説明

排ガス処理設備

【課題】短い運転停止期間で、ダストが堆積した排ガスダクトをダストの無い排ガスダクトとする。
【解決手段】排ガスの流路を構成する排ガスダクトDdと、交換用の排ガスダクトDeとを走行可能に構成すると共に、走行により交換可能とすることによって、設備の運転を停止して行う交換作業を容易として短時間で実施可能とし、設備の運転を直ちに再開するのを可能とする。そして、今回流路から外した排ガスダクトDdを次回の交換用の排ガスダクトとする場合には、設備の運転中にそのダスト除去作業を十分に実施することを可能とし、また、今回流路から外した排ガスダクトDdに代えて新規の排ガスダクトを次回の交換用の排ガスダクトとする場合には、設備の運転中にその交換作業を実施することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスを流すための排ガスダクトを備えた排ガス処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば焼却炉、溶融炉、還元炉等の燃焼装置からの排ガスには、ダストが随伴されることから、燃焼装置より下流側の排ガスダクトにあっては、その内壁面にダストが付着し堆積することになる。このような事態を防止すべく、排ガスダクト内に、リンクチェーンを螺旋状に巻回した主軸を配設し、この主軸を回転すると共に往復動させることで、排ガスダクト内のダストを除去し搬送するダクト清掃装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この清掃装置によれば、排ガスダクトの閉塞を未然に防止でき、燃焼装置を含む設備の運転を停止するという事態を回避できるとされている。
【特許文献1】特開2003−329234号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記清掃装置では、実際にはダストを十分に除去するのが困難であり、結局は、燃焼装置を含む設備の運転を停止し作業者によりダストを除去するダスト除去作業が必要となる。そして、このような作業者によるダスト除去作業にあっては、作業者が排ガスダクト内に入れる温度まで冷やすことが必要であると共に、ダイオキシン対策等が必要であることから、設備の運転停止期間が長く、例えば、(4日間/回)×(4回/年)=16日/年も停めなくてはならない。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、短い運転停止期間で、ダストが堆積した排ガスダクトをダストの無い排ガスダクトとすることができる排ガス処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による排ガス処理設備は、排ガスの流路を構成する排ガスダクトと、交換用の排ガスダクトと、を具備し、これらの排ガスダクトが走行可能に構成され、走行により交換可能とされていることを特徴としている。
【0006】
このような排ガス処理設備によれば、排ガスの流路を構成する排ガスダクトと、交換用の排ガスダクトとが共に走行可能に構成され、走行により交換可能とされているため、設備の運転を停止して行う交換作業が容易とされて短時間で実施され、設備の運転を直ちに再開できる。そして、今回流路から外した排ガスダクトを次回の交換用の排ガスダクトとする場合には、設備の運転中にそのダスト除去作業を十分に実施することが可能とされ、また、今回流路から外した排ガスダクトに代えて新規(新品)の排ガスダクトを次回の交換用の排ガスダクトとする場合には、設備の運転中にその交換作業を実施することが可能とされる。従って、短い運転停止期間で、ダストが堆積した排ガスダクトをダストの無い排ガスダクトとすることができる。
【0007】
ここで、排ガスダクトは、排ガスの流路を構成する作業位置と、第一の退避位置又は第二の退避位置の何れか一方の位置とに走行により移動可能とされ、交換用の排ガスダクトは、第一の退避位置又は第二の退避位置の他方の位置と、作業位置とに走行により移動可能とされる構成であると、その交換作業が一層容易とされて一層短時間で実施され、運転停止期間を一層短くできる。
【0008】
また、第一の退避位置と第二の退避位置との間に作業位置が位置する構成であると、その交換作業が一層容易とされて一層短時間で実施され、運転停止期間を一層短くできると共に、装置の省スペース化が図られる。
【0009】
また、排ガスの流路を構成する排ガスダクトより上流側の部分に、バイパスダクトが接続されていると、排ガスダクトの交換時に、排ガスダクトより上流側の熱気がバイパスダクトによって、交換を行う排ガスダクトに向かわないように逃がされるため、その交換作業の開始が早められ、運転停止期間を一層短くできる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、短い運転停止期間で、ダストが堆積した排ガスダクトをダストの無い排ガスダクトとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明による排ガス処理設備の好適な実施形態について図1〜図5を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る排ガス処理設備を示す側面図、図2は、交換する排ガスダクト及びその周辺を示す側面図、図3は、図2の平面図、図4は、図2の正面図、図5は、バイパスダクトを示すための平面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の排ガス処理設備100は、例えば廃棄物等の被処理物を燃焼するための燃焼装置としてのロータリーキルン1と、このロータリーキルン1の出口側となる後端部が回転可能に挿入された二次燃焼塔2と、この二次燃焼塔2からの排ガスを冷却するための減温塔(急冷塔とも称す)3と、この減温塔3からの排ガス中のダストを除去するためのバグフィルタ4と、を具備し、さらに、ロータリーキルン1からの排ガスを上記各種排ガス処理装置3,4を通して下流側に導くべく、二次燃焼塔2の上部の排ガス出口部と減温塔3の上部の排ガス入口部とを接続する排ガスダクトD1と、減温塔3の下部の排ガス出口部とバグフィルタ4の排ガス入口部とを接続する排ガスダクトD2と、を備えている。
【0013】
なお、ここでは、燃焼装置をロータリーキルンとしているが、例えば他の焼却炉、溶融炉、還元炉等であっても良い。また、バグフィルタ4の後段には、必要に応じて種々の排ガス処理装置が接続される。
【0014】
そして、図1及び図5に示すように、減温塔3は、二次燃焼塔2の後方(背面側;図の右側)に位置し、バグフィルタ4は、減温塔3の後方に位置する配置構成とされ、二次燃焼塔2及び減温塔3等は、仮想線で示す支持枠(建屋枠)5に支持されて立設した状態とされている。
【0015】
また、排ガスダクトD1は、図2に示すように、二次燃焼塔2の上部の排ガス出口部に接続されて上方に垂直に立ち上がり斜め後方(図2の右側)且つ上方に短尺に向かう二次燃焼塔側ダクトDaと、この二次燃焼塔側ダクトDaの上部に接続されて同方向に続けて傾斜する傾斜ダクトDbと、一端側が減温塔3の上部の排ガス入口部に接続されて上方に垂直に立ち上がると共に他端側の周面が傾斜ダクトDbの上部に接続された減温塔側ダクトDcと、を有する構成されている。
【0016】
ここで、特に本実施形態にあっては、傾斜ダクトDbにおいて、二次燃焼塔側ダクトDaとの接続部Aから軸線方向中程の分割部Bまでが、これより下流側の部分Df及び二次燃焼塔側ダクトDaに対して分割可能に構成された分割ダクト(排ガスダクト)Ddとされている。この分割ダクトDdは、図2及び図4に示すように、車輪6aを有し走行可能な架台6に支持されている。そして、この分割ダクトDdが、その両端側のダクトDa,Dfに連結されて排ガスの流路を構成している状態(運転時の状態)を、図2〜図4に示すように、作業位置CCに位置している状態と呼ぶ。
【0017】
一方、図1〜図4に示すように、支持枠5には、二次燃焼塔2と減温塔3の並設方向(図2の左右方向)に対して直交し水平方向に延びる一対のレール7,7が架設されている。この一対のレール7,7は、上記分割ダクトDdの下方に位置すると共に、この分割ダクトDdの下方位置を中心として両端側(図3の上下方向、図4の左右方向)に均等に延びるように配設されている。
【0018】
そして、この一対のレール7,7を上記架台6の車輪6a,6aが走行可能に構成され、分割ダクトDdは一対のレール7,7に案内されて当該レール7,7の架設方向(延在方向)に移動可能とされている。
【0019】
また、本実施形態の排ガス処理設備100は、図3及び図4に示すように、車輪6a付きの架台6及びこの架台6に設けられた分割ダクトDdと同様な構成の車輪16a付きの交換用の架台16及びこの架台16に設けられた交換用の分割ダクトDeを有している。
【0020】
この交換用の分割ダクトDeは、ここでは、上記作業位置CCからレール7,7に沿って一方側(図3の上側、図4の左側)に離間する第一の退避位置CLに位置する構成とされている。
【0021】
なお、詳しくは後述するが、交換用の分割ダクトDeを、レール7,7に沿って他方側(図3の下側、図4の右側)に離間すると共に第一の退避位置CLとにより作業位置CCを間に挟む第二の退避位置CRに位置するように構成しても良い。
【0022】
また、本実施形態の排ガス処理設備100は、図1及び図5に示すように、二次燃焼塔2と排ガスダクトD2とを接続するバイパスダクトBDを備えている。このバイパスダクトBDは、その入口側及び出口側にダンパ(不図示)を各々有している。そして、これらのダンパは、運転時にあっては閉とされ、排ガスがバイパスダクトBD側へバイパスしない構成とされている。
【0023】
このように構成された排ガス処理設備100によれば、ロータリーキルン1内に供給された廃棄物等の被処理物は、当該キルン1の回転に従い入口側から出口側(図示右側)へ搬送され、この間に熱が与えられて燃焼する。このとき生じる排ガスは、下流側のファン(不図示)により下流側に吸引され、ダストを随伴しながら、二次燃焼を行う二次燃焼塔2、排ガスダクトD1を介して減温塔3に導入されて冷却される。そして、この減温された排ガスは、排ガスダクトD2を介してバグフィルタ4に導入され、排ガス中のダストが捕捉されて除去される。
【0024】
ここで、上記運転を継続していくと、特に分割ダクトDdにダストが付着し堆積するため、本実施形態の排ガス処理設備100では、作業位置CCに位置している分割ダクトDdを、第一の退避位置CLに位置している交換用の分割ダクトDeと交換する。
【0025】
具体的には、先ず、ロータリーキルン1を含む設備の運転を停止し、次いで、バイパスダクトBDの入口側及び出口側のダンパを各々開とする。すると、分割ダクトDdより上流側の二次燃焼塔2側の熱気が、前述した下流側のファンにより下流側に吸引されてバイパスダクトBDを通り、交換を行う分割ダクトDdに向かわないように逃がされるため、交換作業を直ぐに開始できることになる。
【0026】
そして、作業者は、作業位置CCに位置している分割ダクトDdを、その両端側のダクトDa,Dfから分離し(連結を解除し)、例えばチェーンブロック等の工具を用い架台6をレール7,7に沿って引っ張り走行させることで、図3及び図4に一点鎖線で示す第二の退避位置CRに移動させる。
【0027】
次いで、作業者は、第一の退避位置CLに待機している交換用の分割ダクトDeを、分割ダクトDdの場合と同様に、例えばチェーンブロック等の工具を用い架台16をレール7,7に沿って引っ張り走行させることで、作業位置CCに移動させる。その後、作業者は、交換用の分割ダクトDeを、その両端側のダクトDa,Dfに対して連結し、交換作業を完了とする。
【0028】
なお、交換用の分割ダクトDeを、第二の退避位置CRに待機させている場合には、作業位置CCに位置している分割ダクトDdを、第一の退避位置CLに移動させ、その後、第二の退避位置CRの交換用の分割ダクトDeを、作業位置CCに移動させれば良い。
【0029】
また、ここでは、例えばチェーンブロック等の工具を用い作業者の作業により架台6及び分割ダクトDd、架台16及び分割ダクトDeを走行させるようにしているが、自動化して走行させることも勿論可能である。また、例えばダクトDd,De同士(架台6,16同士)を連結し、一緒に走行させて移動させるようにしても良い。
【0030】
そして、このようにして交換作業が完了したら、バイパスダクトBDの入口側及び出口側のダンパを各々閉とし、その後、ロータリーキルン1を含む設備の運転を再開する。
【0031】
一方、再開した運転と並行して(運転中に)、作業者は以下の作業を行う。すなわち、今回流路から外した分割ダクトDdを次回の交換用の排ガスダクトとする場合には、移動させた退避位置において、分割ダクトDdに対してダスト除去作業を行う。このようにダスト除去作業は、運転と並行して行われるため、十分な実施が可能である。
【0032】
また、今回流路から外した分割ダクトDdに代えて新規(新品)の分割ダクトを次回の交換用の分割ダクトとする場合には、移動させた退避位置において、設備の運転中にその交換作業を行う。
【0033】
このように、本実施形態においては、排ガスの流路を構成する分割ダクトDdと、交換用の分割ダクトDeとが共に走行可能に構成され、走行により交換されるため、設備の運転を停止して行う交換作業が容易とされて短時間で実施され、設備の運転を直ちに再開できる一方で、再開した運転中に、交換したダクトのダスト除去作業や新規ダクトへの交換作業を並行して実施でき、その結果、短い運転停止期間で、ダストが堆積したダクトをダストの無いダクトとすることができる。
【0034】
また、分割ダクトDdが、作業位置CCと、第一の退避位置CL又は第二の退避位置CRの何れか一方の位置とに走行により移動し、交換用の分割ダクトDeが、第一の退避位置CL又は第二の退避位置CRの他方の位置と、作業位置CCとに走行により移動するため、その交換作業が一層容易とされて一層短時間で実施され、運転停止期間を一層短くできる。
【0035】
また、第一の退避位置CLと第二の退避位置CRとの間に作業位置CCが位置しているため、その交換作業が一層容易とされて一層短時間で実施され、運転停止期間を一層短くできると共に、装置の省スペース化が図られている。
【0036】
さらに、バイパスダクトBDにより上流側の熱気が、交換を行う分割ダクトDdに向かわないように逃がされるため、その交換作業の開始が早められ、運転停止期間を一層短くできる。
【0037】
因みに、ダクトDd,De同士を走行により交換する場合には、設備の運転停止期間が、(1日間/回)×(4回/年)=4日/年となり、16日/年の従来の1/4となる。
【0038】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特にその効果が大であるとして、対象とする排ガスダクトを、二次燃焼塔2と減温塔3とを接続する排ガスダクトとしているが、排ガス処理設備の排ガスダクト全てに対して適用できる。
【0039】
また、上記実施形態においては、ダクトDd,Deが、架台6,16を介してレール7,7を走行する構成としているが、モノレールのように懸吊されて走行する構成でも良い。
【0040】
また、上記実施形態においては、バイパスダクトBDを、二次燃焼塔2のような装置に接続する構成としているが、ファン等で排ガスを吸引し、上流側の熱気が、交換を行う分割ダクトDdに向かわない構成とすれば、何れの装置に接続する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る排ガス処理設備を示す側面図である。
【図2】図1中の交換する排ガスダクト及びその周辺を示す側面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2の正面図である。
【図5】図1中の二次燃焼塔、減温塔、減温塔とバグフィルタとの間の排ガスダクト、バイパスダクトの関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
2…二次燃焼塔(排ガスの流路を構成する排ガスダクトより上流側の部分)、6,16…架台、6a,16a…車輪、7…レール、100…排ガス処理設備、BD…バイパスダクト、CC…作業位置、CL…第一の退避位置、CR…第二の退避位置、Dd…分割ダクト(排ガスダクト)、De…交換用の分割ダクト(交換用の排ガスダクト)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの流路を構成する排ガスダクトと、
交換用の排ガスダクトと、を具備し、
これらの排ガスダクトが走行可能に構成され、走行により交換可能とされていることを特徴とする排ガス処理設備。
【請求項2】
前記排ガスダクトは、前記排ガスの流路を構成する作業位置と、第一の退避位置又は第二の退避位置の何れか一方の位置とに走行により移動可能とされ、
前記交換用の排ガスダクトは、前記第一の退避位置又は前記第二の退避位置の他方の位置と、前記作業位置とに走行により移動可能とされることを特徴とする請求項1記載の排ガス処理設備。
【請求項3】
前記第一の退避位置と前記第二の退避位置との間に前記作業位置が位置することを特徴とする請求項2記載の排ガス処理設備。
【請求項4】
前記排ガスの流路を構成する排ガスダクトより上流側の部分に、バイパスダクトが接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の排ガス処理設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−180397(P2009−180397A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17967(P2008−17967)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(595131374)大阪製鐵株式会社 (17)
【Fターム(参考)】