説明

指輪製造方法及び指輪

【課題】模様が1周に渡り途切れることなく、また段差無く連続した指輪製造方法及び指輪を提供する。
【解決手段】異なる2種類の金属を2段に積層して地金11を形成する。その後、この地金11の最外端部11aを内側の地金11に対しロウ付けして止める。この状態で、リング30の内側に対し指輪拡張機40を貫通させる。指輪拡張機40によるリング30の内側からの拡開と加熱を3回程繰り返す。このことにより、隙間の無い一つのリング30が形成される。次に、このリング30の外周面に対しすり鉢状の凹部31を刻設する。この刻設により凹部31には金属色の異なる地金11の金属端部が露出する。その後、リング30の内側にテーパ状のスチール棒を芯金として挿入し、リング30の外側を金槌で叩くことで表面を平滑化しサイズを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指輪製造方法及び指輪に係わり、特に模様が1周に渡り途切れることなく、また段差無く連続した指輪の製造方法及び指輪に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周に木目状の模様を有する指輪が知られている。図8にこの指輪の製造工程を説明する。まず、図8(a)に示すように複数枚の平板状の地金1を積層し積層体10を形成する。地金1には例えば金とシルバーや、銀と銅等の異なる金属を用い段違いに積層する。次に、この積層体10を図8(b)のように圧延する。その後、図8(c)のように積層体10の表面を複数箇所についてすり鉢状の切削をすることで、すり鉢状凹部13を形成する。なお、すり鉢状凹部13の縦断面を同図(c)に示す。そして、このすり鉢状凹部13の内側に木目状の金属端を露出させる。
【0003】
次に、図8(d)では、この積層体10を圧延、平滑化することですり鉢状凹部13を平坦化する。その後、この積層体10を環状に1周巻き、端部をロウ付けして指輪20を完成させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の指輪20ではロウ付けした端部20aにおいて木目模様がつながらず、模様に段差を生じていた。特に、指輪が結婚指輪等に用いられる場合には、このような模様の断絶は余り縁起の良いものではないとして敬遠されるおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、模様が1周に渡り途切れることなく、また段差無く連続した指輪製造方法及び指輪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明(請求項1)は指輪の製造方法であって、複数種類の金属を積層して地金を形成し、該地金を複数回捲回して一つのリングを形成し、該リングの内側及び/又は外側に対し少なくとも一つの凹部を刻設し、該凹部を平滑化して指輪を製造することを特徴とする。
【0007】
凹部を刻設することで地金の端部が露出し模様が現れる。この凹部を平滑化する。以上により、模様が1周に渡り途切れることなく、また段差無く連続させることができる。
【0008】
また、本発明(請求項2)は指輪の製造方法であって、地金を複数回捲回して一つのリングを形成し、該リングの内側から外側に向けて拡開しつつ加熱を行うことで指輪を製造することを特徴とする。
【0009】
押圧と加熱は、地金の間に隙間が無くなるまで繰り返すのが望ましい。このことにより、容易に指輪を製造できる。
【0010】
更に、本発明(請求項3)の指輪は、複数種類の金属を積層した地金を複数回捲回して形成したリングを備え、該リングの内側及び/又は外側に対し段差若しくは切れ目を有さずに連続した模様が刻設されたことを特徴とする。
【0011】
指輪は縁起を担いで装着される場合があり、模様においても切れ目や段差を有さないことが望まれる。複数種類の金属を積層した地金を捲回してリングを形成することでその表面に刻設した模様は連続した模様となる。
以上により、結婚指輪等に用いられた場合でも縁起の良い指輪として美観にも優れる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の指輪の製造方法によれば、複数種類の金属を積層して地金を形成し、この地金を複数回捲回して一つのリングを形成し、このリングに対し凹部を刻設するようにしたので、模様が1周に渡り途切れることなく、また段差無く連続させることができる。
【0013】
また、本発明の指輪の製造方法によれば、地金を複数回捲回して一つのリングを形成し、このリングの内側から外側に向けて拡開しつつ加熱を行うように構成したので、容易に指輪を製造できる。
【0014】
更に、本発明の指輪によれば、複数種類の金属を積層した地金を複数回捲回して形成したリングを備え、このリングの内側や外側に対し段差若しくは切れ目を有さずに連続した模様を刻設して構成したので、結婚指輪等に用いられた場合でも縁起の良い指輪として美観にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態である指輪30の外観図を図1に示す。図1において、指輪30の表面には木目状の複数の模様が施されている。そして、この模様は周方向に途切れることがなく形成されている。
【0016】
次に、この指輪30の製造工程について説明する。まず、図2に示すように、異なる2種類の金属を2段に積層して地金11を形成する。なお、地金11の外形は図8(a)とほぼ同様なので図示は省略する。但し、金属は2種類とは限らず、3種類以上の金属を積層するようにしてもよい。そして、この地金11を環状に捲回する。地金11の厚さは例えば0.1mm程であり、20回程捲回することで厚さ2mm程のリング30を形成する。その後、この地金11の最外端部11aを内側の地金11に対しロウ付けして止める。この状態で、リング30の内側に対し図3に示す指輪拡張機40を貫通させる。
【0017】
指輪拡張機40は、複数枚の板41が円錐筒状に束ねられている。上部側と下部側のそれぞれにはリング状のスプリング43A、43Bが配設されている。板41は下方に向けて台形状に拡がっている。指輪拡張機40の内側には空洞45が形成されている。そして、この空洞45には挿入棒47が挿入自在なようになっている。この挿入棒47は円錐状の外壁面を有しており、空洞45内に挿入されることで次第に指輪拡張機40の板41同士の間隔が拡げられ、指輪拡張機40の径が大きくなるようになっている。
【0018】
このように指輪拡張機40の径が大きくなることで、リング30の内側の地金11は外側に拡開され地金11同士の隙間が次第に小さくなる。ある程度地金11同士が密着しこの隙間が小さくなった段階で加熱を行う。加熱は地金11の材質により温度が異なるが、例えば金とシルバーの場合には960度、銀と銅の場合には750度の加熱を行う。加熱を行うことで、リング30の内側の地金11の端部は固着される。
【0019】
しかしながら、この状態では、地金11同士の間にまだ少し隙間が残っているので、指輪拡張機40で更にリング30の内側から拡開を行い、リング30の一層の密着化を図る。その後、もう一度加熱を行う。以上の指輪拡張機40によるリング30の内側からの拡開と加熱を3回程繰り返す。このことにより、隙間の無い一つのリング30が形成される。
【0020】
次に、図4に示すようにこのリング30の外表面の複数箇所に切削を行う。この切削はリング30の外周に対しすり鉢状の凹部31を刻設するものである。この刻設により凹部31には金属色の異なる地金11の金属端部が露出する。但し、凹部31はリング30の内側にも同様に刻設するようにしてもよい。その後、図5に示すように、すり鉢状凹部を平滑化する。この際には、リング30の内側にテーパ状のスチール棒を芯金として挿入し、リング30の外側を金槌で叩くことで表面を平滑化しサイズを調整する。
【0021】
次に、このリング30のサイズが大きくなった場合には、図6及び図7に示すようなサイズ縮め器50を用いる。図6には、サイズ縮め器50の外観を示し、図7にはサイズ調整をしているときの概念図を示す。サイズ縮め器50の中央部には円錐状の下方に行くに連れて先細りとなる貫通穴51が設けられている。この貫通穴51の内部にリング30を置き、上方から棒53で押す。このことにより、リング30の厚みが増した上でリング30の径が縮む。
【0022】
以上により、適当なサイズの木目模様を有する指輪が完成する。そして、このように完成した指輪には模様の切れ目や段差が存在しない。このため、美観を損なわない他、縁起を担ぐ場合に広く普及し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態である指輪の外観図
【図2】地金を環状に捲回したときの様子を示す図
【図3】指輪拡張機の構造を示す図
【図4】リングの外周に切削を行ったときの様子を示す図
【図5】リングの外周に対し平滑化を行ったときの様子を示す図
【図6】サイズ縮め器の外観
【図7】サイズ調整をしているときの概念図
【図8】従来の指輪の製造工程
【符号の説明】
【0024】
1、11 地金
10 積層体
11a 地金の最外端部
30 リング
30 指輪
31 凹部
40 指輪拡張機
41 板
43A、43B スプリング
45 空洞
47 挿入棒
50 サイズ縮め器
51 貫通穴
53 棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の金属を積層して地金を形成し、
該地金を複数回捲回して一つのリングを形成し、
該リングの内側及び/又は外側に対し少なくとも一つの凹部を刻設し、
該凹部を平滑化して指輪を製造する指輪製造方法。
【請求項2】
地金を複数回捲回して一つのリングを形成し、
該リングの内側から外側に向けて拡開しつつ加熱を行うことで指輪を製造する指輪製造方法。
【請求項3】
複数種類の金属を積層した地金を複数回捲回して形成したリングを備え、
該リングの内側及び/又は外側に対し段差若しくは切れ目を有さずに連続した模様が刻設されたことを特徴とする指輪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−36350(P2008−36350A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218383(P2006−218383)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(504014901)有限会社ソラ (10)
【Fターム(参考)】