説明

押釦スイッチ

【課題】モードの変化と操作感覚とが結び付き易く、遊戯性を向上させることのできる押釦スイッチを提供する
【解決手段】押釦1と、押釦1の変位量に比例した信号を作成する信号処理回路部6と、押釦1が押操作される向きと逆向きに押釦1を付勢する第1のコイルばね7及び第2のコイルばね8と、第2のコイルばね8を押釦1が押操作される向きに一定量縮んだ状態で保持するホルダ9及びリブ21Bとを備え、第2のコイルばね8を、押釦1が第1のコイルばね7を押圧した状態で一定量変位した後に押釦1に押圧される位置に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ台やゲーム機などの遊戯装置の操作スイッチに好適な押釦スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、遊戯装置の操作スイッチは、遊戯中(ゲームのプレイ中)に頻繁に且つ過度の力で操作されるため、耐久性の観点から、機械的な接点を持たない非接触式の押釦スイッチが用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の光学式押しボタンスイッチ(押釦スイッチ)は、弾性手段により自動復帰する押しボタン作動部と、押しボタン作動部の移動経路に沿って設けられた光量検出センサーとを備えている。また、押しボタン作動部には、移動方向に指向して形成され移動状態に応じて透過光又は反射光の光量を変化させる光量変化手段を備えている。このため、当該従来例では、押しボタン作動部を押したときの深さを光量の変化として検出できるので、押しボタン作動部の押し加減を連続的に検出することができ、押しボタン作動部の押し加減でプレイ状態(モード)を変化させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−176237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、押しボタン作動部に対する荷重が押しボタン作動部の変位量に常に比例しているため、利用者にとって押しボタン作動部を操作する感覚が一定である。このため、仮に押しボタン作動部の変位量に応じてモードを変化させたとしても、モードの変化の前後で押しボタン作動部の操作感覚が変化しないため、利用者にとってモードの変化と操作感覚とが結び付き難く、遊戯性に乏しいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、モードの変化と操作感覚とが結び付き易く、遊戯性を向上させることのできる押釦スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の押釦スイッチは、押釦と、前記押釦の変位量に比例した信号を作成する信号処理回路部と、前記押釦が押操作される向きと逆向きに前記押釦を付勢する第1のばね及び第2のばねと、前記第2のばねを前記押釦が押操作される向きに一定量縮んだ状態で保持する保持手段とを備え、前記第2のばねは、前記押釦が前記第1のばねを押圧した状態で一定量変位した後に前記押釦に押圧される位置に配設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、モードの変化と操作感覚とが結び付き易く、遊戯性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る押釦スイッチの実施形態を示す断面図である。
【図2】同上の押釦スイッチの外観を示す図で、(a)は全体斜視図で、(b)は上面図で、(c)は側面図で、(d)はカバーを外した状態の下面図である。
【図3】同上の押釦スイッチの分解斜視図である。
【図4】同上の押釦スイッチの動作状態を示す図で、(a)はモードが変化する手前まで押釦を押し込んだ状態の断面図で、(b)はモードの変化後の断面図である。
【図5】同上の押釦スイッチの動作説明図で、(a)は押釦の変位量と出力電圧との相関図で、(b)は押釦に対する荷重と押釦の変位量との相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る押釦スイッチの実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、図1における上下を上下方向と定めるものとする。本実施形態は、図1に示すように、押釦1と、ボディ2と、カバー3と、センシング部4と、移動体ブロック5と、信号処理回路部6と、第1のコイルばね7(第1のばね)と、第2のコイルばね8(第2のばね)と、ホルダ9とを備える。
【0011】
押釦1は、図1,図2(a)〜(d)に示すように、円盤形状の合成樹脂成形体から成り、その中央部上面には、下向きに窪んだ平面視円形状の凹所10が設けられている。凹所10の中心には、固定ねじ12が挿入されるねじ挿入孔11が上下方向に貫通して設けられている。
【0012】
ボディ2は、図1,図2(a)〜(d)に示すように、下面が開口した扁平な直方体形状のベース20と、ベース20の上面中心部より上向きに突出し且つベース20よりも径寸法の小さい円筒形状の本体部21とが、合成樹脂成形体として一体に形成されて成る。ベース20の内底面には、図1,図2(d)に示すように、周方向に沿って4つの突起20Aが下向きに突設されている。本体部21の上面には、円形状の孔21Aが設けられており、当該孔21Aには、後述する移動体ブロック5の連結部51が上下方向に移動自在に配設される。
【0013】
ベース20の図2(b)における左右両側面には、それぞれベース20から外向きに突出する3本の梁22が一体に形成されており、これら梁22によって扁平な円筒形状の取付部23が支持されている。したがって、これら取付部23を例えばパチンコ台等の外部装置にねじ止めすることで、本実施形態を外部装置に取り付けることができるようになっている。
【0014】
カバー3は、図1,3に示すように、矩形板状の合成樹脂成形体から成り、ベース20の下面開口を塞ぐようにボディ2に取り付けられる。なお、ボディ2とカバー3とは、接着又は溶着等の適宜の方法で互いに固定される。
【0015】
センシング部4は、図1に示すように、円盤形状のフランジ40と、フランジ40の上面中心部より上向きに突出して設けられたコイルボビン41とが合成樹脂成形体として一体に形成されて成る。フランジ40の下面には、図1,図2(d)に示すように、下向きに突出する4つの支持部40Bが設けられており、これら支持部40Bによって後述する信号処理回路部6のプリント配線板60が支持されている。また、フランジ40の下面には、図1,図2(d)に示すように、突起20Aが挿入される円形状の4つの貫通孔40Aが周方向に沿って設けられている。コイルボビン41は、図1に示すように、円筒形状の巻胴部41Aと、巻胴部41Aの上下両端にそれぞれ設けられた上鍔部41B並びに下鍔部41Cとを有している。そして、図1に示すように、巻胴部41Aの外周面に巻線が巻き回されることによって検出コイル42が形成されている。
【0016】
移動体ブロック5は、図1,3に示すように、下面が開口した扁平な有底円筒形状の主部50と、下面が開口するとともに主部50の軸方向一端側より突出する有底円筒形状の連結部51とが合成樹脂成形体として一体に形成されて成る。連結部51の内側には、導電性を有する金属材料から成る円筒形状の移動体52が設けられている。また、主部50の上部内底面には、第1のコイルばね7の上端部が嵌め込まれる平面視円形状の突壁50Aが下向きに突出する形で一体に形成されている。なお、連結部51の上底部には、固定ねじ12がねじ止めされるねじ孔51Aが設けられている。
【0017】
主部50は、本体部21の内径寸法よりも小さい径寸法から成り、その外周面には、それぞれ本体部21の内壁に向かって突出するとともに、下向きに突出する4つの突部50Bが周方向に亘って等間隔に設けられている。これら突部50Bは、その先端部が本体部21の内壁に設けられている案内溝(図示せず)に嵌り込むようになっている。したがって、これら突部50Bが案内溝をスライド自在に案内されることにより、本体部21内部において主部50が上下方向に移動自在に配設される。
【0018】
信号処理回路部6は、図2(d)に示すように円盤形状のプリント配線板60を有し、信号処理回路を構成する種々の電子部品(図示せず)がプリント配線板60に実装されている。信号処理回路は、例えば定電流回路から出力される定電流と、検出コイル42のインピーダンスにより決まる検出コイル42の両端電圧のピーク値に応じて、後述する移動体52と検出コイル42との距離情報を示す信号を作成する。あるいは、信号処理回路は、発振回路から基準周波数(検出コイル42のインダクタンスに対応した周波数)の発振信号を検出コイル42に印加し、移動体52と検出コイル42との距離に応じて変化する検出コイル42のインダクタンスに基づいた信号を作成する。
【0019】
第1のコイルばね7は、下端部がコイルボビン41の下鍔部41Cに固定されるとともに、上端部が主部50の突壁50Aに固定されることで、圧縮された状態で本体部21の内部に収納される。したがって、第1のコイルばね7は、その弾性力により移動体ブロック5を上向きに弾性付勢するため、押釦1が押操作される向きと逆向き(上向き)に移動体52を付勢する。なお、押釦1が押操作されていない状態では、主部50の上端面が本体部21の上部内底面に接触する位置(基準位置)で静止している。この基準位置においては検出コイル42が移動体52の外に位置しており、検出コイル42と移動体52との間の距離が最も大きくなっている。ここで、検出コイル42と移動体52との間の距離とは、例えば、移動体52の上端から検出コイル42の下端までの距離を示す。
【0020】
第2のコイルばね8は、第1のコイルばね7よりも大きい径寸法から成り、そのばね定数も第1のコイルばね7のばね定数よりも大きくなっている。そして、第2のコイルばね8は、下端部がフランジ40に固定されるとともに、上端部が後述するホルダ9の凹部90Bの上面内底部に固定される。
【0021】
ホルダ9は、合成樹脂成形体から成り、図1に示すように、径寸法の異なる2つの円筒部材の上端を互いに連結することで一体に形成して成る筒部90と、筒部90の下端部から外向きに突出する円環形状のフランジ部91とから構成される。筒部90の外径寸法は、移動体ブロック5の主部50の内径寸法よりも小さくなっている。このため、移動体ブロック5が下向きに移動すると、主部50の内側に筒部90が入り込むようになっている。筒部90における内側の円筒部材の孔は、コイルボビン41及び第1のコイルばね7を通すための通孔90Aとなっている。また、筒部90の外側の円筒部材と内側の円筒部材との間には凹部90Bが設けられており、当該凹部90Bに第2のコイルばね8の上端部が嵌り込むようになっている。
【0022】
フランジ部91は、本体部21の内径寸法とほぼ同一の径寸法から成る。ここで、本体部21の内壁には、図1に示すように、内向きに突出する複数(図示せず)のリブ21Bが周方向に沿って一体に形成されている。したがって、これらリブ21Bの下端部がフランジ部91の上面に当接することで、ホルダ9の上向きの移動を規制している。なお、フランジ部91には、図3に示すように、周方向に亘って等間隔に4つの切り欠き91Aが設けられており、移動体ブロック5の突部50Bが嵌り込むようになっている。
【0023】
ここで、ホルダ9はリブ21Bによって上向きの移動が規制されていることから、第2のコイルばね8は圧縮した状態で本体部21内部に収納される。すなわち、リブ21B及びホルダ9が、第2のコイルばね8を押釦1が押操作される向き(下向き)に一定量縮んだ状態で保持する保持手段を構成している。したがって、第2のコイルばね8は、その弾性力によりホルダ9を上向きに弾性付勢する。
【0024】
本実施形態は以下のような手順で組み立てられる。先ず、センシング部4のフランジ40下面から突出する各支持部40Bに信号処理回路部6を支持固定させた後に、コイルボビン41を囲むようにして第1のコイルばね7を配設する。更に、第1のコイルばね7を囲むようにして第2のコイルばね8を配設した後に、第2のコイルばね8の上端部にホルダ9を被せ、ホルダ9の凹部90Bに第2のコイルばね8の上端部を嵌め込む。一方、ボディ2の本体部21の孔21Aに連結部51を挿入し、各突部50Bを本体部21内壁の案内溝に嵌め込んだ状態で移動体ブロック5を本体部21内に収納する。
【0025】
そして、移動体ブロック5が収納された本体部21にコイルボビン41を挿入し、ベース20の内底面に設けられた4つの突起20Aを、フランジ40に設けられた4つの貫通孔40Aにそれぞれ挿入する。その後、各突起20Aの先端部を溶融してボディ2にセンシング部4をかしめ固定(いわゆる、溶着)する。このとき、ホルダ9のフランジ部91が本体部21のリブ21Bの下端部に引っ掛かることで、第2のコイルばね8は圧縮した状態で本体部21内に収納される。その後、ベース20の下面にカバー3を被せて固定する。最後に、固定ねじ12を用いて押釦1を連結部51のねじ孔51Aにねじ止めすることで、本実施形態の組立が完了する。
【0026】
以下、本実施形態の動作について図面を用いて説明する。先ず、押釦1を押操作して第1のコイルばね7の弾性力よりも大きな荷重をかけると、押釦1とともに移動体ブロック5が下向きに移動し、移動体52の内側に検出コイル42が進入する。そして、押釦1への荷重が増大するにつれて移動体ブロック5の基準位置からの変位が大きくなり、反対に検出コイル42と移動体52との間の距離が短くなる。
【0027】
ここで、信号処理回路部6では、検出コイル42と移動体52との間の距離に応じて変化する検出コイル42のインダクタンスに応じたアナログの電圧信号(以下、「変位信号」と呼ぶ)を作成している。例えば、基準位置からの変位量を横軸とし、変位信号レベルを縦軸とすれば、図5(a)に示すように、変位信号は変位量が大きくなるにつれてほぼ直線的に信号レベル(電圧)が増加する特性を有している。したがって、信号処理回路部6において、基準位置の変位信号レベルとのレベル比(電圧比)に基づいて移動体52の変位量、すなわち、押釦1の変位量を検出し、当該変位量に対応したレベルを有する操作信号を出力することができる。
【0028】
次に、押釦1に一定の荷重をかけて移動体ブロック5を下向きに移動させると、図4(a)に示すように、各突部51Bがホルダ9のフランジ部91の各切り欠き91Aに嵌り込み、主部50の上部内底面がホルダ9の筒部90の上面に当接する。すなわち、第2のコイルばね8は、押釦1が第1のコイルばね7を押圧した状態で一定量変位した後に押釦1に押圧される位置に配設されている。この押釦1の位置を境界位置と呼ぶものとする。押釦1をこの境界位置よりも更に下方に押し込むには、図4(b)に示すように、第1のコイルばね7の反力のみならず第2のコイルばね8の反力にも抗う必要がある。
【0029】
ここで、上述のように第2のコイルばね8はホルダ9によって一定量縮んだ状態で保持されている。このため、押釦1に一定以上の荷重をかけなければ押釦1を境界位置よりも下方に押し込むことができない。すなわち、図5(b)に示すように、押釦1の変位量がX1の境界位置において荷重L1では押釦1を下方に押し込むことができず、荷重L2(L2>L1)まで押し込むことで押釦1が境界位置よりも下方に変位するようになる。したがって、境界位置の前後で押釦1を押し込む際の利用者の操作感覚を異ならせることができる。
【0030】
また、信号処理回路部6において、図5(a)に示すように任意の信号レベルを閾値V1に設定し、変位信号の信号レベルが閾値V1以上のときは第1のモード、閾値V1未満のときは第2のモードと判別して操作信号を出力することができる。すなわち、押釦1の変位が境界位置よりも上方であれば第1のモード、境界位置よりも下方であれば第2のモードに対応した操作信号を出力することができる。
【0031】
上述のように、本実施形態では、境界位置の前後で押釦1を押し込む際の利用者の操作感覚を異ならせることができる。このため、上記のように押釦1の変位量に基づいてモードを変化させる場合、モードの変化と操作感覚とが結び付き易く、遊戯性を向上させることができる。
【0032】
例えば、パチンコ台のチャンスボタンとして本実施形態を採用し、第1のモードと第2のモードとで互いに異なる演出を提供する場合、利用者が押釦1を強く押し込むと演出が変化することになるため、利用者が遊戯に関わっているという実感を得易くなる。また、利用者がチャンスボタンを連打することが想定されるが、このとき、押釦1を境界位置よりも下方に押し込むために必要な荷重が大きくなるように設定すれば、利用者が押釦1を連打しても第1のモードから第2のモードへと移行し難い。したがって、設計者の意に反してモードが変化するのを防ぐことができ、適切な演出を提供することができる。
【0033】
また、本実施形態は、押釦1の変位が境界位置よりも上方であればオフ、境界位置よりも下方であればオンとすることで、押釦1の押操作に応じてオン/オフを切り替えるスイッチとして利用することも可能である。
【0034】
なお、本実施形態では、第1のコイルばね7のばね定数よりも第2のコイルばね8のばね定数を大きくしているが、各コイルばね7,8のばね定数は同じであってもよい。但し、本実施形態のように第2のコイルばね8のばね定数の方を大きくすることで、第1のモードにおける操作感覚と第2のモードにおける操作感覚との差異をより明確にすることができる。また、本実施形態はパチンコ台やゲーム機などの遊戯装置の操作スイッチに好適であるが、他の装置の操作スイッチとして用いてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 押釦
21B リブ(保持手段)
6 信号処理回路部
7 第1のコイルばね(第1のばね)
8 第2のコイルばね(第2のばね)
9 ホルダ(保持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押釦と、前記押釦の変位量に比例した信号を作成する信号処理回路部と、前記押釦が押操作される向きと逆向きに前記押釦を付勢する第1のばね及び第2のばねと、前記第2のばねを前記押釦が押操作される向きに一定量縮んだ状態で保持する保持手段とを備え、前記第2のばねは、前記押釦が前記第1のばねを押圧した状態で一定量変位した後に前記押釦に押圧される位置に配設されたことを特徴とする押釦スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142131(P2012−142131A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292759(P2010−292759)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】