説明

排水トラップ

【課題】流れ込んでくる排水を利用してトラップ内部を自己洗浄することができる自己洗浄機能を備えた排水トラップを提供すること。
【解決手段】泡止めパイプ4の下端開口部3aと封水カップ2の下底面との間に、平面視渦巻き状をした旋回流発生用のフィン4cを封水カップの周壁側に向けて放射状に複数枚配設し、該旋回流発生用フィンによって該フィン部分を通過する排水に周方向へ向かう旋回力を与え、泡止めパイプ4の下端開口部3aから封水カップ内2へ流れ込んでいく排水が上向きの旋回流となるようにした。また、泡止めパイプ4の下端開口部4aの先端縁を外方へ折り返して断面半円形状の環状折り返し部4bとするとともに、封水カップ2の下底面は断面半円形状の凹溝を封水カップの中心軸z−zの周りに一回転して得られる環状凹溝底面2bとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機の防水パンや床面の排水口に配設して用いられる排水トラップに関し、より詳しくは流れ込んでくる排水を利用してトラップ内部の自己洗浄機能を実現した排水トラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の排水トラップは、洗濯機の防水パンや床面の排水口に配設され、排水ホースから流れ込んでくる洗濯後の排水を床下に配設した排水管に排出するために用いられる。洗濯機の排水ホースから流れ込んできた排水は、ホースジョイントを通って排水トラップ内に流入し、排水トラップ内に設けた封水機構によって下水道につながる排水管側からの悪臭の逆流を防止しながら、流れ込んできた排水を排水管へ送り出す構造となっている(特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−97408号公報(全文、全図)
【特許文献2】特開2007−113225号公報(全文、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に記載の排水トラップを始めとして、従来から知られている排水トラップは、排水管側からの悪臭の逆流防止については極めて優れた効果を発揮できるものであった。しかしながら、この種の排水トラップは、排水トラップを一旦排水管に連結接続して使用を開始すると、排水トラップが壊れない限りそのまま使い続けるのが普通である。そのため、使用年月を経るに従ってトラップ内部にゴミやアカ、異物が付着して汚れ、最悪の場合、これらの付着物によってトラップ内の流水路が詰まってしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、流れ込んでくる排水を利用してトラップ内部を自己洗浄することができる自己洗浄機能を備えた排水トラップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、防水パンあるいは床面の排水口に嵌合固定されるとともに、適宜位置に形成された排水管接続部に排水管を接続される有底カップ状の排水トラップ本体を備え、該排水トラップ本体内には、該排水トラップ本体との間に所定の流水間隔を空けて嵌挿され、かつ、上端側に排水流出スリットを形成された有底筒状の封水カップと、該封水カップとの間に所定の流水間隔を空けて同心状に嵌挿され、かつ、その下端開口部で封水カップに連通する中空筒状の封水筒と、該封水筒との間に所定の流水間隔を空けて同心状に嵌挿され、かつ、その下端開口部で封水カップに連通する中空筒状の泡止めパイプとが配設され、前記排水トラップ本体の上面開口部には、先端部に排水ホースを接続されるホースジョイントが所定の蓋体機構によって着脱自在に嵌合配備されているとともに、該ホースジョイントの下端部に前記泡止めパイプの上端開口部が接続された排水トラップにおいて、前記泡止めパイプの下端開口部と前記封水カップの下底面との間に、平面視渦巻き状をした旋回流発生用のフィンを封水カップの周壁側に向けて放射状に複数枚配設し、該旋回流発生用フィンによって該フィン部分を通過する排水に周方向へ向かう旋回力を与え、泡止めパイプの下端開口部から封水カップ内へ流れ込んでいく排水が上向きの旋回流となるようにしたものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の排水トラップにおいて、前記泡止めパイプの下端開口部の先端縁を外方へ折り返して断面半円形状の環状折り返し部とするとともに、前記封水カップの下底面は断面半円形状の凹溝を封水カップの中心軸の周りに一回転して得られる環状の凹溝底面とし、該環状折り返し部と環状凹溝底面との間に前記旋回流発生用フィンを配設したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、泡止めパイプの下端開口部と封水カップの下底面との間に、平面視渦巻き状をした旋回流発生用のフィンを封水カップの周壁側に向けて放射状に複数枚配設し、該旋回流発生用フィンによって該フィン部分を通過する排水に周方向へ向かう旋回力を与え、泡止めパイプの下端開口部から封水カップ内へ流れ込んでいく排水が上向きの旋回流となるようにしたので、この旋回流によってトラップ内部を自己洗浄することができる。この自己洗浄は、排水が流れ込んでくる度に行なわれるので、長い年月を経てもトラップ内部にゴミやアカ、異物が付着して流水路が詰まってしまうというようなことがなくなり、メンテナンスフリーで使用することができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明によれば、泡止めパイプの下端開口部の先端縁を外方へ折り返して断面半円形状の環状折り返し部とするとともに、封水カップの下底面を、断面半円形になる凹弧状溝を封水カップの中心軸の周りに一回転して得られる環状凹溝底面とし、該環状折り返し部と環状凹溝底面との間に前記旋回流発生用フィンを配設したので、泡止めパイプの下端開口部から封水カップ内へ流れ込んでいく排水は、環状折り返し部と環状凹溝底面の曲面に沿ってその流れの向きを下向流から上向流に滑らかに変えられながら封水カップ内へと流れ込んでいく。このため、泡止めパイプの下端開口部から封水カップ内へ流れ込んでいく排水に乱流などが発生するようなことがなくなり、より高速の上向き旋回流を発生させることができるので、排水による洗浄効果をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図3は本発明に係る排水トラップの一実施の形態を示すもので、図1は実施の形態に係る排水トラップの全体構造を示す図、図2は泡止めパイプの構造を示す図、図3は封水カップの構造を示す図である。
【0011】
本発明の排水トラップは、図1に示すように、有底カップ状の排水トラップ本体1を備えており、この排水トラップ本体1を目皿受7によって防水パンA(あるいは床面)の排水口に嵌合固定するとともに、排水トラップ本体1の周壁面に形成された排水管接続部1aに下水道へつながる排水管Bを接続して用いるものである。
【0012】
前記排水トラップ本体1内には、上端側に排水流出スリット2aを備えた有底筒状の封水カップ2が排水トラップ本体1との間に所定の流水間隔を空けて同心状に嵌挿配置されている。また、該封水カップ2内には、その下端開口部で封水カップ2に連通する中空筒状の封水筒3が封水カップ2との間に所定の流水間隔を空けて同心状に嵌挿配置されている。この封水カップ2と封水筒3によって、下水道につながる排水管Bからの悪臭の逆流を防止するための封水(トラップ)機構が構成されている。
【0013】
また、前記封水筒3内には、その下端開口部4aで封水カップ2に連通する中空筒状の泡止めパイプ4が封水筒3との間に所定の流水間隔を空けて同心状に嵌挿配置され、ホースジョイント5から流れ込んでくる排水の泡立ちを防止する消泡機構が構成されている。
【0014】
また、前記排水トラップ本体1の上面開口部には、洗濯機の排水ホースCを接続するためのエルボ状のホースジョイント5を備えた目皿6が、目皿受7を介して挿脱自在に嵌合配備されており、前記泡止めパイプ4はこのホースジョイント5の下端部に挿入嵌合され、定位置に同心状に支承されている。
【0015】
前記泡止めパイプ4は、図2にその詳細を示すように、円筒状の中空筒体からなり、その内周面には環状段部4fが形成され、ホースジョイント5の外周面に形成された環状突起5a(図1)と係合することにより、ホースジョイント5の下端開口部に水密に嵌合接続されている。また、この泡止めパイプ4の下端側開口部4aの先端縁は外方へ折り返され、断面半円形状をした環状の折り返し部4bとされているとともに、該折り返し部4bの底面部には、目皿穴6aから流れ込んできた洗濯機などからの漏れ水を封水カップ2内へ誘導するための導水穴4dが複数形成されている。また、パイプ外周4カ所には位置合わせと補強のためのリブ4eが突設されている。
【0016】
前記封水カップ2は、図3にその詳細を示すように、有底筒状体からなり、上端側に位置して、泡止めパイプ4の下端開口部4aから流れ込んできた排水をオーバーフローさせて排水トラップ本体1側へ排出するための排水流出スリット2aが、周方向に所定の間隔をおいて複数開けられているとともに、その下底面は、断面半円形状をした凹溝を封水カップ2の中心軸z−zの周りに一回転して得られる環状の凹溝底面2bとされている。
【0017】
そして、前記泡止めパイプ4の環状折り返し部4bと前記封水カップ2の環状凹溝底面2bとの間には、流れ込んでくる排水を利用してトラップ内の自己洗浄を行なわせるための旋回流発生用フィン4cが設けられている。すなわち、図示例の旋回流発生用フィン4cは、図2にその詳細を示すように、その先端縁が封水カップ2の環状凹溝底面2bにぴったりと沿う高さからなる翼片からなり、この翼片を環状折り返し部4bの外周面に一体に立設して形成するとともに、平面視渦巻き状に曲げたもので、この平面視渦巻き状の翼片を封水カップ2の周壁側に向けて放射状に複数枚(図示例では12枚)形成配置したものである。
【0018】
封水筒3は、その下端部直径が前記泡止めパイプ4の環状折り返し部4bの先端縁と同一の中空筒体であって、上端にフランジ部3aを備えており、このフランジ部3aを介して目皿受7に挿脱自在に嵌合配備されている。この封水筒3の下端開口部内に前記泡止めパイプ4の外周面に突設したリブ4eを挿入係合させることにより、封水筒3と泡止めパイプ4の正確な位置決めを行なわせている。
【0019】
上記構成からなる排水トラップは、排水ホースCから洗濯後の排水が流れ込んでくると、ホースジョイント5を経て泡止めパイプ4に入り、泡止めパイプ4の下端開口部4aから封水カップ2内へ向けて排出されていく。この泡止めパイプ4から破水カップ2へ排出される際、排水は泡止めパイプ4の下端開口部4aと封水カップ2の下底面との間に配置された旋回流発生用フィン4cを通って封水カップ2へと排出される。このため、排水には旋回流発生用フィン4cの作用によって封水カップ2の周方向へ旋回力が与えられ、封水カップ2内へ流れ込んでいく排水は周方向に回転する上向きの旋回流となる。
【0020】
さらに、封水カップ2へ流れ込んでいく排水は、泡止めパイプ4の下端開口部4aに形成した環状折り返し部4bと封水カップ2の環状凹溝底面2bの曲面に沿って抵抗を受けることなく滑らかに流れ出ていくので、排水の流れの向きが下向き流から上向き流に反転される際に乱流などのエネルギーロスを生じるおそれがない。このため、旋回流発生用フィン4cを通って封水カップ2内へ流れ込んでいく排水は、エネルギーロスの少ない高速の上向き旋回流となる。
【0021】
高速の上向き旋回流となった排水は、封水カップ2の内壁面や封水筒3の外壁面を強力な旋回流で洗い流しながら封水カップ上端の排水流出スリット2aへ向かって流れていく。そして、排水流出スリット2aからオーバーフローして排水トラップ本体1内へ流れ落ち、排水管接続部1aを通じて排水管Aへと排出される。このようにして、封水カップ2や封水筒3の壁面に付着しているゴミやアカ、異物などが高速の上向き旋回流によって掻き落とされ、排水と一緒になって排水管Aへと排出される。
【0022】
上記排水によるトラップ内の洗浄は、排水ホースCから排水が流れ込んでくる度に自動的に行なわれる。このため、従来の排水トラップのようにトラップ内にゴミやアカ、異物などが付着したままとなるようなことがなくなり、排水トラップの流水路が詰まるようなことがなくなる。また、排水が流れ込んでくる度に上記自己洗浄が実行されるので、排水トラップ内の清掃の必要がなくなり、長期間にわたってメンテナンスフリーで使用することができる。
【0023】
なお、洗濯途中などに水が防水パンAに漏れ落ちることもあるが、この漏れ水は目皿6の目皿穴6aを通って封水筒3内に流れ込み、泡止めパイプ4の環状折り返し部4b部分に形成された導水穴4dから封水カップ2内へ誘導され、排水の流れに巻き込まれて排出される。
【0024】
以上説明した実施の形態では、旋回流発生用フィン4cを泡止めパイプ4側に一体形成したが、封水カップ2側に一体形成してよい。また、旋回流発生用フィン4cを独立した単体の部材として形成し、泡止めパイプ4の下端開口部4aと封水カップ3の環状凹溝底面2bとの間に嵌挿するように構成してもよい。
【0025】
また、ホースジョイント5や泡止めパイプ4などを目皿6と目皿受7を用いた蓋体機構によって排水トラップ本体1の上部開口面に取り付けるようにしたが、目皿6と目皿受7以外の他の蓋体機構によって取り付けるようにしてもよく、その取付手段に制限はない。
【0026】
また、配水管接続部1aを排水トラップ本体1の周壁部に形成し、配水管Bを水平横向きに引き出すようにしたが、配水管接続部1aを排水トラップ本体1の下底面側に形成し、配水管Bを垂直下向きに引き出すようにしてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る排水トラップの一実施の形態を示すもので、(a)は排水トラップの全体構造を示す縦断面図、(b)は図1中のI−I線断面図である。
【図2】図1中の泡止めパイプの構造を示すもので、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその底面図、(d)はその縦断面図である。
【図3】図1中の封水カップの構造を示すもので、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその底面図、(d)はその縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
A 防水パン
B 配水管
C 排水ホース
1 排水トラップ本体
1a 排水管接続部
2 封水カップ
2a 排水流出スリット
2b 環状凹溝底面
3 封水筒
3a フランジ部
4 泡止めパイプ
4a 下端開口部
4b 環状折り返し部
4c 旋回流発生用フィン
4d 導水穴
4e リブ
4f 環状段部
5 ホースジョイント
5a 環状突起
6 目皿
6a 目皿穴
7 目皿受
z−z 封水カップの中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水パンあるいは床面の排水口に嵌合固定されるとともに、適宜位置に形成された排水管接続部に排水管を接続される有底カップ状の排水トラップ本体を備え、該排水トラップ本体内には、該排水トラップ本体との間に所定の流水間隔を空けて嵌挿され、かつ、上端側に排水流出スリットを形成された有底筒状の封水カップと、該封水カップとの間に所定の流水間隔を空けて同心状に嵌挿され、かつ、その下端開口部で封水カップに連通する中空筒状の封水筒と、該封水筒との間に所定の流水間隔を空けて同心状に嵌挿され、かつ、その下端開口部で封水カップに連通する中空筒状の泡止めパイプとが配設され、前記排水トラップ本体の上面開口部には、先端部に排水ホースを接続されるホースジョイントが所定の蓋体機構によって着脱自在に嵌合配備されているとともに、該ホースジョイントの下端部に前記泡止めパイプの上端開口部が接続された排水トラップにおいて、
前記泡止めパイプの下端開口部と前記封水カップの下底面との間に、平面視渦巻き状をした旋回流発生用のフィンを封水カップの周壁側に向けて放射状に複数枚配設し、
該旋回流発生用フィンによって該フィン部分を通過する排水に周方向へ向かう旋回力を与え、泡止めパイプの下端開口部から封水カップ内へ流れ込んでいく排水が上向きの旋回流となるようにしたことを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
前記泡止めパイプの下端開口部の先端縁を外方へ折り返して断面半円形状の環状折り返し部とするとともに、前記封水カップの下底面は断面半円形状の凹溝を封水カップの中心軸の周りに一回転して得られる環状の凹溝底面とし、該環状折り返し部と環状凹溝底面との間に前記旋回流発生用フィンを配設したことを特徴とする請求項1記載の排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−256974(P2009−256974A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107708(P2008−107708)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(592139887)株式会社テクノテック (26)
【Fターム(参考)】