説明

抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証する方法およびシステム

本発明は、照明環境を、抽象記述から、たとえば個別の照明インフラストラクチャーや部屋のレイアウトとは独立なXML(Extensible Markup Language)で指定される照明環境から、レンダリングすることが可能かどうかを自動検証することに関する。本発明の基本的発想は、照明インフラストラクチャーのアドレッシング可能な各照明ユニットについて、いうところの照明インフラストラクチャー機能を生成するというものである。照明インフラストラクチャー機能は、効果を一般的に記述し、最大の可能な効果を測定し、効果を目標環境の意味論的領域中の位置に関係させる。これは、照明インフラストラクチャーにおいて抽象記述からの照明環境をレンダリングする可能性を、照明環境デザイン工程の早い段階で、自動的に検証することを許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明環境(lighting atmosphere)を、抽象記述(abstract description)から、たとえば個別の照明インフラストラクチャーや部屋のレイアウトとは独立にXML(Extensible Markup Language[拡張可能なマークアップ言語])で指定される照明環境から、レンダリングすることの可能性如何を自動検証することに関する。
【背景技術】
【0002】
商業環境や家庭における照明システムはどちらかというと固定された構成をもつ。劇場やディスコにおける照明システムは多くのダイナミクスをもつが、これはたいていプログラムされており、スクリプトはその照明システムに固有である。商業および家庭の環境における将来の照明システムでは、光環境は、照明環境の静的および動的要素を記述するスクリプトから生成され、多様なカラーおよび白色光ユニットによって生成されうるが、個別的な照明インフラストラクチャーとは独立である。これらのスクリプトは幅広い範囲の可能な照明システムをカバーすべきである。よって、これらのスクリプトは、複数の異なる照明システムと一緒に使用可能であるためには、抽象的な仕方である種の照明環境を記述しなければならない。照明環境の抽象記述はたとえばXML(拡張可能なマークアップ言語)においてなされることができる。用語「抽象」は、特定の照明システムやインフラストラクチャー、すなわち光ユニットとは独立であり、特定の部屋や建物のレイアウトとは独立であることを意味する。
【0003】
システム独立な光スクリプトまたは照明環境の抽象記述は、目標(target)環境に自動的にレンダリングされることができる。目標環境内の一組の位置について、所望される光効果および光セッティングが生成される必要がある。これは、光スクリプトを、意味論的領域(目標環境内の位置)に関係する諸部分に分割することによってできる。意味論的領域内の光ユニットはその効果を実現するよう選択され、これらのランプについての制御値が決定される必要がある。照明環境を目標環境に自動的にレンダリングするステップにおいて、特定の目標環境におけるレンダリングが可能であるか否かを検証することが有用であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特にある照明環境設備での照明環境のレンダリングに対する早期のフィードバックを得るために、抽象記述からの照明環境のレンダリングの可能性の自動検証を提供することが本発明の一つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、独立請求項によって解決される。さらなる実施形態は従属請求項によって示される。
【0006】
本発明の基本的発想は、照明インフラストラクチャーのそれぞれのアドレッシング可能な光ユニットについて、効果を一般的に記述するいわゆる照明インフラストラクチャー機能(light infrastructure capability)を作成することであり、可能な最大の効果を測定し、その効果を目標環境の意味論的領域内の位置に関係させる。照明インフラストラクチャー機能は、レンダリングが可能であるか否かを、抽象記述からある照明環境をレンダリングする初期段階において検出することを助けうる。個々の照明インフラストラクチャー機能は、それらが生成する光効果、たとえば環境光(ambient)、スポットライト(spot light)または壁面照明(wall wash)に基づいて、かつ意味論的領域内の位置に基づいて、一緒にクラスター化されてもよい。これは、照明インフラストラクチャーの意味論的領域の諸部分について照明インフラストラクチャー機能を生成することを許容する。さらに、照明インフラストラクチャー機能は、意味論的領域内の照明の可能性を記述するよう、意味論的領域に向かってクラスター化されてもよい。こうして、ある照明インフラストラクチャー機能は、抽象記述からある種の照明環境を自動的にレンダリングするプロセスにおいて、意味論的領域における照明の可能性を記述するために使用されてもよく、前記ある種の照明環境をある種の照明インフラストラクチャーにおいてレンダリングする可能性の早期のフィードバックを与えることを可能にする。本稿で記載される照明インフラストラクチャー機能の概念は、本出願人の欧州特許出願第06127084.9号において記載されるような照明エレメント・テンプレートの概念と密接に結びついている。一般に、照明エレメント・テンプレートは、当該照明インフラストラクチャーが設けられるある種の意味論的位置における、たとえば店舗または家庭における照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含む。こうして、照明インフラストラクチャーの特定の照明ユニットの照明型、強度範囲、照明効果および該照明効果の位置といった照明インフラストラクチャーにおける個々の照明可能性により密接に関係している照明インフラストラクチャー機能よりも、照明エレメント・テンプレートは照明インフラストラクチャーにおける可能性の、より高い抽象レベルである。
【0007】
以下では、本稿で使用されるいくつかの重要な用語について説明する。
【0008】
本稿で使用される「照明環境(lighting atmosphere)」の用語は、照明の種々のスペクトル成分の強度、照明に含まれる色またはスペクトル成分、色勾配などのような、種々の照明パラメータの組み合わせを意味する。
【0009】
照明環境の「抽象記述(abstract description)」は、照明インフラストラクチャーのすべての個別の照明デバイスまたはユニットの強度、色などの設定の記述よりも高い抽象化レベルでの照明環境の記述を意味する。それはたとえば、「散乱環境光(diffuse ambient lighting)」「絞られたアクセント照明(focused accent lighting)」または「壁面照明(wall washing)」といった照明の型の記述ならびにある意味論的位置におけるある意味論的時間における強度、色または色勾配といったある照明パラメータの記述、たとえば「キャッシュ・レジスターにおいて午前中は低強度で青」または「ショッピング・エリア全体でディナー・タイムには中強度で暗い赤」、を意味する。さらに、「抽象記述(abstract description)」は本稿では、本質的に照明システムに独立な照明環境記述を意味する。
【0010】
「意味論的位置(semantic location)」または「意味論的時間(semantic time)」の用語は、座標による位置の具体的な記述に対し、店舗における「キャッシュ・レジスター」または「ランチタイム」といった位置または時間の記述である。
【0011】
照明環境の抽象記述は、使用される照明ユニットまたはデバイスの数および位置ならびにその色および利用可能な強度といった、照明インフラストラクチャーの個別的な事例についての具体的な情報は含まないことを理解しておくべきである。
【0012】
「照明インフラストラクチャー(lighting infrastructure)」の用語は、特定の環境または部屋における照明システムの具体的な実装、たとえば、ある種の店、ホテルのロビーまたはレストランに適用される照明システムの個別的な事例〔インスタンス〕を意味する。用語「照明インフラストラクチャー」は、照明のための複雑なシステム、特にいくつかの照明ユニット、たとえば複数のLED(light emitting diode[発光ダイオード])またはハロゲン電球のような他の照明デバイスを含むものを含む。典型的には、そのような照明インフラストラクチャーは、これらの照明デバイスを数十ないし数百適用し、そのため一つ一つの照明デバイスの特性を個々に制御することによるある照明環境の合成は、コンピュータ化された照明制御設備を要求することになる。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動的に検証する方法であって、以下の特徴的な要素を有するものが提供される:
・照明インフラストラクチャーの照明インフラストラクチャー機能を電子的に受け取る。ここで、照明インフラストラクチャー機能は、目標環境上での照明インフラストラクチャーのある照明ユニットの照明型、強度範囲、光効果および該効果の位置を記述する。
・受け取った照明インフラストラクチャー機能を自動処理する。
・前記抽象記述からの前記照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかを信号伝達する。
【0014】
照明インフラストラクチャー機能を受け取り、処理することによって、抽象記述からの所望される照明環境を自動的にレンダリングするプロセスにおける早期のフィードバックを与えることが可能になる。照明インフラストラクチャー機能は、レンダリング・プロセスの間に照明ユニット固有の機能を自動的に処理することを許容する。
【0015】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、本方法はさらに、前記照明インフラストラクチャーのすべての個々にアドレッシング可能な照明ユニットについての照明インフラストラクチャー機能を自動的に生成する段階を有する。特に、個々にアドレッシング可能な照明ユニットについてのインフラストラクチャー機能は、その制御インターフェースの記述を提供し制御される照明ユニットを宣言する照明インフラストラクチャーの照明ユニット・コントローラによって生成されてもよい。個々にアドレッシング可能な照明ユニットについての照明インフラストラクチャー機能はまた、較正、特に暗室較正(dark room calibration)によって生成されてもよい。較正においては、特定の制御セットの効果が照明ユニット上で実行され、制御された照明ユニットの効果がカメラおよび/またはセンサーによって測定される。
【0016】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、受け取った照明インフラストラクチャー機能を自動処理するステップは、ある種の基準に従って、いくつかの照明インフラストラクチャー機能をより大きなグループの照明インフラストラクチャー機能にクラスター化することを含む。照明インフラストラクチャー機能をクラスター化することによって、自動的に処理されるべき照明インフラストラクチャー機能の数が減少されうる。クラスター化のためには、以下の基準のうちの一つまたは複数が使用されうる:
・同じ型の諸照明ユニット;
・照明インフラストラクチャーにおける隣接する位置において同様の効果を生成する諸照明ユニット;
・ある意味論的領域において効果をもつ諸照明ユニット。
【0017】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、受け取った照明インフラストラクチャー機能を自動処理するステップは:
・照明インフラストラクチャーの受け取られた照明インフラストラクチャー機能から照明エレメント・テンプレートを生成し、ここで、照明エレメント・テンプレートは、照明インフラストラクチャーのある種の意味論的位置における照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含み、
・生成された照明エレメント・テンプレートを、前記抽象記述の照明エレメントと比較する、
ことを含みうる。
【0018】
照明エレメント・テンプレートは、本出願人の欧州特許出願第06127084.9号において詳細に記載および開示されているように生成されうる。照明エレメント・テンプレートの使用は、照明インフラストラクチャー機能の前記自動処理をより簡単にする。というのも、抽象記述において記載されている照明効果が目標照明環境設備においてレンダリングされうるかどうかを決定するために比較ステップしか必要とされないからである。
【0019】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、本方法は、照明インフラストラクチャーの利用可能な照明ユニットおよびその機能についての情報を、サービスおよびデバイス発見機構によって、ネットワーク環境において利用可能にするさらなるステップを有する。
【0020】
本発明のある実施形態によれば、本方法はさらに、
・クライアントがサーバーと通信することによって照明環境を選択し、
・前記クライアントから前記サーバーに照明インフラストラクチャーの照明インフラストラクチャー機能を送信し、
・受け取られた照明インフラストラクチャー機能を自動的に処理し、
・前記サーバーから前記クライアントに前記処理の結果を送信し、
・前記クライアント上で、受け取られた処理結果に依存して、前記抽象記述からの前記選択された照明環境のレンダリングが可能であるかどうかを、信号伝達する、
ステップを有してもよい。
【0021】
この実施形態は、家庭照明およびインターネットのような通信ネットワークを通じて照明環境を取得することのために有用である。クライアントは、たとえば購入用の照明環境を提供するウェブサイトにアクセスする、家庭にあるパーソナル・コンピュータでもよい。ユーザーは、そのウェブサイト上で所望される照明環境を選択しうる。次に、ユーザーのパーソナル・コンピュータは、たとえばユーザーがウェブサイトのある種のボタンをクリックした後、サーバーに家庭の照明インフラストラクチャーのインフラストラクチャー機能を送信しうる。前記インフラストラクチャー機能は、前記パーソナル・コンピュータにおいて手動で入力されてもよいし、あるいは照明ユニットとパーソナル・コンピュータが家庭ネットワークで接続されているとして家庭の照明インフラストラクチャーの照明ユニットと通信することによって自動的に入力されてもよい。家庭ネットワークは、たとえば、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)またはWLAN(無線LAN)またはPAN(パーソナル・エリア・ネットワーク)である。クライアントは、照明インフラストラクチャーの照明コントローラ内にまたは各照明ユニット内に記憶されうる照明インフラストラクチャー機能を取得してもよい。サーバー上で、受け取られたインフラストラクチャー機能が次いで、自動的に処理されてもよい。自動処理は、特に、いくつかの照明インフラストラクチャー機能をクラスター化し、クラスター化された照明インフラストラクチャー機能から照明エレメント・テンプレートを生成し、最後に、生成された照明エレメント・テンプレートを選択された照明環境の抽象記述の照明エレメントと比較することによってでもよい。その後、処理の結果がサーバーからクライアントに送信されうる。最後に、処理の結果、すなわち前記抽象記述からの選択された照明環境のレンダリングが可能かどうかが、クライアントのパーソナル・コンピュータのモニタ上に表示されうる。こうして、ユーザーは、迅速かつ信頼できる形で、購入用に提供されている所望される照明環境が、自分の自宅の照明インフラストラクチャーでレンダリングされうるかどうかを判定できる。
【0022】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、照明インフラストラクチャー機能は、照明インフラストラクチャーの照明コントローラとのネットワーク接続を通じて電子的に受信されてもよい。
【0023】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、コンピュータによって実行されたときに本発明に基づく方法を実行できるようにされうるコンピュータ・プログラムが提供される。
【0024】
本発明のある実施形態によれば、本発明に基づくコンピュータ・プログラムを記憶するための、CD-ROM、DVD、メモリ・カード、フロッピー・ディスクまたは同様の記憶媒体といった記録担体が提供されうる。
【0025】
本発明のあるさらなる実施形態は、本発明に基づく方法を実行するようプログラムされうるコンピュータを提供する。前記コンピュータは、照明インフラストラクチャーとの通信のためのインターフェースを有してもよい。前記通信は、たとえばインターフェースと照明インフラストラクチャーとの間の有線または無線の通信接続を通じて実行されうる。無線通信接続の場合、インターフェースは、照明インフラストラクチャーのそれぞれの相手と通信接続を確立しうるWLANおよび/またはブルートゥース(登録商標)および/またはジグビー(ZigBee)・モジュールのような無線周波数(RF: radio frequency)通信モジュールを有してもよい。
【0026】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動的に検証するシステムであって、以下の特徴を有するものが提供される:
・照明インフラストラクチャーの照明インフラストラクチャー機能を電子的に受け取る受領手段。ここで、照明インフラストラクチャー機能は、目標環境上での照明インフラストラクチャーのある照明ユニットの照明型、強度範囲、光効果および該効果の位置を記述する。
・受け取った照明インフラストラクチャー機能を自動処理する処理手段。
・前記抽象記述からの前記照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかを信号伝達する信号伝達手段。
【0027】
本発明のある実施形態によれば、本システムはさらに、
・前記照明環境の抽象記述を生成するよう適応された照明環境デザイン・モジュールと、
・前記受領手段、処理手段および信号伝達手段を有する検証モジュールとを有してもよい。
【0028】
本発明のある実施形態によれば、前記検証モジュールは、コンピュータによって実行されるコンピュータ・プログラムとして実装されてもよい。
【0029】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、前記コンピュータは、前記受領手段を有する通信モジュールを有していてもよい。
【0030】
本発明のこれらおよびその他の諸側面は、以下に記載される実施形態を参照することから明白となり、明快にされるであろう。
【0031】
本発明について、以下で、例示的な実施形態を参照しつつ、より詳細に記述するが、本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に基づく、照明環境の抽象記述から、店舗における照明環境を合成する方法のある実施形態を示す流れ図である。
【図2A】本発明に基づく抽象環境記述の実施例として、店舗内での照明環境の抽象記述を含むXMLファイルを示す図である。
【図2B】本発明に基づく抽象環境記述の実施例として、店舗内での照明環境の抽象記述を含むXMLファイルを示す図である。
【図2C】本発明に基づく抽象環境記述の実施例として、店舗内での照明環境の抽象記述を含むXMLファイルを示す図である。
【図3】照明ユニットおよび意味論的領域をもつフロアプランの例を示す図である。
【図4】抽象記述からある種の照明環境を自動的にレンダリングするプロセスにおける、照明インフラストラクチャー機能の適用および照明エレメント・テンプレート生成のためのそのクラスタリングを示す図である。
【図5】本発明に基づく、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証する方法のある実施形態のフローチャートである。
【図6】本発明に基づく、領域型を使って分類される種々の意味論的領域をもつある店舗事例のレイアウトを示す図である。
【図7】本発明に基づく、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証するシステムのある実施形態を示す図である。
【図8】本発明に基づく、ダウンロード用にインターネットのサーバー・コンピュータに記憶されている抽象環境記述から照明環境を生成するシステムのある実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の記述では、「照明デバイス(lighting device)」「照明ユニット(lighting unit)」「光ユニット(light unit)」および「ランプ(lamp)」の用語は同義に使われる。これらの用語は、本稿では、LEDのような半導体ベースの照明ユニット、ハロゲン電球、蛍光灯、電球といった任意の種類の電気的に制御可能な照明デバイスを意味する。さらに、図面において(機能的な)同様または同一の要素は同じ参照符号で表されることがある。
【0034】
ある店舗について抽象記述から照明環境を合成する方法のフローの概観が図1に描かれている。何らかのデザイン工程11を介して、たとえばグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)を用いて照明環境合成コンピュータ・プログラムを使って、抽象環境記述(abstract atmosphere description)10が生成される(図1ではab atmos descとも記される)。抽象環境記述は、図1の下部に描かれている対話方法の一つから生成されることもできる。抽象記述10は単に、ある意味論的時間/機会におけるある意味論的位置における照明効果の記述を含む。照明効果は、あるパラメータをもつ照明の型によって記述される。抽象記述10は、店舗レイアウトや照明システムとは独立である。よって、特定の照明システムおよび部屋のレイアウトといった照明環境設備(lighting environment)についての知識なしに、照明デザイナーによって生成されうる。デザイナーは、照明環境設備の意味論的位置、たとえば靴屋またはファッション・ショップにおける「キャッシュ・レジスター」または「靴箱1」「靴箱2」「試着室(changing cubicle)」「コート・スタンド」を知るだけでよい。抽象記述10を生成するためにGUIを使うとき、たとえば前記意味論的位置を含む店舗レイアウト・テンプレートをロードすることが可能であってもよい。次いで、デザイナーは、照明効果および照明環境を、たとえば利用可能な照明デバイスのパレットからのドラッグアンドドロップ技術によって、生成できる。GUIを用いたコンピュータ・プログラムの出力は、抽象記述10を含むXMLファイルであってもよい。
【0035】
そのような抽象環境記述を含むXMLファイルの例が図2Aないし図2Cに示されている。抽象環境記述において、照明環境記述の要素〔エレメント〕は、店舗内の意味論的(機能上の)位置に結び付けられる。図2Aないし図2Cにおいて見て取れるように、意味論的位置は、属性「areaselector〔領域セレクター〕」によって導入される。この意味論的位置における照明環境は、タグ名「lighteffecttype〔照明効果型〕」によって導入される。照明パラメータをもつ照明の型は、タグ名「ambient〔環境光〕」「accent〔アクセント〕」「architectural〔建築的〕」および「wallwash〔壁面照明〕」によって、タグ名「architectural」および「picturewallwash〔ピクチャー壁面照明〕」を使ってピクチャーとして、あるいはlightdistribution〔光分布〕として、記述される。パラメータは、たとえば2000(lux/nit)の属性「intensity〔強度〕」およびたとえばx=0.3、y=0.3の「color〔色〕」によって記述される。ピクチャー壁面照明効果の場合、示されるピクチャーが属性「pngfile〔pngファイル〕」およびその強度によって指定される。光分布の場合、強度が指定され、領域の角における色および可能性としては勾配のs曲線を指定するパラメータ。さらに、いくつかのライトについては、フェードインおよびフェードアウトが、属性「fadeintime〔フェードイン時間〕」および「fadeouttime〔フェードアウト時間〕」によって指定されてもよい。
【0036】
そのような抽象記述は、種々の照明デバイスまたはユニット、すなわち照明システムの個別的な事例のランプ(図1ではランプ設定24として示されている)についての制御値に、三段階で、自動的に変換されうる。
【0037】
1.抽象記述10をコンパイル14して環境モデル20にする:コンパイル段14では、抽象(店舗レイアウトおよび照明インフラストラクチャーに独立な)照明記述10は、店舗レイアウトに依存する環境記述に変換される。これは、意味論的位置12が店舗内の実際の位置(物理的位置)によって置き換えられることを含意する。これは、最小限、物理的位置および各物理的位置についてそれがどんな意味論的意味をもつか(たとえば、一つの店舗は二つ以上のキャッシュ・レジスターをもつことができ、それらはみな異なる名称をもつが、同じ意味論的意味である)の指標をもつ、当該店舗の何らかのモデルを要求する。この情報は、店舗レイアウトにおいて利用可能である。意味論的位置のほか、時間の意味論的概念(たとえば開店時間)も実際の値(たとえば9:00〜18:00)で置き換えられる。この情報は、店舗タイミングにおいて利用可能である。さらに、センサーの読みに依存する照明効果のために、抽象センサーが店舗内の実際のセンサー(の識別子)によって置き換えられる。これらの店舗依存の値は、その店舗および適用される照明システムの個別的なパラメータを含む店舗定義ファイル12に含まれる。店舗定義は、抽象環境、店舗レイアウトおよび店舗タイミングにおいて使用できる語彙を含む。コンパイラー段の出力が、いわゆる環境モデル(atmosphere model)20(atmos model)である。これはいまだダイナミクス(dynamics)、時間依存性およびセンサー依存性を含んでいる。
【0038】
2.環境モデル20を目標22にレンダリング16:レンダリング段では、すべてのダイナミクス、時間依存性およびセンサー依存性が環境モデル20から除去される。よって、レンダリング段は、ある時点およびその時点での所与のセンサー読みにおける、照明環境のスナップショットを生成する。レンダリング段の出力は、目標(target)22と呼ばれる。目標22は、一つまたは複数の視点および視点当たりの色分布、強度分布、CRI(Color Rendering Index[色レンダリング・インデックス])分布……からなることができる。
【0039】
3.目標22を照明デバイス、すなわちランプのための実際の制御値24にマッピング:マッピング段は目標22を実際のランプ制御値24(ランプ設定)に変換する。これらの制御値24を計算するために、マッピング・ループは次のものを要求する:
a.照明システムにおいて利用可能なランプ26の、ランプの型、色空間……のような記述。
b.どのランプがどのようにある種の物理的位置の照明に寄与するかを記述するいわゆる原子的効果(atomic effects)26。これらの原子的効果がどのように生成されるかはのちに述べる。
c.閉じたフィードバック・ループを用いて光を制御する場合、生成される光を測定するセンサー値28。
【0040】
これらの入力26および28ならびに目標22に基づいて、マッピング・ループ18は、アルゴリズムを使って、照明ユニットまたはランプをそれぞれ制御して、生成される光が目標22からできるだけ違わないようにする。古典的な最適化、ニューラル・ネットワーク、遺伝的アルゴリズムなどのような、さまざまな制御アルゴリズムを使うことができる。
【0041】
すでに示したように、マッピング・プロセス18は、目標照明「シーン」をレンダリング・プロセス16から受け取る。目標22をできるだけ近く近似する光を生成するのに要求されるランプ設定24を計算するために、マッピング・プロセス18は、どのランプがどのようにしてある物理的位置の照明に寄与するかを知る必要がある。これは、環境設備において照明デバイスまたはランプそれぞれの効果を測定できるセンサーを導入することによって行われる。典型的なセンサーは、照明強度を測定するよう適応されたフォトダイオードであるが、カメラ(スチール写真、ビデオ)もそのようなセンサーの個別の例と考えうる。
【0042】
先に示したように、照明環境の抽象記述は、将来、業務(たとえば店舗)領域および消費者領域の両方で、可能になるであろう。いずれの領域でも、あらかじめ、照明環境のそのような抽象記述が、特定の店舗または家庭の照明インフラストラクチャーにおいて、どのくらいよくレンダリングできるかを知ることが望ましい。
【0043】
たとえば、店舗チェーンの本部の照明デザイナーが、その店舗チェーンのための新しい照明環境を作りたい場合、この照明デザイナーが、その環境がその店舗チェーンの店舗においてどのくらいよくレンダリングできるかについてのフィードバックを得ることが重要である。
【0044】
これは、チェーンのすべての店舗についての照明インフラストラクチャーの情報(利用可能な照明ユニット、その特性および位置)を照明デザイナーに通信することによってできる。しかしながら、この方法には大きな欠点がある。光源の量は非常に多数になることがあり、店舗当たり数千の光源となることもある。これは、単にどのような照明ユニットが利用可能であるかを通信することは、大規模化〔スケーリング〕できず、照明デザイナーを「圧倒する」であろうことを含意する。さらに、照明デザイナーにとって重要なのは、店舗内での照明ユニットの位置ではなく、単に、その照明効果の意味論的位置(たとえば入口)が何であるかである。これは、チェーン内の全店舗の詳細な店舗レイアウトを店舗の本部(HQ: head quarter)にいる照明デザイナーに転送することを要求し、これも大規模化できない。
【0045】
消費者領域では、抽象照明環境を購入するエンドユーザーはもちろん、そのような照明環境が個別的なレイアウトおよび照明インフラストラクチャーをもつ自宅でレンダリングできることを確かめたいと思う。しかしながら、そのようなエンドユーザーは、通例、照明デザインおよび照明システムのエキスパートではない。よって、事前に、そのような照明環境がレンダリングできるかどうかを検証することが可能である必要がある。レンダリングの不可能または制限は、消費者に対して理解可能な仕方で伝えられる必要がある。
【0046】
本発明によれば、照明環境が特定の店舗チェーンまたは家庭においてどのくらいよくレンダリングできるかの検証を、スケーラブルかつ意味のある仕方で可能にする機構が提案される。それを以下で詳細に説明する。
【0047】
図3では、ある種の照明システムの照明ユニットをもつフロアプランの例が与えられている。5個のTL 30、32、34、36、38(A)、3個のスポットライト40、42、44(S)および2個の壁面照明器46、48(W)が存在する。RGB壁面照明器46および48は個々にアドレッシング可能であり、壁の上部分および下部分に色を付ける。3個のスポットライト40、42および44は個々にアドレッシング可能である。3個のTL 30、32および34は一つの照明ユニット50としてグループ化され、残りの2個36および38は個々にアドレッシング可能である。3つの異なる意味論的領域が参照負号52、54および56によって示されている。
【0048】
この照明システムにおいてある種の照明環境がレンダリングされうるかどうかの早期フィードバックを与えるために、照明管理システムが照明インフラストラクチャーについての知識を見出すまたは作成する必要がある。早期フィードバックを可能にするために、すべての個々にアドレッシング可能な照明ユニットについて、照明インフラストラクチャー機能が作成される。
【0049】
照明インフラストラクチャー機能は、照明システムのそれぞれの個々にアドレシング可能な照明ユニットについて作成され、照明型、強度範囲、照明効果および環境上での効果の位置を記述する。これは、いくつかの仕方(の組み合わせ)でできる。
・個々の照明ユニットの宣言、制御インターフェースの記述を与える照明ユニット・コントローラ。
・特定の制御セットの効果が照明ユニット上で実行され、その効果がカメラおよびセンサーによって測定される(暗室)較正。
・照明システム・インストーラ(installer)による構成設定(configuration)。
【0050】
図4は、単独照明ユニット30、32、34、36、38、40、42、44、46および48の照明インフラストラクチャー機能が、抽象記述からある種の照明システムを用いて照明環境を自動的にレンダリングするプロセスのために、どのようにクラスタリングされうるかを示している。照明ユニット30、32、34、36、38のための照明インフラストラクチャー機能(light infrastructure capabilities)LiCap A1〜A3,照明ユニット40、42、44のためのS1〜S3ならびに照明ユニット46および48のための「W top」および「W bot」がそれぞれより大きなグループの照明インフラストラクチャー機能にクラスタリングされ、このクラスタリングのためにいくつかの基準が使われる:
・同じ型の諸照明ユニット。
・隣接し合う位置において同様の効果を生成する諸照明ユニット。
・一つの意味論的領域において効果をもつ諸照明ユニット。
【0051】
意味論的領域52については、3個のTL 30、32および34が単一の照明インフラストラクチャー機能LiCap A1をもつ単一の照明ユニット50を形成する。意味論的領域54については、スポットライト40、42および44ならびにTL 36および38がまずそれぞれ照明インフラストラクチャー機能LiCap SおよびLiCap A4にクラスタリングされる。次いで、これらの照明ユニット36、38、40、42、44の照明インフラストラクチャー機能が意味論的領域54についての一つの照明インフラストラクチャー機能LiCap Aにクラスタリングされる。この照明インフラストラクチャー機能は、結果として領域54についての照明可能性を与える。壁面照明器46および48は個々にアドレッシング可能である。これらは同じ型であり、領域56の隣接し合う位置に効果をもつ。これらは、上‐下勾配の可能性をもつRGB壁面照明効果を記述するもう一つの照明インフラストラクチャー機能LiCap Wにクラスタリングされる。
【0052】
これらの照明インフラストラクチャー機能または可能性LiCap A1、LiCap AおよびLiCap Wから、それぞれ照明エレメント・テンプレートLT1、LT2およびLT3が、本出願人の欧州特許出願第06127084.9号において記載されるように生成されうる。これらの照明エレメント・テンプレートは次いで、抽象記述から照明環境をレンダリングする照明管理システムによってさらに処理されうる。照明エレメント・テンプレートは、店舗または家庭におけるある(意味論的)位置における照明インフラストラクチャーの可能性の指標である。照明効果のあらゆる型について、異なる照明エレメント・テンプレートが生成される。以下では、照明エレメント・テンプレートおよびその機能について詳細に説明する。
【0053】
図6は、いくつかの照明領域1ないし7をもつ店舗事例のレイアウトを描いている。異なる領域、領域1ないし領域7は、領域型(area type)AT1ないしAT5を使って分類される。領域型の例は「入口」「割引」「食料品」などである。
【0054】
たとえば店舗における異なる領域1ないし7についての照明可能性は、照明ユニットが生成できる照明の型に従って「要約」されることができる。これは、図3および図4に関して上記したような照明ユニットの照明インフラストラクチャー機能を処理することによって実行される。これについては図5との関連でのちに述べる。照明インフラストラクチャー機能の前記処理の結果は、図6に描かれている店舗レイアウトの種々の領域の照明可能性でありうる。処理結果の例を以下に挙げる。
領域1
領域型(Area type)=AT1
領域セレクター(Area selector)=AT1
照明型(LightType)=Ambient
最大強度(MaxIntensity)=1500Lux
色(Color)=White

領域2
領域型=AT2
領域セレクター=AT2
照明型=Ambient
最大強度=2000Lux
色=White
照明型=Task
最大強度=6000Lux
色=RGB

領域3
領域型=AT3
領域セレクター=AT3
照明型=Ambient
最大強度=2000Lux
色=White

領域4
領域型=AT4
領域セレクター=AT4‖AT1/AT4
照明型=Accent
最大強度=6000Lux
色=White

領域5
領域型=AT5
領域セレクター=AT5‖AT2/AT5
照明型=Accent
最大強度=4000Lux
色=White

領域6
領域型=AT2
領域セレクター=AT2
照明型=Ambient
最大強度=1000Lux
色=White
照明型=Architectural/wallwash
最大強度=500nit
色=RGB

領域7
領域型=AT1
領域セレクター=AT1‖AT3/AT1
照明型=Ambient
最大強度=1500Lux
色=White
照明型=Architectural/wallwash
最大強度=1000nit
色=RGB。
【0055】
前記店舗事例における種々の領域についての上記に挙げたデータ構造では、領域セレクターは、店舗または家庭における意味論的領域の指標である。領域セレクターは、一つまたは複数の領域型からなっていてもよい。たとえば、領域セレクターAT2/AT5は、型AT2をもつ領域の部分領域である、型AT5をもつすべての領域を指す。
【0056】
この要約された照明インフラストラクチャー情報を領域セレクターによって整理およびグループ化することによって、照明エレメント・テンプレートが生成されうる。図6の店舗事例についてのすべての照明エレメント・テンプレートは次のようになる:

照明エレメント・テンプレート(LightElementTemplate)1
領域セレクター(Area selector)=AT1
照明型(LightType)=Ambient
・最高最大強度(Highest MaxIntensity)=1500Lux
・最低最大強度(Lowest MaxIntensity)=1500Lux
・色(Color)=White
照明型(LightType)=Architectural/wallwash
・最高最大強度(Highest MaxIntensity)=1000nit
・最低最大強度(Lowest MaxIntensity)=0nit
・色(Color)=RGB
照明エレメント・テンプレート2
領域セレクター=AT2
照明型=Ambient
・最高最大強度=2000Lux
・最低最大強度=1000Lux
・色=White
照明型=Task
・最高最大強度=6000Lux
・最低最大強度=0Lux
・色=RGB
照明型=Architectural/wallwash
・最高最大強度=500nit
・最低最大強度=0nit
・色=RGB
照明エレメント・テンプレート3
領域セレクター=AT3
照明型=Ambient
・最高最大強度=2000Lux
・最低最大強度=2000Lux
・色=White
照明エレメント・テンプレート4
領域セレクター=AT1/AT4
照明型=Accent
・最高最大強度=6000Lux
・最低最大強度=6000Lux
・色=White
照明エレメント・テンプレート5
領域セレクター=AT2/AT5
照明型=Accent
・最高最大強度=4000Lux
・最低最大強度=4000Lux
・色=White
照明エレメント・テンプレート6
領域セレクター=AT3/AT1
照明型=Ambient
・最高最大強度=1500Lux
・最低最大強度=1500Lux
・色=White
照明型=Architectural/wallwash
・最高最大強度=1000nit
・最低最大強度=1000nit
・色=RGB。
【0057】
領域セレクターAT4およびAT5についての照明エレメント・テンプレートは、この店舗においては「個別に」生起せず、組み合わせAT1/AT4およびAT2/AT5においてしか生起しないので、除去される。
【0058】
図2Aないし図2Cを参照して説明したように、照明デザイナーによって作られる抽象照明環境は、抽象照明エレメントで指定される。たとえば:
照明エレメント(LightElement)1
領域セレクター(Areaselector)=AT1
照明型(LightType)=Ambient
・強度(Intensity)=1200Lux
・色(Color)=white
照明エレメント2
領域セレクター=AT5
照明型=Architectural/wallwash
・強度=1000nit
・色=yellow〔黄色〕
照明型=accent
・強度=3000Lux
・色=white。
【0059】
環境記述の照明エレメントを、上記したように照明インフラストラクチャー機能から生成された照明エレメント・テンプレートと比較することによって、その特定の店舗または家庭において照明エレメントをレンダリングすることが可能であるかどうかを迅速かつ自動的に検証できる。今の例では、AT5で終わる領域セレクターをもつ領域における壁面照明が可能でないことがただちに明らかになる。レンダリングが可能でない場合、たとえば意味論的レベルで、照明デザイナーのコンピュータ・モニタに「領域型5をもつ領域で壁面照明効果を生成することは不可能です」のようなメッセージを表示するなどして、フィードバックが与えられることができる。
【0060】
最後に、図5は、検証プロセスの本質的なステップをフローチャートで概観するものである。まず、ステップS10において、照明インフラストラクチャー機能が、検証プロセスを実行するよう構成されたコンピュータ・システムによって、たとえばインターネットのようなコンピュータ・ネットワークを介して照明システム・コントローラから、電子的に受け取られる。次いで、ステップS12において、受け取られた照明インフラストラクチャー機能が、種々の意味論的領域におけるその効果に従って、より大きなインフラストラクチャー機能のグループにクラスタリングされる。後続ステップS14において、クラスタリングされた照明インフラストラクチャー機能から照明エレメント・テンプレートが、具体的には上記のようにして、生成され、照明環境の抽象記述の照明エレメントと比較される。次のステップS16において、受け取られた照明エレメント・テンプレートによって表されるその店舗事例の照明インフラストラクチャーにおいて、その照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかが検査される。レンダリングが可能であれば、ステップS18で、このことがたとえばユーザーに対して、あるいは所望される照明環境を生成するために照明インフラストラクチャーを自動構成するシステムに対して信号伝達される。可能でなければ、ステップS20においてレンダリングが可能でないことが信号伝達される。
【0061】
図7は、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動的に検証するシステム60を描いている。これは、どのくらいよくレンダリングできるかについて照明環境を検証する二つの可能性を提供する:
・チェーンのすべての店舗においてその照明環境がどのくらいよくレンダリングできるかの指標を与える、すべての店舗についての、照明インフラストラクチャー機能から導出された総合された照明エレメント・テンプレートに対して。
・個々の店舗の照明インフラストラクチャー機能から導出された照明エレメント・テンプレートに対して。これは店舗事例レベルでのフィードバックを与える。
【0062】
個々の店舗70、72および74の照明インフラストラクチャーの照明インフラストラクチャー機能が収集され、ローカルなクラスタリング・モジュール80、82および84によって、ランプのグループの照明インフラストラクチャー機能にクラスタリングされることができる。
【0063】
店舗チェーン本部において、環境デザイナーは、デザイン・ツール62を使ってチェーンの店舗のための照明環境を作成する。デザイン・ツール62は、照明環境をデザインするためのデザイナーの入力に対する追加的な入力として、店舗定義を受け取る。検証システム60は、チェーンの種々の店舗の照明システム70、72および74から(クラスタリングされた)照明インフラストラクチャー機能を収集する収集およびクラスタリング・モジュール68と、照明システム70、72および74についての照明エレメント・テンプレートをその(クラスタリングされた)照明インフラストラクチャー機能から生成する照明エレメント・テンプレート生成器69と、照明システム70、72および74を用いて店舗のチェーンについての総合された照明エレメント・テンプレートを計算する計算モジュール66と、検証ツール64とを有する。
【0064】
収集およびクラスタリング・モジュール68は、種々の照明システム70、72および74の照明インフラストラクチャー機能を受け取る。すべての照明システムについて、収集およびクラスタリング・モジュール68は、先に述べた基準の一つまたは複数に従って、それらの照明インフラストラクチャー機能を、ライトのグループの照明インフラストラクチャー機能にクラスタリングする。照明エレメント・テンプレート生成器69は個々の照明システムの照明インフラストラクチャー機能を使って、照明システム70、72および74の照明エレメント・テンプレートを導出する。
【0065】
デザイナーがある照明環境のデザインを完了し、デザイン・ツール62によって自動生成されてもよい照明環境の抽象記述を生成したとき、デザイナーは、たとえばデザイン・ツール62の検証ボタンをクリックすることによって、本発明に基づく検証プロセスを開始しうる。するとデザイン・ツール62は検証ツール64をトリガーする。検証ツール64は、デザイン・ツール62から抽象記述を受け取り、
・すべての店舗についての検証を実行するために、計算モジュール66から総合された照明エレメント・テンプレートを受け取り、それを抽象記述と比較する。
・あるいは、店舗事例レベルの検証を実行するために、照明エレメント・テンプレート生成器69から個々の店舗の生成された照明テンプレートを受け取り、それを抽象記述と比較する。
【0066】
次いで、検証ツール64は、その照明環境が、すべての店舗において、または個々の店舗において、どのくらいよくレンダリングされうるかを示す。検証の結果は、デザイナーのコンピュータのモニタ上に表示され、それにより、デザイナーは次に、その抽象環境記述がチェーンの種々の店舗の照明システム70、72および74に送信されるかどうかを決定しうる。
【0067】
すでに示したように、本発明は、たとえば自宅用に照明環境を購入する意図のある消費者によって使用されることもできる。その場合、照明環境は、問題となる家庭の照明インフラストラクチャー機能から生成される照明エレメント・テンプレートに対して検証される。照明環境がある種の領域セレクターについて実現可能でない場合、ユーザーへのフィードバックが明瞭かつ具体的な仕方で与えられるべきである。これは、レンダリング問題について、そのレンダリング問題が発生する最も特定的な領域セレクターがユーザーに提供されるべきであることを含意する。AT5についての照明エレメントが領域セレクターAT5およびAT2/AT5の照明エレメント・テンプレートと衝突していた先の例では、ユーザーへの標示は、壁面照明が領域AT2/AT5では可能でないというものであるべきである。実際には、照明デザイナーにとっては、問題は、たとえば図7に示されるような照明デザイナーのコンピュータによって実行される検証モジュール64によって、照明デザインにおいて標示される。一方で、末端消費者にとっては、潜在的な問題は、家庭における照明インフラストラクチャーの表現である照明エレメント・テンプレートを用いて標示される。
【0068】
図8は、ユーザーの家庭照明インフラストラクチャーにおいて抽象環境記述から照明環境を生成するためのシステムを示している。本システムは、ユーザーのパソコン100を有する。パソコン100は、いくつかの照明ユニット114を含む照明システムと通信するインターフェース102を有する。インターフェース102は、通信バス112およびRF通信接続110を介して照明ユニット114と通信するよう適応されている。パソコン100は、照明ユニット114を、特にその照明強度および色を調節するために、通信接続110および112を通じて、制御値または設定を照明ユニット114に送信する。最後に、パソコン100は、サーバー・コンピュータ108からインターネット106を通じて抽象環境記述10を受信するための、ネットワーク・アダプターのような受信手段104を含んでいる。サーバー・コンピュータ108は、抽象照明環境のためのウェブサイトをホストしてもいる。よって、ユーザーは自分のパソコン100を通じてこのウェブサイトにアクセスし、所望の抽象照明環境を選択できる。ウェブサイト上であるボタンをクリックすることによって、パソコン100は、ユーザーのパソコン100に記憶されているユーザーの家庭照明システムの照明ユニット114の照明インフラストラクチャー機能をアップロードしうる。サーバー・コンピュータ108は次いで、たとえば図5に示されるように、ユーザーの照明システムにおいて、所望される照明環境をレンダリングすることが可能かどうかを検証する。検証プロセスが完了すると、結果がウェブサイトによって表示されてもよい。それにより、ユーザーは、所望される照明環境が自分の照明システムにおいてレンダリングされうるかどうかを見る。その後、ユーザーは、たとえば抽象照明環境の供給者に支払いをしたのち、サーバー・コンピュータ108から自分のパソコン100に所望される照明環境の所望される抽象記述をダウンロードしてもよい。パソコン100は、ダウンロードされた抽象環境記述10を処理することを開始してもよい。ダウンロードされた抽象環境記述10はパソコン100において処理され、ユーザーの家庭照明システムにおいて照明環境を実装するために接続110および112を通じて照明ユニット114に通信されうる制御値のセットが得られる。
【0069】
本発明は、抽象照明環境が多数の照明インフラストラクチャーおよび/または部屋レイアウトのために作成されるあらゆる状況に適用できる。目標環境は、たとえば商業環境(店舗、ホテル)、家庭環境、戸外照明およびさらに複雑な照明インフラストラクチャーでありうる。
【0070】
照明環境がある種の照明インフラストラクチャーによって実現できない状況では、たとえばコンピュータ・モニタ上にそれぞれのユーザーのヘルプを表示することによって、店舗/家庭内のどの意味論的領域(単数または複数)にどんな型の照明ユニットを追加すべきかについて助言が与えられることもできる。
【0071】
検証プロセスのような本発明の機能の少なくとも一部は、ハードウェアまはたソフトウェアによって実行されうる。ソフトウェアでの実装の場合、単一または複数の標準的なマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ構成が使用されうる。本発明は、単一または複数のアルゴリズムによって実装されうる。
【0072】
「有する」の語は他の要素やステップを排除しないこと、要素の単数形の表現は複数を排除しないことを注意しておくべきである。さらに、請求項に参照符号があったとしても、その発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動的に検証する方法であって:
・照明インフラストラクチャーの照明インフラストラクチャー機能を電子的に受け取る段階であって、ここで、照明インフラストラクチャー機能は、目標環境上での照明インフラストラクチャーのある照明ユニットの照明型、強度範囲、照明効果および該効果の位置を記述する、段階と、
・受け取った照明インフラストラクチャー機能を自動処理する段階と、
・前記抽象記述からの前記照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかを信号伝達する段階とを有する、
方法。
【請求項2】
前記照明インフラストラクチャーのすべての個々にアドレッシング可能な照明ユニットについての照明インフラストラクチャー機能を自動的に生成する段階をさらに有する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
個々にアドレッシング可能な照明ユニットについての照明インフラストラクチャー機能が、前記照明インフラストラクチャーの照明ユニット・コントローラによって生成され、前記照明ユニット・コントローラは、その制御インターフェースの記述を提供し、制御される照明ユニットを宣言する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
個々にアドレッシング可能な照明ユニットについての照明インフラストラクチャー機能が、較正、特に暗室較正によって生成され、ここで、較正においては、特定の制御セットの効果が前記照明ユニット上で実行され、制御された照明ユニットの効果がカメラおよび/またはセンサーによって測定される、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
受け取った照明インフラストラクチャー機能を自動処理する前記段階が、
ある基準に従って、いくつかの照明インフラストラクチャー機能を照明インフラストラクチャー機能のより大きなグループにクラスター化する段階を含む、
請求項1ないし4のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記クラスター化のためには、以下の基準、すなわち:
・同じ型の諸照明ユニット;
・照明インフラストラクチャーにおける隣接し合う位置において同様の効果を生成する諸照明ユニット;および
・ある意味論的領域において効果をもつ諸照明ユニット、
のうちの一つまたは複数が使用される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
受け取った照明インフラストラクチャー機能を自動処理する前記段階が:
・照明インフラストラクチャーの受け取られた照明インフラストラクチャー機能から照明エレメント・テンプレートを生成する段階であって、ここで、照明エレメント・テンプレートは、照明インフラストラクチャーのある意味論的位置における前記照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含む、段階と、
・生成された照明エレメント・テンプレートを、前記抽象記述の照明エレメントと比較する段階とを含む、
請求項1ないし6のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
照明インフラストラクチャーの利用可能な照明ユニットおよびその機能についての情報を、サービスおよびデバイス発見機構によって、ネットワーク環境において利用可能にするさらなる段階を有する、
請求項1ないし7のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか一項記載の方法であって、さらに、
・クライアントがサーバーと通信することによって照明環境を選択する段階と、
・前記クライアントから前記サーバーに照明インフラストラクチャーの照明インフラストラクチャー機能を送信する段階と、
・受信された照明インフラストラクチャー機能を自動的に処理する段階と、
・前記サーバーから前記クライアントに前記処理の結果を送信する段階と、
・前記クライアント上で、受信された処理結果に依存して、前記選択された抽象記述からの前記照明環境のレンダリングが可能であるかどうかを合図する段階とを有する、
方法。
【請求項10】
前記照明インフラストラクチャー機能が、照明インフラストラクチャーの照明コントローラのネットワーク接続を通じて電子的に受信される、請求項1ないし9のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
コンピュータによって実行されたときに請求項1ないし10のうちいずれか一項記載の方法を実行できるようにされているコンピュータ・プログラム。
【請求項12】
請求項11記載のコンピュータ・プログラムを記憶している記録担体。
【請求項13】
抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動的に検証するシステムであって、
・照明インフラストラクチャーの照明インフラストラクチャー機能を電子的に受け取る受領手段であって、ここで、照明インフラストラクチャー機能は、目標環境上での照明インフラストラクチャーのある照明ユニットの照明型、強度範囲、照明効果および該効果の位置を記述する、受領手段と、
・受け取った照明インフラストラクチャー機能を自動処理する処理手段と、
・前記抽象記述からの前記照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかを信号伝達する信号伝達手段とを有する、
システム。
【請求項14】
・前記照明環境の抽象記述を生成するために適応された照明環境デザイン・モジュールと、
・前記受領手段、処理手段および信号伝達手段を有する検証モジュールとを有する、
請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記検証モジュールは、コンピュータによって実行されるコンピュータ・プログラムとして実装される、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記コンピュータは、前記受領手段を有する通信モジュールを有する、請求項15記載のシステム。

【図1】
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【図2A−I】
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【図2A−II】
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【図2B−I】
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【図2B−II】
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【図2C−I】
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【図2C−II】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−526363(P2010−526363A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504963(P2010−504963)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051624
【国際公開番号】WO2008/135894
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.ZIGBEE
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】