説明

折戸用蝶番

【目的】 折戸の表側から折戸を面一に調整することができ、しかも、その調整は微調整が可能であり、調整後は最適な調整状態を維持することができる折戸用蝶番を提供する。
【構成】 隣り合う折戸110,111を回転可能に連結する蝶番の羽根2,3を、それぞれ折戸110,111の裏側に固定し、羽根2の羽根3側端部に係止部50を突設し、この係止部50と羽根3の間に、係止部50と対向し調整ネジ58の螺入するネジ孔57を形成した起立部56a及び羽根3の端面3aと当接する端面56bを有する当接部56、この当接部56と一体的に形成され羽根2と羽根3を連結する軸ピン9が貫入する長孔54を有する取付部55とからなる調整部材53を移動可能に介設した調整機構5を備えた構成とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、家具や建具等の折戸に用いられる折戸用蝶番に関し、特に、折戸の折曲げ位置で隣り合う折戸を面一(平坦な状態)に調整することができる折戸用蝶番に関する。
【0002】
【従来の技術】
折戸用蝶番は、隣り合う折戸の折曲げ位置の裏側に取り付けられ、折戸を裏側から支持して、折戸の折曲げ動作を可能にしている。
しかし、折戸用蝶番には、折戸を閉じる方向に付勢するバネが設けられており、このバネの圧力で、隣り合う折戸が面一にならず、折れ曲がった状態になることがある。
【0003】
そこで、このような状態になったときに、隣り合う折戸を面一に調整するための折戸用蝶番が考案されている。
図8は、実開昭64−41587号公報に記載された折戸用蝶番であり、調整ネジ100の突出量を調整することで、折戸110,111を面一に直すことができるようになっている。
【0004】
具体的には、軸105で回転自在に連結され、バネ109で表側A方向に付勢された一対の羽根101,102が、折戸110,111の裏側にネジ止されている。そして、羽根102の腕部106に斜行したネジ穴107が穿設され、このネジ穴107に、羽根101の端部に当接可能な調整ネジ100が螺入されている。
【0005】
このような構成により、図8の二点鎖線で示すように、折戸110,111が家具の表側Aから見て、折れ曲がった状態になった場合には、裏側Bから、調整ネジ100の突出量を調整することにより、実線で示すように折戸110,111を面一にすることができるようになっている。
【0006】
しかしながら、この折戸用蝶番では、作業者が暗く狭い家具の裏側Bに身を入れて、調整ネジ100の突出量の調整作業を行わなければならないので、作業が非常にしずらかった。
【0007】
この問題を解決する折戸用蝶番として、実開平2−123580号公報に記載された技術がある。
図9は、本公報に記載された折戸用蝶番の断面図である。なお、図8に示した部材と同一部材については同一符号を付して説明する。
この折戸用蝶番では、調整ネジを家具の裏側Bだけからではなく、表側Aからも調整することができる構成になっている。
すなわち、羽根102のネジ穴107から突出した調整ネジ200の先端部に、ドライバを差し込んで回転可能な調整部201が設けられている。
【0008】
そして、折戸110,111が折れ曲がった状態になった場合には、図10に示すように、羽根101,102を開いて、調整ネジ200の調整部201を表側A側に露出させ、この調整部201をドライバで回転させることにより、調整ネジ200のネジ穴107からの突出量を調整し、折戸110,111を面一となるようにしている。このようにして、調整作業の能率化が図られている。
【0009】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、上述した実開平2−123580号公報に記載の折戸用蝶番では、調整ネジ200の先端の調整部201が羽根101の端部101aと直接当接した構成になっているので、羽根101,102の振動が直接調整ネジ200に伝わり、調整ネジ200が回転して、調整状態の狂うおそれがある。
また、上記振動によって、羽根101の調整ネジ200と当接する部分101aが損傷したり変形したりすることもある。特に、羽根101,102をダイカスト等で成形したものの場合には、上記した損傷や変形が著しい。
さらに、羽根101の当接部分101aが損傷したり、変形したりすると微調整が困難になるという問題がある。
【0010】
本考案は上記問題点にかんがみてなされたもので、折戸の表側から折戸を面一に調整することが可能であり、しかも、調整状態の狂いを発生せず、かつ羽根等の当接面を損傷又は変形させることのない折戸用蝶番の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本考案は、第1の折戸の裏側に取り付けられる第1の羽根と、上記第1の折戸に隣り合う第2の折戸の裏側に取り付けられ、上記第1の羽根に対して回転可能に連結された第2の羽根とを備える折戸用蝶番において、上記第1の羽根の上記第2の羽根側端部に突設された係止部,この係止部と上記第2の羽根の間に移動可能に介設された調整部材,及びこの調整部材に螺入され上記係止部に回転可能に係合された調整ネジを有する調整機構とを設けた構成としてある。
【0012】
そして好ましくは、上記第1の羽根の係止部が、上記調整ネジの先端部を回転自在に支持する孔を有し、上記調整部材が、前記第1の羽根の係止部と対向し上記調整ネジの螺入するネジ孔を形成した起立部及び前記第2の羽根の端面と当接する端面を有する当接部と、この当接部と一体的に形成され、前記第1の羽根と第2の羽根を連結する軸ピンが貫入する長孔を形成した取付部とからなる構成としてある。
【0013】
【作用】
上記折戸用蝶番によれば、調整ネジが、調整部材に螺入され上記係止部に回転可能に係合されているので、第1及び第2の折戸を折り曲げると、調整ネジの頭部が表側に露出する。したがって、第1及び第2の折戸が面一でないときには、第1及び第2の折戸を開いて折り曲げ、露出した調整ネジの頭部を表側から回転させて、調整ネジの螺入量を変化させ、調整部材の端面と第2の羽根の端面との当たり具合を調整する。しかる後、第1及び第2の折戸を閉じると、その変化量分だけ調整部材が移動しているので、調整部材に当接した第2の羽根が回転した状態になり、第1の羽根と面一の状態になる。
【0014】
【実施例】
以下、本考案の実施例について図面を参照して説明する。
図1は、本考案の一実施例に係る折戸用蝶番を示す斜視図であり、図2はその分解斜視図である。
なお、図8ないし図10に示した部材と同一部材については同一符号を付して説明する。
本実施例の折戸用蝶番1は、第1の折戸110に取り付けられる第1の羽根2と、この羽根2に回転自在に連結され、第2の折戸111に取り付けられる第2の羽根3とを備え、これらに、付勢機構4と調整機構5とを設けた構成となっている。
【0015】
羽根2は、その板面に複数のネジ孔20を有し、これらのネジ孔20に挿通される木ネジ6によって、折戸110に固定される。この羽根2の図2における右側端部には、三つの腕部21が所定間隔をおいて形成されている。これらの腕部21は円筒状に曲げられており、その中央部には軸孔22を有している。
【0016】
羽根3も、図1に示すように、その板面に複数のネジ孔30を有し、これらのネジ孔30に挿通された木ネジ6によって、折戸111に固定される。この羽根3の図2における左側端部には、羽根2の腕部21の隙間に係入可能な二つの腕部31が形成されている。これらの腕部31も中央部に軸孔32を有している。
【0017】
このような羽根3に、付勢機構4が装着されている。
付勢機構4は、羽根2,3を折戸110,111側に付勢して、折戸110,111を閉状態にする機構であり、図2に示すように、羽根3に形成されたバネ収納室40と、押しバネ41と、押当て部材42とで構成されている。
具体的には、バネ収納室40内に押しバネ41が収納され、押当て部材42の両側の溝43をバネ収納室40の案内部44にスライド自在に嵌め込んだ状態で、押当て部材42がバネ収納室40に嵌められる。この押当て部材42の頭部45は、羽根2の中央腕部21に当接するようになっている。
【0018】
調整機構5は、羽根2に突設された係止部50と、調整部材53と、調整ネジ58とで構成されている。
具体的には、係止部50は、羽根2の腕部21の横の端部を垂直に切り曲げて形成した部位であり、その中央部には、孔51が穿設されている。
調整部材53は、横長の長孔54を有し腕部21に対応した形状の取付部55と、係止部50と対向する起立部56a及び羽根3の端面3aと当接する端面56bを有する当接部56とからなっている。そして、起立部56aの中央部には、孔51よりも大径で、ネジ溝の切られたネジ孔57が形成されている。
調整ネジ58は、係止部50の孔51に挿通可能な先端部58aと、当接部56のネジ孔57に螺入可能なネジ溝を形成した胴部58bと、ドライバ等で回転可能な頭部58cとを有している。
【0019】
ここで、折戸用蝶番1の組立状態について説明する。
まず、図2において、羽根3のバネ収納室40内に押しバネ41を収納し、押当て部材42をバネ収納室40に嵌めた状態で、羽根2と羽根3とを向い合せ、腕部31を腕部21の隙間に挿入して、軸孔32と軸孔22とを一致させる。すると、押当て部材42の頭部45は羽根2の中央腕部21に当接した状態になる。
この状態で、ワッシャ7と調整部材53の取付部55とワッシャ8とが順に嵌められた軸ピン9を、腕部21,31の軸孔22,32に挿入する。
【0020】
このようにして組み立てた折戸用蝶番1を、図1に示すように、木ネジ6によって折戸110,111に固定する。
これにより、羽根2,3が付勢機構4によって折戸110,111側に付勢され、折戸110,111を開くと、軸ピン9を中心として、羽根2,3が円滑に回転する。
【0021】
しかる後、図3に示すように、調整機構5の組み付けを行う。
具体的には、図3(a)に示すように、係止部50と調整部材53を形成する当接部56の起立部56aとを対向させると共に、当接部56の端面56bを羽根3の端面3aに当接するようにする。
その後、図3(b)に示すように、係止部50の孔51に調整ネジ58の先端部58aを貫通させると共に、ネジ孔57に胴部58bを螺入する。そして、先端部58aをかしめて、調整機構5の組み付けが終了する。
これにより、調整ネジ58の頭部58cを回転させると、先端部58aと胴部58bとが孔51とネジ孔57内で一体に回転し、調整部材53が、ワッシャ7,8によって長孔54に沿い、羽根3方向に円滑に移動するようになっている。
【0022】
次に、本実施例の折戸用蝶番による調整動作について説明する。
図4は調整前の状態を示す平面図、図5は調整後の状態を示す平面図、図6は調整方法を示す平面図、図7は折戸の調整状態を示す概略図である。
図4に示すように、折戸110,111が面一でなく、付勢機構4の付勢力によって、若干折れ曲がった状態になっていると、図7(a)に示すように、折戸扉全体が波打った状態になって、見栄えが良くない。
このような状態のときは、調整部材53を形成する当接部56の端面56bと羽根3の端面3aとの間に隙間があり、両端面56bと3aが、図4に示すように下端のみで当接し、傾いた状態にある。
【0023】
したがって、このような場合には、図6に示すように、折戸110,111を開き、折戸扉を開いた状態にする。すると、折戸扉の表側Aに調整ネジ58の頭部58cが露出するので、この頭部58cをドライバ10で回転させ、調整部材53を羽根3側に移動させる。
この状態で折戸110,111を閉じると、端面56bと端面3aの間の隙間がなくなり、図5に示すように、両端面56bと3aが面のほぼ全体で当接した状態になる。この結果、羽根2と羽根3とが平坦な状態となり、折戸110,111が面一状態に調整される。
このように、折戸110,111を面一状態にすることにより、図7(b)に示すように、折戸扉全体が平面的になり、見栄えの良いものとなる。
【0024】
このように、本実施例の折戸用蝶番1によれば、折戸110,111を開き、折戸扉を開いた状態にすると、折戸扉の表側Aに調整ネジ58の頭部58cが露出するので、表側Aから調整ネジ58を調整することができる。
【0025】
また、調整部材53を形成する当接部56の端面56bと羽根3の端面3aは、ともに板厚面どうしで当接しているので、折戸110,111の振動が羽根2,3に伝わっても、その振動によって、当接面が破損したり、変形することもない。
さらに、調整ネジ58の回転調整時に、その先端部58aや頭部58cが羽根2,3等に突き当たることがないので、調整ネジ58に傷を付けることなく、調整作業を行うことができる。これにより、微調整が可能となる。
【0026】
また、調整ネジ58が係止部50の孔51と調整部材53のネジ孔57に挿入され、係止部50で係止された状態になっているので、折戸110,111の振動が直接調整ネジ58に影響を与えることはなく、この結果、最適な調整状態を維持することができる。
【0027】
【考案の効果】
以上のように本考案の折戸用蝶番によれば、第1及び第2の折戸を折り曲げると、調整ネジの頭部が表側に露出するので、表側から調整ネジを調整することができ、調整作業を能率的に行うことができる。
【0028】
また、調整部材を係止部と第2の羽根の間に介設し、調整ネジの螺入量を変化させることによって調整部材を移動させ調整しているので、調整ねじ及び調整部材と第2の羽根の当接面が損傷したり変形したりすることがなく、第1及び第2の折戸を面一に微調整することができる。
【0029】
さらに、調整ネジが調整部材に螺入され係止部に回転可能に係合された構成になっているので、折戸の振動によっては容易に調整ネジは回転せず、この結果、最適な調整状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例に係る折戸用蝶番を示す斜視図である。
【図2】折戸用蝶番の分解斜視図である。
【図3】調整機構の構造を示す断面図であり、図3の(a)は調整ネジの取付方向を示し、図3の(b)は調整ネジが取り付けられた状態を示す。
【図4】調整前の状態を示す平面図である。
【図5】調整後の状態を示す平面図である。
【図6】調整方法を示す平面図である。
【図7】折戸の調整状態を示す概略図であり、図7の(a)は調整前の折戸の状態を示し、図7の(b)は調整後の折戸の状態を示す。
【図8】従来例に係る折戸用蝶番を示す断面図である。
【図9】他の従来例に係る折戸用蝶番を示す断面図である。
【図10】他の従来例に係る折戸用蝶番による調整方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1 折戸用蝶番
2,3 羽根
3a 端面
5 調整機構
9 軸ピン
50 係止部
51 孔
53 調整部材
54 長孔
55 取付部
56 当接部
56a 起立部
56b 端面
57 ネジ孔
58 調整ネジ
110,111 折戸

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 第1の折戸の裏側に取り付けられる第1の羽根と、上記第1の折戸に隣り合う第2の折戸の裏側に取り付けられ、上記第1の羽根に対して回転可能に連結された第2の羽根とを備える折戸用蝶番において、上記第1の羽根の上記第2の羽根側端部に突設された係止部,この係止部と上記第2の羽根の間に移動可能に介設された調整部材,及びこの調整部材に螺入され上記係止部に回転可能に係合された調整ネジを有する調整機構と、を設けたることを特徴とする折戸用蝶番。
【請求項2】 上記第1の羽根の係止部が、上記調整ネジの先端部を回転自在に支持する孔を有し、上記調整部材が、前記第1の羽根の係止部と対向し上記調整ネジの螺入するネジ孔を形成した起立部及び前記第2の羽根の端面と当接する端面を有する当接部と、この当接部と一体的に形成され、前記第1の羽根と第2の羽根を連結する軸ピンが貫入する長孔を形成した取付部とからなることを特徴とする折戸用蝶番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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