拡張可能な複数のアンテナパスを用いたビーム形成を用いたEHF無線通信受信機
予め決定された周波数帯域において複数の信号のビームを受信するように設けられた位相アレイ無線装置を備えたEHF無線通信受信機に関する。位相アレイ無線装置は、それぞれが複数の着信信号の1つを処理して差動I/Q出力信号を形成するために設けられた複数のアンテナパスを備え、各アンテナパスは低域周波数変換部及び制御可能な位相シフトを印加するための位相シフティング部を備え、信号合成回路はアンテナパスと接続されて差動I/Q信号を合成するように設けられる。制御回路は、アンテナパスの位相シフティング部に接続されて制御可能な位相シフトを制御するように設けられる。各アンテナパスにおいて、位相シフティング部は低域周波数変換部からのベースバンド部ダウンストリームであり、制御可能な利得をI/Qブランチにおいてそれぞれに低域周波数変換された着信信号に適用するために設けられた可変利得増幅器のセットを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のプリアンブルに係る極めて高い周波数(EHF)受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
極めて高い周波数(EHF)は、30GHzから300GHzの周波数範囲をカバーする最も高い無線周波数帯域である。この帯域以下で演算する複数の無線アプリケーションと比較すると、自由空間パス損失が非常により高い。従って、ビーム形成を用いた複数のアンテナアレイがより長距離を介する送信を実行するために使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEEE802.15 WPAN Millimeter wave alternative PHY task group 3c(TG3c), http://www.ieee802.org/15/pub/TG3c.html.
【非特許文献2】Ecma TC48 draft standard for high rate 60 GHz WPANs, Ecma/TC48/2008/144, http://www.ecma‐international.org/publications/files/drafts/tc48‐2008‐144.pdf.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EHF帯域内で、60GHz周辺の7GHz帯域は、異なる新生の複数の無線通信アプリケーションが予想される。アンテナパスの数は、異なる複数のアプリケーションに対して異なってもよい。10メートル(例えば、HDTVと高精細度DVDプレイヤとの間のHDTVデータの転送など。)までの距離に対して、16個のアンテナのアレイが必要とされるかもしれない。数メートルまでの距離に対して、N個のアンテナの数は、受信機において合成される必要があるN個のアンテナパスに対応する。パフォーマンスの損失なしに非常に多数のパスを合成させることが課題である。
【0005】
本発明の目的は、異なる複数のアンテナパス上で受信される複数の信号が、通常は複数の高い周波数において複数の信号を合成する従来の複数の合成方法よりもより小さいパフォーマンス劣化且つより低い電力消費量を用いて合成されるEHF無線通信受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、第1の独立請求項の特徴を示すEHF無線通信受信機を用いて達成される。
【0007】
本発明のさらなる目的は、複数の異なるアンテナパス上で受信された複数の信号がより良いパフォーマンスを用いて合成されるEHF無線通信信号を受信するための方法を提供することにある。
【0008】
本発明によれば、このさらなる目的が、第2の独立請求項の複数のステップを実行する方法を用いて達成される。
【0009】
本発明のEHF無線通信受信機及び方法において、複数のビーム形成演算(位相シフティング及び信号合成)が、低域周波数変換後に実行され、すなわち、これはアナログベースバンドにおいて実行される。このことが、回路の複数の寄生キャパシタンス及び複数の寄生インダクタンスにより減少した損失を考慮して、パフォーマンスを改善することができるということを発見した。さらに、ベースバンドにおいてこれらの複数の演算を実行することが、当該複数の演算が実行されるより低い周波数を考慮して、電力消費量の有利な条件であることが発見される。
【0010】
本発明のアーキテクチャは、アンテナパスの数に関して拡張可能であるという利点を有する。
【0011】
本発明のEHF無線通信受信機及び方法において、位相シフティングが、制御可能な複数の利得を、各アンテナパスの複数のI/Qブランチにおいてそれぞれ低域周波数変換された複数の着信信号に適用するように設けられた複数の可変利得増幅器のセットを用いて実行される。制御回路が、複数の可変利得増幅器の制御可能な複数の利得を、ビーム形成を実行するために決定された位相シフトがそれぞれのアンテナパスにおけるそれぞれの着信信号に対して印加されるということを用いて、回転行列の複数の係数に比例する複数の値に設定するように設けられる。これには、位相シフトを印加することに加えてそれぞれの着信信号に対して利得を加えることを含んでもよいし、もしくは含まなくてもよい。
【0012】
より好ましい実施態様において、低域周波数変換部は、1つのステップにおいて着信信号をベースバンドに低域周波数変換するように備えられたダイレクト低域周波数変換部である。
【0013】
より好ましい実施態様において、位相アレイ無線装置は、相互に同期される複数の位相ロックループ(PLL)を備え、各位相ロックループは少なくとも1個のアンテナパスの低域周波数変換部に接続され、そのために局部発振信号を生成することを提供する。そのようなPLLの出力における電圧制御発振器(VCO)は、ダイレクト低域周波数変換のために必要とされる複数の差動直交位相信号を提供する直交位相VCO(QVCO)である。複数の位相ロックループの使用は、PLL位相ノイズに関する仕様を緩和することができるすべてのアンテナパスに対する共通の位相ロックループを用いるという利点を有する。例えば、すべてのアンテナパスがそれ自身のPLLを有する場合は、相関関係のない各VCOからの複数の位相ノイズ寄与は、位相ノイズにより生じる複数の信号歪みが構成的に合成されないので平均化することができる。
【0014】
好ましくは、各位相ロックループは、位相ノイズのパフォーマンス及び複数のLOバッファリングの要件を電力及び面積消費量と最適にトレードオフするために、少なくとも2個のアンテナパスの低域周波数変換部に接続される。
【0015】
より好ましい実施態様において、複数の信号リピータが、複数のアンテナパスと異なる複数のアンテナパスの複数の信号が合成される場所との間の距離をブリッジする複数の相互接続配線の2つの部分の間に挿入される。複数の信号リピータはそれぞれ複数の電流増幅器であってもよい。この方法において、多数のアンテナパスを合成することによりチップ上をブリッジされなければならない距離が帯域幅を制限するということが回避される。これらの複数の電流増幅器の低入力インピーダンスのために、複数の接続配線の入力インピーダンス及び寄生キャパシタンスの実数部分により生じる極が、ベースバンド信号の帯域幅を超えて容易に置かれる。結果として、本発明のアーキテクチャは、それが多数のアンテナパスをともに接続することのオーバーヘッドによるパフォーマンス損失なしで多数のアンテナパスへの拡張に適するので、アンテナパスの数に関して拡張可能である。
【0016】
より好ましい実施態様において、受信機が、60GHz周辺の帯域におけるAV−OFDM通信のために設けられる。
【0017】
本発明がさらに、以下の記述及び添付図面を用いて説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】受信機アーキテクチャを図示する。
【図2】チップ上のネットワークの概念を図示する。
【図3】LOバッファリングとミキサとを結合するために使用される変換器を図示する。
【図4】複数の位相シフタ、複数の信号合成器及び複数のベースバンド信号リピータにおいて使用される電流増幅器の簡単化された概略図を示す。
【図5】信号合成の原理を図示する。
【図6】フロアプランの一部を図示する。
【図7】RF周波数の関数として変換利得をプロットする。
【図8】ベースバンド周波数の関数としてノイズ指数をプロットする。
【図9】周波数の関数と異なる複数のLO振幅に対する関数として利得(左)とノイズ指数(右)をプロットする。
【図10】電力消費量の分析(ブレイクダウン)を示す。左:チップの複数のシミュレーションに基づいた。右:LOバッファリングを除き同じ。
【図11】チップの一部のフロアプランを図示する。
【図12】12個のアンテナ受信機の一部のフロアプランを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明が特定の実施形態に関して及びある図面を参照して説明されるであろうが、発明はそれに限定されないが、特許請求の範囲だけによって限定される。記載された図面は概略図だけであって限定されない。図面において、いくつかの構成要素の大きさは例示的な目的のために誇張され、同一寸法で描かれないかもしれない。寸法及び相対寸法は必ずしも発明を実施するために実際の縮図には対応しない。
【0020】
さらに、説明中及び特許請求の範囲における第1、第2、第3の用語及び同等のものが、同じ構成要素の間で区別するために使用されて、必ずしも連続して起こるまたは年代の順番のために使用されるものではない。用語は適切な環境のもとでは相互に交換でき、発明の実施形態がここで説明され図示されたもの以外の他のシーケンスにおいて演算することができる。
【0021】
さらに、説明中及び特許請求の範囲におけるトップ(top)、ボトム(bottom)、オーバー(over)、アンダー(under)の用語及び同等のものが、説明的な目的のために使用されて、必ずしも相対的な位置を説明するために使用されるものではない。そのように用いられた用語は適切な環境のもとでは相互に交換でき、ここで説明された発明の実施形態はここで説明され図示されたもの以外の他の適応例において演算することができる。
【0022】
特許請求の範囲に用いられた用語“備える(comprising)”は、その後に挙げられた手段に限定されるように解釈されるべきではなく、それは他の構成要素またはステップを除かない。それは、言及された記載された特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するように解釈されるために必要であるが、1つもしくはそれ以上の他の特徴、整数、ステップまたはそのグループの存在または追加を除かない。従って、“手段A及びBを備える装置”という表現は構成要素A及びBだけから構成する装置に限定されるべきではない。本発明に関しては、それは装置の関連した構成要素がA及びBだけであることを意味する。
【0023】
特に、本発明は、ビーム形成が使用されるEHF帯域内、好ましくは60GHz周辺帯域内で複数のRF信号を受信するための装置及び方法を提示する。その考えは、アナログベースバンドにおいて複数のビーム形成演算(位相シフティング及び信号合成)を実行することである。RFにおける複数のビーム形成演算と比較すると、ベースバンドにおける複数のビーム形成演算は電力消費量に関してより安価であり、より小さいパフォーマンスの劣化をもたらす。好ましくは、非常に多くの数のアンテナパスの場合には、チップ上でブリッジされなければならない距離の結果としてのパフォーマンスの劣化は、複数の長い配線間において電流増幅器を用いることにより回避される。複数の長い配線の複数の寄生キャパシタンスによる複数の帯域幅制限は、複数の電流増幅器の低入力インピーダンスのために克服される。すなわち、そのインピーダンスの実数部分が、予想された信号帯域幅を超えた相互接続キャパシタンスを有する極を形成する。
【0024】
複数のビーム形成の演算がベースバンドにおいて実行されるので、好ましくは複数の局部発振器信号を当てにする複数の低域周波数変換ミキサである複数の低域周波数変換回路部が各アンテナ/信号パスにおいて必要とされる。共通の局部発振器信号の分配の問題は、例えば2個のアンテナパスにつき1個のPLLなどの複数の位相ロックループ(複数のPLL)を使用することにより回避される。異なる複数のPLLは、同一の基準周波数信号を用いて相互に同期される。これは、多数のアンテナパスの場合に必要とされる長距離を介して容易に分配される低周波数信号である。このアプローチは、多数のアンテナパス(チップ上長距離を介して)に対して高周波局部発振器信号の分配を必要とする1個の中心のPLLを使用するよりもより小さいパフォーマンスの劣化をもたらす。
【0025】
本発明は、これに限定されないが4個のアンテナパスを備えた40nmCMOSにおける受信機設計により以下に例示されるであろう。複数のミリ波アプリケーションに対して、使用される複数のCMOS技術は90nm世代又はそれ以下である。これらの複数の世代のものが、複数のミリ波信号を十分正確に処理できるほど高速である複数のトランジスタを特徴付ける。例示の実施形態においては、40nmCMOSが使用される。実施例には、複数のLNA入力からチャンネル選択のための複数のアナログベースバンドフィルタの出力までの回路を含む。ビーム形成が、アナログベースバンドにおける位相シフティング及び信号合成により実行される。低域周波数変換が1つのステップにおいて実行される(ゼロIF)。
【0026】
異なる複数の構築ブロックのパフォーマンスは、いわゆるチップ上のネットワークを用いてデジタル的にプログラム可能となっている。30dB周辺の変換利得の設定を用いて、受信機チップのノイズ指数は約8.5dB(それは、周波数に伴いわずかに変化する。)である。受信機チップの電力消費量は398mWである。このノイズ指数を用いて且つ複数のアナログベースバンドフィルタ(すなわち、例えば40nmプロセスにおいてスタンドアロンで設計された可変利得増幅器(VGA)とアナログからデジタルへの変換器(ADC))の後段にあるアンテナインターフェース及び複数の受信機ブロックの複数の信号劣化を考慮して、次に(20.5dBの信号対ノイズ比を必要とする)複数のOFDMキャリア上でQAM16変調を用いて、完全な受信機は、AV−OFDMに対する802.15.3c規格において規定された値である−50dBmよりも良い感度レベルを有する。ADCの電力消費量及びVGAに対する評価値を考慮すると、受信機全体では422mWを消費する。この消費量からの27%がLOバッファリングに行く。複数のシミュレーションではさらに、このバッファリングの電力消費量が大きな出力スイングを維持する間は79mWが用いられることが示されている。これが、完全な受信機の電力消費量を343mWへともたらす。
【0027】
提案された発明のアーキテクチャは、アンテナパスの数に関して高い程度のスケーラビリティの受信機を示す。
【0028】
使用される技術は、40nmデジタルCMOS技術である。それは7つの金属レベル(銅)及び厚いトップアルミニウム層を用いる。
【0029】
受信機アーキテクチャが、図1に図示される。EHF無線通信受信機(1)は、EHF範囲内で予め決定された周波数帯域内において複数の着信信号のビームを受信するように設けられた位相アレイ無線装置(2)を備える。当該無線装置(2)は、複数のアンテナパス(3)を備え、各アンテナパスが複数の着信信号(4)のうちの1つを処理して当該着信信号から差動I/Q出力信号(5)を形成する。各アンテナパスは、着信信号をベースバンドに低域周波数変換するための低域周波数変換部(6)及び制御可能な位相シフトを着信信号に印加するための位相シフティング部(7)を有する複数のIブランチ及び複数のQブランチを備える。当該無線(2)はさらに、複数のアンテナパスと接続されて差動位相シフトされた複数のI/Q出力信号を合成された差動I/Q信号に合成するように設けられた信号合成回路(8)と、複数のアンテナパスの位相シフティング部と接続されて制御可能な位相シフトを制御するように設けられた制御回路(9)とを備える。位相シフティング部は、制御可能な複数の利得を、複数のI/Qブランチにおいてそれぞれ低域周波数変換された複数の着信信号に適用するように設けられた複数の可変利得増幅器のセット(10)を備える。受信機アーキテクチャは、ダイレクト低域周波数変換を使用する。ビーム形成は、アナログベースバンド部において低域周波数変換後に実行され、ここで着信信号が差動I/Qフォーマットで構成している。もしこの演算をRFにおいて実行するならば、その時は最初にI/Q信号が生成される必要があり、例えば直交位相全通過フィルタなどの追加の回路が必要となる。
【0030】
位相シフティングが、必要とされる位相シフト
【数1】
の適切な複数の正弦波及び複数の余弦波を用いてI信号及びQ信号(5)を乗算することにより実行され、結果として新しい位相シフトされたI値及びQ値を得る。実際、位相シフティング後のI値及びQ値をI’及びQ’と表示し、それらは元のI値とQ値と次式のように関連付けられる。すなわち、
【0031】
【数2】
【0032】
この演算は、すべてのアンテナパス(3)の任意のIベースバンド信号及びQベースバンド信号(5)に適用される。デジタル的に制御可能な利得を有する複数の増幅器(10)を用いて実行される。位相シフトのオンチップキャリブレーションもまた提供される。複数の低域周波数変換ミキサの出力が電流であるので複数の可変利得増幅器は複数の電流増幅器として実装される。さらに、このポイントにおいて信号強度を増加させるためにいくつかの追加の利得を加えることができる。これが、式(1)における共通のスケールファクタAを導入することにより実施される。
【0033】
【数3】
【0034】
これが回転行列の形式で以下のように書かれる。
【0035】
【数4】
【0036】
位相シフティング後、すべての新しいQ’信号と同時にすべての新しいI’信号が合計される(8)。この総和が電流領域において実行される(複数の電流の総和)。そのような総和は、複数の電圧の総和よりもより線形に行うことが可能である。
【0037】
アナログベースバンドにおけるビーム形成は、RFにおける複数のビーム形成演算(位相シフティング及び総和)と比較すると、特に多数のアンテナパスに対して複数の利点を有する。実際、多数のアンテナパスに対して、位相シフトされた複数の信号間の距離(この位相シフトがどのように行われようとも)と合成された1個又は複数の出力は不可避的に大きい。複数の高周波においてこの距離をブリッジすることは、複数の高周波において演算するいくつかの信号リピータを必要として多くの電力を消費するかもしれない長い複数の伝送配線を駆動させる必要がある場合には、損失が多く、及び/又は電力を必要とする可能性がある。さらに、そのような複数のリピータは、プロセス許容範囲及び/又は小さい複数の寄生により周波数においてシフトされる通過帯域を有することができる複数の共振負荷を使用する。このことが損失を生じさせる可能性がある。
【0038】
RFにおける位相シフティングと比較すると、ベースバンド位相シフティングは、よりロバスト性が高く、よりコンパクトである。実際、ベースバンドにおいて、複数のバルキーインダクタ又は複数の伝送配線を用いた複数の共振回路の必要はない。さらに、相互接続から及び異なる複数の構成要素からの複数の寄生に関する複数のモデリング誤差は、大した役割を果たさない。実際、モデリング/シミュレーションと現実との間の差の数フェムトファラッドは、ベースバンドにおいて無視することができる。これがアナログベースバンド回路のパフォーマンスをミリ波回路よりもより予測可能とさせる。これがまた、LOパスにおける位相シフティングを用いる目的の利点でもある。
【0039】
アナログベースバンド部が、2個のチャンネルを用いてチャンネル合成する可能性を考慮するために設計された。この目的を達成するために、複数の回路の帯域幅はプログラム可能とされている。
【0040】
PLL位相ノイズに関する仕様を軽減するために、1以上のPLL(11)が使用される。全てのアンテナパスがそれ自身のPLL(11)を有すると仮定する。その場合において、相関関係のない各VCOからの複数の位相ノイズ寄与は、位相ノイズにより生じる複数の信号歪みが信号合成において構成的に合成されないので平均化することができる。同様の理由が、すべての複数のPLLに共通である基準周波数からの位相ノイズの高域周波数変換を除き、PLLにおける他の複数のノイズ源に有効である。しかしながら、60GHzのPLLの位相ノイズは、高域周波数変換された基準ノイズにより支配されないので、平均化することがいまだに効果を有し、係数10×log10(N)(ここで、Nはアンテナパスの数である。)を有する位相ノイズの減少をもたらす。
【0041】
位相ノイズのパフォーマンス及び複数のLOバッファリングの要件を、電力及び面積消費量と最適にトレードオフするため、N個以下のPLLが使用される。受信機チップにおいて、2個のアンテナパス当たり1個のPLLが使用される。4個のアンテナパスは、40nmCMOSにおける実施例の実装のフロアプランと対応している2個ずつにグループ化される(図6参照)。チップレイアウト上で2個のアンテナパスがチップのノースにおいてグループ化され(RFin1を処理するアンテナパス1及びRFin2を処理するアンテナパス2)、チップのサウスにおいて2個がグループ化される(アンテナパス3とアンテナパス4)。以下の複数のセクションにおいて、異なる複数の構築ブロックが簡単に説明されるであろう。
【0042】
実装された受信機は、ベースバンドにおいて合成される4個のアンテナパスと、2個のベースバンドフィルタ(すなわち、合成されたIパス及び合成されたQパスに対して)と、2個のPLLとを有する。アンテナパスi(i=1、…、4)に属する構築ブロックは、末尾にiを付加する。例えば、LNA3は、アンテナパス3における低ノイズ増幅器を意味する。さらに、2個のPLLが(アンテナパス1及びアンテナパス2に属する)PLL12と(アンテナパス3及びアンテナパス4に属する)PLL34と示される。それら2個のPLLの1個の複数の構築ブロックはまたそれぞれに、末尾に12及び34が付加される。
【0043】
異なる複数のアンテナパスに印加される必要とされる位相シフトが、当業者によく知られた複数の方法を用いて最初のステップにおいて決定され、特にMAC(媒体アクセス制御)層において、その後は物理層に移動される。このことが、非特許文献1及び非特許文献2において説明される。
【0044】
チップ上のネットワーク.
異なる複数のアナログブロックをプログラムするため且つ変動性の複数の問題を克服するため、チップ上のネットワーク(NOC)が実装される。これがマスタスレーブシステムであり、ここでマスタ(31)はチップ上へ制御をもたらすことができる当該チップの複数のピン(32)と接続される一方で、大きなアナログ回路のユニットに対応する複数のスレーブノード(34)が存在する。複数のスレーブノード(34)が、順番にマスタノード(31)に接続されるリングの中に置かれる(図2参照)。シリアル通信を用いて、複数のビットが、適切な複数のスレーブノードに伝送される。これらの複数のスレーブノード(34)は、複数のアナログ回路(35)と接続される複数の出力配線を有する複数のデジタル回路である。これらの複数配線に対応する複数ビットによる制御が、回路における複数の要件に依存する異なる複数の方法で実装された。時々、デジタルからアナログへの変換器(DAC)が使用される。もう1つの可能なデジタル制御の実装は、信号パスにおける異なる複数の並列トランジスタの使用であり、各トランジスタは異なる幅を有する一方で、当該幅は2つの係数を用いてお互いに異なる。
【0045】
図2において、NOCが概略的に図示される。6個の接合パッド(32)だけがNOCのために必要である。すなわち、デジタルVDD(1.1V)、グランド、シリアルデータ入力(図2のDIN)、クロック配線(CLK)、リセット(RST)及び転送イネーブル配線(TE)。複数のデジタルI/Oパッドは2個以上の追加の接合パッドを必要とする。すなわち、複数のデジタルI/Oにおいてだけに用いられる2.5V電力領域に対する電力及びグランド接続。6本の配線が、リング構造において接続される異なる複数のスレーブノード(34)に分配される。スレーブノードiは、複数のアナログ回路(35)への複数のni個の接続を有する。
【0046】
マスタ(31)及び複数のスレーブノード(34)のレイアウトが、複数のアナログ回路(35)に対する複数の制御配線であることを意図する複数の名前を持つ複数のビット配線のみならずレイアウトに対する境界ボックスを入力として受け取るデジタル設計フローを用いて生成されている。各スレーブノード(34)に対して、デジタル合成のはじめにおけるNOCの仕様書の間は予測されなかった追加の複数の制御ビットを許容するために、複数のスペアビットのセットが提供される。
【0047】
NOCが提案されたバージョンにおいて、複数のビットだけがチップに入力される。もし望むならば、複数の位相シフタのキャリブレーションに対して実装されるように、例えば複数のシフトレジスタの使用などの他の複数のソリューションを実装することができる(例えば、複数ビットを読み出すこと。)。
【0048】
複数の位相シフタ、複数の信号合成器及び複数のリピータ.
複数の位相シフタは、可変利得を有する複数の電流増幅器を備える。電流増幅器の同一の概略図が至るところで再使用される。それらは、低入力インピーダンス及び高出力インピーダンスを有する。そのような電流増幅器の入力(in_a及びin_b)(図4参照)は、コモンゲートステージ(トランジスタM1a及びトランジスタM1b)である。すでに低いコモンゲートステージの入力インピーダンスはさらに、(レジスタRfa及びレジスタRfbを介する)入力において追加のシャントフィードバックにより低減される。出力インピーダンスは、出力におけるカスコードステージの使用により高い。
【0049】
図5において概略的に図示されるように、電流増幅器の入力の前に、複数の信号の合成又は総和が複数の電流を合計することにより実行される。
【0050】
図6において、チップのフロアプランの一部が図示される。4個のアンテナからの複数のRF入力信号がノース(81)とサウス(82)の2つのサイドを介してチップに入力される。4個の信号パスは、2つのステージにおいて合成される。各ステージは、差動直交位相フォーマットでの2個の信号(=電流)を合成する。このことは、第1の合成器ステージにおいて、パス1及びパス2からの信号が(ノースにおいて)合成される一方で、チップのサウスにおいてパス3及び4が合成されることを意味する。第2の合成器ステージ(83)は、第1の合成器ステージから生じるノース及びサウスからの合成された複数の信号を合計する。複数のRF入力と複数のチャンネル選択フィルタに対するベースバンドにおける複数の入力との間には回避できない考慮すべき距離が存在する。フロアプランにおいて、信号パスにおいて回避できない複数の長い相互接続を生じさせるこの距離が、複数のミリ波周波数よりむしろ複数の低周波数においてブリッジされる。これが、電力消費量、面積及びロバスト性に関して複数の利点を持つ。複数の信号がそのステージにおけるベースバンドにおいてであるので、伝送配線モデリングが考慮される必要はない。アナログベースバンド部の帯域幅に関するこの相互接続の寄生キャパシタンスの影響は、複数の電流増幅器の低入力インピーダンスRin、current ampにより最小化される。実際、長い相互接続配線の終端に置かれる電流増幅器の入力における極は、次式により与えられる。
【0051】
【数5】
【0052】
これは、Rin、current ampが低減されると、より高い複数の周波数にシフトする。
【0053】
複数の信号配線を用いて長距離をブリッジする間、帯域幅をさらに維持するため、複数のベースバンド信号リピータ(84)が好ましくは、信号パスに挿入される。これらの複数のリピータは好ましくは、低入力インピーダンスを有する複数の電流増幅器である。
【0054】
第2のリピータの後に第2の合成器ステージ(83)が存在する。すなわち、チップのノース部及びサウス部からの複数の信号は、電流領域において合計され、次にトランスインピーダンス増幅器(TIA)、(85)に供給される。これが、低入力インピーダンス及び低出力インピーダンスを有する。当該TIA(I+、I−、Q+及びQ−)の出力における4個の配線は、複数のチャンネル選択フィルタ(86)に供給される。図6におけるパス1とパス2の合成器は再び、アンテナパスからの信号電流をそれぞれ運ぶ2個の配線がともに接続される入力における電流増幅器である。ノース部及びサウス部からの複数の配線を結合する図6における加算ブロック(87)はまた、2個の配線をともに接続することにより実装される。このことが、位相シフタの出力とビーム形成回路を越えた複数のアナログベースバンドフィルタとの間の信号パスが、それぞれが長い複数の相互接続配線を用いて接続される3個の電流増幅器を備えることを意味する。この考えは一般化することができ、すなわち3個の電流増幅器に限定されない。電流増幅器の数は、ブリッジされる必要がある距離及び複数の相互接続配線の単位長さあたりの寄生キャパシタンスに依存する。
【0055】
複数のチャンネル選択フィルタ(86)は、例えば複数のサレンキーバイカッドに基づいた複数の5次バターワースフィルタである。これらは、スーパーソースフォロアが後に続く低利得差動ペアを備える利得1の複数の増幅器を用いる。カットオフ周波数は、875MHz及び1750MHzの2つの値を持つことができ、その値は1個のシングルチャンネルを使用するか又は2個のチャンネルがともに合成されるかどうかに依存する。
【0056】
複数の位相シフタを調整(キャリブレート)(及び/又はデバック)するために、ビルトインセルフテスト(BIST)ブロックが提供される。キャリブレーションブロックは、位相シフタ及びトランスインピーダンス増幅器のレプリカを含む。キャリブレーションブロックの複数の部分が適切に調整されるとき、その時は同一の複数の設定が信号パスにおいて対応する複数のブロックに対して使用される。
【0057】
キャリブレーションブロックは、データが読み出されるシフトレジスタを用いる。このことはチップ外にシリアル配線をブリッジすることにより実行される。複数の接合パッドを節約するために、このシリアル配線は、チップ外で発生される他の複数のデジタル信号、すなわち2個のPLLの(当該PLLの基準周波数の同一の周波数における)複数の分配器出力を用いて多重化される。シフトレジスタに対するクロック及び他の複数の制御信号はNOCから来る。
【0058】
キャリブレーションブロックにおいて、複数の比較器は、複数の回路のDC動作点を出力するため、このブロックにおける各アナログノードに接続される。各比較器は、デジタル出力を生成した後、シフトレジストに出力する。回路ノード電圧と外部の基準電圧との間で比較が行われる。外部電圧をスイープして比較結果を出力することにより、すべての複数のノードのDC動作点を同時に得ることが可能である。比較器の入力キャパシタンスはまさに小さいインバータのキャパシタンスであって、それ故に信号パスにおいて無視できる。
【0059】
複数のシミュレーション結果:変換利得.
スペクタ(Spectre)RFを用いて変換利得のシミュレーションが行われた。このシミュレーションに対して、ノイズ及びミキサが最も高い利得モードで置かれる一方で、(複数の位相シフタから複数のチャンネル選択フィルタの入力までは)いまだに進歩される後に続く回路が、その回路における利得が0dBとなるようにプログラムされた。1個のアンテナパスだけのシミュレーションを行った。図7に結果として生じた変換利得を示す。このシミュレーションに対して、LO周波数を61GHzとした。700MHz周辺に3dB帯域幅があることに気付く。それは主に、LNA利得の非平坦性によるものである。これはさらに、設計において改善されるであろう。このシミュレーションに対して、LO信号が直接的にミキサ入力に入力され、このセットアップにおける振幅は、1Vのシングルエンドのピークトゥピークである。
【0060】
図8において、対応するノイズ指数が示される。比較として、アーキテクチャの研究からのカスケード分析を用いて、ローパスフィルタ出力後のノイズ指数が8dBであることを発見した。この数字には、アンテナインターフェースにおける4.5dBの損失と、4個のアンテナパスの合成による6dBのノイズ指数減少と位相ノイズの寄与による1dBとが含まれる。もしこれらの複数の影響を補償するならば、私たちの回路レベルの複数のシミュレーションにはないが、私たちは8dB−4.5dB+6dB−1dB=8.5dBのカスケード分析からの値を持つであろう。これは、図8の結果と良く一致する。
【0061】
この利得設定を用いた入力に言及された3次インターセプトポイントIIP3は−28dBmである。
【0062】
同様に複数の利得設定を用いて、異なる複数のLO振幅に対する利得とノイズ指数を図9に示す。
【0063】
電力消費量.
トータルのチップは398mWを消費する。これを1つの全体の受信機に対して完了させるため、私たちは、Iパス及びQパスにおける複数のADCのシミュレーションの値(ADC当たり0.85μW/MHz)のみならずIパス及びQパスにおける複数のVGAの電力消費量に対する評価値(10mW×2)を加算する。完全な4個のアンテナ受信機の電力消費量の円グラフが、図10に示される。LOバッファリングは、バッファにおける第2のステージにおける変換器の間違った大きさのために大部分を消費する。その変換器の大きさを最適化することにより、PLL12及びPLL34に対する複数のLOバッファの電力消費量はともに44mWまで減少させることができる。これにより、完全な電力消費量は343mwとなる。
【0064】
複数の位相シフタ及び複数の信号合成器を用いた低域周波数変換はともに49mWを消費する。これは、ベースバンドビーム形成(位相シフティング及び信号合成)のトータルのコストである。このタイプのビーム形成は、ベースバンドにおける信号合成と合成されたLOパスにおける位相シフティングよりもより少ない電力消費量を必要とする。実際、LOパスにおける位相シフティングの使用を除いた同一のPLL(1個のPLLだけを除き)と同一のRFセクションを用いた4個のアンテナ受信機の45nm設計から、私たちは、ベースバンド位相シフティングと信号合成とともにほとんど同じ大きさである4個のアンテナパスに対する46mWの(60GHz周辺)のLOパスにおける複数の位相シフタに対する電力消費量を見つける。
【0065】
フロアプランとレイアウト説明.
図11において、40nmCMOSにおける4個のアンテナ実装のフロアプランが図示される。複数のRF入力が、ノースエッジ(101)及びサウスエッジ(102)を介してチップ上にもたらされる。複数のベースバンド出力が、チップのイーストサイド(103)に位置付けられる。これにより、複数のアナログからデジタルへの変換器及び最終的にはデジタル部を用いてイースト方向にチップを拡張させることを可能となる。チップのウエストのエッジ部(104)は、複数のデジタル制御入力(NOSに対する複数の接続)、PLL及びいくつかの他の低周波制御データのための基準周波数入力に対してリザーブされる。
【0066】
アンテナパス1(105)及びアンテナパス2(106)の総和は、2個の位相シフタ(107)、(108)からの出力配線とともに接続することにより実行され、その結果が図11において“REP0”と称された第1の電流増幅器(109)に供給される。
【0067】
このフロアプランを用いて、RFからベースバンドへの信号フローは、ノース‐サウス方向からイーストへの90度の屈曲を取らなければならない。この屈曲は、それが4個の信号配線(I+、I−、Q+、Q−)間においてあまり多くの信号劣化又はアンバランスを生じないように、RFにおいてではなくベースバンドにおいて取られる。
【0068】
60GHz周辺のQVCO(110)出力の4つの位相のルーティングは、1個の中心PLLの代わりに2個のPLL(111)の使用のおかげでより短い。実際の40nmCMOS実装において、QVCO出力と対応するミキサ(112)の複数の入力との間の距離は、約300マイクロメータである。この距離はLOバッファリングによりブリッジされる。
【0069】
このタイプのフロアプランとの組み合わせにおいてここで提案されたアーキテクチャは、チップが2つの異なるサイドからよりうまくコンタクトがとれるように、すべての複数のRF入力が一直線に4つのサイドのうちの1つに位置するように設けられたフロアプランと比較すると、非常に多くの(>4)アンテナパスに対してより魅力的となる。
【0070】
フロアプランのより多くのアンテナパスへの拡張が、12個のアンテナパスに対して図12に図示されるように、隣り同士に4つのアンテナパスの複数のセットを置くことにより可能となる。4N個のアンテナパスが存在すると仮定すると、4個のアンテナパスのN個のセットに分割される。私たちは、最も左のセット(=ビーム形成回路を越えた複数のベースバンドフィルタから最も大きい距離にあるセット)がインデックス1を有する一方で、最も右のセット(=ビーム形成回路を越えた複数のベースバンドフィルタに最も接近するセット)はインデックスNを有する。複数のセットが以下のように合成される。
【0071】
複数のセット1、…、N−1の出力において、私たちは、図11における複数のリピータ“REP0”と“REP1”と“REP2”と同様の電流増幅器を置く。この電流増幅器は、iを1からN−1までの範囲のインデックスとする“REP4i”と称される。
【0072】
電流増幅器REP41は2つの入力を有する。すなわち、セット1のノースのREP2セルとサウスのREP2セルの出力である。
【0073】
セットi(i=2、…、N)において、セットi−1の出力は、セットiのイーストサイドにルーティングされなければならない。パフォーマンスの多くの損失なしにこの距離をブリッジするため、REP3iと称された追加のリピータが提供される。2からN−1までの複数のセットに対し、REP3iの出力は、3つの電流入力、すなわちREP3iの出力並びにセットiのノースのREP2セル及びサウスのREP2セルの出力を有するREP4iに供給される。セットNの出力は、3つの電流入力、すなわちREP3Nの出力並びにセットNのノースのREP2セル及びサウスのREP2セルの出力を有するトランスインピーダンス増幅器(図11におけるTIAと同様である)である。
【0074】
いくつかの複数の電流増幅器を縦続接続するとき、縦続接続の帯域幅は1個のシングル電流増幅器の帯域幅よりも小さい。しかしながら、複数のシミュレーションが、このことが2個のチャンネルの合成のために必要とされる1.75GHzの帯域幅を得るための問題でないことを示した。
【0075】
図12に図示される実装は、複数のリピータ間の相互接続の寄生キャパシタンスにも関わらず高い帯域幅へと導く複数の低入力インピーダンス電流増幅器を用いてベースバンドにおける異なる複数のアンテナパスの複数の信号配線間の相互接続距離をブリッジする間、ベースバンドにおける信号合成を実行する。
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のプリアンブルに係る極めて高い周波数(EHF)受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
極めて高い周波数(EHF)は、30GHzから300GHzの周波数範囲をカバーする最も高い無線周波数帯域である。この帯域以下で演算する複数の無線アプリケーションと比較すると、自由空間パス損失が非常により高い。従って、ビーム形成を用いた複数のアンテナアレイがより長距離を介する送信を実行するために使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEEE802.15 WPAN Millimeter wave alternative PHY task group 3c(TG3c), http://www.ieee802.org/15/pub/TG3c.html.
【非特許文献2】Ecma TC48 draft standard for high rate 60 GHz WPANs, Ecma/TC48/2008/144, http://www.ecma‐international.org/publications/files/drafts/tc48‐2008‐144.pdf.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EHF帯域内で、60GHz周辺の7GHz帯域は、異なる新生の複数の無線通信アプリケーションが予想される。アンテナパスの数は、異なる複数のアプリケーションに対して異なってもよい。10メートル(例えば、HDTVと高精細度DVDプレイヤとの間のHDTVデータの転送など。)までの距離に対して、16個のアンテナのアレイが必要とされるかもしれない。数メートルまでの距離に対して、N個のアンテナの数は、受信機において合成される必要があるN個のアンテナパスに対応する。パフォーマンスの損失なしに非常に多数のパスを合成させることが課題である。
【0005】
本発明の目的は、異なる複数のアンテナパス上で受信される複数の信号が、通常は複数の高い周波数において複数の信号を合成する従来の複数の合成方法よりもより小さいパフォーマンス劣化且つより低い電力消費量を用いて合成されるEHF無線通信受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、第1の独立請求項の特徴を示すEHF無線通信受信機を用いて達成される。
【0007】
本発明のさらなる目的は、複数の異なるアンテナパス上で受信された複数の信号がより良いパフォーマンスを用いて合成されるEHF無線通信信号を受信するための方法を提供することにある。
【0008】
本発明によれば、このさらなる目的が、第2の独立請求項の複数のステップを実行する方法を用いて達成される。
【0009】
本発明のEHF無線通信受信機及び方法において、複数のビーム形成演算(位相シフティング及び信号合成)が、低域周波数変換後に実行され、すなわち、これはアナログベースバンドにおいて実行される。このことが、回路の複数の寄生キャパシタンス及び複数の寄生インダクタンスにより減少した損失を考慮して、パフォーマンスを改善することができるということを発見した。さらに、ベースバンドにおいてこれらの複数の演算を実行することが、当該複数の演算が実行されるより低い周波数を考慮して、電力消費量の有利な条件であることが発見される。
【0010】
本発明のアーキテクチャは、アンテナパスの数に関して拡張可能であるという利点を有する。
【0011】
本発明のEHF無線通信受信機及び方法において、位相シフティングが、制御可能な複数の利得を、各アンテナパスの複数のI/Qブランチにおいてそれぞれ低域周波数変換された複数の着信信号に適用するように設けられた複数の可変利得増幅器のセットを用いて実行される。制御回路が、複数の可変利得増幅器の制御可能な複数の利得を、ビーム形成を実行するために決定された位相シフトがそれぞれのアンテナパスにおけるそれぞれの着信信号に対して印加されるということを用いて、回転行列の複数の係数に比例する複数の値に設定するように設けられる。これには、位相シフトを印加することに加えてそれぞれの着信信号に対して利得を加えることを含んでもよいし、もしくは含まなくてもよい。
【0012】
より好ましい実施態様において、低域周波数変換部は、1つのステップにおいて着信信号をベースバンドに低域周波数変換するように備えられたダイレクト低域周波数変換部である。
【0013】
より好ましい実施態様において、位相アレイ無線装置は、相互に同期される複数の位相ロックループ(PLL)を備え、各位相ロックループは少なくとも1個のアンテナパスの低域周波数変換部に接続され、そのために局部発振信号を生成することを提供する。そのようなPLLの出力における電圧制御発振器(VCO)は、ダイレクト低域周波数変換のために必要とされる複数の差動直交位相信号を提供する直交位相VCO(QVCO)である。複数の位相ロックループの使用は、PLL位相ノイズに関する仕様を緩和することができるすべてのアンテナパスに対する共通の位相ロックループを用いるという利点を有する。例えば、すべてのアンテナパスがそれ自身のPLLを有する場合は、相関関係のない各VCOからの複数の位相ノイズ寄与は、位相ノイズにより生じる複数の信号歪みが構成的に合成されないので平均化することができる。
【0014】
好ましくは、各位相ロックループは、位相ノイズのパフォーマンス及び複数のLOバッファリングの要件を電力及び面積消費量と最適にトレードオフするために、少なくとも2個のアンテナパスの低域周波数変換部に接続される。
【0015】
より好ましい実施態様において、複数の信号リピータが、複数のアンテナパスと異なる複数のアンテナパスの複数の信号が合成される場所との間の距離をブリッジする複数の相互接続配線の2つの部分の間に挿入される。複数の信号リピータはそれぞれ複数の電流増幅器であってもよい。この方法において、多数のアンテナパスを合成することによりチップ上をブリッジされなければならない距離が帯域幅を制限するということが回避される。これらの複数の電流増幅器の低入力インピーダンスのために、複数の接続配線の入力インピーダンス及び寄生キャパシタンスの実数部分により生じる極が、ベースバンド信号の帯域幅を超えて容易に置かれる。結果として、本発明のアーキテクチャは、それが多数のアンテナパスをともに接続することのオーバーヘッドによるパフォーマンス損失なしで多数のアンテナパスへの拡張に適するので、アンテナパスの数に関して拡張可能である。
【0016】
より好ましい実施態様において、受信機が、60GHz周辺の帯域におけるAV−OFDM通信のために設けられる。
【0017】
本発明がさらに、以下の記述及び添付図面を用いて説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】受信機アーキテクチャを図示する。
【図2】チップ上のネットワークの概念を図示する。
【図3】LOバッファリングとミキサとを結合するために使用される変換器を図示する。
【図4】複数の位相シフタ、複数の信号合成器及び複数のベースバンド信号リピータにおいて使用される電流増幅器の簡単化された概略図を示す。
【図5】信号合成の原理を図示する。
【図6】フロアプランの一部を図示する。
【図7】RF周波数の関数として変換利得をプロットする。
【図8】ベースバンド周波数の関数としてノイズ指数をプロットする。
【図9】周波数の関数と異なる複数のLO振幅に対する関数として利得(左)とノイズ指数(右)をプロットする。
【図10】電力消費量の分析(ブレイクダウン)を示す。左:チップの複数のシミュレーションに基づいた。右:LOバッファリングを除き同じ。
【図11】チップの一部のフロアプランを図示する。
【図12】12個のアンテナ受信機の一部のフロアプランを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明が特定の実施形態に関して及びある図面を参照して説明されるであろうが、発明はそれに限定されないが、特許請求の範囲だけによって限定される。記載された図面は概略図だけであって限定されない。図面において、いくつかの構成要素の大きさは例示的な目的のために誇張され、同一寸法で描かれないかもしれない。寸法及び相対寸法は必ずしも発明を実施するために実際の縮図には対応しない。
【0020】
さらに、説明中及び特許請求の範囲における第1、第2、第3の用語及び同等のものが、同じ構成要素の間で区別するために使用されて、必ずしも連続して起こるまたは年代の順番のために使用されるものではない。用語は適切な環境のもとでは相互に交換でき、発明の実施形態がここで説明され図示されたもの以外の他のシーケンスにおいて演算することができる。
【0021】
さらに、説明中及び特許請求の範囲におけるトップ(top)、ボトム(bottom)、オーバー(over)、アンダー(under)の用語及び同等のものが、説明的な目的のために使用されて、必ずしも相対的な位置を説明するために使用されるものではない。そのように用いられた用語は適切な環境のもとでは相互に交換でき、ここで説明された発明の実施形態はここで説明され図示されたもの以外の他の適応例において演算することができる。
【0022】
特許請求の範囲に用いられた用語“備える(comprising)”は、その後に挙げられた手段に限定されるように解釈されるべきではなく、それは他の構成要素またはステップを除かない。それは、言及された記載された特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するように解釈されるために必要であるが、1つもしくはそれ以上の他の特徴、整数、ステップまたはそのグループの存在または追加を除かない。従って、“手段A及びBを備える装置”という表現は構成要素A及びBだけから構成する装置に限定されるべきではない。本発明に関しては、それは装置の関連した構成要素がA及びBだけであることを意味する。
【0023】
特に、本発明は、ビーム形成が使用されるEHF帯域内、好ましくは60GHz周辺帯域内で複数のRF信号を受信するための装置及び方法を提示する。その考えは、アナログベースバンドにおいて複数のビーム形成演算(位相シフティング及び信号合成)を実行することである。RFにおける複数のビーム形成演算と比較すると、ベースバンドにおける複数のビーム形成演算は電力消費量に関してより安価であり、より小さいパフォーマンスの劣化をもたらす。好ましくは、非常に多くの数のアンテナパスの場合には、チップ上でブリッジされなければならない距離の結果としてのパフォーマンスの劣化は、複数の長い配線間において電流増幅器を用いることにより回避される。複数の長い配線の複数の寄生キャパシタンスによる複数の帯域幅制限は、複数の電流増幅器の低入力インピーダンスのために克服される。すなわち、そのインピーダンスの実数部分が、予想された信号帯域幅を超えた相互接続キャパシタンスを有する極を形成する。
【0024】
複数のビーム形成の演算がベースバンドにおいて実行されるので、好ましくは複数の局部発振器信号を当てにする複数の低域周波数変換ミキサである複数の低域周波数変換回路部が各アンテナ/信号パスにおいて必要とされる。共通の局部発振器信号の分配の問題は、例えば2個のアンテナパスにつき1個のPLLなどの複数の位相ロックループ(複数のPLL)を使用することにより回避される。異なる複数のPLLは、同一の基準周波数信号を用いて相互に同期される。これは、多数のアンテナパスの場合に必要とされる長距離を介して容易に分配される低周波数信号である。このアプローチは、多数のアンテナパス(チップ上長距離を介して)に対して高周波局部発振器信号の分配を必要とする1個の中心のPLLを使用するよりもより小さいパフォーマンスの劣化をもたらす。
【0025】
本発明は、これに限定されないが4個のアンテナパスを備えた40nmCMOSにおける受信機設計により以下に例示されるであろう。複数のミリ波アプリケーションに対して、使用される複数のCMOS技術は90nm世代又はそれ以下である。これらの複数の世代のものが、複数のミリ波信号を十分正確に処理できるほど高速である複数のトランジスタを特徴付ける。例示の実施形態においては、40nmCMOSが使用される。実施例には、複数のLNA入力からチャンネル選択のための複数のアナログベースバンドフィルタの出力までの回路を含む。ビーム形成が、アナログベースバンドにおける位相シフティング及び信号合成により実行される。低域周波数変換が1つのステップにおいて実行される(ゼロIF)。
【0026】
異なる複数の構築ブロックのパフォーマンスは、いわゆるチップ上のネットワークを用いてデジタル的にプログラム可能となっている。30dB周辺の変換利得の設定を用いて、受信機チップのノイズ指数は約8.5dB(それは、周波数に伴いわずかに変化する。)である。受信機チップの電力消費量は398mWである。このノイズ指数を用いて且つ複数のアナログベースバンドフィルタ(すなわち、例えば40nmプロセスにおいてスタンドアロンで設計された可変利得増幅器(VGA)とアナログからデジタルへの変換器(ADC))の後段にあるアンテナインターフェース及び複数の受信機ブロックの複数の信号劣化を考慮して、次に(20.5dBの信号対ノイズ比を必要とする)複数のOFDMキャリア上でQAM16変調を用いて、完全な受信機は、AV−OFDMに対する802.15.3c規格において規定された値である−50dBmよりも良い感度レベルを有する。ADCの電力消費量及びVGAに対する評価値を考慮すると、受信機全体では422mWを消費する。この消費量からの27%がLOバッファリングに行く。複数のシミュレーションではさらに、このバッファリングの電力消費量が大きな出力スイングを維持する間は79mWが用いられることが示されている。これが、完全な受信機の電力消費量を343mWへともたらす。
【0027】
提案された発明のアーキテクチャは、アンテナパスの数に関して高い程度のスケーラビリティの受信機を示す。
【0028】
使用される技術は、40nmデジタルCMOS技術である。それは7つの金属レベル(銅)及び厚いトップアルミニウム層を用いる。
【0029】
受信機アーキテクチャが、図1に図示される。EHF無線通信受信機(1)は、EHF範囲内で予め決定された周波数帯域内において複数の着信信号のビームを受信するように設けられた位相アレイ無線装置(2)を備える。当該無線装置(2)は、複数のアンテナパス(3)を備え、各アンテナパスが複数の着信信号(4)のうちの1つを処理して当該着信信号から差動I/Q出力信号(5)を形成する。各アンテナパスは、着信信号をベースバンドに低域周波数変換するための低域周波数変換部(6)及び制御可能な位相シフトを着信信号に印加するための位相シフティング部(7)を有する複数のIブランチ及び複数のQブランチを備える。当該無線(2)はさらに、複数のアンテナパスと接続されて差動位相シフトされた複数のI/Q出力信号を合成された差動I/Q信号に合成するように設けられた信号合成回路(8)と、複数のアンテナパスの位相シフティング部と接続されて制御可能な位相シフトを制御するように設けられた制御回路(9)とを備える。位相シフティング部は、制御可能な複数の利得を、複数のI/Qブランチにおいてそれぞれ低域周波数変換された複数の着信信号に適用するように設けられた複数の可変利得増幅器のセット(10)を備える。受信機アーキテクチャは、ダイレクト低域周波数変換を使用する。ビーム形成は、アナログベースバンド部において低域周波数変換後に実行され、ここで着信信号が差動I/Qフォーマットで構成している。もしこの演算をRFにおいて実行するならば、その時は最初にI/Q信号が生成される必要があり、例えば直交位相全通過フィルタなどの追加の回路が必要となる。
【0030】
位相シフティングが、必要とされる位相シフト
【数1】
の適切な複数の正弦波及び複数の余弦波を用いてI信号及びQ信号(5)を乗算することにより実行され、結果として新しい位相シフトされたI値及びQ値を得る。実際、位相シフティング後のI値及びQ値をI’及びQ’と表示し、それらは元のI値とQ値と次式のように関連付けられる。すなわち、
【0031】
【数2】
【0032】
この演算は、すべてのアンテナパス(3)の任意のIベースバンド信号及びQベースバンド信号(5)に適用される。デジタル的に制御可能な利得を有する複数の増幅器(10)を用いて実行される。位相シフトのオンチップキャリブレーションもまた提供される。複数の低域周波数変換ミキサの出力が電流であるので複数の可変利得増幅器は複数の電流増幅器として実装される。さらに、このポイントにおいて信号強度を増加させるためにいくつかの追加の利得を加えることができる。これが、式(1)における共通のスケールファクタAを導入することにより実施される。
【0033】
【数3】
【0034】
これが回転行列の形式で以下のように書かれる。
【0035】
【数4】
【0036】
位相シフティング後、すべての新しいQ’信号と同時にすべての新しいI’信号が合計される(8)。この総和が電流領域において実行される(複数の電流の総和)。そのような総和は、複数の電圧の総和よりもより線形に行うことが可能である。
【0037】
アナログベースバンドにおけるビーム形成は、RFにおける複数のビーム形成演算(位相シフティング及び総和)と比較すると、特に多数のアンテナパスに対して複数の利点を有する。実際、多数のアンテナパスに対して、位相シフトされた複数の信号間の距離(この位相シフトがどのように行われようとも)と合成された1個又は複数の出力は不可避的に大きい。複数の高周波においてこの距離をブリッジすることは、複数の高周波において演算するいくつかの信号リピータを必要として多くの電力を消費するかもしれない長い複数の伝送配線を駆動させる必要がある場合には、損失が多く、及び/又は電力を必要とする可能性がある。さらに、そのような複数のリピータは、プロセス許容範囲及び/又は小さい複数の寄生により周波数においてシフトされる通過帯域を有することができる複数の共振負荷を使用する。このことが損失を生じさせる可能性がある。
【0038】
RFにおける位相シフティングと比較すると、ベースバンド位相シフティングは、よりロバスト性が高く、よりコンパクトである。実際、ベースバンドにおいて、複数のバルキーインダクタ又は複数の伝送配線を用いた複数の共振回路の必要はない。さらに、相互接続から及び異なる複数の構成要素からの複数の寄生に関する複数のモデリング誤差は、大した役割を果たさない。実際、モデリング/シミュレーションと現実との間の差の数フェムトファラッドは、ベースバンドにおいて無視することができる。これがアナログベースバンド回路のパフォーマンスをミリ波回路よりもより予測可能とさせる。これがまた、LOパスにおける位相シフティングを用いる目的の利点でもある。
【0039】
アナログベースバンド部が、2個のチャンネルを用いてチャンネル合成する可能性を考慮するために設計された。この目的を達成するために、複数の回路の帯域幅はプログラム可能とされている。
【0040】
PLL位相ノイズに関する仕様を軽減するために、1以上のPLL(11)が使用される。全てのアンテナパスがそれ自身のPLL(11)を有すると仮定する。その場合において、相関関係のない各VCOからの複数の位相ノイズ寄与は、位相ノイズにより生じる複数の信号歪みが信号合成において構成的に合成されないので平均化することができる。同様の理由が、すべての複数のPLLに共通である基準周波数からの位相ノイズの高域周波数変換を除き、PLLにおける他の複数のノイズ源に有効である。しかしながら、60GHzのPLLの位相ノイズは、高域周波数変換された基準ノイズにより支配されないので、平均化することがいまだに効果を有し、係数10×log10(N)(ここで、Nはアンテナパスの数である。)を有する位相ノイズの減少をもたらす。
【0041】
位相ノイズのパフォーマンス及び複数のLOバッファリングの要件を、電力及び面積消費量と最適にトレードオフするため、N個以下のPLLが使用される。受信機チップにおいて、2個のアンテナパス当たり1個のPLLが使用される。4個のアンテナパスは、40nmCMOSにおける実施例の実装のフロアプランと対応している2個ずつにグループ化される(図6参照)。チップレイアウト上で2個のアンテナパスがチップのノースにおいてグループ化され(RFin1を処理するアンテナパス1及びRFin2を処理するアンテナパス2)、チップのサウスにおいて2個がグループ化される(アンテナパス3とアンテナパス4)。以下の複数のセクションにおいて、異なる複数の構築ブロックが簡単に説明されるであろう。
【0042】
実装された受信機は、ベースバンドにおいて合成される4個のアンテナパスと、2個のベースバンドフィルタ(すなわち、合成されたIパス及び合成されたQパスに対して)と、2個のPLLとを有する。アンテナパスi(i=1、…、4)に属する構築ブロックは、末尾にiを付加する。例えば、LNA3は、アンテナパス3における低ノイズ増幅器を意味する。さらに、2個のPLLが(アンテナパス1及びアンテナパス2に属する)PLL12と(アンテナパス3及びアンテナパス4に属する)PLL34と示される。それら2個のPLLの1個の複数の構築ブロックはまたそれぞれに、末尾に12及び34が付加される。
【0043】
異なる複数のアンテナパスに印加される必要とされる位相シフトが、当業者によく知られた複数の方法を用いて最初のステップにおいて決定され、特にMAC(媒体アクセス制御)層において、その後は物理層に移動される。このことが、非特許文献1及び非特許文献2において説明される。
【0044】
チップ上のネットワーク.
異なる複数のアナログブロックをプログラムするため且つ変動性の複数の問題を克服するため、チップ上のネットワーク(NOC)が実装される。これがマスタスレーブシステムであり、ここでマスタ(31)はチップ上へ制御をもたらすことができる当該チップの複数のピン(32)と接続される一方で、大きなアナログ回路のユニットに対応する複数のスレーブノード(34)が存在する。複数のスレーブノード(34)が、順番にマスタノード(31)に接続されるリングの中に置かれる(図2参照)。シリアル通信を用いて、複数のビットが、適切な複数のスレーブノードに伝送される。これらの複数のスレーブノード(34)は、複数のアナログ回路(35)と接続される複数の出力配線を有する複数のデジタル回路である。これらの複数配線に対応する複数ビットによる制御が、回路における複数の要件に依存する異なる複数の方法で実装された。時々、デジタルからアナログへの変換器(DAC)が使用される。もう1つの可能なデジタル制御の実装は、信号パスにおける異なる複数の並列トランジスタの使用であり、各トランジスタは異なる幅を有する一方で、当該幅は2つの係数を用いてお互いに異なる。
【0045】
図2において、NOCが概略的に図示される。6個の接合パッド(32)だけがNOCのために必要である。すなわち、デジタルVDD(1.1V)、グランド、シリアルデータ入力(図2のDIN)、クロック配線(CLK)、リセット(RST)及び転送イネーブル配線(TE)。複数のデジタルI/Oパッドは2個以上の追加の接合パッドを必要とする。すなわち、複数のデジタルI/Oにおいてだけに用いられる2.5V電力領域に対する電力及びグランド接続。6本の配線が、リング構造において接続される異なる複数のスレーブノード(34)に分配される。スレーブノードiは、複数のアナログ回路(35)への複数のni個の接続を有する。
【0046】
マスタ(31)及び複数のスレーブノード(34)のレイアウトが、複数のアナログ回路(35)に対する複数の制御配線であることを意図する複数の名前を持つ複数のビット配線のみならずレイアウトに対する境界ボックスを入力として受け取るデジタル設計フローを用いて生成されている。各スレーブノード(34)に対して、デジタル合成のはじめにおけるNOCの仕様書の間は予測されなかった追加の複数の制御ビットを許容するために、複数のスペアビットのセットが提供される。
【0047】
NOCが提案されたバージョンにおいて、複数のビットだけがチップに入力される。もし望むならば、複数の位相シフタのキャリブレーションに対して実装されるように、例えば複数のシフトレジスタの使用などの他の複数のソリューションを実装することができる(例えば、複数ビットを読み出すこと。)。
【0048】
複数の位相シフタ、複数の信号合成器及び複数のリピータ.
複数の位相シフタは、可変利得を有する複数の電流増幅器を備える。電流増幅器の同一の概略図が至るところで再使用される。それらは、低入力インピーダンス及び高出力インピーダンスを有する。そのような電流増幅器の入力(in_a及びin_b)(図4参照)は、コモンゲートステージ(トランジスタM1a及びトランジスタM1b)である。すでに低いコモンゲートステージの入力インピーダンスはさらに、(レジスタRfa及びレジスタRfbを介する)入力において追加のシャントフィードバックにより低減される。出力インピーダンスは、出力におけるカスコードステージの使用により高い。
【0049】
図5において概略的に図示されるように、電流増幅器の入力の前に、複数の信号の合成又は総和が複数の電流を合計することにより実行される。
【0050】
図6において、チップのフロアプランの一部が図示される。4個のアンテナからの複数のRF入力信号がノース(81)とサウス(82)の2つのサイドを介してチップに入力される。4個の信号パスは、2つのステージにおいて合成される。各ステージは、差動直交位相フォーマットでの2個の信号(=電流)を合成する。このことは、第1の合成器ステージにおいて、パス1及びパス2からの信号が(ノースにおいて)合成される一方で、チップのサウスにおいてパス3及び4が合成されることを意味する。第2の合成器ステージ(83)は、第1の合成器ステージから生じるノース及びサウスからの合成された複数の信号を合計する。複数のRF入力と複数のチャンネル選択フィルタに対するベースバンドにおける複数の入力との間には回避できない考慮すべき距離が存在する。フロアプランにおいて、信号パスにおいて回避できない複数の長い相互接続を生じさせるこの距離が、複数のミリ波周波数よりむしろ複数の低周波数においてブリッジされる。これが、電力消費量、面積及びロバスト性に関して複数の利点を持つ。複数の信号がそのステージにおけるベースバンドにおいてであるので、伝送配線モデリングが考慮される必要はない。アナログベースバンド部の帯域幅に関するこの相互接続の寄生キャパシタンスの影響は、複数の電流増幅器の低入力インピーダンスRin、current ampにより最小化される。実際、長い相互接続配線の終端に置かれる電流増幅器の入力における極は、次式により与えられる。
【0051】
【数5】
【0052】
これは、Rin、current ampが低減されると、より高い複数の周波数にシフトする。
【0053】
複数の信号配線を用いて長距離をブリッジする間、帯域幅をさらに維持するため、複数のベースバンド信号リピータ(84)が好ましくは、信号パスに挿入される。これらの複数のリピータは好ましくは、低入力インピーダンスを有する複数の電流増幅器である。
【0054】
第2のリピータの後に第2の合成器ステージ(83)が存在する。すなわち、チップのノース部及びサウス部からの複数の信号は、電流領域において合計され、次にトランスインピーダンス増幅器(TIA)、(85)に供給される。これが、低入力インピーダンス及び低出力インピーダンスを有する。当該TIA(I+、I−、Q+及びQ−)の出力における4個の配線は、複数のチャンネル選択フィルタ(86)に供給される。図6におけるパス1とパス2の合成器は再び、アンテナパスからの信号電流をそれぞれ運ぶ2個の配線がともに接続される入力における電流増幅器である。ノース部及びサウス部からの複数の配線を結合する図6における加算ブロック(87)はまた、2個の配線をともに接続することにより実装される。このことが、位相シフタの出力とビーム形成回路を越えた複数のアナログベースバンドフィルタとの間の信号パスが、それぞれが長い複数の相互接続配線を用いて接続される3個の電流増幅器を備えることを意味する。この考えは一般化することができ、すなわち3個の電流増幅器に限定されない。電流増幅器の数は、ブリッジされる必要がある距離及び複数の相互接続配線の単位長さあたりの寄生キャパシタンスに依存する。
【0055】
複数のチャンネル選択フィルタ(86)は、例えば複数のサレンキーバイカッドに基づいた複数の5次バターワースフィルタである。これらは、スーパーソースフォロアが後に続く低利得差動ペアを備える利得1の複数の増幅器を用いる。カットオフ周波数は、875MHz及び1750MHzの2つの値を持つことができ、その値は1個のシングルチャンネルを使用するか又は2個のチャンネルがともに合成されるかどうかに依存する。
【0056】
複数の位相シフタを調整(キャリブレート)(及び/又はデバック)するために、ビルトインセルフテスト(BIST)ブロックが提供される。キャリブレーションブロックは、位相シフタ及びトランスインピーダンス増幅器のレプリカを含む。キャリブレーションブロックの複数の部分が適切に調整されるとき、その時は同一の複数の設定が信号パスにおいて対応する複数のブロックに対して使用される。
【0057】
キャリブレーションブロックは、データが読み出されるシフトレジスタを用いる。このことはチップ外にシリアル配線をブリッジすることにより実行される。複数の接合パッドを節約するために、このシリアル配線は、チップ外で発生される他の複数のデジタル信号、すなわち2個のPLLの(当該PLLの基準周波数の同一の周波数における)複数の分配器出力を用いて多重化される。シフトレジスタに対するクロック及び他の複数の制御信号はNOCから来る。
【0058】
キャリブレーションブロックにおいて、複数の比較器は、複数の回路のDC動作点を出力するため、このブロックにおける各アナログノードに接続される。各比較器は、デジタル出力を生成した後、シフトレジストに出力する。回路ノード電圧と外部の基準電圧との間で比較が行われる。外部電圧をスイープして比較結果を出力することにより、すべての複数のノードのDC動作点を同時に得ることが可能である。比較器の入力キャパシタンスはまさに小さいインバータのキャパシタンスであって、それ故に信号パスにおいて無視できる。
【0059】
複数のシミュレーション結果:変換利得.
スペクタ(Spectre)RFを用いて変換利得のシミュレーションが行われた。このシミュレーションに対して、ノイズ及びミキサが最も高い利得モードで置かれる一方で、(複数の位相シフタから複数のチャンネル選択フィルタの入力までは)いまだに進歩される後に続く回路が、その回路における利得が0dBとなるようにプログラムされた。1個のアンテナパスだけのシミュレーションを行った。図7に結果として生じた変換利得を示す。このシミュレーションに対して、LO周波数を61GHzとした。700MHz周辺に3dB帯域幅があることに気付く。それは主に、LNA利得の非平坦性によるものである。これはさらに、設計において改善されるであろう。このシミュレーションに対して、LO信号が直接的にミキサ入力に入力され、このセットアップにおける振幅は、1Vのシングルエンドのピークトゥピークである。
【0060】
図8において、対応するノイズ指数が示される。比較として、アーキテクチャの研究からのカスケード分析を用いて、ローパスフィルタ出力後のノイズ指数が8dBであることを発見した。この数字には、アンテナインターフェースにおける4.5dBの損失と、4個のアンテナパスの合成による6dBのノイズ指数減少と位相ノイズの寄与による1dBとが含まれる。もしこれらの複数の影響を補償するならば、私たちの回路レベルの複数のシミュレーションにはないが、私たちは8dB−4.5dB+6dB−1dB=8.5dBのカスケード分析からの値を持つであろう。これは、図8の結果と良く一致する。
【0061】
この利得設定を用いた入力に言及された3次インターセプトポイントIIP3は−28dBmである。
【0062】
同様に複数の利得設定を用いて、異なる複数のLO振幅に対する利得とノイズ指数を図9に示す。
【0063】
電力消費量.
トータルのチップは398mWを消費する。これを1つの全体の受信機に対して完了させるため、私たちは、Iパス及びQパスにおける複数のADCのシミュレーションの値(ADC当たり0.85μW/MHz)のみならずIパス及びQパスにおける複数のVGAの電力消費量に対する評価値(10mW×2)を加算する。完全な4個のアンテナ受信機の電力消費量の円グラフが、図10に示される。LOバッファリングは、バッファにおける第2のステージにおける変換器の間違った大きさのために大部分を消費する。その変換器の大きさを最適化することにより、PLL12及びPLL34に対する複数のLOバッファの電力消費量はともに44mWまで減少させることができる。これにより、完全な電力消費量は343mwとなる。
【0064】
複数の位相シフタ及び複数の信号合成器を用いた低域周波数変換はともに49mWを消費する。これは、ベースバンドビーム形成(位相シフティング及び信号合成)のトータルのコストである。このタイプのビーム形成は、ベースバンドにおける信号合成と合成されたLOパスにおける位相シフティングよりもより少ない電力消費量を必要とする。実際、LOパスにおける位相シフティングの使用を除いた同一のPLL(1個のPLLだけを除き)と同一のRFセクションを用いた4個のアンテナ受信機の45nm設計から、私たちは、ベースバンド位相シフティングと信号合成とともにほとんど同じ大きさである4個のアンテナパスに対する46mWの(60GHz周辺)のLOパスにおける複数の位相シフタに対する電力消費量を見つける。
【0065】
フロアプランとレイアウト説明.
図11において、40nmCMOSにおける4個のアンテナ実装のフロアプランが図示される。複数のRF入力が、ノースエッジ(101)及びサウスエッジ(102)を介してチップ上にもたらされる。複数のベースバンド出力が、チップのイーストサイド(103)に位置付けられる。これにより、複数のアナログからデジタルへの変換器及び最終的にはデジタル部を用いてイースト方向にチップを拡張させることを可能となる。チップのウエストのエッジ部(104)は、複数のデジタル制御入力(NOSに対する複数の接続)、PLL及びいくつかの他の低周波制御データのための基準周波数入力に対してリザーブされる。
【0066】
アンテナパス1(105)及びアンテナパス2(106)の総和は、2個の位相シフタ(107)、(108)からの出力配線とともに接続することにより実行され、その結果が図11において“REP0”と称された第1の電流増幅器(109)に供給される。
【0067】
このフロアプランを用いて、RFからベースバンドへの信号フローは、ノース‐サウス方向からイーストへの90度の屈曲を取らなければならない。この屈曲は、それが4個の信号配線(I+、I−、Q+、Q−)間においてあまり多くの信号劣化又はアンバランスを生じないように、RFにおいてではなくベースバンドにおいて取られる。
【0068】
60GHz周辺のQVCO(110)出力の4つの位相のルーティングは、1個の中心PLLの代わりに2個のPLL(111)の使用のおかげでより短い。実際の40nmCMOS実装において、QVCO出力と対応するミキサ(112)の複数の入力との間の距離は、約300マイクロメータである。この距離はLOバッファリングによりブリッジされる。
【0069】
このタイプのフロアプランとの組み合わせにおいてここで提案されたアーキテクチャは、チップが2つの異なるサイドからよりうまくコンタクトがとれるように、すべての複数のRF入力が一直線に4つのサイドのうちの1つに位置するように設けられたフロアプランと比較すると、非常に多くの(>4)アンテナパスに対してより魅力的となる。
【0070】
フロアプランのより多くのアンテナパスへの拡張が、12個のアンテナパスに対して図12に図示されるように、隣り同士に4つのアンテナパスの複数のセットを置くことにより可能となる。4N個のアンテナパスが存在すると仮定すると、4個のアンテナパスのN個のセットに分割される。私たちは、最も左のセット(=ビーム形成回路を越えた複数のベースバンドフィルタから最も大きい距離にあるセット)がインデックス1を有する一方で、最も右のセット(=ビーム形成回路を越えた複数のベースバンドフィルタに最も接近するセット)はインデックスNを有する。複数のセットが以下のように合成される。
【0071】
複数のセット1、…、N−1の出力において、私たちは、図11における複数のリピータ“REP0”と“REP1”と“REP2”と同様の電流増幅器を置く。この電流増幅器は、iを1からN−1までの範囲のインデックスとする“REP4i”と称される。
【0072】
電流増幅器REP41は2つの入力を有する。すなわち、セット1のノースのREP2セルとサウスのREP2セルの出力である。
【0073】
セットi(i=2、…、N)において、セットi−1の出力は、セットiのイーストサイドにルーティングされなければならない。パフォーマンスの多くの損失なしにこの距離をブリッジするため、REP3iと称された追加のリピータが提供される。2からN−1までの複数のセットに対し、REP3iの出力は、3つの電流入力、すなわちREP3iの出力並びにセットiのノースのREP2セル及びサウスのREP2セルの出力を有するREP4iに供給される。セットNの出力は、3つの電流入力、すなわちREP3Nの出力並びにセットNのノースのREP2セル及びサウスのREP2セルの出力を有するトランスインピーダンス増幅器(図11におけるTIAと同様である)である。
【0074】
いくつかの複数の電流増幅器を縦続接続するとき、縦続接続の帯域幅は1個のシングル電流増幅器の帯域幅よりも小さい。しかしながら、複数のシミュレーションが、このことが2個のチャンネルの合成のために必要とされる1.75GHzの帯域幅を得るための問題でないことを示した。
【0075】
図12に図示される実装は、複数のリピータ間の相互接続の寄生キャパシタンスにも関わらず高い帯域幅へと導く複数の低入力インピーダンス電流増幅器を用いてベースバンドにおける異なる複数のアンテナパスの複数の信号配線間の相互接続距離をブリッジする間、ベースバンドにおける信号合成を実行する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EHF範囲内で予め決定された周波数帯域において複数の着信信号のビームを受信するように設けられた位相アレイ無線装置(2)を備えるEHF無線通信受信機(1)であって、
前記位相アレイ無線装置は、
それぞれが前記複数の着信信号(4)のうちの1つを処理し、前記複数の着信信号(4)から差動I/Q出力信号(5)を形成するように設けられた複数のアンテナパス(3)を備え、前記各アンテナパスは、前記着信信号をベースバンドに低域周波数変換するための低域周波数変換部(6)と、前記複数のアンテナパスにより形成された前記複数の差動I/Q出力信号が相互に同期されるように制御可能な位相シフトを前記各アンテナパスの信号に印加するための位相シフティング部(7)とを有する複数のIブランチ及び複数のQブランチを備え、
前記位相アレイ無線装置は、
前記複数のアンテナパスと接続され、前記複数の差動I/Q出力信号を合成された差動I/Q信号に合成させるように設けられた信号合成回路(8)と、
前記複数のアンテナパスの前記複数の位相シフティング部に接続され、前記制御可能な位相シフトを制御するように設けられた制御回路(9)とを備えた前記位相アレイ無線装置において、
各アンテナパスにおいて、前記位相シフティング部は、前記低域周波数変換部からのベースバンド部ダウンストリームであり、前記位相シフティング部は、前記複数のI/Qブランチにおいて複数の制御可能な利得をそれぞれに低域周波数変換された複数の着信信号に適用するように設けられた複数の可変利得増幅器のセット(10)を備え、
前記制御回路(9)は、前記複数の可変増幅器の前記複数の制御可能な利得を、前記それぞれの着信信号に印加される前記位相シフトから決定される回転行列の複数の係数に設定するように設けられたことを特徴とするEHF無線通信受信機(1)。
【請求項2】
前記回転行列は、
【数1】
により与えられ、
ここで、IとQは、前記それぞれのアンテナパスの前記複数のI/Qブランチにおいて前記それぞれに低域周波数変換された着信信号をともに形成する複数の同相信号と複数の直交位相信号であり、
I’とQ’は、前記それぞれのアンテナパスの位相シフトされた差動I/Q出力信号をともに形成する複数の同相信号と複数の直交位相信号であり、
Aは、前記位相シフトを印加することに加えて前記それぞれの着信信号に利得を可能な限り加算するための共通のスケールファクタであり、
【数2】
は、1つのアンテナパスの前記それぞれの着信信号に印加される前記位相シフトであることを特徴とする請求項1記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項3】
前記低域周波数変換部は、1つのステップにおいて前記着信信号をベースバンドに低域周波数変換するように設けられたダイレクト低域周波数変換部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項4】
前記位相アレイ無線装置は、相互に同期された複数の位相ロックループであって、前記各位相ロックループは、少なくとも1個のアンテナパスの前記低域周波数変換部に接続され、そのために局部発振信号を生成するように設けられることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項5】
前記各位相ロックループは、少なくとも2個のアンテナパスの前記低域周波数変換部に接続されることを特徴とする請求項4記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項6】
前記ベースバンド信号合成回路は、前記複数のアンテナパス間の距離をブリッジする複数の配線の複数の部分の間に複数の信号リピータを備えることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1つに記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項7】
前記複数の信号リピータは、複数の電流増幅器であることを特徴とする請求項6記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項8】
前記受信機は、60GHz周辺のAV−OFDM通信のために設けられたことを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1つに記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項9】
EHF範囲内で予め決定された周波数帯域において複数の着信信号のビームを受信する方法であって、
前記方法は、
それぞれが前記複数の着信信号のうちの1個を処理し、前記着信信号から差動I/Q出力信号を形成するように設けられた複数のアンテナパスに前記複数の着信信号を供給するステップと、
前記各着信信号を前記各アンテナパスの複数のIブランチ及び複数のQブランチに分割するステップと、
前記複数のIブランチ及び複数のQブランチにおける前記各着信信号をベースバンドに低域周波数変換して制御可能な位相シフトを前記複数のIブランチ及び複数のQブランチにおける前記各着信信号に印加するステップと、
前記複数のアンテナパスにより形成された前記複数の差動I/Q出力信号が相互に同期されるように前記複数の制御可能な位相シフトを制御するステップと、
前記複数の差動I/Q出力信号を合成された差動I/Q信号に合成するステップと、
を備えた前記方法において、
前記制御可能な位相シフトは、各アンテナパスにおいて、前記着信信号の前記低域周波数変換後に印加され、
前記制御可能な位相シフトは、複数の制御可能な利得を前記複数のI/Qブランチにおける前記それぞれに低域周波数変換された着信信号に適用することにより印加され、前記複数の制御可能な利得は、前記それぞれの着信信号に印加される前記位相シフトから決定された回転行列の複数の係数に設定されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記位相シフトを印加するステップは、可変利得増幅器を用いて、前記低域周波数変換された信号に利得を加算するステップを備えることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記回転行列は、
【数3】
により与えられ、
ここで、IとQは、前記それぞれのアンテナパスの前記複数のI/Qブランチにおいて前記それぞれに低域周波数変換された着信信号をともに形成する複数の同相信号と複数の直交位相信号であり、
I’とQ’は、前記それぞれのアンテナパスの位相シフトされた差動I/Q出力信号をともに形成する複数の同相信号と複数の直交位相信号であり、
Aは、前記位相シフトを印加することに加えて前記それぞれの着信信号に利得を可能な限り加算するための共通のスケールファクタであり、
【数4】
は、前記それぞれの着信信号に印加される前記位相シフトであることを特徴とする請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記低域周波数変換は、1つのステップにおいて実行されることを特徴とする請求項9から11のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
差動I/Qフォーマットにおける複数の局部発振信号は、前記複数の着信信号の前記低域周波数変換を実行する各低域周波数変換部に対して生成され、前記複数の局部発振信号は、相互に同期される複数の位相ロックループを用いて生成されることを特徴とする請求項9から12のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記各位相ロックループは、少なくとも2個のアンテナパスの前記低域周波数変換部に接続されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記複数のアンテナパスそれぞれに印加される前記制御可能な位相シフトを決定する最初のステップを備えることを特徴とする請求項9から14のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項1】
EHF範囲内で予め決定された周波数帯域において複数の着信信号のビームを受信するように設けられた位相アレイ無線装置(2)を備えるEHF無線通信受信機(1)であって、
前記位相アレイ無線装置は、
それぞれが前記複数の着信信号(4)のうちの1つを処理し、前記複数の着信信号(4)から差動I/Q出力信号(5)を形成するように設けられた複数のアンテナパス(3)を備え、前記各アンテナパスは、前記着信信号をベースバンドに低域周波数変換するための低域周波数変換部(6)と、前記複数のアンテナパスにより形成された前記複数の差動I/Q出力信号が相互に同期されるように制御可能な位相シフトを前記各アンテナパスの信号に印加するための位相シフティング部(7)とを有する複数のIブランチ及び複数のQブランチを備え、
前記位相アレイ無線装置は、
前記複数のアンテナパスと接続され、前記複数の差動I/Q出力信号を合成された差動I/Q信号に合成させるように設けられた信号合成回路(8)と、
前記複数のアンテナパスの前記複数の位相シフティング部に接続され、前記制御可能な位相シフトを制御するように設けられた制御回路(9)とを備えた前記位相アレイ無線装置において、
各アンテナパスにおいて、前記位相シフティング部は、前記低域周波数変換部からのベースバンド部ダウンストリームであり、前記位相シフティング部は、前記複数のI/Qブランチにおいて複数の制御可能な利得をそれぞれに低域周波数変換された複数の着信信号に適用するように設けられた複数の可変利得増幅器のセット(10)を備え、
前記制御回路(9)は、前記複数の可変増幅器の前記複数の制御可能な利得を、前記それぞれの着信信号に印加される前記位相シフトから決定される回転行列の複数の係数に設定するように設けられたことを特徴とするEHF無線通信受信機(1)。
【請求項2】
前記回転行列は、
【数1】
により与えられ、
ここで、IとQは、前記それぞれのアンテナパスの前記複数のI/Qブランチにおいて前記それぞれに低域周波数変換された着信信号をともに形成する複数の同相信号と複数の直交位相信号であり、
I’とQ’は、前記それぞれのアンテナパスの位相シフトされた差動I/Q出力信号をともに形成する複数の同相信号と複数の直交位相信号であり、
Aは、前記位相シフトを印加することに加えて前記それぞれの着信信号に利得を可能な限り加算するための共通のスケールファクタであり、
【数2】
は、1つのアンテナパスの前記それぞれの着信信号に印加される前記位相シフトであることを特徴とする請求項1記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項3】
前記低域周波数変換部は、1つのステップにおいて前記着信信号をベースバンドに低域周波数変換するように設けられたダイレクト低域周波数変換部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項4】
前記位相アレイ無線装置は、相互に同期された複数の位相ロックループであって、前記各位相ロックループは、少なくとも1個のアンテナパスの前記低域周波数変換部に接続され、そのために局部発振信号を生成するように設けられることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項5】
前記各位相ロックループは、少なくとも2個のアンテナパスの前記低域周波数変換部に接続されることを特徴とする請求項4記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項6】
前記ベースバンド信号合成回路は、前記複数のアンテナパス間の距離をブリッジする複数の配線の複数の部分の間に複数の信号リピータを備えることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1つに記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項7】
前記複数の信号リピータは、複数の電流増幅器であることを特徴とする請求項6記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項8】
前記受信機は、60GHz周辺のAV−OFDM通信のために設けられたことを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1つに記載のEHF無線通信受信機(1)。
【請求項9】
EHF範囲内で予め決定された周波数帯域において複数の着信信号のビームを受信する方法であって、
前記方法は、
それぞれが前記複数の着信信号のうちの1個を処理し、前記着信信号から差動I/Q出力信号を形成するように設けられた複数のアンテナパスに前記複数の着信信号を供給するステップと、
前記各着信信号を前記各アンテナパスの複数のIブランチ及び複数のQブランチに分割するステップと、
前記複数のIブランチ及び複数のQブランチにおける前記各着信信号をベースバンドに低域周波数変換して制御可能な位相シフトを前記複数のIブランチ及び複数のQブランチにおける前記各着信信号に印加するステップと、
前記複数のアンテナパスにより形成された前記複数の差動I/Q出力信号が相互に同期されるように前記複数の制御可能な位相シフトを制御するステップと、
前記複数の差動I/Q出力信号を合成された差動I/Q信号に合成するステップと、
を備えた前記方法において、
前記制御可能な位相シフトは、各アンテナパスにおいて、前記着信信号の前記低域周波数変換後に印加され、
前記制御可能な位相シフトは、複数の制御可能な利得を前記複数のI/Qブランチにおける前記それぞれに低域周波数変換された着信信号に適用することにより印加され、前記複数の制御可能な利得は、前記それぞれの着信信号に印加される前記位相シフトから決定された回転行列の複数の係数に設定されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記位相シフトを印加するステップは、可変利得増幅器を用いて、前記低域周波数変換された信号に利得を加算するステップを備えることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記回転行列は、
【数3】
により与えられ、
ここで、IとQは、前記それぞれのアンテナパスの前記複数のI/Qブランチにおいて前記それぞれに低域周波数変換された着信信号をともに形成する複数の同相信号と複数の直交位相信号であり、
I’とQ’は、前記それぞれのアンテナパスの位相シフトされた差動I/Q出力信号をともに形成する複数の同相信号と複数の直交位相信号であり、
Aは、前記位相シフトを印加することに加えて前記それぞれの着信信号に利得を可能な限り加算するための共通のスケールファクタであり、
【数4】
は、前記それぞれの着信信号に印加される前記位相シフトであることを特徴とする請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記低域周波数変換は、1つのステップにおいて実行されることを特徴とする請求項9から11のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
差動I/Qフォーマットにおける複数の局部発振信号は、前記複数の着信信号の前記低域周波数変換を実行する各低域周波数変換部に対して生成され、前記複数の局部発振信号は、相互に同期される複数の位相ロックループを用いて生成されることを特徴とする請求項9から12のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記各位相ロックループは、少なくとも2個のアンテナパスの前記低域周波数変換部に接続されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記複数のアンテナパスそれぞれに印加される前記制御可能な位相シフトを決定する最初のステップを備えることを特徴とする請求項9から14のうちいずれか1つに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−531159(P2012−531159A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516709(P2012−516709)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058882
【国際公開番号】WO2010/149689
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058882
【国際公開番号】WO2010/149689
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】
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