説明

抵抗溶接の評価方法、抵抗溶接機の制御方法、抵抗溶接機の制御装置、および抵抗溶接機

【課題】簡単な構成で、被溶接材の接合状態の良否を溶接中に容易に且つ正確に判定して、被溶接材の接合状態の判定が良好でない場合に、その接合状態が良好とならない原因となる外乱に対する対策を講じることができる抵抗溶接機を提供する。
【解決手段】抵抗溶接機は、複数からなるの被溶接材Wを加圧する電極1、2と、電源装置3と、被溶接材Wを良好に接合させるよう制御するための制御装置4とを備えている。制御装置4は、被溶接材Wの溶融開始のタイミングを検知する手段5と、この検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材Wの溶融開始のタイミングとを比較して、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて被溶接材Wの接合状態の良否を判定し、被溶接材Wの接合状態の判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更するタイマ6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接の評価方法、抵抗溶接機の制御方法、抵抗溶接機の制御装置、および抵抗溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接などの抵抗溶接においては、被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する。このような抵抗溶接を行うための抵抗溶接機は一般に、被溶接材を加圧する電極と、該電極に電流を供給するための電源装置などの手段とを備えている。
【0003】
このような抵抗溶接においては、一般に複数の被溶接材を重ねあわせ、これらの被溶接材を電極で加圧し、電極を介して電源装置から被溶接材に電流を供給することにより、被溶接材の間に、最初に被溶接材が溶融するまでには至ることなく軟化して圧接された圧接部が形成され、この圧接部が拡がりながら圧接部の内部がさらにジュール加熱されることにより溶融した溶融部が形成され、通電を停止して溶融部が凝固するとナゲットが形成され、被溶接材が互いに接合されることとなる。被溶接材が適切に接合されるためには、例えば被溶接材の厚さなどに応じた適切な径のナゲットを形成する必要がある。このように被溶接材を適切に接合するためには、図14の(A)に「外乱無し」で示したように、電極1、2によって被溶接材W1、W2を適切に加圧するなどして互いに密着させ、適切な通電面積を確保し、適切な電流密度とすることが必要である。
【0004】
これに対して、図14(B)に「板隙有り」で示したように、重ね合わせた被溶接材W1、W2の加圧が不足するなどして外乱の一つである所謂板隙が発生した場合には、被溶接材Wの通電面積が小さくなり、その結果、電極1、2から供給される電流密度が高くなって、圧接部の形成が充分でない状態で溶融部が形成され、圧接部の径(圧接径)が溶融部の径(溶融径)と略同じとなり、被溶接材W1、W2の間から溶融した金属が飛び散ってチリが発生し、充分な径のナゲットが形成されないことから接合強度が不足し、さらには、飛び散ったチリが被溶接材Wに付着するなどして周囲を汚損することとなる。
【0005】
また、電極1、2が損耗したり適切な形状に整形されていないなどの外乱により、通電面積が大きくなった場合には、電極1、2の電流密度が低下した状態となることから、ジュール加熱による圧接部と溶融部の形成が遅れる。一方、被溶接材Wに対する電極1、2の通電は、一般に、通電を開始してから規定時間経過後に遮断される。そのため、被溶接材の間に充分な径でナゲットを形成することができず、その結果、接合強度が不足したり、被溶接材W1、W2が接合されるに至らず所謂ハガレが発生することとなる。
【0006】
ところで抵抗溶接は、互いに接合する被溶接材の間にナゲットが形成されるため、このナゲットを直接観察することは困難である。そのために、抵抗溶接による接合状態を評価するための関連する従来の技術として、例えば特許文献1が知られている。この特許文献1は、スポット溶接により形成された溶接部の評価方法に関するものである。
【0007】
特許文献1には、スポット溶接における通電時の電極間の電圧測定値及び電流測定値から電極間の電気抵抗値を求めた後、通電開始から40msまでの間の電気抵抗値の最大値と通電開始から終了までの間の電気抵抗値の平均値をそれぞれ求め、該平均値に対する前記最大値を基に鋼板のスポット溶接性を評価することを特徴とする鋼板のスポット溶接性評価方法が開示されている。
【0008】
すなわち、特許文献1では、鋼板のスポット溶接性を評価するための指標として、通電の開始時点からの40msまでの間の電極間の電気抵抗値と、通電開始から終了までの間の電気抵抗値の平均値とを用いている。そして、特許文献1では、通電開始から終了までの間の電気抵抗値の平均値を求めることから、溶接が完了してからその評価を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−334935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1にあっては、溶接が完了してからその評価を行うものであるため、その溶接を行っている途中で被溶接材の接合状態の良否を判定することができなかった。そのため、被溶接材の接合状態の判定が良好でない場合に、その接合状態が良好とならない原因となる外乱に対する対策を講じることができないという問題があった。
【0011】
また、上記特許文献1にあっては、通電の開始時点からの40msまでの間の電極間の電気抵抗値と、通電開始から終了までの間の電気抵抗値の平均値とを判定の指標として用いて鋼板のスポット溶接性を評価するものであるため、板隙だけでなく電極の損耗などの外乱が生じている場合には、評価結果にバラツキが生じることとなり、また、通電の開始時点を始点としているため、実際の被溶接材の溶融が遅れるなどした場合には、接合状態を正確に評価することができないなどの問題もあった。
【0012】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、被溶接材の接合状態の良否を溶接中に容易に且つ正確に判定することができる抵抗溶接の評価方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、被溶接材の接合状態の良否を溶接中に容易に且つ正確に判定して、被溶接材の接合状態の判定が良好でない場合に、その接合状態が良好とならない原因となる外乱に対する対策を講じることができる抵抗溶接機の制御方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、被溶接材の接合状態の良否を溶接中に容易に且つ正確に判定して、被溶接材の接合状態の判定が良好でない場合に、その接合状態が良好とならない原因となる外乱に対する対策を講じることができる抵抗溶接機の制御装置、および抵抗溶接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の抵抗溶接の評価方法に係る発明は、上記目的を達成するため、被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接において、前記被溶接材の接合状態を評価するための方法であって、前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知するステップと、該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較するステップと、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するステップとを備えることを特徴とするものである。
請求項2の抵抗溶接機の制御方法に係る発明は、上記目的を達成するため、被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機において、前記被溶接材を良好に接合させるよう制御するための方法であって、前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知するステップと、該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較するステップと、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するステップと、前記判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更するステップとを備えることを特徴とするものである。
請求項3の抵抗溶接機の制御装置に係る発明は、上記目的を達成するため、被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機において、前記被溶接材を良好に接合させるよう制御するための制御装置であって、前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段と、該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較して、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段と、前記判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更する手段とを備えていることを特徴とするものである。
請求項4の抵抗溶接機に係る発明は、上記目的を達成するため、被溶接材を加圧する電極と、該電極に電流を供給する手段とを備えており、前記被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機であって、請求項3に記載の制御装置を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、被溶接材の溶融開始のタイミングを検知するステップと、該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較するステップと、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するステップとを備えるという簡単な構成で、被溶接材の接合状態の良否を溶接中に容易に且つ正確に判定することが可能な抵抗溶接の評価方法を提供することができる。
請求項2の発明によれば、被溶接材の溶融開始のタイミングを検知するステップと、該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較するステップと、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するステップと、前記判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更するステップとを備えるという簡単な構成で、被溶接材の接合状態の良否を溶接中に容易に且つ正確に判定して、被溶接材の接合状態の判定が良好でない場合に、溶接条件を変更して、その接合状態が良好とならない原因となる外乱に対する対策を講じることが可能な抵抗溶接機の制御方法を提供することができる。
請求項3の発明によれば、被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段と、該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較して、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段と、前記判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更する手段とを備えたという簡単な構成で、被溶接材の接合状態の良否を溶接中に容易に且つ正確に判定して、被溶接材の接合状態の判定が良好でない場合に、溶接条件を変更してその接合状態が良好とならない原因となる外乱に対する対策を講じることが可能な抵抗溶接機の制御装置を提供することができる。
請求項4の発明によれば、請求項3に記載された制御装置を抵抗溶接機に設けたという簡単な構成で、被溶接材の接合状態の良否を溶接中に容易に且つ正確に判定して、被溶接材の接合状態の判定が良好でない場合に、溶接条件を変更して、その接合状態が良好とならない原因となる外乱に対する対策を講じることが可能な抵抗溶接機を提供することができる。
【0015】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(7)項が請求項2に相当し、(13)項が請求項3に相当し、(19)項が請求項4に相当する。
【0016】
(1) 被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接において、前記被溶接材の接合状態を評価するための方法であって、
前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知するステップと、
該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較するステップと、
両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するステップと
を備えることを特徴とする抵抗溶接の評価方法。
【0017】
(1)項に記載の発明では、電極により加圧された被溶接材に電流を供給して、被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する。そして、この検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較し、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かを判断し、両タイミングの差が予め設定された範囲内であれば、被溶接材の接合状態が良好であると、また、両タイミングの差が予め設定された範囲内になければ、被溶接材の接合状態が不良であると判定する。被溶接材の溶融開始のタイミングに基づいて被溶接材の接合状態の良否判定を行うので、溶接の途中で、外乱に影響されること無く、被溶接材の接合状態を容易に且つ正確に評価することができる。
【0018】
(2) 被溶接材の電極間に超音波を発信し、該超音波の変化を検出することにより前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知することを特徴とする(1)項に記載の抵抗溶接の評価方法。
【0019】
(2)項に記載の発明では、(1)項に記載の発明において、被溶接材の電極間に超音波を発信し、この発信した超音波の反射波または透過波を受信して、その変化を検出することにより前記被溶接材の溶融開始のタイミングを正確に検知することができる。なお、受信した超音波の変化を検出するために、具体的には、エネルギ(強度)、透過度または反射率、スペクトル強度、振幅などを測定することができる。
【0020】
(3) 被溶接材の電極間に投入したエネルギを演算することにより、前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知することを特徴とする(1)項に記載の抵抗溶接の評価方法。
【0021】
(3)項の発明では、(1)項に記載の発明において、通電開始からの電流と電圧とを時間積分した投入エネルギを演算することにより、被溶接材の溶融開始のタイミングを容易に且つ正確に検知することができる。
【0022】
(4) 前記検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングは、交流電流を電極から被溶接材に通電させ、該通電開始からのサイクル数とし、該サイクル数により両タイミングを比較することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の抵抗溶接の評価方法。
【0023】
(4)項に記載の発明では、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の発明において、両タイミングを容易に数値化して比較することができる。なお、直流電流を電極から通電してもよく、その場合には通電開始からの通電時間を用いて両タイミングを比較することができる。
【0024】
(5) 予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとして、チリが発生する場合のチリ発生時溶融開始タイミングが予め設定されており、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが前記チリ発生時溶融開始タイミングよりも早い場合に、チリ発生を予測することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の抵抗溶接の評価方法。
【0025】
(5)項に記載の発明では、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の発明において、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが、予め定められたチリ発生時溶融開始タイミングよりも早い場合に、板隙などの外乱により電流密度が大きくなって、被溶接材の間から溶融した金属が飛び散ってチリが発生するものと容易に且つ確実に予測することができる。
【0026】
(6) 予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとして、接合不良が発生する場合の接合不良発生時溶融開始タイミングが予め設定されており、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが前記接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合に、接合不良の発生を予測することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抵抗溶接の評価方法。
【0027】
(6)項に記載の発明では、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の発明において、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが、予め定められた接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合に、電極の損耗や適切でない整形などの外乱により電流密度が小さくなって、溶融部の形成が遅れて充分な径のナゲットが形成されず接合不良が発生するものと容易に且つ確実に予測することができる。
【0028】
(請求項2)
(7) 被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機において、前記被溶接材を良好に接合させるよう制御するための方法であって、
前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知するステップと、
該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較するステップと、
両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するステップと、
前記判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更するステップと
を備えることを特徴とする抵抗溶接機の制御方法。
【0029】
(7)項に記載の発明では、電極により加圧された被溶接材に電流を供給して、被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する。そして、この検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較し、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かを判断し、両タイミングの差が予め設定された範囲内であれば、被溶接材の接合状態が良好であると、また、両タイミングの差が予め設定された範囲内になければ、被溶接材の接合状態が不良であると判定する。被溶接材の溶融開始のタイミングに基づいて被溶接材の接合状態の良否判定を行うので、溶接の途中で、外乱に影響されること無く、被溶接材の接合状態を容易に且つ正確に評価することができる。そして、この評価で接合状態が良でないと判定された場合に、溶接を完了するまでに溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。
【0030】
(8) 被溶接材の電極間に超音波を発信し、該超音波の変化を検出することにより前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知することを特徴とする(7)項に記載の抵抗溶接機の制御方法。
【0031】
(8)項に記載の発明では、(7)項に記載の発明において、被溶接材の電極間に超音波を発信し、この発信した超音波の反射波または透過波を受信して、その変化を検出することにより前記被溶接材の溶融開始のタイミングを正確に検知し、その結果、被溶接材の接合状態を容易に且つ正確に評価して、この評価で接合状態が良でないと判定された場合に、溶接を完了するまでに溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。なお、受信した超音波の変化を検出するために、具体的には、エネルギ(強度)、透過度または反射率、スペクトル強度、振幅などを測定することができる。
【0032】
(9) 被溶接材の電極間に投入したエネルギを演算することにより、前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知することを特徴とする(7)項に記載の抵抗溶接機の制御方法。
【0033】
(9)項の発明では、(7)項に記載の発明において、通電開始からの電流と電圧とを時間積分した投入エネルギを演算することにより、被溶接材の溶融開始のタイミングを容易に且つ正確に検知し、その結果、被溶接材の接合状態を容易に且つ正確に評価して、この評価で接合状態が良でないと判定された場合に、溶接を完了するまでに溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。
【0034】
(10) 前記検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングは、交流電流を電極から被溶接材に通電させ、該通電開始からのサイクル数とし、該サイクル数により両タイミングを比較することを特徴とする(7)〜(9)のいずれか1項に記載の抵抗溶接機の制御方法。
【0035】
(10)項に記載の発明では、(7)〜(9)のいずれか1項に記載の発明において、両タイミングを容易に数値化して比較することができる。なお、直流電流を電極から通電してもよく、その場合には通電開始からの通電時間を用いて両タイミングを比較することができる。
【0036】
(11) 予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとして、チリが発生する場合のチリ発生時溶融開始タイミングが予め設定されており、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが前記チリ発生時溶融開始タイミングよりも早い場合に、チリ発生を予測することを特徴とする(7)〜(10)のいずれか1項に記載の抵抗溶接機の制御方法。
【0037】
(11)項に記載の発明では、(7)〜(10)のいずれか1項に記載の発明において、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが、予め定められたチリ発生時溶融開始タイミングよりも早い場合に、板隙などの外乱により電流密度が大きくなって、被溶接材の間から溶融した金属が飛び散ってチリが発生するものと容易に且つ確実に予測することができる。そして、このチリが発生すること予測された場合に、溶接を完了するまでにチリ発生を防止できるように溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。なお、この溶接条件の変更には、電極を介して被溶接材に通電する電流値を低下させたり、電極による被溶接材の加圧力を増加させることができる。
【0038】
(12) 予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとして、接合不良が発生する場合の接合不良発生時溶融開始タイミングが予め設定されており、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが前記接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合に、接合不良の発生を予測することを特徴とする(7)〜(11)のいずれか1項に記載の抵抗溶接機の制御方法。
【0039】
(12)項に記載の発明では、(7)〜(11)のいずれか1項に記載の発明において、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが、予め定められた接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合に、電極の損耗や適切でない整形などの外乱により電流密度が小さくなって、溶融部の形成が遅れて充分な径のナゲットが形成されず接合不良が発生するものと容易に且つ確実に予測することができる。そして、この接合不良が発生することが予測された場合に、溶接を完了するまでに接合不良の発生を防止できるように溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。なお、この溶接条件の変更には、電極を介して被溶接材に通電する電流値を増加させたり、通電時間を延長することができる。
【0040】
(13) 被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機において、前記被溶接材を良好に接合させるよう制御するための制御装置であって、
前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段と、
該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較して、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段と、
前記判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更する手段と
を備えていることを特徴とする抵抗溶接機の制御装置。
【0041】
(13)項に記載の発明では、電極により加圧された被溶接材に電流を供給して、被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する。そして、この検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較し、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かを判断し、両タイミングの差が予め設定された範囲内であれば、被溶接材の接合状態が良好であると、また、両タイミングの差が予め設定された範囲内になければ、被溶接材の接合状態が不良であると判定する。被溶接材の溶融開始のタイミングに基づいて被溶接材の接合状態の良否判定を行うので、溶接の途中で、外乱に影響されること無く、被溶接材の接合状態を容易に且つ正確に評価することができる。そして、この評価で接合状態が良でないと判定された場合に、溶接を完了するまでに溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるように抵抗溶接機を制御することができる。
【0042】
(14) 前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段は、被溶接材の電極間に超音波を発信し、該超音波の変化を検出するものであることを特徴とする(13)項に記載の抵抗溶接機の制御装置。
【0043】
(14)項に記載の発明では、(13)項に記載の発明において、被溶接材の電極間に超音波を発信し、この発信した超音波の反射波または透過波を受信して、その変化を検出する。そのため、前記被溶接材の溶融開始のタイミングを正確に検知し、その結果、被溶接材の接合状態を容易に且つ正確に評価して、この評価で接合状態が良でないと判定された場合に、溶接を完了するまでに溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。なお、受信した超音波の変化を検出するために、具体的には、エネルギ(強度)、透過度または反射率、スペクトル強度、振幅などを測定するものとすることができる。
【0044】
(15) 前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段は、被溶接材の電極間に投入したエネルギを演算するものであることを特徴とする(13)項に記載の抵抗溶接機の制御装置。
【0045】
(15)項の発明では、(13)項に記載の発明において、前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段が通電開始からの電流と電圧とを時間積分した投入エネルギを演算することにより、被溶接材の溶融開始のタイミングを容易に且つ正確に検知し、その結果、被溶接材の接合状態を容易に且つ正確に評価して、この評価で接合状態が良でないと判定された場合に、溶接を完了するまでに溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。
【0046】
(16) 電極から被溶接材に通電させる電流が交流電流であり、
前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段は、通電開始から被溶接材の溶融開始するまでのサイクル数を検知するものであり、
前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段は、前記検知された被溶接材の溶融開始のサイクル数と、予め定められた被溶接材の溶融開始のサイクル数との比較に基づいて基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するものであることを特徴とする(13)〜(15)のいずれか1項に記載の抵抗溶接機の制御装置。
【0047】
(16)項に記載の発明では、(13)〜(15)のいずれか1項に記載の発明において、両タイミングを数値化して前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段が容易に比較することができる。なお、直流電流を電極から通電してもよく、その場合には通電開始からの通電時間を用いて両タイミングを比較することができる。
【0048】
(17) 前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段は、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとして、チリが発生する場合のチリ発生時溶融開始タイミングが予め設定されており、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが前記チリ発生時溶融開始タイミングよりも早い場合に、チリ発生を予測するものであることを特徴とする(13)〜(16)のいずれか1項に記載の抵抗溶接機の制御装置。
【0049】
(17)項に記載の発明では、(13)〜(16)のいずれか1項に記載の発明において、前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段は、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが、予め定められたチリ発生時溶融開始タイミングよりも早い場合に、板隙などの外乱により電流密度が大きくなって、被溶接材の間から溶融した金属が飛び散ってチリが発生するものと容易に且つ確実に予測する。そして、このチリが発生すること予測された場合に、溶接条件を変更する手段は、溶接を完了するまでにチリ発生を防止できるように溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。なお、この溶接条件を変更する手段は、電極を介して被溶接材に通電する電流値を低下させたり、電極による被溶接材の加圧力を増加させるものとすることができる。
【0050】
(18) 前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段は、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとして、接合不良が発生する場合の接合不良発生時溶融開始タイミングが予め設定されており、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが前記接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合に、接合不良の発生を予測することを特徴とする(13)〜(17)のいずれか1項に記載の抵抗溶接機の制御装置。
【0051】
(18)項に記載の発明では、(13)〜(17)のいずれか1項に記載の発明において、被溶接材の接合状態の良否を判定する手段は、検知された被溶接材の溶融開始のタイミングが、予め定められた接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合に、電極の損耗や適切でない整形などの外乱により電流密度が小さくなって、溶融部の形成が遅れて充分な径のナゲットが形成されず接合不良が発生するものと容易に且つ確実に予測することができる。そして、この接合不良の発生が予測された場合に、溶接を完了するまでに接合不良の発生を防止できるように溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるようにすることができる。なお、この溶接条件を変更する手段は、電極を介して被溶接材に通電する電流値を増加させたり、通電時間を延長するものとすることができる。
【0052】
(請求項4)
(19) 被溶接材を加圧する電極と、該電極に電流を供給する手段とを備えており、前記被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機であって、
(13)〜(18)のいずれか1項に記載の制御装置を設けたことを特徴とする抵抗溶接機。
【0053】
(19)項の発明では、(13)〜(18)のいずれか1項に記載の制御装置を設けたことにより、電極により被溶接材を加圧し、電流を供給する手段により電極に電流を供給する。このとき、制御装置は、被溶接材の溶融開始のタイミングを検知し、この検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較し、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かを判断し、両タイミングの差が予め設定された範囲内であれば、被溶接材の接合状態が良好であると、また、両タイミングの差が予め設定された範囲内になければ、被溶接材の接合状態が不良であると判定する。被溶接材の溶融開始のタイミングに基づいて被溶接材の接合状態の良否判定を行うので、溶接の途中で、外乱に影響されること無く、被溶接材の接合状態を容易に且つ正確に評価することができる。そして、この評価で接合状態が良でないと判定された場合に、溶接を完了するまでに溶接条件を変更して、溶接を完了したときには接合状態が良好であると判定されるように抵抗溶接機を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の制御装置を備えた抵抗溶接機の実施の一形態を説明するために示した概念図である。
【図2】本発明の抵抗溶接の評価方法の実施の一形態を説明するために示したフローチャートである。
【図3】図2で示したチリ発生の可能性がある場合の、溶融開始のタイミングを検出する超音波の波形の一例を示したグラフである。
【図4】本発明の抵抗溶接機の制御方法の実施の一形態を説明するために示したフローチャートである。
【図5】図4で示したチリ発生の可能性があるために電流値を低下させた場合の、超音波の波形の一例を示したグラフである。
【図6】本発明の抵抗溶接の評価方法の第2の実施の形態を説明するために示したフローチャートである。
【図7】図6で示した良好なナゲット径が形成されたと評価した場合の、超音波の波形の一例を示したグラフである。
【図8】図7で示した場合の接合部の断面の顕微鏡写真である。
【図9】図6で示した溶接開始タイミングが接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合の、超音波の波形の一例を示したグラフである。
【図10】図9で示した場合の接合部の断面の顕微鏡写真である。
【図11】本発明の抵抗溶接機の制御方法の第2の実施の形態を説明するために示したフローチャートである。
【図12】図11で示した溶接開始タイミングが接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅いために通電時間を延長させた場合の、超音波の波形の一例を示したグラフである。
【図13】図12で示した場合の接合部の断面の顕微鏡写真である。
【図14】外乱無しの場合(A)と外乱の一例として板隙有りの場合(B)の通電開始から通電中期までの状態を比較した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
最初に、本発明の抵抗溶接機と、その制御装置の実施の一形態を、図1に基づいて説明する。
本発明の抵抗溶接機は、複数W1、W2からなるの被溶接材Wを加圧する電極1、2と、この電極1、2に電流を供給する手段3と、被溶接材W1、W2を良好に接合させるよう制御するための制御装置4とを備えており、被溶接材W1、W2を電極1、2で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材W1、W2を溶融させ接合するものであって、制御装置4は、被溶接材Wの溶融開始のタイミングを検知する手段5と、この検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材Wの溶融開始のタイミングとを比較して、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて被溶接材W1、W2の接合状態の良否を判定する手段(後述する)、および、被溶接材W1、W2の接合状態の判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更する手段(後述する)を構成するタイマ6とを備えている。
【0056】
被溶接材Wは、この実施の形態の場合、所定の厚さを有する板状のもので、この実施の形態では2枚の被溶接材W1、W2を重ね溶接する場合で説明する。しかしながら、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、例えば3枚の板状の被溶接材Wを重ね溶接する場合などにも適用することができる。また、各被溶接材Wの材質は、特に限定されることはなく、互いに同種でも異種でもよく、また表面にメッキが施されたものであってもよい。
【0057】
この実施の形態における電極は、一対1、2で構成されており、それぞれ棒状に形成されたもので、先端が互いに対向するように配置され、少なくとも一方1が他方2に対して近接・遠退するよう支持されており、相対的に近接することにより所定の力で被溶接材Wを加圧することができる。電極1、2の先端は、被溶接材W1、W2を所定の力で加圧したときに所定の面積で接するよう整形されている。
【0058】
電極1、2には、電流を供給する手段(以下、電源装置という)3が接続されている。この実施の形態における電源装置3は、単相または三相の交流電流を所望の電流値で電極1、2に供給することができる。しかしながら、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、直流電流を供給する電源装置とすることもできる。電源装置3は、制御装置4のタイマ6に接続されており、所定の電流値を所定の通電時間で電極1、2間に供給することができるよう制御される。この制御装置4による制御の内容については、後述する評価方法または制御方法で詳細に説明する。
【0059】
この実施の形態における被溶接材Wの溶融開始のタイミングを検知する手段5は、超音波発信素子51と、超音波受信素子52と、超音波受信素子52が受信した超音波波形を増幅させるアンプ53と、超音波発信素子51に所定の周波数で超音波を発信させるとともにアンプ53を介することにより増幅された超音波波形を受信するパルサ/レシーバ54と、パルサ/レシーバ54に超音波発信の指示を出力するとともにタイマ6から出力された接合部の評価の結果を保存するコンピュータ55とを備えている。
【0060】
さらに、この実施の形態においては、電極1、2に供給される電流値と電圧値をそれぞれ検出する手段56、57を備えている。この電流値と電圧値を検出する手段56、57は、タイマ6に接続されている。タイマ6は、電極を介して被溶接材Wに投入された電流値と電圧値の時間積分である投入エネルギを算出する投入エネルギ算出部としても機能するよう構成されている。
【0061】
次に、本発明の抵抗溶接の評価方法を、上述した制御装置4を有する抵抗溶接機を使用する場合によって、制御装置4の作動ともに図2〜図5に基づいて詳細に説明する。
本発明の抵抗溶接の評価方法は、概略、複数W1、W2からなるの被溶接材Wを電極1、2で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材W1、W2を溶融させ接合する抵抗溶接において、被溶接材W1、W2の接合状態を評価するためのものであって、被溶接材Wの溶融開始のタイミングを検知するステップS2と、この検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材Wの溶融開始のタイミングとを比較するステップS3(第1の実施の形態)またはS20(第2の実施の形態)と、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて被溶接材Wの接合状態の良否を判定するステップS5、S7(第1の実施の形態)、または、S21、S23、S24(第2の実施の形態)とを含んでいる。
【0062】
本発明の抵抗溶接の評価方法に関する第1の実施の形態を説明する。抵抗溶接を行うに際しては、最初に、被溶接材W1、W2を互いに重ね合わせた状態とし、電極1、2間に配置し、電極1、2を互いに近接させて挟持し、所定の力で加圧する。この状態で、電源装置3から電極1、2に予め設定された通常の値で電流の供給を開始する、つまり溶接を開始すると(図2のS1)、被溶接材W1、W2の接合部分がジュール加熱されて、図14の(A)に参照されるように、被溶接材W1、W2の間に、最初に被溶接材W1、W2が溶融するまでには至ることなく軟化して圧接された圧接部が形成され、この圧接部が拡がりながら圧接部の内部がさらにジュール加熱されることにより溶融した溶融部が形成される。
【0063】
このとき、被溶接材Wの溶融開始のタイミングを検知するステップ(図2のS2)を行う。この実施の形態においては、コンピュータ55からパルサ/レシーバ54に超音波発信の指示信号が出力され、パルサ/レシーバ54が一方の電極1に設けられた超音波発信素子51から超音波を発信させ、この実施の形態では被溶接材W1、W2を透過した超音波を他方の電極2に設けられた超音波受信素子52で受信し、この受信した超音波の振幅をアンプ53で増幅し、増幅された超音波の振幅をパルサ/レシーバ54からタイマ6に送る。タイマ6では、パルサ/レシーバ54から送られた超音波の振幅の時間経過に対して変化する波形を創生する。
【0064】
ここで、図3は、電極1、2に供給された電流と、受信され増幅された超音波の振幅との時間経過に伴う波形を示したグラフである。なお、グラフにおける時間を秒(s)で表記しているが、この実施の形態では、電極1、2に供給される電流が交流であり、被溶接材Wの溶融開始などのタイミングを交流電流のサイクルで、すなわち、例えば60ヘルツの交流電流の場合には1/60秒=1サイクルで表すこととする。
【0065】
溶接開始(=通電開始)に伴って被溶接材Wがジュール加熱により溶融を開始すると、受信された超音波の振幅が低下することが知見されている。図3のグラフでは、例えば2サイクルで超音波の振幅が急激に低下している。そして、図3の破線の楕円内に示したように、その後の5.6サイクルでチリが実際に発生した。このチリの発生の原因は、図14の(B)に示したように、板隙があることにより被溶接材Wの通電面積が小さくなって電極1、2から供給される電流密度が高くなることにある。
【0066】
そこで、本発明のこの実施の形態においては、チリが実際に発生する直前のタイミングを、チリ発生を判定するためのしきい値となるチリ発生時溶融開始タイミングとして、この実施の形態の例では5サイクルに予め設定している。
【0067】
再び図2に基づいて説明すると、S3では、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングと、チリ発生時溶融開始タイミングとを比較し、両タイミングの差が予め設定された範囲内である場合、この実施の形態では、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングがチリ発生時溶融開始タイミングとして設定された5サイクルよりも遅い(すなわち、検知された溶融開始タイミングのサイクル数≧チリ発生時溶融開始タイミングのサイクル数)の場合(図2のS3でYESの場合)には、チリ発生の可能性無しと予測し(図2のS4)、ナゲット径が正常に形成されたものと判断し(図2のS5)、抵抗溶接の評価を終了する(図2のS9)。
【0068】
一方、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングが5サイクルよりも早い(すなわち、検知された溶融開始タイミングのサイクル数<チリ発生時溶融開始タイミングのサイクル数)の場合(図2のS3でNOの場合)には、チリ発生の可能性ありと予測し(図2のS6)、ナゲット径が不足の可能性ありと判断し(図2のS7)、必要に応じてタガネで被溶接材Wの接合部の周辺に打ち込んでハガレの有無をチェックするタガネ検査を行い(図2のS8)、抵抗溶接の評価を終了する(図2のS9)。
【0069】
この実施の形態による評価方法では、通電を開始してから通電を終了するまでの間(たとえば10〜30サイクル)で早期(上記の例では5サイクルよりも前)のタイミングで、板隙や過大電流などによるチリ発生の可能性を予測することができる。
【0070】
次に、本発明の抵抗溶接機の制御方法の実施の一形態を、図1に示したように構成された抵抗溶接機を用いる場合により、その作動とともに主に図4、図5に基づいて詳細に説明する。なお、図2、図3に基づいて説明した抵抗溶接機の評価方法と同様または相当する部分については、同じ符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明することとする。
【0071】
本発明の抵抗溶接機の制御方法は、概略、被溶接材W1、W2を電極1、2で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材W1、W2を溶融させ接合する抵抗溶接機において、被溶接材W1、W2を良好に接合させるよう制御するための方法であって、上述した抵抗溶接の評価方法を行い、さらに、被溶接材Wの接合状態の判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更するステップS12(第1の実施の形態)またはS25、S27(第2の実施の形態)をさらに含んでいる。
【0072】
本発明の抵抗溶接機の制御方法に関する第1の実施の形態を説明する。抵抗溶接を行うに際して、被溶接材W1、W2を互いに重ね合わせた状態とし、電極1、2間に配置し、電極1、2を互いに近接させて挟持し、所定の力で加圧した状態で、電源装置3から電極1、2に予め設定された通常の値で電流の供給を開始し(図4のS1)、被溶接材Wの接合部分をジュール加熱し、このとき、被溶接材Wの溶融開始のタイミングを検知し(図4のS2)、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングと、予め設定されたチリ発生時溶融開始タイミングとを比較し(図4のS3)、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングがチリ発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合(図4のS3でYESの場合)には、チリ発生の可能性無しと予測し(図4のS4)、また、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングがチリ発生時溶融開始タイミングよりも早い場合(図4のS3でNOの場合)には、チリ発生の可能性ありと予測する(図4のS6)ことは、図2に基づいて説明した抵抗溶接の評価方法と同様である。
【0073】
この実施の形態における制御方法では、チリ発生の可能性ありと予測した場合(図4のS6)に、変更する溶接条件の具体的な例として、図4および図5に示したように、電流値を低下させる(S12)。
【0074】
図5に示すように、被溶接材Wが2サイクルで溶融を開始したことを検知し、予め設定されたチリ発生時溶融開始タイミングである5サイクルよりも早いことからチリ発生の可能性ありと予測した場合には、チリ発生時溶融開始タイミングである5サイクルよりも早いタイミングで電流値を低下させる(抑制する)。この実施の形態では、チリ発生時溶融開始タイミングである5サイクルよりも早いタイミングとして、4サイクルの時点で電流値を低下させるよう設定されている。これにより、板隙が発生して被溶接材Wの通電面積が小さくなっている場合に、電極1、2から供給される電流密度を抑制することができるため、図5のグラフに破線の円で示したように、超音波の振幅の急激な上昇を抑制することができ、チリの発生を防止する(チリレスとする)ことができる。
【0075】
なお、このチリ発生を防止するための実施の形態において変更する溶接条件としては、電流値の低下(S12)に限定されることはなく、被溶接材W1、W2に対する電極1、2の加圧力を増加させて、板隙自体を無くすようにしてもよい。
【0076】
その後、図4のS4でちり発生無しと予測した場合、S12で電流値を低下させた場合のいずれの場合でも、溶融開始後の投入エネルギ(通電開始からの電流と電圧との時間積分)が所定値に達したかを判断する(図4のS10)。この投入エネルギの検知には、図1で示した手段56、57により検出した電極1、2の電流値と電圧値をタイマ6で時間積分することにより算出することができる。そして、投入エネルギが所定値に達していない場合(S10でNOの場合)には、所定値に達するまで通電を継続して、所定値に達した場合(S10でYESの場合)には、チリが発生せず良好な径のナゲットを形成できたと判断して(図4のS11)、抵抗溶接機におけるチリ発生を防止するための制御を終了する(図4のS13)。このとき、タイマ6は、手段56、57により検出した電極1、2の電流値や電圧値、算出した投入エネルギなどのデータ、および被溶接材の接合状態の良否判定の結果などをコンピュータ55に出力し記憶させる。
【0077】
次に、本発明の抵抗溶接の評価方法の第2の実施の形態を、図6〜図10に基づいて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施の形態と異なる部分についてのみ説明することとする。
上述した第1の実施の形態では、抵抗溶接の外乱として板隙の発生によるチリの発生を予測したのに対して、この第2の実施の形態では、抵抗溶接の外乱として電極1、2の損耗や適切でない整形などにより、被溶接材W1、W2を所定の力で加圧したときに接する面積(通電面積)が拡大して電流密度が低下した状態となり、ジュール加熱による圧接部と溶融部の形成が遅れて被溶接材の間に充分な径でナゲットを形成することができず、接合強度不足や所謂ハガレが発生していないかを評価するものである。
【0078】
抵抗溶接を行うに際して、被溶接材W1、W2を互いに重ね合わせた状態とし、電極1、2間に配置し、電極1、2を互いに近接させて挟持し、所定の力で加圧した状態で、電源装置3から電極1、2に予め設定された通常の値で電流の供給を開始し(図6のS1)、被溶接材Wの接合部分をジュール加熱し、このとき、被溶接材Wの溶融開始のタイミングを検知する(図6のS2)ことは、上述した実施の形態と同様ある。
【0079】
ここで、図7は、電極1、2が正常な状態(例えば、電極の被溶接材に対して接する径が6mm)で被溶接材Wを溶接した場合の、電流と、受信された超音波の振幅との時間経過に伴う波形を示したグラフである。図7に示したグラフにおいては、溶接開始(=通電開始)から5サイクルで受信された超音波の振幅が低下する、すなわち溶融が開始している。この場合のナゲットは、図8にその断面を顕微鏡写真で示すように、所定の大きさの径(例えば、ナゲット径=7.7mm)で形成される。
【0080】
これに対して、図9は、電極1、2が損耗するなどして所定の形状を有していない状態(例えば、電極の被溶接材に対して接する径が7mmに拡大)で被溶接材Wを溶接した場合の、電流と、受信された超音波の振幅との時間経過に伴う波形を示したグラフである。図9に示したグラフにおいては、溶接開始(=通電開始)から11サイクルで受信された超音波の振幅が低下する、すなわち溶融が開始している。これは、電極1、2が正常な状態で抵抗溶接を行う場合と比較して、電極1、2の電流密度が低下した状態となるためであると考えられる。その結果、この場合のナゲットは、図10にその断面を顕微鏡写真で示すように、所定の大きさ(図8の例では、ナゲット径=7.7mm)よりも小さいの径(例えば、ナゲット径=4.8mm)で形成される。このように充分な大きさの径でナゲットが形成されない場合では、接合強度が不足したり、被溶接材Wが接合されず所謂ハガレが発生するなどの接合不良となる。
【0081】
そこで、本発明では、所定の径でナゲットを形成することができなくなる溶融開始の遅れのタイミングを、接合不良を判定するためのしきい値となる接合不良発生時溶融開始タイミングとして、図9に示した11サイクルよりも前のタイミング(この実施の形態の例では8サイクル)に予め設定している。
【0082】
再び図6に基づいて説明すると、溶融開始のタイミングを検知し(S2)、続いて、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングと、予め設定された接合不良発生時溶融開始タイミングとを比較し(図6のS20)、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングが接合不良発生時溶融開始タイミングよりも早い場合(図6のS20でYESの場合)には、良好なナゲット径が形成されるものと判断し(図6のS21)、接合不良発生の可能性が無いと予測して、抵抗溶接の評価を終了する(図6のS9)。一方、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングが接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合(図6のS20でNOの場合)には、続いて、通電開始から通電終了までの通電時間内に溶融開始があるかを判定し(図6のS22)、通電時間内に溶融開始がある場合(図6のS22でYESの場合)には、接合強度不足の可能性ありと判断し(図6のS23)、通電時間内に溶融開始がない場合(図6のS22でNOの場合)には、ハガレ発生の可能性ありと判断し(図6のS24)、抵抗溶接の評価を終了する(図6のS9)。このとき、タイマ6は、手段56、57により検出した電極1、2の電流値や電圧値、算出した投入エネルギなどのデータ、および被溶接材の接合状態の良否判定の結果などをコンピュータ55に出力し記憶させる。
【0083】
この第2の実施の形態による評価方法では、通電を開始してから通電を終了するまでの間(たとえば10〜30サイクル)で早期(上記の例では8サイクルよりも前)のタイミングで、電極1、2の損耗などによる接合不良発生の可能性を予測することができる。なお、本発明は、上述した第1の実施の形態における評価方法と組み合わせて、すなわち、チリ発生時溶融開始タイミング(例えば5サイクル)と接合不良発生時溶融開始タイミング(例えば8サイクル)とを設定し、検知した溶融開始のタイミングがチリ発生時溶融開始タイミングよりも遅く、且つ、接合不良発生時溶融開始タイミングよりも早い場合に、良好なナゲット径が形成されると判断することもできる。そして、検知した溶融開始のタイミングがチリ発生時溶融開始タイミングよりも早いか、または、接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合には、まとめて、良好なナゲット径が形成されないと判断することもできる。
【0084】
次に、本発明の抵抗溶接機の制御方法の第2の実施の形態を、図1に示したように構成された抵抗溶接機を用いる場合により、その作動とともに主に図11〜図13に基づいて詳細に説明する。なお、上述した第1の実施の形態や、図6〜図10に基づいて説明した抵抗溶接の評価方法と同様または相当する部分については、同じ符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明することとする。
【0085】
上述した第1の実施の形態では、抵抗溶接の外乱として板隙の発生によるチリの発生を予測して、変更する溶接条件として電流値を低下させてチリの発生を防止するよう制御していたのに対して、この第2の実施の形態では、抵抗溶接の外乱として電極1、2の損耗や適切でない整形などにより、ジュール加熱による圧接部と溶融部の形成が遅れて被溶接材W1、W2の間に充分な径でナゲットを形成することができないことに起因する接合強度不足や所謂ハガレが発生しないように、制御するものである。
【0086】
抵抗溶接を行うに際して、被溶接材W1、W2を互いに重ね合わせた状態とし、電極1、2間に配置し、電極1、2を互いに近接させて挟持し、所定の力で加圧した状態で、電源装置3から電極1、2に予め設定された通常の値で電流の供給を開始し(図11のS1)、被溶接材Wの接合部分をジュール加熱し、このとき、被溶接材Wの溶融開始のタイミングを検知し(図11のS2)、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングと、予め設定された接合不良発生時溶融開始タイミングとを比較し(図11のS20)、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングが接合不良発生時溶融開始タイミングよりも早い場合(図11のS20でYESの場合)には、良好なナゲット径が形成されるものと予測し(図11のS21)、接合不良発生の可能性が無いと予測することは、上述した評価方法の第2の実施の形態(図6)と同様である。また、良好なナゲット径が形成されるものと予測された場合に(図11のS21)、溶融開始後の投入エネルギが諸定置以上であるかを判断すること(図11のS10)は、上述した制御方法の第1の実施の形態(図4)と同様である。さらに、検知された被溶接材Wの溶融開始のタイミングが接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合(図11のS20でNOの場合)には、通電開始から通電終了までの通電時間内に溶融開始があるかを判定し(図11のS22)、通電時間内に溶融開始がある場合(図11のS22でYESの場合)には、接合強度不足の可能性ありと予測し(図11のS23)、通電時間内に溶融開始がない場合(図11のS22でNOの場合)には、ハガレ発生の可能性ありと予測する(図11のS24)ことは、上述した評価方法の第2の実施の形態(図6)と同様である。
【0087】
図11において、溶融開始タイミングが接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅く(S20でNOの場合)、通電時間内に溶融を開始しない場合(S22でNOの場合)には、電流値を上昇させ(S25)、溶融を開始したかを判断し(S26)、溶融を開始しない場合(S26でNOの場合)には、必要に応じてその被溶接材Wの接合品質が不良であることを出力し、接合不良となった要因を調査して、抵抗溶接機の制御を終了する(S29)。一方、電流値を上昇させ(S25)、溶融を開始した場合(S26でYESの場合)には、溶融後の投入エネルギが所定値以上となるように通電時間を延長する(S27)。
【0088】
また、通電時間内に溶融を開始し(S22でYES)、接合強度不足の可能性ありと予測した場合(S23)には、その後に、溶融後の投入エネルギが所定値以上となるように通電時間を延長する(S27)。
【0089】
ここで、図12は、接合不良発生時溶融開始タイミングとして予め設定された通電開始から8サイクルよりも遅い11サイクルで溶融を開始したこと検知され、通電時間を延長したことを示したグラフである。これにより、ナゲットは、図13にその断面を顕微鏡写真で示すように、所定の大きさの径(例えば、ナゲット径=6.6mm)で形成される。
【0090】
そして、溶融を開始したいずれの場合でも、上述した制御方法の第1の実施の形態(図4)と同様に、溶融開始後の投入エネルギが所定値以上であるかを判断し(図11のS10)、抵抗溶接の制御を終了する(S29)。
【0091】
本発明の制御方法では、通電を開始してから通電を終了するまでの間(たとえば10〜30サイクル)で早期(上記の例では8サイクルよりも前)のタイミングで、電極1、2の損耗などによる接合不良発生の可能性を予測して、接合不良に対する対策をその被溶接材Wの接合が終了する前に講じることができる。なお、本発明は、上述した第1の実施の形態における制御方法と組み合わせて、すなわち、チリ発生時溶融開始タイミング(例えば5サイクル)と接合不良発生時溶融開始タイミング(例えば8サイクル)とを設定し、検知した溶融開始のタイミングがチリ発生時溶融開始タイミングよりも遅く、且つ、接合不良発生時溶融開始タイミングよりも早い場合に、良好なナゲット径が形成されると判断することもできる。そして、検知した溶融開始のタイミングがチリ発生時溶融開始タイミングよりも早い場合には溶接条件の変更として電流値を低下させたり加圧力を増加させ、また、接合不良発生時溶融開始タイミングよりも遅い場合には、溶接条件の変更として電流値を上昇させたり通電時間を延長させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、上述した実施の形態に限定されることはなく、溶融開始の検知を超音波や電極間に投入したエネルギを演算すること以外の手法により行う場合も含まれる。また、通電開始からの各種時点は、交流電流のサイクル数によることなく、絶対的な時間によって特定することもできる。なお、上述した実施の形態で示した数値は、本発明を説明する上で例示的に示したものであり、被溶接材の厚さや電流値、電圧値などの溶接条件に応じて変更することができる。
【符号の説明】
【0093】
W:被溶接材、 W1:1枚目の被溶接材、 W2:2枚目の被溶接材、 1、2:電極、 3:電源装置(電極に電流を供給する手段)、 4:制御装置、 5:被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段、 6:タイマ(検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較して、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて被溶接材の接合状態の良否を判定する手段、および、被溶接材の接合状態の判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更する手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接において、前記被溶接材の接合状態を評価するための方法であって、
前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知するステップと、
該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較するステップと、
両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するステップと
を備えることを特徴とする抵抗溶接の評価方法。
【請求項2】
被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機において、前記被溶接材を良好に接合させるよう制御するための方法であって、
前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知するステップと、
該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較するステップと、
両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定するステップと、
前記判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更するステップと
を備えることを特徴とする抵抗溶接機の制御方法。
【請求項3】
被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機において、前記被溶接材を良好に接合させるよう制御するための制御装置であって、
前記被溶接材の溶融開始のタイミングを検知する手段と、
該検知された被溶接材の溶融開始のタイミングと、予め定められた被溶接材の溶融開始のタイミングとを比較して、両タイミングの差が予め設定された範囲内であるか否かに基づいて前記被溶接材の接合状態の良否を判定する手段と、
前記判定で接合状態が良でない場合に溶接条件を変更する手段と
を備えていることを特徴とする抵抗溶接機の制御装置。
【請求項4】
被溶接材を加圧する電極と、該電極に電流を供給する手段とを備えており、前記被溶接材を電極で加圧して通電することによりジュール加熱して被溶接材を溶融させ接合する抵抗溶接機であって、
請求項3に記載の制御装置を設けたことを特徴とする抵抗溶接機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図8】
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【図10】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−22635(P2013−22635A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162171(P2011−162171)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)