説明

排水トラップ

【課題】少量の水がヘアキャッチャーからトラップ本体内に落下する際に、水滴の落下音を抑制することができる排水トラップを提供する。
【解決手段】上面に洗い場床からの排水が流入する開口が形成されたトラップ本体と、前記開口に挿通されるとともに上下が貫通された封水筒と、前記トラップ本体または前記封水筒に着脱可能なヘアキャッチャーは、少量の水がヘアキャッチャーから前記排水トラップ本体内に流下する際に、前記封水筒の前記環状部内面に直接流下するように導く導水手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットバス等の浴室に設置される排水トラップに係り、特に髪の毛等のごみ類を捕集するヘアキャッチャを有する排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に排水トラップは、トラップ本体と、封水筒とによって、封水を形成し、排水トラップ下流側の臭気が浴室内に流入することを防止している。また、特許文献1および特許文献2では、浴室の洗い場で使用された水が排水トラップ内に流入する開口には、髪の毛等のごみ類を捕集するために、網目状のヘアキャッチャが着脱可能に取り付けられている。このように、開口にヘアキャッチャーを取り付けることで、排水トラップ内に髪の毛等のごみ類が流入することを防止することができる。
【0003】
【特許文献1】特許第3728688号公報
【特許文献2】特開2005−325524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、封水の上面とヘアキャッチャーの下面との間には、ヘアキャッチャーが常時、封水に浸ることがないように間隔を空けて取り付けられている。従って、少量の水がヘアキャッチャーからトラップ本体内に落下する際、直接封水面上に落下するため、水滴の落下音が発生するという問題点があった。このような水滴の落下音は使用者にとっては不快な音であるが、特許文献1や特許文献2では、この点に対して配慮されていなかった。
【0005】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、少量の水がヘアキャッチャーから排水トラップ内に流下する際に、水滴の落下音を抑制することができる排水トラップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る排水トラップでは、上述した課題を解決するために、上面に洗い場床からの排水が流入する開口が形成されたトラップ本体と、前記開口に挿通されるとともに上下が貫通された筒状部と、前記筒状部上端から外方側ヘ延出された環状部とを有する封水筒と、前記トラップ本体と前記封水筒とによって形成される封水面より上方であって、前記トラップ本体または前記封水筒に着脱可能に取り付けられるヘアキャッチャーと、を備えた排水トラップであって、前記ヘアキャッチャーは、少量の水がヘアキャッチャーから前記トラップ本体内に流下する際に、前記封水筒の前記環状部内面に直接流下するように導く導水手段を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る排水トラップによれば、少量の水がヘアキャッチャーから排水トラップ内に流下する際に、水滴の落下音を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る排水トラップの第1の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る排水トラップ1の縦断面図である。
この排水トラップ1は、トラップ本体2と、このトラップ本体を洗い場の床パンに取設するための取付フランジ6と、封水を形成するための封水筒7とをその主要な構成要素とする。
【0009】
これらの中、トラップ本体2は、合成樹脂等で成型され、上部が開口する略碗状のトラップ主要部3と、このトラップ主要部3と同材で成型された蓋部4との2部材を溶着させて一体に形成される。蓋部4には、その開口する内端に、雌ねじが螺刻された雌ねじ部4aが設けられる。
【0010】
トラップ本体2には、下部側中央に所定高さの溜水室WRが形成されるとともに、この溜水室WRの下部に連通するように、浴槽からの排水を集める流入管10が接続される浴槽排水取水部2aが形成されている。浴槽排水取水部2aには、流入する水流を略下方に折曲すべく上方に閉じた整流部材8が、溜水室WR内へ突出して設けられる。
【0011】
また、トラップ本体2には、溜水室WRの上方側と連通するように、トラップ排水部2bが形成され、排水トラップ1の排水を外部へ導出する排水管(図示せず)が接続されている。
【0012】
トラップ排水部2bが開口されたトラップ本体側面は、トラップ排水部2bの略下半まで立ち上げられ、溜水室WRの封水高さを形成する隔壁2cを構成する。
他方、取付フランジ6は、トラップ本体2の蓋部4の雌ねじと螺合する雄ねじが螺刻された雄ねじ部6aと、この雄ねじ部6a上端から外方へ延出するフランジ部6bとを有する。
【0013】
そして、封水筒7は、上下が解放された筒状部7aと、この筒状部7a上端から外方へ延出する環状部7bとを有する。筒状部7aと環状部7bとの接続部は、図2にその詳細を示すように、環状部7b上面より段落ちして平坦面7cが形成され、ここにヘアキャッチャ9の外縁が載置される。
【0014】
このトラップ本体2と取付フランジ6は、蓋部4の雌ねじ部4aと取付フランジ6の雄ねじ部6aとを螺合させることによって一体化される。
これに対し、封水筒7は、その筒状部7aをトラップ本体2の蓋部4に開口された取水口に挿入して、取付フランジ6のフランジ部6aに、封水筒7の環状部7bを載置させて着脱自在に取設される。
【0015】
このように、本実施形態に係る封水筒7の環状部7b及び取付フランジ6のフランジ部6aは、トラップ本体2の開口の内側に突出して上下に配設され、本発明の鍔部を構成する。
ヘアキャッチャ9は、図3に示すように、封水筒7の環状部7b頂部に載置される外環部9a内に、網部9bが形成され、網部9bの中央部には、円筒状の内環部9cが立ち上がっている。
【0016】
また、ヘアキャッチャ9は、取り外しのための取っ手部9dを備え、この取っ手部9dは、指で抓み易いように、外環部9a上に外方へ指向する略楕円の形状を有する板材で形成される。
【0017】
封水筒7の環状部7b上面には、上方側且つ内方側に向けて突出した突起部7dが、封水筒7の直径方向の対向位置に二つ立設される。この二つの突起部7dにおける下端側の最短距離は、封水筒7の環状部7bの内径と略等しく、したがって、ヘアキャッチャ9の直径以上の長さで離間している。また、二つの突起部7dにおける上端側は、下端側より内方側に突出するので、その最短距離は、ヘアキャッチャ9の直径未満の長さとなっている。また、突起部7dの上端側は、取っ手部9dの底面より下方側に配置される。
【0018】
この突起部7dは、封水筒7を取付フランジ6内に配設させる際の手がかりとなるとともに、ヘアキャッチャ9を所定の位置に取り付ける際のガイドの役割を果たすものである。
【0019】
このように、本実施形態に係る排水トラップの封水筒7表面には、突起や欠切部がないので、ごみが付着することもなく、清掃が容易になる。
【0020】
本実施形態に係る排水トラップ1は上記のように構成されており、以下ヘアキャッチャと封水筒の形状について、図2と図4を参照して説明する。
ヘアキャッチャ9は、外周縁部を形成する環状の外環部9aと、外環部9aより上方側に上部が形成され、ヘアキャッチャーの上下を貫通する円筒状の内環部9cと、外環部9aと内環部9cの間を橋渡しするように形成された多数の貫通孔を有する網目状の網部9bを有している。網部9bは、外環部9aから内方側に向けて下方に急傾斜して形成された外側傾斜網目部と、内環部9cから外方側に向けて下方に急傾斜して形成された内側傾斜網目部と、外側傾斜網目部と内側傾斜網目部との間に配置され、外方側に向けて下方に緩やかに傾斜された中間傾斜網目部とを備えている。中間傾斜網目部の下部(裏面)には全体的に貫通孔が形成されていない面状の面部9fが一体的に形成されている。また、面部9fは図4に示すように、外側傾斜網目部と内側傾斜網目部の下部に渡って延在して形成されていても良く、面部9f上に流れ込んだ水が溢れ出る際に、外側傾斜網目部側から排水されるように形成されていれば良い。本実施形態では、面部9f上面は外方側(外側傾斜網目部側)に向けて下り傾斜しており、且つ外側傾斜網目部裏面に位置する面部9fの上端の方が、内側傾斜網目部裏面に位置する面部9fの上端より低い位置になるように形成されている。このようにすることで、面部9f上に流れ込んだ水を外側傾斜網目部側から排水させることを可能としている。
【0021】
次に、ヘアキャッチャーの面部9fの外周縁と、封水筒7の環状部内面7eとの位置関係について説明する。本発明は、ヘアキャッチャー上からトラップ本体内部に落下する水が環状部内面7eに直接落下するように配置させている。そのため、ヘアキャッチャーの面部9fの外周縁の真下に封水筒7の環状部内面7eが位置するようにしている。言い換えると、封水筒7の環状部内面7eの真上にヘアキャッチャーの面部9fの外周縁が位置するようになっている。本実施形態では、封水筒の筒状部は、上部の内径より下部の内径の方が小さくなるように上方に向かって拡開する拡開部を有しており、この拡開部の真上にヘアキャッチャーの面部9fの外周縁が位置するようにしている。
【0022】
このように構成することで、少量の水がヘアキャッチャ9からトラップ本体内に落下する際、直接封水面上に落下し、水滴の落下音が発生することはない。
【0023】
また、本実施形態では、ヘアキャッチャ9の面部の下面9hの一部には突起部9eがあり、前記突起部9eは前記封水筒7の前記環状部内面7eの略真上に位置するように形成されている。そのため、ヘアキャッチャ9の上面9gを流れてきた水が、ヘアキャッチャ9の下面9hをつたい、直接封水面上に落下することを防いでいる。
【0024】
尚、面部は網目部の上面に一体的に形成しても良いが、網目部の下面に一体的に設けた方が、網目部が表面に突出するため、立体網目構造を維持することが可能であるため好ましい。立体網目構造は、髪の毛を点で支えることが可能であるため、髪の毛がヘアキャッチャーにべったり付くことがなく、ヘアキャッチャーから容易に髪の毛を取り除くことができる点で好ましい。
【0025】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る排水トラップの第1の実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1の部分拡大図。
【図3】本実施形態に係る排水トラップの部分斜視図。
【図4】本実施形態に係る排水トラップのヘアキャッチャ断面図
【符号の説明】
【0027】
1,1A,1B,1C 排水トラップ
2 トラップ本体
2a 浴槽排水取水部
2b トラップ排水部
2c 隔壁
3 トラップ主要部
4 蓋部
6 取付フランジ
6a 雄ねじ部
6b フランジ部
6c 掛止部
6d 平坦面
6e 突起部
7 封水筒
7a 筒状部
7b 環状部
7c 平坦面
7d 突起部
7e 環状部内面
8 整流部材
9 ヘアキャッチャ
9a 外環部
9b 網部
9c 内環部
9d 取っ手部
9e 突起部
9f 貫通穴が形成されていない面部
9g 上面
9h 下面
10 流入管
WR 溜水室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に洗い場床からの排水が流入する開口が形成されたトラップ本体と、
前記開口に挿通されるとともに上下が貫通された筒状部と、前記筒状部上端から外方側ヘ延出された環状部とを有する封水筒と、
前記トラップ本体と前記封水筒とによって形成される封水面より上方であって、前記トラップ本体または前記封水筒に着脱可能に取り付けられるヘアキャッチャーと、を備えた排水トラップであって、
前記ヘアキャッチャーは、少量の水がヘアキャッチャーから前記トラップ本体内に流下する際に、前記封水筒の前記環状部内面に直接流下するように導く導水手段を備えていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
前記導水手段は、前記ヘアキャッチャーの上面または下面に傾斜を形成し、且つ前記傾斜の最下部が、前記封水筒の前記環状部内面の直上に位置するように取付けられることを特徴とする請求項1記載の排水トラップ。
【請求項3】
前記導水手段は、前記ヘアキャッチャーの上面または下面の一部に貫通孔が形成されていない面部を有し、且つ前記面部から流れ落ちた水が前記封水筒の前記環状部内面に直接流下するように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の排水トラップ。
【請求項4】
前記封水筒の前記筒状部は、上部の内径より下部の内径の方が小さくなるように上方に向かって拡開する拡開部を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−191538(P2009−191538A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34351(P2008−34351)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】