説明

排気アセンブリ

呼吸ガスデリバリシステム用の排気アセンブリは、排気ベント、排気ガスフロー通路、一次ガスフロー通路及び可動部材を有する。排気ガスフロー通路は、排気アセンブリの第1の端部から排気ベントに排気ガスフローを伝送する。排気ベントは、排気ガスフロー通路から周囲雰囲気に排気ガスを伝送する。一次ガスフロー通路は、排気アセンブリの第2の端部から排気アセンブリの第1の端部に供給ガスフローを伝送する。可動部材は、排気ガスフロー通路及び一次ガスフロー通路の少なくとも一部を規定し、排気ガスフローを供給ガスフローから分離するように機能し、供給ガスフローと排気ガスフローとの間の圧力差に応答する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の気道への呼吸ガスフローのデリバリに用いられる装置に関し、より具体的には、供給圧力のレンジにおいて制御された排気ガスフローを提供するように適応される排気アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に呼吸回路又は患者回路とも呼ばれる換気回路は、自発的に呼吸する患者の気道に呼吸ガスの連続するフローを供給するために用いられることができる。換気回路は、患者によって吐出される空気のための排気フロー通路を提供する排気アセンブリを有することができる。患者の呼吸の呼気フェーズの間、呼気ガスは、換気回路に還流し、回路から排気されない限り、次の吸入フェーズの間、患者によって再び吸い込まれる。呼気フローは、二酸化炭素(CO)を含むので、吐出されたガスを再び吸い込むことは望ましくない。従って、換気回路からの呼気ガスの信頼性の高い完全な排気又は一掃は、このような換気回路の重要なフィーチャである。呼気バルブが、介在する換気回路のデッドスペースの残留する吐出されるガス量のため、患者インタフェースから遠くに位置するほど、この一掃は、より困難な問題になる。
【0003】
従来の呼気アセンブリは、さまざまな流体圧力でさまざまな流体フローを提供する。しかしながら、圧力に対する流体フローレートの当然生じる関係(フローは圧力の平方根に比例する)は、多くの理由のため、換気回路において受け入れがたいことがある。患者の呼吸をアシストするために使用される医用ベンチレータにおいて、及び例えば自発呼吸している患者に呼吸ガスを供給するために使用される同様の装置において、特に単一リムの患者回路において、固定サイズのリーク部を含むことが一般的である。吐出されたガスが、次の吸入により患者によって再び吸い込まれることができるようになる前に、排気ガスが患者回路から追い出されるように、リーク部のサイズが選択される。固定のジオメトリ又は固定オリフィスのような固定サイズのリーク部が、呼気バルブによって提供されることができる。しかしながら、患者回路の圧力バリエーションによって当然に変化するフロー特性を有する呼気バルブは、患者回路排気バルブとして適切ではないことがある。
【0004】
加えて、いくつかの圧力サポートシステムは、呼気の間に患者に供給されるエアーの圧力が、吸入の間に患者に供給される空気の圧力より低い、2レベル圧力サポートを提供するように適応される。多くの従来の呼気バルブの場合、呼気の相対的に低い圧力下で、吐出されたガスを回路から追い出すために必要とされる固定のリーク部のサイズは、非常に大きい。しかしながら、より高い吸入圧力でこのような固定のリーク部を通るフローレートは、吸入の間の供給ガスの膨大な浪費を生じさせる。このような条件は、例えば他の場合に必要であるものよりもより大きい容量の圧力生成器、一般にブロワーを必要としうる。結果が、装置のための不必要な付加コスト及びそれを動作させるための増大されるエネルギー消費である点において、これは非常に浪費的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、吐出されたガスをこのような換気回路から追い出すために設けられるリーク部のフローレートが、回路において適用される圧力レンジにおいて変化しないことが好ましい。この意味において、固定のリーク部は、固定サイズのフロー通路断面積によって特徴づけられるものより、固定のフローレートを提供する一層望ましいものである。
【0006】
圧力作動されるレギュレータによってフローを調節しようとするバルブの従来技術は、米国特許第3,467,136号、同第3,474,831号、同第3,592,237号、同第3,948,289号及び同第3,951,379号の各明細書に開示されるものがある。他のフロー調節バルブは、米国特許第3,429,342号、同第3,473,571号、同第3,770,104号、同第4,182,371号、同第4,234,013号、同第4,280,527号、同第4,351,510号及び同第4,354,516号の各明細書に開示されている。米国特許第4,428,397号明細書、関連する独国特許出願第2748055A1号明細書及びロシア特許出願要約1015344Aは、その中を通る流体のフローレートを制御するためのバルブを開示している。更に、米国特許第5,002,050号明細書は、医療ガスフロー制御バルブを開示しており、米国特許第5,438,981号明細書は、鼻及び/又は口のガスデリバリマスクのための自動安全バルブ及び拡散器を開示している。
【0007】
米国特許第5,685,296号及び同第5,937,855号の各明細書は、換気回路における変化する圧力に関係なく、一定のフローレートで換気回路からガスを排出するフローを調節するバルブを開示している。しかしながら、上述したように、更に、換気回路デッドスペースの量が最小にされ、換気回路上の相対的に大きな排気構造を設ける必要が排除されるように、例えば、マスクに排気バルブを位置付けることが望ましいことがある。閉塞性睡眠時無呼吸OSAを処置する場合、例えば患者が眠っている間に、正圧力の療法が患者に提供される。従って、患者回路は、圧力サポート処置の間、可撓性であって直ちに移動できることが好ましい。この目的は、患者回路上に排気バルブを提供することによって邪魔される。病院装置においては、医師及び看護師にとってできるだけ空いている作業領域を保つために、患者回路上の複雑さを最小限にすることも好ましい。
【0008】
従って、呼吸ガスフローを受ける患者にとって改善された快適さを提供する装置及び方法であって、知られているシステムに関連付けられるこれら及び他の問題を解決する装置及び方法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの見地によれば、呼吸ガスデリバリシステム用に適応される排気アセンブリは、排気ベント、排気ガスフロー通路、一次ガスフロー通路及び可動部材を有する。排気ガスフロー通路は、排気アセンブリの第1の端部から排気ベントまで排気ガスフローを伝送するように構成される。排気ベントは、排気ガスフロー通路から周囲雰囲気まで排気ガスフローを伝送するように構成される。一次ガスフロー通路は、排気アセンブリの第2の端部から排気アセンブリの第1の端部まで供給ガスフローを伝送するように構成される。可動部材は、排気ガスフロー通路及び一次ガスフロー通路の少なくとも一部を規定し、排気ガスフロー通路の排気ガスフローを一次ガスフロー通路の供給ガスフローから分離するように機能し、一次ガスフロー通路の供給ガスフローと排気ガスフロー通路の排気ガスフローとの間の圧力差に応答する。
【0010】
本発明の別の見地によれば、呼吸マスク用のL字アセンブリは、L字部を有し、L字部は、フロー生成装置と結合するように適応される入口部及び患者インタフェース装置と結合するように適応される出口部を有する。L字部は更に、このようなフロー生成器からこのような患者のインタフェース装置まで呼吸ガスフローを伝送するように適応される一次ガスフロー通路、排気ベント、このような患者インタフェース装置から排気ベントまで排気ガスフローを伝送するように適応される排気ガスフロー通路であって、排気ベントが、排気ガスフロー通路からの雰囲気まで排気ガスフローを伝送するように適応される、排気ガスフロー通路と、L字部内に配置され、一次ガスフロー通路内の呼吸ガスフローを排気ガスフロー通路内の排気ガスフローから分離するように構成されるパーティションであって、一次ガスフロー通路の呼吸ガスフローと排気ガスフロー通路の排気ガスフローとの間の圧力差に応答するように構成される可動部材を有するパーティションと、を規定する。
【0011】
本発明の別の見地によれば、患者回路は、排気アセンブリを有し、排気アセンブリは、第1の端部及び第2の端部を有する。排気アセンブリは更に、第1の端部と第2の端部との間に規定される一次ガスフロー通路と、排気ガスフロー通路と、排気ガスフロー通路を排気アセンブリの壁を通って周囲雰囲気に流体的に接続するように構成される排気ベントであって、排気ガスフロー通路が、第1の端部から排気ベントまで延在する、排気ベントと、排気アセンブリ内に配置され、一次ガスフロー通路を排気ガスフロー通路から分離するように構成されるパーティションであって、一次ガスフロー通路と排気通路との間の圧力差に応答するように構成される可動部材を有するパーティションと、を規定する。
【0012】
本発明の別の見地によれば、患者回路は、排気アセンブリを有し、排気アセンブリは、第1の端部及び第2の端部を有する。排気アセンブリは更に、その中に第1の端部から第2の端部まで規定される一次ガスフロー通路及びその中に規定される排気ガスフロー通路と、排気ガスフロー通路を排気アセンブリの壁を通って周囲雰囲気に流体的に接続するように構成される排気ベントであって、排気ガスフロー通路が、第1の端部から排気ベントまで延在する、排気ベントと、一次ガス通路を排気ガスフロー通路から分離するように一次ガスフロー通路と排気ガスフロー通路との間に規定される、排気アセンブリ内に配置されるリジッドな壁と、排気ガスフロー通路と関連付けられるフロー調節部材であって、フロー調節部材を排気ガスフロー通路の方へ動かすことによって、排気ガスフロー通路を通じて雰囲気まで通過する排気ガスフローのレートを制御するフロー調節部材と、を規定し、一次ガスフロー通路の圧力が、排気ガスフロー通路の圧力に対して増大するにつれて、排気ガスフロー通路へのフロー調節部材の移動の程度が、増大する。
【0013】
本発明の別の見地によれば、患者回路は、排気アセンブリを有し、排気アセンブリは、第1の端部及び第2の端部を有する。排気アセンブリは更に、その中に第1の端部から第2の端部まで規定される一次ガスフロー通路及びその中に規定される排気ガスフロー通路と、排気アセンブリの壁を通って周囲雰囲気に排気ガスフロー通路を流体的に接続するように構成される排気ベントであって、排気ガスフロー通路が、第1の端部から排気ベントまで延在する、排気ベントと、排気アセンブリ内に配置され、一次ガス通路を排気ガスフロー通路から分離するように一次ガスフロー通路と排気ガスフロー通路との間に規定されるリジッドな壁と、一次ガスフロー通路及び排気ガスフロー通路と機能的に関連付けられるフロー調節アセンブリであって、一次ガスフロー通路の圧力バリエーションに関係なく、実質的に一定のフローレートで排気ガスフロー通路から周囲雰囲気へ実質的に連続するガスフローを通過させるように構成され配置される、フロー調節アセンブリと、を規定する。
【0014】
本発明の別の見地によれば、呼吸治療の計画を提供する方法は、排気アセンブリを有する患者回路を介して呼吸ガスフローを患者に供給することを含み、排気アセンブリは、呼吸ガスフローの圧力のバリエーションに関係なく、実質的に一定のフローレートで、患者回路から周囲雰囲気まで実質的に連続するガスフローを通過させるように構成され配置される。排気アセンブリは、第1の端部及び第2の端部を有し、更に、その中の第1の端部から第2の端部まで規定される一次ガスフロー通路及びその中に規定される排気ガスフロー通路と、排気アセンブリの壁を通じて周囲雰囲気に排気ガスフロー通路を流体的に接続するように構成される排気ベントであって、排気ガスフロー通路が、第1の端部から排気ベントまで延在する、排気ベントと、排気アセンブリ内に配置され、一次ガス通路を排気ガスフロー通路から分離するように一次ガスフロー通路と排気ガスフロー通路との間に規定されるリジッドな壁と、一次ガスフロー通路及び排気ガスフロー通路と機能的に関連付けられるフロー調節アセンブリと、を規定する。
【0015】
本発明のこれら及び他の目的、特徴及び特性、構造の動作方法及び関連する構成要素の機能、製造の部分及び経済の組み合わせは、添付の図面を参照して以下の説明及び添付の請求項を検討することにより一層明らかになり、それらのすべてがこの明細書の一部を形成し、同様の参照符号は、さまざまな図面の対応する部分を示す。しかしながら、図面は、例示及び説明のためにだけあって、本発明の範囲の規定を意図しないことが明白に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による、患者の気道に呼吸ガスフローを伝送するように適応されるシステムの概略図。
【図2】本発明の一実施形態による排気アセンブリの斜視図。
【図3】図2に示される排気アセンブリの、第1の端部から見た斜視図。
【図4】図2に示される排気アセンブリの分解図。
【図5】図2に示される排気アセンブリの断面図。
【図6】排気アセンブリ内の可動メンブレンのデュロメータを変化させる効果を示す圧力フロー曲線。
【図7】排気アセンブリ内の可動メンブレンの厚さを変化させる効果を示す圧力フロー曲線。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例えば左、右、時計回り、反時計回り、上部、下部、上方、下方及びその派生語のような、ここで使用される方向的な語句は、図面に示されている構成要素の向きに関連し、特に明示されない限り、請求項を制限しない。
【0018】
2又はそれ以上の部分が「接続され」、「結合され」又は「取り付けられる」なる記載は、ここで用いられるとき、それらの部分が、結び付けられ、又は直接一緒に動作すること、1又は複数の中間部分を通じて結び付けられ又は動作することを意味する。「数」という語は、ここで用いられるとき、1又は複数を意味し、「a」、「an」及び「the」の単数形は、コンテクストが他のものを特に示さない限り、複数の参照物を含む。
【0019】
一実施形態に従って患者に呼吸治療の計画を提供するように適応される呼吸ガスデリバリシステム100が、図1に概して示される。システム100は、圧力生成装置103、患者回路102及び患者インタフェース装置105を含む。圧力生成装置103は、供給ガス(本明細書において「呼吸ガス」とも呼ばれる)のフローを生成するように構成され、以下に限定されないが、ベンチレータ、連続圧力サポート装置(例えば持続気道陽圧装置又はCPAP装置)、可変圧力装置(例えばRespironics, Inc.(Murrysville, Pennsylvania)によって製造され供給されるBiPAP、Bi―Flex又はC―Flex装置)、自動滴定圧力サポートシステム及び加圧ガスのタンクさえも含みうる。従来の技術は、さまざまなタイプの圧力生成装置の説明に満たされているので、これらのアイテムの更なる説明は、本目的のためには必要でない。
【0020】
患者回路102は、圧力生成装置103から患者インタフェース装置105に呼吸ガスフローを伝送するように構成される。本実施形態において、患者回路102は、供給圧力のレンジにおいてシステム100から排出される排気ガスのフローを制御するように適応されるコンジット104及び排気アセンブリ1を有し、これらは、以下に一層詳しく述べられる。コンジット104及び排気アセンブリ1は、別個のコンポーネントとして示されているが、本発明の範囲内にあるままで、単一のコンポーネントに組み合わせられうることが企図される。
【0021】
患者インタフェース105は、一般に、患者101の顔面上に及び/又はその上方に配置されるように構成された鼻又は鼻/口マスクである。しかしながら、圧力生成装置103から患者101の気道まで伝送される呼吸ガスフローのデリバリを容易にする任意のタイプの患者インタフェース装置105が、本発明の範囲内にあるままで、使用されることができる。図1に示される実施形態において、患者インタフェース105は、リジッドなシェル106及びクッション107を有する。患者101の顔面に順応することによって、クッション107は、患者インタフェース105と患者101の顔面との間の気密シールを生じさせるように適応させる。従って、圧力生成装置103からの呼吸ガスフローは、患者回路102を介して、シェル106を通って、患者101の気道に伝送される。図1に示されるように、シェル106は、排気アセンブリ1と直接結合するように適応される。しかしながら、他の装置も企図される。
【0022】
図2−図5は、本発明の一実施形態による排気アセンブリ1のいくつかの異なるビューを提供する。この実施形態において、排気アセンブリ1は、コンジット104を患者インタフェース装置105に結合する90°L字部である。しかしながら、本発明は、排気アセンブリ1についてのさまざまな構造の使用を企図することが理解されるべきである。例えば、90°未満のL字部が、本発明の範囲内にあるままで、使用されることができる。
【0023】
図2を参照して、排気アセンブリ1は、患者インタフェース装置(例えば図1に示される患者インタフェース装置105)と回転可能に結合するように適応される出口部(すなわち第1の端部)11、フロー生成装置(例えば図1に示されるフロー生成装置103)と結合するように適応される入口部(すなわち第2の端部)12と、排気アセンブリ1の内部から雰囲気まで排気ガスフローを伝送するように適応される排気ベント31と、を含む。
【0024】
図4を次に参照して、排気アセンブリ1は、概して、基部10、可動部材20、排気部30及びカプラ40を有する。各種コンポーネントのうちの1又は複数の機能及び/又は構造は、本発明の範囲から逸脱することなく組み合わせられ及び/又は変形されうることが理解されるべきである。
【0025】
カプラ40の第1の端部41は、基部10の入口部12に回転可能に結合するように適応される。カプラ40は、例えば、カプラ40の縁部46が基部10の縁部16と係合するまで(図5を参照)、入口部12上を摺動するように構成される。縁部46の縁部16との係合は、カプラ40が基部10から離れることを防ぎ、他方、カプラ40が基部10に対して自由に回転することを可能にする。カプラ40の第2の端部42は、供給コンジットと接続するように適応される。例えば、カプラ40は、コンジット104(図1に示す)の端部が、カプラ40の外側表面45上を摺動し、リング43の止め具44に接するように、適応される。コンジット104と外側表面45との間の摩擦は、コンジット104及びカプラ40が離れることを防ぐ。このような摩擦嵌合は、良く知られた技術である。従って、このような適合の更なる説明は、本目的のために必要でない。しかしながら、他のタイプの接続部がカプラ40をコンジット104に接続するために利用されることができることが企図される。
【0026】
本実施形態において、基部10は、可動部材20と関連してパーティションを形成するリジッドな部材13を有し、パーティションは、後で詳しく述べるように、基部10の内部を2つのフロー通路に分割する。リジッドな部材13は、概して、出口部11から凹部15の底部まで延在する。基部10は更に、ここで基部10の両側に位置する複数の保持スロット14を有する。
【0027】
可動部材20は、開口部22、外側リム23及び突起部24を有する。突起部24は、スロット25を規定する。可動部材20は、排気アセンブリ1が組み立てられるとき、外側リム23が基部10の凹部15内に寄りかかり、リジッドな部材13がスロット25内に受容されるように、適応される。
【0028】
排気部30は、複数のオリフィス又はホール32を含むベント31を有する。オリフィス32は、ガスフローが排気部33の壁33を通って伝送されることを可能にする。複数のタブ34が、排気部30の周囲に配置される。タブ34は、基部10の両側に位置する保持スロット14に挿入され、それらと係合するように構成される。タブ34及び保持スロット14は、基部10を排気部30に連結する一方、それらの間に可動部材20を保持するように構成される。基部10を排気部30と連結する他の手段もまた企図される。
【0029】
図5に最も良く見られるように、リジッドな部材13及び可動部材20は、排気アセンブリ1内に、一次ガスフロー通路51(入口部12から出口部11まで延在する)及び排気ガスフロー通路52(出口部11から排気ベント31まで延在する)を規定することを助ける。より具体的には、リジッドな部材13及び可動部材20は、基部10の壁及び排気部30の壁33と共に、出口部11と排気ベント31との間に排気ガスフロー通路52を規定する。リジッドな部材13及び可動部材20は更に、基部10の壁と共に、出口部11と入口部12の間に一次ガスフロー通路51を規定する。リジッドな部材13及び可動部材20の可撓性表面21は、一次ガスフロー通路51内に存在する任意のガスフローを、排気ガスフロー通路52内に存在する任意のガスフローから隔てるように保つ。本実施形態におけるパーティションは、リジッドな部材13及び可動部材20を有するが、他の構成も企図される。例えば、限定的ではないが、パーティションが、可動部材20のみから構成されることができることが企図される。
【0030】
排気ガスフロー通路52は、出口部11から排気ベント31に排気ガスフロー(概して矢印54によって示される)を伝送するように構成される。排気ベント31は、排気ガスフロー通路52から周囲雰囲気に排気ガスフロー54を伝送するように構成される。一次ガスフロー通路51は、入口部12から出口部11に供給ガスフロー(概して矢印52によって示される)を伝送するように構成される。可動部材20は、排気ガスフロー通路52及び一次ガスフロー通路51の少なくとも一部を規定し、排気ガスフロー通路52の排気ガスフロー54を、一次ガスフロー通路51の供給ガスフロー53から分離するように機能し、一次ガスフロー通路51の供給ガスフロー53と排気ガスフロー通路52の排気ガスフロー54との間の圧力差に応答する。
【0031】
動作中、可動部材20は、排気ガスフロー54が排気ガスフロー通路52を通って雰囲気まで通過する際に遭遇する抵抗を増やすことによって、フロー調節装置として機能する。本実施形態において、可動部材20は、一次ガスフロー通路51の圧力と排気ガスフロー通路52の圧力の間の差に応じて、排気ガスフロー通路の方へ移動し、排気ガスフロー通路52の断面積を効果的に変更する。一次ガスフロー通路51内の圧力が、排気ガスフロー通路52内の圧力に対して増加すると、排気ガスフロー通路52への可動部材20の移動の程度が増大する。例えば図5に示されるように、供給ガスフロー53によって可撓性メンブレン21の側面21aに及ぼされる圧力が、排気ガスフロー54によって可撓性メンブレン21の側面21bに及ぼされる圧力に対して大きいほど、可動部材20は、排気ガスフロー通路52の方へより大きく移動する。排気ガスフロー54によって側面21bに及ぼされる圧力に対して、供給ガスフロー53によって側面21aに及ぼされる圧力が小さいほど、可動部材20は、より大きくその元の状態に戻り、排気ガスフロー通路52が阻止される程度がより小さくなる。
【0032】
本実施形態において、排気ガスフロー54のレートは、開口部22(排気ガスフロー54が排気ガスフロー通路52に入ることを許す)のサイズ、メンブレン21の可撓性、及びオリフィス32の数、サイズ及び/又は位置のうちの少なくとも1つによって制御される。他の設計のフィーチャ及び/又は構造が、排気ガスフロー54のレートを制御するために使用されることもできる。例えば、壁33とメンブレン21との間の間隔は、排気ガスフロー通路52の断面積を変えるように変更されることができ、それによって排気ガスフロー54のレートを変える。更に他の例として、弾性メンブレン21は、一次ガスフロー通路51内の圧力と排気ガスフロー通路52内の圧力との間の差に応じて排気ガスフロー通路52の面積を変更するピストン又は他の構造と置き換えられることができ、又はそれらと一緒に用いられることができる。この圧力差に応じてピストンが移動する量は、例えば、ピストンの設定されるバネ定数の選択によって、予め決められることができる。
【0033】
可動部材20は、一次ガスフロー通路51内の圧力のバリエーションに関係なく、排気ガスフロー通路52から周囲雰囲気までの実質的に一定のフローレートでの実質的に連続する排気ガスフロー54の通過を制御するように構成され配置される。前記説明から、一次ガスフロー通路51内の圧力と排気ガスフロー通路52内の圧力との間の差によって生成される可動部材20における圧力差は、可動メンブレン20を排気ガスフロー通路52の方へ押しやる傾向があり、それによって、予め決めることができる量によって排気ガスフロー通路52の有効断面積を減少させ、それによって排気ガスフロー54を調節することが理解されることができる。排気ガスフロー通路52の有効断面積の減少される量は、可動部材20が受ける圧力差の大きさに依存する。圧力差が増えると、可動部材20は、更なる増分によって排気ガスフロー通路52の方へ変形し、それによって排気ガスフロー通路52の断面積を減少させ、圧力差が低下すると、可動部材20は後退し、ゆえに排気ガスフロー通路52の断面積を増加させる。
【0034】
可動部材20、開口部22、排気ガスフロー通路52及び/又は一次ガスフロー通路51のジオメトリ、寸法及び材料特性(例えばデュロメータのような硬度)、並びに排気ベント31のオリフィス32のジオメトリ、寸法及び数は、圧力生成装置によって提供される圧力レンジにおいて、排気ガスフロー通路52のフローレートの所望の制御を提供するように選択されることができる。例えば、本発明は、増大する及び減少する圧力差に応じて、排気ガスフロー54のレートが、期待される換気回路圧力のレンジにおいて本質的に一定のままであるように、排気ガスフロー通路52の断面積が減少し、増大することを企図する。図に示される特定の構成は、説明の目的で提供されており、この機能を達成するための唯一の可能な構成を意図するものではない。
【0035】
図2−図5に示される実施形態において、可動部材20は、弾力的に変形可能な弾性メンブレン(非制限的に例えばシリコンゴム)である。しかしながら、その可動部材20は、一次ガスフロー通路51と排気ガスフロー通路52との間の圧力差に応答する他の構造(非制限的に例えばピストン及びバネの組み合わせ)を含むことができることが企図される。
【0036】
排気アセンブリ1のフロー特性は、例えば異なる可動メンブレン20を使用することによって、特定のフローレートに合わせて容易に調節されうることが企図される。図6は、例えば異なる可動部材20のフロー特性を示す。各可動部材は、同じ厚さ(すなわち0.3mm又は0.012インチ)を有するが、異なるデュロメータ(すなわち硬度)を有する弾性メンブレン21を有する。概して、メンブレンのデュロメータが大きいほど、より弾性が小さくなる。図6の数字61によって識別されるラインは、例えば、10のデュロメータを有するメンブレンが、20乃至40cmHOの圧力レンジにおいて約10−12LPMのフロープラトーレベルを有することを示す。数字63によって識別されるラインは、20のデュロメータを有するメンブレンが、同じ圧力レンジにおいて約28−40LPMのフロープラトーレベルを有することを示す。従って、ユーザは、所望の結果を提供するものを見つけるまで、複数の可動メンブレン20を使用することによって実験することができる。
【0037】
別の例として、図7は、異なる可動メンブレン20のフロー特性を示す。各可動メンブレンは、10のデュロメータを有するが、それぞれ異なる厚さを有する弾性メンブレン21を有する。概して、メンブレンの厚さの増加は、メンブレンの変形の減少に対応する。変形の減少は、排気フローの増加をもたらす。図7の数字71によって識別されるラインは、例えば、0.2mm(0.008インチ)の厚さを有するメンブレンが、10乃至40cmHOの圧力レンジにおいて約10−11LPMのフロープラトーレベルを有することを示す。数字73によって識別されるラインは、0.4mm(0.016インチ)の厚さを有するメンブレンが、同じ圧力レンジにおいて約11−16LPMのフロープラトーレベルを有することを示す。
【0038】
排気アセンブリ1は、排気アセンブリ1を横切る(すなわち排気ガスフロー通路52と周囲雰囲気との間の)圧力差のレンジにおいて、排気ベント31に通る本質的に一定の排気ガスフローレートを確実にするために、ユニークなフローレート制御機能を提供する。周囲圧力はすべての実際の目的のために一定であるので、圧力差のレンジにおける一定の排気フローは、本質的に、圧力レンジにおける一定の排気フローレートを意味する。患者の呼吸努力が、吸気及び呼気の間の圧力差を生成するだけでなく、加えて、換気システムが、多くの場合、患者呼吸と協調して異なる圧力レベルを供給するようにプログラムされるので、このような圧力レンジは、排気アセンブリ1において日常的に観察される。例えば、呼気中よりも吸入中に患者に高い圧力を給送するように2レベルモードで圧力生成器103を動作させることが知られている(例えば、米国特許第5,148,802号及び同第5,443,193号明細書を参照。それらの内容は、参照によって本願に盛り込まれるものとする)。
【0039】
本発明は、最も実際的であり、好適である実施形態と現在考えられるものに基づいて、説明の目的で詳細に説明されているが、このような詳細は単にその目的のためにだけあり、本発明は、開示される実施形態に制限されず、添付の請求項の精神及び範囲内にある変形及び等価な装置をカバーすることを意図するものであることが理解されるべきである。本発明は、可能な限り、任意の実施形態の1又は複数の特徴が、任意の他の実施形態の1又は複数の特徴と組み合わせられることができることを企図することが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸ガスデリバリシステムにおいて使用される排気アセンブリであって、
排気ガスフローを運ぶ排気ガスフロー通路と、
前記排気ガスフロー通路から周囲雰囲気に前記排気ガスフローを伝送する排気ベントと、
前記排気アセンブリの第2の端部から前記排気アセンブリの第1の端部に供給ガスフローを伝送する一次ガスフロー通路と、
前記排気ガスフロー通路の少なくとも一部及び前記一次ガスフロー通路の少なくとも一部を規定する可動部材であって、前記排気ガスフロー通路の前記排気ガスフローを前記一次ガスフロー通路の前記供給ガスフローから分離するように機能し、前記一次ガスフロー通路の前記供給ガスフローと前記排気ガスフロー通路の前記排気ガスフローとの間の圧力差に応答する、可動部材と、
を有する排気アセンブリ。
【請求項2】
前記可動部材は、弾性メンブレン又はピストンである、請求項1に記載の排気アセンブリ。
【請求項3】
前記供給ガスフローと前記排気ガスフローとの間の前記圧力差に応じて、前記可動部材は、前記排気ガスフローが前記排気ベントを通じて雰囲気に伝送されるレートを調節する、請求項1又は2に記載の排気アセンブリ。
【請求項4】
前記可動部材は、前記排気ガスフロー通路のサイズを変えることによって、前記排気ガスフローが前記排気ベントを通じて雰囲気に伝送されるレートを調節する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排気アセンブリ。
【請求項5】
前記可動部材は、前記排気ガスフロー通路の前記排気ガスフローの圧力に対する前記一次ガスフロー通路の前記供給ガスフローの圧力の増加に応じて、前記排気ガスフロー通路のサイズを減少させるように構成される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の排気アセンブリ。
【請求項6】
前記排気アセンブリの前記第1の端部は、患者インタフェース装置と回転可能に結合するように適応される、請求項1乃至5の排気アセンブリ。
【請求項7】
前記排気アセンブリの前記第2の端部は、フロー生成装置と結合するように適応される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排気アセンブリ。
【請求項8】
L字部を有する呼吸マスク用L字アセンブリであって、前記L字部は、
(a)フロー生成装置と結合するように適応される入口部と、
(b)患者インタフェース装置と結合するように適応される出口部と、
を有し、前記L字部は、
(1)前記フロー生成器から前記患者インタフェース装置に呼吸ガスフローを伝送するように適応される一次ガスフロー通路と、
(2)排気ベントと、
(3)前記患者インタフェース装置から前記排気ベントに排気ガスフローを伝送するように適応される排気ガスフロー通路であって、前記排気ベントは、前記排気ガスフロー通路から雰囲気まで前記排気ガスフローを伝送する、排気ガスフロー通路と、
(4)前記L字部内に配置され、前記一次ガスフロー通路内の呼吸ガスフローを前記排気ガスフロー通路内の前記排気ガスフローから分離するパーティションであって、前記一次ガスフロー通路の前記呼吸ガスフローと前記排気ガスフロー通路の前記排気ガスフローとの間の圧力差に応答する可動部材を有するパーティションと、
を有する、L字アセンブリ。
【請求項9】
前記可動部材が、弾性メンブレン又はピストンである、請求項8に記載のL字アセンブリ。
【請求項10】
前記可動部材は、前記呼吸ガスフローと前記排気ガスフローとの間の圧力差に応じて、前記排気ガスフローが前記排気ベントを通じて雰囲気に伝送されるレートを調節する、請求項8又は9に記載のL字アセンブリ。
【請求項11】
前記可動部材は、前記排気ガスフロー通路のサイズを変えることによって、前記排気ガスフローが前記排気ベントを通じて雰囲気に伝送されるレートを調節する、請求項8乃至10のいずれか1項に記載のL字アセンブリ。
【請求項12】
前記可動部材は、前記排気ガスフロー通路の前記排気ガスフローの圧力に対する前記一次ガスフロー通路の前記呼吸ガスフローの圧力の増加に応じて、前記排気ガスフロー通路のサイズを減少させる、請求項8乃至11のいずれか1項に記載のL字アセンブリ。
【請求項13】
前記出口部は、患者インタフェース装置と回転可能に結合するように適応される、請求項8乃至12のいずれか1項に記載のL字アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−519655(P2011−519655A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508026(P2011−508026)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051790
【国際公開番号】WO2009/136333
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)