説明

振動時に物品を保護する物品展示装置

【課題】地震等の振動が発生したときに、展示台を水平に保ったままで垂直下方に降下させ、物品全体への衝撃力を緩衝することができる物品展示装置を提供する。
【解決手段】本発明の物品展示装置100は、展示台110と、展示台を上下方向に移動可能なように支持するための支持部材120と、展示台の下面を受けるための底部緩衝部材130と、振動検知装置140と、振動検知装置が出力する振動検知信号に基づいて、展示台を下方に移動可能な位置に移動させるための展示台作動装置150とを備える。複数のロックボルト118が展示台110に設けられる。支持部材120は、ボルト受け部と、ボルト案内部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動時に物品を保護する物品展示装置に関するものである。特に、本発明は、学術的に重要な文化財あるいは高価な陶磁器、ガラス工芸品のような装飾品等の物品を、博物館に展示したり、応接室の飾り棚に飾ったり、店舗や展示会場に陳列する場合に、地震等の振動により、物品が転倒したり、物品が展示装置から降下して、物品が破損することから物品を保護することができるように構成した物品展示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したような破損し易い装飾品等を飾り棚や展示棚、陳列棚等に配置しておいたのでは、地震が発生した際、その振動によって物品が転倒したり、物品が展示装置から降下して、貴重な装飾品等が損傷したり、破損してしまうことがある。このため、一般的には、飾り棚や陳列棚の装飾品等の周りに紐等を用いて物品を支持したり、支え用バー等を設けることで転倒や降下に対処している。また、特に大きい装飾品等の場合は、複数本の紐等を所定間隔を置いて配置して、物品を支持している。しかし、このような方法では転倒、降下の防止手段としては不確実である。また、外観上の体裁も悪いだけでなく、装飾品等の鑑賞の邪魔になることがある。
【0003】
このような不都合を解消するため、従来の第1タイプの載置台は、物品が配置され、前記物品を支持する支持手段と、振動を検知する検知手段と、この検知手段からの検知信号により、支持手段による器物の支持を解除させる解除手段と、支持手段の下方に配されており、支持手段による器物の支持解除で、支持手段から降下する物品を収容して保護する保護手段とを具備し、前記解除手段は、検知手段からの信号により作動するソレノイド装置と、支持手段に係合しており、ソレノイド装置によって支持手段との係合が解除される止具とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、従来の第2タイプの載置台は、頂部および底部に一対の開口部を対向するように設けた所定高さの支持台を備え、前記支持台の頂部側の開口部に、その中央部で突き合わせつつ閉成自在にして、かつ開成自在の二枚一対のシャッター板を設け、底部側の開口部下方に、緩衝性能を有しかつ容積を調節可能である装飾品等の受け袋の上端開口縁を装着して吊持し、かつ、上記シャッター板の駆動装置と震動感知機とを設け、前記震動感知機が地震による震動を感知して駆動装置を作動させることでシャッター板を開成するように構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、従来の第3タイプの載置台は、物品を配置する面に、物品の中間部の断面が嵌合する嵌合孔を設け、前記嵌合孔を垂直方向に通過可能であって、垂直下方へ延びた載置シャフトによって支持された載置板と、振動を検知する振動検知手段と、前記中間部断面が前記孔に嵌合するまで前記物品が降下した時、前記載置シャフトを緩衝的に停止させる載置シャフト停止手段と、常時、前記載置板が前記載置面にあるように前記載置シャフトを係止し、前記振動検知手段からの振動検知信号によって前記載置シャフトの係止を解除して、前記載置板及び載置シャフトを降下可能にする係止手段とを備えるように構成されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第2746253号公報
【特許文献2】特許第3458089号公報
【特許文献3】特開2007−222481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(従来の載置台の問題点)
従来の第1タイプの載置台においては、スポンジ等の衝撃緩衝材が設けられていたとしても、陶芸品が所定高さ位置から底部まで重力降下した場合に、陶芸品が底部に衝突することによる大きな衝突音が発生したり破損するおそれがあると考えられる。また、従来の第1タイプの載置台においては、展示台を水平に保ったままで保持することができなかったので、陶芸品が重力降下した場合に、陶芸品の外面、縁部あるいは細い部分が破損するおそれがあると考えられる。
【0008】
従来の第2タイプの載置台においては、柔軟性がある袋が必須の構成部品であり、シャッター板の駆動装置の構造が複雑であった。また、従来の第2タイプの載置台においては、展示品を水平に配置して展示するのが困難であり、また、載置台の上下方向の寸法を小さくするのが困難であった。
【0009】
従来の第3タイプの載置台においては、載置板が載置シャフトによって支持されるので、展示品を水平に配置して展示するのが困難であり、また、載置台の上下方向の寸法を小さくするのが困難であった。さらに、従来の第3タイプの載置台においては、載置アクチュエータの構造が複雑であった。
【0010】
(発明の目的)
本発明は、地震等の振動が発生したときに、瞬時に展示品を垂直下方に降下させて、展示品全体への衝撃力を緩衝することができるように構成した物品展示装置を提供することを目的とする。また、本発明は、展示品を水平に保持することができ、地震等の振動が発生したときに確実に作動して、物品が転倒したり破損するのを回避して、展示品を保護することができる物品展示装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、小型でセット作業が容易で、かつ製造コストの安い物品展示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、振動時に物品を保護する物品展示装置であって、上面に物品を配置することができる展示台と、前記展示台を上下方向に移動可能なように内部に配置して支持するための支持部材と、前記支持部材の内部の下部に配置され、前記展示台の下面を受けるための底部緩衝部材と、物品展示装置に加えられる振動を検知するための振動検知装置と、前記振動検知装置が出力する振動検知信号に基づいて、前記展示台を下方に移動可能な位置に移動させるための展示台作動装置とを備える構成とした。この構成により、展示品を水平に配置して展示することができ、展示品を地震の揺れから確実に守ることができる。本発明の物品展示装置は、地震等の振動が発生したときに、展示台を水平に保ったままで展示台とともに展示品を降下させることができるので、物品が転倒したり破損するのを回避して、物品全体への衝撃力を緩衝し、物品を確実に保護することができる。
【0012】
本発明の物品展示装置において、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成された展示台緩衝部材が、前記展示台の上面および下面の少なくとも一方に配置されるのが好ましい。本発明の物品展示装置において、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成された底部緩衝部材が、前記展示台の下面を受けるために前記支持部材の内部の下部に配置されるのが好ましい。この構成により、地震等の振動が発生したときに、物品を確実に保護することができる。
【0013】
本発明の物品展示装置において、前記展示台作動装置は、前記展示台の中心軸線を回転中心として前記展示台を回転移動させることができるアクチュエータと、前記支持部材の外周部に設けられた作動クランプとを含むのが好ましい。本発明の物品展示装置において、前記展示台作動装置は、前記支持部材の内部において、前記展示台を回転移動させることができるように構成されるのが好ましい。
【0014】
本発明の物品展示装置において、前記展示台の回転移動範囲を制限するための移動範囲限定機構を含むのが好ましい。この構成により、展示台の回転移動範囲を一定の領域に限定することができる。
【0015】
本発明の物品展示装置において、前記支持部材は、前記支持部材の内部の側面に配置され、物品を保護するための物品側面保護部材を含むのが好ましい。この構成により、地震等の振動が発生したときに、物品の側面や口縁部を確実に側面から保護することができる。
【0016】
本発明の物品展示装置において、複数のロックボルトが前記展示台に設けられており、前記支持部材は、前記ロックボルトを受け入れて前記展示台を支持するためのボルト受け部と、前記ロックボルトを受け入れて前記展示台の下方への移動を案内するためのボルト案内部とを有するのが好ましい。本発明の物品展示装置において、前記ロックボルトは、前記展示台から半径方向外方に延びており、前記ボルト受け部は、水平方向に延びる台部として形成され、前記ボルト案内部は、垂直方向に延びる窓部として形成されるのが好ましい。この構成により、通常時は展示台の上に物品を配置し、地震等の振動が発生したときに、展示台を正確に下降させることができる。
【0017】
本発明はまた、振動時に物品を保護する物品展示装置であって、上面に物品を配置することができる展示台と、前記展示台を上下方向に移動可能なように内部に配置して支持するための支持部材と、前記展示台の降下衝撃を受けるための緩衝部材と、
手動入力による振動検知信号に基づいて、前記展示台を下方に移動可能な位置に移動させるための展示台作動装置と、を備えることを特徴とする物品展示装置である。本発明はこのように構成することによって、気象庁が、地震のP波(横波)を検知したとき、S波(縦波)の各地への到達時間を告知するシステム等を利用し、前記S波(縦波)の到達前に、手動によって展示台を降下させて物品を衝撃・損傷から保護するように作動させることができる。
【0018】
次に、本発明に係る物品展示装置の作用について説明する。物品展示装置の展示台を上方向に移動させ、支持部材の内部の上方において展示台を支持する。物品を本体および展示台の上に配置する。地震が発生して物品展示装置に加えられた振動を振動検知装置が検知すると、展示台作動装置は、振動検知装置が出力する振動検知信号に基づいて、展示台を下方に移動可能な位置に移動させる。振動検知装置からの検知信号を受入れると、展示台作動装置が作動する。展示台作動装置が作動すると、展示台は下方に降下することができる。展示台の回転移動範囲は、移動範囲限定機構によって制限される。展示台が支持部材の内部において降下すると、緩衝部材により物品を確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の物品展示装置は、装置の構造が簡単であって、安価に製造することができる。また、本発明の物品展示装置は、装置の取扱いが容易であって、装置の見栄えが良く構成することができる。本発明の物品展示装置を用いることにより、陶磁器などの展示品を水平に配置して展示することができ、展示品を地震の揺れから確実に守ることができる。本発明の物品展示装置は、博物館、美術館等の既存の展示台ケース内に直接セットすることができる。さらに、本発明の物品展示装置は、小型であるのでセット作業は容易であり、展示面積が不必要に増大することもない。本発明の物品展示装置は、地震等の振動が発生したときに、展示台を水平に保ったままで、瞬時に展示品が転倒する前に展示台とともに展示品を降下させることができるので、物品全体への衝撃力を緩衝することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(1)物品展示装置の構成:
以下に、本発明に係る物品展示装置の実施の形態の構成を図面に基づいて説明する。図1を参照すると、地震などの振動が発生した時に展示されている物品を保護するように構成された物品展示装置100は、物品展示装置の構成部品を中に収容するための本体102と、本体102の下部に配置される底板104とを備える。本体102は中空の箱型に形成される。図1において、本体102の平面形状が四角形である実施の形態の構成を示している。本体102の平面形状は、四角形であってもよいし、多角形であってもよいし、円形であってもよいし、直線および曲線の少なくともいずれか一方を含む形状であってもよい。
【0021】
本体102の横幅は、例えば、350mmから800mmに形成することができる。本体102の奥行きは、例えば、250mmから500mmに形成することができる。本体102の高さは、例えば、160mmから400mmに形成することができる。好ましい実施形態において、本体102の横幅は450mmであり、本体102の奥行きは375mmであり、本体102の高さは220mmであるように形成することができる。本体102は底板104にアングルを用いて取り付けることができるし、或いは、本体102は、アングルを用いることなしに、底板104に嵌め込むこともできる。
【0022】
図1および図2を参照すると、物品展示装置100は、陶磁器などの物品108を上面に配置することができる展示台110と、展示台110を上下方向に移動可能なように内部に配置して支持するための支持部材120と、支持部材120の内部の下部のところで底板104に配置され、展示台110の下面を受けるための底部緩衝部材130と、物品展示装置100に加えられる振動を検知するための振動検知装置140と、振動検知装置140が出力する振動検知信号に基づいて、展示台110を下方に移動可能な位置に移動させるための展示台作動装置150とを備える。展示台110は水平になるようにして、支持部材120に対して支持される。
【0023】
支持部材120は、複数の固定金具(すなわち、床面取付金具)125を用いて底板104に対して固定されるのがよい。底部緩衝部材130は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成される。必要に応じて、物品108と展示台110との間に展示用布170を配置するのがよい。展示用布170は、公知の天然繊維、合成繊維、不織布などの材料で形成することができる。
【0024】
図1および図4を参照すると、展示台110は、円形の外周形状を有し、中心軸線110Aを定めている。展示台110は、上方に位置する上方緩衝部材111と、中間に位置する台中間部材112と、下方に位置する下方緩衝部材113とを含む。展示台110において、上方緩衝部材111は物品を保護するための第1の展示台緩衝部材を構成する。展示台110において、下方緩衝部材113は物品を保護するための第2の展示台緩衝部材を構成する。展示台110において、展示台緩衝部材が、展示台110の上面および下面の少なくとも一方に配置されるのが好ましい。
【0025】
上方緩衝部材111は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成される。下方緩衝部材113は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成される。上方緩衝部材111は、発泡スチロールの円盤状部材を2枚重ねて接着することにより形成することができる。台中間部材112は、合板により形成することができる。合板の板厚は、例えば、10mmから60mm程度のものを使用することができる。
【0026】
下方緩衝部材113は、ポリエステルで形成することができる。或いは、下方緩衝部材113は、発泡スチロールの円盤状部材で形成することができる。上方緩衝部材111の厚さは、例えば、10mmから30mm程度になるように形成することができる。また、下方緩衝部材113の厚さは、例えば、10mmから30mm程度になるように形成することができる。
【0027】
展示台110は、上方緩衝部材111と台中間部材112を接着し、台中間部材112と下方緩衝部材113を接着して形成することができる。この構成により、地震が発生して物品108が降下したときに、物品を下面から効果的に保護することができる。さらに、展示用布170を使用したときは、地震が発生して物品108が降下したときに、展示用布170により物品を側面および下面から効果的に包み込んで保護することができる。これにより、物品、特に茶道用の椀、動物形置物などの漆製品等の側面の模様や凹凸を損傷から保護することがでる。
【0028】
上方緩衝部材111の中心に操作用穴111hを形成し、動作後の展示台110を上方に持ち上げるときに掴むための持ち上げリング113fを台中間部材112の上面の中央部に配置するのがよい。操作用穴111hの直径は、例えば、30mmから60mmに形成することができる。好ましい実施形態において、操作用穴111hの直径は35mmである。或いは、動作後の展示台110を上方に持ち上げるときに掴むための紐などを台中間部材112の上面の中央部に配置することもできる。必要に応じて、円盤状の物品台座115を上方緩衝部材111の上に配置することができる。物品台座115は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成される。物品台座115は、例えば、発泡スチロール、ポリエステル、合成ゴムなどで形成することができる。
【0029】
下方緩衝部材113は、外周部に位置するリング状部分113aと、中心部に位置する円盤状部分113bとを含む。展示台110が降下したときに、展示台110の下方の空気を放射方向に流通させるための空気通路113cがリング状部分113aに放射方向に形成される。図4において、空気通路113cを4個形成した実施形態を図示しているが、空気通路の数は1個であってもよいし、2個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0030】
図1を参照すると、複数の底部緩衝部材130が底板104の上面に配置される。底部緩衝部材130は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成される。底部緩衝部材130は、合成ゴムで円柱状に形成される。底部緩衝部材130の厚さは、例えば、10mmから50mm程度になるように形成することができる。底部緩衝部材130の直径は、例えば、10mmから80mm程度になるように形成することができる。底部緩衝部材130は、展示台110が降下したときに生じる衝撃を吸収し、また、衝撃音が減少させるために設けられる。
【0031】
底部緩衝部材130を4個形成した実施形態(図1には3個のみ見える)を図示しているが、底部緩衝部材130の個数は3個であってもよいし、4個以上であってもよい。底部緩衝部材130の個数は空気通路113cの個数に対応するように設定するのが好ましい。底部緩衝部材130を設ける位置は、リング状部分113aにおいて空気通路113cがない部分に対応するように配置するのが好ましい。この構成により、地震が発生して展示台110と物品108が降下したときに、物品を下面から効果的に保護することができる。
【0032】
図1を参照すると、支持部材120は、例えば、内径が200mmであり、高さが220mmである塩化ビニール製のパイプを用いて形成することができる。パイプの肉厚は、例えば、3mmから10mm程度のものを使用することができる。物品の側面を保護するために、支持部材120はその内部の側面に物品側面保護部材123が貼付される。物品側面保護部材123は、縦方向に延びる複数の帯状の保護部材として構成される。物品側面保護部材123は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成される。物品側面保護部材123は、例えば、厚さが1mmから5mmである長尺状のスポンジなどを用いて形成することができる。支持部材120に物品側面保護部材123を接着した後の半径は、展示台110の半径に対して、例えば、1mmから5mm程度のすきまが確保できるように設定するのが好ましい。
【0033】
物品側面保護部材123は、例えば、横幅が10mmから30mmである長尺状のスポンジなどを用いて形成することができる。物品側面保護部材123は、例えば、4個から30個用いることができる。複数の物品側面保護部材123は、支持部材120の内面において、縦方向に間隔を隔てて平行に配置することができる。このような寸法に形成された実施形態においては、地震が発生した時に、展示台110と物品108は150mmだけ降下することができる。この構成により、地震が発生して物品108が降下したときに、物品が転倒したり破損するのを効果的に回避して、物品へ加えられる衝撃力を緩衝し、物品を側面から効果的に保護することができる。
【0034】
物品側面保護部材123は、支持部材120の内面に接着するのがよい。支持部材120の上部の縁部に沿って円形に、スポンジ紐状体、ゴムホース等の衝撃吸収材127を固定することができる。接着後の物品側面保護部材123の内径は、展示すべき物品108の外形形状(すなわち、外径)に合わせて設定するのがよい。展示すべき物品108が降下可能な寸法は、展示すべき物品108の外形形状(すなわち、高さ)に合わせて設定するのがよい。
【0035】
図2および図3を参照すると、展示台作動装置150は、支持部材120の内部において、展示台110の中心軸線110Aを回転中心として、展示台110を回転移動させることができるように構成されたアクチュエータ152と、アクチュエータ152の動作を制御する制御回路を含む回路ブロック160を有する。作動クランプ154が、中心軸線110Aを回転中心として展示台110を回転移動させるために支持部材120の外周部に設けられる。
【0036】
図1から図3を参照すると、複数のロックボルト118が展示台110に設けられる。ロックボルト118は、展示台110の台中間部材112から半径方向外方に水平方向に延びている。ブッシング119をロックボルト118に取り付けるのが好ましい。図2において、ロックボルト118を3個形成した実施形態を図示しているが、ロックボルト118の数は3個であってもよいし、4個以上であってもよい。支持部材120は、ロックボルト118を受け入れて展示台110を支持するためのロックボルト受け部121と、ロックボルト118を受け入れて展示台110の下方への移動を案内するためのロックボルト案内部122とを有する。ロックボルト受け部121は、支持部材120において、水平方向に延びる台部として形成されている。ロックボルト案内部122は、支持部材120において、垂直方向に延びる窓部として形成されている。
【0037】
図2および図3を参照すると、アクチュエータ152は、駆動用電磁石を収納したアクチュエータ本体152bと、アクチュエータ駆動軸152cとを含む。アクチュエータ152は、モータ及び歯車で構成することもできる。作動クランプ154は、長さを調整するために設けられた複数の位置決めスリット154aを含む金属製のクランプバンド154bで構成される。作動クランプ154の長さを調整して位置決めするためのクランプロック154c及びクランプ調整ボルト154dがクランプバンド154bに固定される。クランプバンド154bは、支持部材120の外周部に対して、水平面内において回転可能なように配置される。
【0038】
複数の降下防止ボルト120fが、支持部材120の外周部に設けられる。一部の降下防止ボルト120fは、クランプバンド154bの上縁部を保持するように設けられ、他の降下防止ボルト120fは、クランプバンド154bの下縁部を保持するように設けられる。クランプバンド154bは、降下防止ボルト120fによって、支持部材120の外周部に対して回転可能なように保持される。ロックボルト118に接触して展示台110を回転移動させるための解除板156がクランプバンド154bに固定される。解除板156に設けられた接触縁部156cは、ロックボルト118の外周に接触するように配置される。
【0039】
クランプバンド154bの端部は、連結部材158によってアクチュエータ駆動軸152cに連結される。連結部材158は、アクチュエータ駆動軸152cに固定された引張棒と、クランプバンド154bの端部と引張棒を連結する引張ワイヤとで構成することができる。さらに、展示台110の回転移動範囲を制限するための移動範囲限定機構が設けられる。移動範囲限定機構は、クランプバンド154bに固定された作動範囲板159aと、支持部材120の外周部に作動範囲ピン159bとで構成することができる。作動範囲板159aは、反発用のゴム部材(図示せず)を介してクランプバンド154bに固定するのが好ましい。水平方向スリット159fが作動範囲板159aに形成される。作動範囲ピン159bは水平方向スリット159fの中に配置され、水平方向スリット159fの長さ方向の両端部159g、159hの位置によって、展示台110の回転移動範囲を制限することができるように構成される。
【0040】
物品展示装置100は、さらに、展示台作動装置150の動作を制御する制御回路を含む回路ブロック160と、充電可能なバッテリ162と、バッテリ162を充電するための充電器164とを備える。充電器164は交流電源などの外部電源168に接続される。回路ブロック160には、リセットスイッチ、ヒューズ、他の複数の同一展示台への接続端子などを接続することができる。展示台作動装置150の動作のための電源は、本体102の内部に配置しないで、別個に構成することもできる。例えば、物品展示装置100にケーブルを介して接続される外部電源や電池などを用いることもできる。
【0041】
制御回路は、ICおよび各種の電気素子などを用いて構成することができる。制御回路は、物品展示装置100の本体102の内部に配置しないで、別個に構成することもできる。例えば、制御回路を汎用コンピュータやパーソナルコンピュータで構成して、この汎用コンピュータやパーソナルコンピュータをケーブルを介して物品展示装置100に接続、或いは、無線装置を用いて物品展示装置100に連動させることも可能である。
【0042】
振動検知装置140は、公知の振動センサを含むように構成することができる。好ましい実施形態では、振動検知装置140は、縦震動を検出するための縦震用センサ142と、横震動を検出するための横震用センサ144とを含むように構成される。使用可能な振動センサは、振り子の傾きでリードスイッチがONとする方式であってもよいし、レーザ光を利用し、地震発生時の液面変化による反射角度の変化や光遮断を検出する方式であってもよいし、液面変化で永久磁石が上下動してスイッチが作動するリミットスイッチ方式であってもよいし、或いは、他の公知の方式の振動センサであってもよい。
【0043】
制御回路は、振動検知装置140からの検知信号を受入れる検知信号受入部と、検知信号受入部の作動に基づいて展示台作動装置150の動作を制御する駆動制御部とを含む。制御回路は、外部電源168によって動作するように構成することもできるし、或いは、バッテリ162によって動作するように構成することもできる。停電時の動作を確保するためには、制御回路は、常にバッテリ162によって動作するように構成し、充電器164によりバッテリ162を充電するように構成するのが好ましい。或いは、制御回路は、通常時は外部電源168によって動作するように構成し、停電時にバッテリ162に切換え可能な電源制御部を含むように構成することもできる。
【0044】
(2)物品展示装置の作用:
次に、本発明に係る物品展示装置の作用を説明する。図1、図2および図5を参照すると、物品展示装置100の電源(充電器164、バッテリ162)を動作可能に設定し、スイッチ(図示せず)を操作して、展示台作動装置150を初期位置に設定する。持ち上げリング113fを立てて、指で持ち上げリング113fを掴んで展示台110を上方向に移動させ、ロックボルト118を支持部材120のロックボルト受け部121に受け入れて、支持部材120の内部の上方において展示台110を支持する。展示台110は水平になるようにして、支持部材120に対して支持される。物品108と展示台110との間に入るようにして、展示用布170を本体102および展示台110の上に配置する。次に、陶磁器などの物品108を展示台110の上面に配置する。
【0045】
地震が発生して物品展示装置100に加えられた振動を振動検知装置140が検知すると、展示台作動装置150は、振動検知装置140が出力する振動検知信号に基づいて、展示台110を下方に移動可能な位置に移動させる。すなわち、展示台作動装置150の制御回路の駆動制御部において、検知信号受入部が振動検知装置140からの検知信号を受入れると、検知信号受入部の作動に基づいてアクチュエータ152を作動させる。駆動用電磁石が作動すると、アクチュエータ駆動軸152cは移動して、作動クランプ154を支持部材120の外周部に対して水平面内において回転させる。作動クランプ154が回転すると、解除板156に設けられた接触縁部156cは、ロックボルト118の外周に接触して展示台110を回転移動させる。展示台110が回転移動すると、ロックボルト118は、ロックボルト118を受け入れて展示台110の下方への移動を案内するためのロックボルト案内部122の中に入る。ロックボルト118がロックボルト案内部122の中に入ると、物品108と展示台110とは下方に降下することができる。展示台110の回転移動範囲は、作動範囲板159aと、作動範囲ピン159bとによって制限される。
【0046】
図6および図7を参照すると、物品108と展示台110とが、水平状態を維持して、支持部材120の内部に降下すると、展示台110の下方緩衝部材113は底部緩衝部材130に衝突する。展示用布170は、物品108の下面および側面を包み込むようにして支持部材120の内部に入り込む。上方緩衝部材111、下方緩衝部材113、底部緩衝部材130は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成されているので、物品108を確実に下方向から保護することができる。また、物品台座115は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成されるので、物品108を確実に下方向から保護することができる。さらに、支持部材120の物品側面保護部材123は、衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成されているので、物品108が降下したときに、物品を側面から効果的に保護することができる。
【0047】
地震が終わって安全が確認されたならば、物品108および展示用布170を物品展示装置100から取り出す。次に、スイッチ(図示せず)を操作して、展示台作動装置150を初期位置に設定する。次に、物品台座115を取り外し、持ち上げリング113fを立てて、指で持ち上げリング113fを掴んで展示台110を上方向に移動させ、ロックボルト118を支持部材120のロックボルト受け部121に受け入れて、支持部材120の内部の上方において展示台110を支持する。物品108と展示台110との間に入るようにして、展示用布170を本体102および展示台110の上に配置する。次に、陶磁器などの物品108を展示台110の上面に再び配置することができる。
【0048】
本発明の他の実施形態として、最近、気象庁が、地震のP波(横波)を検知したとき、S波(縦波)の各地への到達時間を告知するシステムが構築された。このシステムを有効に利用するため、本発明の物品展示装置を手動操作へ変換可能に構成することによって、前記S波(縦波)の到達前に、手動によって展示台を降下させて物品を衝撃・損傷から保護するように作動させる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の物品展示装置を用いることにより、装飾品等の物品を展示する場合に、地震等の振動により、物品が転倒したり、物品が展示装置から降下して、物品が転倒したり破損することから物品を確実に保護することができる。また、本発明の物品展示装置は小型であって、博物館、美術館等の既存の展示台ケース内に直接セットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の物品展示装置の実施形態において、展示台および支持部材を示す部分断面図である。
【図2】本発明の物品展示装置の実施形態において、本体を外した状態における物品展示装置の主要部品の概略配置を示す平面図である。
【図3】本発明の物品展示装置の実施形態において、作動装置を示す側面図であり、図3(a)はアクチュエータおよび作動クランプの部分を示す側面図であり、図3(b)は作動範囲板作動クランプの部分を示す側面図である。
【図4】本発明の物品展示装置の実施形態において、展示台を示す図であり、図4(a)は展示台の上面図であり、図4(b)は展示台の断面図であり、図4(c)は展示台の底面図である。
【図5】本発明の物品展示装置の実施形態において、展示台に物品を配置している状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の物品展示装置の実施形態において、展示台が下方に移動した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の物品展示装置の実施形態において、展示台が下方に移動した状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0051】
100 物品展示装置
102 本体
104 底板
108 物品
110 展示台
120 支持部材
130 底部緩衝部材
140 振動検知装置
150 展示台作動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動時に物品を保護する物品展示装置であって、
上面に物品を配置することができる展示台と、
前記展示台を上下方向に移動可能なように内部に配置して支持するための支持部材と、
前記展示台の降下衝撃を受けるための緩衝部材と、
物品展示装置に加えられる振動を検知するための振動検知装置と、
前記振動検知装置が出力する振動検知信号に基づいて、前記展示台を下方に移動可能な位置に移動させるための展示台作動装置と、
を備えることを特徴とする物品展示装置。
【請求項2】
衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成された展示台緩衝部材が、前記展示台の上面および下面の少なくとも一方に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の物品展示装置。
【請求項3】
衝撃を受けると変形する圧縮変形可能な材料で形成された底部緩衝部材が、前記展示台の下面を受けるために前記支持部材の内部の下部に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の物品展示装置。
【請求項4】
前記展示台作動装置は、前記展示台の中心軸線を回転中心として前記展示台を回転移動させることができるアクチュエータと、前記支持部材の外周部に設けられた作動クランプとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品展示装置。
【請求項5】
前記展示台作動装置は、前記支持部材の内部において、前記展示台を回転移動させることができるように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の物品展示装置。
【請求項6】
前記展示台の回転移動範囲を制限するための移動範囲限定機構を含むことを特徴とする、請求項5に記載の物品展示装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記支持部材の内部の側面に配置され、物品を保護するための物品側面保護部材を含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品展示装置。
【請求項8】
複数のロックボルトが前記展示台に設けられており、前記支持部材は、前記ロックボルトを受け入れて前記展示台を支持するためのボルト受け部と、前記ロックボルトを受け入れて前記展示台の下方への移動を案内するためのボルト案内部とを有し、前記ロックボルトは、前記展示台から半径方向外方に延びており、前記ボルト受け部は、水平方向に延びる台部として形成され、前記ボルト案内部は、垂直方向に延びる窓部として形成されることを特徴とする、請求項1に記載の物品展示装置。
【請求項9】
振動時に物品を保護する物品展示装置であって、
上面に物品を配置することができる展示台と、
前記展示台を上下方向に移動可能なように内部に配置して支持するための支持部材と、
前記展示台の降下衝撃を受けるための緩衝部材と、
手動入力による振動検知信号に基づいて、前記展示台を下方に移動可能な位置に移動させるための展示台作動装置と、
を備えることを特徴とする物品展示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−254530(P2009−254530A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106161(P2008−106161)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(301012461)株式会社武蔵 (4)
【Fターム(参考)】