説明

排水処理装置及び処理方法

【課題】凝縮水中の油脂分に起因する熱交換器への悪影響を回避し、凝縮水を適切に冷却処理することを可能にする。
【解決手段】下水汚泥Wを乾燥又は炭化した際に発生する排ガスG1中の水分を凝縮させた凝縮水L1を処理する排水処理装置1であって、油脂を含む凝縮水L1を、凝縮水L1よりも低温の低温水L4と混合して一次冷却する混合器5と、混合器5から排出される混合水L2から油脂を分離する油水分離器6と、油水分離器6によって油脂が除去された水L3を二次冷却する熱交換器7とを備える排水処理装置1。また、熱交換器7によって二次冷却した水の一部を低温水L4として混合器5に供給することができる。さらに、混合器5は、混合水L2の温度が油脂の凝固点以下となるように、凝縮水L1及び低温水L4を混合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥等の有機汚泥を乾燥又は炭化した際に発生する排ガス中の水分を凝縮させた凝縮水を処理する装置及び方法に関する。
【0002】
下水汚泥は、有機分を多く含むため、将来の燃料として有望視されているが、その反面、水分を多く含むため、燃料として用いるためには水分を除去する必要がある。近年、下水汚泥等の有機汚泥を乾燥・炭化するなどして水分を除去し、燃料化することが行われ始めたが、有機汚泥の燃料化における課題の一つとして、有機汚泥の加熱に伴って発生する多量の水蒸気を含む悪臭ガスの処理がある。
【0003】
上記悪臭ガスを処理するには、800℃以上の高温で悪臭ガスを燃焼させて処理するのが最も簡便で一般的な方法である。しかし、この燃焼脱臭に灯油等の化石燃料を使用すると、高品位燃料を用いて低品位燃料を製造することに等しくなるため、有意義でなく、また、CO2の発生を伴うため、地球温暖化対策の観点からも好ましいとは言えない。
【0004】
温暖化対策としては、特許文献1、2に記載のように、凝縮器(コンデンサ)によって悪臭ガスから水分を除去し、排水処理とガス脱臭処理とに分けることが好ましい。これによって、化石燃料を使用せずに悪臭ガスを処理することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−016913号公報
【特許文献2】特開2009−274001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンデンサの凝縮水(悪臭ガス中の水分を凝縮させたもの)を排水処理して放流するには、凝縮水を熱交換器(冷却器)に通すなどして、最終的に40℃以下に冷却する必要がある。
【0007】
その一方で、有機汚泥の乾燥・炭化装置から排出されるガスには、水蒸気とともに、ラード等の油脂類が含まれることがあり、その油脂分の一部は、コンデンサの内部に付着し、残りは、凝縮水に混入して熱交換器に流れ込む。一般に使用されるプレート式等の熱交換器は、粘性の高い流体への耐性が低く、油脂が流れ込むと、各所に付着して閉塞トラブルを引き起こす。その結果、冷却能力の低下や送水不良を招き、凝縮水の冷却不足などの問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、凝縮水中の油脂分に起因する冷却器への悪影響を回避し、凝縮水を適切に冷却処理することが可能な排水処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、有機汚泥を乾燥又は炭化した際に発生する排ガス中の水分を凝縮させた凝縮水を処理する排水処理装置であって、油脂を含む前記凝縮水を、該凝縮水よりも低温の低温水と混合して一次冷却する混合器と、該混合器から排出される混合水から油脂を分離する油水分離器と、該油水分離器によって油脂が除去された水を二次冷却する冷却器とを備えることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、凝縮水を一次冷却した後に油水分離するため、凝縮水中の油脂を効率よく除去することができ、冷却器に油脂が流れ込むのを回避することができる。このため、凝縮水中の油脂分に起因する冷却器への悪影響を回避し、凝縮水を適切に冷却処理することが可能になる。また、凝縮水の一次冷却に、低温水との直接混合による冷却を用いるため、油脂に起因するトラブルを回避しながら凝縮水を一次冷却することができる。
【0011】
上記排水処理装置において、前記冷却器によって二次冷却した水の一部を前記低温水として前記混合器に供給することができる。排水処理装置内で生成した水の一部を循環利用するため、排水処理装置内の総水量を増加させずに、凝縮水を一次冷却することができる。
【0012】
上記排水処理装置において、前記混合器が、前記混合水の温度が前記油脂の凝固点以下又は該凝固点の近傍温度となるように、前記凝縮水及び低温水を混合することができ、これによれば、凝縮水に含まれる油脂を固化させた状態で油水分離することができる。
【0013】
上記排水処理装置において、前記混合器が、前記混合水の温度が前記油脂の凝固点以下又は該凝固点の近傍温度となるように、前記凝縮水及び低温水を混合することができる。
【0014】
上記排水処理装置において、前記冷却器を、前記油水分離器によって油脂が除去された水を冷媒と熱交換して冷却する熱交換器とすることができる。
【0015】
また、本発明は、有機汚泥を乾燥又は炭化した際に発生する排ガス中の水分を凝縮させた凝縮水を処理する排水処理方法であって、油脂を含む前記凝縮水を、該凝縮水よりも低温の低温水と混合して一次冷却し、該一次冷却した混合水から油脂を分離し、該油脂が除去された水を冷却器によって二次冷却することを特徴とする。本発明によれば、前記発明と同様に、凝縮水中の油脂分に起因する冷却器への悪影響を回避することができるとともに、油脂に起因するトラブルを回避しながら凝縮水を一次冷却することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、凝縮水中の油脂分に起因する冷却器への悪影響を回避し、凝縮水を適切に冷却処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】有機汚泥の燃料化処理を示すフローチャートである。
【図2】本発明にかかる排水処理装置の一実施の形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、有機汚泥として下水汚泥を用いる場合を例にとって説明する。
【0019】
本発明の実施形態の説明に先立ち、下水汚泥の燃料化処理について、図1を参照しながら簡単に説明する。
【0020】
下水汚泥の燃料化処理は、大別して、下水汚泥Wを乾燥又は炭化させて水分を除去する乾燥・炭化工程(以下、単に「乾燥工程」という)2と、乾燥工程2で発生した排ガス(悪臭ガス)G1に含まれる水分を凝縮させ、気液分離する凝縮工程3と、凝縮工程3で分離した液相分(凝縮水)L1を水分と油脂分に分離する排水処理工程4とから構成される。尚、燃料として再利用するのは、乾燥工程2で生成する乾燥汚泥W’、凝縮工程3で分離する気相分(可燃性ガス)G2、及び、排水処理工程4で回収する油脂分Fである。
【0021】
次に、本発明にかかる排水処理装置の一実施の形態について、図1、図2を参照しながら説明する。
【0022】
図2に示す排水処理装置1は、図1の排水処理工程4で用いるものである。この排水処理装置1は、図1の凝縮工程3から排出され、油脂分が混入した凝縮水L1を、後述の低温水L4と混合する混合器5と、混合器5で生成された混合水L2を油水分離する油水分離器6と、油水分離器6で油脂分Fが除去された分離水L3を冷却する熱交換器7と、熱交換器7で冷却した低温水L4を一時的に貯留する貯水槽8と、低温水L4を浄化する浄化装置9等から構成される。貯水槽8には、低温水L4を混合器5に導く第1のポンプ8aと、低温水L4を浄化装置9に導く第2のポンプ8bとが付設される。
【0023】
次に、上記構成を有する排水処理装置1の動作について、図2を中心に参照しながら説明する。
【0024】
図1の凝縮工程3から凝縮水L1が搬送されると、混合器5において、約90℃の凝縮水L1を、貯水槽8から供給される低温水L4と撹拌混合して一次冷却し、凝縮水L1に含まれる油脂を固化させる。
【0025】
ここで、凝縮水L1に含まれる油脂の主要成分は、パルチミン酸とステアリン酸であり、これらの凝固点は65〜70℃である。このため、混合器5では、低温水L4の混合比等を調整し、混合水L2の温度が上記の凝固点以下となるように冷却する。尚、ステアリン酸の凝固点に比べ、パルチミン酸の凝固点の方が低いため、混合器5では、混合水L2の温度がパルチミン酸の凝固点以下となるように冷却すればよく、例えば、60℃以下となるように冷却すればよい。
【0026】
次いで、混合器5で生成した混合水L2を油水分離器6に導入し、撹拌羽根6aによって撹拌しながら油水分離する。この際、固化した油脂Fは、比重により水面に浮上し、排油口6bから排出される。排出された固形油脂Fは、回収し、燃焼炉に投入するなどして燃料として利用する。一方、油脂Fが除去された分離水L3は、油水分離器6の底部から排出され、熱交換器7に導かれる。
【0027】
次に、熱交換器7において、油水分離器6からの分離水L3を、別途供給される冷媒と熱交換し、冷却後の水温が45℃以下となるように二次冷却する。熱交換器7から排出される低温水L4は、貯水槽8に導入され、一時的に貯留される。
【0028】
その後、貯水槽8に貯留した低温水L4の一部を、第1のポンプ8aによって混合器5に供給し、図1の凝縮工程3から搬送される凝縮水L1の冷却に利用する。また、貯水槽8に貯留した低温水L4の残りを、第2のポンプ8bによって浄化装置9に導き、脱窒処理等の廃水処理を施して無害化する。浄化装置9に導入された低温水L4は、浄化処理の過程で40℃以下にまで降温し、放流可能な状態となる。
【0029】
以上のように、本実施の形態によれば、凝縮工程3からの高温の凝縮水L1を一次冷却した後に油水分離器6に導入するため、凝縮水L1に含まれる油脂を固化した状態で、油水分離することができる。このため、油脂分と水分を分離し易くなり、凝縮水L1中の油脂を効率よく除去することが可能になる。そして、このようにして油脂を除去した分離水L4を熱交換器7に導入するため、熱交換器7に油脂が流れ込むことがなく、冷却能力の低下や送水不良を防止することが可能になる。
【0030】
また、本実施の形態では、凝縮水L1の一次冷却(油水分離前の冷却)に、熱交換器による冷却ではなく、低温水L4との直接混合による冷却を用いる。この冷却方式は、凝縮水L1中の油脂が付着しても冷却能力の低下や閉塞トラブルを引き起こす危険性が低いため、油脂に起因するトラブルを回避しながら凝縮水L1を一次冷却することができる。
【0031】
さらに、凝縮水L1の混合冷却に、熱交換器7で生成した低温水L4の一部を利用するため、放流水(処理水L5)の増加を伴うことがない。すなわち、外部から冷却水を供給して凝縮水L1と混合した場合には、排水処理装置1内の総水量が冷却水の分だけ増加するが、本実施の形態では、排水処理装置1内で生成した水を循環利用するため、排水処理装置1内の総水量を増加させずに、凝縮水L1を一次冷却することができる。
【0032】
尚、上記実施の形態においては、有機汚泥として下水汚泥を用いる場合を例示したが、下水汚泥以外にも、製紙汚泥、ビルピット汚泥、食品汚泥等の有機汚泥を用いることができる。
【0033】
また、凝縮水L1の一次冷却に際し、混合水L2の温度が油脂の凝固点以下となるように、凝縮水L1と低温水L4を混合するが、必ずしも、凝固点に達するまで降温させる必要はない。すなわち、混合水L2は、混合器5から油水分離器6への搬送時や油水分離器6での処理過程で、ある程度自然冷却されるのに加え、凝縮水L1中の油脂は、混合水5を油水分離する際に固化していれば足りるため、混合器5から排出される混合水L2の温度は、油脂の凝固点よりも多少高め(凝固点の近傍温度)であってもよい。
【0034】
さらに、分離水L3を熱交換器7で二次冷却するが、必ずしも、二次冷却用の冷却器として熱交換器を用いる必要はなく、熱交換器以外の冷却器を用いることもでき、油脂に弱い冷却器であれば、本発明は特に有用となる。
【符号の説明】
【0035】
1 排水処理装置
2 乾燥・炭化工程
3 凝縮工程
4 排水処理工程
5 混合器
6 油水分離器
6a 撹拌羽根
6b 排油口
7 熱交換器
8 貯水槽
8a 第1のポンプ
8b 第2のポンプ
9 浄化装置
G1 乾燥・炭化工程の排ガス
G2 凝縮工程で気液分離した気相分
L1 凝縮工程で気液分離した液相分(凝縮水)
L2 混合水
L3 分離水
L4 低温水
L5 処理水
F 油脂
W 下水汚泥
W’ 乾燥汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機汚泥を乾燥又は炭化した際に発生する排ガス中の水分を凝縮させた凝縮水を処理する排水処理装置であって、
油脂を含む前記凝縮水を、該凝縮水よりも低温の低温水と混合して一次冷却する混合器と、
該混合器から排出される混合水から油脂を分離する油水分離器と、
該油水分離器によって油脂が除去された水を二次冷却する冷却器とを備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記冷却器によって二次冷却した水の一部を前記低温水として前記混合器に供給することを特徴とする請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記混合器は、前記混合水の温度が前記油脂の凝固点以下又は該凝固点の近傍温度となるように、前記凝縮水及び低温水を混合することを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記混合器は、前記混合水の温度がパルチミン酸の凝固点以下又は該凝固点の近傍温度となるように、前記凝縮水及び低温水を混合することを特徴とする請求項3に記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記冷却器が、前記油水分離器によって油脂が除去された水を冷媒と熱交換して冷却する熱交換器であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項6】
有機汚泥を乾燥又は炭化した際に発生する排ガス中の水分を凝縮させた凝縮水を処理する排水処理方法であって、
油脂を含む前記凝縮水を、該凝縮水よりも低温の低温水と混合して一次冷却し、
該一次冷却した混合水から油脂を分離し、
該油脂が除去された水を冷却器によって二次冷却することを特徴とする排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−240251(P2011−240251A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114468(P2010−114468)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】