説明

掃除機用ローラー

【課題】 使用を繰り返しても変形することなく、高い回転性能を維持する掃除機用ローラーを提供する。
【解決手段】 本発明に係る掃除機用ローラー10は、繊維質から成り円筒状の接地体11と、インサート成形により接地体11のうち樹脂浸透部12bを介して一体的に結合された樹脂製のホイール部12とを備える。これにより、使用を繰り返しても接地体1とホイール部12との間に隙間が生じず、高い回転性能を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除機用ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機の吸込具や手動掃除機等には、床面と接地したままスムーズに移動できるよう、外周部に軟質材が配置された円柱状の掃除機用ローラーが回転可能に設けれられている。従来の掃除機用ローラーとして、ホイール部と、軟質材からなる接触体とを組み立てて構成した掃除機用ローラーが知られている(特許文献1,2参照)。この掃除機用ローラーは、軸方向への抜けを防止する鍔部が設けられたホイール部を、円筒状の接触体の内周の穴に挿入して組み立てられている。
【0003】
ところで、掃除機用ローラーの接触体には、床面の損傷を防止するとともに騒音が生じるのを防止するため、軟質材が用いられている。そして掃除機用ローラーは床面に押さえつけられた状態で繰り返し回転するため、軟質材からなる円筒状の接触部材は使用を繰り返すうちに周方向に伸びる。
【0004】
そして図3に示すように、円筒状の接触体の穴にホイール部を挿入してなる従来の掃除機用ローラー50は、ホイール部52と接地体51とが結合されていないため、使用を繰り返すうちに隙間gが生じて回転し難くなり、スムーズに移動しなくなるという問題があった。特に薄い不織布を接地体に用いた場合は周方向に伸びやすく、隙間gが生じやすくなるため、回転性能が著しく劣化するという問題があった。
【0005】
また、図3に示す従来の掃除機用ローラー50は、ホイール部52に設けられた貫通孔52aが掃除機本体に支持されて回転するよう構成されているが、掃除機用ローラー50の外周に対する貫通孔52aの相対的な位置は、円筒状の接地体51の外周に対する内周の相対的な位置、およびホイール部52の外周に対する貫通孔52aの相対的な位置により決定される。したがって、もし接地体51単体で外周と内周とが偏心していれば、掃除機用ローラー50の回転中心も外周に対して偏心するためスムーズに回転し難く、回転性能が低いという問題があった。
【0006】
一方、他の従来の掃除機用ローラーとして、ホイール部の外周に接着剤を塗布し、その上に布状の軟質材を巻きつけて構成された掃除機用ローラーも知られている。しかし、繰り返し回転するうち軟質材が剥がれてくるという問題があり、特に、ポリアセタール(POM)やポリプロピレン(PP)は、耐摩耗性が高いという機械的特性からホイール部の材質として好適ではあるが、難接着性であるため、布状の軟質材を接着することが困難であった。
【0007】
また、巻きつけられた布状の軟質材の厚みのばらつき、および接着剤を塗布する厚みのばらつき等により、掃除機用ローラーの回転中心が外周に対して偏心するためスムーズに回転し難く、回転性能が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−343903号公報
【特許文献2】特開平6−254006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、使用を繰り返しても変形することなく、高い回転性能を維持する掃除機用ローラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、繊維質から成り円筒状の接地体と、インサート成形により前記接地体の内周に一体的に結合された樹脂製のホイール部とを備えることを特徴とする掃除機用ローラーである。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、接地体とホイール部とが一体的に結合されており、床面に押しつけて回転を繰り返しても接地体とホイール部との間に隙間が生じず、高い回転性能を維持する掃除機用ローラーを提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記接地体が不織布から成ることを特徴とする請求項1に記載の掃除機用ローラーである。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、接地体とホイール部との結合強度が高い掃除機用ローラーを提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記ホイール部を構成する樹脂が、ポリアセタール(POM)またはポリプロピレン(PP)のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の掃除機用ローラーである。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、耐摩耗性の高い樹脂をホイール部に使用した掃除機用ローラーを提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接地体とホイール部とが一体的に結合されており、床面に押しつけて回転を繰り返しても接地体とホイール部との間に隙間が生じず、高い回転性能を維持する掃除機用ローラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る掃除機用ローラーを示す平面図,正面図および平面断面図である。
【図2】本発明に係る掃除機用ローラーを用いた電気掃除機用吸込具の一例を示す底面図である。
【図3】従来の掃除機用ローラーの使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
本発明の実施形態に係る掃除機用ローラーについて、図1に基づき説明する。図1(a)は掃除機用ローラーの平面図であり、図1(b)は正面図であり、図1(c)は平面断面図である。
【0020】
符号10で示す掃除機用ローラー10は、接地体11とホイール部12とから構成されている。接地体11の形状は円筒状であり、内周の内部にホイール部12が収容されるよう構成されている。ホイール部12は樹脂から成り、インサート成形により接地体11と一体的に結合される。すなわち、インサート成形により、繊維質の接地体11の内周の厚みの一部分に樹脂が浸透して樹脂浸透部12bを形成し、これを介して一体化し、強固な結合が実現する。なお樹脂浸透部12bの厚さは、インサート成形の際の射出圧によって変化する。
【0021】
本実施形態のホイール部12には、軸方向に延びる貫通穴12aが設けられており、この貫通孔12aが掃除機用ローラー10の回転中心を規定する。掃除機用ローラー10を掃除機に取り付ける場合には、貫通穴12aに掃除機側に設けられた軸を挿入して回転可能に装着すればよい。
【0022】
接地体11の材質は繊維質であり、天然繊維および合成繊維のいずれも使用可能である。接地体11の軸方向の長さおよび径方向の厚みは、用途に応じて任意に設定することができる。繊維質の形態としては不織布が好適に用いられるが、織物、編物、起毛布、パイル等も使用可能である。不織布を使用する場合、板状の不織布から円筒形にくり抜いて構成すればよい。このようにして、接地体11の径方向の厚みを任意に設定することができる。不織布自身は伸び易い性質を有するが、樹脂浸透部12bを介してホイール部12と強固に結合しているため、径方向の厚みを薄く構成しても回転性能に悪影響を与える変形は生じない。なお、接地体に別途ゴム等の樹脂を含浸させることによって、耐久性を向上させたり、摩擦力を高めることも可能である。
【0023】
ホイール部12の材質としては、インサート成形に用いられる樹脂であればいずれも使用可能であるが、ポリアセタール(POM)やポリプロピレン(PP)は、耐摩耗性が高いため好適である。これらの樹脂は接着性が悪く、従来技術のように接着で構成しようとすると容易に剥がれるが、本発明のごとく構成すると接地体11とホイール部12とが強固に結合するため従来技術のように剥がれるおそれがない。この他にも、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(PA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂等を用いることができる。
【0024】
また、掃除機用ローラー10の回転中心を規定する貫通孔12aは、インサート成形の際に金型の精度で形成される。すなわち、接地体11の外周と回転中心との間で高い同心度を確保することができる。仮に、インサート成形前の接地体11の外周と内周とが偏心している場合でも、貫通孔12aは金型の精度で形成される為、接地体11の外周と回転中心とを同心に形成し、高い回転性能を確保することが可能となる。換言すれば、接地体11単体での高い形状精度は必要ない。
【0025】
なお、ホイール部12に貫通穴12aを設ける代わりに、回転中心に断面円形の突起をホイール部12の軸方向両端から突出させ、掃除機に設けられた軸受に挿入することによって、回転可能に装着することも勿論可能である。その場合も、金型の精度で突起が形成される為、接地体11の外周と回転中心とを同心に形成することが可能である。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る掃除機用ローラーを適用した掃除機について、図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る掃除機用ローラーを用いた電気掃除機用吸込具40の一例を示す底面図であり、ローラー20,30が本発明の実施形態に係る掃除機用ローラーである。電気掃除機用吸込具40は、塵埃を吸い込む吸込口41および塵埃を掃除機本体(図示省略)に移送する接続管42を保持し、さらに床面上でスムーズな走行できるよう、ローラー20,30が回転可能に支持されている。なお、ローラー20とローラー30とはそれぞれ軸方向の長さおよび径が異なっているが、図1に示した掃除機用ローラー10と同様に構成されている。。
【0027】
床面の掃除を行う際、ローラー20,30は、その外周が床面に押さえつけられて回転するため、接地体11が周方向に伸びようとする。しかし、接地体11とホイール部12とが強固に結合されているため、接地体11とホイール部12との間に隙間が生じることはない。また、接地体11の外周と回転中心とが同心に形成され、回転性能を維持することができる。
【0028】
一つの電気掃除機用吸込具におけるローラーの位置、数量、およびそれぞれのローラーの長さ、径等は適宜設定することができる。また電気掃除機用吸込具に限らず手動掃除機や、床面に押さえつけて動かす様々な装置に対して好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 掃除機用ローラー
11 接地体
12 ホイール部
12a 貫通穴
12b 樹脂浸透部
20 ローラー(掃除機用ローラー)
30 ローラー(掃除機用ローラー)
40 電気掃除機用吸込具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質から成り円筒状の接地体と、
インサート成形により前記接地体の内周に一体的に結合された樹脂製のホイール部とを備える
ことを特徴とする掃除機用ローラー。
【請求項2】
前記接地体が不織布から成る
ことを特徴とする請求項1に記載の掃除機用ローラー。
【請求項3】
前記ホイール部を構成する樹脂が、ポリアセタール(POM)またはポリプロピレン(PP)のいずれかである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の掃除機用ローラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55468(P2012−55468A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200820(P2010−200820)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000228822)日本シール株式会社 (12)
【Fターム(参考)】