説明

担架

【課題】 折畳み機能を備えた担架について、小型に折畳めるようにする。
【解決手段】 要救助者が仰臥される臥床体1と、臥床体1の周囲を囲み臥床体1を支持する枠体2とを備えている。臥床体1,枠体2は、幅方向の線に沿って折畳み可能とされている。臥床体1,枠体2は、要救助者の頭付近が載せられる前部21と、要救助者の臀付近が載せられる中央部22と、要救助者の足付近が載せられる後部23とに分割されている。臥床体1,枠体2の前部21は、中央部22の上面側に折畳まれる。臥床体1,枠体2の後部23は、中央部22の下面側に折畳まれる。臥床体1,枠体2は、3つ折とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳み機能を備えた担架に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、山岳地帯やビルでの要救助者の迅速な救助要請に対応するため、ヘリコプター等に吊下げ使用することができるように、簡素な構造でしかもかなりの程度の強度を有するように構成された担架が提供されてきている。
【0003】
従来、吊下げ使用を可能にすることを指向した担架としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、要救助者が仰臥される臥床体と臥床体の周囲を囲み臥床体を支持する枠体とを備え、臥床体,枠体が幅方向の線に沿って2つ折に折畳み可能とされた担架が記載されている。
【0005】
特許文献1に係る担架は、展開された状態では臥床体に要救助者を仰臥させて枠体をロープで吊下げることができ、折畳まれた状態では救助員が枠体に取付けられたバンドで背負って要救助者がいる救助地点まで簡単に運搬することができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 実公平2−26491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る担架では、折畳まれてもかなり大型であるため、狭隘な場所(例えば、ヘリコプターの機内やビルの階段)では背負った救助員の行動が制約されてしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、小型に折畳むことができるようにした担架を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明に係る担架は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0010】
即ち、請求項1では、要救助者が仰臥される臥床体と臥床体の周囲を囲み臥床体を支持する枠体とを備え、臥床体,枠体が幅方向の線に沿って折畳み可能とされた担架において、臥床体,枠体が要救助者の頭付近が載せられる前部と要救助者の臀付近が載せられる中央部と要救助者の足付近が載せられる後部とに分割され、前部が中央部の上面側に折畳まれ後部が中央部の下面側に折畳まれる3つ折とされていることを特徴とする。
【0011】
この手段では、前部,中央部,後部の3つ折とされて中央部に対して前部,後部が逆側に折畳まれることで、折畳み構造を複雑化,大型化させることなく2つ折よりも長さを短縮させることができる。
【0012】
また、請求項2では、請求項1の担架において、臥床体は前部,中央部,後部の分割部分で分離され、枠体は前部,中央部,後部の分割部分で短尺の中継部材の両端部にそれぞれ軸で回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0013】
この手段では、枠体が前部,中央部,後部の分割部分で中継部材に2軸で連結されることで、折畳み断面がコ字形となる。
【0014】
また、請求項3では、請求項2の担架において、枠体は枠体に嵌合されスライドして中継部材,軸を含む前部,中央部,後部の分割部分を覆うことのできるスリーブからなるロック機構を備えていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、枠体にスリーブからなるロック機構を備えることで、枠体の前部,中央部,後部の分割部分を覆って展開された状態が確実に保持される。
【0016】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれかの担架において、枠体は前部,中央部,後部にそれぞれ下方に短く突出された脚部が取付けられ、脚部は下方側が湾曲した形状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、枠体に湾曲した形状の短い脚部が取付けられることで、要救助者の収容搬送手段の床面に小さな支持面積で要救助者を仰臥させた臥床体を非接触的に載置することができる。
【0018】
また、請求項5では、請求項1〜3のいずれかの担架において、枠体は前部,中央部,後部にそれぞれ下方に短く突出された脚部が取付けられ、脚部は下方側に平坦な平坦面部が設けられ平坦面部の片側に枠体に対して急角度で傾斜した急斜面部が設けられ他の片側に枠体に対して緩角度で傾斜した緩斜面部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この手段では、枠体に平坦面部,急斜面部,緩斜面部からなる形状の短い脚部が取付けられることで、要救助者の収容搬送手段の床面に小さな支持面積で要救助者を仰臥させた臥床体を非接触的に載置することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る担架は、前部,中央部,後部の3つ折とされて中央部に対して前部,後部が逆側に折畳まれることで、折畳み構造を複雑化,大型化させることなく2つ折よりも長さを短縮させることができるため、小型に折畳むことができるようになる効果がある。
【0021】
さらに、請求項2として、枠体が前部,中央部,後部の分割部分で中継部材に2軸で連結されることで、折畳み断面がコ字形となるため、折畳みの積層厚みが厚くなるのを避けることができる効果がある。
【0022】
さらに、請求項3として、枠体にスリーブからなるロック機構を備えることで、枠体の前部,中央部,後部の分割部分を覆って展開された状態が確実に保持されるため、枠体の前部,中央部,後部の分割部分が不測に折畳み方向に動作することが防止され、安全性が確保される効果がある。
【0023】
さらに、請求項4として、枠体に湾曲した形状の短い脚部が取付けられることで、要救助者の収容搬送手段の床面に小さな支持面積で要救助者を仰臥させた臥床体を非接触的に載置することができるため、脚部による収容搬送手段の床面の傷付け損傷が防止されるとともに収容搬送手段の床面を脚部で滑り移動させることができ、しかも要救助者を収容搬送手段の床面からの熱伝導を遮断して衛生的に収容することができる効果がある。
【0024】
さらに、請求項5として、枠体に平坦面部,急斜面部,緩斜面部からなる形状の短い脚部が取付けられることで、要救助者の収容搬送手段の床面に小さな支持面積で要救助者を仰臥させた臥床体を非接触的に載置することができるため、脚部による収容搬送手段の床面の傷付け損傷が防止されるとともに収容搬送手段の床面を脚部で滑り移動させることができ、しかも要救助者を収容搬送手段の床面からの熱伝導を遮断して衛生的に収容することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明に係る担架を実施するための形態の第1例の側面図であり、(A)に展開状態が示され、(B)に折畳み状態が示されている。
【図2】 図1(A)の平面図である。
【図3】 図1(B)の平面図である。
【図4】 図1(B)の底面図である。
【図5】 本発明に係る担架を実施するための形態の別の担架との組合わせ使用例を示す平面図であり、(A)に別の担架が示され、(B)に組合わせ状態が示されている。
【図6】 本発明に係る担架を実施するための形態の第2例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る担架を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図5は、本発明に係る担架を実施するための形態の第1例を示すものである。
【0028】
この形態は、特許文献1に係る担架と同様に、要救助者が仰臥される臥床体1と、臥床体1の周囲を囲み臥床体1を支持する枠体2とを備えている。
【0029】
臥床体1は、図2に示すように、小孔が多数穿孔されたアルミニウム等の金属板で軽量に形成され、要救助者の頭付近が載せられる前部11と、要救助者の臀付近が載せられる中央部12と、要救助者の足付近が載せられる後部13とに、長さ方向で3つに分割されて分離されている。前部11は、上板11a,下板11bの2層構造とされている。前部11,中央部12は、ほぼ同じ長さに形成されている。後部13は、前部11,中央部12よりも長さが短く膝から足先までが載せられるようになっている。
【0030】
枠体2は、図1,図2に示すように、チタンを含む強靱な金属パイプが臥床体1の周囲を囲むようにほぼ長方形線上に配設され、臥床体1の前部11,中央部12,後部13に対応した前部21,中央部22,後部23に分割されている。なお、前部21,中央部22,後部23には、臥床体1の前部11,中央部12,後部13がそれぞれ固定される。前部21,中央部22の分割部分は、下部が突当てられる直線形部21a,22aとされ上部が湾曲して互いに離間する湾曲線形部21b,22bとされて幅方向(長さ方向に直交する方向)の形状がコ字形に形成され、コ字形に差込まれた短尺の板形の中継部材3にそれぞれ軸4で回動可能に連結されている。中央部22,後部23の分割部分は、上部が突当てられる直線形部22a,23aとされ下部が湾曲して互いに離間する湾曲線形部22b,23bとされて幅方向の形状がコ字形に形成され、コ字形に差込まれた短尺の板形の中継部材3にそれぞれ軸4で回動可能に連結されている。前部21の前端部分は、長さ方向に伸縮されるスライド構造が備えられ、ノブ形のハンドル24で伸縮位置が固定されるようになっている。
【0031】
枠体2の前部21,中央部22,後部23の両側部には、それぞれ幅方向に相対するように、上方に短く突出して吊下用のロープ,フック(カラビナ)等が掛けられる掛金部5と、下方に短く突出して要救助者の床面に設置される脚部6とが固定されている。脚部6は、下方側が湾曲した形状に形成されている。また、枠体2の前部21の前端部と後部23の後端部とには、段付き合成樹脂ブロックからなる補助担架支持具7が固定されている。
【0032】
枠体2の前部21,中央部22,後部23の分割部分には、枠体2に嵌合されスライドして中継部材3,軸4を含む分割部分を覆うことのできるスリーブからなるロック機構8が設けられている。
【0033】
この形態は、図1(B),図3,図4に示すように、臥床体1の前部11,中央部12,後部13と枠体2の前部21,中央部22,後部23との分割部分から3つ折に折畳むことができる。この折畳みでは、枠体2の前部21,中央部22の分割部分が直線形部21a,22a,湾曲線形部21b,22bの形状によって、臥床体1の前部11と枠体2の前部21とが臥床体1の中央部12と枠体2の中央部22との上面側に折畳まれ、臥床体1の後部13と枠体2の後部23とが臥床体1の中央部12と枠体2の中央部22との下面側に折畳まれることになる。そして、枠体2の前部21,中央部22,後部23との分割部分の折畳み断面が中継部材3と2個の軸4とでコ字形となる。従って、折畳み構造を複雑化,大型化させることなく2つ折よりも長さを短縮させることができる。この結果、狭隘な場所でも背負った救助員の行動が制約されることがなくなる。
【0034】
要救助者に駆けつけた救助者は、臥床体1,枠体2を回動させる簡単な操作によって、臥床体1,枠体2を展開させることができる。
【0035】
展開された状態では、図1(A),図2に示すように、臥床体1に要救助者を仰臥させることができ、掛金部5にロープ,フック等を掛けロック機構8をロックすることでそのまま吊下げることができる。吊下げられた状態では、枠体2の強靱性と掛金部5が枠体2の前部21,中央部22,後部23のそれぞれに設けられていることによって、要救助者の体重による臥床体1を含んだ全体の変形,歪みを防止することができる。従って、要救助者を安全に吊下げ搬送することができる。
【0036】
要救助者の吊下げ搬送中では、ロック機構8によって展開された状態が保持される。仮に、ロック機構8が機能しないことがあっても、枠体2の前部21,中央部22の分割部分が直線形部21a,22a,湾曲線形部21b,22bの形状によって不測に折畳まれるのを阻止される。なお、枠体2の中央部22,後部23の分割部分では、不測に折畳まれることがあっても、要救助者の膝から足先が曲がるだけで本質的な仰臥の姿勢に変化がないため、安全性は確保される。
【0037】
また、ヘリコプターの機内や救急車の車内等の収容搬送手段の床面に臥床体1に要救助者を仰臥させて載置した場合には、脚部6の小さな支持面積で床面に接触するだけであるため、要救助者を床面の冷温熱の伝導から保護することができる。また、脚部6が収容搬送手段の床面にスペースを形成して、臥床体1,枠体2,要救助者を床面に対して非接触状態とすることができるため、要救助者の衛生状態を良好に保持することができる。また、脚部6の接地部となる下方側が湾曲形状であるため、収容搬送手段の床面を滑り移動させ小さな障害物があってもスムースに乗越えさせることができ、収容搬送手段の床面を傷付け損傷することもない。
【0038】
さらに、この形態は、図5に示すように、図5(A)に示すような補助担架9を臥床体1,枠体2の上にセットすることができる。補助担架9は、補助担架支持具7に係合固定される。なお、補助担架9に対応して、枠体2の前部21を伸縮調整することができる。
【0039】
図6は、本発明に係る担架を実施するための形態の第2例を示すものである。
【0040】
第2例では、脚部6について、下方側に平坦な平坦面部が設けられ、平坦面部の片側に枠体2に対して急角度で傾斜した急斜面部6aが設けられ、他の片側に枠体2に対して緩角度で傾斜した緩斜面部6bが設けられている。なお、両側で6つとなる脚部6の緩斜面部6bは、それぞれ枠体2の後部23側に向けられている。
【0041】
第2例によると、第1例の滑り移動,障害物の乗越えの作用,効果については、緩斜面部6bを移動方向に向けることで同様の作用,効果を得ることができる。
【0042】
また、脚部6に平坦面部が設けられているため、脚部6の接地部の面積が拡張され、要救助者を仰臥させて載置した場合の安定性が確保される。なお、脚部6の平坦面部の片側を急斜面部6aとすることで、脚部6の全体の大型化が避けられる。
【0043】
以上、図示した形態の外に、吊下用ロープ,吊下用フック,背負用ベルト,要救助者固定用安全ベルト等を予め取付けておくことも可能である。
【0044】
さらに、ロック機構8のロック機能を高めるために、ロック位置で枠体2に係合,螺合させる構造を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 臥床体
11 前部
12 中央部
13 後部
2 枠体
21 前部
22 中央部
23 後部
3 中継部材
4 軸
6 脚部
8 ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要救助者が仰臥される臥床体と臥床体の周囲を囲み臥床体を支持する枠体とを備え、臥床体,枠体が幅方向の線に沿って折畳み可能とされた担架において、臥床体,枠体が要救助者の頭付近が載せられる前部と要救助者の臀付近が載せられる中央部と要救助者の足付近が載せられる後部とに分割され、前部が中央部の上面側に折畳まれ後部が中央部の下面側に折畳まれる3つ折とされていることを特徴とする担架。
【請求項2】
請求項1の担架において、臥床体は前部,中央部,後部の分割部分で分離され、枠体は前部,中央部,後部の分割部分で短尺の中継部材の両端部にそれぞれ軸で回動可能に連結されていることを特徴とする担架。
【請求項3】
請求項2の担架において、枠体は枠体に嵌合されスライドして中継部材,軸を含む前部,中央部,後部の分割部分を覆うことのできるスリーブからなるロック機構を備えていることを特徴とする担架。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの担架において、枠体は前部,中央部,後部にそれぞれ下方に短く突出された脚部が取付けられ、脚部は下方側が湾曲した形状に形成されていることを特徴とする担架。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの担架において、枠体は前部,中央部,後部にそれぞれ下方に短く突出された脚部が取付けられ、脚部は下方側に平坦な平坦面部が設けられ平坦面部の片側に枠体に対して急角度で傾斜した急斜面部が設けられ他の片側に枠体に対して緩角度で傾斜した緩斜面部が設けられていることを特徴とする担架。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115628(P2012−115628A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283699(P2010−283699)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(591037395)株式会社エムズウイング (1)
【出願人】(510335111)サンコー株式会社 (1)