説明

排水ソケット、及び、その排水ソケットを備えた水洗式大便器

【課題】排水性能をより向上させることができる排水ソケットを備えたサイホン式水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明は、サイホン式水洗大便器の便器本体2の排水路のトラップ下降管出口部14cと床下に設けられた床下排水管入口部26aとを連結する排水ソケット24であって、便器本体2の排水路の出口部14cに接続される便器本体側接続管部材28と、床下排水管26の入口部26aと接続される床下側接続管部材32と、便器本体側接続管部材28と床下側接続管部材32とを接続するほぼ直線状に延びる中間管部材30とを有し、床下側接続管部材32自体又はその近傍には、サイホン作用を誘発する絞り部36が設けられ、便器本体側接続管部材28の流路底面には、便器本体2の排水路の出口部14cから流下した排水を、この流路断面を水シールすることなく中間管部材30の流路下流方向に向けて流れるように方向転換させるガイド部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ソケット、及び、その排水ソケットを備えた水洗式大便器に係り、特に、サイホン式便器の便器本体の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結する排水ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されているように、サイホン式水洗大便器において、便器本体の排水路と床下排水管とを連結する、2つの屈曲部を有する排水ソケットを備えた水洗大便器が知られている。
図6に示すように、特許文献1に示される排水ソケット48は、便器本体46の排水路の出口部に接続される排水口接続部材50(便器本体側接続管部材)と、床下排水管52の入口部と接続される排水管接続部材54(床下側接続管部材)と、排水口接続部材50の出口部と排水管接続部材54の入口部とを接続するアジャスター部材56(中間管部材)とを備え、強力なサイホン作用を発生させるために排水口接続部材50内の床上絞り部58と排水管接続部材54内の床下絞り部60との2箇所でサイホン作用を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−26907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示すサイホン式水洗大便器においては、床上絞り部58と床下絞り部60との2箇所においてサイホン作用を発生させる場合、サイホン作用を早期に発生させることができる利点があるが、サイホン作用が発生した後、床上絞り部58によって排水口接続部材50内に水シールが発生されることによる排水の流れの抵抗を受け、流路内を流れる排水の流速が低下し、サイホン作用持続中の排水量が低下し、排水性能が低下するという問題(欠点)があった。近年の節水化の要請に伴い、洗浄水量が減らされ、排水量が減ったことに伴い、この問題がより顕著に生じるようになっている。
【0005】
そこで、本発明は、従来技術の欠点を解決するためになされたものであり、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる排水ソケット及びその排水ソケットを備えたサイホン式水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、サイホン式水洗大便器の便器本体の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結する排水ソケットであって、便器本体の排水路の出口部に接続される便器本体側接続管部材と、床下排水管の入口部と接続される床下側接続管部材と、便器本体側接続管部材の出口部と床下側接続管部材の入口部とを接続するほぼ直線状に延びる中間管部材と、を有し、床下側接続管部材自体又はその近傍には、サイホン作用を誘発する絞り部が設けられ、便器本体側接続管部材の流路底面には、便器本体の排水路の出口部から流下した排水を、この流路断面を水シールすることなく中間管部材の流路下流方向に向けて流れるように方向転換させるガイド部が形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、床下側接続管部材自体又はその近傍には、サイホン作用を誘発する絞り部が設けられているので、この絞り部により、効果的にサイホン作用を発生させ、さらに、便器本体側接続管部材の流路底面に形成されたガイド部が、便器本体の排水路の出口部から流下した排水を中間管部材の流路下流方向に向けて流れるように方向転換させるようにしたので、便器本体側接続管部材内に水シールを発生することによる流れの抵抗を発生させずに、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やすことができるので、排水性能をより向上させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、便器本体側接続部材は、便器本体の排水路の出口部に接続され且つ鉛直方向下方に延びる垂下部と、この垂下部から流路がほぼ直角に屈曲する屈曲部と、この屈曲部から水平方向に延び且つ中間管部材に接続される水平部とを備え、ガイド部は上記屈曲部に形成され、水平部の流路の中心軸線とほぼ同一の高さ位置に下流側を向いて下方へと傾斜した傾斜面を備えている。
このように構成された本発明においては、ガイド部が、便器本体側接続部材の水平部の流路の中心軸線の高さとほぼ同一の高さの位置に下流側に傾斜する傾斜面を備えているので、このガイド部の傾斜面により、便器本体の排水路から流下した排水を排水の流れの抵抗をより生じにくくしながら、跳ね返すように方向転換させることができる。そのため、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、ガイド部の傾斜面の前後方向の幅の長さは、垂下部の前後方向の幅の長さの20〜30%である。
このように構成された本発明においては、ガイド部の傾斜面の前後方向の幅の長さが、垂下部の前後方向の幅の長さの20〜30%であるので、排水の流れに生じる抵抗をより小さくしながら、流れを方向転換させることができ、そのため、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、中間管部材の流路断面積は、便器本体側接続管部材の水平方向の最小流路断面積より大きい。
このように構成された本発明においては、中間管部材の流路断面積が、便器本体側接続管部材の水平方向の最小流路断面積より大きいために、方向転換された排水の流れが、中間管部材による抵抗をより受けにくくなり、滑らかに流れることができる。それにより、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、便器本体側接続管部材の水平方向の最小流路断面積は、3800mm2〜4300mm2である。
このように構成された本発明においては、便器本体側接続管部材の最小流路断面積が、3800mm2〜4300mm2であるので、便器本体側接続管部材の流路を通過する排水の流れが、便器本体側接続管部材による抵抗をより受けにくくなり、滑らかに流れることができ、それにより、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げる事ができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、ガイド部の傾斜面は、上流側で水平面上を半円弧状に延びる上端辺と、この上端辺の左端及び右端から下方に円弧状に延びる下端辺とにより囲まれる領域に形成される凹形状面からなる。
このように構成された本発明においては、ガイド部の傾斜面は、上流側で水平面上を半円弧状に延びる上端辺と、この上端辺の左端及び右端から下方に円弧状に延びる下端辺とにより囲まれる領域に形成される凹形状面からなるので、傾斜面の下端辺によって屈曲部内の流路断面積を狭くすることなく、且つさらに傾斜面の表面積を凹形状面の円弧状表面により増大させて形成することができるので、流下する排水の流れをより多く受けて方向転換させることができ、且つ、排水の流れの抵抗をより生じにくくししながら排水を滑らかに流すことができる。そのため、サイホン作用の起動後に排水ソケットの流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、絞り部は、床面より上方の床下側接続管部材の屈曲している部分に設けられている。
このように構成された本発明においては、絞り部が床面より上方の床下側接続管部材の屈曲している部分に設けられているため、排水の流れの抵抗を生じにくく、排水を滑らかに流すことができる。そのため、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0013】
また、本発明は、排水ソケットを備えた水洗大便器である。
このように構成された本発明の水洗大便器においては、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排水ソケット及びその排水ソケットを備えたサイホン式水洗大便器によれば、サイホン作用の起動後に流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器を示す部分側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿って見た排水ソケットの便器本体側接続管部材の平面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿って見た排水ソケットの便器本体側接続管部材の正面図である。
【図4】本発明の実施形態による水洗大便器の排水瞬間流量と時間との関係、及び、従来の排水ソケットを備えた水洗大便器の排水瞬間流量と時間との関係を示す線図である。
【図5】本発明の実施形態による水洗大便器における便器洗浄の際の流れの様子を示す断面図である。
【図6】従来の排水ソケットを備えた水洗大便器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、添付図面を参照して、本発明の実施形態による排水ソケット、及び、この排水ソケットを備えた水洗大便器を説明する。
まず、図1により、本発明の実施形態による水洗大便器の構造を説明する。ここで、図1は本発明の実施形態による水洗大便器を示す部分側面図である。
水洗大便器1は、床排水タイプのサイホン式水洗大便器である。
【0017】
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置された便座カバー6と、便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されている。
【0018】
便器本体2には、汚物を受けるボウル形状のボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口(図示せず)が形成されている。
【0019】
ジェット吐水口16は、ボウル部12の汚物を受ける汚物受け面20の底部20aに形成されており、排水トラップ管路14のトラップ管路入口部14aに指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐出するようになっている。
【0020】
リム吐水口(図示せず)は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、洗浄水をこのリム吐水口からリム部22の内周面22aに沿って前方に吐出するようになっている。
【0021】
排水トラップ管路14は、トラップ管路入口部14aと、このトラップ管路入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから鉛直方向下方に下降するトラップ下降管出口部14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管出口部14cとの間がトラップ管路頂部14dとなっている。
ここで、排水トラップ管路14のトラップ下降管出口部14cには、排水ソケット24が接続され、この排水ソケット24を介して、床下に設けられた床下排水管26に接続され、汚物を含む洗浄水を外部へ排出するようになっている。
【0022】
本実施形態による水洗大便器1においては、リム吐水に関しては、リム部22のリム吐水口よりも後方側に形成されたリム導水路(図示せず)が、洗浄水を供給する洗浄水源である水道(図示せず)に直結されており、水道の給水圧力により、リム導水路に供給された洗浄水は、リム吐水口から前方へ吐出されるようになっている。
また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク(図示せず)に貯水された洗浄水は、加圧ポンプ(図示せず)によって加圧され、ボウル部12の後方側からジェット吐水口16にかけて形成されたジェット導水路16aを経て、大流量でジェット吐水口16から吐出されるようになっている。
【0023】
次に、図1により、本発明の実施形態による排水ソケットを説明する。
図1に示すように、水洗大便器1は、汚物を排出するための排水ソケット24を備え、この排水ソケット24は、便器本体2の排水路のトラップ下降管出口部14cと床下に設けられた床下排水管26の床下排水管入口部26aとを連結している。
排水ソケット24は、便器本体2のトラップ下降管出口部14cの鉛直方向下方に接続され、且つ鉛直方向下方から水平方向に向かってほぼ直角に屈曲するように形成されている便器本体側接続管部材28と、この便器本体側接続管部材28から水平方向に延びる中間管部材30と、この中間管部材30と接続され、且つ水平方向から鉛直方向下方に向かってほぼ直角に屈曲するように形成されている床下側接続管部材32と、を備えている。
【0024】
便器本体2の排水路の鉛直方向下方に開口するトラップ下降管出口部14cには、上向きに開口する便器本体側接続管部材28の便器本体側接続管部材入口部28aが接続されている。便器本体側接続管部材28は、L字形状に屈曲されて形成され、この管部材内部の流路が鉛直方向下方から水平方向に向かってほぼ直角に屈曲するように形成されている。便器本体側接続管部材28の下流側で水平方向に開口する便器本体側接続管部材出口部28bには、中間管部材30が接続されている。
【0025】
中間管部材30は、直線状管部材であり、便器本体側接続管部材出口部28bには、中間管部材30の横向き(ほぼ水平向き)に開口する中間管部材入口部30aが接続されている。下流側において横向きに開口する中間管部材出口部30bには、床下側接続管部材32の床下側接続管部材入口部32aが接続されている。
【0026】
床下側接続管部材32は、この管部材内部の流路が水平方向から鉛直方向下方に向かってほぼ直角に屈曲するように形成されている。床下側接続管部材32の下流側において鉛直方向下方向に開口する床下側接続管部材出口部32bには、床下排水管26の床下排水管入口部26aが接続されている。
【0027】
上述した実施形態においては、便器本体側接続管部材28、中間管部材30及び床下側接続管部材32の3部材を別体として構成したが、それらは一体として形成されていてもよい。また、3部材の内の2部材を一体として形成するようにしてもよい。
さらに、中間管部材30を省略し、この中間管部材の上流側部分を便器本体側接続管部材28と一体的に形成し、さらに、中間管部材の下流側部分を床下側接続管部材32と一体的に形成するようにしてもよい。
【0028】
床下側接続管部材32の下流端には、管内の流路管径(幅)を絞る絞り部36が設けられている。この絞り部36は、床下側接続管部材32の下流端を含む上方に屈曲している部分に形成するようにしてもよい。絞り部36は、流路断面積を絞ることにより、排水の流れを乱し、排水の排出への抵抗を発生させ、水シール部分を形成して、サイホン作用を誘発するように形成されている。この絞り部36は、床下側接続管部材32の近傍の上流側又は床下側接続管部材32の近傍の下流側に設けられていてもよく、さらに、床下側接続管部材32とは別部材として床下側接続管部材32の下流側に設けられていてもよい。
【0029】
次に、図1乃至図3により、本発明の実施形態による排水ソケットの便器本体側接続管部材の構造を説明する。
図2は図1のII−II線に沿って見た排水ソケットの便器本体側接続管部材の平面図であり、図3は図1のIII−III線に沿って見た排水ソケットの便器本体側接続管部材の正面図である。
【0030】
図1に示すように、便器本体側接続管部材28は、便器本体2の排水路のトラップ下降管出口部14cに接続され且つ鉛直方向下方に延びる垂下部38と、この垂下部38から水平方向に向かってほぼ直角に流路が屈曲する屈曲部40と、この屈曲部40から水平方向に延び且つ中間管部材30に接続される水平部42とを備えている。
【0031】
便器本体側接続管部材28の垂下部38において、垂下部38の最狭部の水平面の断面積が、便器本体側接続管部材28の水平方向の最小流路断面積となっており、この最小流路断面積は、3800mm2〜4300mm2の大きさである。中間管部材30の上下方向の流路断面積は、この便器本体側接続管部材28の水平方向の最小流路断面積より大きくなっている。
【0032】
便器本体側接続管部材28の屈曲部40の流路底面には、便器本体2の排水路14の出口部14cから流下した排水を、この流路断面を水シールすることなく中間管部材30の流路下流方向に向けて流れるように方向転換させるガイド部44が形成されている。このガイド部44は、より具体的に言うと、便器本体2の排水路14の出口部14cから略鉛直下方向に流下した排水を中間管部材30の略水平方向である中心軸線Xの方向に沿って流れるようにしている。
ガイド部44は、上流側で水平面上を円弧状に延びる上端辺44aと、この上端辺44aの左端44b及び右端44cから下方に円弧状に延びる下端辺44dとを備えている。この上端辺44aと下端辺44dによりにより囲まれた下流側に傾斜する面領域がガイド部44の傾斜面44eとし、凹形状面で形成されている。
図2に示すように、上端辺44aの左端と下端辺44dの左端とが垂下部38の垂下部中心軸線Yの左側壁上で左端44bとして接続され、同様に上端辺44aの右端と下端辺44dの右端とが垂下部38の垂下部中心軸線Yの右側壁上で右端44cとして接続されている。傾斜面44eは、上方から見て、上端辺44aの円弧中心及び下端辺44dの円弧中心がそれぞれ水平部42の水平部中心軸線X上に沿って配置されるように、下流側に開いている三日月形状に形成されている。
図3に示すように、傾斜面44eを下流側から水平に見た場合に、傾斜面44eの上端辺44aは左右幅方向に略水平に延び、傾斜面44eの下端辺44dは、上端辺44aの左右幅方向の左端44b及び右端44cから下方に円弧状に延び、傾斜面44eは、左右幅方向において上端辺44aの左端44b及び右端44cから下方へと弧を描いた半円弧形状に形成されている。傾斜面44eの下端辺44dの下端(左右幅方向中心)の位置は、水平部42の流路の水平部中心軸線(水平方向軸線)Xと略同一の高さ位置に位置決めされている。傾斜面44eの便器前後方向の幅の長さL1は、約15mm〜20mmであり、垂下部38の最狭部の前後方向の幅の長さL2の約20〜30%である。傾斜面44eの前後方向の傾斜角度が、水平面に対して下方へと約18度〜24度に形成されるので、傾斜面44eが鉛直方向下方に流下した排水を水平部42の水平部頂部42aよりやや下方の流路下流方向に向けて、この流路断面を水シールすることなく流れるように方向転換させることができる。
【0033】
次に、図4及び図5により、本発明の実施形態による排水ソケット内の排水の流れ(動作)について説明する。
図4は、本発明の実施形態による水洗大便器の排水瞬間流量と時間との関係と、比較例として、従来の排水ソケットを備えた水洗大便器の排水瞬間流量と時間との関係を示し、図5は、本発明の実施形態による水洗大便器における便器洗浄の際の流れの様子の一例を示している。
【0034】
先ず、図4は、排水ソケット24の床下側接続管部材32の床下側接続管部材出口部32b近傍において排水瞬間流量の時間変化を測定した結果、及び従来の排水ソケットの床下側接続管部材の出口部近傍において排水瞬間流量の時間変化を測定した結果を示している。縦軸は、排水瞬間流量(L/min)を示し、横軸は、ジェット吐水開始時t0からの経過時間(s)を示す。
本発明の実施形態による排水ソケット内の排水の排水瞬間流量は、便器洗浄開始時(図示せず)から、時間経過の順に、ジェット吐水開始時(t0)を経て、徐々に増加し、排水ソケット24内部においてサイホン作用が起動(t1)した後、増大して最大排水瞬間流量となり、その後、サイホン作用が継続したまま所定時間の間、減少して、サイホン作用が終了(t2)した後、さらに減少することがわかる。
これに対し、従来の排水ソケットには、特許文献1に示す各位置に絞り部が2箇所設けられ、中間管部材の径が本実施形態の中間管部材30の径よりもやや小さく形成されていた。この従来の排水ソケット内の排水瞬間流量は、排水ソケット内部においてサイホン作用が起動(t1)した後、増大する最大排水瞬間流量が、本発明の実施形態による排水ソケット24の最大排水瞬間流量よりも小さいことがわかる。
従って、本発明の実施形態による排水ソケット24において、サイホン作用が起動(t1)した後に、排水ソケット24流路内を流れる排水の排水瞬間流量が増大され(すなわち、排水の流速が上昇され)、サイホン作用の終了までのサイホン作用の持続期間(t1からt2までの期間)における排水の総排水量が増大されていることがわかる。
なお、本発明の実施形態による排水ソケット24におけるサイホン作用の終了時(t2)は、従来の排水ソケットにおけるサイホン作用の終了時(t2’)と比べて、若干早い時間で終了している。
【0035】
次に、図5に示すように、トラップ下降管出口部14cから垂下部中心軸線Yに沿った鉛直方向下方向に流下してきた排水が、ガイド部44の傾斜面44eに当たり、中間管部材30の中心軸線Xの水平方向に沿って流れるようにして、方向転換させられ、水平部42の水平部頂部42a又は中間管部材30の中間管部材頂部30cより下方を通過して中間管部材30内を流れることがわかる。
このように方向転換された排水は、便器本体側接続管部材28の屈曲部40の流路内で水シールを形成することがないために、水シールによる抵抗が生じることがないので、排水の流速が速くなり、中間管部材30の流路を滑らかに流れて速い流速を維持したまま、下流側の床下側接続管部材32の近傍に設けられた絞り部36に早期に到達して、サイホン作用を効率よく誘発する。
上述したように、ガイド部44は、排水の偏流板部として、排水の流れが中間管部材30の下方に片寄らないように偏流させ、中間管部材30に均一に排水を流す機能を備えている。
【0036】
次に、上述した本発明の実施形態による排水ソケットの作用効果を説明する。
床下側接続管部材32自体又はその近傍には、サイホン作用を誘発する絞り部36が設けられているので、この絞り部36により、効果的にサイホン作用を誘発させ、さらに、便器本体側接続管部材28の流路底面に形成されたガイド部44が、便器本体2のトラップ下降管出口部14cから鉛直方向下方に流下した排水を、この流路断面を水シールすることなく中間管部材30の流路下流方向に向けて流れるように方向転換させるようにしたので、便器本体側接続管部材28の流路内の流路内断面を水でシールする向きに上方に跳ね返して水シールを発生することによる排水の流れの抵抗を発生させずに、サイホン作用の起動後に排水ソケット24の流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用の持続中の排水量を増やすことができるので、排水性能をより向上させることができる。
【0037】
本発明の実施形態による排水ソケットによれば、ガイド部44が、屈曲部に形成され、便器本体側接続管部材28の水平部42の流路の水平部中心軸線Xの高さとほぼ同一の高さの位置に下流側に傾斜する傾斜面44eを備えているので、このガイド部44の傾斜面44eにより、便器本体2の排水路から流下した排水を、排水の流れの抵抗をより生じにくくしながら流れるように方向転換させることができ、そのため、サイホン作用の起動後に排水ソケット24の流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用の持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0038】
また、本発明の実施形態による排水ソケットによれば、ガイド部44の傾斜面44eの前後方向の幅の長さが、垂下部38の前後方向の幅の長さの20〜30%であるので、排水の流れに生じる抵抗をより小さくしながら、流れを方向転換させることができ、そのため、サイホン作用の起動後に排水ソケット24の流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0039】
また、本発明の実施形態による排水ソケットによれば、中間管部材30の流路断面積は、便器本体側接続管部材28の水平方向の最小流路断面積より大きいために、方向転換された排水の流れが、中間管部材30からより抵抗を受けにくくなり、滑らかに流れることができ、それにより、サイホン作用の起動後に排水ソケット24の流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0040】
さらに、本発明の実施形態による排水ソケットによれば、便器本体側接続管部材28の水平方向の最小流路断面積は、3800mm2〜4300mm2であるので、便器本体側接続管部材28の流路を通過する排水の流れが、より抵抗を受けにくくなり、滑らかに流れることができ、それにより、サイホン作用の起動後に排水ソケット24の流路内を流れる排水の流速を上げる事ができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0041】
さらに、本発明の実施形態による排水ソケットによれば、ガイド部44の傾斜面44eは、上流側で水平面上を半円弧状に延びる上端辺44aと、この上端辺44aの左端44b及び右端44cから下方に円弧状に延びる下端辺44dとにより囲まれる領域に形成される凹形状面からなるので、傾斜面44eの下端辺44dによって屈曲部40内の流路断面積を狭くすることなく、且つさらに傾斜面44eの表面積を円弧表面により湾曲して大きく形成することができるので、流下する排水の流れをより多く受けて方向転換させることができ、かつ、排水の流れの抵抗をより生じにくくししながら排水を滑らかに流すことができ、そのため、サイホン作用の起動後に排水ソケット24の流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0042】
さらに、本発明の実施形態による排水ソケットによれば、床面34より上方の床下側接続管部材32の屈曲している部分に設けられている絞り部36が、それほど強いサイホン作用を誘発するものではなく、排水の流れの抵抗を生じにくくししながら排水を滑らかに流すことができ、そのため、サイホン作用の起動後に排水ソケット24の流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【0043】
さらに、本発明の実施形態による排水ソケットを備えた水洗大便器によれば、サイホン作用の起動後に排水ソケット24の流路内を流れる排水の流速を上げることができ、サイホン作用持続中の排水量を増やして、排水性能をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 水洗大便器
2 便器本体
14c トラップ下降管出口部
24 排水ソケット
26 床下排水管
26a 床下排水管入口部
28 便器本体側接続管部材
28a 便器本体側接続管部材入口部
28b 便器本体側接続管部材出口部
30 中間管部材
30a 中間管部材入口部
30b 中間管部材出口部
30c 中間管部材頂部
32 床下側接続管部材
32a 床下側接続管部材入口部
32b 床下側接続管部材出口部
36 絞り部
38 垂下部
40 屈曲部
42 水平部
42a 水平部頂部
44 ガイド部
44a 上端辺
44b 左端
44c 右端
44d 下端辺
44e 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイホン式水洗大便器の便器本体の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結する排水ソケットであって、
上記便器本体の排水路の出口部に接続される便器本体側接続管部材と、
上記床下排水管の入口部と接続される床下側接続管部材と、
上記便器本体側接続管部材の出口部と床下側接続管部材の入口部とを接続するほぼ直線状に延びる中間管部材と、を有し、
上記床下側接続管部材自体又はその近傍には、サイホン作用を誘発する絞り部が設けられ、
上記便器本体側接続管部材の流路底面には、上記便器本体の排水路の出口部から流下した排水を、この流路断面を水シールすることなく上記中間管部材の流路下流方向に向けて流れるように方向転換させるガイド部が形成されていることを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
上記便器本体側接続部材は、上記便器本体の排水路の出口部に接続され且つ鉛直方向下方に延びる垂下部と、この垂下部から流路がほぼ直角に屈曲する屈曲部と、この屈曲部から水平方向に延び且つ上記中間管部材に接続される水平部とを備え、上記ガイド部は上記屈曲部に形成され、上記水平部の流路の中心軸線とほぼ同一の高さ位置に下流側を向いて下方へと傾斜した傾斜面を備えている請求項1記載の排水ソケット。
【請求項3】
上記ガイド部の傾斜面の前後方向の幅の長さは、上記垂下部の前後方向の幅の長さの20〜30%である請求項2記載の排水ソケット。
【請求項4】
上記中間管部材の流路断面積は、上記便器本体側接続管部材の水平方向の最小流路断面積より大きい請求項2又は3記載の排水ソケット。
【請求項5】
上記便器本体側接続管部材の水平方向の最小流路断面積は、3800mm2〜4300mm2である請求項4記載の排水ソケット。
【請求項6】
上記ガイド部の傾斜面は、上流側で水平面上を半円弧状に延びる上端辺と、この上端辺の左端及び右端から下方に円弧状に延びる下端辺とにより囲まれる領域に形成される凹形状面からなる請求項2乃至5の何れか1項に記載の排水ソケット。
【請求項7】
上記絞り部は、床面より上方の床下側接続管部材の屈曲している部分に設けられている請求項1乃至6の何れか1項に記載の排水ソケット。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の上記排水ソケットを備えた水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87537(P2013−87537A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230392(P2011−230392)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】