発明のインビトロ診断方法のためにのみ用いられ、患者試料の原料は患者体内へと逆に移入されることは無い。典型的に、試料は液体試料である。
【0025】
用語「慢性関節リウマチの評価」は、本発明による方法が(他の変量するもの、例えばARAによる四つの基準と共に(上記参照))、医師がRAの自身の診断を確立することを補助することを示すために用いられている。好ましい態様において、この評価はRAの有無に関する。当業者が認識するように、所定の疾患について診断的に100%の特異性および同時に100%の感度を有する生化学的マーカーは無く、むしろ生化学的マーカーは一定の見込みまたは予期値により疾患の有無を評価するために用いられる。好ましくは、本発明による方法はRAの有無を評価することを補助する。
【0026】
当業者が認識するように、マーカーのレベルとRAの有無の相関の工程は、種々の方法において実行され得、達し得る。一般的に参照集団が選択され、設定された標準の範囲となる。IL-6と同様に適当な参照集団を用いる抗CCPの両方のために標準の範囲を設定することは、もはや常套的手段に過ぎない。標準の範囲は、限定的だが、ある一定程度、設定された参照集団に依存することは一般的に受け入れられる。理想的な参照集団は、例えば数百から数千と数が多く年齢、性別、および目的の任意の他の変数が一致している。所定の濃度のような、絶対値に関する標準の範囲はまた、用いられたアッセイおよびアッセイの作製に使用された標準化に依存する。
【0027】
実施例の項における抗CCPおよびIL-6についての所定のレベルは所定のアッセイ手順により測定され、設定されている。本発明の範囲から逸脱せずに、種々のアッセイにより種々の区分された価値が導かれ得ることが理解されたい。
【0028】
シトルリン酸化されたペプチドは、RAを有する患者の血清中に発見されるような非常に重要な自己抗体についての抗原である。それらは複数の研究者群により過去何年間かにわたり集中的に研究されている(例えば、WO 98/08946; WO 98/22503; WO 99/28344; WO 99/35167, WO 01/46222, およびWO 03/050542)。近年Schellekensおよび共同研究者ら(Schellekens, G.A., Arthritis Rheum. 43 (2000) 155-163)により、直鎖状のペプチドを用いた同じアッセイと比較すると、特異的な環状シトルリン酸化ペプチド(CCP)に基づくELISA試験により、RAの診断の正確さに関して優れた性能特性が示されることが報告された。
【0029】
CCPに対する自己抗体は、すなわち、ほとんどがおそらく、患者血清中で循環しているシトルリン酸化されたペプチドに反応性のある、インビトロアッセイ中でCCPに結合する抗体であり、「抗CCP」と呼ばれる。van Venrojiらの特許出願(WO 98/22503)は正確なシトルリン酸化されたペプチドについて述べ、環化により、向上した個々のペプチドの反応が引き起こされることを示す。特定の例において、一般式HQCHQESTXGRSRGRCGRSGS (配列番号:1)(式中のXはシトルリンを表す)のペプチドが二つのシステイン残基中のジスルフィド結合により環化されるならば、直鎖状のペプチドに対する36%に比べて感度が63%に上昇することが示されている。患者血清中の自己抗体が、種々の環状ペプチドに対してわずかに異なる反応を有するように、WO 98/22503においてアッセイのさらなる改善のためにペプチドの組み合わせが示された。
【0030】
好ましい態様において、WO 03/050542においてvan Venroijらにより述べられたように抗CCPは測定される。簡単には、一般式X-GおよびX-nonG(式中のXはシトルリンを表す、Gはグリシンを表す、およびnon-Gは任意のアミノ酸H、I、W、S、R、K、Y、M、F、V、P、Cit、またはそれらのアナログを表す)を有するエピトープサイトを含むペプチドの組み合わせにより、試料中の抗CCP抗体(抗CCP)のレベルが評価される。かかる評価に有用な特異的なペプチドがWO 03/050542に開示されている。当業者には容易に認識されるように、抗CCPの測定のためのアッセイに用いられる環状シトルリン酸化ペプチド抗原に関するさらなる改善と工夫が可能であり、これは、結果として環状シトルリン酸化ペプチド配列の変換された配列をもたらす。しかしながら、かかる改変は、本発明の意図から逸脱しないであろう。
【0031】
CCPに結合する抗体、すなわち抗CCPは血清学的アッセイで測定される。好ましくはかかるアッセイは、抗原として一つ以上のCCPを用いることおよび試料中に含まれる抗CCP抗体のCCP抗原に対する結合を適切な手段によって、検出することにより構成される。
【0032】
検出の好ましい手段は、特異的な結合アッセイ、特にイムノアッセイ法である。イムノアッセイ法は当業者に周知である。かかるアッセイならびに実際の適用および手順を実行するための方法は関連の教本に要約されている。関連教本の例はTijssen, P.のPractice and theory of enzyme immunoassays, 編集R.H. Burdonおよび v.P.H. Knippenberg, Elsevier, Amsterdam, 1990, 221-278ならびに免疫学的手法を扱ったMethods in Enzymology, 編集. S.P. Colowick, N.O. Caplanおよび S.P., Academic Pressの種々の巻70、73、74、84、92および121巻中にある。
【0033】
抗CCP抗体は、例えば、CCPでコートしたラテックス粒子の凝集化による同種のアッセイ形式により検出され得る。
【0034】
好ましくは、不均一系イムノアッセイ法により抗CCPを測定する。かかる異種の測定は、直接または間接的に固相をCCPで覆うこと、抗CCP抗体がCCPに結合可能な条件下で、固相と抗CCP抗体を含むと分かっているまたは予想される試料をインキュベートすること、および直接または間接的に抗CCP抗体の結合を検出することに基づいている。さらなるアッセイ形式はいわゆる二重抗原ブリッジアッセイ(double antigen bridge assay)法であり、抗CCP測定の場合に、CCPはイムノアッセイ法の検出側と固相側の両方において用いられ患者試料中の自己抗体はこれらの「二重」抗原間の架橋を形成する。必要または適当な場合、洗浄の工程を異種のイムノアッセイ法を行う時間に含める。
【0035】
インターロイキン6(IL-6)は、造血に関与するものおよび自然免疫反応の活性化に関与するものに分類され得る、無数の生物活性を有する21kDaの分泌型タンパク質である。IL-6は急性期反応物であり、接着分子を含む様々なタンパク質の合成を刺激する。その主機能は、肝臓タンパク質の急性期の産生を仲介し、その合成はサイトカインIL-1およびTNF-αにより誘導される。IL-6は通常はマクロファージおよびTリンパ球により産生される。IL-6の通常の血清中濃度は<5pg/mlである。
【0036】
抗CCPについては、試料中に含まれるその(自己)抗体が測定されるが、IL-6については、IL-6マーカー分子それ自身であり、検出される。例えばIL-6は競合型またはサンドウィッチ型イムノアッセイ法により測定され得る。好ましくは、IL-6は、直接または間接的に、固相に対して結合したまたは結合可能な、IL-6に対する抗体の特異的な結合、IL-6に対する特異的に結合する検出可能な標識をされた抗体、ならびにこれらの試薬を抗IL-6抗体が試料中のIL-6に特異的に結合可能な条件下でインキュベートすること、結合しない検出可能な標識された抗体を分離すること、IL-6を介して結合し、標識された抗体の量を決定することおよび結合し、標識された抗体の量を試料中のIL-6の濃度と相関させることに本質的に基づくサンドウィッチイムノアッセイにより測定される。
【0037】
診断についての理想的なシナリオは、単一の事象またはプロセスが、例えば感染性の疾患の場合のように、それぞれの疾患を引き起こし得る状況であろう。他の全ての場合において、RAの場合のように、特に疾患の病因が完全には理解されない場合、正確な診断は非常に困難になり得る。それ故、RAの診断について、一般的に多様な臨床的症候および生物学的マーカーが共に考慮されている。マーカーは個々に決定され得るか、または本発明の好ましい態様において、それらはアレイ技術に基づいたチップまたはビーズを用いることにより同時に測定され得るかのいずれかである。生物学的マーカーの濃度は、次いでそれぞれのマーカーについての個々のカットオフ(cut-off)を用いることにより独立的に解釈されるか、または解釈のために組み合わせられる。
【0038】
実施例の項で示されるように、二つのマーカー、抗CCPおよびIL-6の単なる組み合わせはRAについての診断の正確さを有意に改善させる。
【0039】
本発明による方法において、少なくとも生物学的マーカーおよびIL-6の濃度は、それぞれ決定され、マーカーの組み合わせはRAの有無に相関される。
【0040】
当業者が認識し得るように、調査中の診断の疑問を改善するために、二つ以上のマーカーの測定値を使用する多くの方法がある。全く単純に、しかしながら、しばしば効果的なアプローチにおいて、調査されたマーカーの少なくとも一つに対して試料が陽性である場合、陽性の結果が評価される。このことは、例えばエイズのような感染性の疾患の診断の場合であり得る。しかし、頻繁にマーカーの組み合わせは検証される。好ましくは、例えば抗CCPおよびIL-6についてのように、マーカーパネルのマーカーについての測定値は、数学的に組み合わせられ、組み合わせられた値は診断の疑問下に相関される。マーカー値は、当業の数学的方法の任意の適切な状態により組み合わせられ得る。マーカーの組み合わせと疾患を相関する周知の数学的方法には、Discriminant analysis (DA) (すなわちlinear-, quadratic-, regularized-DA)、Kernel Methods (すなわちSVM)、Nonparametric Methods (すなわちk-Nearest-Neighbor Classifiers)、PLS (Partial Least Squares)、Tree-Based Methods (すなわちLogic Regression, CART, Random Forest Methods, Boosting/Bagging Methods)、Generalized Linear Models (すなわちLogistic Regression)、Principal Components based Methods (すなわちSIMCA)、Generalized Additive Models, Fuzzy Logic based Methods、Neural NetworksおよびGenetic Algorithms based Methodsのような方法を用いる。当業者は、本発明のマーカーの組み合わせを評価するための適切な方法の選択において何の問題も持たないであろう。好ましくは、本発明のマーカーの組み合わせを、例えばRAの有無と相関することに用いられる方法は、DA (すなわちLinear-, Quadratic-, Regularized DiscriminantAnalysis)、Kernel Methods (すなわちSVM)、Nonparametric Methods (すなわちk-Nearest-Neighbor Classifiers)、PLS(Partial Least Squares)、Tree-Based Methods (すなわちLogic Regression, CART, Random Forest Methods, Boosting Methods)、またはGeneralized Linear Models (すなわちLogistic Regression)、から選ばれる。これらの統計的方法に関する詳細は、以下の参考文献:Ruczinski, I., Kooperberg C., LeBlanc, M., Logic regression, J. of Computational and Graphical Statistics, 12 (2003) 475-511; Friedman, J. H. , Regularized Discriminant Analysis, J. of the American Statistical Association, 84 (1989) 165-175; Trevor Hastie, Robert TibshiraniおよびJerome Friedmann, The Elements of Statistical Learning, Springer Verlag, 2001; Breiman, L., Friedman, J. H., Olshen, R. A., Stone, C. J. (1984) Classification and regression trees, California: Wadsworth; Breiman, L., Random Forests, Machine Learning, 45 (2001) 5-32; Pepe, M. S., The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction, Oxford Statistical Science Series, 28 (2003); ならびに Duda, R. O., Hart, P. E., Stork, D. G., Pattern Classification, Wiley Interscience, 第2版 (2001)中に見られる。
【0041】
生物学的マーカーの基礎的な組み合わせについての最適な多変量のカットオフを用いることおよび、例えば罹患した状態と健常な状態のように状態Aと状態B、を区別することは本発明の好ましい態様である。解析のこの型において、マーカーはもはや独立していないが、マーカーパネルを形成する。抗CCPの測定値およびIL-6の測定値を組み合わせると健常対照と比較したとき(また、評価したとき)、または変形性関節症(OA)と比較したときのいずれも、RAの診断の正確性を有意に改善することが確立され得た。OAおよびRA、それぞれを有する患者は全く異なる処置を必要とし得るために、特に後者の知見が非常に重要なものとなる。
【0042】
診断方法の正確性は、その受信者動作特性(ROC)(特にZweig, M. H., および Campbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577、参照)により最も良く述べられている。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたる閾値の決定の連続的な変化を生じる感度/特異性の組の全てのプロットである。
【0043】
実験室試験の臨床的成績は、その診断の正確性または被験体を臨床的に相関のある亜群へと正確に分類する能力に依存している。診断の正確性は検査を受けた被験体の二つの異なる状況を正確に区別するための試験の能力を測る。かかる状況は、例えば健康および疾患または悪性疾患に対する良性である。
【0044】
それぞれの場合において、ROCプロットは、閾値決定の全範囲に対する1−特異性に対する感度をプロットすることにより二分布間の重複を描写する。Y軸上は感度、または真陽性画分((真陽性試験結果数)/(真陽性数+偽陰性結果数)として定義される)である。このことはまた、疾患または状況の存在下における陽性としてのものについて言われている。それは単に罹患した亜群から算出される。X軸上は偽陽性分画、または1−特異性((偽陽性結果数)/(真陰性数+偽陽性結果数)として定義される)である。それは特異性の指標であり、完全に罹患していない亜群から算出される。真および偽陽性分画は、完全に分離して算出されるため、二つの異なる亜群由来の試験結果を用いて、ROCプロットは試料中の疾患の罹患率から独立している。ROCプロット上の各点は、特定の閾値の決定に対応する感度/1−特異性の組を表している。完璧な区別(結果の二分布中に重複がない)を伴った試験は、真陽性分画が1.0または100%(完璧な感度)、および偽陽性分画が0(完璧な特異性)であるような、上方の左隅を通過するROCプロットを有する。区別を伴わない試験(二集団の結果の同一の分布)の理論的プロットは、下方左隅から上方右隅への45度の対角線である。ほとんどのプロットはこれら二つの極の間に落ちる。(ROCプロットが完全に45度の角度で下方に落ちていく場合、これは「陽性度(positivity)」についての基準を「より大きなもの」から「より小さなもの」へと逆転させることまたは反対にすることにより容易に補修される。)性質上、プロットが上方左隅へ近づくにつれ、試験の全体的な正確性は高くなる。
【0045】
実験室試験の診断の正確性を定量化するための簡便な最終目標の一つは、単一の数によりその成績を表すことである。最も共通的な世界的基準はROCプロットの下面積である。協定により、この面積は常に0.5以上である(もしそうでなければ、そのようにするための基準の決定を逆転させ得る)。数値の範囲は1.0(二群の試験値の完璧な分離)および0.5(試験値の二群間に明らかな分布の差が無い)の間で変動する。該面積は、対角線または90%の特異性における感度に最も近い点等のプロットの特定の分画のみでなく、全プロットに依存する。これは、ROCプロットが完璧なもの(領域=1.0)にどれだけ近いかということの定量的で説明的な表示である。
【0046】
好ましい態様において、本発明は、少なくとも抗CCPおよびIL-6の試料中の濃度を測定すること、ならびに決定された該濃度を慢性関節リウマチの有無と相関することにより、健常対照および/もしくはOAに苦しむ患者に対する慢性関節リウマチについての診断の正確性を向上させる方法に関し、該向上は、抗CCPのみに基づいた分類を比較する際に、健常対照および/もしくはOAに苦しむ患者に対して、RAに苦しむと正確に分類される患者をより多く生じる。抗CCPおよびIL-6を含むRAマーカーパネルはまた、当然RAに苦しむ患者の疾患についての重篤さの評価に用いられ得る。
【0047】
当業者が認識し得るように、一つ以上のさらなる生物マーカーによって、RAの評価がさらに改善され得る。抗CCPおよびIL-6を、RAの評価のためのマーカーのパネルのキーマーカーとして用いることのさらなる可能性を示すために、用語「少なくとも」が添付の特許請求の範囲内で用いられている。他の単語により(with other words)、一つ以上のさらなるマーカーについて測定されたレベルを、RAの評価における抗CCPおよびIL-6の測定に組み合わせても良い。
【0048】
抗CCPおよびIL-6と共に用いられる一つ以上のさらなるマーカーは、RAマーカーパネルの部分、すなわち、RAの評価をより改良するための適切なマーカーの組であると見なされ得る。RAマーカーの全マーカー数は20マーカー未満が好ましく、15マーカー未満がより好ましく、またより好ましいのは10未満であり、8またはそれ未満のマーカーがさらにより好ましい。好ましいものは全部で3、4、5または6のマーカーを含むRAマーカーパネルである。
【0049】
従って、好ましい態様において本発明は、試料中の抗CCP、インターロイキン6の濃度および加えて一つ以上の他のマーカーの濃度を測定すること、ならびに抗CCP、IL-6および一つ以上のさらなるマーカーの濃度を慢性関節リウマチの有無に相関することを含む生化学的マーカーにより、インビトロにおける慢性関節リウマチの有無を評価する方法に関する。
【0050】
一つ以上の他のマーカーが任意の公知のまたは将来のRAマーカーと併用され得ることは理解されよう。RAを有する患者を健常対照と比較することにより、診断の正確性を評価する際、このマーカーのみに対するAUCが少なくとも0.65である場合、あるマーカーがRAマーカーとして適格であるとされる。
【0051】
好ましくは、一つ以上の他のマーカーはC反応性タンパク質(=CRP)、血清アミロイドA(=SAA)、S100、オステオポンチン、RF、マトリックスメタロプロテアーゼ1(=MMP-1)、マトリックスメタロプロテアーゼ3(=MMP-3)、ヒアルロン酸、sCD14、脈管形成マーカーおよび骨、軟骨または滑膜の代謝産物からなる群より選ばれる。
【0052】
C反応性タンパク質(=CRP)は、宿主の防御に関与する21kDaのサブユニットを有したホモ5量体Ca2+結合急性期タンパク質である。IL-1が洞様血管内のクッパー細胞によるIL-6の合成の起因となり得るため、CRPの合成はIL-6により、および間接的にIL-1により誘導される。健常集団の90%においてはCRPの通常の血漿濃度は<3μg/ml(30nM)であり、健常個体の99%において<10μg/ml(100nM)である。血漿CRP濃度は、例えば同等アッセイ形式またはELISAにより測定され得る。C反応性タンパク質は、全身性の炎症中に存在するマーカーである。
【0053】
血清アミロイドA(=SAA)は、11.7kDaの低分子量の急性期タンパク質である。それは主にIL-1、IL-6またはTNF-αの刺激に応答して肝臓により合成され、T細胞依存型免疫反応の調節に関与する。急性の事象が起こるとSAAの濃度は、1000倍にまで上昇し、1ミリグラム/ミリリットルに達する。それは嚢胞性線維症、腎移植片回復、外傷または感染症と同程度に多様な炎症の観察に用いられる。慢性関節リウマチにおいて、ある場合にはCRPの代用品として用いられるが、SAAは依然広くは受け入れられていない。
【0054】
オステオポンチン(=OPN)は分泌型の、高度に酸化された、カルシウム結合型、リン酸化された糖タンパク質である。解離または細胞外基質に結合している選択的スプライシング由来の三種類のイソフォームが公知である。32kDaペプチドの主鎖のRDGモチーフにより、OPNはavβ3等のインテグリンに結合し得る。それは本来骨マトリックスより精製されるのであるが、乳、尿、活性化T細胞、マクロファージ、線維芽細胞、平滑筋細胞、腎組織およびある腫瘍細胞を含む無数の体液および組織中に発現する。その発現は数個のサイトカイン、成長因子または炎症メディエーターに応じて刺激される。上昇したOPNの濃度は結核における敗血症、転移性の癌、大脳虚血、アテローム性動脈硬化斑、肉芽腫形成および多発性硬化症等(Chabas, D., ら, Science 294 (2001) 1731-1735)の自己免疫疾患またはRA(Petrow, P.K., ら, Arthritis Rheum. 43 (2000) 1597-1605)に関連する。
【0055】
リウマチ因子(=RF)は、免疫グロブリンG分子の定常Fc-領域に指向される自己抗体である(Waaler, E., Acta Pathol. Microbiol. Scand. 17 (1940) 172-188;Moore, T. L.および Dorner, R. N., Clin. Biochem. 26 (1993) 75-84)。RFは、ある程度の制限はあるが、現在、ARA基準に含まれる慢性関節リウマチの唯一の免疫学的マーカーである。RAの他に、これは、他の炎症性リウマチ疾患、非リウマチ疾患において、および年齢60歳を超える健常人においてさえ見られる(Bartfeld, H., Ann. NY Acad. Sci. 168 (1969) 30-40)。RF自己抗体は、すべての免疫グロブリンクラスに属し、今日使用されているほとんどのアッセイでは、イソタイプIgM、IgGおよびIgAが区別されない。このようなRFアッセイ(全RFアッセイとも呼ばれる)では、主にIgMが測定されるが、IgGまたはIgAもまた、アッセイ形式および供給業者に応じて、ある程度含まれる(Bas, S.ら, Ann. Rheum. Dis. 61 (2002) 505-510)。ここ最近、RF-イソタイプIgGおよびIgAがRAの診断に注目されてきた。3種類のRF-イソタイプすべてが高められると、RFアッセイの診断値は改善されよう(Swedler, W.ら, J. Rheumatol 24 (1997) 1037-1044)。さらに、一部の予後値は、これらのRF-イソタイプのある特定のものに帰属する。特に、高濃度のIgA型RFは、重篤な疾患の進行の指標であることがわかった(Jorgensen, C.ら, Clin. Exp. Rheum. 14 (1996) 301-304)。本発明によるマーカーの組合せにおいて、マーカーRFは、RF測定の任意の形態のであり得、全RF、単一の特定のRF-イソタイプまたはRF-イソタイプの任意の組合せが挙げられる。
【0056】
マトリクスメタロプロテイナーゼ(=MMP)のファミリーは、細胞外マトリクスのほとんどすべての成分を分解する。したがって、MMPは、種々の型の癌だけでなく、RAにおける炎症性プロセスにも関連している。MMP-1およびMMP-3は、前炎症性サイトカイン(IL-1またはTNF-αなど)によって刺激されると、線維芽細胞、骨芽細胞および内皮細胞によって産生される。一般的に、MMPは、血液循環中に不活性な前形態(pro-form)として見られ、本発明において使用するマーカーMMP-1およびMMP-3もまた、それぞれ、かかる不活性な前形態に関連する。MMP-1およびMMP-3は、RA患者の滑液中で検出され、そのレベルは、抗TNF-α療法に対して応答性がある。本発明によるRAマーカーパネルに使用するのに最も好ましいメタロプロテアーゼはMMP-1である。
【0057】
前記メタロプロテイナーゼの代わりに、それらの対応するインヒビターを使用することも可能であり、このインヒビターは、集合的にマトリクスメタロプロテイナーゼの組織インヒビター(=TIMP)と呼ばれ、例えば、MMP-1およびMMP-3は、TIMP-1(MMPと1:1化学量論的複合体を形成する29.5 kDのシアロ糖タンパク質)によりインビボで不活化される。TIMP-1およびTIMP-2と軟骨の破壊との関係は、RAにおいて詳しく調べられた(Ishiguro, N.ら, Arthritis Rheum. 44 (2001) 2503-2511)。
【0058】
S100タンパク質は、常に増加しているCa2+結合性タンパク質の一ファミリーを構成し、これは、現在、20より多い構成要素を含む。S100タンパク質の生理学的に関連性のある構造はホモ二量体であるが、一部はまた、互いにヘテロ二量体を形成し得る(例えば、S100A8およびS100A9)。細胞内機能は、タンパク質リン酸化の調節、酵素活性の調節または細胞骨格の動力学の調節から、細胞増殖および分化における関与に及ぶ範囲にわたる。また、一部のS100タンパク質は細胞から放出されるので、細胞外機能、例えば、ニューロン生存、星状細胞増殖、アポトーシスの誘導および炎症プロセスの調節もまた記述されている。S100A8、S100A9、ヘテロ二量体S100A8/A9およびS100A12は炎症において見られるが、S100A8は慢性炎症に応答するのに対し、S100A9、S100A8/A9およびS100A12は急性炎症において増加する。S100A8、S100A9、S100A8/A9およびS100A12は、炎症成分を伴う異なる疾患、例えば、ある種の癌、同種腎移植片拒絶、大腸炎と関連しており、RAに対しては最も重要に関連している(Burmeister, G. および Gallacchi, G., Inflammopharmacology 3 (1995) 221-230;Foell, D.ら, Rheumathology 42 (2003) 1383-1389)。本発明によるRAマーカーパネルにおける使用のために最も好ましいS100マーカーは、S100A8、S100A9、S100A8/A9ヘテロ二量体およびS100A12である。
【0059】
CD14は、前単球、単球、マクロファージおよび活性化顆粒球の膜タンパク質であり、これらにおいて、リポ多糖のレセプターとしての機能を果たす。これは、細胞傷害性因子および免疫調節因子(反応性酸素(02)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL-1、IL-6およびIL-8)ならびに血小板活性化因子(PAF)などの)分泌を誘導する。膜結合CD14が流出すると、IFNγまたはTNF-αなどの活性化または分化因子に応答して可溶性CD40 (=sCD14)が生成される。sCD14の生理学的機能はまだ完全に明らかではない。炎症プロセスおよび免疫プロセスがRAおよび他の自己免疫疾患と関与しているため、sCD14は、かかる疾患においても詳しく調べられた。抗CD14療法がRAの新たな治療の選択肢として評価されると、これまで高かったsCD14濃度が速やかに低下され、滑膜炎が低減された(Horneff, G.ら, Clin. Exp. Immunol 91 (1993) 207-213)。
【0060】
グリコサミノグリカンヒアルロン酸は、関節の機能に必須の巨大分子の1つである。これは、線維芽細胞および他の特定の結合組織細胞によって合成される。ヒアルロン酸は、細胞外マトリクスの形成および細胞と細胞との接触に関与する。滑液中に高濃度で見られ、ここでは、水分の保持を担い、それにより関節の潤滑に寄与する。慢性関節リウマチにおいて、ヒアルロン酸の合成は、炎症性メディエーターIL-1およびTNF-αによって刺激され、血清/血漿レベルの増大がもたらされる(Sawai, T.および Uzuki, M., Connective Tissue 33 (2001) 253-259)。
【0061】
慢性関節リウマチの特徴は、増殖性滑膜組織による関節の浸潤(パンヌスとしても知られる)である。パンヌスの主要部分は、血管からなり、成長している組織に栄養分を供給する。したがって、脈管形成に関与する分子は、RAにおいても、RAマーカーとしてだけでなく治療用標的として詳しく調べられた(Brenchley, P.E.C., Clin. Exp. Immunol. 121 (2000) 426-429)。これらの中でも、血管内皮成長因子(=VEGF)は、より詳細に評価されている。VEGFは分泌糖タンパク質であり、スプライシングされて4種の異なるアイソマーになる。これらのアイソマーのうち2つは、容易に拡散し得るが、残りのアイソマーは、ハプテンと強固に結合し、ほとんどは、プロテオグリカン含有ヘパリンと会合した状態で見られる。VEGFは、内皮細胞、単球および骨芽細胞に対してケモカインとして作用し、最終的に、新生血管形成および微小血管の透過性増大をもたらす。VEGFは、RA患者の滑液および血清において検出された(Lee, S.S.ら, Clin. Exp. Rheumathology 19 (2001) 321-324;Ballara, S., Arthritis Rheum. 44 (2001) 2055-2064)。好ましくは、脈管形成のマーカーはVEGFである。
【0062】
最も顕著な関節組織は、骨、軟骨および滑膜である。慢性関節リウマチは破壊性疾患であるため、これらの組織は最も影響を受ける。これらは、おそらく、RAの分野における潜在的な生物学的マーカーの供給源である。原則的には、これらのマーカーは、それぞれの組織の破壊だけでなく、調節されていない、および/または有効でない修復プロセスにも由来し得る。当業者には、骨、軟骨または滑膜の代謝のマーカーが、これらの組織の合成または破壊のいずれに由来し得るかが理解されよう。骨、軟骨および/または滑膜代謝の種々のマーカーは、2種類の異なるタンパク質の群に大別(delineate)され得る。これらは、無数の型のコラーゲンまたは非コラーゲン性タンパク質のいずれかに由来する。非コラーゲン性タンパク質は、多くの場合、細胞外マトリクスの形成に関与する。これらのマーカーのいくつかは、3つのすべての組織において種々の量で見られ得る。
【0063】
骨および/または軟骨代謝のマーカーおよび産物には、骨および/または軟骨崩壊のマーカーと、骨および/または軟骨形式のマーカーの両方が含まれる。コラーゲン代謝に由来する好ましいマーカーは、以下のマーカーなどである。
【0064】
1.ピリジノリン(=PYD)、デオキシ-ピリジノリン(=DPD)およびGlc-Gal-PYD:ピリジノリン(=PYD)は、コラーゲン三重らせんの鎖を架橋することによりコラーゲンを安定化する。PYDの化学構造は非常に安定であり、血清および尿中にコラーゲン分解の最終生成物として見られ得る(Knott, L.および Bailey, A.J., Bone 22 (1998) 181-187)。これは、関節炎と関連している(Kaufmann, J.ら, Rheumatology 42 (2003) 314-320)。PYDは、軟骨から放出され、骨からはある程度しか放出されないが、その近縁種であるデオキシ-ピリジノリン(=DPD)はほとんどが骨に由来するため、関節破壊の軟骨関与をモニターする。3種類のマーカーはすべて関節炎と関連している(Kaufmann, supra)。グリコシル化形態Glc-Gal-PYDは、ほとんどが滑膜組織に見られる(Gineyts, E.ら, Rheumatology 40 (2001) 315-323)。
【0065】
2.架橋テロペプチド:CTX-I、CTX-II、NTX-IおよびLQ-エピトープは、それぞれ、コラーゲンI型またはII型のCまたはN末端のいずれかに由来する架橋テロペプチドであり、そのうち、β-CTX-Iはまた、β-CrossLaps(登録商標)として知られている(Bonde, M.ら, Clin. Chem. 40 (1994) 2022-2025)。I型コラーゲンカルボキシ末端テロペプチド(=ICTP)は、もともとはシアノブロミド(cyanobromide)切断によりI型コラーゲンから生成されたI型コラーゲンの断片およびマーカーをいう。
【0066】
3.コラーゲン由来の線状ペプチド:Cartilaps(登録商標)と呼ばれるアッセイにより、コラーゲンII型のC-末端領域に由来する線状ペプチドを測定する。
【0067】
4.修飾アミノ酸:コラーゲンは、コラーゲン分解のマーカーとして使用され得る、ヒドロキシプロリンおよびガラクトシルヒドロキシリシンなどの修飾アミノ酸を含む(Al-Dehaimi, A.W.ら, Clin. Chem. 45 (1999) 676-681)。
【0068】
5.コラーゲンネオエピトープ:Col2-3/4およびCIINは、コラゲナーゼによるコラーゲンII型の初期切断により生成されるネオエピトープである(Billinghurst, R.C.ら, J. Clin. Invest. 99 (1997) 1534-1545)。
【0069】
6.骨形式を反映するとみなされるコラーゲンマーカー:I型コラーゲンのN-末端およびC-末端プロペプチド(=PINPおよびPICP)は、それぞれ、合成中/合成後の前駆体ポリペプチド(プロコラーゲン)から切断(clip)され、骨形成のマーカーとみなされている。PIICPは、対応するコラーゲンII型由来プロペプチドであるが、PIIINPコラーゲンIIIに由来する。
【0070】
好ましくは、骨および/または軟骨代謝のマーカーはまた、非コラーゲン性マーカー、例えば:CS846、これは、アグレカン合成中に生成されるコンドリオチン(chondriotin)硫酸エピトープである;軟骨オリゴマーマトリクスタンパク質(=COMP)、これは、軟骨において架橋機能を有する(Saxne, T.および Heinegard, D., Br. J. Rheumatol. 31 (1992) 583-591);軟骨中間層タンパク質(cartilage intermediate layer protein)(=CILP)、これは、軟骨のマトリクスタンパク質である(Lorenzo, P.ら, J. Biol. Chem. 273 (1998) 23463-23468);軟骨マトリクスタンパク質1〜3(マトリリンとしても知られる);コンドロモジュリン(chondromodulin)、これは、軟骨においてシグナル伝達分子としての機能する(Suzuki, F., Connect. Tissue Res. 35 (1996) 303-307);軟骨由来レチノイン酸感受性タンパク質(=CD-RAP)またはMIA、これは、軟骨細胞モジュレーションにおける機能がまだ明確でない(Mueller-Ladner, U.ら, Rheumatology 38 (1999) 148-154);オステオカルシン、これは、骨芽細胞により合成され、骨の主要な非コラーゲンマトリクスタンパク質に属し、骨ターンオーバーをモニターするために使用される(Gundberg, C. M.ら, J. Clin. Ligand Assay 21 (1998) 128-138);および骨シアロタンパク質、これは、骨の主な非コラーゲンマトリクスタンパク質であり、例えば、骨シアロタンパク質II(現在、骨シアロタンパク質として知られている)は、例えば、骨ターンオーバーのマーカーとして評価されている(Saxne, T.ら, Arthritis Rheum. 38 (1995) 82-90)などであり得る(my be)。
【0071】
RAの評価においてマーカーとして使用され得る滑膜内での代謝の産物としては、CTX-III(これは、コラーゲンIII型由来テロペプチドである)、YKL40(後者は細胞外マトリクスのキチナーゼ3様タンパク質である)(Johansen, J. S.ら, Scand. J. Rheumatol. 30 (2001) 297-304)およびアグレカン(これは、プロテオグリカンおよびその分解生成物ケラタン硫酸のビルディングブロックである)が挙げられる。
【0072】
好ましくは、RAマーカーパネルは、少なくとも3種類のマーカーを含み、これは、抗CCPと、IL-6と、CRP、SAA、S100、オステオポンチン、RF、MMP-1、MMP-3、ヒアルロン酸およびコラーゲン代謝の産物からなる群より選択される第3のマーカーとを含む。
【0073】
RAの評価において、抗CCP、IL-6およびS100、特に、S100A12を含むマーカーパネルが好ましい。
【0074】
RAマーカーのさらに好ましいパネルは、抗CCP、IL-6およびSAAを含む。
【0075】
RAマーカーのさらに好ましいパネルは、抗CCP、IL-6およびMMP-1の前形態、すなわちプロMMP-1を含む。
【0076】
先に詳述したように、(ARA基準を参照)、かなりの制限にもかかわらず、リウマチ因子(RF)は、現在、RA診断の確立を補助するための一般に認められた唯一の生化学的マーカーである。本発明のマーカーの組合せは、RAの診断をかなり改善し、RFアッセイを補完するであろうこと、または最終的にはこれに取って代わり得ることが明らかに期待される。少なくとも抗CCPおよびインターロイキン6を含むマーカーパネルのRAの診断における使用は、したがって、本発明のさらに好ましい態様を表す。
【0077】
当業者には認識されるように、診断精度をさらに改善するため、または特異性を犠牲にして診断感度の増大が必要とされる場合(その逆も同様)、1種類以上のさらなるマーカーを使用し得る。一部の診断領域において、例えば、HIV感染の検出では、感度が最高に重要である。必要とされる高感度は、特異性を犠牲にして達成され得るが、偽陽性症例の増加を導く。他の場合において、例えば、単純な例として、血液型抗原を評価する場合、特異性が最高に重要である。
【0078】
さらに好ましい態様は、RAの診断におけるマーカーパネルの使用に関し、該パネルは、抗CCP、インターロイキン6、ならびにCRP、SAA、S100、オステオポンチン、RF、MMP-1、MMP-3、ヒアルロン酸、sCD14、脈管形成マーカーおよび骨、軟骨または滑膜の代謝の産物からなる群より選択される少なくとも1つのさらなるマーカーを含む。
【0079】
本発明による方法はまた、RAの重篤度の評価において非常に有用である。抗CCPのレベルが高いほど、および/またはIL-6のレベルが高いほど、疾患は、より重篤である。ここに、マーカーの組合せまたはマーカーパネルが利用可能となったので、例えば、疾患の重篤度に関する指標としてのスコアを開発することは、常套的実験手法にすぎなくなる。このように、本発明による方法は、疾患の重篤度を評価するためにも好ましく使用される。
【0080】
本発明の方法はまた、疾患の経過のモニターにおいても非常に役立つ。これは、患者試料中の抗CCPおよびIL-6ならびに任意のさらなるマーカーを種々の時点で測定し、これらの異なる時点におけるマーカーの絶対および/または相対レベルを比較することにより、最も簡単に達成される。したがって、本発明による方法をRAの患者の疾患の経過をモニターするために使用することは、さらに好ましい。
【0081】
また、本発明がRAの任意の処置の効力の評価に非常に役立つことは、認識されよう。処置の効力は、マーカーレベルの変化に反映される。処置が所望の効果を有する場合、抗CCPまたはIL-6の2つのマーカーレベルの少なくとも一方は減少する。このように、本発明による方法は、処置の効力を評価するためにも好ましく使用される。同じ現象、すなわち、抗CCPまたはIL-6の少なくとも一方のマーカーレベルの低下は、RAにおいて、正しい薬物の選択および薬物の最も適切な投薬に容易に適用され得る。正しい薬物の選択および/または最も適切な投薬における本発明の方法の使用もまた好ましい。
【0082】
また、本発明の方法は、RAの領域における新規薬物の選択および同定を可能にする。この適用は、さらに好ましい態様を表す。
【0083】
また、臨床試験のために、および臨床試験において、抗CCPおよびIL-6のレベルが異なる患者の亜群を識別し、このマーカーレベルの差を試験下の薬物の効力と相関させることができるようになったことは、非常に好都合である。
【0084】
本発明はまた、抗CCPおよびインターロイキン6をそれぞれ特異的に測定するのに必要な試薬を含む、本発明の方法を行なうためのキットに関する。該キットは、任意に、抗CCPおよびIL-6両方の測定を行なうための補助試薬を含み得る。
【0085】
以下の実施例、参考文献、配列表および図面は、本発明の理解を補助するために提供され、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載する。本発明の精神から逸脱せずに、手順において変形がなされ得ることを理解されたい。
【0086】
すべての図における「RDスコア」は、「規則化判別(regularized discriminant)スコア」、すなわちRegularized DiscriminantAnalysisを適用することにより得られるスコアを表し、すべての図における「AUC」は、「曲線下面積」を表す。
【実施例】
【0087】
実施例1
試験母集団
389例の高度にRAの特徴を示す患者(最長疾患持続期間15年)由来の試料を欧州の5つのセンターにおいて収集し、2年の追跡調査を行なった。すべての個体は、ARA基準に従ってRA患者と診断され、ARA判別基準(Hochberg, M.C.ら, Arthritis Rheum. 35 (1992) 498-502) により判別すると≦IIIの機能(functional)状態を有した。すべての患者について、徹底(extensive)症例報告書(=CRF)に記録した。CRFは、健康評価アンケート(Health Assessment Questionnaire)、SF36アンケート、腫脹した圧痛のある関節の数、Larsen スコア、実験パラメータ、関連する外科処置の病歴、投薬、共存症および共存症に関する投薬を含んだ。標準的な処置の後、毎年、X線撮影を行なった。この研究に含めた被験体から得たベースライン試料のみを本解析に含めた。
【0088】
624例の対照被験体由来の試料を同様に収集した。これらの対照から、他の形態の関節炎は陽性でないRA陽性被験体のみを除外した。このコホートから、本研究のRA試料と年齢が適合するように200例の試料を抽出した。研究の焦点は、RAを、健常被験体からだけでなく、他の関節疾患からも識別することであったため、膝の脛大腿OAまたは膝蓋大腿OAのいずれかを有する190例の患者を疾患対照として加えた。これらのOA患者について、臨床パラメータおよび実験パラメータを測定し、X線撮影の(radiographic) Kellgren & Lawrence スコアを算出した(Kellgren, J. H.および Lawrence, J. S., Ann. Rheum. Dis. 16 (1957) 494-502)。
【0089】
研究母集団の人口統計的データを表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例2
測定したマーカー
表2は、使用したアッセイの選択を示し、研究形式ならびにアッセイの供給業者を示す。アッセイのほとんどは、手動式マイクロタイタープレート形式(=MTP)ELISAであった。RFおよびCRPを、同じような試験形式で自動Hitachiアナライザーにて測定した。血清試料のマーカー濃度を、これらの市販のアッセイにより、患者ならびに対照について測定した。
【0092】
【表2】

【0093】
実施例3
統計学的評価
患者コホートを、訓練集合(training set)(約67%)と試験集合(約33%)に無作為に分けた。訓練集合に関して判別アルゴリズムを開発し、独立した試験集合に関して、このアルゴリズムを検証した。表3からわかるように、それぞれの集合は、規模および年齢をかなり適合させた。
【0094】
【表3】

【0095】
判別アルゴリズムは、Regularized DiscriminantAnalysis (RDA)(これは、一般的な判別分析(Discriminant Analysis)、すなわち二次線形(QuadraticおよびLinear)判別分析(McLachlan, G.J., Discriminant Analysis and Statistical Pattern Recognition, Wiley Series in probability and mathematical statistics, 1992)を規則化したものである)により作製した。RDAでは、分散行列の通常(usual)最尤(プラグイン)推定量に対する変数(alternative)を使用する。これらの変数を、2つのパラメータ(λ、γ)(これらの値は、連携させて(jointly)将来的な誤判別リスクの試料ベースの推定量を最小化することによって個体の状態にカスタマイズする(Friedman, J.H., Regularized Discriminant Analysis, J. of the American Statistical Association, Vol. 84 (1989) 165-175))によって特徴付ける。代替法として、Support Vector Machinesアルゴリズム(Hastie, Trevor, Tibshirani, Robert, Friedman, Jerome, The Elements of Statistical Learning, Springer Series in Statistics, 2001)に、比較され得る判別結果をフィットさせ得る。
【0096】
マーカーパネルは段階的に構築し、判別課題に関する最良の単一マーカーから開始し、判別エラー総数がそれ以上顕著に変化しなくなったときに終了した。ピークが中央にある分布を得るため、全ての単一のマーカーを自然対数関数により変換した。10-fold交差検証を訓練集合に関して使用し、エラー(感度、特異性)総数のロバスト推定量を得た。いったんマーカーパネルが規定されたら、これを、独立した試験集団でさらなる調整することなく検証した。
【0097】
実施例4
RAの診断のためのマーカーパネルの同定
表4は、訓練集団に関する対照(OAを含む)に対するRAと診断された患者の判別結果を表す。アルゴリズムを中止したとき、選択された第1のマーカーは抗CCP、第2のものはIL-6、および第3の最後のものはヒアルロン酸であった。
また、抗CCP、IL-6およびSAAのマーカーの組合せは、抗CCP、IL-6およびヒアルロン酸の組合せによる狭いマージン(narrow margin)よってのみ予想(bet)されたため、この判別結果も報告する。参照として、全RF(これは、前述のように、現在、ARA基準の一部を構成する唯一の生化学的マーカーである)の判別結果を示す。
【0098】
本発明の目的は、対照(OAを含む)に対する正しいRAの診断を改善することであった。同定されたマーカーパネルの診断値は最良であることが、判別エラー総数によって表4に反映されている。RFは、現在、ARA基準に含まれる単一の生物学的マーカーであり、0.18のエラー総数を示す。これは、単一マーカーとしての抗CCPにより、すでに0.14まで低下されている。好ましい組合せである抗CCPおよびIL6は、判別を有意に改善し、エラー総数は0.12である。第3のマーカーを加えると、最終的に、誤判別のさらなる最小化が補助される。マーカーパネル抗CCP、IL 6にヒアルロン酸を加えると、0.11のエラー総数が得られ、抗CCP、IL 6にSAAを加えると、同等であり、0.12のエラー総数が得られる。
【0099】
【表4】

【0100】
この研究で選択したアプローチに関して最も重要なことは、一般的な適用可能性を有するかどうかという疑問である。このことを試験するため、訓練集合において同定されたマーカーパネルを独立した試験集合で検証した。当業者には理解されようが、訓練集合と試験集合の結果は、両集合が真に独立していたため、若干異なり得る。表5に、表4と同じ単一マーカーまたはマーカーパネルを用いた判別結果を示す。訓練集合の場合と同様、抗CCP、IL 6およびヒアルロン酸またはSAAの組合せは、判別のエラー総数を低減する。表4および5に示した結果は、抗CCP、IL 6および任意に少なくとも1つのさらなるマーカーの組合せは、RAの診断を有意に改善することを明白に示す。
【0101】
【表5】

【0102】
表5のマーカーおよびマーカーの組合せのROC曲線を、それぞれ、図1〜5に示す。
【0103】
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【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、log 全RF単独を用い、対照(OAを含む)に対するRAと診断された患者のROC-解析である。
【図2】図2は、log 抗CCP単独を用い、対照(OAを含む)に対するRAと診断された患者のROC-解析である。
【図3】図3は、log 抗CCPとlog IL-6の組合せを用い、対照(OAを含む)に対するRAと診断された患者のROC-解析である。
【図4】図4は、log 抗CCPとlog IL-6とlog ヒアルロン酸の組合せを用い、対照(OAを含む)に対するRAと診断された患者のROC-解析である。
【図5】図5は、log 抗CCPとlog IL-6とlog SAAの組合せを用い、対照(OAを含む)に対するRAと診断された患者のROC-解析である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の、少なくとも
a) 抗CCPおよび
b) インターロイキン6
の濃度を測定すること、ならびに
c) 工程a)およびb)で調べた濃度を慢性関節リウマチの有無と相関させること
を含む、生化学的マーカーによる慢性関節リウマチの有無のインビトロ評価方法。
【請求項2】
CRP、SAA、S100、オステオポンチン、RF、MMP-1、MMP-3、ヒアルロン酸、sCD14、脈管形成マーカー、および骨、軟骨または滑膜代謝の産物からなる群より選択される少なくとも1種のさらなるマーカーの測定をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記さらなるマーカーがマーカーSAAである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
RAの診断における、少なくとも抗CCPおよびインターロイキン6を含むマーカーパネルの使用。
【請求項5】
抗CCP、インターロイキン6、ならびにCRP、SAA、S100、オステオポンチン、RF、MMP-1、MMP-3、ヒアルロン酸、sCD14、脈管形成マーカー、および骨、軟骨または滑膜代謝の産物からなる群より選択される少なくとも1種のさらなるマーカーを含む、請求項4記載の使用。
【請求項6】
RAの診断における、少なくとも抗CCP、インターロイキン6およびマーカーSAAを含むマーカーパネルの使用。
【請求項7】
抗CCPおよびインターロイキン6をそれぞれ特異的に測定するのに必要な試薬ならびに、任意に、測定を行なうための補助試薬とを含む、請求項1記載の方法を行なうためのキット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−515647(P2007−515647A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546031(P2006−546031)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014527
【国際公開番号】WO2005/064307
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT