説明

振動子角度可変機構を有する振動子固定具

【課題】新規な振動子角度可変機構を有する振動子固定具を提供する。
【解決手段】振動子固定具は、一本又は二本以上の軸を有し、二個以上の複数構造に分割し、それらを角度可変の回転機構によって連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子角度可変機構を有する振動子固定具に関する。特に、超音波を送受信するための振動子の角度可変機構を有する振動子固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、安全で簡便な方法として、一般的に診断や治療に使用されている。中でも超音波治療器は、超音波振動子から超音波を患部へ照射することにより治療を行うものであり、その有効性、利便性、又は安全性の更なる改善のために、多くの技術が開発されてきた。
【0003】
その一つに振動子固定具が挙げられる。例えば20分間超音波を患部へ照射する場合、手で治療プローブ(振動子)を押さえなくても良いように振動子固定具を使用する。しかし、患部が体内にあり、かつ体表から距離がある場合、超音波が正確に患部に当たるよう、正確な振動子超音波送受信面の位置決定が重要となる。また、治療が長期間にわたる場合、振動子の体表設置位置が治療毎に再現される必要がある。
【0004】
しかし、現在の一般的な振動子固定具は、確実な一方向での固定に限定しており、装填する振動子が適切な位置方向を向くよう角度調節が可能で、かつ意図する位置で保持が可能な機構にはなっていない。体表と骨との間に介在する軟部組織が厚くなるほど、超音波照射方向のずれの影響が大きくなり、軟部組織の厚い大腿部の大腿骨骨折に超音波のビームを適用する場合、治療に十分な超音波のエネルギーを患部に当てられない可能性が考えられる。
特許文献1及び2には、振動子固定具が開示されている。しかしながら、本発明の固定具とは構造が異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−119238号公報
【特許文献2】特開2006−204475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な振動子角度可変機構を有する振動子固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は下記である。
(1)超音波用振動子が装填されるインナー若しくは超音波用振動子と一体成形されたインナー、前記インナーに外設するアウター、及び前記インナーと前記アウターの相対角度が可変となる第一角度可変機構を有し、
前記インナーと前記アウターは、前記インナーが有する回転軸と前記アウターが有する回転軸保持構造又は前記アウターが有する回転軸と前記インナーが有する回転軸保持構造によって、前記回転軸を中心にして前記インナー及び/又は前記アウターが回動可能となるように連結し、前記回転軸及び前記回転軸保持構造が前記第一角度可変機構を構成することを特徴とする振動子固定具。
(2)前記アウターがはまるホルダーを有し、前記アウターは前記ホルダーの円状縁に接して回転可能であるように前記アウター及び前記ホルダーは連結し、前記アウターの前記ホルダーに対する位置が可変であることによって第二角度可変機構を構成する、(1)に記載の振動子固定具。
(3)前記第一角度可変機構と前記第二角度可変機構の回転中心となる軸は、互いに略直交していることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の振動子固定具。
(4)前記振動子固定具は、前記インナーと前記アウターが意図する相対角度にて保持可能にする第一保持機構を有し、
前記第一保持機構は、前記アウターが表面に有する一つ以上の穴にピンを刺して前記インナーを押圧することにより保持する機構、前記インナーの表面にパターン配置された穴を前記アウターが有するピンで刺すことによって保持する機構、若しくは前記インナーの表面にパターン配置された穴を前記アウターの外面を通してピンで刺すことによって保持する機構、又は前記インナーと前記アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部の連結によって保持する機構である、(1)〜(3)のいずれかに記載の振動子固定具。
(5)前記アウターと前記ホルダーが意図する相対位置にて保持可能にする第二保持機構を有し、
前記第二保持機構は、前記ホルダーが有する一つ以上の孔にピンを刺して前記インナーを押圧することにより保持する機構、前記ホルダーの外周に作製されたパターン配置された孔を前記アウターが有するピン若しくは前記アウターを通してピンで刺すことによって保持する機構、又は前記ホルダーと前記アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部の連結によって保持する機構であることを特徴とする、(4)に記載の振動子固定具。
(6)前記アウターは、前記ピン及びばねを備えるラッチを有する、(2)〜(5)のいずれかに記載の振動子固定具。
(7)前記アウターは、前記ラッチ、前記第一角度可変機構である前記回転軸又は前記回転軸保持構造を備えるアウター下、及び前記アウター下の内部にはまる前記ラッチを上から覆うためのアウター上からなることを特徴とする、(6)に記載の振動子固定具。
(8)前記ラッチは、前記アウター外部に突出するつまみを有し、前記つまみを引っ張ることにより前記ラッチが備える前記ばねが前記アウター下の引っ掛け部によって縮む位置に設置され、前記つまみを引っ張ることにより第一保持機構及び/又は第二保持機構の保持が解除される構造を有する、(7)に記載の振動子固定具。
(9)前記ラッチは、前記アウター外部に突出するつまみを有し、前記つまみを押すことにより前記ラッチが備えるばねが前記アウター下の引っ掛け部によって縮む位置に設置され、前記つまみを押すことにより第一保持機構及び/又は第二保持機構の保持が解除される構造を有する、(7)に記載の振動子固定具。
(10)前記アウターの下面に接触してカバーするキャップを有する、(1)〜(9)のいずれかに記載の振動子固定具。
(11)前記アウターが内部アウターと前記内部アウターに外設する外部アウターに分かれて構成され、前記第一角度可変機構として、前記インナーと前記内部アウターの相対角度が可変となる第三角度可変機構を有し、
前記インナーと前記内部アウターは、前記インナーが有する第三回転軸と前記内部アウターが有する第三回転軸保持構造又は前記内部アウターが有する第三回転軸と前記インナーが有する第三回転軸保持構造によって、前記第三回転軸を中心にして前記インナー及び/又は前記内部アウターが回動可能となるように連結し、前記第三回転軸及び前記第三回転軸保持構造が前記第三角度可変機構を構成することを特徴とする(1)に記載の振動子固定具。
(12)前記内部アウターと前記外部アウターの相対角度が可変となる第四角度可変機構を有し、
前記内部アウターと前記外部アウターは、前記内部アウターが有する第四回転軸と前記外部アウターが有する第四回転軸保持構造又は前記外部アウターが有する第四回転軸と前記内部アウターが有する第四回転軸保持構造によって、前記第四回転軸を中心にして前記内部アウター及び/又は前記外部アウターが回動可能となるように連結し、前記第四回転軸及び前記第四回転軸保持構造が前記第四角度可変機構を構成することを特徴とする(11)に記載の振動子固定具。
(13)前記第三回転軸、及び前記第四回転軸は、互いに略直交する位置に設計されている(12)に記載の振動子固定具。
(14)前記インナーと前記内部アウターが意図する相対角度にて保持可能にする第三角度保持機構を有し、
前記第三角度保持機構は、前記内部アウターが有する一つ以上の穴にピンを刺して前記インナーを押圧することにより保持する機構、前記インナーにパターン配置された穴を前記内部アウターが有するピン若しくは前記内部アウターの外面を通して外部からピンで刺すことによって保持する機構、前記第三回転軸を固定する機構、又は前記インナーと前記内部アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部によって保持する機構であることを特徴とする、(11)〜(13)のいずれかに記載の振動子固定具。
(15)前記インナーは充填されている振動子の超音波送受信面の向きを変更できる角度調節つまみを有し、
前記外部アウターは、第三回転軸と直交する前記外部アウターの対面に設計された二つの孔もしくは突起を回転中心として可動する回転機構制御レールと連結し、
前記回転機構制御レールは上面にレールを有し、
前記レールに前記角度調節つまみの上部が嵌り、
前記回転機構制御レールの前記外部アウター上の孔もしくは突起を中心とする回転を固定することで、前記外部アウターに対し前記インナーが意図する相対角度にて保持可能にする第三角度保持機構を有する(11)〜(13)のいずれかに記載の振動子固定具。
(16)前記内部アウターと外部アウターが意図する相対角度にて保持可能にする第四角度保持機構を有し、
前記第四角度保持機構は、前記外部アウターが有する一つ以上の穴にピンを刺して前記内部アウターを押圧することにより保持する機構、前記内部アウターにパターン配置された穴を前記外部アウターが有するピン若しくは前記外部アウターを通してピンで刺すことによって保持する機構、前記内部アウターと前記外部アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部によって保持する機構、前記第四回転軸を固定する機構又は第四回転軸を回転中心として前記第四回転軸に連結する部材で外部アウターを挟んで固定する機構であることを特徴とする、(12)〜(15)のいずれかに記載の振動子固定具。
(17)前記インナーは充填されている振動子の超音波送受信面の向きを変更できる角度調節つまみを有し、
前記外部アウターは、第三回転軸と直交する前記外部アウターの対面に設計された二つの孔もしくは突起を回転中心として可動する回転機構制御レールと連結し、
前記回転機構制御レールは上面にレールを有し、
前記レールに前記角度調節つまみの上部が嵌り、
前記レールを前記角度調節つまみが滑ることによって、第四角度可変機構が回転し、前記角度調節つまみの前記レール上の位置を固定することによって、前記インナーと前記外部アウターが意図する相対角度にて保持が可能となる第四角度保持機構を有する(12)〜(15)のいずれかに記載の振動子固定具。
(18)前記インナーの角度と前記インナーに装填される振動子の超音波送受信面角度を変更する際につまむ角度調節つまみを有し、前記角度調節つまみの下面は前記インナーに装填される振動子の上面に直接又はバネ若しくはクッション性材料を介して接触し、前記角度調節つまみと前記インナーとが接続することを特徴とする、(1)〜(17)に記載の振動子固定具。
(19)前記角度調節つまみと前記インナーとは、前記インナーに作製される切り込み若しくは凹部と角度調節つまみに作製される凸部、又は前記インナーに作製される凸部と角度調節つまみに作製される切り込み若しくは凹部、スナップフィット結合、締め付け、或いはねじ止めによって接続することを特徴とする(18)に記載の振動子固定具。
(20)前記角度調節つまみは前記インナーと一体構成されていることを特徴とする、(18)に記載の振動子固定具。
(21)前記アウターの下面には、超音波伝搬物質が介在するためのスペースが設けられていることを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の振動子固定具。
(22)超音波照射方向の体表と成す角度が分かるように、前記インナー、前記アウター、前記内部アウター、前記外部アウター、前記ホルダー、及び前記角度調節つまみのいずれか1つ以上に目盛りが備えられていることを特徴とする、(1)〜(21)のいずれかに記載の振動子固定具。
(23)前記インナーの下面又は前記インナーに装填される振動子の超音波送受信面に超音波伝搬物質である超音波透過性材料が一体成形されていることを特徴とする、(1)〜(22)のいずれかに記載の振動子固定具。
(24)前記超音波透過性材料は固体で、体表と接触する面は半球状を呈することを特徴とする(23)に記載の振動子固定具。
(25)(1)〜(24)のいずれかに記載の振動子固定具の前記回転軸に取り付けられるエンコーダもしくはポテンショメータによって、前記インナーの角度変化が検出され、パソコン、本体表示部又は関連装置表示部によって角度変化が表示可能となる超音波照射角度検出機構を有する振動子固定具。
(26)超音波用振動子が装填されるインナー若しくは超音波用振動子と一体成形されたインナー、及び前記インナーの外側がはまるアウターを有し、
前記インナーの外面は全面若しくは一部が球体を形成し、前記アウターの内面は前記インナーの外面の球体が嵌合するように球状を形成し、前記インナーは前記アウターの内部で回転若しくは前記インナー及び前記アウターの相対角度の変更が可能となり、前記インナーと前記アウターが意図する相対角度にて保持可能にする第五保持機構を有し、前記第五保持機構は、前記アウターが有する一つ以上の孔にピンを刺して前記インナーを押圧することにより保持する機構、前記インナーにパターン配置された穴を前記アウターが有するピン若しくは前記アウターの外面を通してピンで刺すことによって保持する機構、又は前記インナーと前記アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部によって保持する機構であることを特徴とする、振動子固定具。
【0008】
なお、以上述べた各構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、振動子固定具に振動子角度可変機構を与えて振動子の超音波送受信面の角度を可変できることにより、意図する場所への適切な照射又は反射波などの受信等を可能にする。さらに、振動子固定具に振動子の超音波送受信面を意図する角度で保持する保持機構を備えることにより、振動子の適切な角度での保持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】インナーを斜め上から見た斜視図である。
【図2】インナーを斜め下から見た斜視図である。
【図3】アウターを斜め上から見た斜視図である。
【図4】アウターを斜め下から見た斜視図である。
【図5】球状のインナーを、球状の空間を内部に有するアウターに嵌めこませた断面図である。
【図6】ホルダーを斜め上から見た斜視図である。
【図7】ラッチを斜め上から見た斜視図である。
【図8】角度調節つまみを斜め上から見た斜視図である。
【図9】本発明の振動子固定具を斜め上から見た斜視図である。
【図10】本発明の振動子固定具を斜め下から見た斜視図である。
【図11】図9の振動子固定具の分解図である。
【図12】図9の振動子固定具の一部分解図である。
【図13】固形状の超音波伝播材料とインナーを一体成型した場合の断面図である。
【図14】インナーを斜め上から見た斜視図である。
【図15】インナーを斜め下から見た斜視図である。
【図16】内部アウターを斜め上から見た斜視図である。
【図17】外部アウターを斜め上から見た斜視図である。
【図18】外部アウターの分解図を斜め上から見た斜視図である。
【図19】内部アウターの分解図を斜め上から見た斜視図である。
【図20】固定具全体を斜め上から見た斜視図である。
【図21】固定具全体とベース板を斜め上から見た斜視図である。
【図22】ポテンショメータの位置を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
振動子固定具は、患部付近に振動子を固定するためのものであり、体表あるいは体表との間に介在させるものに密着が可能で、かつ振動子を安定に保持できる構造である必要がある。振動子の安定保持に加え、振動子方向の調節を可能とするためには、振動子の超音波送受信面の角度を可変できることが好ましい。本発明の振動子固定具は、体表あるいは体表との間に介在させるものに密着する部分と振動子を保持する部分に分割し、かつそれらの間に角度可変となる機構を与えるものである。
【0012】
連結方法としては、一本の軸での連結、二本の軸での連結、球状のものを球状のもので包むことによる連結(球状連結、いわゆるボールジョイント構造)、回転機構による連結、及び一本の軸と回転機構による連結等がある。回転機構による連結とは、ベースに形成される円状縁に対し振動子装填構造が縁に沿って回転可動となるよう、直接あるいはころ等を介して連結することである。球状連結以外の全ての方法において、多方向すなわち全方向の角度調節を行う場合、相対角度が異なる2つ以上の軸で3つ以上の構造(本実施例では、インナー、アウター、ホルダー、もしくはインナー、内部アウター、外部アウター)を連結する必要がある。なお、このとき回転機構による連結の場合は、その回転機構の回転の中心を通る直線が軸となる。軸同士は互いに平行ではないことが要求され、互いに略直交することが好ましい。また、二本の軸で連結する場合は、全方向での回転中心が同じ高さになるよう、二本の軸が同じ平面上に設置されているのが望ましい。軸の位置は、装填される振動子の超音波送受信面の中心点を通る垂線に対し、直交することが好ましい。さらに、その軸は、超音波送受信面と同じ平面上にあることが好ましい。また、軸同士は互いに略直交することが好ましい。
【0013】
すなわち、本発明の一態様は、第一部材、第二部材、及び第三部材の3つの部材から構成され、第一部材及び第二部材で第一角度可変機構を構成し、第二部材及び第三部材で第二角度可変機構を構成し、第一角度可変機構と第二角度可変機構の回転中心となる軸が、互いに略直交する、超音波振動子を装填する振動子固定具である。
【0014】
部材同士の相対角度又は相対位置を保持するための保持機構としては、穴とピンによる保持、凸部と切り込み若しくは凸部と凹部による保持、押さえつけによる押圧力による保持、回転軸固定による保持、及びテープを被せる若しくはテープで張る等の外部からの固定等がある。連続的な角度変化に対し固定を行う場合は、押圧力、外部からの固定が、段階的に保持を行う場合は、穴とピン、凸部と切り込み若しくは凸部と凹部による保持が好ましい。
【0015】
上記連結方法として回転機構を用いる場合、全方向の角度可変機構に対する保持機構は、段階的保持を行う場合は一本の軸と回転機構の2つの方法によって連結し、ベースに作製された穴及びピンで振動子装填構造と連結する方法、連続的に保持する場合は球連結に対しベースに作製された穴からピンで押圧する方法が好ましい。回転機構を制御する場合、ピンに接続されているつまみを操作することが好ましい。上記方法により実現される振動子固定具を体表に設置してバンドなどで体表に固定し、振動子固定具のつまみを引っ張るあるいは押すことで角度調整の回転機構のロックを解除し、振動子装填構造と連結している角度調節つまみを傾け、あるいはねじり、理想とする振動子の角度の位置でつまみを押すあるいは引っ張ることで振動子の角度設定のロックを行う。
【0016】
二本の軸で連結する場合は、インナーと内部アウター、内部アウターと外部アウターとを直交する2軸により連結し、全方向の角度可変を実現する方法がある。この角度保持機構には上記部材同士の相対角度又は相対位置を保持するための保持機構以外に、インナーの上面に連結する角度つまみの上部を、外部アウターの相対する二つの側面に設計された二つの孔もしくは突起を回転中心として可動となるよう連結された、上面にレールを有する部材のレールの切り込みに嵌るよう設計し、そのレールを有する部材と外部アウターを固定する方法、及び内部アウターの回転中心に連動する板を外部アウターと保持する方法がある。
【0017】
二本の軸での連結の別の例として、レールを介した連結も挙げられる。固定具の相対する二つの側面に設計された二つの孔もしくは突起を回転中心として可動となるよう連結されたレールを有する部材を介し、一方が側面に設計された回転中心で部材が回転することによって、他方がレール上のすべり運動によって位置の変化が可能となるように連結する方法である。
【0018】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。なお、本発明は図示の実施例に限定されるものではない。
振動子はインナーと呼ばれる振動子装填構造に装填される必要がある。インナー1を斜め上から見た構造を図1に示す。インナーを斜め下から見た構造を図2に示す。インナー1は、振動子を装填し、かつ振動子から照射される超音波を遮らないよう、振動子送受信面が接する下面が空いており、かつ振動子がインナー1において振動子を挿入する部分から反対側へ抜け落ちないようにするためのストッパー2を下面に有している。さらに、体表あるいは体表との間に介在させるものに接する部分との間の角度調節が可能となるような回転軸3、すなわちインナー1に装填された超音波振動子の超音波送受信面の角度を可変とするための回転軸3を有している。あるいは、後述のインナー1に接するアウターが回転軸を有する場合は、インナー1は回転軸を保持する回転軸保持構造を有していてもよい。この回転軸と回転軸保持構造で角度可変機構(第一角度可変機構)を構成する。構造としては、例えば突起を有する凸部と突起がはまる凹部等がある。
【0019】
インナー1は、意図する方向で固定し角度保持が可能になるような角度保持機構(第一保持機構)を有する。この角度保持機構に穴とピンによる連結を用いる場合、インナーにはパターン穴4が形成されることが望ましい。本発明におけるパターン穴4とは一定の規則によって並んでいる穴をいう。このパターン穴は、インナーの表面に形成され、回転軸3を中心とした同心円上に等間隔に形成される連続穴が好ましく、これらの間隔が角度可変及び保持における最小単位となる。このパターン穴4は、インナー1の回転方向に存在する面、回転軸3を中心とするインナーの表面、若しくは回転軸3が形成される面に形成されるのが望ましい。
【0020】
また、角度保持機構に、突起物である凸部と切り込み又は凸部と窪みを有する凹部を用いる場合、インナー1外部に凸部、切り込み又は凹部を作製し、外部(アウター)に作製された切り込み、凹部、又は凸部の連結可能な部材と連結することになる。凸部又は切り込み若しくは凹部を形成する箇所は、パターン穴4と同様に、回転軸1を中心とした同心円上に等間隔に形成されることが好ましい。また、押さえつけによる押圧力による連結は、意図する角度にて外部から点、線、又は面にて押さえつけることで押圧力を与え、実現する。
【0021】
インナー1の回転を実現し、直接あるいは何かを介在させ体表に接し振動子固定のベースとなる部分をアウター5と呼び、斜め上から見た構造図を図3に、斜め下から見た構造図を図4に示す。アウター5は、インナー1が内部にはまり、かつインナー1の角度変更が可能となるようインナー1の外形よりも大きな空間を内部に有し、インナー回転軸保持構造6を有する。あるいは、インナー1が回転軸保持構造を有するときは、アウター5は回転軸を有する。アウター5とインナー1とが為す角度の保持方法(第一保持機構)として、ピンと穴を用いる場合、インナー1に形成されるパターン穴4に刺さるピン16を有している。あるいはインナー1のパターン穴4に対し、アウターの保持機構を有する箇所の外部から刺さるピンによって固定される構造を有している必要があり、これはピンが刺さる穴であることが望ましい。
【0022】
球状インナーを、球状の空間を内部に有する球状アウターに入れ、角度可変機構を具備させることも可能である。球状インナーは球状アウターの中で自由に回転可能であって、回転によって望ましい位置になったら、保持機構によって、球状インナーと球状アウターの位置関係を固定する。この方法で作製した固定具の断面図を図5に示す。この場合の保持構造は球状アウター8に作製した少なくともひとつ以上の孔9にネジ10若しくはピンを挿入し内部の球状インナー7を押圧力により押さえつける方法、球状インナー7にパターン配置された穴に球状アウター8が有するピンあるいは球状アウター8の外部から球状アウター8を通してピンで刺すことによる方法、及び球状インナー7及び球状アウター8の各々に作製された突起物である凸部と切り込み又は凸部と窪みを有する凹部による方法等が挙げられる。内部に装填された振動子22の角度を角度調節つまみ18を操作することにより変更する。
【0023】
球状連結による方法以外に、振動子の回転自由度を多方向に実現するためには、一本の軸と回転機構による連結でも可能である。この場合、インナー1とアウター5による1軸の回転可動機構すなわち角度可変機構の軸に対して、平行ではない軸、好ましくは鉛直方向に、略直交する軸を中心とする回転を加える方法が望ましい。言い換えると、軸又は軸を含む直線を直径に持つ、円の円周を回転する方法を加えることが望ましい。その方法として、例えば、アウター5を保持するためのホルダーを用いる。ホルダー11を図6に示す。ホルダー11は円状縁12を有し、円状縁12に沿って、ホルダー11に被っているアウター5が回動することにより、第一角度可変機構の軸に対して、略直交する軸を中心とする回転が実現され(第二角度可変機構)、その結果インナー1とアウター5により実現される回転軸3を中心とした回転に加え、全方向への振動子角度可動自由度が実現される。図6はホルダー11の円状縁12にアウター5の円状縁14が被さり、回転するものであるが、アウターの円状縁にホルダーが被さって回転する構造であってもよい。
【0024】
また、その可動角度を保持するには、外部からテープやバンドにて押し付けることによる固定、ホルダーが有する一つ以上の穴にピンを刺してインナーを押圧することにより保持する機構、ホルダーの円筒部の外周又は内周に作製された円状縁にパターン配置されたホルダーパターン穴13及びインナーに作製されたパターン穴4をアウター5が有するピン若しくはアウターの外面を通してピンで刺すことによって保持する機構、又はホルダー11とアウター5に設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部によって保持する機構が考えられるが、穴とピンによる結合が望ましい。本発明ではアウター5とホルダー11の相対位置を保持する機構を第二保持機構と呼ぶ。その場合、第一保持機構と第二保持機構で、同一のピンを用いることによってインナー1とアウター5、アウター5とホルダー11とを一度に固定することも可能となる。また、一度に固定する方法として、ホルダー11に穴若しくはホルダーパターン穴13を設けて、インナー1のパターン穴4に対して外部よりピンで固定する方法においては、アウター5内部にインナー1及びホルダー11両方に刺さるためのピン16を有すると良い。
【0025】
アウターには、アウターに有するピン16がインナー1及びアウター5に対して固定されることを調節するためのつまみ15を有するラッチ5bを設けると良い。ラッチ5bを図7に示す。ラッチ5bは、アウター5内部にある構造であり、アウター5の外部に突出しているつまみ15によりその水平方向(水平面)の動きが制御されるようになっている。ラッチ5bには、水平方向にピン16が2本形成されており、そのピン16が、固定具を組み立てたときに、同じく水平方向に位置するインナー1のパターン穴4、及びホルダー11のホルダーパターン穴13に対して刺さることにより、振動子の意図する角度での保持が可能となっている。ピン16の位置は、つまみ15によって調整できるように、つまみの引っ張り方向上に位置していることが好ましい。また、ラッチ5bの水平方向にばね17を取り付けることにより、アウター5に対する水平方向の動きにばね応力が加わる。このばね応力は、ばね17に応力を与える構造であれば特に限定されず、例えば、アウター下5cにばね17が当たる引っ掛け部25を構成することによって可能となる。ばね17が作用する方向を変えることにより、通常固定されるものをひっぱることにより解除する方法と、押すことにより解除する方法が挙げられる。図7では、引っ張ることにより解除されるようになっている。
【0026】
振動子を意図する角度にて調節するためには、インナー1と結合している角度調節つまみ18を用いる。角度調節つまみ18を図8に示す。角度調節つまみ18はインナー1に対し、凸部と切り込み若しくは凸部と凹部による連結、スナップフィット結合による連結、ネジによる連結あるいは押圧などによって結合する。また、つまむ部分の断面形状は多角形状を呈していてもよい。角度調節つまみ18は、下面に角度調節つまみバネ19を有し、このバネ19は、角度調節がされた振動子から超音波が意図する方向に対して適切に照射されるよう、インナー1のストッパー2に対して振動子を押し付けるように機能するのが望ましい。このバネ19は、振動子を押さえつけるものであれば、特に限定されず、例えばクッション性材料等の弾性素材も採用できる。なお、図8にて採用している凸部と切り込み若しくは凸部と凹部による連結では、角度調節つまみ18をねじる方向に操作するため、インナー1と角度調節つまみ18が外れにくくなるように、2段階の切り込み21構造をインナー1に作製している。図では、水平方向と垂直方向の2つの切り込みを示す。これと角度調節つまみ18に取り付けられているばね19が機能し、ねじり方向の操作に対し、インナー1から角度調節つまみ18が外れにくくなる。
【0027】
図9は、本発明の振動子装着具を上から見た斜視図である。図10は、本発明の振動子装着具を下から見た斜視図である。図11は図9の振動子固定具の分解図、及び図12は図9の振動子固定具の一部分解図である。振動子を装填するインナー1には、回転軸3を中心とした同心円とインナーが交わる面に3度間隔でパターン穴4が配置されている。なお、パターン穴4の間隔は、3度に限定されるものではなく、角度調整をしたい単位で形成されればよく、1〜10度の範囲が好ましい。回転軸3は、アウター5に形成されている回転軸保持機構6と連結し、振動子に対し回転軸3を中心とする回転を与える。アウター5はホルダー11の上に乗り、ホルダー11の円状縁12に被さって、ホルダー11の円状縁12を滑ることにより、ホルダー11との間に水平方向の回転を得る。この回転軸3による回転と、ホルダー11の水平方向の回転によって、振動子の全周囲方向への回転が実現される。ホルダー11には、全方向にホルダーパターン穴13が開いており、意図する角度での角度保持には、これにピン16が刺さることにより実現される。ホルダーパターン穴13の間隔は、角度調整をしたい単位で設定すればよい。
【0028】
ピン16はアウター5内部のラッチ5bに形成される。アウター5は複数の要素に分解され、アウター下5cの上にバネ17を有するラッチ5bが乗り、さらにこの上にアウター上5aが乗ることでラッチ5bが落下しないように抑える。本実施例のラッチ5bは、つまみ15を引っ張ることにより角度保持が解除されるようバネ17が設置されており、ラッチ5bに形成された二本のピン16がインナー1及びアウター5に形成されたパターン穴4及びホルダーパターン穴13から外れて解除される。また、アウター5下に形成された回転軸保持機構6から回転軸3すなわちインナー1が落下しないようアウター下5cを下からカバーするのがキャップ23である。
【0029】
装填された振動子を意図する角度に調節するため、インナー1と結合される角度調節つまみ18は、角度調節つまみ18の凸部20とインナー1の切り込み21あるいは窪み構造を有する凹部の結合により結合する。その凸部と切り込み若しくは凸部と凹部の結合は2段階になっており、それとインナー1と振動子が接触する面に設置される角度調節つまみバネ19によって、角度調節の際のねじりに対し外れないよう設計されている。また、本発明のアウター5の下面とホルダー11によって、超音波伝搬物質が介在するためのスペースが形成されている。このスペースによって、振動子の超音波送受信面の角度が可変できる程度の空間が確保されている。
【0030】
また、振動子の回転自由度を多方向に実現する他の方法として、二本の略直交する軸によって全方向の角度変化を実現する方法が挙げられる。その方法を実現する固定具について、実施例を用いて説明する。
【0031】
図14は、振動子22が装填されたインナーを斜め上から見た図である。図15は振動子が装填されたインナーを斜め下から見た図である。本実施例では振動子とインナーはインナーに設けられた振動子押さえねじ26が振動子を側面より押圧することにより固定される。なお、振動子とインナーが互いに固定される方法であれば、他の方法であっても良い。
【0032】
インナーの上部には、振動子の超音波送受信面角度を調節できるように、角度調節つまみ18が設けられている。本態様では、角度調節つまみとインナーが一体構成されている。コード45は、超音波を照射もしくは受信する際、振動子内部の圧電素子に電圧を負荷もしくは感知する振動子22に付属するコードである。
【0033】
図16は、内部アウターを斜め上から見た図である。インナーに設けられた第三回転軸28と内部アウターに設けられた第三回転軸保持機構29が接合して、第三角度可変機構が形成される。第三回転軸28は、第三回転軸保持機構29に保持されて、回転する。インナーと内部アウターの相対角度は、内部アウターに取り付けられている第三ポテンショメータ27により検出する。第三ポテンショメータ27は、第三回転軸と直交する面に備えられていればよい。第三ポテンショメータ27は、第三ポテンショメータ取り付け板43によって、内部アウターの側面に取り付けられている。第三ポテンショメータ27の設置図を図22に表す。第三ポテンショメータ27と第三回転軸28は、一緒に回動すべく、第三回転軸28の断面と第三ポテンショメータ27の断面は、互いに嵌り合うような形状になっていることが好ましい。図では、底面が平面で上面が中高の半円面である、かまぼこ型になっている。この場合、第三回転軸保持機構29は第三回転軸28が回動するよう、断面が円形になっている(図示せず)。なお、第三ポテンショメータ27による角度情報が不要な場合は、第三回転機構には第三ポテンショメータが無くてよい。このインナーと内部アウターの相対角度を変化させる機構を第三回転機構と呼ぶ。
【0034】
図17は外部アウターを斜め上から見た図である。外部アウターは、内部アウターの第四回転軸30と接合する第四回転軸保持機構31を有し、両者によって、第四角度可変機構が形成される。第四回転軸30は、第四回転軸保持機構31に保持されて、回転する。外部アウターに取り付けられている第四ポテンショメータ32により、装填される内部アウターの外部アウターに対する相対角度が検出可能となる。第四ポテンショメータ31は、第四回転軸と直交する面に備えられていればよい。第四ポテンショメータ31は、第四ポテンショメータ取り付け板44によって、外部アウターの側面に取り付けられている。第四ポテンショメータ31と第四回転軸30は、一緒に回動すべく、第四回転軸30の断面と第四ポテンショメータ31の断面が、互いに嵌り合うような形状になっていることが好ましい。図では、第三角度可変機構と同様のかまぼこ型になっている。第四ポテンショメータ31と第四ポテンショメータ取り付け板44の関係も、第三ポテンショメータと第三ポテンショメータ取り付け板43の関係と同様であるため、その設置図を図22に表す。また、第四回転軸保持機構31は第四回転軸30が回動するよう、断面が円形になっている(図示せず)。なお、第四ポテンショメータ31による角度情報が不要な場合は、第四回転機構には第四ポテンショメータが無くてよい。内部アウターと外部アウターの相対角度を変化させる機構を第四回転機構と呼ぶ。
【0035】
外部アウターには、第三回転機構の第三回転軸28と直交する面上に対面に設計された二つの孔、もしくは突起を回転中心として可動となる回転機構制御レール33が設計されている。実施例では外部アウター孔38に回転機構制御レール33のレール中心孔39をねじ40で留めて、外部アウター孔38及びレール中心孔39を中心に可動するよう設計されている。回転機構制御レール33は、上面に形成されたレール切り込み34にインナーの角度調節つまみ18の上部が嵌って、角度調節つまみ18がレール上を滑るように設けられている。レール切り込み34は、第四回転軸を中心として角度調節つまみ18が弧を描けるように設けられている。
【0036】
図18は外部アウターの分解図である。第三保持機構は、回転機構制御レール33の側面、すなわち回転機構制御レールが有するレール中心孔39と同じ面に設けられた孔47と、外部アウターに設けられ、外部アウターが有する外部アウター孔38と同じ面上に設けられた第三保持機構用空隙35をねじ42により固定する方法が望ましい。第三保持機構用空隙35は外部アウター孔38を中心として円弧状に形成されている。外部アウターの第三保持機構用空隙35の大きさは第三回転機構の可動範囲となり、要求する可動範囲以上で設計される必要がある。内部アウターと外部アウターは、第四回転軸30と第四回転軸保持機構31によって連結しているので、レール中心孔39を中心に回転機構制御レール33を動かすことによって、第三角度可変機構が回転する。第三角度可変機構の角度は、以上の構成によって固定されて、第三保持機構を形成する。
【0037】
図19は内部アウターの分解図である。第四角度可変機構の保持機構は、例えば、第四回転軸30を回転中心として連結する部材である、板36を外部アウターと固定することによって達成する。本実施例において第四保持機構は、第四回転軸保持機構31から外部アウターの外に突出した第四回転軸30を板36が有する穴に挿し込み、板36の上部に形成されているねじ46で、外部アウターに形成された第4保持機構用空隙41を挟み、外部アウターと内部アウターの相対角度が所望の角度であるときに、ねじ46を締めることによって、角度を固定するよう構成されている。第四保持機構用空隙41は第四回転軸保持機構31を中心として円弧状に形成されている。第四保持機構用空隙41の大きさは第四回転機構の可動範囲となり、要求する可動範囲以上で設計される必要がある。インナーの角度調節つまみ18は、第四回転機構を動かすときは、回転機構制御レール33を滑るように動く。このとき、角度調節つまみ18を、所望の角度に達したときに、回転機構制御レール33に固定するような構成にすれば、内部アウター無しで角度調節つまみ18と回転機構制御レール33で回転及び保持の機構を形成することができる。例えば、角度調節つまみ18をねじで構成し、ねじを締めることによって、回転機構制御レール33に対する位置を固定することができる。従って、第四保持機構として、上記のねじ46を締めることによって保持する機構の代わりに、角度調節つまみ18によって保持する機構を使用してもよいし、両方の機構を採用してもよい。
【0038】
図20は固定具全体の外観図である。振動子はインナーに内設され、インナーは内部アウターに内設され、さらに内部アウターは外部アウターに内設されている。インナーと内部アウターの角度(第三回転機構)及び内部アウターと外部アウターの角度(第四回転機構)は、角度調節つまみ18を動かすことによって調整される。第三回転機構と第四回転機構の回転中心が直角で、すなわち第三回転軸と第四回転軸が直交し、かつ同じ高さに設計されることにより、装填されている振動子が一つの回転中心の全周囲を向くことが可能になるので、より好ましい。所望の角度が見つかったら、第三角度保持機構及び第四角度保持機構によって、角度を固定することができる。
【0039】
図21に示すように、アウターの下面にベース板37を取り付けることによって、体表と振動子間のスペースが確保でき、振動子の回転が可能となる。ベース板の高さは、振動子が希望の範囲で動けるスペースが確保される高さが好ましい。体表と振動子間の距離は、取り外し可能なベース板37の厚みによって決定され、複数種類の厚みを持つベース板を揃えることで高さの調節が可能となる。これにより体表に振動子を密着させることも、体表から振動子を浮かせてスペースを設け、超音波伝搬物質を介して超音波を照射することも可能となる。なお、ベース板37は単体として設ける必要はなく、外部アウターの下面にベース板と一体化して構成してもよい。
【0040】
このスペースに入れる超音波伝播物質は、体表に塗って使用する液体状のゲルの他に、固形状のゲルを用いてもよい。固形状のゲルを用いる場合は、インナー1若しくは超音波振動子と一体成型又は取り外し可能に設定されていることが好ましい。その場合、振動子があらゆる角度で保持される場合においても超音波伝播物質が体表と接するよう、超音波伝播物質を半球状に成型するのが好ましい。インナー1と超音波伝播物質24を一体成型した場合の断面図を図13に示す。超音波振動子22が装填されたインナー1の底面を固体状の超音波伝搬物質24が覆って一体成型している。
【0041】
振動子は、超音波送受信面から下ろす垂線に対し片側15°両側30°の範囲で可変できることが望ましく、振動子固定具の下部のスペースは振動子が片側15°両側30°の範囲で可動できるような空間であることが望ましい。
【0042】
振動子の回転角度情報は、ポテンショメータを取り付けた実施態様では、ポテンショメータから得られる情報によって分かる。また、個々の回転軸に装着したエンコーダにより検出した角度をパソコン、固定具表示部、あるいは関連装置表示部にて表示するのも良い。固定具表示部としては、図示しないが、固定具の見やすい位置に表示するように設計すると良い。関連装置表示部としては、例えば、パソコンが挙げられ、それらの見やすい位置に表示するように設計すれば良い。
【0043】
また、回転角度情報は、本発明における、インナー、アウター、内部アウター、外部アウター、ホルダー、及び角度調節つまみのいずれか1つ以上に目盛りを備えることによっても得られる。その場合は、目視などによって、角度情報を得ることができる。例えば、アウターとホルダーとの相対位置が分かるように、アウター及びホルダーの表面に目盛りを設けることが挙げられる。
【符号の説明】
【0044】
1 インナー
2 ストッパー
3 回転軸
4 パターン穴
5 アウター
5a アウター上
5b ラッチ
5c アウター下
6 回転軸保持構造
7 球状インナー
8 球状アウター
9 孔
10 ネジ
11 ホルダー
12 ホルダーの円状縁
13 ホルダーパターン穴
14 アウターの円状縁
15 つまみ
16 ピン
17 バネ
18 角度調節つまみ(バネつき)
19 角度調節つまみバネ
20 凸部
21 切り込み(インナー)
22 振動子
23 キャップ
24 固形状の超音波伝播材料
25 引っ掛け部
26 振動子押さえねじ
27 第三ポテンショメータ
28 第三回転軸
29 第三回転軸保持機構
30 第四回転軸
31 第四回転軸保持機構
32 第四ポテンショメータ
33 回転機構制御レール
34 レール切り込み
35 第三保持機構用空隙
36 板
37 ベース板
38 外部アウター孔
39 レール中心孔
40 ねじ
41 第4保持機構用空隙
42 ねじ
43 第三ポテンショメータ取り付け板
44 第四ポテンショメータ取り付け板
45 コード
46 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波用振動子が装填されるインナー若しくは超音波用振動子と一体成形されたインナー、前記インナーに外設するアウター、及び前記インナーと前記アウターの相対角度が可変となる第一角度可変機構を有し、
前記インナーと前記アウターは、前記インナーが有する回転軸と前記アウターが有する回転軸保持構造又は前記アウターが有する回転軸と前記インナーが有する回転軸保持構造によって、前記回転軸を中心にして前記インナー及び/又は前記アウターが回動可能となるように連結し、前記回転軸及び前記回転軸保持構造が前記第一角度可変機構を構成することを特徴とする振動子固定具。
【請求項2】
前記アウターがはまるホルダーを有し、前記アウターは前記ホルダーの円状縁に接して回転可能であるように前記アウター及び前記ホルダーは連結し、前記アウターの前記ホルダーに対する位置が可変であることによって第二角度可変機構を構成する、請求項1に記載の振動子固定具。
【請求項3】
前記第一角度可変機構と前記第二角度可変機構の回転中心となる軸は、互いに略直交していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の振動子固定具。
【請求項4】
前記振動子固定具は、前記インナーと前記アウターが意図する相対角度にて保持可能にする第一保持機構を有し、
前記第一保持機構は、前記アウターが表面に有する一つ以上の穴にピンを刺して前記インナーを押圧することにより保持する機構、前記インナーの表面にパターン配置された穴を前記アウターが有するピンで刺すことによって保持する機構、若しくは前記インナーの表面にパターン配置された穴を前記アウターの外面を通してピンで刺すことによって保持する機構、又は前記インナーと前記アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部の連結によって保持する機構である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項5】
前記アウターと前記ホルダーが意図する相対位置にて保持可能にする第二保持機構を有し、
前記第二保持機構は、前記ホルダーが有する一つ以上の孔にピンを刺して前記インナーを押圧することにより保持する機構、前記ホルダーの外周に作製されたパターン配置された孔を前記アウターが有するピン若しくは前記アウターを通してピンで刺すことによって保持する機構、又は前記ホルダーと前記アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部の連結によって保持する機構であることを特徴とする、請求項4に記載の振動子固定具。
【請求項6】
前記アウターは、前記ピン及びばねを備えるラッチを有する、請求項2〜5のいずれかに記載の振動子固定具。
【請求項7】
前記アウターは、前記ラッチ、前記第一角度可変機構である前記回転軸又は前記回転軸保持構造を備えるアウター下、及び前記アウター下の内部にはまる前記ラッチを上から覆うためのアウター上からなることを特徴とする、請求項6に記載の振動子固定具。
【請求項8】
前記ラッチは、前記アウター外部に突出するつまみを有し、前記つまみを引っ張ることにより前記ラッチが備える前記ばねが前記アウター下の引っ掛け部によって縮む位置に設置され、前記つまみを引っ張ることにより第一保持機構及び/又は第二保持機構の保持が解除される構造を有する、請求項7に記載の振動子固定具。
【請求項9】
前記ラッチは、前記アウター外部に突出するつまみを有し、前記つまみを押すことにより前記ラッチが備えるばねが前記アウター下の引っ掛け部によって縮む位置に設置され、前記つまみを押すことにより第一保持機構及び/又は第二保持機構の保持が解除される構造を有する、請求項7に記載の振動子固定具。
【請求項10】
前記アウターの下面に接触してカバーするキャップを有する、請求項1〜9のいずれかに記載の振動子固定具。
【請求項11】
前記アウターが内部アウターと前記内部アウターに外設する外部アウターに分かれて構成され、前記第一角度可変機構として、前記インナーと前記内部アウターの相対角度が可変となる第三角度可変機構を有し、
前記インナーと前記内部アウターは、前記インナーが有する第三回転軸と前記内部アウターが有する第三回転軸保持構造又は前記内部アウターが有する第三回転軸と前記インナーが有する第三回転軸保持構造によって、前記第三回転軸を中心にして前記インナー及び/又は前記内部アウターが回動可能となるように連結し、前記第三回転軸及び前記第三回転軸保持構造が前記第三角度可変機構を構成することを特徴とする請求項1に記載の振動子固定具。
【請求項12】
前記内部アウターと前記外部アウターの相対角度が可変となる第四角度可変機構を有し、
前記内部アウターと前記外部アウターは、前記内部アウターが有する第四回転軸と前記外部アウターが有する第四回転軸保持構造又は前記外部アウターが有する第四回転軸と前記内部アウターが有する第四回転軸保持構造によって、前記第四回転軸を中心にして前記内部アウター及び/又は前記外部アウターが回動可能となるように連結し、前記第四回転軸及び前記第四回転軸保持構造が前記第四角度可変機構を構成することを特徴とする請求項11に記載の振動子固定具。
【請求項13】
前記第三回転軸及び前記第四回転軸は、互いに略直交する位置に設計されている請求項12に記載の振動子固定具。
【請求項14】
前記インナーと前記内部アウターが意図する相対角度にて保持可能にする第三角度保持機構を有し、
前記第三角度保持機構は、前記内部アウターが有する一つ以上の穴にピンを刺して前記インナーを押圧することにより保持する機構、前記インナーにパターン配置された穴を前記内部アウターが有するピン若しくは前記内部アウターの外面を通して外部からピンで刺すことによって保持する機構、前記第三回転軸を固定する機構、又は前記インナーと前記内部アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部によって保持する機構であることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項15】
前記インナーは充填されている振動子の超音波送受信面の向きを変更できる角度調節つまみを有し、
前記外部アウターは、第三回転軸と直交する前記外部アウターの対面に設計された二つの孔もしくは突起を回転中心として可動する回転機構制御レールと連結し、
前記回転機構制御レールは上面にレールを有し、
前記レールに前記角度調節つまみの上部が嵌り、
前記回転機構制御レールの前記外部アウター上の孔もしくは突起を中心とする回転を固定することで、前記外部アウターに対し前記インナーが意図する相対角度にて保持可能にする第三角度保持機構を有する請求項11〜13のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項16】
前記内部アウターと外部アウターが意図する相対角度にて保持可能にする第四角度保持機構を有し、
前記第四角度保持機構は、前記外部アウターが有する一つ以上の穴にピンを刺して前記内部アウターを押圧することにより保持する機構、前記内部アウターにパターン配置された穴を前記外部アウターが有するピン若しくは前記外部アウターを通してピンで刺すことによって保持する機構、前記内部アウターと前記外部アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部によって保持する機構、前記第四回転軸を固定する機構又は第四回転軸を回転中心として前記第四回転軸に連結する部材で外部アウターを挟んで固定する機構であることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項17】
前記インナーは充填されている振動子の超音波送受信面の向きを変更できる角度調節つまみを有し、
前記外部アウターは、第三回転軸と直交する前記外部アウターの対面に設計された二つの孔もしくは突起を回転中心として可動する回転機構制御レールと連結し、
前記回転機構制御レールは上面にレールを有し、
前記レールに前記角度調節つまみの上部が嵌り、
前記レールを前記角度調節つまみが滑ることによって、第四角度可変機構が回転し、前記角度調節つまみの前記レール上の位置を固定することによって、前記インナーと前記外部アウターが意図する相対角度にて保持が可能となる第四角度保持機構を有する請求項12〜15のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項18】
前記インナーの角度と前記インナーに装填される振動子の超音波送受信面角度を変更する際につまむ角度調節つまみを有し、前記角度調節つまみの下面は前記インナーに装填される振動子の上面に直接又はバネ若しくはクッション性材料を介して接触し、前記角度調節つまみと前記インナーとが接続することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項19】
前記角度調節つまみと前記インナーとは、前記インナーに作製される切り込み若しくは凹部と角度調節つまみに作製される凸部、又は前記インナーに作製される凸部と角度調節つまみに作製される切り込み若しくは凹部、スナップフィット結合、締め付け、或いはねじ止めによって接続することを特徴とする請求項18に記載の振動子固定具。
【請求項20】
前記角度調節つまみは前記インナーと一体構成されていることを特徴とする、請求項18に記載の振動子固定具。
【請求項21】
前記アウターの下面には、超音波伝搬物質が介在するためのスペースが設けられていることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項22】
超音波照射方向の体表と成す角度が分かるように、前記インナー、前記アウター、前記内部アウター、前記外部アウター、前記ホルダー、及び前記角度調節つまみのいずれか1つ以上に目盛りが備えられていることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項23】
前記インナーの下面又は前記インナーに装填される振動子の超音波送受信面に超音波伝搬物質である超音波透過性材料が一体成形されていることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の振動子固定具。
【請求項24】
前記超音波透過性材料は固体で、体表と接触する面は半球状を呈することを特徴とする請求項23に記載の振動子固定具。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の振動子固定具の前記回転軸に取り付けられるエンコーダもしくはポテンショメータによって、前記インナーの角度変化が検出され、パソコン、固定具表示部又は関連装置表示部によって角度変化が表示可能となる超音波照射角度検出機構を有する振動子固定具。
【請求項26】
超音波用振動子が装填されるインナー若しくは超音波用振動子と一体成形されたインナー、及び前記インナーの外側がはまるアウターを有し、
前記インナーの外面は全面若しくは一部が球体を形成し、前記アウターの内面は前記インナーの外面の球体が嵌合するように球状を形成し、前記インナーは前記アウターの内部で回転若しくは前記インナー及び前記アウターの相対角度の変更が可能となり、
前記インナーと前記アウターが意図する相対角度にて保持可能にする第五保持機構を有し、前記第五保持機構は、前記アウターが有する一つ以上の孔にピンを刺して前記インナーを押圧することにより保持する機構、前記インナーにパターン配置された穴を前記アウターが有するピン若しくは前記アウターの外面を通してピンで刺すことによって保持する機構、又は前記インナーと前記アウターに設けられた凸部と切り込み若しくは凸部と凹部によって保持する機構であることを特徴とする、振動子固定具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図5】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−291600(P2009−291600A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110761(P2009−110761)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】