説明

掃除口の閉塞構造

【課題】水洗便器に設けられた掃除口の閉塞作業を極めて簡単に行うことができる掃除口の閉塞構造を提供する。
【解決手段】掃除口の閉塞構造10は、便器11内の排水経路に連通した状態で当該便器11外側面の凹部に突設され、開口部13a外周に固定フランジ13fを有する掃除口13を開閉可能に閉塞するものである。掃除口の閉塞構造10は、固定フランジ13fに便器11側から当接する拡径縮径可能な座金部材14と、掃除口13の開口部13aを閉塞するパッキン15および蓋16と、蓋16と座金部材14とを締め付け固定する3本のボルト17と、を備えている。蓋16は円板形状であり、周縁よりやや内側に3つの孔16aが120度間隔で開設されている。座金部材14は、円弧形状をした3つのセグメント部材14aを3つのバネ材14bで連結することによって環状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器に設けられた掃除口を閉塞する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設のトイレに配置されている水洗便器においては、備え付けのトイレペーパー以外のもの、例えばトイレットペーパーの芯や紙オムツなどの異物が流され、便器が詰まることがある。このような場合、便器に詰まった異物を除去することができるように、便器のトラップに臨む掃除口が設けられている。掃除口は、通常、便器洗浄作用に影響を与えないようにビス止め式の蓋で閉塞されており、点検や清掃の際にはビスを外して蓋を開放できるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−302987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の「掃除口の閉鎖構造」は、掃除口の開口端部に便器と一体成形された固定フランジに蓋をビス止めする構造である。従って、取り外した蓋を固定する場合、固定フランジに開設された複数のビス孔の位置を一つずつ確認しながらビス挿入をしなければならず、作業性が悪い。また、掃除口への悪戯防止のため、簡単に発見できない便器側部の凹部内に掃除口が設けられた便器の場合、さらに作業性が悪く、作業中に誤ってビスを落とすこともある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、水洗便器に設けられた掃除口の閉塞作業を極めて簡単に行うことができる掃除口の閉塞構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の掃除口の閉塞構造は、便器内の排水経路に連通した状態で当該便器外面に突設され、開口部の外周に固定フランジを有する掃除口の閉塞構造であって、前記固定フランジに当該便器側から当接する拡径縮径可能な座金部材と、前記掃除口の開口部を閉塞する蓋と、前記蓋と前記座金部材とを締め付け固定するネジ部材と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、拡径縮径可能な座金部材を拡げて掃除口の固定フランジを貫通させた後、元の状態に縮径させれば座金部材を当該便器側から固定フランジに当接させることができ、この後、掃除口の開口部を蓋で閉塞し、蓋と座金部材とをネジ部材で締め付け固定することにより、掃除口を閉塞することができる。座金部材は固定フランジに当接した状態で保持されるため複数のネジ孔の位置は確定し、手で支える必要がなく、掃除口の正面側からのアプローチのみで作業を行うことができるので、閉塞作業を極めて簡単に行うことができる。
【0008】
この場合、前記ネジ部材として、前記蓋に開設された孔または切欠部を貫通して前記座金部材に螺着されるボルトを用いることができる。このような構成とすれば、掃除口の正面側から、蓋に開設された孔または切欠部を貫通してボルトを差し込み座金部材に螺着するだけで固定できるため、作業性が良好である。
【0009】
一方、前記ネジ部材として、前記座金部材から前記蓋に向かって立設されたボルトと、前記蓋に開設された孔または切欠部を貫通する前記ボルトに螺着されるナットと、を用いることもできる。このような構成とすれば、座金部材に立設されたボルトが、蓋に開設された孔または切欠部を貫通するようにして蓋を取り付ければ、その状態で蓋が保持されるため、蓋やボルトを手で支えることなく、ナットの螺着を行うことができる。このため、作業性がさらに向上する。
【0010】
また、前記座金部材を、円弧形状をした複数のセグメント部材を複数のバネ材で連結して環状に形成したものとすることができる。このような構成とすれば、座金部材の拡径縮径範囲を比較的広く確保することができ、固定フランジの便器側部分に容易に当接可能となり、ネジ部材を用いて蓋体と確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水洗便器に設けられた掃除口の閉塞作業を極めて簡単に行うことができる掃除口の閉塞構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態である掃除口の閉塞構造を使用した便器を示す側面図、図2は図1に示す便器の平面図、図3は図1に示す掃除口の閉塞構造を構成する蓋の正面図、図4は図1に示す掃除口の閉塞構造を構成する座金部材の正面図、図5(a)は図1に示す便器の掃除口の側面図であり、図5(b)は前記掃除口の正面図、図6は図1に示す掃除口の閉塞構造の分解断面図である。
【0013】
図1,図2,図6に示すように、本実施形態の掃除口の閉塞構造10は、便器11内の排水経路(図示せず)に連通した状態で当該便器11の外側面の凹部12に突設され、開口部13aの外周に固定フランジ13fを有する掃除口13を開閉可能に閉塞するものである。掃除口の閉塞構造10は、固定フランジ13fに当該便器11側から当接する拡径縮径可能な座金部材14と、掃除口13の開口部13aを閉塞するパッキン15および蓋16と、蓋16と座金部材14とを締め付け固定するネジ部材である3本のボルト17と、を備えている。
【0014】
図3に示すように、蓋16は円板形状であり、周縁よりやや内側に3つの孔16aが120度間隔で開設されている。これらの孔16aの位置は、後述する、掃除口13の固定フランジ13fに設けられた3つのU状切欠部13bと同じ位相で開設されている。図4に示すように、座金部材14は、円弧形状をした3つのセグメント部材14aを3つのバネ材14bで連結することによって環状に形成されている。3つのセグメント部材14aの中心付近には、それぞれボルト17が螺着可能な雌ネジ孔14cが開設されている。座金部材14は、外力を加えたり、解除したりしてバネ材14bを伸縮させることにより、拡径縮径させることができる。また、図5に示すように、掃除口13の固定フランジ13fには、周縁部分が開口した3つのU状切欠部13bが120度間隔で設けられている。
【0015】
ここで、図5に基づいて、掃除口の閉塞構造10の組立手順について説明する。まず、外周方向に力を加えることにより座金部材14を拡径させ、掃除口13の固定フランジ13fを貫通させた後、力を解除して元の状態に縮径させれば座金部材14を当該便器11側から固定フランジ13fの背面に当接させることができる。このとき、座金部材14の3つのセグメント部材14aの雌ネジ孔14cがそれぞれ、固定フランジ13fの3つのU状切欠部13bと同軸上に並ぶようにする。
【0016】
この後、掃除口13の開口部13aをパッキン15および蓋16で閉塞し、蓋16に開設されている3つの孔16aが、前述した3つのU状切欠部13bおよび雌ネジ孔14cと同軸上に並ぶように配置する。そして、蓋16の正面から3つの孔16aにそれぞれボルト17を差し込み、U状切欠部13bを通って雌ネジ孔14cに螺着させれば、蓋16および座金部材14で固定フランジ13fを挟持した状態で固定され、掃除口13を閉塞することができる。
【0017】
このような組立工程において、座金部材14は固定フランジ13fの背面に当接した状態で保持されるため3つの雄ネジ孔14cの位置は確定し、手で支える必要がなく、掃除口13の正面側からのアプローチのみで一連の作業を行うことができるので、閉塞作業を極めて簡単に行うことができる。また、蓋16および座金部材14で固定フランジ13fを挟持した状態で固定されるため、掃除口13を確実に閉塞することができる。
【0018】
次に、図7〜図10に基づいて本発明の第2,3実施形態について説明する。図7は本発明の第2実施形態である掃除口の閉塞構造を示す分解断面図、図8は図7に示す掃除口の閉塞構造を構成する蓋の正面図、図9は本発明の第3実施形態である掃除口の閉塞構造を示す分解断面図、図10は図9に示す掃除口の閉塞構造を構成する蓋の正面図である。なお、図7〜図10において、図1〜図6に示す符号と同じ符号を付している部分は、前述した掃除口の閉塞構造10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0019】
図7に示す掃除口の閉塞構造20においては、図3で示した蓋16の代わりに、図8に示す蓋26を用いている。蓋26は円板形状であり、周縁部分が開口した3つのU状切欠部26aが120度間隔で開設されている。これらのU状切欠部26aの位置は、掃除口13の固定フランジ13fに設けられた3つのU状切欠部13bと同じ位相で開設されている。このような構成とすることにより、図7に示すように、3つの雌ネジ孔14cにそれぞれボルト17を螺着させた状態の座金部材14を、固定フランジ13fの背面に当接させた後、蓋26を掃除口13の開口部13aに固定することができる。即ち、座金部材14を構成する3つのセグメント部材14aの間にはバネ材14bが配置されているため、図7に示すように、セグメント部材14aに螺着されたボルト17は矢線21方向に傾動可能である。従って、ボルト17を外側に傾けた状態で蓋26を開口部13aに装着した後、ボルト17を蓋26のU状切欠部26aに嵌め込み、ボルト17を締め付ければ、蓋26と座金部材14とが固定される。
【0020】
本実施形態の場合、ボルト17が螺着された座金部材14を固定フランジ13fの背面に取り付け、この状態で保持することができるだけでなく、ボルト17に対して蓋26を取り付ければ、その状態で蓋26が保持される。このため、蓋26やボルト17を手で支えることなく、ボルト17の締め付けを行うことができ、作業性が極めて良好である。
【0021】
次に、図9に示す掃除口の閉塞構造30においては、図4で示した座金部材14の代わりに、図10に示す座金部材34を用いている。座金部材34においては、座金部材14における3つの雌ネジ孔14cと同位置にそれぞれボルト37が立設されている。図9に示すように、これらのボルト37は、座金部材34を固定フランジ13fの背面に当接させたとき、U状切欠部13bを通過して突出した状態となる。従って、これらのボルト37に3つの孔16aをそれぞれ合わせて蓋16を取り付け、蓋16の正面から突出するボルト37にそれぞれ袋ナット38を螺着して締め付ければ、蓋16と座金部材34とを固定することができる。
【0022】
このように、本実施形態の場合、ネジ部材として、座金部材34から蓋16に向かって立設されたボルト37と、蓋16に開設された孔16aを貫通するボルト37に螺着される袋ナット38と、を用いている。このため、ボルト37が孔16aを貫通するようにして蓋16を取り付ければ、その状態で蓋16が保持されるため、蓋16やボルト37を手で支えることなく、袋ナット38の螺着および締め付けを行うことができ、極めて作業性が良好である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の掃除口の閉塞構造は、ホテル、駅、デパートなどの公共施設に配置されるトイレなどにおいて広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態である掃除口の閉塞構造を使用した便器を示す側面図である。
【図2】図1に示す便器の平面図である。
【図3】図1に示す掃除口の閉塞構造を構成する蓋の正面図である。
【図4】図1に示す掃除口の閉塞構造を構成する座金部材の正面図である。
【図5】(a)は図1に示す便器の掃除口の側面図であり、(b)は前記掃除口の正面図である。
【図6】図1に示す掃除口の閉塞構造の分解断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態である掃除口の閉塞構造を示す分解断面図である。
【図8】図7に示す掃除口の閉塞構造を構成する蓋の正面図である。
【図9】本発明の第3実施形態である掃除口の閉塞構造を示す分解断面図である。
【図10】図9に示す掃除口の閉塞構造を構成する蓋の正面図である。
【符号の説明】
【0025】
10,20,30 掃除口の閉塞構造
11 便器
12 凹部
13 掃除口
13a 開口部
13b,26a U状切欠部
13f 固定フランジ
14,34 座金部材
14a セグメント部材
14b バネ材
14c 雌ネジ孔
15 パッキン
16,26 蓋
16a 孔
17,37 ボルト
21 矢線
38 袋ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器内の排水経路に連通した状態で当該便器外面に突設され、開口部の外周に固定フランジを有する掃除口の閉塞構造であって、前記固定フランジに当該便器側から当接する拡径縮径可能な座金部材と、前記掃除口の開口部を閉塞する蓋と、前記蓋と前記座金部材とを締め付け固定するネジ部材と、を備えたことを特徴とする掃除口の閉塞構造。
【請求項2】
前記ネジ部材として、前記蓋に開設された孔または切欠部を貫通して前記座金部材に螺着されるボルトを用いたことを特徴とする請求項1記載の掃除口の閉塞構造。
【請求項3】
前記ネジ部材として、前記座金部材から前記蓋に向かって立設されたボルトと、前記蓋に開設された孔または切欠部を貫通する前記ボルトに螺着されるナットと、を用いたことを特徴とする請求項1記載の掃除口の閉塞構造。
【請求項4】
前記座金部材が、円弧形状をした複数のセグメント部材を複数のバネ材で連結して環状に形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の掃除口の閉塞構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−270583(P2007−270583A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100637(P2006−100637)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】