説明

指紋照合方法およびシステム

【課題】他人のなりすましによる情報処理装置への不正アクセスを効果的に防止し、セキュリティを維持する指紋照合方法およびシステムを提供する。
【解決手段】指紋照合装置10および上位装置(情報処理装置)20をUSB30により相互接続する。指紋照合装置10の通信制御部11は、USB30の監視機能を備え、USBコネクト後のディスコネクト又はUSB接続時に行われるネゴシエーションである上位装置20から指紋照合装置10へ行われるRESET動作を監視する。USB30がディスコネクトすると、指紋照合装置10内のプライベートな指紋データや指紋照合結果等をクリア(削除)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指紋照合方法およびシステムに関し、特に他人のなりすましによる情報処理装置への不正アクセスを防止し高度なセキュリティを可能にする指紋照合方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報処理装置は、種々の情報を所定のフォーマットに加工して記憶格納し、ユーザは斯かる情報を特定のキーワード等により検索して表示装置に表示すると共に必要に応じて電磁気的にコピー又は用紙に印刷して利用することが可能である。このような利便性により、情報処理装置には、例えば顧客リスト、原価情報、価格情報、設計データ、個人情報等の機密情報等を格納している場合が多い。
【0003】
このように情報処理装置に記憶格納された情報又はデータは、本来利用するべき者が適正にアクセスして利用する場合には、極めて有効である。しかし、斯かる情報処理装置に不正アクセスされ、機密情報又はデータが外部、特に競合社等に漏洩することは確実に防止する必要があり、そのために高いセキュリティが要求される。このセキュリティを維持するには、単に情報処理装置にアクセス可能な者を制限する等の消極的な手法では不十分であり、不正アクセスを積極的且つ確実に防止する手法が必要である。
【0004】
上述した不正アクセスを防止する従来技法は、幾つかの技術文献に開示されている。情報処理装置のメモリに記録された機密情報がコピーされるのを、認証プログラムを用いて効果的に防止するUSB(Universal Serial Bus)周辺機器セットアップ装置が開示されている(例えば特許文献1参照。)。また、USBコネクタにより指紋識別ユニット等を接続可能にする多機能キーボードが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−150285号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2002−287876号公報(第2頁、第1図)
【0006】
図3は、指紋照合装置を使用する一般的なシステム(指紋照合システム)の一システム構成を示すブロック図である。このシステムは、指紋照合装置10、PC(Personal Computer)等の情報処理装置である上位装置20およびこれら指紋照合装置10および上位装置20間を接続する電源供給付きUSBハブ30により構成されている。
【0007】
指紋照合装置10は、通信制御部11、指紋データ入力・照合部12、ICカード入出力制御部13、記憶部14、MPU(Micro Processing Unit)15およびこれら各部を相互接続するバス16を含んでいる。また、USBハブ30は、電源端子31を有し、このUSBハブ30からの電源供給を受けて、指紋照合装置10は動作する。ここで、指紋照合装置10の通信制御部11は、外部機器との通信を制御する。指紋データ入力・照合部12は、センサ(図示せず)を有し、指紋データの入力制御、特徴点抽出および照合を行なう。ICカード入出力制御部13は、ICカードからの指紋データの入出力制御を行なう。記憶部14は、指紋データおよび各種動作プログラム等を格納する。MPU15は、各部の処理動作を制御する。
【0008】
指紋照合装置10は、上位装置20からの指紋照合処理の命令に基づき、指紋データ入力・照合部12から入力した指紋情報をICカード入出力制御部13に格納され記憶部14に読み込まれた指紋データと照合する。指紋照合結果がOKであれば、通信制御部11を介してユーザは上位装置20にアクセスして操作することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図3に示す如き指紋照合システムでは、USBハブ30の上位装置20側のUSBケーブルを外し、上位装置20が入れ替わっても、電源が供給されており、指紋照合装置10側では上位装置20が入れ替わったことが分からないので、他人になりすまして入れ替わった上位装置20を動作することが可能であり、十分なセキュリティが得られないという課題があった。すなわち、PC等に接続され使用されるようなUSB外部接続型の装置は、USBのバスパワーから給電され動作する(または、外部電源にてパワーを給電)。よって給電タイプのUSBハブに接続し、装置に給電したまま、USBハブのホスト側のケーブルを差し換えられた場合は、上位PCがすりかわったことがわからず動作し、指紋データや照合結果がまる見えになってしまう。
【0010】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、他人になりすますことによるセキュリティの破壊を防止し、確実にセキュリティが保持可能な指紋照合方法およびシステムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため本発明の指紋照合方法およびシステムは次のような特徴的な構成を採用している。
【0012】
(1)USBケーブルにより上位装置に接続された指紋照合装置を備え、前記上位装置のセキュリティを保持する指紋照合方法において、
前記指紋照合装置により前記USBを監視し、このUSB監視結果に応じて前記指紋照合に用いられる指紋データおよび指紋照合結果をクリアする指紋照合方法。
【0013】
(2)前記USBの監視は、前記USBケーブルのコネクト後に該USBケーブルのディスコネクトされたことを検出するタスクである上記(1)の指紋照合方法。
【0014】
(3)前記USBの監視は、前記USB接続時に行われるネゴシエーションである前記上位装置から前記指紋照合装置へのリセット動作を監視するタスクである上記(1)の指紋照合方法。
【0015】
(4)前記USBの監視は、予め決められた時間で定期的に行う上記(1)、(2)又は(3)の指紋照合方法。
【0016】
(5)USBコネクタを備える上位装置とUSBケーブルにより接続される指紋照合装置を備える指紋照合システムにおいて、
前記指紋照合装置は、前記USBケーブルのディスコネクトを監視するUSB監視タスクを実行する通信制御部を備える指紋照合システム。
【0017】
(6)前記USB監視タスクによりUSBコネクト後にディスコネクトを検出すると、前記指紋照合装置の指紋データおよび指紋照合結果をクリアする上記(5)の指紋照合システム。
【0018】
(7)前記上位装置は、パソコンである上記(1)乃至(6)の指紋照合方法またはシステム。
【発明の効果】
【0019】
本発明の指紋照合方法およびシステムによると、次の如き実用上の顕著な効果が得られる。即ち、指紋照合装置に接続される情報処理装置である上位装置を他人がなりすましで不正アクセスして機密情報のコピー等を行うことを効果的に防止し、高いセキュリティを保持可能である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明による指紋照合方法およびシステムの好適実施例の構成および動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
先ず、図1は、本発明による指紋照合システムの好適実施例のシステム構成を示すブロック図である。この指紋照合システムは、指紋照合装置10およびPC等の情報処理装置である上位装置20により構成され、これら指紋照合装置10および上位装置20は、USB30により相互接続されている。
【0022】
指紋照合装置10は、通信制御部11、指紋データ入力・照合部12、ICカード入出力制御部13、記憶部14およびMPU15を備え、これら各部は内部バス15により相互接続されている。次に、指紋照合装置10の各部の主要機能を説明する。通信制御部11は、上位装置20等の外部機器とのUSB通信制御、接続監視および命令コマンドの解析を行なう。指紋データ入力・照合部12は、センサ(図示せず)を含みユーザの指紋データの入力制御、特徴点抽出および照合を行なう。ICカード入出力制御部13は、ICカードからの指紋データ入出力制御を行なう。記憶部14は、指紋データ等を格納する。MPU15は、指紋照合装置10の各部の処理を行なう。
【0023】
次に、図1に示す指紋照合システムの通常動作、即ち上位装置20からの命令(コマンド)を受け、指紋照合装置10が上位装置20に対して指紋照合結果を送信する指紋照合動作を説明する。上位装置20からの命令は、指紋照合装置10の通信制御部11により受信される。上位装置20は、指紋照合装置10に対してICカードから指紋データの読み込み命令を送信する。ここで、ICカードには予め本人の指紋データが書き込まれているものとする。指紋照合装置10では、MPU15により上位装置20からの命令を解析し、ICカード入出力制御部13へ指令を出し、ICカードに書き込まれている指紋データを読み込み、記憶部14へ書き込む。
【0024】
上位装置20は、指紋照合装置10へ指紋センサから指紋データ読み込み命令を送信する。そこで、指紋照合装置10は、MPU15でこの命令を解析し、指紋データ入力・照合部12へ指令して、指紋センサ(図示せず)から指紋画像データを読み込み、記憶部14へ書き込む。また、指紋画像データから特徴点抽出も行ない、照合するための指紋データを作成し、記憶部14へ書き込む。
【0025】
上位装置20は、指紋照合装置10へ指紋データ照合命令を送信する。指紋照合装置10では、MPU15でこの命令を解析し、ICカードから読み込んだ指紋データおよび指紋センサから読み込んだ指紋データを記憶部14から読み出し、指紋データ入出力・照合部12へ指令を出して照合を行なう。そして、指紋照合結果を、指紋照合装置10からUSB30を介して上位装置20へ送信する。
【0026】
次に、本発明による指紋照合システムの特徴的動作であるUSB監視タスク、即ち指紋照合方法の好適実施例を、図2を参照して説明する。図2は、図1に示す指紋照合システムの動作を示すフローチャートである。図2(A)は、USB監視タスクの第1例、即ちUSBコネクタのディスコネクト(外れ)を監視する方法のフローチャートである。図2(B)は、USB監視タスクの第2例、即ちUSBディスコネクト後にUSB接続時に行なわれるネゴシエーションである上位装置(又はホストPC)から指紋照合装置10へ行なわれるリセット(RESET)動作を監視する方法のフローチャートである。
【0027】
先ず、図1および図2(A)を参照して説明する。図1に示す指紋照合システムにおいて、USB通信状態、即ち指紋照合装置10および上位装置20間での通信状態を検出する(ステップS1)。USBコネクト後にディスコネクトが検出されたか否かを判断する(ステップS2)。ステップS2において、ディスコネクトされた場合(ステップS2:Yes)には、指紋データおよび指紋照合結果をクリアする(ステップS3)。他方、ディスコネクトが検出されなかった場合(ステップS2:No)には、予め決められたタスクディレイ(ステップS4)の後で、上述したステップS1へ戻る。このUSB30のディスコネクトの検出は、指紋照合装置10の通信制御部11において行なう。この検出は、例えばUSB30から供給される電源電圧を検出することにより又は特定信号ラインの信号の遮断を検出することにより行なうことが可能である。
【0028】
また、図2(B)の場合には、上述の例と同様にUSB通信状態を検出する(ステップS11)。次に、USB30の接続時に上位装置20および指紋照合装置10間で行なわれるネゴシエーション、即ち、上位装置20から指紋照合装置10へ行なわれるリセット動作が検出されたか否かを判断する(ステップS12)。リセットが検出された場合(ステップS12:Yes)には、指紋データおよび指紋照合結果をクリアする(ステップS13)。他方、リセットが検出されない場合(ステップS12:No)には、所定のタスクディレイ(ステップS14)後にステップB1へ戻る。
【0029】
以上、本発明による指紋照合方法およびシステムの好適実施例の構成および動作を詳述した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることおよび種々の応用が可能であること当業者には容易に理解できよう。例えば、USBがディスコネクトされた場合には、警報ブザーを鳴らすことによりセキュリティ機能を改善することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による指紋照合システムの好適実施例のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】(A)および(B)は、図1に示す指紋照合システムのUSB監視タスクの2つの実施例のフローチャートを示す。
【図3】本発明における指紋照合システムの課題を説明するシステム構成図である。
【符号の説明】
【0031】
10 指紋照合装置
11 通信制御部
12 指紋データ入力・照合部
13 ICカード入出力制御部
14 記憶部
15 MPU(制御部)
20 上位装置(情報処理装置)
30 USB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
USBケーブルにより上位装置に接続された指紋照合装置を備え、前記上位装置のセキュリティを保持する指紋照合方法において、
前記指紋照合装置により前記USBを監視し、このUSB監視結果に応じて前記指紋照合に用いられる指紋データおよび指紋照合結果をクリアすることを特徴とする指紋照合方法。
【請求項2】
前記USBの監視は、前記USBケーブルのコネクト後に該USBケーブルのディスコネクトされたことを検出するタスクであることを特徴とする請求項1に記載の指紋照合方法。
【請求項3】
前記USBの監視は、前記USB接続時に行われるネゴシエーションである前記上位装置から前記指紋照合装置へのリセット動作を監視するタスクであることを特徴とする請求項1に記載の指紋照合方法。
【請求項4】
前記USBの監視は、予め決められた時間で定期的に行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の指紋照合方法。
【請求項5】
USBコネクタを備える上位装置とUSBケーブルにより接続される指紋照合装置を備える指紋照合システムにおいて、
前記指紋照合装置は、前記USBケーブルのディスコネクトを監視するUSB監視タスクを実行する通信制御部を備えることを特徴とする指紋照合システム。
【請求項6】
前記USB監視タスクによりUSBコネクト後にディスコネクトを検出すると、前記指紋照合装置の指紋データおよび指紋照合結果をクリアすることを特徴とする請求項5に記載の指紋照合システム。
【請求項7】
前記上位装置は、パソコンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の指紋照合方法またはシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−134202(P2006−134202A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324678(P2004−324678)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)