説明

折り曲げ構造を有する光反射板、バックライト装置、及び薄型表示装置

【課題】光反射板を具備するバックライト装置のシート状材料の折り曲げ角度を安定に維持する加工手段を提供する。
【解決手段】平坦なシート状材料に間歇的に切り込みを付与し、前記切り込みに沿って折り曲げた立体的形状をなしている光反射板の前記切り込み間であって、且つ折り曲げ線9の近傍の位置に、折り曲げ線に平行に補助切り込み12bを付与し、更に光反射に寄与しない光反射板の裏面にテープを貼着することにより、シート状材料が有する潜在応力による復元力を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過型液晶表示パネルや電飾看板などに搭載されるバックライト装置において、照度の面均一性を維持し、且つ、広い面積を効率よく照射するために使用される立体的な形状を有する光反射板の形成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光透過型液晶表示パネルや電飾看板などのバックライト装置では、照度の面均一性を維持し、且つ、広い面積を効率よく照射するため、多数の発光管を平行に配置するとともに、照射対象物の反対側に光反射板を配置する手段が広く適用されている。シート状材料に切れ目や折り曲げ形成加工をすることにより光反射板の断面形状を放物面とし、放物面の底部付近に存在する焦点位置に光源を配置し、放物面の開口部から放射される光源からの直射光とともに放物面により反射され、放物面の開口部から放射される反射光をも効率よく利用している。
【0003】
光反射板に関する従来技術の一例として、図11とともに説明する。図11(a)は従来技術の光反射板20の平面図、 図11(b)は、図11(a)中に鎖線で示す切断線D−Dに沿って切断した光反射板20の縦断面図である。光反射板20は図示しないバックライトハウスに収容され、上方に複数の線状光源が配置され、さらに線状光源の前方に光拡散板が配置されてバックライトを構成し、液晶表示パネルのバックライトとして液晶表示パネル背面に配置される。図11中に示す21は低発泡樹脂などの光反射シート材料に間歇的に切り込みを付与し、山折り部分の内角をα度に折り曲げた山折り線であり、図11中に示す22は低発泡樹脂などのシート状材料に間歇的に切り込みを付与し、谷折り部分の内角をβ度に折り曲げた谷折り線である。シート状材料を、前記の山折り線21、および谷折り線22に沿って折り曲げ、断面形状が概ね放物線状になるよう立体的に形成することにより、効率の良い光反射板20を実現している。
【0004】
また、金型などの高価な初期投資を要せず、前記の機能を実現する立体的な形状の光反射板を形成する手段として、特開2002−182579や、特開2004−138715で、低発泡樹脂シートに切れ目や折り曲げ加工をする考案がなされている。
【特許文献1】特開2002−182579 「直下型照明装置」
【特許文献2】特開2004−138715 「光反射板およびその製造方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、照度の面均一性を維持し、且つ、広い面積を効率よく照射するために、多数の発光管を平行に配置するとともに、照射対象物である光透過型液晶パネルや電飾看板の背面側に光反射板を具備するバックライト装置において、金型などの高価な初期投資を要せず、低発泡樹脂などのシート状材料に切れ目や折り曲げ形成加工をすることにより立体的な形状の反射板を実現することが可能である。
【0006】
しかしながら、従来技術の一例としての前記の光反射板においては、図11に示す山折り線21、および谷折り線22に沿って折り曲げが付与された光反射板20は、時間の経過とともにシート状材料が有する内部潜在応力により、折り曲げ部分が平坦形状に復元するため、図11(b)に示す前記の各部の折り曲げ角度α、およびβはともに折り曲げ付与直後よりも、その後の時間経過にともない、角度が変化し大きくなる。このため、バックライトハウスへの組み付け作業性の低下を招くという課題がある。また、経時変化による折り曲げ加工部分の復元を予測し、折り曲げ加工時に設計目標値を超えた折り曲げを付与することは、シート状材料が有する限界応力を超え、折り曲げ部が破断することがある。本発明はこのような課題を解決するために、シート状材料の折り曲げ角度を安定に維持する加工手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例である光透過型液晶表示パネルを表示素子とする薄型表示装置や電飾看板などのバックライト装置内に内蔵される光反射板においては、平坦なシート状材料に間歇的に切り込みを付与し、前記の切り込みに沿って折り曲げた立体的形状をなしている。前記の光反射板の前記切り込み間であって、且つ、折り曲げ線の近傍の位置に、折り曲げ線に平行な別の切り込みを付与し、シート状材料が有する潜在応力による復元力を緩和する。切り込みの形状は直線状のみに限定せず、外形が円、または長円形状の穿孔に置換、または配列しても直線状の切り込みと同様に、シート状材料が有する内部潜在応力による復元力を緩和することができる。
【0008】
平坦なシート状材料に間歇的に切り込みを付与し、該切り込みに沿って折り曲げた立体的形状をなす前記の光反射板において、折り曲げ後の時間経過に伴い、シート状材料が有する内部潜在応力により、形状が復元する復元力に抗し、折り曲げ部分の形状を安定させる目的で、光反射に寄与しない光反射板の裏面にテープを貼着する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、平坦なシート状材料に間歇的に配置した切り込み線を付与し、前記切り込み線に沿って折り曲げた立体的形状を有する構造物において、切り込み線間であって、且つ、折り曲げ線の近傍の位置に、折り曲げ線に平行な別の補助切り込み線を並設したことで、シート状材料の内部潜在応力に起因する折り曲げ部分の復元力を緩和し、折り曲げにより形成された構造物の折り曲げ角度を安定に維持することが可能となる。
【0010】
また、本発明の構造物を低発泡樹脂からなる光反射板に適用しバックライト装置に適用する場合は、光反射板の折り曲げ部分の復元力が緩和されることで形状維持力が増すことで、光反射板をバックライトハウス内に収容し、ランプクリップや両面粘着テープにてバックライトハウス内に固定する場合の作業性が改善される。さらに、このように構成したバックライト装置を薄型表示装置に搭載することで、隣接発光管間に立体的な反射構造を有し、その間隔がほぼ一定に保たれた光反射板を有することで、均一な輝度を確保するとともに発光管の本数を抑えることによる省電力化と軽量化が図られ、さらに薄型表示装置の生産性の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を薄型表示装置としての実施例である液晶テレビに適用した場合に関し、図に基づき以下に説明する。図1、および図2は液晶テレビの外観図を示し、図3は液晶テレビの表示部分の内部構成概要を示す分解斜視図である。図1、および図2において、6は画像表示を行う光透過型液晶表示パネル、101は前キャビネット、102は後ろキャビネット、103は操作ボタン、104はスタンドを示す。
【0012】
次に、図3(a)に基づき、液晶表示部の内部構成を説明する。光透過型液晶表示パネル6の背面には拡散板5が配置されている。バックライトハウス7の光透過型液晶表示パネル6側には低発泡樹脂シートからなる光反射板2a〜eが図示しないランプクリップで固定され、光反射板2a〜eの前面には、複数本の発光管1が配置されている。図3(b)は発光管1、光反射板2a〜e、バックライトハウス7を一体に組み立てたバックライトユニット7a、光拡散板5、および光透過型液晶表示パネル6を示す。
【0013】
図4は図3(b)中に鎖線C-Cで示す切断線に沿って切断した縦断面図の一部を示している。発光管1の管軸の周囲に放射された光束のうち、図4中に実線の矢印で示す前方への光は直射光3として、拡散板5、および光透過型液晶パネル6に向かう。一方、図4中に破線の矢印で示す側方、および後方への光は、バックライトハウス7に取り付けられた光反射板2a〜eにより反射され、平行近似の光束となり、光拡散板5、および光透過型液晶パネル6に向かう。このようにして、発光管1から管軸の周囲に放射状に放射される光のうち、拡散板5、および光透過型液晶パネル6方向に向かわず、側方、および後方に向かう光束をも光反射板2a〜eにより有効に利用することができる。
【0014】
図5は、本発明による光反射板2aの第1の実施形態を示す。図5(a)中に破線で示すテープ10を光反射板2aの裏面に貼着している。テープ10の張力により、従来技術として説明した図11(b)中に示す山折り線21の内角αが、平坦形状に復元することを防止し、形状の安定化に寄与することができる。
【0015】
しかしながら、光反射板2aの裏面に貼着したテープ10は、シート状材料の内部潜在応力により平坦形状に復元することに起因する従来技術として説明した図11(b)中にβとして示す谷折り線22の内角の折り曲げ角度の経時変化を防止することはできない。谷折り線22の内角の折り曲げ角度βは変化し大きくなり、図5(b)に示すごとく光反射板2aは全体的に湾曲し、変形する。時間の経過により光反射板2aの谷折り線9の折り曲げ角度が変化する原因は、図6中に斜線で示す光反射板2aの谷折り線9上の隣接する切り込み間の領域に、シート状材料の内部潜在応力により平坦形状に復元する復元力が作用する復元領域11が存在するためである。
【0016】
図7は、本発明の第2の実施形態を示す光反射板2bの平面図である。低発泡樹脂などのシート状材料の谷折り線9上に間歇的に付与した切り込み間の部分には、折り曲げ後もシート状材料の内部潜在応力により、図6中に破線で示すごとく、平坦形状に復元する復元力が作用する復元領域11が存在する。したがって、復元領域11の復元力を緩和させる手段として、図7に示すごとく、谷折り線9の近傍の片側であって、且つ、図6に示す復元領域11内に補助切り込み12bを付与する。
【0017】
復元領域11の復元力を緩和させる手段としては図7に示す手段のみに限らず、第3の実施形態として図8に示すごとく、谷折り線9の近傍の両側であって、且つ、図6に示す復元領域11内に2本1組の補助切り込み12cを跨設する。また、第4の実施形態として図9に示すごとく谷折り線9の近傍の両側に交互に補助切り込み12dを付与する。さらに、第5の実施形態として図10に示すごとく切り込みは直線でなく外形が円、または長円などの穿孔12e、12fを配列することも可能である。
【0018】
このように、平坦なシート状材料に間歇的に切り込み線を付与し、前記の切り込み線に沿って山折りと谷折りとの組み合わせにより折り曲げた立体的形状を有する構造物において、平坦形状に復元する復元力が作用する復元領域が存在する場合に、折り曲げ線の近傍で折り曲げ線に略平行に補助切り込み線を設けることで、平坦形状に復元する復元力を緩和することが可能となる。本発明の構造物を低発泡樹脂からなる光反射板2a〜eに適用する場合は、光反射板2a〜eの谷折り線9上の隣接する切り込み間の領域に、谷折り線9の近傍で、且つ谷折り線9に略平行に補助切り込み12b〜fを設けることで、復元力が緩和され、光反射板2a〜eをバックライトハウス7内に収容し、ランプクリップや両面粘着テープにてバックライトハウス7内に固定する場合の作業性が改善される。
【0019】
また、光反射板2a〜eにおいて光反射に寄与しない光反射板2a〜eの裏面にテープを貼着することで、山折れ形状が維持されるため、さらにランプクリップや両面テープにてバックライトハウス7内に固定する場合の作業性が改善されることになる。さらにこのように構成したバックライト装置を薄型表示装置に搭載することで、発光管1の本数を抑えて輝度を確保することによる省電力化と軽量化を図るとともに、薄型表示装置の生産性の向上が可能となる。なお、本発明の実施の形態として、補助切り込み12b〜fで説明したが、補助切り込みに関しては、記載の形状や長さに限定されるものではなく、また、各切り込み態様の組み合わせや、補助切り込みの長さを折り曲げ線上の切り込みの長さと不等とするなど、折り曲げ線の近傍の復元領域にその復元力を緩和するために設けられる補助切り込み全てに適用されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、照度の面均一性を維持し、且つ、広い面積を効率よく照射するバックライト装置を実現する手段としての立体的な形状を有する光反射板の形成技術に関するもので、光透過型液晶表示パネル、電飾看板、照明器具など、多数の発光管を平行に配置するバックライト装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例として、薄型表示装置である液晶テレビの外観斜視図である。
【図2】図1に示す液晶テレビの図(a)は上面図、図(b)は正面図、図(c)は立面図、図(d)は背面図である。
【図3】図(a)は本発明の実施例である光透過型液晶表示パネルを表示素子とする表示部分をバックライト部分とともに内部構成概要図として示した分解斜視図である。図(b)は図(a)に示す各構成部分を一体化した斜視図である。
【図4】図3(b)中に鎖線で示す切断線C−Cに沿って切断したバックライトユニット、および光透過型液晶表示パネルの縦断面図である。
【図5】図(a)は光反射板2の裏面にテープ10を貼着し、山折り線8の経時変形を防止するための本発明による第1の実施形態を示す。図(b)は谷折り線9に沿った折り曲げ角度の経時変形により生じる光反射板の湾曲を示す断面図である。
【図6】図(a)は光反射板2の谷折り線9上に隣接する切り込み間に存在する復元領域11を斜線で示す平面図、図(b)は縦断面図である。
【図7】谷折り線9の近傍の片側に補助切り込み12bを付与する第2の実施形態を示す光反射板2bの平面図である。
【図8】谷折り線9の近傍の両側に2本1組の補助切り込み12cを跨設した第3の実施形態を示す光反射板2cの平面図である。
【図9】谷折り線9の近傍の両側に交互に補助切り込み12dを付与した第4の実施形態を示す光反射板2dの平面図である。
【図10】切り込みを直線に限定せず、外形が円や長円の補助切り込み12eや12fの穿孔を配列した第5の実施形態を示す光反射板2eの平面図である。
【図11】図(a)は従来例の光反射板20の拡大平面図である。図(b)は図(a)中に鎖線で示す切断線D−Dに沿って切断した縦断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1:発光管
2a:光反射板(第1の実施形態)
2b:光反射板(第2の実施形態)
2c:光反射板(第3の実施形態)
2d:光反射板(第4の実施形態)
2e:第5の実施形態の光反射板
3:直射光
4:反射光
5:光拡散板
6:光透過型液晶表示パネル
7:バックライトハウス
7a:バックライトユニット
8:山折り線
9:谷折り線
10:テープ
11:復元領域
12b:補助切り込み(第2の実施形態)
12c:補助切り込み(第3の実施形態)
12d:補助切り込み(第4の実施形態)
12e, f:補助切り込み(第5の実施形態)
20:従来技術の光反射板
21:山折り線
22:谷折り線
101:前キャビネット
102:後ろキャビネット
103:操作ボタン
104:スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦なシート状材料に間歇的に配置した切り込み線を付与し、前記切り込み線に沿って折り曲げた立体的形状を有する構造物において、切り込み線間であって、且つ、折り曲げ線の近傍の位置に、折り曲げ線に平行な別の補助切り込み線を並設したことを特徴とする構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物において、外形が円、または長円形状の穿孔を前記の補助切り込み線に置換したことを特徴とする構造物。
【請求項3】
低発泡樹脂などのシート状材料に間歇的に配置した切り込み線に沿って折り曲げ、立体的形状を有する光反射板において、切り込み線間であって、且つ、折り曲げ線の近傍の位置に、折り曲げ線に平行な別の補助切り込み線を並設したことを特徴とする光反射板。
【請求項4】
請求項3に記載の光反射板において、外形が円、または長円形状の穿孔を前記の補助切り込み線に置換したことを特徴とする光反射板。
【請求項5】
請求項3、または請求項4のいずれかに記載の光反射板において、光反射に寄与しない光反射板の裏面にテープを貼着したことを特徴とする光反射板。
【請求項6】
光透過型液晶表示パネルや電飾看板の光源としてのバックライト装置において、低発泡樹脂などのシート状材料に間歇的に配置した切り込み線に沿って立体的に折り曲げた光反射板を有し、該光反射板の切り込み線間であって、且つ、折り曲げ線の近傍の位置に、折り曲げ線に平行な別の補助切り込み線を並設した光反射板であることを特徴とするバックライト装置。
【請求項7】
請求項6に記載のバックライト装置において、前記の光反射板の補助切り込み線を、外形が円、または長円形状の穿孔に置換したことを特徴とするバックライト装置。
【請求項8】
請求項6または7のいずれかに記載のバックライト装置において、前記の光反射板の光反射に寄与しない光反射板の裏面にはテープが貼着され、ランプクリップ、およびまたは両面粘着テープにてランプハウスに取付けられたことを特徴とするバックライト装置。
【請求項9】
光透過型液晶表示パネルを表示素子とする薄型表示装置において、請求項6乃至8に記載のバックライト装置を光源としたことを特徴とする薄型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−30423(P2006−30423A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206771(P2004−206771)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】