説明

折り畳み式車両

【課題】電動車10は、簡単な構成で折り畳んでコンパクトに収納することができる。
【解決手段】電動車10は、フロア体20と、ハンドル40と、シート体50とを備える。ハンドル40は、ハンドル本体41と、ハンドル本体41の下部であってフロア体20に対して回動可能に支持され、操作位置と第1収納位置とに設定するハンドル支持機構44とを有する。シート体50は、シート座部52と、シート座部52をフロア体上に支持するフレーム本体53と、シート体50のシート座部52をフロア体20から所定距離を隔てた着座位置とフロア体20とに重なった第2収納位置とに設定するシート支持機構55とを有する。ハンドル支持機構44およびシート支持機構55は、ハンドル40およびシート体50を、フロア体20上に折り重なって第1および第2収納位置に収納されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、空港などの施設などの狭い場所であっても簡単に使用することができる折り畳み式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の折り畳み式車両として、例えば、特許文献1の電動車が知られている。電動車は、例えば車椅子として利用されており、使用状態より折り畳むことでコンパクトに収納する構成を備えている。すなわち、電動車は、前後輪との間に渡って配設されたフロア体と、フロア体の上方に装着され使用者が座るためのシート体とを備え、フロア体を3つに分割しかつ折り畳み状態にすることで、コンパクトに収納可能に構成されている。
【0003】
しかし、従来の電動車では、3分割したフロア体の各部が後輪上に重なり合って収納されるために、その折り畳むための構成が複雑であり、また、収納形態もコンパクトでないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4211381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、簡単な構成でコンパクトに収納することができる折り畳み式車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、車輪を取り付けたフロア体と、該フロア体の前部に立設されたハンドルと、上記フロア体上に取り付けたシート体とを備えた折り畳み式車両であって、
上記ハンドルは、ハンドル本体と、該ハンドル本体の下部において上記フロア体に対して該ハンドル本体を回動可能に支持する回動装着部と、上記ハンドル本体を上記回動装着部を中心に回動することで操作位置と第1収納位置とに設定するハンドル支持機構とを有し、
上記シート体は、座るためのシート座部と、該シート座部を上記フロア体上に支持するフレーム本体と、該フレーム本体の一端と上記フロア体とを回動可能に支持するとともに、上記シート座部を上記フロア体から所定距離を隔てた着座位置と上記シート座部を上記フロア体とに重ねる第2収納位置とに設定するシート支持機構とを有し、
上記ハンドル支持機構およびシート支持機構は、上記ハンドルおよび上記シート体を、上記フロア体上に重ねて上記第1および第2収納位置に収納されるように構成されていること、を特徴とする。
【0008】
適用例1にかかる折り畳み式車両において、ハンドル支持機構によりハンドルをフロア体に対して操作位置に設定し、一方、シート支持機構により、シート体を着座位置に設定することにより、使用者がシート体のシート座部に座って、ハンドルを操作することにより走行駆動することができる。また、折り畳み式車両は、ハンドルを回動装着部を中心に回動することでフロア体上に合わせる第1収納位置に設定するとともに、シート体をフレーム本体を介してフロア体上に合わせる第2収納位置に設定する。これにより、折り畳み式車両は、ハンドルおよびシート体をフロア体上に重なった状態でコンパクトに収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係る小型の電動車を示す斜視図である。
【図2】電動車の側面図である。
【図3】電動車の駆動装置を説明する説明図である。
【図4】フロア体からハンドルを外した状態を示す斜視図である。
【図5】ハンドルの操作位置と第1収納位置とを説明する説明図である。
【図6】シート体をフロア体から外した状態を示す斜視図である。
【図7】第2ロック機構の付近を示す斜視図である。
【図8】電動車のシート体を第2収納位置に設定した状態を説明する説明図である。
【図9】電動車を折り畳んだ状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる折り畳み式車両を電動車に適用した実施例を図面にしたがって説明する。
(1) 電動車10の概略構成
図1は小型の電動車10を示す斜視図、図2は電動車10の側面図である。電動車10は、モータ式の4輪駆動の1人乗りの車両であり、フロア体20と、動力を与えるための駆動装置30と、速度や方向を指令するためのハンドル40と、人が座るためのシート体50とを備えており、シート体50に座ってハンドル40を操作することにより、駆動装置30で走行するものである。
【0011】
(2) 電動車10の各部の構成および動作
フロア体20は、電動車10を支持するための基板であり、樹脂製のフレームおよび支持板からなり、その内部をブローなどの中空成形により軽量化されているとともに、金属製の部材をインサート成形することにより機械的強度を高めている。このフロア体20には、ハンドル40およびシート体50を取り付けるための構成が設けられている。
【0012】
図3は電動車10の駆動装置30を説明する説明図であり、電動車10を上方から見て説明している。駆動装置30は、フロア体20に車軸を介して支持された前輪31および後輪33と、前輪31および後輪33に対応して設けられ各輪をそれぞれ独立して駆動するダイレクト式のモータ35,36と、モータ35,36に電力を供給するバッテリ37と、モータ35,36を制御する電子制御装置38とを備えている。電子制御装置38は、ハンドル40からの指令を受けて、バッテリ37の電力でモータ35,36を制御することにより電動車10を走行駆動する。
【0013】
図4はフロア体20からハンドル40を外した状態を示す斜視図である。ハンドル40は、ハンドル本体41と、ハンドル本体41をフロア体20に回動可能に支持する回動装着部42と、ハンドル本体41の上部に装着された操作部43と、ハンドル本体41を操作位置と第1収納位置とに設定するハンドル支持機構44とを備えている。ハンドル本体41は、長尺の部材であり、回動装着部42によりフロア体20に対して回動可能に支持されている。回動装着部42は、フロア体20の凹所20aに、ハンドル本体41の下部の軸孔41aに軸体42aを挿入してハンドル本体41をフロア体20に対して回動可能に支持している。
【0014】
操作部43は、ハンドル本体41の上部に軸体43aを中心に回動可能に装着されており、図示しないロック機構により、走行状態にて水平方向の操作位置に固定されるように構成されるとともに、該操作部43を回動することによりハンドル本体41の両側に沿った第1収納位置に収納されるように構成されている(図5参照)。操作部43には、各種の操作用ボタン43bや表示装置43cが設けられている。操作用ボタン43bとして、モータ35,36の回転数を調整する駆動用ボタン、停止用ボタンなどを備えている。
【0015】
ハンドル支持機構44は、ハンドル本体41を、フロア体20に対して、操作位置と、第1収納位置とに設定するための機構であり、前方固定部45と、第1ロック機構46とを備えている。前方固定部45は、フロア体20の前端から上方に突出した突部であり、その後面側に支持面45aを有している。支持面45aは、ハンドル本体41の前面に一致した曲面であり、ハンドル本体41の前面に当たることで、ハンドル本体41の前方への位置を規定している。第1ロック機構46は、ロック部材47と、ロック支持部48と、被ロック部49とを備えている。ロック部材47は、棒状のロック本体47aと、ロック本体47aの一端に形成された第1および第2ロック係合部47b,47cと、ロック本体47aの他端に形成された把手47dとを備えている。ロック支持部48は、フロア体20の上面に突設されており、その支持凹所48aによりロック部材47を水平方向にスライド可能に支持している。被ロック部49は、ハンドル本体41の前面および後面にそれぞれ形成された操作位置固定部49aおよび収納位置固定部49bを備えており、ロック部材47を進退することにより、第1および第2ロック係合部47b,47cに択一的に当たってハンドル本体41を位置決めするように構成されている。
【0016】
このようなハンドル支持機構44の構成において、図5に示すように、ハンドル本体41を前方固定部45に当たるように起立させ、ロック部材47の第1ロック係合部47bを、ハンドル本体41の操作位置固定部49aに当接させることでハンドル40を操作位置に設定することができる。一方、ロック部材47の把手47dを持ってロック部材47を図4に示す手前側へスライドさせることで、ハンドル本体41の操作位置固定部49aとロック部材47の第1ロック係合部47bとの係合を解除し、さらに図5の実線に示すようにハンドル本体41を倒して、ロック部材47をハンドル本体41側へスライドすることにより、ロック部材47の第2ロック係合部47cがハンドル本体41の収納位置固定部49bに当たることでハンドル本体41を第1収納位置に固定することができる。
【0017】
図6はシート体50をフロア体20から外した状態を示す斜視図である。シート体50は、使用者が腰掛けるための椅子であり、シート座部52と、フレーム本体53と、背側フレーム体54と、フレーム本体53および背側フレーム体54の位置を設定するためのシート支持機構55とを備えている。シート座部52は、使用者が腰掛けるクッション性を有する平板部である。フレーム本体53は、シート座部52をフロア体20から所定の高さで支持するための部材であり、シート座部52の両側の脚部53aと、脚部53aの上部を連結した連結部53bとを備えている。脚部53aは、軸体53dを介してフロア体20に対して回動可能に支持されている。シート座部52は、脚部53aの上部と背側フレーム体54の中程を軸体53e,53fを介して回動可能に連結されている。背側フレーム体54は、使用者の背もたれとなる部材であり、枠本体54aを備えている。枠本体54aの下部は、軸体54fでフロア体20の後部で回転可能に支持されている。
【0018】
シート支持機構55は、シート体50の着座位置と第2収納位置とに設定するための機構であり、後部支持部56と、第2ロック機構57とを備えている。後部支持部56は、フロア体20の後部から上方に突出した支持本体56aと、支持本体56aの上部に形成され、背側フレーム体54に当たって支持する支持面56bとを備えており、背側フレーム体54を支持面56bで受けることで背側フレーム体54を着座位置で支持している。図7は第2ロック機構57の付近を示す斜視図である。第2ロック機構57は、ロック部材58と、ロック支持部59と、被ロック部61とを備えている。ロック部材58は、ロック本体58aと、ロック本体58aの一端に形成されたロック係合部58bと、ロック本体58aの他端に形成された把手58cとを備えている。ロック支持部59は、フロア体20の上面に突設されており、その支持凹所59aによりロック部材58を水平方向にスライド可能に支持している。被ロック部61は、背側フレーム体54の枠本体54aの側部に形成された穴であり、ロック部材58を進退することにより、第2ロック機構57をロック位置および非ロック位置に設定する。
【0019】
このようなシート体50の構成において、フレーム本体53の脚部53aを立設して、ロック部材58のロック係合部58bを被ロック部61に挿入することで、背側フレーム体54およびフレーム本体53を固定するとともに、背側フレーム体54が後部支持部56に支持されることで、シート体50を着座位置に設定することができる。一方、ロック部材58を被ロック部61から引き抜いて第2ロック機構57を非ロック位置に設定することにより、フレーム本体53を倒した第2収納位置に設定することができる(図8参照)。
【0020】
(3) 電動車10の操縦・および収納動作
電動車10は、図1および図2の使用状態において、使用者がシート体50のシート座部52に座り、操作部43の各ボタンを操作することにより走行駆動することができる。また、電動車10は、図1,図2の使用状態から図9の収納状態に収納することができる。電動車10を収納するには、以下の作業により行なうことができる。まず、図7に示す第2ロック機構57において、ロック部材58の把手58cを掴んで手前に引くことで、ロック部材58がロック支持部59にガイドされて同方向へ移動し、背側フレーム体54に形成した被ロック部61との係合が解除される。そして、図8に示すように、フレーム本体53および背側フレーム体54を車両の前方へ倒してフロア体20上に重ねる。その後、操作部43を軸体43aを中心に矢印方向へ回動して、ハンドル本体41に合わせる。さらに、図4に示すロック部材47の把手47dを持ってロック部材47を図示の手前側へスライドさせることで、図5に示すように、ハンドル本体41の操作位置固定部49aとロック部材47の第1ロック係合部47bとの係合を解除する。その後、図9に示すように、ハンドル本体41を倒す。そして、ハンドル本体41を倒した姿勢にて、ロック部材47をハンドル本体41側へスライドすることにより、ロック部材47の第2ロック係合部47cがハンドル本体41の収納位置固定部49bに当たることでハンドル本体41を第1収納位置に固定する。これにより、電動車10は、フロア体20の上に、シート体50およびハンドル40が重なるように収納されるとともに、ハンドル40およびシート体50の位置が固定される。
【0021】
一方、電動車10を図9から図1の使用状態に変更するには、上述の収納動作と逆の動作を行なう。つまり、ハンドル支持機構44の第1ロック機構46のロック部材47を手前に引いた後に、ハンドル本体41を起立させ(図8)、さらにロック部材47を戻すことにより、ハンドル本体41を前方固定部45とロック部材47とによりフロア体20に対して固定する。さらに、シート体50の背側フレーム体54を起立させるように回動し、さらにシート支持機構55の第2ロック機構57(図7)でロックする。これにより、電動車10が使用状態に設定される。
【0022】
(4) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、以下の効果を奏する。
(4)−1 実施例にかかる電動車10において、図7および図8に示すように、シート支持機構55の第2ロック機構57のロック位置を解除してシート体50をフロア体20の上に重ね、さらに図9に示すようにハンドル支持機構44の第1ロック機構46のロック位置を解除してハンドル40をシート体50の上に重ねることにより、つまりフロア体20上にシート体50およびハンドル40を重ねる。したがって、こうした簡単な構成で、電動車10は、ハンドル40およびシート体50をフロア体20上に重なった状態でコンパクトに収納することができる。
【0023】
(4)−2 ハンドル40およびシート体50は、ハンドル支持機構44およびシート支持機構55により堅固に支持されているが、第1ロック機構46および第2ロック機構を非ロック位置に設定すれば、シート体50およびハンドル40をフロア体20に向けて倒すことができ、収納作業も容易である。
【0024】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記実施例では、シート体50の上にハンドル40を重ねるように収納したが、これに限らず、ハンドル40の上にシート体50を重ねるように収納する構成であってもよい。
また、上記実施例では、駆動源としてモータを用いたが、これに限らず、小型のエンジンなどであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
10…電動車
20…フロア体
20a…凹所
30…駆動装置
31…前輪
33…後輪
35,36…モータ
37…バッテリ
38…電子制御装置
40…ハンドル
41…ハンドル本体
41a…軸孔
42…回動装着部
42a…軸体
43…操作部
43a…軸体
43b…操作用ボタン
43c…表示装置
44…ハンドル支持機構
45…前方固定部
45a…支持面
46…第1ロック機構
47…ロック部材
47a…ロック本体
47b,47c…第1および第2ロック係合部
47d…把手
48…ロック支持部
48a…支持凹所
49…被ロック部
49a…操作位置固定部
49b…収納位置固定部
50…シート体
52…シート座部
53…フレーム本体
53a…脚部
53b…連結部
53d,53e,53f…軸体
54…背側フレーム体
54a…枠本体
54f…軸体
55…シート支持機構
56…後部支持部
56a…支持本体
56b…支持面
57…第2ロック機構
58…ロック部材
58a…ロック本体
58b…ロック係合部
58c…把手
59…ロック支持部
59a…支持凹所
61…被ロック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を取り付けたフロア体(20)と、該フロア体(20)の前部に立設されたハンドル(40)と、上記フロア体(20)上に取り付けたシート体(50)とを備えた折り畳み式車両であって、
上記ハンドル(40)は、ハンドル本体(41)と、該ハンドル本体(41)の下部において上記フロア体(20)に対して該ハンドル本体(41)を回動可能に支持する回動装着部(42)と、上記ハンドル本体(41)を上記回動装着部(42)を中心に回動することで操作位置と第1収納位置とに設定するハンドル支持機構(44)とを有し、
上記シート体(50)は、座るためのシート座部(52)と、該シート座部(52)を上記フロア体(20)上に支持するフレーム本体(53)と、該フレーム本体(53)の一端と上記フロア体(20)とを回動可能に支持するとともに、上記シート座部(52)を上記フロア体(20)から所定距離を隔てた着座位置と上記シート座部(52)を上記フロア体(20)とに重ねる第2収納位置とに設定するシート支持機構(55)とを有し、
上記ハンドル支持機構(44)およびシート支持機構(55)は、上記ハンドル(40)および上記シート体(50)を、上記フロア体(20)上に重ねて上記第1および第2収納位置に収納されるように構成されていること、を特徴とする折り畳み式車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−9794(P2013−9794A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143794(P2011−143794)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)