説明

振動装置

【課題】稼働周波数帯域が広く、振動台上に載置する供試体を重くしても良好に加振することができるとともに、製造原価や運転コストの低廉化を図ることができる振動装置を提供する。
【解決手段】振動装置は、供試体を載置する振動台10と、加振機本体24と、この加振機本体24から突出して軸線上を往復運動する加振軸25とを有し、振動台10に水平方向の振動を付与する加振機20とを備えている。加振軸25が水平方向で往復運動するように加振機20を固定しており、加振軸25が往復運動する方向に移動自在に設置床70上に配置する質量物40と、設置床70に対して、加振軸25が往復運動する方向に質量物40を移動自在に保持した弾性体とを備えており、加振機20と質量物40との合計質量は、振動台10の質量よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動装置に関し、特に、自動車、航空機、建物等に搭載する部品が実稼働状況で受ける振動を再現する振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は図5に示す従来の振動装置を開示している。この振動装置は、振動台101に対して、水平X軸方向の振動を付与する1個の加振機102、水平Y軸方向の振動を付与する2個の加振機103、及び垂直Z軸方向の振動を付与する3個の加振機104を備えている。各加振機102、103、104は軸線上を往復運動する加振軸105を有している。振動台101に対して、水平X軸方向及び水平Y軸方向に振動を付与する各加振機102、103は、加振軸105の先端に連結した加振ロッド106を介して振動台101に連結している。振動台101に対して水平X軸方向の振動を付与する加振機102は、加振軸105の往復運動が水平X軸方向になるように基礎床107上に立設した支持台108の上部に支持されている。また、振動台101に対して水平Y軸方向の振動を付与する加振機103は、加振軸105の往復運動が水平Y軸方向になるように基礎床107上に立設した2個の支持台108の上部に別々に支持されている。また、これら加振機102、103は振動台101とほぼ同じ高さになるように支持台108の上部に支持されている。
【0003】
このように、この振動装置は、振動台101に対して、水平X軸方向及び水平Y軸方向に振動を付与する各加振機102、103を振動台101とほぼ同じ高さに配置し、かつ各加振機102、103の加振軸105が往復運動する方向を振動台101に付与する振動と同じ方向にしている。このため、この振動装置は各加振機102、103が発生する力及び加振軸の変位量を簡単な構成で効率よく振動台1に伝えることができる。
【0004】
また、非特許文献2は図6に示す他の従来の振動装置を開示している。この振動装置も振動台111に対して、水平X軸方向に振動を付与する1個の加振機112、水平Y軸方向に振動を付与する2個の加振機、及び垂直Z軸方向に振動を付与する3個の加振機113を備えている。各加振機112、113は軸線上を往復運動する加振軸115を有している。振動台111に対して、水平X軸方向及び水平Y軸方向に振動を付与する各加振機112は、振動台111よりも下方の空間を利用して、加振軸115を斜め上下方向に往復運動するように基礎床117上に取り付けられている。これら加振機112は加振軸115の先端をベルクランク120の力点121に連結している。このベルクランク120は基礎床117上に固定した支持台130の上部に支点122を連結している。また、このベルクランク120は作用点123に加振ロッド116の一端を連結している。加振ロッド116は他端を振動台111に連結している。
【0005】
このように、この振動装置は、ベルクランク120を利用することによって、加振軸115の斜め上下方向の往復運動を水平方向の往復運動に変換することができる。つまり、加振機112の加振力の方向を変換することができる。また、この振動装置は、ベルクランク120を利用するとともに、振動台111に対して、水平X軸方向及び水平Y軸方向に振動を付与する各加振機112と、ベルクランク120を固定した支持台130とを別々に基礎床117上に固定している。このため、これらの共振を抑制し、振動台111を良好に振動させることができる。さらに、この振動装置は、振動台111に対して、水平X軸方向及び水平Y軸方向に振動を付与する各加振機112を振動台より下方の空いた空間に配置するため、省スペース化を図ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】MAST Multi−Axis Shaking Tables. page 2. 「6−DOF Radiator fatigue simulation drawing」. [online]. Instron Structural Testing Systems Corporation. [retrieved on 2011−08−17]. Retrieved from the Internet:<URL:http://www.instron.com/wa/library/StreamFile.aspx?doc=397>
【非特許文献2】MASTTM Systems. Multi Axial Simulation Tables for Squeak and Rattle, Modal, and Durability Testing of Vehicle Components and Subassemblies. page 2,6,9. [online]. MTS Systems Corporation. [retrieved on 2011−08−17]. Retrieved from the Internet:<URL:http://www.mts.com/ucm/groups/public/documents/library/dev_002251.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1の振動装置は、振動台101、振動台101上に載置した供試体、及び振動台101に対して水平X軸方向及び水平Y軸方向に振動を付与する加振機102、103の合計質量が大きいと、これら構成物と支持台108の加振方向の剛性とで形成する共振周波数が低くなる。一般的に、振動装置は、共振の発生を避けて、共振周波数より低い周波数帯域で稼働させることが原則である。このため、上記のように共振周波数が低いと、稼働周波数帯域が狭くなり、実用性に欠ける。
【0008】
また、非特許文献2の振動装置は、振動台111に対して、水平X軸方向及び水平Y軸方向に振動を付与する加振機112と振動台111との間にベルクランク120を設けて振動を伝達している。この際、加振機112の加振力の方向変換を伴うため、加振機112及びベルクランク120の配置状況によっては加振力の伝達ロスを招く場合がある。すなわち、これら加振機112の力や加振軸115の変位量を効率よく振動台に伝えることができない場合がある。このため、振動台111に対して、水平X軸方向及び水平Y軸方向に振動を付与する加振機112は加振力の大きなものが必要となる。さらに、これら加振機112を駆動するための油圧源の容量も必然的に大きくなる。よって、この振動装置は製造原価や運転コスト(電力消費)が高いものになるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、稼働周波数帯域が広く、振動台上に載置する供試体を重くしても良好に加振することができるとともに、製造原価や運転コストの低廉化を図ることができる振動装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の振動装置は、供試体を載置する振動台と、
加振機本体と、この加振機本体から突出して軸線上を往復運動する加振軸とを有し、前記振動台に水平方向の振動を付与する加振機とを備えた振動装置であって、
前記加振軸が水平方向で往復運動するように前記加振機を固定しており、前記加振軸が往復運動する方向に移動自在に設置床上に配置する質量物と、
前記設置床に対して前記加振軸が往復運動する方向に前記質量物を移動自在に保持した弾性体とを備えており、
前記加振機と前記質量物との合計質量は、前記振動台の質量よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の振動装置は加振機と質量物との合計質量が振動台の質量よりも大きい。このため、共振周波数は、専ら質量物の質量に依存し、さらに言えば、弾性体の弾性力を加味して決定される。よって、この振動装置は、質量物の質量を重くすることによって、共振周波数を稼働周波数帯域よりも低い範囲に設定することができ、稼働周波数帯域において共振の影響をなくすことができる。
【0012】
また、この振動装置は、加振機と質量物との合計質量が、振動台の質量よりも大きいため、質量物の移動量が少なく、移動速度が遅くなる。このため、この振動装置は、加振軸の往復運動の反作用によって生じる質量物の移動量と移動速度とを予測し易い。よって、この振動装置は、その予測に基づいて加振軸の往復運動を制御して、振動台に所望する振動を付与することができる。
【0013】
また、この振動装置は、振動台に付与する振動と同じ水平方向に加振軸が往復運動するため、加振機が発生する力及び加振軸の変位量を効率よく振動台に伝達することができる。このため、この振動装置は加振機の性能を必要最小限のものにすることができる。これによって、この振動装置は加振機を駆動するための油圧源も必要最小限のものにすることができる。よって、この振動装置は製造原価や運転コスト(電力消費)を少なくすることができる。
【0014】
したがって、本発明の振動装置は、稼働周波数が広く、振動台上に載置する供試体を重くしても良好に加振することができるとともに、製造原価や運転コストの低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の振動装置の模式図である。
【図2】実施例2の振動装置の斜視図である。
【図3】実施例2の振動装置の平面図である。
【図4】実施例2の振動装置の要部を示す断面図である。
【図5】従来の振動装置を示す斜視図である。
【図6】他の従来の振動装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の振動装置を具体化した実施例1及び2について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<実施例1>
図1は実施例1の振動装置を模式的に示すものである。この振動装置は、振動台10が水平方向(図1において左右方向)に振動するものである。この振動装置は、振動台10、加振機20、連結部材30、質量物40、弾性体である空気ばね50、及び架台60を備えている。
【0018】
振動台10は、自動車、航空機、建物等に搭載する部品である供試体を載置することができる。加振機20は、加振機本体24と、加振機本体24から突出して軸線上を水平方向に往復運動する加振軸25とを有している。加振機20は加振軸25を設定した周波数及び振幅で往復運動させることができる。つまり、振動装置は、加振機20の駆動を制御する制御装置を備えており、振動台10に要求される振動に対応して、加振機20を駆動させることができる。加振機20は振動台10とほぼ同じ高さにあり振動台10の一側面10Aに対峙した位置に略水平姿勢で配置されている。
【0019】
連結部材30は棒状である。この連結部材30は、一端を静圧ボールジョイント31を介して加振軸25の先端に連結しており、他端を静圧ボールジョイント31を介して振動台10の一側面10Aに連結している。
【0020】
加振機20は質量物40の上面に載置され、固定されている。質量物40は鉄塊であり、直方体形状である。この質量物40は加振機20の質量を合わせた合計質量が振動台10と供試体との合計質量よりも大きくなるように形成されている。例えば、振動台10の質量が650kgであり、振動台10に載置する供試体の質量が200kgを想定した場合、加振機20と質量物40との合計質量が2550kg以上、好ましくは3400kg以上になるように質量物40の質量(大きさ)を決定している。
【0021】
架台60は、上面が水平面を形成した架台本体部61と、架台本体部61の両端部の上面に対向して立設した一対の壁部62とを有している。架台60はこれら壁部62間に加振機20の加振軸25が往復運動する方向(図1において左右方向)に延びたレール63を敷設している。質量物40はレール63上に移動自在に載置されている。また、質量物40と両壁部62との間にそれぞれ空気ばね50を挟持している。
【0022】
架台60は設置床である浮基礎70上に固定されている。浮基礎70は、床部材71と、床部材71の下面に配置した複数の床用空気ばね72とによって構成されており、建築躯体上に設けられている。このように、質量物40は、空気ばね50によって浮基礎70に固定された架台60に保持されており、レール63上を加振機20の加振軸25が往復運動する方向である水平方向に移動自在である。空気ばね50は、質量物40を原点位置に付勢する役割を果たすとともに、両壁部60に対して、質量物40の往復運動の影響が及びにくくする役割を果たす。
【0023】
このような構成を有する振動装置は加振機20と質量物40との合計質量が振動台10と供試体との合計質量よりも大きい。このため、共振周波数は、専ら質量物40の質量に依存し、さらに言えば、空気ばね50のバネ力を加味して決定される。よって、この振動装置は、質量物40の質量を重くすることによって、共振周波数を稼働周波数帯域よりも低い範囲に設定することができ、稼働周波数帯域において共振の影響をなくすことができる。
【0024】
また、この振動装置は、加振機20と質量物40との合計質量が、振動台10と供試体との合計質量よりも大きいため、質量物40の移動量が少なく、移動速度が遅くなる。このため、この振動装置は、加振軸25の往復運動の反作用によって生じる質量物40の移動量と移動速度とを予測し易い。よって、この振動装置は、その予測に基づいて加振軸25の往復運動を制御して、振動台10に所望する振動を付与することができる。
【0025】
また、この振動装置は、加振機20を振動台10とほぼ同じ高さに配置して、振動台10に付与する振動と同じ水平方向に加振軸25が往復運動するため、加振機20が発生する力及び加振軸25の変位量を効率よく振動台10に伝達することができる。このため、この振動装置は加振機20の性能を必要最小限のものにすることができる。これによって、この振動装置は加振機20を駆動するための油圧源も必要最小限のものにすることができる。よって、この振動装置は製造原価や運転コスト(電力消費)を少なくすることができる。
【0026】
したがって、実施例1の振動装置は、稼働周波数が広く、振動台10上に載置する供試体を重くしても良好に加振することができるとともに、製造原価や運転コストの低廉化を図ることができる。
【0027】
また、この振動装置は、振動台10を水平方向にのみ振動させる仕様であるが、振動台10を垂直方向にも振動させる仕様に変更する場合も想定される。この場合、振動台10の下方に垂直方向の振動を付与する加振機20を設置するスペースを確保すればよい。この場合でも、架台60によって質量物40の設置位置が嵩上げされているため、質量物40が必要以上に大きくなる事態を防ぐことができる。また、架台60の高さを変更することによって、この振動装置は加振機20を配置する高さを容易に変更することができる。さらに、この振動装置は加振機20の限界性能(例えば、100〜200Hz)まで加振することができる。
【0028】
<実施例2>
実施例2の振動装置は、図2に示すように、振動台11が3次元に振動するものである。この振動装置は、振動台11、第1〜第3加振機21、22、23、連結部材32、第1及び第2質量物41、42、弾性体である空気ばね51、及び架台64を備えている。
【0029】
振動台11は、一般に平面視において四隅が切り落とされた長方形状の平板であり、自動車、航空機、建物等に搭載する部品である供試体を載置することができる。第1加振機21は振動台11に対して水平X軸方向に振動を付与する。第2加振機22は2個備えられており、振動台11に対して水平Y軸方向に振動を付与する。第3加振機は3個備えられており、振動台11に対して垂直Z軸方向に振動を付与する。
【0030】
第1〜第3加振機21、22、23は、加振機本体24と、加振機本体24から突出して軸線上を往復運動する加振軸25とを有している。各加振機21、22、23は加振軸25を設定した周波数及び振幅で往復運動させることができる。つまり、振動装置は、各加振機21、22、23の駆動を制御する制御装置を備えており、振動台11に要求される振動に対応して、各加振機21、22、23をそれぞれ独立に駆動させることができる。
【0031】
第1加振機21は、図2及び図3に示すように、振動台11とほぼ同じ高さであり、かつ水平Y軸方向に沿って延びた振動台11の一側面11Aに対峙した位置に略水平姿勢で配置されている。2個の第2加振機22は、振動台11とほぼ同じ高さであり、かつ水平X軸方向に沿って延びた振動台11の一側面11Bに対峙した位置に並べて略水平姿勢で配置されている。第1加振機21及び第2加振機22の各加振軸25は振動台11に対して反対方向に向けて各加振機本体24から突出している。第1加振機21は振動台11に振動を付与する方向と同じ水平X軸方向に加振軸25を往復運動させることができる。第2加振機22は振動台11に振動を付与する方向と同じ水平Y軸方向に加振軸25を往復運動させることができる。
【0032】
第1加振機21及び第2加振機22は連結部材32を介して振動台11に連結している。連結部材32は、図2〜図4に示すように、両端に配置した2枚の平板部材33と、第1加振機21又は第2加振機22を挟みつつ、平板部材33の左右端部同士を連結した2本の棒状部材34とから形成されている。連結部材32の棒状部材34は一端側の平板部材33から第1加振機21又は第2加振機22を超えて振動台11に向けて延びた状態に配置されている。なお、棒状部材34は加振軸25が加振機本体24から最も突出した際の第1加振機21又は第2加振機22の全長よりも長く形成されている。
【0033】
第1加振機21又は第2加振機22の加振軸25の先端は、図4に示すように、静圧ボールジョイント31を介して一端側(振動台11から遠い側)の平板部材33の内側面に連結している。また、他端側の平板部材33の外側面は静圧ボールジョイント31を介して振動台11の側面11A、11Bに連結している。このように、第1加振機21及び第2加振機22は、連結部材32を介して振動台11に連結している。このため、加振軸25を往復運動させることによって、水平X軸方向及び水平Y軸方向の複合的な振動を振動台11に付与することができる。
【0034】
第1質量物41は、図2及び図3に示すように、振動台11における水平Y軸方向に延びた一側面11Aに沿って配置されている。第1加振機21は第1質量物41の上面に載置され、固定されている。また、第2質量物42は、振動台11における水平X軸方向に延びた一側面11Bに沿って配置されている。2個の第2加振機22は第2質量物42の上面に横並びに載置され、固定されている。
【0035】
各質量物41、42は鉄塊であり、振動台11の側面11A、11Bに沿った方向に長い直方体形状である。第1質量物41は第1加振機21の質量を合わせた合計質量が振動台11と供試体との合計質量よりも大きくなるように形成されている。また、第2質量物42は2個の第2加振機22の質量を合わせた合計質量が振動台11と供試体との合計質量よりも大きくなるように形成されている。例えば、振動台11の質量が650kgであり、振動台11に載置する供試体の質量が200kgを想定した場合、各質量物41、42と、その上に載置され、固定されている各加振機21、22との合計質量が2550kg以上、好ましくは3400kg以上となるように各質量物の質量(大きさ)を決定している。
【0036】
各質量物41、42は振動台11の側面11A、11Bに沿った方向の両端側面に外側に突出した連結部43を有している。連結部43は各質量物41、42の上面に載置して固定した各加振機21、22の加振軸25が往復運動する方向に直交する垂直面を形成する連結片44と、連結片44の上下に一体的に形成され、外側に向けて細くなる三角形状の水平面を形成する補強片45とを有している。
【0037】
架台64は、図2〜図4に示すように、2個備えられており、第1質量物41又は第2質量物42を別々に載置している。各架台64は、一定間隔を離して平行に配置した2本のH鋼からなる脚部66と、脚部66の上面間に橋渡すように載置され、上面が水平面を形成し、平面視において長方形状の天板部65とを有している。また、各架台64は天板部65の上面に3本のレール67を敷設している。これらレール67は第1加振機21又は第2加振機22の加振軸25が往復運動する方向に延びている。第1質量物41及び第2質量物42はこれらレール67上に移動自在に載置されている。
【0038】
また、各架台64は、天板部65の短辺側の夫々の上面に立設した一対の壁部68を有している。一対の壁部68は、縦長矩形状の対向壁部68Aと、対向壁部の両側に連続して立設した側壁部68Bとを有している。一対の壁部68の対向壁部68Aは、天板部65の上部に載置した第1質量物41又は第2質量物42に固定した第1加振機21又は第2加振機22の加振軸25が往復運動する方向に直交して、対向している。
【0039】
一対の壁部68の対向壁部68Aは、その間に第1質量物41又は第2質量物42の連結部43を挿入している。一対の壁部68は各対向壁部68Aと連結部43の連結片44との間に空気ばね51を挟持している。
【0040】
架台64は設置床である浮基礎73上に固定されている。浮基礎73は、床部材74と、床部材74の下面に配置した複数の床用空気ばね75とによって構成されており、建築躯体上に設けられている。このように、第1質量物41及び第2質量物42は空気ばね51によって浮基礎73に固定された架台64に保持されており、レール67上を第1加振機21又は第2加振機22の加振軸25が往復運動する方向である水平X軸方向又は水平Y軸方向に移動自在である。空気ばね51は、第1質量物41又は第2質量物42を原点位置に付勢する役割を果たすとともに、一対の壁部68に対して、第1質量物41又は第2質量物42の往復運動の影響が及びにくくする役割を果たす。
【0041】
また、第3加振機23は、図2に示すように、3個備えられており、振動台11の下方であり、平面視で正三角形の頂部に相当する位置に夫々が配置されている。第3加振機23は各加振基本体24から振動台11に向けて(垂直上方に向けて)各加振軸25を突出している。第3加振機23は振動台11に振動を付与する方向と同じ垂直Z軸方向に加振軸25を往復運動させることができる。
【0042】
第3加振機23は加振機本体24の下端面を静圧ボールジョイント31を介して浮基礎73の上面に連結している。また、第3加振機23は加振軸25の先端を静圧ボールジョイント31を介して振動台11の下面に連結している。このため、第3加振機23の加振軸25を往復運動させることによって、垂直Z軸方向の振動を振動台11に付与することができる。
【0043】
このような構成を有する振動装置は、第1加振機21と第1質量物41との合計質量、及び第2加振機22と第2質量物42との合計質量の夫々が振動台11と供試体との合計質量よりも大きい。このため、水平X軸方向及び水平Y軸方向の振動に対する共振周波数は、専ら第1質量物41及び第2質量物42の質量に依存し、さらに言えば、空気ばね51のバネ力を加味して決定される。よって、この振動装置は、第1質量物41及び第2質量物42の質量を重くすることによって、共振周波数を稼働周波数帯域よりも低い範囲に設定することができ、稼働周波数帯域において共振の影響をなくすことができる。
【0044】
また、この振動装置は、第1加振機21と第1質量物41との合計質量、及び第2加振機22と第2質量物42との合計質量の夫々が、振動台11と供試体との合計質量よりも大きいため、第1質量物41及び第2質量物42の移動量が少なく、移動速度が遅くなる。このため、この振動装置は、加振軸25の往復運動の反作用によって生じる第1質量物41及び第2質量物42の移動量と移動速度とを予測し易い。よって、この振動装置は、その予測に基づいて加振軸25の往復運動を制御して、振動台11に所望する振動を付与することができる。
【0045】
また、この振動装置は、第1加振機21及び第2加振機22を振動台11とほぼ同じ高さに配置して、振動台11に付与する振動と同じ水平X軸方向又は水平Y軸方向に加振軸25が往復運動するため、第1加振機21及び第2加振機22が発生する力及び加振軸25の変位量を効率よく振動台11に伝達することができる。このため、この振動装置は第1加振機21及び第2加振機22の性能を必要最小限のものにすることができる。これによって、この振動装置は第1加振機21及び第2加振機22を駆動するための油圧源も必要最小限のものにすることができる。よって、この振動装置は製造原価や運転コスト(電力消費)を少なくすることができる。
【0046】
したがって、実施例2の振動装置も、稼働周波数が広く、振動台11上に載置する供試体を重くしても良好に加振することができるとともに、製造原価や運転コストの低廉化を図ることができる。
【0047】
また、第1加振機21及び第2加振機22の加振軸25を振動台11に向けて突出させ、直接、振動台11に連結するものに比べて、この振動装置は、第1加振機21及び第2加振機22の加振軸25を振動台11に対して反対方向に突出させ、連結部材32で振動台11に連結している。このため、この振動装置は振動台11を垂直Z軸方向の広い範囲で振動させることができる。上記のことは、第1加振機21又は第2加振機22と振動台11との間隔を狭くすることができることも意味し、振動装置の設置面積を狭くすることができ、省スペース化を図ることができる。
【0048】
また、この振動装置は、架台64によって質量物41、42の設置位置を嵩上げしているため、質量物41、42が必要以上に大きくなる事態を防いでいる。また、架台64の高さを変更することによって、この振動装置は第1加振機21及び第2加振機22を配置する高さを容易に変更することができる。さらに、この振動装置は第1加振機21及び第2加振機22の限界性能(例えば、100〜200Hz)まで加振することができる。
【0049】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、加振機を振動台とほぼ同じ高さに配置したが、加振機を振動台と同じ高さに配置しなくてもよい。この場合、振動台の側面から垂直方向に延ばした延長片を設け、この延長片に連結部材の他端部を連結すればよい。
(2)実施例1及び2では、振動装置が質量物を載置する架台を備えていたが、架台を備えず、直接的に設置床(浮基礎)上にレールを敷設し質量物を載置してもよい。
(3)実施例1及び2では、レールを利用して質量物を移動自在に載置したが、他の構造で質量物を移動自在にしてもよい。
(4)実施例1及び2では、空気ばねで質量物を移動自在に保持したが、他の弾性体によって質量物を移動自在に保持してもよい。
(5)質量物を保持する弾性体は質量物の下部に配置する等、実施例1及び2で示した形態以外であってもよい。
(6)連結部材は実施例1及び2で示した形態以外であってもよい。
(7)実施例1及び2では、設置床である浮基礎を設けているが、浮基礎を介さずに振動装置を建築躯体上に直接、設置してもよい。
(8)実施例2において、第1質量物と第2質量物との質量が同じであっても、相違していてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10、11…振動台
20、21、22、23…加振機(21…第1加振機、22…第2加振機、23…第3加振機)
24…加振機本体
25…加振軸
70、73…浮基礎(設置床)
40、41、42…質量物(41…第1質量物、42…第2質量物)
50、51…空気ばね(弾性体)
60、64…架台
30、32…連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体を載置する振動台と、
加振機本体と、この加振機本体から突出して軸線上を往復運動する加振軸とを有し、前記振動台に水平方向の振動を付与する加振機とを備えた振動装置であって、
前記加振軸が水平方向で往復運動するように前記加振機を固定しており、前記加振軸が往復運動する方向に移動自在に設置床上に配置する質量物と、
前記設置床に対して前記加振軸が往復運動する方向に前記質量物を移動自在に保持した弾性体とを備えており、
前記加振機と前記質量物との合計質量は、前記振動台の質量よりも大きいことを特徴とする振動装置。
【請求項2】
前記設置床上に固定した架台を備えており、
前記質量物を前記架台上に載置して前記弾性体によって保持していることを特徴とする請求項1記載の振動装置。
【請求項3】
前記加振軸は前記振動台に対して反対方向に向けて前記加振機本体から突出しており、
一端側が前記加振軸の先端に連結しており、この一端側から前記振動台に向けて延び、他端側が前記振動台に連結した連結部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の振動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92447(P2013−92447A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234888(P2011−234888)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)