説明

指紋消失性材料

【課題】指紋汚れを拭き取るなどの煩雑な操作を行なわなくても、付着した指紋汚れを経時とともに消失させることができ、例えば、金融機関の現金自動預金支払機(ATM)などに使用されているタッチパネルディスプレイなどに好適に使用することができる指紋消失性材料を提供すること。
【解決手段】付着した指紋汚れを経時とともに消失させる性質を有する指紋消失性材料であって、多官能モノマー、吸油性粒子、重合開始剤および油性成分を含有することを特徴とする指紋消失性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋消失性材料に関する。さらに詳しくは、ヒトの指紋が付着したときに当該付着した指紋による汚れ(以下、指紋汚れという)を経時とともに消失させる性質を有する指紋消失性材料に関する。
【0002】
本発明の指紋消失性材料は、従来の耐指紋性材料のように指紋汚れを拭き取るなどの煩雑な操作を行なわなくても、付着した指紋汚れをそのまま放置しておくだけで消失させることができる。したがって、本発明の指紋消失性材料は、例えば、銀行などの金融機関の現金自動預金支払機(ATM)、鉄道駅やレストランなどの自動券売機、自動販売機、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、デジタルオーディオプレーヤー、ゲーム機、普通紙(PPC)複写機などの複写機、ファクシミリ、カーナビゲーションシステムなどのデジタル情報機器などに使用されているタッチパネルディスプレイ、メガネやカメラなどのレンズ、ショーウィンドウなどに使用することが期待されるものである。
【背景技術】
【0003】
近年、液晶表示装置などのタッチパネルディスプレイの普及により、当該タッチパネルディスプレイに付着した指紋汚れを拭き取ることによって容易に除去することができる耐指紋性材料として、特定組成のビニルモノマーを含有する重合成分を重合させることによって得られる共重合体からなる耐指紋性向上剤(例えば、特許文献1参照)、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート、光重合性多官能化合物および光重合開始剤を含有する耐指紋性光硬化性組成物(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
前記耐指紋性向上剤および耐指紋性光硬化性組成物は、いずれも、これらを塗布することによって形成されたコーティング層にヒトの指紋汚れが付着したとき、ヒトの指紋汚れが付着しがたいという利点があるが、コーティング層に付着した指紋汚れは、拭き取りなどの操作を行なわなければ除去することができないため、指紋汚れが付着するたびに当該指紋汚れを落とすための煩雑な拭き取り操作を必要とするという欠点がある。
【0005】
したがって、例えば、金融機関の現金自動預金支払機(ATM)などのタッチパネルディスプレイなどに付着した指紋汚れを拭き取るなどの操作を行なわなくても、そのまま放置しておくだけで当該指紋汚れを自然に消失させることができる指紋消失性材料の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−24283号公報
【特許文献2】特開2010−35707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、付着した指紋汚れを拭き取るなどの操作を行なわなくても、そのまま放置しておくだけで当該指紋汚れを自然に消失させることができ、例えば、金融機関の現金自動預金支払機(ATM)などのタッチパネルディスプレイなどに好適に使用することができる指紋消失性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
〔1〕 付着した指紋汚れを経時とともに消失させる性質を有する指紋消失性材料であって、多官能モノマー、吸油性粒子、重合開始剤および油性成分を含有することを特徴とする指紋消失性材料、
〔2〕 多官能モノマーが(メタ)アクリロイル基含有ペンタエリスリトール化合物、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオールポリ(メタ)アクリレートおよび水酸基含有ジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーである前記〔1〕に記載の指紋消失性材料、
〔3〕 吸油性粒子が活性炭粒子、鉱物粒子、粘土鉱物粒子、モレキュラーシーブ粒子、シリカゲル粒子、多孔質金属粒子、多孔質金属化合物粒子および多孔質ポリマー粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種である前記〔1〕または〔2〕に記載の指紋消失性材料、
〔4〕 油性成分が脂肪酸エステルである前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の指紋消失性材料、
〔5〕 さらに有機溶媒を含有してなる前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の指紋消失性材料、ならびに
〔6〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の指紋消失性材料からなる指紋消失性フィルム
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、付着した指紋汚れを拭き取るなどの操作を行なわなくても、そのまま放置しておくだけで当該指紋汚れを自然に消失させることができる指紋消失性材料および前記指紋消失性材料からなる指紋消失性フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の指紋消失性材料は、前記したように、付着した指紋汚れを経時とともに消失させる性質を有するものであり、多官能モノマー、吸油性粒子、重合開始剤および油性成分を含有することを特徴とする。本発明は、これらの成分のなかでも特に吸油性粒子と油性成分とが併用されている点に1つの大きな特徴を有する。本発明の指紋消失性材料においては、このように吸油性粒子と油性成分とが併用されているので、両者併用による相乗効果として、優れた指紋消失性が発現される。
【0011】
多官能モノマーは、指紋消失性を向上させる観点から、(メタ)アクリロイル基含有ペンタエリスリトール化合物、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオールポリ(メタ)アクリレートおよび水酸基含有ジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0012】
(メタ)アクリロイル基含有ペンタエリスリトール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの(ジ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの(ジ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体;エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの(ジ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0013】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
ポリオールポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
水酸基含有ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
多官能モノマーのなかでは、指紋の消失性を向上させる観点から、(メタ)アクリロイル基含有ペンタエリスリトール化合物が好ましく、(ジ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体および(ジ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性体がより好ましく、(ジ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートがより一層好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがさらに好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0018】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」および/または「メタクリル酸」を意味する。また、「(ジ)ペンタエリスリトール」は、「ペンタエリスリトール」および/または「ジペンタエリスリトール」を意味する。
【0019】
なお、多官能モノマーは、本発明の目的が阻害されない範囲内で、単官能モノマーと併用されていてもよい。
【0020】
単官能モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系化合物、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系化合物;(メタ)アクリロイルモルホリン;イタコン酸メチル、イタコン酸エチルなどのイタコン酸アルキルエステル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル基含有化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
吸油性粒子は、吸油性を有する成分のことである。吸油性粒子としては、例えば、ヤシ殻、木粉などを原料とする木炭系活性炭、ポリマーを原料とする有機化合物系活性炭、泥炭、亜炭、瀝青炭などの石炭を原料とする石炭系活性炭などの活性炭粒子;ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、β型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライトなどのゼオライト粒子(天然ゼオライト粒子)、マイカなどの鉱物粒子;カオリン、タルク、モンモリロナイト、バーミキュライトなどの粘土鉱物粒子;モレキュラーシーブ粒子(合成ゼオライト粒子);シリカゲル粒子;多孔質金属粒子;アルミナ粒子などの多孔質金属化合物粒子;多孔質ポリアミド粒子などの多孔質ポリマー粒子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの吸油性粒子は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
吸油性粒子のなかでは、指紋の消失性を向上させる観点から、活性炭粒子、鉱物粒子、粘土鉱物粒子、モレキュラーシーブ粒子、シリカゲル粒子、多孔質金属粒子、多孔質金属化合物粒子および多孔質ポリマー粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、活性炭粒子、鉱物粒子、粘土鉱物粒子、シリカゲル粒子および多孔質ポリマー粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましく、活性炭粒子、鉱物粒子、粘土鉱物粒子およびシリカゲル粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種がより一層好ましく、本発明の指紋消失性材料の透明性を高める観点から、鉱物粒子、粘土鉱物粒子、シリカゲル粒子および多孔質ポリマー粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種がさらに一層好ましく、鉱物粒子がさらに一層好ましく、ゼオライト粒子が特に好ましい。
【0023】
吸油性粒子の粒子径は、分散安定性を高める観点から、10nm以上であることが好ましく、粒子径を小さくすることによって相対的に吸油性粒子の表面積を大きくすることにより、吸油性を高める観点から、200nm以下であることが好ましい。なお、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、この範囲外の粒子径を有する吸油性粒子が含まれていてもよい。
【0024】
多官能モノマー100重量部あたりの吸油性粒子の量は、指紋の消失性を向上させる観点から、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上であり、本発明の指紋消失性材料によって形成された指紋消失性フィルムまたは皮膜の機械的強度を高めるとともに分散安定性を高める観点から、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。
【0025】
重合開始剤は、多官能モノマーの種類に応じて適宜選択して用いることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
光重合開始剤としては、例えば、フェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
フェノン系光重合開始剤として、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、p―クロロベンゾフェノン、テトラクロロベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
ホスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
なお、本発明の指紋消失性材料には、必要により、光重合開始剤の助剤が含まれていてもよい。当該助剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの助剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキサイド化合物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス化合物、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの熱重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
重合開始剤のなかでは、本発明の指紋消失性材料を重合させる際の操作性を向上させるとともに、本発明の指紋消失性材料が重合時に熱履歴を受けないようにする観点から、光重合開始剤が好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンがより好ましい。
【0034】
重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、多官能モノマー100重量部あたり0.1〜10重量部程度であることが好ましく、0.3〜5重量部程度であることがより好ましい。
【0035】
油性成分としては、例えば、脂肪酸エステルなどが挙げられる。脂肪酸エステルのなかでは、指紋消失性を向上させる観点から、脂肪酸の脂肪族アルコールエステルが好ましく、炭素数12〜22の飽和脂肪酸のグリセリンエステルがより好ましい。
【0036】
脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、べヘン酸、リグノセリン酸などの炭素数12〜22の飽和脂肪酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0037】
脂肪酸エステルの具体例としては、ラウリン酸グリセロール、ジラウリン酸グリセロール、トリラウリン酸グリセロール、ミリスチン酸グリセロール、ジミリスチン酸グリセロール、トリミリスチン酸グリセロール、パルミチン酸グリセロール、ジパルミチン酸グリセロール、トリパルミチン酸グリセロール、ステアリン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、トリステアリン酸グリセロール、オレイン酸グリセロール、ジオレイン酸グリセロール、トリオレイン酸グリセロール、リノール酸グリセロール、ジリノール酸グリセロール、トリリノール酸グリセロール、アラキジン酸グリセロール、ジアラキジン酸グリセロール、トリアラキジン酸グリセロール、べヘン酸グリセロール、ジべヘン酸グリセロール、トリべヘン酸グリセロール、リグノセリン酸グリセロール、ジリグノセリン酸グリセロール、トリリグノセリン酸グリセロールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脂肪酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
脂肪酸エステルのなかでは、トリラウリン酸グリセロール、トリミリスチン酸グリセロール、トリパルミチン酸グリセロール、トリステアリン酸グリセロール、トリオレイン酸グリセロール、トリリノール酸グリセロール、トリアラキジン酸グリセロールトリべヘン酸グリセロールおよびトリリグノセリン酸グリセロールが好ましく、トリオレイン酸グリセロールがより好ましい。
【0039】
多官能モノマー100重量部あたりの油性成分の量の下限値は、指紋消失性を向上させる観点から、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、またその上限値は、下限値と同様に指紋消失性を向上させる観点から、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。
【0040】
なお、本発明の指紋消失性材料には、必要により、有機溶媒を含有させてもよい。有機溶媒は、当該多官能モノマーに適したものを選択して用いることが好ましい。
【0041】
有機溶媒としては、例えば、アルコール系有機溶媒、芳香族炭化水素化合物系有機溶媒、カルボン酸エステル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、塩素含有化合物系有機溶媒、脂肪族炭化水素化合物系有機溶媒、グリコールエーテル系有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
アルコール系有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
芳香族炭化水素化合物系有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
カルボン酸エステル系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸イソアミルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
ケトン系有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジブチルケトン、イソホロンなどのケトン類;メチレンクロライドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
脂肪族炭化水素化合物系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、イソヘキサン、ヘプタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
グリコールエーテル系有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、エチルセロソルブ(エチレングリコールモノエチルエーテル)、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)、メトキシプロピルアセテート、メトキシプロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
有機溶媒のなかでは、グリコールエーテル系有機溶媒が好ましく、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシプロピルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノtert−ブチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましい。
【0049】
多官能モノマー100重量部あたりの有機溶媒の量は、本発明の指紋消失性材料を基材に塗布するときの塗工性を向上させる観点から、好ましくは10〜400重量部、より好ましくは30〜350重量部、さらに好ましくは50〜300重量部である。
【0050】
本発明の指紋消失性材料には、必要により、例えば、充填剤、帯電防止剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料や染料などの着色剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0051】
本発明の指紋消失性材料は、多官能モノマー、吸油性粒子、重合開始剤、油性成分、必要により、有機溶媒、添加剤などを混合することによって容易に調製することができる。
【0052】
以上のようにして得られる本発明の指紋消失性材料は、例えば、基材上に塗布することによって使用することができる。基材としては、例えば、タッチパネルディスプレイ、メガネやカメラなどのレンズ、ショーウィンドウなどの製品または製品を構成している部品をはじめ、製品の原材料として使用されるガラス板、透明樹脂板などの透明基材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0053】
本発明の指紋消失性材料を基材に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、フローコート法、スプレーコート法、ロールコート法、浸漬法、刷毛塗法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0054】
本発明の指紋消失性材料を基材に塗布することによって形成された塗膜の厚さは、当該基材の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10μm〜1mm程度であることが好ましい。
【0055】
次に、形成された塗膜に含まれている多官能モノマーを重合させることによって塗膜を硬化させることができる。
【0056】
塗膜を硬化させる方法は、本発明の指紋消失性材料に含まれている重合開始剤の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、重合開始剤として光重合開始剤を用いた場合、形成された塗膜に紫外線などの光線を照射することにより、多官能性モノマーを重合させて塗膜を硬化させることができる。また、重合開始剤として熱重合開始剤を用いた場合には、形成された塗膜を加熱することにより、多官能性モノマーを重合させて塗膜を硬化させることができる。
【0057】
このようして形成された硬化塗膜は、従来のように指紋汚れを拭き取るなどの煩雑な操作を行なわなくても、付着した指紋汚れをそのまま放置しておくだけで経時とともに自然に消失させることができるという優れた性質を有する。
【0058】
したがって、本発明の指紋消失性材料を、例えば、メガネのレンズ、望遠鏡、双眼鏡、カメラなどのレンズに塗布した後、形成された塗膜を硬化させることによって硬化塗膜を形成させた場合には、レンズに指紋汚れが付着した場合であっても、そのまま放置しておくだけで指紋汚れを自然に消失させることができる。
【0059】
本発明の指紋消失性材料は、例えば、指紋消失性フィルムなどとして用いることができる。本発明の指紋消失性フィルムは、例えば、本発明の指紋消失性材料を基材上に塗布することによってフィルム化させる方法、Tダイなどを用いて押出成形する方法などによって容易に製造することができる。
【0060】
本発明の指紋消失性フィルムは、指紋消失性材料のみからなるフィルムであってもよく、フィルム基材上に指紋消失性材料からなるフィルムが積層された積層フィルムであってもよい。
【0061】
本発明の指紋消失性フィルムは、指紋消失性材料のみで形成されている場合、当該指紋消失性フィルムの厚さ(乾燥後の厚さ)は、その用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10μm〜1mm程度であることが好ましい。
【0062】
本発明の指紋消失性フィルムがフィルム基材上に指紋消失性材料からなるフィルムが積層された積層フィルムである場合、本発明の指紋消失性フィルム全体の厚さ(乾燥後の厚さ)は、本発明の指紋消失性フィルムの用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、20μm〜5mm程度であることが好ましい。フィルム基材の厚さは、本発明の指紋消失性フィルムの用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10μm〜4mm程度であることが好ましい。
【0063】
前記積層フィルムに用いられるフィルム基材は、本発明の指紋消失性フィルムがタッチパネルディスプレイ、メガネやカメラなどのレンズ、ショーウィンドウなどの用途に使用される場合には、透明性を有することが好ましい。透明性を有するフィルム基材(透明フィルム基材)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、AS樹脂などの透明樹脂からなる透明樹脂基材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0064】
指紋消失性フィルムがフィルム基材上に本発明の指紋消失性材料からなるフィルムが積層された積層フィルムである場合、当該積層フィルムは、例えば、基材フィルム上に本発明の指紋消失性材料を塗布した後、形成された塗膜を硬化させることによって製造することができる。
【0065】
本発明の指紋消失性材料をフィルム基材に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、フローコート法、スプレーコート法、ロールコート法、浸漬法、刷毛塗法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明の指紋消失性材料をフィルム基材に塗布することによって形成された塗膜の厚さ(乾燥後の厚さ)は、基材の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10μm〜1mm程度であることが好ましい。
【0066】
次に、フィルム基材上に形成された塗膜に含まれている多官能モノマーを重合させることによって塗膜を硬化させることができる。
【0067】
フィルム基材上に形成された塗膜を硬化させる方法は、本発明の指紋消失性材料に含まれている重合開始剤の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、重合開始剤として光重合開始剤を用いた場合、形成された塗膜に紫外線などの光線を照射することにより、多官能性モノマーを重合させて塗膜を硬化させることができる。また、重合開始剤として熱重合開始剤を用いた場合には、形成された塗膜を加熱することにより、多官能性モノマーを重合させて塗膜を硬化させることができる。
【0068】
このようにしてフィルム基材上に形成された硬化塗膜は、従来のように指紋汚れを拭き取るなどの煩雑な操作を行なわなくても、付着した指紋汚れをそのまま放置しておくだけで経時とともに自然に消失させることができるという優れた性質を有する。付着した指紋汚れが消失するまでに要する時間は、付着した指紋汚れの程度、本発明の指紋消失性材料の組成によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜5時間程度である。
【0069】
以上説明したように、本発明の指紋消失性材料は、従来のように指紋汚れを拭き取るなどの煩雑な操作を行なわなくても、付着した指紋汚れを経時とともに自然に消失させるという優れた性質を有するものである。
【0070】
したがって、本発明の指紋消失性材料は、例えば、銀行などの金融機関の現金自動預金支払機(ATM)、鉄道駅やレストランなどの自動券売機、自動販売機、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、デジタルオーディオプレーヤー、ゲーム機、普通紙(PPC)複写機などの複写機、ファクシミリ、カーナビゲーションシステムなどのデジタル情報機器などに使用されているタッチパネルディスプレイ、メガネやカメラなどのレンズ、ショーウィンドウなどに使用することが期待されるものである。
【実施例】
【0071】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
実施例1〜8
吸油性粒子〔ゼオライト粉末(酸化アルミニウム10.5重量%、二酸化ケイ素60.2重量%含有)、協和化学工業(株)製、商品名:キョーワード(登録商標)700〕および有機溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を表1に示す量で混合し、均一に分散させ、得られた分散液に、表1に示す量の多官能モノマー(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)および油性成分(トリオレイン酸グリセロール)を添加し、十分に混合することにより、指紋消失性材料を得た。
【0073】
次に、前記で得られた指紋消失性材料をポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(厚さ:30μm)上にバーコーターで乾燥後の塗膜の厚さが5μmとなるように塗布し、80℃の温度で2分間加熱することによって有機溶媒を揮散除去した。その後、塗膜面から30cm離れた位置に配設された高圧水銀灯(120W)にて紫外線を800mJ/cm2のエネルギーで塗膜に照射し、当該塗膜を硬化させることにより、指紋消失性フィルムを得た。
【0074】
得られた指紋消失性フィルムの物性として、接触角、指紋消失性および透明性を以下の方法に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
【0075】
〔接触角〕
トリオレインは、ヒトの指先に含まれている主たる油性成分である。したがって、指紋消失性フィルムとトリオレインとの親和性を調べた。トリオレイン接触角は、指紋消失性フィルムの表面上にトリオレイン1滴を滴下し、接触角計〔エルマ(株)製〕を用いて指紋消失性フィルムに対するトリオレインの接触角を25℃の大気中で測定した。
【0076】
〔指紋消失性〕
ヒトの人差し指を指紋消失性フィルムの表面に軽く押さえつけて当該表面に指紋を付着させ、2時間経過した後に、当該フィルム面を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:指紋消失性フィルムの表面に指紋汚れがまったく認められない。
○:指紋消失性フィルムの表面に指紋汚れがかすかに認められる。
△:指紋消失性フィルムの表面に指紋汚れがわずかに認められる。
×:指紋消失性フィルムの表面に指紋消失性材料汚れが明らかに認められる。
【0077】
〔透明性〕
◎:指紋消失性フィルムが透明である。
○:指紋消失性フィルムが不透明である。
【0078】
比較例1
実施例1において、吸油性粒子を使用しなかったことおよび有機溶媒量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして指紋消失性材料を調製し、指紋消失性フィルムを得た。得られた指紋消失性フィルムの物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0079】
比較例2
実施例1において、吸油性粒子5重量部の代わりに樹脂粒子〔メラミン樹脂−シリカ複合粒子、日産化学工業(株)製、商品名:オプトビーズ500S〕5重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして指紋消失性材料を調製し、指紋消失性フィルムを得た。得られた指紋消失性フィルムの物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0080】
比較例3
実施例1において、油性成分を使用しなかったことおよび有機溶媒量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして指紋消失性材料を調製し、指紋消失性フィルムを得た。得られた指紋消失性フィルムの物性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1に示されるように、指紋消失性フィルムの接触角は、吸油性粒子が使用されていないときには54度であり(比較例1)、油性成分が使用されていないときには15度であることから(比較例3)、吸油性粒子と油性成分とが併用されている指紋消失性フィルムの接触角は、約30度であることが予想される。これに対して、吸油性粒子と油性成分とが併用された指紋消失性フィルムの接触角は3度であることから(実施例1)、吸油性粒子と油性成分とを併用した場合には、両者併用による相乗効果によって指紋消失性フィルムの接触角が顕著に低下することがわかる。
【0083】
また、指紋消失性フィルムの指紋消失性は、吸油性粒子が使用されていない場合(比較例1)および油性成分が使用されていない場合(比較例3)のいずれの場合にも劣っていることから(評価:×)、吸油性粒子と油性成分とを併用したとしても指紋消失性フィルムの指紋消失性がほとんど改善されないことが予想される。これに対して、吸油性粒子と油性成分とを併用した場合には(実施例1)、指紋消失性フィルムの指紋消失性が優れていることから(評価:◎)、両者併用による相乗効果によって指紋消失性フィルムの指紋消失性が顕著に向上することがわかる。
【0084】
実施例5で得られた指紋消失性フィルムは、吸油性粒子量が多いので白色を有していたが、例えば、不透明樹脂基材や金属基材などのように不透明材料などに好適にすることができるものであった。
【0085】
比較例2は、吸油性粒子の代わりに従来の樹脂粒子が用いられた例であるが、指紋消失性が発現されないことがわかる。
【0086】
以上の結果から、本発明の指紋消失性材料および当該指紋消失性材料からなる指紋消失性フィルムは、指紋汚れを拭き取るなどの煩雑な操作を行なわなくても、そのまま放置しておくだけで当該指紋汚れを自然に消失させることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の指紋消失性材料は、指紋汚れを拭き取るなどの煩雑な操作を行なわなくても、付着した指紋汚れを経時とともに消失させることができることから、例えば、銀行などの金融機関の現金自動預金支払機(ATM)、鉄道駅やレストランなどの自動券売機、自動販売機、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、デジタルオーディオプレーヤー、ゲーム機、普通紙(PPC)複写機などの複写機、ファクシミリ、カーナビゲーションシステムなどのデジタル情報機器などに使用されているタッチパネルディスプレイ、メガネやカメラなどのレンズ、ショーウィンドウなどに使用することが期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着した指紋汚れを経時とともに消失させる性質を有する指紋消失性材料であって、多官能モノマー、吸油性粒子、重合開始剤および油性成分を含有することを特徴とする指紋消失性材料。
【請求項2】
多官能モノマーが(メタ)アクリロイル基含有ペンタエリスリトール化合物、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオールポリ(メタ)アクリレートおよび水酸基含有ジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーである請求項1に記載の指紋消失性材料。
【請求項3】
吸油性粒子が活性炭粒子、吸油性粒子が活性炭粒子、鉱物粒子、粘土鉱物粒子、モレキュラーシーブ粒子、シリカゲル粒子、多孔質金属粒子、多孔質金属化合物粒子および多孔質ポリマー粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の指紋消失性材料。
【請求項4】
油性成分が脂肪酸エステルである請求項1〜3のいずれかに記載の指紋消失性材料。
【請求項5】
さらに有機溶媒を含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載の指紋消失性材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の指紋消失性材料からなる指紋消失性フィルム。

【公開番号】特開2012−219116(P2012−219116A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83223(P2011−83223)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)