説明

排水床構造及びその施工方法

【課題】 本発明は、排水床を構成する軽量気泡コンクリート床パネルが排水溝を兼ねるため構造が簡単で排水溝部材を省略出来、施工も容易な排水床構造及びその施工方法を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 敷き込まれたALC床パネル3の床2の奥行き方向aの前方b表面に水平面からなる底面5aを有する排水溝5が建物壁面に対して平行に形成され、該排水溝5の底面5aには長手方向に勾配を有する勾配シート6が敷設され、ALC床パネル3及び勾配シート6の表面を防水処理して構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床構造としては、実用新案登録第2598008号公報(特許文献1)、特開2000−064415号公報(特許文献2)及び特開2002−070151号公報(特許文献3)に記載されたように、軽量気泡コンクリート(ALC)パネルの脇に板金加工された排水溝部材を設けたり、溝付きの押出成形版が使用されている。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2598008号公報
【特許文献2】特開2000−064415号公報
【特許文献3】特開2002−070151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の従来例では、板金加工された排水溝部材や溝付きの押出成形版が別部品として必要になるため部品コストがかかり、施工が面倒であった。
【0005】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、排水床を構成する軽量気泡コンクリート床パネルが排水溝を兼ねるため構造が簡単で排水溝部材を省略出来、施工も容易な排水床構造及びその施工方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明に係る排水床構造は、軽量気泡コンクリート床パネルを敷き込んで構成された住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床構造であって、前記敷き込まれた軽量気泡コンクリート床パネルの床の奥行き方向の前方表面には水平面からなる底面を有する排水溝が建物壁面に対して平行に形成され、該排水溝の底面には長手方向に勾配を有する勾配シートが敷設され、且つ前記軽量気泡コンクリート床パネル表面及び前記勾配シートの表面が防水処理を施されてなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る排水床の施工方法は、軽量気泡コンクリート床パネルを敷き込んで構成された住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床の施工方法において、片方の外側表面に水平面からなる底面を有する排水溝が辺に対して平行に形成された軽量気泡コンクリート床パネルを床の奥行き方向の前方に敷設し、前記排水溝の底面に長手方向に勾配を有する勾配シートを敷設し、次いで、前記軽量気泡コンクリート床パネル表面及び前記勾配シートの表面に防水処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る排水床構造によれば、住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床を構成する軽量気泡コンクリート床パネルの表面に排水溝が形成されたことで、該軽量気泡コンクリート床パネルが排水溝を兼ねるため構造が簡単で排水溝部材を省略出来、施工も容易である。また、板金加工の排水溝部材と違って軽量気泡コンクリート床パネルが不燃材であるため排水溝を含めて不燃性を維持することが出来る。また、軽量気泡コンクリート床パネルの表面に形成した排水溝に長手方向に勾配を有する勾配シートを敷設したことで該勾配シートの長手方向の排水がスムーズに出来る。
【0009】
また、本発明に係る排水床の施工方法によれば、上記排水床構造を容易に施工することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図により本発明に係る排水床構造及びその施工方法の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る排水床構造の第1実施形態を示す分解説明図、図2は本発明に係る排水床構造の第2実施形態を示す分解説明図、図3は本発明に係る排水床構造の第3実施形態を示す模式断面図、図4は勾配シートの他の構成を示す図である。
【0011】
図1において、1は軽量気泡コンクリート床パネル(以下、「ALC床パネル」という)3を敷き込んで構成された住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床構造である。敷き込まれたALC床パネル3の床2の奥行き方向aの前方b表面には該ALC床パネル3の長手方向の全長に亘って水平面からなる底面5aを有する断面コ字形状の排水溝5が図示しない建物壁面に対して平行に形成されている。
【0012】
図1のALC床パネル3はその短手方向が床2の奥行き方向aに平行に配置され、梁材4上に載置して固定支持される。
【0013】
排水溝5の底面5aには、長手方向に勾配を有する勾配シート6が敷設される。勾配シート6は塩化ビニル製のシートとすることが出来、ALC床パネル3の長手方向の長さに対応する長さを有して構成される。
【0014】
排水溝5が形成されるALC床パネル3は、例えば厚さ100mm程度とされ、底面5aの幅が75mm程度、深さが25mm程度の排水溝5を形成することが出来る。一方、勾配シート6は長さが1000mm〜2000mm程度、幅が75mm程度、厚さが3mm〜10mm程度とすることが出来る。
【0015】
このように、片方の外側表面に辺に対して平行に排水溝5が形成されたALC床パネル3を床2の奥行き方向aの前方bに敷設し、該排水溝5の底面5aに勾配シート6を接着等により敷設した後、該ALC床パネル3表面及び勾配シート6の表面に防水処理を施す。防水処理としては、液体の塗膜防水や防水シートを敷設する。
【0016】
ALC床パネル3を支持する梁材4は床2の奥行き方向aにおいて高低差が設けられ、該床2の前方bが下方に傾斜する水勾配が設けられている。従って、傾斜した床2面を奥行き方向aの前方bに集められた雨水は一旦、排水溝5に集水され、該排水溝5の底面5aに貼着された勾配シート6により図1の右方向から左方向へ排水される。
【0017】
図2のALC床パネル3はその長手方向が床2の奥行き方向aに平行に配置され、梁材4上に載置して固定支持される。そして、敷き込まれたALC床パネル3の奥行き方向aの前方b表面には排水溝5が図示しない建物壁面に対して平行に形成されている。ALC床パネル3の短手方向の全長に亘って設けられた排水溝5は直線上に連続されており、該連設された複数のALC床パネル3に亘る排水溝5の底面5aに勾配シート6が接着等により敷設され、該ALC床パネル3表面及び勾配シート6の表面に防水処理が施される。
【0018】
そして、傾斜した床2面を奥行き方向aの前方bに集められた雨水は一旦、排水溝5に集水され、該排水溝5の底面5aに貼着された勾配シート6により図2の左方向から右方向へ排水される。
【0019】
図3は敷き込まれたALC床パネル3の床2の奥行き方向aの前方b表面に該ALC床パネル3の長手方向の全長に亘って水平面からなる底面5aを有する断面L字形状の排水溝5が図示しない建物壁面に対して平行に形成されており、該排水溝5が形成されたALC床パネル3の小口面に手摺りの壁7が当接されて、全体的に断面コ字形状の排水溝5として構成された一例である。他の構成は前記各実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。
【0020】
前記各実施形態の勾配シート6は勾配を形成した単体の防水シートであったが、図4に示す勾配シート6は幅が同一で長さが異なり厚さが一定の複数の防水シート8を重ねて接着して勾配を形成した場合の一例である。このような勾配シート6も有効である。
【0021】
上記構成により、住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の床2を構成するALC床パネル3の表面に排水溝5が形成されたことで、該ALC床パネル3が排水溝5を兼ねるため構造が簡単で排水溝部材を省略出来、施工も容易である。また、板金加工の排水溝部材と違ってALC床パネル3が不燃材であるため排水溝5を含めて不燃性を維持することが出来る。また、ALC床パネル3の表面に形成した排水溝5に長手方向に勾配を有する勾配シート6を敷設したことで該勾配シート6の長手方向の排水がスムーズに出来る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の活用例として、住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床構造及びその施工方法に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る排水床構造の第1実施形態を示す分解説明図である。
【図2】本発明に係る排水床構造の第2実施形態を示す分解説明図である。
【図3】本発明に係る排水床構造の第3実施形態を示す模式断面図である。
【図4】勾配シートの他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1…排水床構造
2…床
3…ALC床パネル
4…梁材
5…排水溝
5a…底面
6…勾配シート
7…手摺りの壁
8…防水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量気泡コンクリート床パネルを敷き込んで構成された住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床構造であって、
前記敷き込まれた軽量気泡コンクリート床パネルの床の奥行き方向の前方表面には水平面からなる底面を有する排水溝が建物壁面に対して平行に形成され、該排水溝の底面には長手方向に勾配を有する勾配シートが敷設され、且つ前記軽量気泡コンクリート床パネル表面及び前記勾配シートの表面が防水処理を施されてなることを特徴とする排水床構造。
【請求項2】
軽量気泡コンクリート床パネルを敷き込んで構成された住宅のベランダ、バルコニー或いは集合住宅の外廊下等の排水床の施工方法において、
片方の外側表面に水平面からなる底面を有する排水溝が辺に対して平行に形成された軽量気泡コンクリート床パネルを床の奥行き方向の前方に敷設し、前記排水溝の底面に長手方向に勾配を有する勾配シートを敷設し、次いで、前記軽量気泡コンクリート床パネル表面及び前記勾配シートの表面に防水処理を施すことを特徴とする排水床の施工方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−224506(P2007−224506A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43622(P2006−43622)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)