説明

抵抗溶接方法及び抵抗溶接治具

【課題】抵抗溶接におけるガイドピンの寿命を長くする。
【解決手段】内筒43と主体金具42とを互いに接近する方向に加圧した状態で第1電極61と第2電極80との間に電圧を印加して端部42aとフランジ部43aとの接触面で抵抗溶接を行うにあたり、加圧によるせん断応力がガイドピン70に加わったときに、ガイドピン70がセラミックス製であるため、例えばフェノール樹脂製のガイドピンと比べて摩耗が起こりにくい。また、ガイドピン70の大径部72とガイドピン挿入孔65bとの間にクリアランスDが形成されていることでガイドピン70が径方向に揺動可能であるため、せん断応力の一部を揺動により吸収でき、揺動不可能なセラミックス製のガイドピンと比べてガイドピン70が折れにくい。したがって、抵抗溶接におけるガイドピン70の寿命を長くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接方法及び抵抗溶接治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの部材を溶接する方法として、2つの電極により部材同士を接触させて挟持し、加圧通電して接触面に流れる電流により溶接を行う抵抗溶接が知られている。例えば、特許文献1には、溶接対象となる2つの部材にそれぞれ段差部を設け、この段差部に加圧力を加えて抵抗溶接を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−337259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、円筒状の2つの部材の端部を接触させて同軸になるように抵抗溶接する場合、通電時に加圧される圧力により2つの部材の接触面にせん断応力がかかり、2つの部材の軸がずれてしまう場合がある。このような軸ずれを防止する方法としては、加圧通電時に2つの部材の同軸状態を保つために、2つの部材の中に円柱状のガイドピンを挿入することが考えられる。しかし、ガイドピンとして、例えばフェノール樹脂のようにセラミックスよりも柔らかい材質を用いた場合には、抵抗溶接を繰り返し行うことでせん断応力によりガイドピンが摩耗して直径が小さくなり、2つの部材の同軸状態を保てなくなるという問題が生じる。一方、摩耗を防ぐべく例えばセラミックスのように比較的硬い材質をガイドピンに用いた場合には、抵抗溶接を繰り返し行うことでせん断応力によりガイドピンが折れてしまうという問題が生じる。このため、抵抗溶接において、摩耗しにくく折れにくい、長寿命のガイドピンが望まれていた。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、抵抗溶接におけるガイドピンの寿命を長くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の抵抗溶接方法は、
筒状に形成された導電性の第1部材と第2部材との端部を突き合わせて同軸となるように溶接する抵抗溶接方法であって、
(a)挿入孔を有する第1電極と、円柱状であり該挿入孔に挿入可能なガイドピンとを用意する工程と、
(b)前記挿入孔内に前記ガイドピン及び前記第1部材を挿入して、該挿入孔,該第1部材,該ガイドピンが同軸になり、前記第1電極が該第1部材と接触し、該ガイドピンが該第1部材の筒内を貫通し、前記第1部材の溶接対象部分と前記ガイドピンの一部とが該挿入孔から飛び出すように該ガイドピンと該第1部材とを前記位置決めする工程と、
(c)前記第2部材の筒内に前記ガイドピンを挿入することで、前記第1部材の端部と該第2部材の端部とが接触し且つ該第1部材と該第2部材とが該同軸となり、該第2部材と前記第1電極とは接触しないように該第2部材を位置決めする工程と、
(d)第1電極とは接触せず且つ前記第2部材に接触するように第2電極を位置決めし、前記第1部材と前記第2部材とを互いに接近する方向に加圧した状態で、前記第1電極と該第2電極との間に電圧を印加することで前記第1部材と前記第2部材との接触面を通電して、該第1部材と該第2部材とを該接触面で溶接する工程と、
を含み、
前記ガイドピンは、セラミックス製であり、前記挿入孔に挿入された状態において、前記挿入孔の内周面と間にクリアランスが生じ、該クリアランスにより前記工程(d)の通電時において前記第1部材と前記第2部材との接触を保ったまま該ガイドピンの径方向に揺動可能である、
ものである。
【0008】
この抵抗溶接方法では、通電時の第1部材と第2部材とを互いに接近する方向に加圧する圧力によるせん断応力がガイドピンに加わったときに、ガイドピンがセラミックス製であるため、例えばフェノール樹脂製のガイドピンと比べて摩耗が起こりにくい。また、ガイドピンが径方向に揺動可能であるため、せん断応力の一部を揺動により吸収でき、揺動不可能なセラミックス製のガイドピンと比べてガイドピンが折れにくい。したがって、抵抗溶接におけるガイドピンの寿命を長くすることができる。
【0009】
本発明の抵抗溶接方法において、前記ガイドピンは、前記揺動可能な範囲として、前記工程(d)における前記第1部材の端部と前記第2部材の端部との接触面を含む該挿入孔の中心軸に垂直な仮想平面上で、前記クリアランスにより該中心軸と同軸の状態から径方向に0.1mm以上の揺動範囲を有してもよい。こうすれば、せん断応力を揺動により十分吸収できるため、ガイドピンが折れにくい効果が高まる。
【0010】
本発明の抵抗溶接方法において、前記ガイドピンは、前記第1部材及び前記第2部材内に挿入可能な径を有する柱状部と、該柱状部と同軸に連なり該柱状部よりも径の大きい大径部とを有し、前記第1電極は、前記挿入孔として、前記大径部を挿入可能な大径孔と該大径部よりも径が小さく前記柱状部よりも径が大きい小径孔とが同軸に連なった孔を有し、前記工程(b)では、前記ガイドピンの大径部が前記大径孔に挿入され、前記ガイドピンの柱状部が前記小径部を貫通して、前記挿入孔と該ガイドピンとが同軸になるように該ガイドピンを位置決めして、その後前記第1部材を前記小径孔に挿入し前記柱状部が前記第1部材の筒内を貫通するように位置決めし、前記工程(c)では、前記第2部材の筒内に前記ガイドピンの柱状部を挿入し、前記クリアランスは、前記ガイドピンが前記挿入孔に挿入された状態における前記大径孔の内周面と前記大径部との間のクリアランスであるものとしてもよい。こうすれば、抵抗溶接後の第1部材及び第2部材を第1電極及びガイドピンから抜き取る際に、ガイドピンの大径部が小径孔に引っかかりを生じるため、溶接後の第1部材及び第2部材のみを抜き取りやすい。
【0011】
上述したガイドピンが柱状部と大径部とを有する態様の抵抗溶接方法において、前記ガイドピンは、前記柱状部から前記大径部への外周面の立ち上がり部分が曲面になっていてもよい。こうすれば、せん断応力がガイドピンに加わったときに、力の集中しやすい立ち上がり部分が曲面であるため、ガイドピンが折れにくい。
【0012】
上述したガイドピンが柱状部と大径部とを有する態様の抵抗溶接方法において、前記第1電極は、前記大径孔として有底の孔を有し、前記工程(b)では、前記ガイドピンを前記挿入孔に挿入するにあたり、前記ガイドピンにおける前記大径部の前記柱状部側の段差面と前記挿入孔における前記小径孔の前記大径孔側の段差面との間に弾性体を挿入して、該弾性体の弾性力により前記ガイドピンの大径部が前記大径孔の底方向に押圧されるようにしてもよい。あるいは、上述したガイドピンが柱状部と大径部とを有する態様の抵抗溶接方法において、前記第1電極は、前記大径孔として有底の孔を有し、前記工程(b)では、前記ガイドピンを前記挿入孔に挿入するにあたり、前記ガイドピンにおける前記大径部の前記柱状部とは反対側の底面と前記大径孔の底面との間に弾性体を挿入して、該弾性体の弾性力により前記ガイドピンの大径部が前記挿入孔における前記小径孔の前記大径孔側の面としての段差面方向に押圧されるようにしてもよい。これらのようにすれば、ガイドピンが弾性体により押圧されることで、ガイドピンの位置決め後にガイドピンと挿入孔との中心軸がずれにくくなり、その後の小径孔への第1部材の挿入がしやすくなる。
【0013】
本発明の抵抗溶接治具は、
挿入孔を有する第1電極と、
第2電極と、
円柱状であり該挿入孔に挿入可能なガイドピンと、
を備え、
前記ガイドピンは、セラミックス製であり、前記挿入孔に挿入された状態において、前記挿入孔の内周面との間にクリアランスが生じ、該クリアランスにより該ガイドピンの径方向に揺動可能である、
ものである。
【0014】
この本発明の抵抗溶接治具は、ガイドピンがセラミックス製であり、径方向に揺動可能であるため、例えば上述した抵抗溶接方法に用いた場合のガイドピンの寿命を長くすることができる。なお、本発明の抵抗溶接治具は、上述した抵抗溶接方法におけるガイドピンや第1電極の種々の態様を採用したり、上述した抵抗溶接方法に用いる弾性体をさらに備えるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガスセンサー10の縦断面図である。
【図2】一次組立品141の製造プロセスを模式的に示す断面図である。
【図3】抵抗溶接治具60の構成の概略を示す説明図である。
【図4】主体金具42と内筒43とを抵抗溶接する様子を示す説明図である。
【図5】主体金具42と内筒43とを抵抗溶接する様子を示す説明図である。
【図6】せん断応力とガイドピン70の揺動についての説明図である。
【図7】変形例の抵抗溶接治具60を示す説明図である。
【図8】変形例の抵抗溶接治具60を示す説明図である。
【図9】実施例1〜4及び比較例1の抵抗溶接治具の寸法を示す説明図である。
【図10】主体金具42及び内筒43の寸法を示す説明図である。
【図11】揺動範囲と繰り返し回数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。まず、本発明の抵抗溶接方法を用いて製造する物の一例であるガスセンサー10の構成及びその製造方法について説明し、その後、本発明の抵抗溶接方法について説明する。
【0017】
図1はガスセンサー10の縦断面図である。図1に示すように、ガスセンサー10は、被測定ガスから所定のガス成分を測定するセンサー素子20と、センサー素子20の一方の端部を保護する保護カバー30と、センサー素子20と導通するコネクター50を含むセンサー組立体40とを備えている。このガスセンサー10は、例えば車両の排ガス管に取り付けられて被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO2等のガス成分を測定するために用いられる。なお、このようなガスセンサーは、例えば特開平10−318980に記載されている。
【0018】
センサー素子20は、細長な長尺の板状体形状の素子であり、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる例えば6枚のセラミックス基板を積層して形成されている。なお、センサー素子20の保護カバー30側の端部を先端と表記し、コネクター50側の端部を基端と表記する。このセンサー素子20の基端表面及び裏面には、センサー素子20に電圧を印加したり、センサー素子20が検出するガス成分の濃度に応じて生じる起電力又は電流を取り出したりするための図示しない電極が形成されている。この電極は、センサー素子20内部の電路を介してセンサー素子20の先端内の電極と導通している(図示せず)。
【0019】
保護カバー30は、図1に示すように、センサー素子20の先端の周囲を取り囲むように配置されている。この保護カバー30は、センサー素子20の先端を覆う内側保護カバー31と、この内側保護カバー31を覆う外側保護カバー32とを備えている。内側保護カバー31は、筒状に形成され、センサー素子20の先端に被測定ガスを導入するための内側保護カバー孔31aを備えている。外側保護カバー32は、有底筒状に形成され、側面に被測定ガスを導入するための外側保護カバー孔32aを備えている。内側保護カバー31,外側保護カバー32は、例えばステンレス鋼などの金属製である。
【0020】
センサー組立体40は、センサー素子20を封入固定する素子封止体41と、素子封止体41に取り付けられたナット47,外筒48と、センサー素子20の基端に接続されたコネクター50と、を備えている。素子封入体41は、センサー素子20を固定すると共に、センサー素子の先端側である保護カバー30内の空間と基端側である外筒48内の空間との間を封止するものである。この素子封入体41は、筒状の主体金具42と、主体金具42と同軸になるように端部で溶接固定された筒状の内筒43と、主体金具42及び内筒43の内側に封入されたセラミックスサポーター44a〜44c,セラミックス粉体45a,45b,メタルリング46と、を備えている。主体金具42は、図中の上端である端部42aと、下端である肉厚部42bとを有している。端部42aは内筒43と溶接されている。肉厚部42bは、セラミックスサポーター44aが図1の下側に飛び出さないようにこれを押さえている。内筒43は、主体金具42よりも厚さの薄い部材であり、主体金具42と溶接される側の端部にフランジ部43aを有し、反対側の端部には先端にいくほど内径が大きくなる拡管部43bを有している。また、内筒43には、セラミックス粉体45bを内筒43の中心軸方向に押圧するための絞り部43cと、メタルリング46を介してセラミックスサポーター44a〜44c,セラミックス粉体45a,45bを図1の下方向に押圧するための絞り部43dとが形成されている。内筒43のうちフランジ部43a,拡管部43b,絞り部43c,43d以外の部分の内径は、主体金具42のうち肉厚部42b以外の内径と略同一である。セラミックス粉体45aはセラミックスサポーター44a,44b間に充填され、セラミックス粉体45bはセラミックスサポーター44b,44c間に充填されている。なお、セラミックスサポーター44a〜44c,セラミックス粉体45a,45bはメタルリング46と主体金具42の肉厚部42bとに挟まれて封止されている。また、センサー素子20は主体金具42,内筒43の中心軸上に位置するとともにセラミックスサポーター44a〜44c,セラミックス粉体45a,45b内を貫通しており、これらによって固定されている。ナット47は、主体金具42と同軸に固定されており、雄ネジ部47aにより例えば車両の排ガス管に取り付け可能になっている。外筒48は、内筒43,センサー素子20,コネクター50の周囲を覆っており、コネクター50に接続されたリード線55が外部に引き出されている。このリード線55は、コネクター50を介してセンサー素子20の各電極と導通している。外筒48とリード線55との隙間はゴム栓57によって封止されている。
【0021】
続いて、ガスセンサー10の製造方法について説明する。まず、素子封止体41とセンサー素子20とからなる一次組立品141を製造する。図2は、一次組立品141の製造プロセスを模式的に示す断面図である。まず、主体金具42及び内筒43を用意する(図2(a))。なお、この時点では内筒43にはフランジ部43a及び拡管部43bは形成されているが、絞り部43c,43dは形成されていない。続いて、主体金具42の端部42aと内筒43のフランジ部43aとを付き合わせて、主体金具42と内筒43とが同軸となるように抵抗溶接を行って複合体142とする(図2(b))。これにより、主体金具42と内筒43とが端部42aとフランジ部43aとの接触面で溶接される。なお、この抵抗溶接については後述する。次に、センサー素子20をメタルリング46,セラミックスサポーター44c,セラミックス粉体45b,セラミックスサポーター44b,セラミックス粉体45a,セラミックスサポーター44a内にこの順序で貫通させて、これらを内筒43の拡管部43b側から複合体142の内部に挿入する(図2(c))。なお、メタルリング46,セラミックスサポーター44a〜44c,セラミックス粉体45a,45bには、センサー素子20を貫通させるために予め中心軸に沿って孔があけられた形状としておく。ここで、内筒43は拡管部43bにより端部が広がっているため、複合体142の内部への挿入がしやすくなっている。また、この挿入は治具により内筒43の外径を基準として内筒43の中心軸とセンサー素子20の中心軸とが一致するように行う。
【0022】
次に、メタルリング46と主体金具42とを互いに近づける方向に押圧してセラミックス粉体45a,45bを圧縮し、これにより主体金具42内及び内筒43内を封止する。そして、その状態で内筒43のうちメタルリング46よりも拡管部43b側を加締めて絞り部43dを形成する(図2(d))。これにより、メタルリング46と主体金具42の肉厚部42bとの間の押圧力が保たれる。続いて、内筒43のうちセラミックス粉体45bの側面に位置する部分を加締めて絞り部43cを形成する(図2(e))。これにより、主体金具42内及び内筒43内の封止やセンサー素子20の固定を確実にする。以上により、素子封止体41とセンサー素子20とからなる一次組立品141を得る。
【0023】
一次組立品141を製造すると、主体金具42に内側保護カバー31及び外側保護カバー32を溶接固定して保護カバー30を形成し、ナット47内に一次組立品141を挿入して主体金具42にナット47を取り付ける。そして、ゴム栓57内を通したリード線55と、これに接続されたコネクター50とを用意して、コネクター50をセンサー素子20の基端側に接続する。その後、外筒48を主体金具42に溶接固定して、図1のガスセンサー10を得る。
【0024】
続いて、本発明の抵抗溶接方法の実施の形態として、図2(b)で説明した主体金具42と内筒43との溶接について説明する。図3(a)は、この溶接に用いる抵抗溶接治具60の縦断面図であり、図3(b)は導電体62の上面図,図3(c)は導電体63の上面図である。図3(a)に示すように、抵抗溶接治具60は、第1電極61と、ガイドピ
ン70と、第2電極80とを備えている。
【0025】
第1電極61は、抵抗溶接時に内筒43を位置決めすると共に第2電極80との間で電圧が印加されるものであり、導電体62,63と、4本の固定ピン64(2本のみ図示)とを備えている。導電体62は、円筒状の部材であり、ガイドピン70を挿入するための貫通孔であるガイドピン挿入孔65aと、固定ピン64を挿入するための貫通孔である固定ピン挿入孔66aとが形成されている。導電体63は、円柱状の部材であり、ガイドピン70を挿入するための有底の孔であるガイドピン挿入孔65bと、固定ピン64を挿入するための有底の孔である固定ピン挿入孔66bとが形成されている。導電体62と導電体63とは、外径が同じであり、両者の外周円の中心軸が同軸になるように重ねて位置決めしたときに、ガイドピン挿入孔65a,65bが連通した孔が1つ形成され(以下、この孔をガイドピン挿入孔65と表記する)、4つの固定ピン66a,66bがそれぞれ連通した孔が4つ形成され(以下、この孔を固定ピン挿入孔66と表記する)るようになっている。固定ピン64は、この4つの固定ピン挿入孔66にそれぞれ挿入されることで、導電体62と導電体63とを図3(a)のように同軸で固定するための部材である。この図3(a)の状態では、導電体62の下面と導電体63の上面とは接して導通している。また、導電体62,63の中心軸と、ガイドピン挿入孔65a及びガイドピン挿入孔65bの中心軸は全て同軸に位置している。なお、ガイドピン挿入孔65aは、ガイドピン挿入孔65bよりも径が小さい。
【0026】
ガイドピン70は、例えば窒化珪素(Si34),ジルコニア(ZrO2),アルミナ(Al23)からなるセラミックス製の部材であり、主体金具42と内筒43との同軸状態を保つための円柱状の部材である。このガイドピン70は、柱状部71と、柱状部71と同軸に連なり柱状部71よりも径の大きい大径部72とを有している。柱状部71は、先端部71aと、小径部71bと、中径部71cとを有している。先端部71aは、端面(図3(a)におけるガイドピン70の上面)に近づくほど径が小さくなっている。小径部71b及び中径部71cの径は、ガイドピン挿入孔65aの径よりも小さく、ガスセンサー10の内筒43の内径以下の大きさである。中径部71cは、小径部71bよりも径が大きく、大径部72よりも径が小さい。また、中径部71cから大径部72への外周面の立ち上がり部73は曲面であり、滑らかに立ち上がる形状になっている。大径部72は、ガイドピン挿入孔65aよりも径が大きく、ガイドピン挿入孔65bよりも径が小さい。このガイドピン70は、図3(a)に示すように、ガイドピン挿入孔65内に挿入され、ガイドピン挿入孔65と中心軸が一致するように位置決めされた状態で抵抗溶接に用いられる。この位置決めされた状態では、柱状部71がガイドピン挿入孔65aを貫通し、大径部72がガイドピン挿入孔65bに挿入された状態となる。このとき、大径部72は、ガイドピン挿入孔65bよりも径が小さいため、これにより大径部72とガイドピン挿入孔65bの内周面との間には両者の半径の差の分だけクリアランスDが生じる。このクリアランスDが生じることで、ガイドピン70は、ガイドピン挿入孔65に挿入されていても完全には固定されず、ガイドピン70の径方向に揺動可能となっている。この揺動については後述する。
【0027】
第2電極80は、抵抗溶接時に主体金具42を位置決めすると共に第1電極61との間で電圧が印加されるものであり、主体金具42を挿入して位置決めするための凹部81を有している。この第2電極80も、抵抗溶接時には図3(a)に示すように中心軸を第1電極61及びガイドピン70と一致させた状態で使用される。
【0028】
この抵抗溶接治具60を用いて主体金具42と内筒43とを抵抗溶接する様子を図4,5を用いて説明する。まず、抵抗溶接治具60のうち第1電極61である導電体62,63,固定ピン64と、ガイドピン70とを用意して(図4(a))、これらを組み付けて位置決めする(図4(b))。組み付けは以下のように行う。まず、導電体63のガイドピン挿入孔65bにガイドピン70の大径部72を挿入する。続いて、ガイドピンの柱状部71が導電体62のガイドピン挿入孔65aを貫通するように導電体62と導電体63とを重ね合わせ、導電体62,63,ガイドピン70が同軸になるように位置決めする。そして、4つの固定ピン挿入孔66にそれぞれ固定ピン64を挿入して、導電体62,63を同軸の状態で固定する。なお、図4(b)に示した組み付け後の第1電極61,ガイドピン70の状態は、図3(a)で示した状態と同じである。
【0029】
続いて、フランジ部43aを上にして内筒43をガイドピン挿入孔65aに挿入する(図5(a))。これにより、ガイドピン70の柱状部71が内筒43を貫通してガイドピン挿入孔65a,ガイドピン70,内筒43が同軸になる。また、内筒43のうち溶接対象部分となるフランジ部43aは、外径がガイドピン挿入孔65aの径よりも大きいため、ガイドピン挿入孔65aから飛び出した状態となり、フランジ部43aの下面と導電体62の上面とが接触する。また、ガイドピン70の柱状部71のうち先端部71aと小径部71bの一部とが内筒43のフランジ部43aよりも上側に飛び出した状態になる。
【0030】
次に、肉厚部42bを上にした状態で主体金具42内にガイドピン70の柱状部71を挿入する(図5(b))。これにより、主体金具42の端部42aと内筒43のフランジ部43aとが接触し、主体金具42と内筒43とがガイドピン70によって同軸に位置決めされる。なお、図示するように主体金具42はガイドピン挿入孔65aから飛び出したフランジ部43aと接しているため、主体金具42と第1電極61とは接触しない。
【0031】
そして、第2電極80の凹部81に主体金具42の肉厚部42b側の端部を挿入する(図5(c))。これにより、第2電極80と主体金具42とが同軸に接触するように位置決めされる。なお、図示するように第2電極80は主体金具42の肉厚部42b側と接触しており、第2電極80と内筒43,第1電極61とは接触しない。そして、第1電極61と第2電極80とを中心軸方向に加圧して、主体金具42と内筒43とが互いに接近する方向に加圧し、加圧した状態で第1電極61と第2電極80との間に電圧を印加する。図示するように、第1電極61と第2電極80との間には第1電極61,内筒43,主体金具42,第2電極80の順に電路が形成されている。そのため、第1電極61と第2電極80との間の電圧によって、内筒43のフランジ部43aと主体金具42の端部42aとの接触面を電流が流れる。この電流によりフランジ部43aと主体金具42の端部42aとの接触面が溶接されて、主体金具42と内筒43とが溶接される。これにより、図2(b)で説明した複合体142が得られる。なお、溶接が完了したら、加圧及び通電を停止して、電極80を取り外したあと複合体142を上方向に抜き取る。また、続けて別の内筒43と主体金具42との溶接を行う場合には、既に抵抗溶接治具60は図4(b)の組み付け状態になっているため、図5(a)に示した内筒43の挿入から行えばよい。
【0032】
ここで、この抵抗溶接時(加圧通電時)に主体金具42と内筒43との接触面に生じるせん断応力とガイドピン70の揺動について図6を用いて説明する。主体金具42と内筒43とを互いに接近する方向に加圧すると、この圧力により主体金具42と内筒43との接触面にせん断応力が生じる。すなわち、端部42aとフランジ部43aとの接触面を含みガイドピン挿入孔65の中心軸に垂直な仮想平面90を考えたとき、この仮想平面90の面に沿ったいずれかの方向にせん断応力が生じる。これによりガイドピン70の外周面のうち仮想平面90と交差する部分にこのせん断応力が加わる。ここで、上述したように、ガイドピン70の大径部72とガイドピン挿入孔65bの内周面との間にはクリアランスDが生じているため、このせん断応力が加わるとガイドピン70は揺動する。例えば、図6において仮想平面90の沿って右方向にせん断応力が生じたとすると、ガイドピン70はガイドピン挿入孔65aの中心軸と同軸な状態(図6の破線)から、右方向に揺動する(図6の一点鎖線)。これにより、クリアランスDがなくガイドピン70がガイドピン挿入孔65内に固定されている場合と比べて、ガイドピン70が揺動することでせん断応力の一部を吸収でき、ガイドピン70が折れにくくなる。なお、ガイドピン70が揺動しても、ガイドピン70が主体金具42と内筒43とを貫通しており、主体金具42と内筒43とが互いに接近する方向に加圧されているため、主体金具42と内筒43との接触は保たれる。
【0033】
なお、図6に示すようにガイドピン70がガイドピン挿入孔65aの中心軸と同軸な状態から、仮想平面90上で揺動により移動した距離として移動距離Lを考えたとき、揺動可能な範囲である揺動範囲は移動距離Lの最大値Lmaxとなる。最大値Lmaxは、値0より大きければせん断応力の一部を吸収する効果が得られる。また、最大値Lmaxは好ましくは0.1mm以上である。この最大値Lmaxはガイドピン70,ガイドピン挿入孔65,内筒43の形状によって定まる。例えば、最大値Lmaxは、クリアランスDの値が大きいほど大きくなる傾向にあるが、仮想平面90上で内筒43及びガイドピン挿入孔65aの内周面によってガイドピン70の揺動範囲が規制されるため、クリアランスDを大きくしただけでは最大値Lmaxはいずれ頭打ちとなる。なお、本実施形態では、内筒43には拡管部43bが形成されているため、内筒43がガイドピン挿入孔65aと同軸に位置決めされた状態では、図6に示すように内筒43のうちフランジ部43a及び拡管部43b以外の側面とガイドピン挿入孔65aとの間は距離Mだけ離れている。しかし、ガイドピン70の揺動により内筒43が中心軸から径方向に押されると、内筒43もガイドピン70と同様に揺動して傾いた状態になる。これにより、内筒43の中心軸がガイドピン挿入孔65aの中心軸からずれて距離Mは小さくなる(押された方向と反対側では距離Mは大きくなる)。そのため、ガイドピン70は、距離Mが値0となるまで内筒43の軸をずらした状態で、それ以上は径方向に移動できなくなる。したがって、クリアランスDが十分大きい場合には、このときのガイドピン70の位置が移動距離Lの最大値Lmaxとなる。クリアランスDが小さい場合には、このように距離Mが値0となる前に例えばガイドピン70の大径部72がガイドピン挿入孔65bの内周面にぶつかって、揺動範囲が規制されることになる。なお、上記のように内筒43の中心軸がガイドピン挿入孔65aの中心軸からずれたとしても、ガイドピン70により内筒43と主体金具42とは同軸に保たれる。このガイドピン70により同軸を保つ効果は、ガイドピンの小径部71bの径が内筒43及び主体金具42の内径に近いほど大きくなる。
【0034】
以上詳述したように、本実施形態の抵抗溶接方法によれば、通電時の内筒43と主体金具42とを互いに接近する方向に加圧する圧力によるせん断応力がガイドピン70に加わったときに、ガイドピン70がセラミックス製であるため、例えばフェノール樹脂製のガイドピンと比べて摩耗が起こりにくい。また、ガイドピン70が径方向に揺動可能であるため、せん断応力の一部を揺動により吸収でき、揺動不可能なセラミックス製のガイドピンと比べてガイドピン70が折れにくい。したがって、抵抗溶接におけるガイドピン70の寿命を長くすることができる。
【0035】
また、ガイドピン70の大径部72は、ガイドピン挿入孔65aよりも径が大きいため、抵抗溶接後に複合体142を第1電極61及びガイドピン70から引き抜くときに、大径部72がガイドピン挿入孔65aに引っかかりを生じ、複合体142を抜き取りやすい。
【0036】
さらに、ガイドピン70は、柱状部71から大径部72への外周面の立ち上がり部73が曲面になっている。このため、せん断応力がガイドピン70に加わったときに、力の集中しやすい立ち上がり部73が曲面であるため、ガイドピン70が折れにくい。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることは言うまでもない。
【0038】
例えば、図7に示すように、抵抗溶接治具60がさらに弾性体91を備えるものとしてもよい。この弾性体91は樹脂製のOリングであり、中径部71cが弾性体91を貫通してガイドピン70の中心軸と同軸になるよう位置決めされている。これにより、弾性体91は、大径部72の中径部71c側の段差面72aと、ガイドピン挿入孔65aとガイドピン挿入孔65bとの段差面62aとの間に挿入された状態となっている。このため、この弾性体91の弾性力によって大径部72がガイドピン挿入孔65bの底方向に押圧される。この弾性体91により、ガイドピン70の位置決め後にガイドピン70の中心軸がずれにくくなり、ガイドピン70の中心軸がずれて内筒43をガイドピン挿入孔65aに挿入しにくくなるということが防止される。すなわち、内筒43が挿入しやすくなる。弾性体91は、Oリングに限らず、他の形状であってもよいし、樹脂製に限らずコイルバネやU字バネなどの金属製のものでもよい。
【0039】
また、図8に示すように、抵抗溶接治具60がさらに弾性体92を備えるものとしてもよい。この弾性体92は、金属製のコイルバネであり、大径部72の底面とガイドピン挿入孔65bの底面との間に挿入されている。このため、この弾性体92の弾性力によってガイドピン70が押し上げられ、ガイドピン70の大径部72の上面が導電体62の底面に押圧される。これにより、図7の場合と同様に位置決め後にガイドピン70の中心軸がずれにくくなり、内筒43が挿入しやすくなる。弾性体92は、例えばU字バネなど他の形状であってもよいし、樹脂製の弾性体であってもよい。なお、図7の弾性体91と図8の弾性体92とを共に備えるものとしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、第1電極61及びガイドピン70は図3に示した形状であるものとしたが、抵抗溶接時においてガイドピンとガイドピン挿入孔との間にクリアランスが生じ、このクリアランスによりガイドピンが径方向に揺動可能であれば、他の形状であってもよい。例えば、ガイドピン挿入孔65aとガイドピン挿入孔bとが同じ径であってもよい。また、第1電極61は導電体62,63,固定ピン64からなるものとしたが、これらが一体となった1つの部材であってもよい。この場合、ガイドピン挿入孔65が底部を有さない貫通孔であるものとして、ガイドピン70を径の大きいガイドピン挿入口65b側(図3における下側)から挿入可能としてもよい。この場合でも、例えば第1電極とガイドピンの底部を支持する部材を用いて、抵抗溶接時にはこの部材と第2電極との間で加圧を行えばよい。さらに、ガイドピン挿入孔65の底部を開閉可能として、ガイドピンを底部側から挿入してから底部を閉じるてガイドピンを支持するものとしてもよい。他にも、例えばガイドピンは先端部71a,小径部71b,中径部71cからなる柱状部71と大径部72とからなるものとしたが、中径部71cを備えない(すなわち中径部71cに相当する部分の径が小径部71bの径と同じ)ものとしてもよいし、大径部72を備えない(すなわち大径部72に相当する部分の径が小径部71b又は中径部71cの径と同じ)ものとしてもよい。また、立ち上がり部73が曲面でなく、垂直に立ち上がる形状であってもよい。
【0041】
上述した実施形態では、抵抗溶接時の内筒43の形状は図2に示したものとしたが、これに限られない。例えば、拡管部43bを備えず、内筒43の先端部と胴部(フランジ部43a以外の部分)とで内径が同じであるものとしてもよい。この場合、内筒43の胴部の外径はガイドピン挿入孔65aの径以下であればよい。例えば、内筒43の胴部の外径とガイドピン挿入孔65aの径とを同じとし、図6に示した距離Mが常に値0となっていてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、固定ピン64を固定ピン挿入孔66に挿入することで導電体62と導電体63とを同軸で固定するものとしたが、他の方法で固定してもよい。例えば、固定ピン挿入孔66bが雌ネジで固定ピン64が雄ネジとなっており、これらを螺合することで導電体62と導電体63とを固定するものとしてもよい。
【実施例】
【0043】
[実施例1〜5,比較例1]
寸法の異なる実施例1〜5の抵抗溶接治具60及び比較例1の抵抗溶接治具を用意した。これらの抵抗溶接治具のうち、共通する寸法を図9に示し、異なる部分の寸法を表1に示す。なお、比較例1の抵抗溶接治具は、大径部72とガイドピン挿入孔65aとが同径である点以外は実施例1と同じ寸法である。また、実施例1〜5,比較例1のガイドピンはいずれも窒化珪素(Si34)からなるセラミックス製とした。
【0044】
【表1】

【0045】
[評価試験1]
図2に示した主体金具42及び内筒43を用意し、これらを抵抗溶接治具に挿入した状態で、実施例1〜5,比較例1の抵抗溶接治具の揺動範囲(図6で説明した最大値Lmax)を測定したところ、表1のようであった。なお、比較例1は上述したように大径部72とガイドピン挿入孔65aとが同径であるため、揺動範囲は値0mmとなっている。主体金具42及び内筒43の寸法を図10に示す。続いて、実施例1〜5及び比較例1の抵抗溶接治具を用いて、図10の寸法の主体金具42と内筒43との抵抗溶接を繰り返し行い、ガイドピン70が折れるまでの繰り返し回数を測定した。実施例1〜5及び比較例1の揺動範囲と繰り返し回数との関係を図11に示す。
【0046】
図11からわかるように、揺動範囲が値0mmである比較例1と比べると、揺動範囲が値0mmより大きい実施例1〜5は、いずれもガイドピン70が折れるまでの繰り返し回数が大きくなっており、ガイドピン70が折れにくいことがわかる。また、実施例2〜5のように揺動範囲が値0.1mm以上の領域では繰り返し回数が30万回以上となり、より好ましい結果が得られた。
【0047】
[比較例2]
ガイドピンをフェノール樹脂製とした点以外は、実施例2と同じ抵抗溶接治具を用意し、比較例2とした。
【0048】
[評価試験2]
実施例2及び比較例2の抵抗溶接治具について、図10に示す寸法の主体金具42と内筒43との抵抗溶接を繰り返し行い、ガイドピン70の小径部71bの径の摩耗による変化を測定した。その結果、比較例1では、4000回繰り返した時点で小径部71bの径が0.1mm以上小さくなり摩耗したのに対し、実施例2では、3万回繰り返しても摩耗はみられなかった。なお、ガイドピン70が摩耗すると、主体金具42と内筒43との溶接時の軸ずれが起きやすくなる。そのため、複合体142を製造する際の歩留まりが低下する。また軸がずれている複合体142を用いると、図2(c)における複合体142にセンサー素子20やメタルリング46,セラミックスサポーター44a〜44c,セラミックス粉体45a,45bを挿入する際や、図2(e)において加締める際にセンサー素子20が折れる場合がある。
【符号の説明】
【0049】
10 ガスセンサー、20 センサー素子、30 保護カバー、31 内側保護カバー、31a内側保護カバー孔、32 外側保護カバー、32a 外側保護カバー孔、40 センサー組立体、41 素子封止体、42 主体金具、42a 端部、42b 肉厚部、43 内筒、43a フランジ部、43b 拡管部、43c,43d 絞り部、44a〜44c セラミックスサポーター、45a,45b セラミックス粉体、46 メタルリング、47 ナット、47a 雄ネジ部、48 外筒、50 コネクター、55 リード線、57 ゴム栓、60 抵抗溶接治具、61 第1電極、62,63 導電体、64 固定ピン、65,65a,65b ガイドピン挿入孔、66,66a,66b 固定ピン挿入孔、70 ガイドピン、71 柱状部、71a 先端部、71b 小径部、71c 中径部、72 大径部、73 立ち上がり部、80 第2電極、81 凹部、91,92 弾性体、141 一次組立品、142 複合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された導電性の第1部材と第2部材との端部を突き合わせて同軸となるように溶接する抵抗溶接方法であって、
(a)挿入孔を有する第1電極と、円柱状であり該挿入孔に挿入可能なガイドピンとを用意する工程と、
(b)前記挿入孔内に前記ガイドピン及び前記第1部材を挿入して、該挿入孔,該第1部材,該ガイドピンが同軸になり、前記第1電極が該第1部材と接触し、該ガイドピンが該第1部材の筒内を貫通し、前記第1部材の溶接対象部分と前記ガイドピンの一部とが該挿入孔から飛び出すように該ガイドピンと該第1部材とを前記位置決めする工程と、
(c)前記第2部材の筒内に前記ガイドピンを挿入することで、前記第1部材の端部と該第2部材の端部とが接触し且つ該第1部材と該第2部材とが該同軸となり、該第2部材と前記第1電極とは接触しないように該第2部材を位置決めする工程と、
(d)第1電極とは接触せず且つ前記第2部材に接触するように第2電極を位置決めし、前記第1部材と前記第2部材とを互いに接近する方向に加圧した状態で、前記第1電極と該第2電極との間に電圧を印加することで前記第1部材と前記第2部材との接触面を通電して、該第1部材と該第2部材とを該接触面で溶接する工程と、
を含み、
前記ガイドピンは、セラミックス製であり、前記挿入孔に挿入された状態において、前記挿入孔の内周面と間にクリアランスが生じ、該クリアランスにより前記工程(d)の通電時において前記第1部材と前記第2部材との接触を保ったまま該ガイドピンの径方向に揺動可能である、
抵抗溶接方法。
【請求項2】
前記ガイドピンは、前記揺動可能な範囲として、前記工程(d)における前記第1部材の端部と前記第2部材の端部との接触面を含む該挿入孔の中心軸に垂直な仮想平面上で、前記クリアランスにより該中心軸と同軸の状態から径方向に0.1mm以上の揺動範囲を有する、
請求項1に記載の抵抗溶接方法。
【請求項3】
前記ガイドピンは、前記第1部材及び前記第2部材内に挿入可能な径を有する柱状部と、該柱状部と同軸に連なり該柱状部よりも径の大きい大径部とを有し、
前記第1電極は、前記挿入孔として、前記大径部を挿入可能な大径孔と該大径部よりも径が小さく前記柱状部よりも径が大きい小径孔とが同軸に連なった孔を有し、
前記工程(b)では、前記ガイドピンの大径部が前記大径孔に挿入され、前記ガイドピンの柱状部が前記小径孔を貫通して、前記挿入孔と該ガイドピンとが同軸になるように該ガイドピンを位置決めして、その後前記第1部材を前記小径孔に挿入し前記柱状部が前記第1部材の筒内を貫通するように位置決めし、
前記工程(c)では、前記第2部材の筒内に前記ガイドピンの柱状部を挿入し、
前記クリアランスは、前記ガイドピンが前記挿入孔に挿入された状態における前記大径孔の内周面と前記大径部との間のクリアランスである、
請求項1又は2に記載の抵抗溶接方法。
【請求項4】
前記ガイドピンは、前記柱状部から前記大径部への外周面の立ち上がり部分が曲面になっている、
請求項3に記載の抵抗溶接方法。
【請求項5】
前記第1電極は、前記大径孔として有底の孔を有し、
前記工程(b)では、前記ガイドピンを前記挿入孔に挿入するにあたり、前記ガイドピンにおける前記大径部の前記柱状部側の段差面と前記挿入孔における前記小径孔の前記大径孔側の段差面との間に弾性体を挿入して、該弾性体の弾性力により前記ガイドピンの大径部が前記大径孔の底方向に押圧されるようにする、
請求項3又は4に記載の抵抗溶接方法。
【請求項6】
前記第1電極は、前記大径孔として有底の孔を有し、
前記工程(b)では、前記ガイドピンを前記挿入孔に挿入するにあたり、前記ガイドピンにおける前記大径部の前記柱状部とは反対側の底面と前記大径孔の底面との間に弾性体を挿入して、該弾性体の弾性力により前記ガイドピンの大径部が前記挿入孔における前記小径孔の前記大径孔側の面としての段差面方向に押圧されるようにする、
請求項3又は4に記載の抵抗溶接方法。
【請求項7】
挿入孔を有する第1電極と、
第2電極と、
円柱状であり該挿入孔に挿入可能なガイドピンと、
を備え、
前記ガイドピンは、セラミックス製であり、前記挿入孔に挿入された状態において、前記挿入孔の内周面との間にクリアランスが生じ、該クリアランスにより該ガイドピンの径方向に揺動可能である、
抵抗溶接治具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−210637(P2012−210637A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76381(P2011−76381)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】