説明

捕食抑止装置

ネコの首輪の上に、加速度計(15)、マイクロプロセッサ(16)、電池(14)、スピーカー(12)を組み込んだ装置(10)を取り付ける。加速度計(15)で、ネコの背骨に対する頭部の位置を絶えず監視する。ネコが前方へ移動し、ネコの頭部が上下左右に動かなくなった場合に、ネコが忍び寄り状態と判断し、マイクロプロセッサにより捕食対象に警告するように可聴警報を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕食を抑止するための装置、詳しくは、イエネコによるトリの捕食を抑止するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イエネコによるトリの捕食は、多くのネコの飼い主にとって深刻な問題であり、悩みの原因である。従来は、ネコはネズミや他の害獣を増やさないために用いられ、捕食対象に警告する装置は、歓迎されてこなかった。しかし、今日では、害獣は他の手段により制御されていて、イエネコに獲物を捕獲させる必要はない。イエネコは、栄養が十分で、健康であっても、狩猟本能は減少しないため、多くの種の鳴禽類が脅威にさらされていて、危害を加える恐れがある。英国だけでも、毎年7500万羽の鳴禽類がイエネコの犠牲になっていると推定されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、イエネコが獲物を仕留めるための準備として独特な身体的形状をとるという観察から展開している。
ネコは身体をかがめ、背骨を硬直させて、獲物に焦点を合わせる。頭部と背骨との関係が固定され、ネコが通常の歩行時に見せる頭部の通常の「上下動」を示さない。その後、ネコは獲物にさらに接近した有利な位置を獲得しようとして、獲物の方へゆっくりと移動する。ネコが標的に近づく際には、視線は獲物に固定され、頭部の上下左右の動きはほぼ全てなくなる。
【0004】
これらの挙動の差を、図3に示す。
ネコが正常歩行で左から右に前方へ移動する際、線Iは、ネコの頭部の上下の動きの垂直方向の正面図を示す。線IIは、ネコの頭部の左右の動きを上方向から見た平面図を示す。ネコは、区間(a)では左側、区間(b)では前方、区間(c)では右側、区間(d)では再び前方、区間(e)では区間(c)よりもさらに右側、区間(f)では再び前方に目を向ける。線III及びIVは、「忍び寄り」状態のネコの頭部と背骨との関係を示す比較図である。上下にも左右にも頭部の動きがほとんど存在しないのは明らかである。
【0005】
本発明の装置は、直交3軸X、Y及びZの方向の動き、または、動きがないことを検出することが可能な加速度計を利用する。
垂直軸Zを確立するために重力を使用することから、ネコの首輪にある加速度計の方向は重要ではない。装置は、前方向Xの移動と、水平軸Y及び垂直軸Zの動きの減少とを感知するように適合される。加速度計に接続されたマイクロプロセッサは、警報を鳴らすことによって、ネコが前方へ移動するのと同時に、頭部が動かなくなったか、あるいは、頭部を上下左右に通常の範囲で動かしていることを示す信号の組み合せに反応する。誤報の可能性を減少させるために、マイクロプロセッサは、ネコが前方(X軸)に所定の距離、例えば50〜90cm移動するまでは警報を作動させない。
【0006】
いくつかの珍しい例では、警報が不適切に鳴るのは避けられない。しかし、警報があまり大きくなく、または、不快でなければ、ネコや近隣の人たちを悩ませることはない。特に好ましい警報は、クロウタドリなどのトリの遭難声である。トリは、そのような音に特に敏感である。
【0007】
本発明は、装置を装着する動物による捕食を抑止するための装置を提供し、この装置は、動物の前方移動と動物の頭部の上下左右の動きの減少との組み合わせを検出する手段と、所定の判定基準が存在する場合に警報を作動させる手段とを含む。
【0008】
本発明の好適な実施形態では、装置はネコの首輪に取り付けられるように適合される。
【0009】
装置は、基板とスピーカーユニットとを分離した関係で含んでもよく、これにより、首輪は基板とスピーカーとの間に装着可能であり、基板は検出する手段、警報を作動させる手段及び電源を組み込む。
【0010】
動きを検出する手段は、直交3軸方向の動きを検出するように適合される加速度計であるのが好ましい。
【0011】
加速度計は、垂直Z軸を確立するために重力を検出するように適合されるのが好ましい。
【0012】
警報を作動させる手段は、マイクロプロセッサであるのが好ましく、このマイクロプロセッサは、加速度計から信号を受信して、加速度計が前方移動と上下左右の動きの減少とを同時に検出した場合に、警報を作動させる。
【0013】
マイクロプロセッサは、所定の範囲の前方移動が検出されるまで警報を作動させないように適合されるのが好ましい。
【0014】
警報は、トリ、好ましくはクロウタドリの警戒声を模倣する可聴警報であるのが好ましい。
【0015】
装置は、動物がキャットフラップまたはスイッチを作動させる手段を適切に備える同じような専用入口を通り抜けた際に、装置のオンオフを切り換えるスイッチを組み込んでもよい。
【0016】
装置は、光がない状態では装置の電源を切る光電池を組み込んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】イエネコの首輪に取り付けられる装置を示す説明図
【図2】図1の装置に組み込まれる構成要素の相互作用を実施する回路の説明図
【図3】正常歩行運動時(線I、II)と、獲物に忍び寄る時(線III、IV)におけるネコの頭部と背骨との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を、非限定的な実施例として、添付図面を参照して以下に記載する。
【0019】
装置10は、4本の支柱13によって分離した基板11とスピーカーユニット12を含む。支柱は、基板11とスピーカーユニット12との間に、スロットまたはトンネルを備え、これを通して、装置が落下しないように、ネコの首輪(図示せず)に装置10を装着することができる。基板11内には、電池14、加速度計15及びマイクロプロセッサ16がある。電池14は、マイクロプロセッサ16及び加速度計15に電力を供給する。
【0020】
図2に示すように、電池14のスイッチが入ると、加速度計15は絶えず前方(X軸)、左右(Y軸)、上下(Z軸)の動きを監視する。Z軸は、重力の検出により求められることから、首輪の周りの装置10の位置に依存しない。マイクロプロセッサは、加速度計がX軸に沿って所定の距離を移動し、それと同時にY軸及びZ軸に沿った動きが減少したことを示す信号を受信すると、可聴警報を発するようにスピーカー12に電圧を加える。
【0021】
必要な信号の1つは、X軸に沿った動きの信号であり、これによって、ネコが単に横たわっている時には警報は作動しない。
【0022】
警報は、可視のものか、あるいは、可視かつ可聴のものであってもよい。最も好ましい警報音は、トリ、特にクロウタドリの遭難声または警戒声である。これは、ネコまたは近隣の人たちを過度に当惑させずに、特に音が大きくなくてもネコの存在をトリに警告する。
【0023】
ネコが屋内にいる間は、警報が誤って作動するのを防ぐために、ネコがキャットフラップを通り抜ける際にオンオフが切り換わるスイッチ(図示せず)によって制御してもよい。これは、磁気誘導、無線装置の使用または赤外線ビームの遮断によって実現可能である。警報は、ネコが家に入るとスイッチが切られ、家から出るとスイッチが入る。
【0024】
装置10は、一定量の光を検知しない状態では電池14のスイッチを切る光電池17を組み込んでもよく、これによると装置は夜間に機能しない。
【符号の説明】
【0025】
10 装置
11 基板
12 スピーカー
13 支柱
14 電池
15 加速度計
16 マイクロプロセッサ
17 光電池
I 頭部の垂直方向の高さ
II 頭部の左右の動き
III 頭部の垂直方向の高さ(忍び寄り状態)
IV 頭部の左右の動き(忍び寄り状態)
(a) 左向き状態
(b) 前向き状態
(c) 右向き状態
(d) 前向き状態
(e) (c)よりも右向き状態
(f) 前向き状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物に装着して捕食を抑止するための装置(10)であって、
動物の前方移動と頭部の上下左右の動きの減少との組み合わせを検出する手段(15)と、その減少が所定の判定基準に達した場合に警報を作動させる手段(16)とを
備えることを特徴とする捕食抑止装置。
【請求項2】
ネコの首輪に取り付けられる構成である
請求項1に記載の捕食抑止装置。
【請求項3】
基板(11)とスピーカーユニット(12)とを分離した配置で備え、その基板(11)とスピーカーユニット(12)との間に首輪を装着可能であり、基板(11)に検出手段(15)と警報作動手段(16)と電源(14)とを設けた
請求項2に記載の捕食抑止装置。
【請求項4】
検出手段(15)が、直交3軸方向の動きを検出するように適合された加速度計(15)である
請求項1ないし3のいずれかに記載の捕食抑止装置。
【請求項5】
加速度計(15)が、垂直Z軸を確立するために重力を検出するように適合された
請求項4に記載の捕食抑止装置。
【請求項6】
検出手段(15)から信号を受信するマイクロプロセッサ(16)が、動物の前方移動と上下左右の動きの減少とを同時に検出した場合に、警報(12)を作動させる
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の捕食抑止装置。
【請求項7】
マイクロプロセッサ(16)が、所定の範囲の前方移動を検出するまで警報(12)を作動させないように適合された
請求項6に記載の捕食抑止装置。
【請求項8】
警報(12)が、トリの警戒声を模倣する可聴警報である
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の捕食抑止装置。
【請求項9】
動物がキャットフラップまたは警報作動スイッチを作動させる手段を備える専用入口を通り抜けた際に、装置のオンオフを切り換えるスイッチを組み込んだ
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の捕食抑止装置。
【請求項10】
光を検知しない状態では装置の電源を切る光電池(17)を備える
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の捕食抑止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−500737(P2013−500737A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523377(P2012−523377)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001470
【国際公開番号】WO2011/015816
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(512004590)
【氏名又は名称原語表記】HALL,Jonathan Leslie Charles
【住所又は居所原語表記】15 Bridge Street,Packington,Ashby−de−la−Zouch,Leicestershire LE65 1WB Great Britain