排水施設共済管理システム
【課題】排水施設に関する一般知識に乏しい居住者に対しても、排水ハザードの発生防止を系統的に支援することができ、かつ、排水ハザード発生時の費用負担を軽減するための共済システムの適正化にも寄与する排水施設共済管理システムを提供する。
【解決手段】排水施設共済管理システム1は、建物の浄化槽の保守点検契約を締結した契約者の特定情報を、浄化槽に随伴する排水施設の点検結果情報と対応付けて記憶した保守点検契約データベース6fと、この登録された契約者を、排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムの加入者として登録する共済登録ソフトウェア6bと、該排水施設のハザード発生の予測に寄与する排水ハザード予測情報を作成する排水ハザード評価・管理ソフトウェア6cと、作成された排水ハザード予測情報を、当該契約者の特定情報と対応付けて出力するモニタ12あるいはプリンタ13、等を有する。
【解決手段】排水施設共済管理システム1は、建物の浄化槽の保守点検契約を締結した契約者の特定情報を、浄化槽に随伴する排水施設の点検結果情報と対応付けて記憶した保守点検契約データベース6fと、この登録された契約者を、排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムの加入者として登録する共済登録ソフトウェア6bと、該排水施設のハザード発生の予測に寄与する排水ハザード予測情報を作成する排水ハザード評価・管理ソフトウェア6cと、作成された排水ハザード予測情報を、当該契約者の特定情報と対応付けて出力するモニタ12あるいはプリンタ13、等を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水施設共済管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−344331号公報
【0003】
排水施設を使用する店舗や家屋等の建物では、正常に排水が行なえなくなるトラブル(以下、排水ハザードという)が、例えば、排水発生源施設(トイレ、台所シンク、風呂場など)や排水管の破損ないし閉塞など、様々な要因により発生する。特に、施設管理者が存在しない一戸建て住居等の場合、排水発生源施設の定期的な点検や洗浄などの保守作業が長期間なおざりになっていることも多く、排水ハザードが発生して漸く気付く、といったことも珍しくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が検討する限り、上記の排水ハザードの具体的な原因は、宅地内の地盤沈下や植栽の成長による排水管への木の根の侵入、さらには家族構成の変化に起因するもの(例えば便器へのオムツや生理用品の誤投入、子供のいたずらなどによる便器へのおもちゃや異物あるいは大量のトイレットペーパー投入、ペット汚物の投入など)などが多きを占め、意識の改善により防止できるものが大半である。そして、一旦排水ハザードが発生した場合は、排水の漏出や逆流による損害、さらには修繕不能な詰まり発生による設備交換など、思いもよらない出費が待受けていることもある。また、排水施設の修繕や更新費用は高額となることも多い。しかし、従来は、例えば特許文献1のごとく、下水道配管図などを原始的な住宅情報の一環として提供するシステムが精々存在する程度であり、排水施設に関する一般知識に乏しい居住者に対し、その保守に関する意識を改善し、排水ハザードの発生防止を系統的に支援できるような管理システムは、従来、全く考慮されてこなかった。
【0005】
本発明の課題は、排水施設に関する一般知識に乏しい居住者に対しても、排水ハザードの発生防止を系統的に支援することができ、かつ、排水ハザード発生時の費用負担を軽減するための共済システムの適正化にも寄与する排水施設共済管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の排水施設共済管理システムは、
建物の排水施設の保守点検契約を締結した契約者の特定情報を、該排水施設の点検結果情報と対応付けて記憶した保守点検契約データベースと、
保守点検契約データベースに登録された契約者を、排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムの加入者として登録する共済登録手段と、
排水施設の点検結果情報に基づいて、該排水施設のハザード発生の予測に寄与する排水ハザード予測情報を作成する排水ハザード予測情報作成手段と、
共済登録手段に加入登録済みの保守点検契約について、作成された排水ハザード予測情報を、当該契約者の特定情報と対応付けて出力する排水ハザード予測情報出力手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、排水施設の保守点検契約データベースに登録されている契約者に、排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムへの加入を斡旋し、その加入者を共済登録手段に登録するとともに、保守点検契約データベースに蓄積されている各建物の排水施設の点検結果情報を利用して、個々の排水施設における将来的なハザード発生の予知やその低減に寄与する排水ハザード予測情報を作成し、作成された排水ハザード予測情報を、契約者の特定情報と対応付けて出力する。これにより、次のような効果が達成される。
【0008】
(1)排水施設の点検結果情報に基づいて排水ハザード予測情報を作成することで、どの排水施設にてハザード発生が懸念されるかを、契約者にいち早く通知することができ、排水施設の保守に対する意識を高めることができる。
(2)この排水ハザード予測情報の内容に基づいて、修繕などの適切な処置を施すことで、放置すれば深刻なハザードにつながる不具合個所を早期に改善することができ、契約者が蒙る可能性のあるハザード損害が最小限に食い止められ、また、排水設備の長持ちを図ることができる。また、各契約者から徴収・プールされている共済運用資産の過剰な持ち出しを回避することができ、運用の健全化を図ることができる。
【0009】
排水管路などの建物の排水施設は建物毎に固有の仕様を有するので、多数の世帯の排水施設を系統的に管理してハザード発生予防を図るには、個々の建物の排水施設に関する情報を集結してデータベース化することが、まず必要である。しかし、管理を希望する多数の所帯の排水施設データをゼロから収集するのは容易なことではないし、築後長く経過している建物については、排水系統の管理図面などが残っていないケースも多い。
【0010】
ところで、わが国では下水道が完備していない地域が非常に多く存在し、こうした地域での生活排水等は、見た目にそれほど不潔感を与えないため、そのまま側溝や水路に流されることも多かったが、水質汚濁に関する自治体レベルでの規制が高められた結果、建物毎あるいは区域ごとに浄化槽が設けられるようになってきた。浄化槽は、微生物の働きを利用して汚水を浄化する装置であるから、微生物が活動しやすい環境を保つよう定期的な保守点検が必須であり、また、法定検査を受けることが、浄化槽法により設置者に義務づけられている。こうした背景を受けて、浄化槽の設置者は、専門の業者に浄化槽の保守点検を委託する契約を結ぶこととなる。浄化槽の状態を良好に保つには、浄化槽そのものの管理だけでなく、浄化槽を経由した排水系統の全体がスムーズかつ正常に機能するかどうかも重要である。
【0011】
上記のような保守点検契約を締結する際には、浄化槽だけでなく、これに随伴する排水施設も保守点検の対象に含まれるので、この保守点検契約に則って実施される排水施設の点検結果情報は保守点検契約データベースに容易に蓄積することができる。そこで、本発明では、浄化槽の保守点検契約の締結を契機として、そのデータベースに各建物の排水施設の点検結果情報を蓄積することが可能である。このようにすると、個々の排水施設の状態を系統的に把握できるので、これを共済運用の基礎情報として利用することにより、従来全く存在していなかった排水施設の共済システムを、健全で有益な運用ベースのもとで実現することが可能となる。
【0012】
保守点検契約データベースには排水施設に対する点検結果情報は、その点検日と対応付けて記憶しておくことができる。排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースにおける最終点検日から一定日数経過させたハザード予測対象日を設定するとともに、最終点検日を有する点検結果情報に対しハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を施すことにより、排水施設のハザード予測対象日における状態推定情報を作成し、当該状態推定情報に基づいて排水ハザード予測情報を作成するものとすることができる。ハザード予測対象日は、例えば現在の日付を採用することができるが、現在よりも一定日数後の日付として設定することも可能である。この構成によると、データベース上にて把握される排水施設の最終点検日における点検結果情報に、ハザード予測対象日に至るまでの施設状態の経時的な悪化を上乗せして考慮することで、ハザード予測対象日、例えば現在の施設状態を推定することができ、これを用いて、施設の再点検や修繕などの必要性を利用者に適切に把握させることが可能となる。
【0013】
保守点検契約データベースには、排水施設の、ハザード発生に関与する設置環境因子を特定する環境特定情報を記憶しておくことができる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースに記憶されている点検結果情報と環境情報との双方に基づいて、排水ハザード予測情報を作成するものとすることができる。排水施設の状態は、該施設周辺の環境に応じて悪化の度合いが異なる。そこで、上記構成では、保守点検契約データベースに前述の点検結果情報とともに施設別の環境情報も蓄積しておき、その双方を用いることで、作成される排水ハザード予測情報の信頼性を高めることができる。
【0014】
また、保守点検契約データベースには、排水施設の、ハザード発生に関与する仕様因子を特定するための仕様特定情報を記憶しておくことができる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースに記憶されている点検結果情報と仕様特定情報との双方に基づいて、排水ハザード予測情報を作成するものとすることができる。排水施設の状態は、同じ環境であっても施設の仕様により悪化の度合いが異なるし、また、排水ハザードが実際に発生したときの復旧に要する手間や費用にも開きがある。そこで、上記構成では、保守点検契約データベースに前述の点検結果情報とともに排水施設の仕様特定情報も蓄積しておき、その双方を用いることで、作成される排水ハザード予測情報の信頼性を高めることができる。
【0015】
さらに、保守点検契約データベースには、建物をなす家屋の居住者の性別、年齢層及び生活状態の少なくともいずれかを特定するヒューマン因子情報を記憶しておくこともできる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースに記憶されている点検結果情報とヒューマン因子情報との双方に基づいて、排水ハザード予測情報を作成するのとすることができる。排水施設でのハザードの起こりやすさは、家屋の居住者構成(「人為的環境」と言いかえることもできる)の影響も大いに受ける。例えば、居住するのが配水系等の清掃等をまめに行なう年配者夫婦が居住する場合と、あまり清掃等には熱心ではない若年夫婦が居住する場合とでは、前者ののほうがハザードの発生確率は低いといえるし、小さな子供が居住者に含まれる場合、いたずらによるおもちゃや大量の紙類の投入など、大人の感覚では想定できないようなハザード発生要因も考慮に入れる必要がある。また、若い女性が居住していれば、洗髪等に伴う髪の毛の排出が配管詰まりなどの要因になることもある。上記構成では、保守点検契約データベースに前述の点検結果情報とともに、家屋の居住者の性別、年齢層及び生活状態の少なくともいずれかを特定するヒューマン因子情報も蓄積しておき、その双方を用いることで、作成される排水ハザード予測情報の信頼性を高めることができる。
【0016】
点検結果情報は、排水施設の点検結果の優劣を数値の大小により表示する点検結果ポイントを含むものとすることができる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、排水ハザード予測情報として、各排水施設のハザード予測情報を対応する点検結果ポイントに基づいて作成し、契約毎に排水ハザード評価データ記憶部に記憶するものとすることができる。点検結果をポイントにより数値表示しておけば、数値の大小によりハザードの起こりやすさを容易に把握することができる。
【0017】
さらに、点検結果ポイントを用いることで、以下のような種々の具体的な態様が実現可能となる。まず、保守点検契約データベースには、環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の少なくともいずれかに対応して、環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の内容に応じ、点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正を行なうためのポイント補正情報が記憶しておくことができる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、点検結果ポイントと、当該排水施設に対応するポイント補正情報とを読み出して、該ポイント補正情報により点検結果ポイントを補正する演算を行ない、その補正後の点検結果ポイントに基づいてハザード予測情報を作成することができる。これにより、前述の環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の影響を、点検結果ポイントに対する補正数値として容易に反映することができ、排水施設の周辺環境や仕様、あるいは家屋の居住者構成などが関与したより複雑なハザード発生予測も、その補正後の点検結果ポイントを用いることで、容易にかつ適確に行なうことができる。
【0018】
また、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースにおける最終点検日から一定日数経過させたハザード予測対象日を設定するとともに、最終点検日を有する点検結果情報に対しハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を、点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正として行なうものとすることができる。これにより、最終点検日からの排水施設の経時的な劣化を、点検結果ポイントに対する補正数値として容易に反映することができ、該経時劣化が関与したハザード発生予測も、その補正後の点検結果ポイントを用いることで、容易にかつ適確に行なうことができる。
【0019】
排水ハザード予測情報作成手段は、点検結果ポイント(上記の補正後のものを含む)の数値が示す排水施設の評価状態が予め定められた基準レベル以上に悪化したか否かの判定を行ない、その判定結果をハザード予測情報として作成することができる。すなわち、点検結果ポイントに適当な閾値(つまり、上記基準レベルに対応したポイント値)を設けることで、当該閾値との比較を主体とした簡単なアルゴリズムにより、ハザード発生に対する警報報知等を容易に行なうことができる。
【0020】
排水ハザード予測情報出力手段は、排水施設の評価状態が基準レベル以上に悪化したと判定された排水施設の情報を、例えば、補正後の点検結果ポイントの悪い順に出力するものとすることができる。これにより、ハザード発生の危険性の高い排水施設をいち早く報知することができる。また、排水施設に対応する点検結果情報の点検日の古いものから優先的に出力するものとすることもできる。最終点検日の古い排水施設は、点検から日数が経っている分だけ施設の悪化代も大きくなっている可能性が高く、また、前回の点検時には把握できなかった要因により、ハザード発生につながる施設状態の悪化が予想以上に進んでいる、といった可能性もある。従って、最終点検日の古い排水施設を優先的に情報出力するということは、現実にハザードが起きやすくなっているか否か、という問題のみに留まらず、当該の排水施設の早い段階での再点検を促すことで、より正確な現状把握並びにハザード対策が可能になるという利点も有している。
【0021】
また、本発明の排水施設共済管理システムにおいては、排水施設に対応する点検結果ポイントに基づいて当該排水施設に対する共済保証率を算出する共済保証率算出手段を設けることができる。点検結果ポイントにより、排水施設のハザード発生に対する安全度が定量化されるから、これを用いて共済運用資産の持ち出し期待値も定量化することが可能となり、排水施設に対する共済保証率を合理的に算定することができる。具体的には、点検結果ポイントの悪い排水施設ほど、共済保証率を低く算出するようにすればよい。
【0022】
また、排水施設に対応するポイント補正情報に基づいて、排水施設に対する共済掛金を算出する掛金算出手段を設けることもできる。ポイント補正情報は、例えば前述の環境情報、仕様特定情報あるいはヒューマン因子情報として定められるものである。これら排水施設の周辺環境、仕様あるいはヒューマン因子に由来したハザード発生の危険率が高ければ、個々の環境情報、仕様特定情報あるいはヒューマン因子情報に対応するポイント補正情報は、点検結果ポイントがより大きく悪化するように、その内容が定められる。従って、点検結果ポイントを悪化させる効果の大きいポイント補正情報は、ハザード発生のリスクが大きいことを意味するから、対応する排水施設に対する共済掛け率が大きくなるように、掛け金の算出に組み込まれる。このように、上記ポイント補正情報を用いれば、対応する排水施設に対する共済掛金を合理的に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である排水施設共済管理システム(以下、単にシステムともいう)1のブロック図である。該システム1は、主演算部をなすCPU3を備えたコンピュータ2を主体とするものであり、バス1Bにインターフェース1Fを介して接続された、HDDディスクドライブ(HDD)等からなる記憶装置6に、システム1の基本機能を実現するソフトウェア6a〜6e及びデータベース6f〜6jが、図示しないオペレーティングシステムソフトウェア(OS)とともにインストールされている。ソフトウェア6a〜6eは、各々対応するデータベース6f〜6jのデータを使用しつつ、RAM5の各ワークエリア5a〜5eにてCPU3により実行される。また、コンピュータ2のハードウェアリソース(入出力部7、キーボード等の入力部11、モニタ12、プリンタ13、シリアルインターフェース9、記憶装置6など)を直接制御するための基本プログラムは、ROM4に格納されている。
【0024】
各ソフトウェアの機能は以下の通りである。
・保守点検契約ソフトウェア6a:建物の浄化槽の保守点検契約を締結した契約者の特定情報を、浄化槽に随伴する排水施設の点検結果情報と対応付けて保守点検契約データベース6fに記憶・登録する。
・共済登録管理ソフトウェア6b:保守点検契約データベースに登録された契約者を、排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムの加入者として、共済登録データベース6gに記憶・登録する。浄化槽が廃止された後の建物についても、排水設備の保守を目的に共済登録を継続することができる。
・排水ハザード評価・管理ソフトウェア6c:保守点検契約データベース6fに記憶されている排水施設の点検結果情報に基づいて、該排水施設のハザード発生の予測に寄与する排水ハザード予測情報を作成し、排水ハザード評価データベースに記憶・蓄積するとともに、作成された排水ハザード予測情報を、当該契約者の特定情報と対応付けて、モニタ12あるいはプリンタ13(排水ハザード予測情報出力手段)から出力する。
・共済内容評価ソフトウェア6d:共済の掛金や共済保証率の内容を排水施設の点検結果情報等に基づいて作成し、共済内容評価データベース6iに記憶・登録する。
・付帯サービス管理ソフトウェア6e:種々のサービス情報やコミュニティー情報、あるいは地域行政からのお知らせ情報などの付帯サービスデータを、付帯サービスデータベース6jに登録し、保守点検契約データベース6fに登録されている高齢者などのために配布する処理の管理を行なう。この配布は、プリンタ13から出力した紙情報により郵便等で行ってもよいし、インターネット(符号8は、常時接続用のルータである)を経由した電子メール配信により行ってもよい。また、付帯サービスデータは、インターネットを経由して配信サーバからダウンロードすることにより取得・収集することが可能である。
【0025】
図2は、保守点検契約データベース6fに記憶されている各契約者のデータレコードの構成例である。主情報21には、契約者特定情報としての契約番号及び契約者名のデータが含まれており、契約年月日、契約対象となる浄化槽が設けられた建物(家屋)の戸建形態(一戸建又は集合住宅)、築年及び所在地の情報とともに保守点検内容情報が記憶されている。また、主情報21とは別に、当該建物の居住者の特定情報(居住者名)と、各居住者の年齢及び性別の情報を網羅したヒューマン因子情報22も合せて記憶されている。
【0026】
保守点検内容情報23には、排水施設の一覧情報が、いくつかの施設区分に区切られた形で網羅され、個々の施設と対応付けた形で点検結果情報30が入力・記憶されている。本実施形態では、トイレの便器からの汚水管路系統、台所、風呂場あるいは手洗い場等からの雑排水管路、雨水管路及び利水施設の4つの施設区分が設定され、各々、種々の仕様の排水施設名が登録されている。登録されている施設のうち、契約対象の建物に実際に設けられているものについては、設置場所に対応する図面上のエリア情報と設置数とが入力される。従って、エリア情報と設置数とが入力されていない施設は、その建物には設けられていないことを示す。
【0027】
図3は点検結果情報30の内容の一例を示すものであり、各施設の本体の老朽化状態、接続部品の老朽化状態、排水経路への接続状況、設備周辺も含めた設置状態の各項目に分け、それぞれ点検結果の優劣を数値の大小により表示する点検結果ポイントが、点検年月日(最終点検日)とともに記憶されている。本実施形態において点検結果ポイントは、各項目毎に4点満点(点数が高いほど状態は良好:優、良、可、不可)にて評価されており、その合計点数が総合ポイント(16点満点)として計算されている。この総合ポイントに一定の閾値(例えば8点)を設定し、該総合ポイントが閾値以下となった場合に、警報出力を行なうことができる。図3は、点検結果情報30を図1のモニタ12あるいはプリンタ11に出力した状態にて示したものであるが、上記の総合ポイントが閾値以下となった施設については、その施設(設備)名の表示状態(例えばセルの背景色や、文字の表示色など)を、閾値以下となっていない施設とは異なる警報表示状態とすることで、警報出力を行なうことができる。また、点検項目別にポイント閾値を設定し、閾値未満の点検項目について個別に警報出力を行なうこともできる。図3においては、項目別ポイントの閾値が2点に設定され、風呂排水系統配管の本体と接続部品が警報出力の対象となって、該当するセルの表示状態が警報表示状態に設定されている。図3には表れていないが、該当する項目のポイントが閾値を超える場合は「0」、閾値以下となった場合は「1」となる警報表示フラグが、各項目のセル及び総合ポイントのセルと一対一に対応付けた形で設けられている。この警報表示フラグの設定内容が排水ハザード予測情報、より詳しくは、各排水施設のハザード予測情報に相当するものである。なお、図3においては、総合ポイントが閾値以下となっている施設は存在していない。
【0028】
上記の点検結果ポイントは、浄化槽の定期点検時に建物敷地へ係員が赴き、各施設の状態を目視点検することにより付与されるもので、専用のチェックシートに記入したポイント付与結果を持ち帰り、図1のシステム1の入力部11から保守点検契約データベース6fに入力することができる。他方、パームトップパソコンなどの携帯型データ端末10にポイント入力し、該携帯型データ端末10を、インターフェース9を介してコンピュータ2に接続して、ポイントデータをコンピュータ2側に吸い上げるようにしてもよい。
【0029】
次に、保守点検契約データベース6fには、環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の少なくともいずれかに対応して、環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の内容に応じ、点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正を行なうためのポイント補正情報が記憶されている。本実施形態では、係員が点検現場で取得した基礎ポイント(いわば生のポイント)に乗じられる重み係数として、各ポイント補正情報が定められている。ハザード発生を促進する方向に作用する重み係数は1未満の値が設定される。該係数を乗ずることにより、補正後のポイントは基礎ポイントよりも小さくなり、ハザード発生の警報出力に係る閾値により接近することとなる。逆にハザード発生抑制に寄与するものは1を超える値が設定される。これにより、補正後のポイントは基礎ポイントよりも大きくなり、上記警報出力に係る閾値からは遠ざかる。なお、ハザード発生の促進及び抑制のいずれにも寄与しないと思われる因子については、対応する重み係数を1に設定しておけばよい。なお、重み係数に代えて、基礎ポイントから減算ないし基礎ポイントに加算される補正バイアス値をポイント補正情報として用いることもできる。
【0030】
図4には環境重み係数の一例を示している。ここでは、土地種別(地域)、地形ないし地理的状態(周囲)、管路埋設地の表面状態、水流の外的要因の区分毎に想定される環境状態が規定され、それぞれ環境重み係数αが細分化された形で定義されている。これらの環境重み係数は、例えば係員による初期点検時に、建物及び排水設備毎に該当するものが全て選択され、保守点検契約データベース6fに入力される。また、再点検時には個々の環境因子に対する状態変化が確認され、必要に応じて対応する環境重み係数αの値が更新される。
【0031】
図5に各環境重み係数の設定例を示している。土地種別(地域)に関係する環境重み係数については、宅地の重み係数α01は1であり、他方、振動が加わりやすい工地の重み係数α03は割り引いて0.9に設定してある。また、農地、工地ほどには振動は加わらないが、水田や灌漑水路などに近接して排水口が位置していたりすると、その水位変動の影響を受け易くなるし、埋設管の上方を灌漑用水が流れることもありえる。その結果、土が削り取られて配管継ぎ目が損傷したりするなど、配管系統のハザード発生リスクが宅地よりは高くなると考えられるので、農地の重み係数α01を宅地と工地との中間に設定してある。
【0032】
次に、地形ないし地理的状態に係る重み係数については、雨水などの流れ込みが生じにくい台地、あるいは排水溝などが完備している造成地の重み係数α11、α14を最も大きな値(ここでは1)に設定し、雨水の集中ないし流れ込みの起こりやすい低地、湿地近接地ないし傾斜地や、土の崩落などが生じやすい崖近接地については、その重み係数α12、α13、α15、α16を、上記台地あるいは造成地よりも低く設定してある。
【0033】
また、管路埋設地の表面状態に係る重み係数については、耐久性の最も高い舗装地の重み係数α21を基準値(ここでは1)に設定し、耐久度に多少劣るが、これに次いで雨水流等による土の流失が生じにくい敷石地や芝生地の重み係数α22、α23を舗装地よりは多少低く設定し、土の流失が生じやすい裸地の重み係数α24はさらに小さい値に設定してある。また、排水管の流れを阻害するもうひとつの重要な因子として、庭などの植生と配管との位置関係がある。樹木などの植栽が配管に近接していると、張り出した根が配管を圧迫し、継ぎ目などに損傷を加える可能性が高まるし、根の張り出す力は想像以上に大きいので、排水管内部に根が侵入・貫通し、排水流をせき止めてしまう可能性もある。従って、植栽近接地の重み係数α25は舗装地等よりも小さい値に設定され、目視点検の結果、植栽貫通が認められた場合は、さらに小さい重み係数α26を設定するようにしている。
【0034】
水流の外的要因に係る重み係数については、隣地からの流れ込み及び流れ出しを考慮し、排水の阻害要因となる伏流水の存在(α31、α41)、不明水の流入及び湧出(α32、α42)及び汚濁施設の近接(α43)に関して、1より小さい重み係数が設定されている。
【0035】
次に、図4には、仕様特定情報に対応するポイント補正情報としての、設備重み係数βの一例を示している。ここでは、排水施設の種別が、汚水処理施設、排水装置、トイレ設備、排水桝及び配管形態に区分され、区分毎に想定される種々の具体的設備形態に対して、設備重み係数βが細分化された形で定義されている。これらの設備重み係数は、例えば係員による初期点検時に、その建物について該当する設備に対応するものが全て選択され、保守点検契約データベース6fに入力される。また、再点検時等において設備更新が確認された場合、必要に応じて対応する設備重み係数βの値が更新される。
【0036】
図5に各設備重み係数βの設定例を示している。汚水処理関係では、浄化槽が廃止されて下水道が完備されている場合、その下水方式として、排水効率のよい分流式下水が採用されている場合は、対応する重み係数β11の値を、排水効率の幾分悪い合流式下水が採用されている場合の重み係数β12の値よりも大きく設定する。ここでは、分流式下水の優位性を考慮して、その重み係数β11の値を1よりも大きな値に設定している。一方、依然として浄化槽が採用されている場合は、その浄化槽の排水形態(合併、単独、側溝、河川・水路)と浄化槽自体の清掃状況(点検時に確認する)等に応じて、対応する重み係数β21、β22、β23、β24の値を適宜設定する。また、排水方式が地下浸透式である場合は、浸透式排水床が目詰まり等を起こすと溢水の原因となり、要注意なので、対応する重み係数β25の値を1より小さく設定してある。
【0037】
次に、排水設備関係では、排水の流出を積極補助するポンプ設備が存在する場合に、対応する重み係数(β31)を基準値(ここでは1)に設定し、ポンプ設備が存在しない場合の重み係数(β32)をそれよりも小さい値に設定する。また、排水逆流によるハザードの可能性を考慮して、排水管に逆止弁が存在する場合に、対応する重み係数(β41)を最も大きな値(ここでは1)に設定し、逆止弁が存在しない場合の重み係数(β42)をそれよりも小さい値に設定する。
【0038】
また、トイレ設備関係では、深刻な異物詰まり等が生じても、便器の交換等が比較的容易な洋便器が採用されている場合の重み係数(β52)を基準値(ここでは1)に設定し、セメント埋設等により交換施工が非常に面倒な和便器では、ハザード発生時のリスクの高さを考慮して、その重み係数(β53)を洋便器の場合よりも小さく設定し、洋便器が採用されている場合よりも早期に警報出力がなされるよう、工夫されている。他方、洗浄便座(洋便器が前提)が採用されている場合は、トイレットペーパーの使用量が少なく配管詰まり等も生じにくいので、その重み係数(β51)を洗浄便座のない洋便器の場合よりも大きく設定してある。
【0039】
また、排水桝関係では、コンクリート排水桝の重み係数(β62)を基準値(ここでは1)に設定し、より破損の生じにくい樹脂排水桝が採用されている場合の重み係数(β62)を、それよりも大きく設定してある。また、排水中の固形残滓(例えば台所排水の場合の食物残滓など)を溜める溜め桝は、汚物や臭気が逆流しやすく、旧型施工のものが多いこともあって、対応する重み係数(β63)を、その心配の少ないトラップ桝の重み係数(β64)よりも小さく設定してある。
【0040】
排水管形態では、塩ビ管の重み係数(β72)を基準値(ここでは1)に設定し、より破損の生じやすい陶器管の重み係数(β71)をそれよりも小さく設定してある。また、損傷時のハザード規模が大きくなることから、一定径(例えば100mmφ)以上の太配管については、別途、1より小さい重み係数(β73)が設定され、また、損傷の発生頻度が高くなる長配管(例えば5m以上)についても、別途、1より小さい重み係数(β74)が設定されている。
【0041】
次に、ハザード発生時の影響が特に深刻な設備については、上記重み係数とは別に、アラート(警報出力)優先順位を規定する優先順位指数γを設定することもできる(数値が小さい程、アラートの優先順位が高い)。図5及び図6にその一例を示す。下水や浄化槽への汚染水排出が必須となる汚水や雑排水については、比較的清浄な水排出が前提となる雨水や利水施設よりもアラート優先順位が上位に設定されている。また、設備内部の状態を目視するための点検口が設けられていない設備については、設けられている設備よりもアラート優先順位が上位に設定されている。さらに、前述のごとく、設備交換工事が面倒な和便器については、洋便器よりもアラート優先順位が上位に設定されている。
【0042】
建物の排水施設の総点検は、点検箇所も多く時間とコストを要するので、数年に1回程度の定期点検に頼らざるを得ない。従って、ハザード予測対象となる排水施設については、保守点検契約データベース6fにおける最終点検日から現在の日付(ハザード予測対象日)までの間における経時的な劣化を予測し、上記最終点検日補正を施すことにより、排水施設のハザード予測対象日における状態推定情報を作成することが、次回点検日までのハザード防止対策を強化する上で有効である。本実施形態では、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースにおける最終点検日からハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を、点検結果ポイントを予め定められた程度にて減少させる補正として行なう。
【0043】
具体的には、図6に示すように、係員が点検現場で取得した基礎ポイント(いわば生のポイント)に乗じられる経年重み係数τを、補正情報として使用する。設備には一定の耐用年数が定められていることが多いので、その耐用年数をTdとして、最終点検日から現在の日付(ハザード予測対象日)までに何年経過しているかを耐用年数Tdで割り、これを1から引き算することで、経年重み係数τを演算する。ただし、住居の築年が新しければ長持ちし、築年が古ければ早く寿命が到来するので、1から引き算する項には補正係数δを乗するのが妥当である。δは、ここでは築年が古いほど1に近い値を設定するようにしている。例えば、設備の耐用年数が20年で、δがほぼ1の老朽住宅の場合、最終点検日から5年が経過していれば、図6の計算式に基づくτは0.75となる。
【0044】
次に、保守点検契約データベース6fには、図2に示すごとく、家屋の居住者の性別、年齢層及び生活状態の少なくともいずれかを特定するヒューマン因子情報22が記憶されている。そして、このヒューマン因子情報22の内容に応じ、点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正を行なうためのポイント補正情報も用意されている。その具体例が、図6に示す人為重み係数εである。この人為重み係数εも、基礎ポイントに乗じられる形で使用される(基礎ポイントを減算するポイント補正情報としてもよい)。
【0045】
人為重み係数としてここで考慮されているのは、契約者(世帯主)の年齢であり、老年層ほど設備は大切に使用する傾向があるので(例えば、台所排水などでも生ごみ等を丁寧に取り除いて水を流すなど)、一定年齢(例えば50歳)以上での係数(ε11〜ε13)の値を基準(例えば1)とし、若くなるほど係数を減少させるようにしている。また、小さな子供がいると、おもちゃなどの異物を突っ込む恐れがあるので、子供の年齢に応じて別の係数(ε21〜ε23)を定め、低年齢化するほど値を小さくするようにしている。また、12歳以上の女性は長い髪を風呂で洗ったりすると、髪の毛等により配管詰まりを招きやすくなるので、これも1より小さいの別の係数(ε31)を定めている。また、生活状態二関連する因子としては、ペット保有の有無がある。ペットの体を風呂場等で洗うと毛が大量に抜け落ち、配管詰まりを招きやすくなるので、同様に1より小さいの別の係数(ε41)を定めている。
【0046】
以上のごとく、本実施形態では、係員が点検現場で取得した基礎ポイントPを
τ(経年重み係数)
ε(人為重み係数)
α(環境重み係数)
β(設備重み係数)
の4つを直列的に乗じて、最終的な判定ポイントとする。上記の重み係数のうち、ε、α、βは、いずれも複数の係数群が選択肢として用意され、契約毎に該当する係数が固有の組み合わせで選択して使用される。例えば、髪の毛による配管詰まりは、風呂や洗面所の排水についてのみ考慮すればよく、これに対応する人為重み係数ε31は、図3においては、風呂排水と洗面台との2つの設備についてのみ適用すればよい。点検対象となる設備別に使う各重み係数は、図1のハザード評価データベース6hに予め記憶しておく。
【0047】
図7は、図3の風呂排水(ケース1)及び和便器(ケース2)の場合の重み係数の選定例を示している。経年重み係数τは、最終点検日から5年経過している前提で0.8と計算されている状況を想定している。ケース1においては、人為重み係数は、図6のε13(=0.9:所帯主年齢25歳以下)、ε31(=0.8:12歳以上の女性)が選択され、環境重み係数は、図4及び図5のα01(=1:宅地)、α13(=0.9:湿地近接)及びα23(=0.98:芝生)が選択されている。また、設備重み係数は、β11(=1.05:分流式下水)、β21(=0.95:合併浄化槽)、β31(=1:ポンプ設備あり)、β42(=0.9:逆止弁なし)が選択されている。アラート優先順位γはデフォルト「2」が設定されている。ケース2においては、人為重み係数は、図6のε23(=0.8:子供年齢2〜5歳)が選択され、環境重み係数は、図4及び図5のα01(=1:宅地)、α13(=0.9:湿地近接)及びα25(=0.9:植栽近接)が選択されている。また、設備重み係数は、β11(=1.05:分流式下水)、β21(=0.95:合併浄化槽)、β31(=1:ポンプ設備あり)、β42(=0.9:逆止弁なし)及びβ53(=0.95:和便器)が選択されている。また、対象設備が和便器なので、アラート優先順位γは「1」が設定されている。
【0048】
ε、α及びβについては、各々複数の係数を用いるが、ここでは、それら複数の係数を平均して用いる。具体的には、各係数を種別(α、β、ε)毎に加算平均するようにしている。図8は、ケース1の計算例であり、総合補正係数W(τ×ε×α×β)は0.69である。図3に示す5年前の点検結果では、風呂排水の総合ポイント(基礎ポイント)は10点であり、これに上記の総合補正係数Wを乗じた判定ポイントは6.9となる。16点満点の半分を閾値に設定していれば、アラート(警報出力)の対象となる。一方、図9はケース2の計算例であり、総合補正係数W(τ×ε×α×β)は0.58とケース1よりも低い。この要因は主に、対象設備が和便器(β53)で、しかも便器に異物等をいたずら投入しやすい小さな子供が家族に含まれていること(ε23)にある。図3に示す5年前の点検結果では、和便器の総合ポイント(基礎ポイント)は12点とケース1よりも良好であるが、これに上記の総合補正係数Wを乗じた判定ポイントは7.0となり、16点満点の半分を閾値に設定すれば、基礎ポイントが比較的高いにも拘わらず、やはりアラート(警報出力)の対象となる。
【0049】
なお、単独でハザード発生に大きくかかわってくるような係数は、値がゼロに近づけば平均値もゼロに近づけ、他の係数が頑張ってもアラート判定が出るようにしておくほうが望ましい場合もある。その場合は、各係数を、加算平均でなく幾何平均(各係数を掛け算した値の、係数の数に対応した累乗根により求める)を用いるようにすればよい。
【0050】
図10に示すように、上記のようにして計算された判定ポイント(補正後の点検結果ポイント)130は、契約別及び設備別に対応付けて排水ハザード評価データベース6hに記憶される。図10は、その内容のモニタ12への出力例も兼ねて表示しているが、判定ポイントが閾値以下となった設備については、設備名の表示セルの色を、他のセルとは異ならせることにより(例えば判定ポイントが閾値を超えるものは白や青で表示し、閾値以下のものは赤で表示する)により、アラート出力を行なう。また、アラート設定された設備については、図11に示すように、別画面50により、最終点検日の古いもの(アラート順位γが上位のものは、これに優先)から優先的に、契約者特定情報(契約番号及び契約者名)とアラート対象となっている設備名とともに、一覧リスト53(排水ハザード予測情報の出力形態の一例である)を表示する。
【0051】
上記のようなアラート情報を参照することで、アラートが設定された契約者については、対象設備を含む排水施設の再点検を推奨する通知を行なうことができる。また、図11の画面で通報サービスのコマンド52を実行すると(例えばボタンクリック)、図1のシステム1に通信ネットワーク(インターネットを含む)を介して接続された、契約者の端末(パソコンあるいは携帯電話)に、アラート対象となっている設備を含む警報通知情報を電子メール等により送信することもできる。この段階では、基礎ポイントを各重み係数で補正した判定ポイントにより、アラート判定を行っているのであるが、これはあくまで、最終点検日からの、人為、環境あるいは設備仕様に応じた推定によるアラート判定であり、現実に再点検を行った結果として得られる基礎ポイントを用いてアラート判定をやり直したほうが、信頼性が高いことは言うまでもない。
【0052】
図12は、上記のような状況を受けて図3から約5年後に再点検して得られた更新後の点検結果情報の一例を示すものである。いずれの設備も総合ポイントについては、一応、閾値(16点満点中8点)よりも大きな値が得られているが、和便器、汚水管、風呂排水の3つについては、閾値にかなり肉薄した要注意の点数(9点ないし10点)を示している。そして、その各々のポイントの内訳を見ると、和便器及び汚水管については、接続部品と接続状況の2つが2点(「可」判定)であり、風呂排水配管については、本体が2点(「可」判定)であり、接続部品は1点(「不可」判定)である。そこで、点検時に係員は、1点判定の風呂排水配管の接続部品については即時交換・修理を、和便器及び汚水管の接続部品と接続状況、及び風呂排水配管の本体については、例えば1年以内の配管清掃、修理、あるいは交換を契約者に助言することができる。当然、これを受けて契約者が清掃や修理などの保守を実行すれば、該当の設備の基礎ポイントを向上することができる。
【0053】
また、本実施形態のシステム1では、排水施設に対応する点検結果ポイントに基づいて当該排水施設に対する共済保証率を算出するようにしている。また、排水施設に対応するポイント補正情報(環境情報、仕様特定情報あるいはヒューマン因子情報:前述の重み係数α、β及びγ)を用いて、各設備(排水施設)に対する共済掛金を算出するようにしている。図15は、共済内容評価データベース6iに登録・記憶されている、個々の共済契約内容の係るデータレコード(以下、共済データレコードともいう)40の一例を示すものである。該共済データレコード40は、図2の保守点検契約のデータレコードにおいて、その保守点検内容情報23に含まれているものと同様の排水施設の一覧情報を有し、共済対象として定められた施設にマーク(○)が付与されている。このマークの付与されていない施設は、当該の建物に含まれていないか、又は含まれていても共済の対象外となっていることを示す。
【0054】
共済の方式としては、点検結果ポイントの低い施設についての掛け金を引き上げ、共済保証率は、全額補償とせず、基礎金額から一定の率(あるいは一律な上限金額でもよい)割り引いた保証しかしないようにする方式が考えられるが、これには次のような問題がある。すなわち、修理を勧められた契約者は、共済では修理費が全額補償されないので、修理負担額と、修理しなかった場合の共済料率の引上幅とを比較してしまい、目先の負担額に惑わされやすい(つまり、修理負担が高額になると、掛け金の引上幅が安上がりであれば、修理を拒んでそちらを選んでしまう)。他方、共済料率をむやみに引き上げたり、修理を強要したりすることは、顧客にとってマイナスイメージにつながりやすく、共済の落としどころが探り難くなる。
【0055】
そこで、本実施形態では、共済の掛け率を一定とし、点検結果ポイントの低い施設は、基礎金額に対する共済保証率を引き下げる共済方式を採用している。前述のアラート機能により、特定の施設が要点検ないし要修理になることは、施設の評価額が目減りしていくのとイメージ的には変わらず、顧客側の希望で修理等を見送れば、評価点の下落に合せて保証率が引き下げられるので、イメージ的にも納得しやすい共済システムが実現する。もし修理せずに施設を放置すれば、点検結果ポイントがどんどん下がり、浄化槽などの高価な施設の場合、自己負担額は激増する。しかし、点検結果ポイントが比較的高いうちに修理しておけば、早期対処のため修理費は安上がりであるし、共済保証率も高いままなので、ハザード発生時の己負担額を大幅に低減できる。また、修理費が安ければ、共済運用益でこれをカバーすることも容易であり、運用が赤字化する危険性も下がるメリットがある。結果、不具合施設の修理に契約者をスムーズに導くことができる。すなわち、状態が大幅に悪化する前に簡単な修理をまめに行って施設を長持ちさせることで、施設の資産継続価値が増加し、契約者サイドも共済運営者サイドもお互いにメリットが大きくなるのである。また、点検結果ポイントが高く維持されている間は、施設が全損するようなハザードの発生率は低いので、共済保証率を全額補償に近いところまで引き上げることも可能である。
【0056】
より具体的には、共済対象となっている個々の施設については、個別の評価により基礎金額が定められ、ハザードが発生したときの設備の修理や交換に要する費用を保障するための共済上限金額は、設備毎に定められた上記の基礎金額に対して、所定の共済保障率を乗ずることにより算出・決定される。また、共済の掛け金は、上記の基礎金額に所定の掛け率を乗じた値を、その施設の掛け金として求め、これを合計したものが、契約者が負担する掛け金として算出される。施設別の基礎金額は、例えば、その施設が全損した場合に、同等施設を復旧するのに必要な(例えば新品にて再設置するのに必要な)金額として設定することができる。
【0057】
個々の施設の共済保証率は、定期点検時に取得される基礎ポイント(その点検日が一定年数(例えば1年)以上古い場合は、前述の方法によりこれを補正して得られる判定ポイントの値から算出される。具体的には、点検結果ポイントの悪い排水施設ほど、共済保証率が低く算出されるようになっている。判定ポイントによりハザードに対するアラート判定が生じた場合、契約者には再点検が促される。再点検により基礎ポイントが最新のものに更新されれば、これに基づいて計算される共済保証率も、判定ポイントによる推定値から、再点検により内容が裏付けられた基礎ポイントにより、現状により即した計算値として更新されることとなる。
【0058】
また、アラートの対象となった施設については修理や交換が勧告される。契約者がこの勧告に応じなかった場合は、当該の施設のポイントは低いままなので、共済保障率も低くなり共済上限金額も目減りする。当然、悪くなった箇所を修繕しないのだから、ハザード発生のリスクは高くなる。そして、万一、復旧費用が多額となる大きなハザードを招来してしまった場合は、契約者の負担は非常に大きくなる。本実施形態では、図13に示すように、上記判定ポイントを満点で割り算して相対化し、さらに、これを2乗した値を共済保障率として算出している。これにより、判定ポイントの減少とともに共済保障率が加速度的に減少するので、早期に修繕対応することの必要性を契約者により強く意識させることができる。
【0059】
また、共済の掛率については、環境情報、仕様特定情報あるいはヒューマン因子情報に対応する前述のポイント補正情報、本実施形態では、環境重み係数α、設備重み係数β及び人為重み係数εを用いて算出される。点検結果ポイントを悪化させる効果の大きいポイント補正情報は、ハザード発生のリスクが大きいことを意味するから、対応する排水施設に対する共済掛け率が大きくなるように、掛け金の算出に組み込まれる。本実施形態では、図13に示すように、1−α・β・εの値に、共済加入者数等に応じて掛け金を適正化するための一定の係数(ここでは、1/10)を乗じて掛率を算出している。図14は、図12の和便器の点検結果ポイントに対する上記各共済パラメータの計算例を示している。点検結果が示す基礎ポイントは10点であり、アラート閾値に近いこともあって共済保障率は0.39とかなり目減りしている。しかし、接続部品の交換により、「*」を付与した項目のポイントが「2」から満点の「4」に上がると、共済保障率は0.77となり、共済上限金額も格段にアップする。
【0060】
以下、各ソフトウェアの処理の流れを、図16〜図20のフローチャートにより示す。図16は、保守点検契約管理ソフトウェアの処理の流れであり、S1でモニタ12(図1)にメニュー表示し、S2で契約のデータレコードの新規登録が選択された場合はS3に進み、入力画面を表示する。以下、これに従い、契約情報を入力し(S4)、データベース6fに確定登録したあと(S5)、メニューに復帰する(S6)。一方、メニューで、希望する契約のデータレコードの表示が選択された場合は、S7からS8に進み検索画面を表示する。そして、希望するデータレコードの検索情報を入力し、S10で検索処理を行ない、S11でヒットしたデータレコードを表示する。
【0061】
図17は、共済登録管理ソフトウェアの処理の流れを示すものである。S51では、保守点検契約者の中で共済登録していない契約者に対し、共済登録を斡旋する処理を行なうか否かの選択をする。斡旋処理を行なう場合はS52に進み、保守点検契約データベース6fにおいて、一戸建でかつ共済未登録の契約者を検索し、S53では、その検索結果を、最終点検日の古い順にソートし、S54でこれをモニタ12に表示する。その表示された契約者を斡旋対象者として定め、S55で実際に斡旋を行なう契約者を入力部11(キーボード又はマウス)を用いて選択する。S56では、選択された契約者に共済加入案内の電子メールを送信する(あるいは、郵送のためのダイレクトメール用レターをプリンタ13から印刷出力する)。一方、共済登録処理を行なう場合はS57からS58に進み、契約者特定情報と対応付けて、共済登録に必要な情報を入力ないし保守点検契約データベース6fから取得し、S59で、その登録情報を共済登録データベース6gに登録する。
【0062】
図18は、排水ハザード評価・管理ソフトウェアによる評価処理の流れを示すものである。この処理は、共済登録者の全員について個別になされる。まず、S101では、対象となる保守点検契約者を特定し、S102では対応する契約の各設備の重み係数α及びβを全てリードする。S103では、図6にて説明済みの計算式により、経年重み係数τを算出する。また、S104では、図6にて説明済みの人為重み係数εをリードする。S105では、各設備の基礎ポイントをリードし、S106で、該基礎ポイントと重み係数α、β、ε、τより、図7で説明済の計算式により判定ポイントを算出する。S107では、算出された判定ポイントを閾値と比較して、閾値未満の設備に対しアラート設定を行なう。
【0063】
図19は、排水ハザード評価・管理ソフトウェアによる管理処理の流れを示すものである。S151で、アラート設定がなされた共済登録者を検索し、S152及びS153では、これを図11にて説明済みのリスト53の形で出力する。S154及びS155では、その出力されたリスト上で選択された登録者のハザード評価情報を、データベース6hから読み出して出力する。一方、S158で前述の通報サービスコマンド52が実行された場合はS159に進み、対象者のアラート設定された設備の情報を取得し、また、S160,161では該設備の修理前後の共済上限金額を各々算出・取得して、S162にてこれら情報を取りまとめ、電子メールにて各対象者に送信するか、郵送用のダイレクトメール用レターを印刷出力する。
【0064】
図20は、共済内容評価ソフトウェアの処理の流れを示すものである。S201では、評価すべき共済登録者を特定し、S202では設備別の基礎金額を設定する。また、S203では設備別の前述の重み係数(ポイント補正情報)α、β及びεより、図13の計算式に従い、各設備の共済の掛率を算出する。S204では、上記掛率と基礎金額とから設備別の掛け金と、その合計とを算出する。また、S205では、各設備の判定ポイント(点検直後の場合は、その点検結果として得られる基礎ポイント)から共済保障率を計算し、S206では、上記の基礎金額と共済保障率とから設備別の共済上限金額を算出し、共済内容評価データベース6iに登録する。また、前述の通報サービスを行なう場合に必要となる、修理後の予想共済上限金額をS207にて算出する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の排水施設共済管理システムの一例を示すブロック図。
【図2】保守点検契約データベースのデータレコードの一例を示す概念図。
【図3】点検結果情報の内容の一例を示す図。
【図4】環境重み係数α、設備重み係数β及びアラート優先順位γの例を示す図。
【図5】環境重み係数α、設備重み係数β及びアラート優先順位γの数値設定例を示す図。
【図6】経年重み係数τと人為重み係数εの設定例を示す図。
【図7】判定ポイントの計算式の一例を示す図。
【図8】判定ポイントの第一計算例を示す図。
【図9】判定ポイントの第二計算例を示す図。
【図10】排水ハザード評価データベースに記憶される判定ポイントの契約別データレコードの一例を示す図。
【図11】アラート対象設備を含む契約の一覧リスト出力例を示す図。
【図12】再点検により更新された点検結果情報の内容の一例を示す図。
【図13】共済掛金及び共済保障率の計算式の一例を示す図。
【図14】共済掛金及び共済保障率の計算例を示す図。
【図15】共済内容評価データベースのデータレコードの一例を示す図。
【図16】保守点検契約管理ソフトウェアの処理の流れを示すフローチャート。
【図17】共済登録管理ソフトウェアの処理の流れを示すフローチャート。
【図18】排水ハザード評価・管理ソフトウェアの処理の流れを示す第一のフローチャート。
【図19】同じく第二のフローチャート。
【図20】共済内容評価ソフトウェアの処理の流れを示す第一のフローチャート。
【符号の説明】
【0066】
1 排水施設共済管理システム
2 コンピュータ
6a 保守点検契約ソフトウェア
6b 共済登録管理ソフトウェア(共済登録手段)
6c 排水ハザード評価・管理ソフトウェア(排水ハザード予測情報作成手段)
6d 共済内容評価ソフトウェア(共済保証率算出手段、掛金算出手段)
6f 保守点検契約データベース(排水ハザード予測情報作成手段)
12 モニタ(排水ハザード予測情報出力手段)
13 プリンタ(排水ハザード予測情報出力手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水施設共済管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−344331号公報
【0003】
排水施設を使用する店舗や家屋等の建物では、正常に排水が行なえなくなるトラブル(以下、排水ハザードという)が、例えば、排水発生源施設(トイレ、台所シンク、風呂場など)や排水管の破損ないし閉塞など、様々な要因により発生する。特に、施設管理者が存在しない一戸建て住居等の場合、排水発生源施設の定期的な点検や洗浄などの保守作業が長期間なおざりになっていることも多く、排水ハザードが発生して漸く気付く、といったことも珍しくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が検討する限り、上記の排水ハザードの具体的な原因は、宅地内の地盤沈下や植栽の成長による排水管への木の根の侵入、さらには家族構成の変化に起因するもの(例えば便器へのオムツや生理用品の誤投入、子供のいたずらなどによる便器へのおもちゃや異物あるいは大量のトイレットペーパー投入、ペット汚物の投入など)などが多きを占め、意識の改善により防止できるものが大半である。そして、一旦排水ハザードが発生した場合は、排水の漏出や逆流による損害、さらには修繕不能な詰まり発生による設備交換など、思いもよらない出費が待受けていることもある。また、排水施設の修繕や更新費用は高額となることも多い。しかし、従来は、例えば特許文献1のごとく、下水道配管図などを原始的な住宅情報の一環として提供するシステムが精々存在する程度であり、排水施設に関する一般知識に乏しい居住者に対し、その保守に関する意識を改善し、排水ハザードの発生防止を系統的に支援できるような管理システムは、従来、全く考慮されてこなかった。
【0005】
本発明の課題は、排水施設に関する一般知識に乏しい居住者に対しても、排水ハザードの発生防止を系統的に支援することができ、かつ、排水ハザード発生時の費用負担を軽減するための共済システムの適正化にも寄与する排水施設共済管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の排水施設共済管理システムは、
建物の排水施設の保守点検契約を締結した契約者の特定情報を、該排水施設の点検結果情報と対応付けて記憶した保守点検契約データベースと、
保守点検契約データベースに登録された契約者を、排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムの加入者として登録する共済登録手段と、
排水施設の点検結果情報に基づいて、該排水施設のハザード発生の予測に寄与する排水ハザード予測情報を作成する排水ハザード予測情報作成手段と、
共済登録手段に加入登録済みの保守点検契約について、作成された排水ハザード予測情報を、当該契約者の特定情報と対応付けて出力する排水ハザード予測情報出力手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、排水施設の保守点検契約データベースに登録されている契約者に、排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムへの加入を斡旋し、その加入者を共済登録手段に登録するとともに、保守点検契約データベースに蓄積されている各建物の排水施設の点検結果情報を利用して、個々の排水施設における将来的なハザード発生の予知やその低減に寄与する排水ハザード予測情報を作成し、作成された排水ハザード予測情報を、契約者の特定情報と対応付けて出力する。これにより、次のような効果が達成される。
【0008】
(1)排水施設の点検結果情報に基づいて排水ハザード予測情報を作成することで、どの排水施設にてハザード発生が懸念されるかを、契約者にいち早く通知することができ、排水施設の保守に対する意識を高めることができる。
(2)この排水ハザード予測情報の内容に基づいて、修繕などの適切な処置を施すことで、放置すれば深刻なハザードにつながる不具合個所を早期に改善することができ、契約者が蒙る可能性のあるハザード損害が最小限に食い止められ、また、排水設備の長持ちを図ることができる。また、各契約者から徴収・プールされている共済運用資産の過剰な持ち出しを回避することができ、運用の健全化を図ることができる。
【0009】
排水管路などの建物の排水施設は建物毎に固有の仕様を有するので、多数の世帯の排水施設を系統的に管理してハザード発生予防を図るには、個々の建物の排水施設に関する情報を集結してデータベース化することが、まず必要である。しかし、管理を希望する多数の所帯の排水施設データをゼロから収集するのは容易なことではないし、築後長く経過している建物については、排水系統の管理図面などが残っていないケースも多い。
【0010】
ところで、わが国では下水道が完備していない地域が非常に多く存在し、こうした地域での生活排水等は、見た目にそれほど不潔感を与えないため、そのまま側溝や水路に流されることも多かったが、水質汚濁に関する自治体レベルでの規制が高められた結果、建物毎あるいは区域ごとに浄化槽が設けられるようになってきた。浄化槽は、微生物の働きを利用して汚水を浄化する装置であるから、微生物が活動しやすい環境を保つよう定期的な保守点検が必須であり、また、法定検査を受けることが、浄化槽法により設置者に義務づけられている。こうした背景を受けて、浄化槽の設置者は、専門の業者に浄化槽の保守点検を委託する契約を結ぶこととなる。浄化槽の状態を良好に保つには、浄化槽そのものの管理だけでなく、浄化槽を経由した排水系統の全体がスムーズかつ正常に機能するかどうかも重要である。
【0011】
上記のような保守点検契約を締結する際には、浄化槽だけでなく、これに随伴する排水施設も保守点検の対象に含まれるので、この保守点検契約に則って実施される排水施設の点検結果情報は保守点検契約データベースに容易に蓄積することができる。そこで、本発明では、浄化槽の保守点検契約の締結を契機として、そのデータベースに各建物の排水施設の点検結果情報を蓄積することが可能である。このようにすると、個々の排水施設の状態を系統的に把握できるので、これを共済運用の基礎情報として利用することにより、従来全く存在していなかった排水施設の共済システムを、健全で有益な運用ベースのもとで実現することが可能となる。
【0012】
保守点検契約データベースには排水施設に対する点検結果情報は、その点検日と対応付けて記憶しておくことができる。排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースにおける最終点検日から一定日数経過させたハザード予測対象日を設定するとともに、最終点検日を有する点検結果情報に対しハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を施すことにより、排水施設のハザード予測対象日における状態推定情報を作成し、当該状態推定情報に基づいて排水ハザード予測情報を作成するものとすることができる。ハザード予測対象日は、例えば現在の日付を採用することができるが、現在よりも一定日数後の日付として設定することも可能である。この構成によると、データベース上にて把握される排水施設の最終点検日における点検結果情報に、ハザード予測対象日に至るまでの施設状態の経時的な悪化を上乗せして考慮することで、ハザード予測対象日、例えば現在の施設状態を推定することができ、これを用いて、施設の再点検や修繕などの必要性を利用者に適切に把握させることが可能となる。
【0013】
保守点検契約データベースには、排水施設の、ハザード発生に関与する設置環境因子を特定する環境特定情報を記憶しておくことができる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースに記憶されている点検結果情報と環境情報との双方に基づいて、排水ハザード予測情報を作成するものとすることができる。排水施設の状態は、該施設周辺の環境に応じて悪化の度合いが異なる。そこで、上記構成では、保守点検契約データベースに前述の点検結果情報とともに施設別の環境情報も蓄積しておき、その双方を用いることで、作成される排水ハザード予測情報の信頼性を高めることができる。
【0014】
また、保守点検契約データベースには、排水施設の、ハザード発生に関与する仕様因子を特定するための仕様特定情報を記憶しておくことができる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースに記憶されている点検結果情報と仕様特定情報との双方に基づいて、排水ハザード予測情報を作成するものとすることができる。排水施設の状態は、同じ環境であっても施設の仕様により悪化の度合いが異なるし、また、排水ハザードが実際に発生したときの復旧に要する手間や費用にも開きがある。そこで、上記構成では、保守点検契約データベースに前述の点検結果情報とともに排水施設の仕様特定情報も蓄積しておき、その双方を用いることで、作成される排水ハザード予測情報の信頼性を高めることができる。
【0015】
さらに、保守点検契約データベースには、建物をなす家屋の居住者の性別、年齢層及び生活状態の少なくともいずれかを特定するヒューマン因子情報を記憶しておくこともできる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースに記憶されている点検結果情報とヒューマン因子情報との双方に基づいて、排水ハザード予測情報を作成するのとすることができる。排水施設でのハザードの起こりやすさは、家屋の居住者構成(「人為的環境」と言いかえることもできる)の影響も大いに受ける。例えば、居住するのが配水系等の清掃等をまめに行なう年配者夫婦が居住する場合と、あまり清掃等には熱心ではない若年夫婦が居住する場合とでは、前者ののほうがハザードの発生確率は低いといえるし、小さな子供が居住者に含まれる場合、いたずらによるおもちゃや大量の紙類の投入など、大人の感覚では想定できないようなハザード発生要因も考慮に入れる必要がある。また、若い女性が居住していれば、洗髪等に伴う髪の毛の排出が配管詰まりなどの要因になることもある。上記構成では、保守点検契約データベースに前述の点検結果情報とともに、家屋の居住者の性別、年齢層及び生活状態の少なくともいずれかを特定するヒューマン因子情報も蓄積しておき、その双方を用いることで、作成される排水ハザード予測情報の信頼性を高めることができる。
【0016】
点検結果情報は、排水施設の点検結果の優劣を数値の大小により表示する点検結果ポイントを含むものとすることができる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、排水ハザード予測情報として、各排水施設のハザード予測情報を対応する点検結果ポイントに基づいて作成し、契約毎に排水ハザード評価データ記憶部に記憶するものとすることができる。点検結果をポイントにより数値表示しておけば、数値の大小によりハザードの起こりやすさを容易に把握することができる。
【0017】
さらに、点検結果ポイントを用いることで、以下のような種々の具体的な態様が実現可能となる。まず、保守点検契約データベースには、環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の少なくともいずれかに対応して、環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の内容に応じ、点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正を行なうためのポイント補正情報が記憶しておくことができる。この場合、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、点検結果ポイントと、当該排水施設に対応するポイント補正情報とを読み出して、該ポイント補正情報により点検結果ポイントを補正する演算を行ない、その補正後の点検結果ポイントに基づいてハザード予測情報を作成することができる。これにより、前述の環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の影響を、点検結果ポイントに対する補正数値として容易に反映することができ、排水施設の周辺環境や仕様、あるいは家屋の居住者構成などが関与したより複雑なハザード発生予測も、その補正後の点検結果ポイントを用いることで、容易にかつ適確に行なうことができる。
【0018】
また、排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースにおける最終点検日から一定日数経過させたハザード予測対象日を設定するとともに、最終点検日を有する点検結果情報に対しハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を、点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正として行なうものとすることができる。これにより、最終点検日からの排水施設の経時的な劣化を、点検結果ポイントに対する補正数値として容易に反映することができ、該経時劣化が関与したハザード発生予測も、その補正後の点検結果ポイントを用いることで、容易にかつ適確に行なうことができる。
【0019】
排水ハザード予測情報作成手段は、点検結果ポイント(上記の補正後のものを含む)の数値が示す排水施設の評価状態が予め定められた基準レベル以上に悪化したか否かの判定を行ない、その判定結果をハザード予測情報として作成することができる。すなわち、点検結果ポイントに適当な閾値(つまり、上記基準レベルに対応したポイント値)を設けることで、当該閾値との比較を主体とした簡単なアルゴリズムにより、ハザード発生に対する警報報知等を容易に行なうことができる。
【0020】
排水ハザード予測情報出力手段は、排水施設の評価状態が基準レベル以上に悪化したと判定された排水施設の情報を、例えば、補正後の点検結果ポイントの悪い順に出力するものとすることができる。これにより、ハザード発生の危険性の高い排水施設をいち早く報知することができる。また、排水施設に対応する点検結果情報の点検日の古いものから優先的に出力するものとすることもできる。最終点検日の古い排水施設は、点検から日数が経っている分だけ施設の悪化代も大きくなっている可能性が高く、また、前回の点検時には把握できなかった要因により、ハザード発生につながる施設状態の悪化が予想以上に進んでいる、といった可能性もある。従って、最終点検日の古い排水施設を優先的に情報出力するということは、現実にハザードが起きやすくなっているか否か、という問題のみに留まらず、当該の排水施設の早い段階での再点検を促すことで、より正確な現状把握並びにハザード対策が可能になるという利点も有している。
【0021】
また、本発明の排水施設共済管理システムにおいては、排水施設に対応する点検結果ポイントに基づいて当該排水施設に対する共済保証率を算出する共済保証率算出手段を設けることができる。点検結果ポイントにより、排水施設のハザード発生に対する安全度が定量化されるから、これを用いて共済運用資産の持ち出し期待値も定量化することが可能となり、排水施設に対する共済保証率を合理的に算定することができる。具体的には、点検結果ポイントの悪い排水施設ほど、共済保証率を低く算出するようにすればよい。
【0022】
また、排水施設に対応するポイント補正情報に基づいて、排水施設に対する共済掛金を算出する掛金算出手段を設けることもできる。ポイント補正情報は、例えば前述の環境情報、仕様特定情報あるいはヒューマン因子情報として定められるものである。これら排水施設の周辺環境、仕様あるいはヒューマン因子に由来したハザード発生の危険率が高ければ、個々の環境情報、仕様特定情報あるいはヒューマン因子情報に対応するポイント補正情報は、点検結果ポイントがより大きく悪化するように、その内容が定められる。従って、点検結果ポイントを悪化させる効果の大きいポイント補正情報は、ハザード発生のリスクが大きいことを意味するから、対応する排水施設に対する共済掛け率が大きくなるように、掛け金の算出に組み込まれる。このように、上記ポイント補正情報を用いれば、対応する排水施設に対する共済掛金を合理的に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である排水施設共済管理システム(以下、単にシステムともいう)1のブロック図である。該システム1は、主演算部をなすCPU3を備えたコンピュータ2を主体とするものであり、バス1Bにインターフェース1Fを介して接続された、HDDディスクドライブ(HDD)等からなる記憶装置6に、システム1の基本機能を実現するソフトウェア6a〜6e及びデータベース6f〜6jが、図示しないオペレーティングシステムソフトウェア(OS)とともにインストールされている。ソフトウェア6a〜6eは、各々対応するデータベース6f〜6jのデータを使用しつつ、RAM5の各ワークエリア5a〜5eにてCPU3により実行される。また、コンピュータ2のハードウェアリソース(入出力部7、キーボード等の入力部11、モニタ12、プリンタ13、シリアルインターフェース9、記憶装置6など)を直接制御するための基本プログラムは、ROM4に格納されている。
【0024】
各ソフトウェアの機能は以下の通りである。
・保守点検契約ソフトウェア6a:建物の浄化槽の保守点検契約を締結した契約者の特定情報を、浄化槽に随伴する排水施設の点検結果情報と対応付けて保守点検契約データベース6fに記憶・登録する。
・共済登録管理ソフトウェア6b:保守点検契約データベースに登録された契約者を、排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムの加入者として、共済登録データベース6gに記憶・登録する。浄化槽が廃止された後の建物についても、排水設備の保守を目的に共済登録を継続することができる。
・排水ハザード評価・管理ソフトウェア6c:保守点検契約データベース6fに記憶されている排水施設の点検結果情報に基づいて、該排水施設のハザード発生の予測に寄与する排水ハザード予測情報を作成し、排水ハザード評価データベースに記憶・蓄積するとともに、作成された排水ハザード予測情報を、当該契約者の特定情報と対応付けて、モニタ12あるいはプリンタ13(排水ハザード予測情報出力手段)から出力する。
・共済内容評価ソフトウェア6d:共済の掛金や共済保証率の内容を排水施設の点検結果情報等に基づいて作成し、共済内容評価データベース6iに記憶・登録する。
・付帯サービス管理ソフトウェア6e:種々のサービス情報やコミュニティー情報、あるいは地域行政からのお知らせ情報などの付帯サービスデータを、付帯サービスデータベース6jに登録し、保守点検契約データベース6fに登録されている高齢者などのために配布する処理の管理を行なう。この配布は、プリンタ13から出力した紙情報により郵便等で行ってもよいし、インターネット(符号8は、常時接続用のルータである)を経由した電子メール配信により行ってもよい。また、付帯サービスデータは、インターネットを経由して配信サーバからダウンロードすることにより取得・収集することが可能である。
【0025】
図2は、保守点検契約データベース6fに記憶されている各契約者のデータレコードの構成例である。主情報21には、契約者特定情報としての契約番号及び契約者名のデータが含まれており、契約年月日、契約対象となる浄化槽が設けられた建物(家屋)の戸建形態(一戸建又は集合住宅)、築年及び所在地の情報とともに保守点検内容情報が記憶されている。また、主情報21とは別に、当該建物の居住者の特定情報(居住者名)と、各居住者の年齢及び性別の情報を網羅したヒューマン因子情報22も合せて記憶されている。
【0026】
保守点検内容情報23には、排水施設の一覧情報が、いくつかの施設区分に区切られた形で網羅され、個々の施設と対応付けた形で点検結果情報30が入力・記憶されている。本実施形態では、トイレの便器からの汚水管路系統、台所、風呂場あるいは手洗い場等からの雑排水管路、雨水管路及び利水施設の4つの施設区分が設定され、各々、種々の仕様の排水施設名が登録されている。登録されている施設のうち、契約対象の建物に実際に設けられているものについては、設置場所に対応する図面上のエリア情報と設置数とが入力される。従って、エリア情報と設置数とが入力されていない施設は、その建物には設けられていないことを示す。
【0027】
図3は点検結果情報30の内容の一例を示すものであり、各施設の本体の老朽化状態、接続部品の老朽化状態、排水経路への接続状況、設備周辺も含めた設置状態の各項目に分け、それぞれ点検結果の優劣を数値の大小により表示する点検結果ポイントが、点検年月日(最終点検日)とともに記憶されている。本実施形態において点検結果ポイントは、各項目毎に4点満点(点数が高いほど状態は良好:優、良、可、不可)にて評価されており、その合計点数が総合ポイント(16点満点)として計算されている。この総合ポイントに一定の閾値(例えば8点)を設定し、該総合ポイントが閾値以下となった場合に、警報出力を行なうことができる。図3は、点検結果情報30を図1のモニタ12あるいはプリンタ11に出力した状態にて示したものであるが、上記の総合ポイントが閾値以下となった施設については、その施設(設備)名の表示状態(例えばセルの背景色や、文字の表示色など)を、閾値以下となっていない施設とは異なる警報表示状態とすることで、警報出力を行なうことができる。また、点検項目別にポイント閾値を設定し、閾値未満の点検項目について個別に警報出力を行なうこともできる。図3においては、項目別ポイントの閾値が2点に設定され、風呂排水系統配管の本体と接続部品が警報出力の対象となって、該当するセルの表示状態が警報表示状態に設定されている。図3には表れていないが、該当する項目のポイントが閾値を超える場合は「0」、閾値以下となった場合は「1」となる警報表示フラグが、各項目のセル及び総合ポイントのセルと一対一に対応付けた形で設けられている。この警報表示フラグの設定内容が排水ハザード予測情報、より詳しくは、各排水施設のハザード予測情報に相当するものである。なお、図3においては、総合ポイントが閾値以下となっている施設は存在していない。
【0028】
上記の点検結果ポイントは、浄化槽の定期点検時に建物敷地へ係員が赴き、各施設の状態を目視点検することにより付与されるもので、専用のチェックシートに記入したポイント付与結果を持ち帰り、図1のシステム1の入力部11から保守点検契約データベース6fに入力することができる。他方、パームトップパソコンなどの携帯型データ端末10にポイント入力し、該携帯型データ端末10を、インターフェース9を介してコンピュータ2に接続して、ポイントデータをコンピュータ2側に吸い上げるようにしてもよい。
【0029】
次に、保守点検契約データベース6fには、環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の少なくともいずれかに対応して、環境情報、仕様特定情報及びヒューマン因子情報の内容に応じ、点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正を行なうためのポイント補正情報が記憶されている。本実施形態では、係員が点検現場で取得した基礎ポイント(いわば生のポイント)に乗じられる重み係数として、各ポイント補正情報が定められている。ハザード発生を促進する方向に作用する重み係数は1未満の値が設定される。該係数を乗ずることにより、補正後のポイントは基礎ポイントよりも小さくなり、ハザード発生の警報出力に係る閾値により接近することとなる。逆にハザード発生抑制に寄与するものは1を超える値が設定される。これにより、補正後のポイントは基礎ポイントよりも大きくなり、上記警報出力に係る閾値からは遠ざかる。なお、ハザード発生の促進及び抑制のいずれにも寄与しないと思われる因子については、対応する重み係数を1に設定しておけばよい。なお、重み係数に代えて、基礎ポイントから減算ないし基礎ポイントに加算される補正バイアス値をポイント補正情報として用いることもできる。
【0030】
図4には環境重み係数の一例を示している。ここでは、土地種別(地域)、地形ないし地理的状態(周囲)、管路埋設地の表面状態、水流の外的要因の区分毎に想定される環境状態が規定され、それぞれ環境重み係数αが細分化された形で定義されている。これらの環境重み係数は、例えば係員による初期点検時に、建物及び排水設備毎に該当するものが全て選択され、保守点検契約データベース6fに入力される。また、再点検時には個々の環境因子に対する状態変化が確認され、必要に応じて対応する環境重み係数αの値が更新される。
【0031】
図5に各環境重み係数の設定例を示している。土地種別(地域)に関係する環境重み係数については、宅地の重み係数α01は1であり、他方、振動が加わりやすい工地の重み係数α03は割り引いて0.9に設定してある。また、農地、工地ほどには振動は加わらないが、水田や灌漑水路などに近接して排水口が位置していたりすると、その水位変動の影響を受け易くなるし、埋設管の上方を灌漑用水が流れることもありえる。その結果、土が削り取られて配管継ぎ目が損傷したりするなど、配管系統のハザード発生リスクが宅地よりは高くなると考えられるので、農地の重み係数α01を宅地と工地との中間に設定してある。
【0032】
次に、地形ないし地理的状態に係る重み係数については、雨水などの流れ込みが生じにくい台地、あるいは排水溝などが完備している造成地の重み係数α11、α14を最も大きな値(ここでは1)に設定し、雨水の集中ないし流れ込みの起こりやすい低地、湿地近接地ないし傾斜地や、土の崩落などが生じやすい崖近接地については、その重み係数α12、α13、α15、α16を、上記台地あるいは造成地よりも低く設定してある。
【0033】
また、管路埋設地の表面状態に係る重み係数については、耐久性の最も高い舗装地の重み係数α21を基準値(ここでは1)に設定し、耐久度に多少劣るが、これに次いで雨水流等による土の流失が生じにくい敷石地や芝生地の重み係数α22、α23を舗装地よりは多少低く設定し、土の流失が生じやすい裸地の重み係数α24はさらに小さい値に設定してある。また、排水管の流れを阻害するもうひとつの重要な因子として、庭などの植生と配管との位置関係がある。樹木などの植栽が配管に近接していると、張り出した根が配管を圧迫し、継ぎ目などに損傷を加える可能性が高まるし、根の張り出す力は想像以上に大きいので、排水管内部に根が侵入・貫通し、排水流をせき止めてしまう可能性もある。従って、植栽近接地の重み係数α25は舗装地等よりも小さい値に設定され、目視点検の結果、植栽貫通が認められた場合は、さらに小さい重み係数α26を設定するようにしている。
【0034】
水流の外的要因に係る重み係数については、隣地からの流れ込み及び流れ出しを考慮し、排水の阻害要因となる伏流水の存在(α31、α41)、不明水の流入及び湧出(α32、α42)及び汚濁施設の近接(α43)に関して、1より小さい重み係数が設定されている。
【0035】
次に、図4には、仕様特定情報に対応するポイント補正情報としての、設備重み係数βの一例を示している。ここでは、排水施設の種別が、汚水処理施設、排水装置、トイレ設備、排水桝及び配管形態に区分され、区分毎に想定される種々の具体的設備形態に対して、設備重み係数βが細分化された形で定義されている。これらの設備重み係数は、例えば係員による初期点検時に、その建物について該当する設備に対応するものが全て選択され、保守点検契約データベース6fに入力される。また、再点検時等において設備更新が確認された場合、必要に応じて対応する設備重み係数βの値が更新される。
【0036】
図5に各設備重み係数βの設定例を示している。汚水処理関係では、浄化槽が廃止されて下水道が完備されている場合、その下水方式として、排水効率のよい分流式下水が採用されている場合は、対応する重み係数β11の値を、排水効率の幾分悪い合流式下水が採用されている場合の重み係数β12の値よりも大きく設定する。ここでは、分流式下水の優位性を考慮して、その重み係数β11の値を1よりも大きな値に設定している。一方、依然として浄化槽が採用されている場合は、その浄化槽の排水形態(合併、単独、側溝、河川・水路)と浄化槽自体の清掃状況(点検時に確認する)等に応じて、対応する重み係数β21、β22、β23、β24の値を適宜設定する。また、排水方式が地下浸透式である場合は、浸透式排水床が目詰まり等を起こすと溢水の原因となり、要注意なので、対応する重み係数β25の値を1より小さく設定してある。
【0037】
次に、排水設備関係では、排水の流出を積極補助するポンプ設備が存在する場合に、対応する重み係数(β31)を基準値(ここでは1)に設定し、ポンプ設備が存在しない場合の重み係数(β32)をそれよりも小さい値に設定する。また、排水逆流によるハザードの可能性を考慮して、排水管に逆止弁が存在する場合に、対応する重み係数(β41)を最も大きな値(ここでは1)に設定し、逆止弁が存在しない場合の重み係数(β42)をそれよりも小さい値に設定する。
【0038】
また、トイレ設備関係では、深刻な異物詰まり等が生じても、便器の交換等が比較的容易な洋便器が採用されている場合の重み係数(β52)を基準値(ここでは1)に設定し、セメント埋設等により交換施工が非常に面倒な和便器では、ハザード発生時のリスクの高さを考慮して、その重み係数(β53)を洋便器の場合よりも小さく設定し、洋便器が採用されている場合よりも早期に警報出力がなされるよう、工夫されている。他方、洗浄便座(洋便器が前提)が採用されている場合は、トイレットペーパーの使用量が少なく配管詰まり等も生じにくいので、その重み係数(β51)を洗浄便座のない洋便器の場合よりも大きく設定してある。
【0039】
また、排水桝関係では、コンクリート排水桝の重み係数(β62)を基準値(ここでは1)に設定し、より破損の生じにくい樹脂排水桝が採用されている場合の重み係数(β62)を、それよりも大きく設定してある。また、排水中の固形残滓(例えば台所排水の場合の食物残滓など)を溜める溜め桝は、汚物や臭気が逆流しやすく、旧型施工のものが多いこともあって、対応する重み係数(β63)を、その心配の少ないトラップ桝の重み係数(β64)よりも小さく設定してある。
【0040】
排水管形態では、塩ビ管の重み係数(β72)を基準値(ここでは1)に設定し、より破損の生じやすい陶器管の重み係数(β71)をそれよりも小さく設定してある。また、損傷時のハザード規模が大きくなることから、一定径(例えば100mmφ)以上の太配管については、別途、1より小さい重み係数(β73)が設定され、また、損傷の発生頻度が高くなる長配管(例えば5m以上)についても、別途、1より小さい重み係数(β74)が設定されている。
【0041】
次に、ハザード発生時の影響が特に深刻な設備については、上記重み係数とは別に、アラート(警報出力)優先順位を規定する優先順位指数γを設定することもできる(数値が小さい程、アラートの優先順位が高い)。図5及び図6にその一例を示す。下水や浄化槽への汚染水排出が必須となる汚水や雑排水については、比較的清浄な水排出が前提となる雨水や利水施設よりもアラート優先順位が上位に設定されている。また、設備内部の状態を目視するための点検口が設けられていない設備については、設けられている設備よりもアラート優先順位が上位に設定されている。さらに、前述のごとく、設備交換工事が面倒な和便器については、洋便器よりもアラート優先順位が上位に設定されている。
【0042】
建物の排水施設の総点検は、点検箇所も多く時間とコストを要するので、数年に1回程度の定期点検に頼らざるを得ない。従って、ハザード予測対象となる排水施設については、保守点検契約データベース6fにおける最終点検日から現在の日付(ハザード予測対象日)までの間における経時的な劣化を予測し、上記最終点検日補正を施すことにより、排水施設のハザード予測対象日における状態推定情報を作成することが、次回点検日までのハザード防止対策を強化する上で有効である。本実施形態では、ハザード予測対象となる排水施設について、保守点検契約データベースにおける最終点検日からハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を、点検結果ポイントを予め定められた程度にて減少させる補正として行なう。
【0043】
具体的には、図6に示すように、係員が点検現場で取得した基礎ポイント(いわば生のポイント)に乗じられる経年重み係数τを、補正情報として使用する。設備には一定の耐用年数が定められていることが多いので、その耐用年数をTdとして、最終点検日から現在の日付(ハザード予測対象日)までに何年経過しているかを耐用年数Tdで割り、これを1から引き算することで、経年重み係数τを演算する。ただし、住居の築年が新しければ長持ちし、築年が古ければ早く寿命が到来するので、1から引き算する項には補正係数δを乗するのが妥当である。δは、ここでは築年が古いほど1に近い値を設定するようにしている。例えば、設備の耐用年数が20年で、δがほぼ1の老朽住宅の場合、最終点検日から5年が経過していれば、図6の計算式に基づくτは0.75となる。
【0044】
次に、保守点検契約データベース6fには、図2に示すごとく、家屋の居住者の性別、年齢層及び生活状態の少なくともいずれかを特定するヒューマン因子情報22が記憶されている。そして、このヒューマン因子情報22の内容に応じ、点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正を行なうためのポイント補正情報も用意されている。その具体例が、図6に示す人為重み係数εである。この人為重み係数εも、基礎ポイントに乗じられる形で使用される(基礎ポイントを減算するポイント補正情報としてもよい)。
【0045】
人為重み係数としてここで考慮されているのは、契約者(世帯主)の年齢であり、老年層ほど設備は大切に使用する傾向があるので(例えば、台所排水などでも生ごみ等を丁寧に取り除いて水を流すなど)、一定年齢(例えば50歳)以上での係数(ε11〜ε13)の値を基準(例えば1)とし、若くなるほど係数を減少させるようにしている。また、小さな子供がいると、おもちゃなどの異物を突っ込む恐れがあるので、子供の年齢に応じて別の係数(ε21〜ε23)を定め、低年齢化するほど値を小さくするようにしている。また、12歳以上の女性は長い髪を風呂で洗ったりすると、髪の毛等により配管詰まりを招きやすくなるので、これも1より小さいの別の係数(ε31)を定めている。また、生活状態二関連する因子としては、ペット保有の有無がある。ペットの体を風呂場等で洗うと毛が大量に抜け落ち、配管詰まりを招きやすくなるので、同様に1より小さいの別の係数(ε41)を定めている。
【0046】
以上のごとく、本実施形態では、係員が点検現場で取得した基礎ポイントPを
τ(経年重み係数)
ε(人為重み係数)
α(環境重み係数)
β(設備重み係数)
の4つを直列的に乗じて、最終的な判定ポイントとする。上記の重み係数のうち、ε、α、βは、いずれも複数の係数群が選択肢として用意され、契約毎に該当する係数が固有の組み合わせで選択して使用される。例えば、髪の毛による配管詰まりは、風呂や洗面所の排水についてのみ考慮すればよく、これに対応する人為重み係数ε31は、図3においては、風呂排水と洗面台との2つの設備についてのみ適用すればよい。点検対象となる設備別に使う各重み係数は、図1のハザード評価データベース6hに予め記憶しておく。
【0047】
図7は、図3の風呂排水(ケース1)及び和便器(ケース2)の場合の重み係数の選定例を示している。経年重み係数τは、最終点検日から5年経過している前提で0.8と計算されている状況を想定している。ケース1においては、人為重み係数は、図6のε13(=0.9:所帯主年齢25歳以下)、ε31(=0.8:12歳以上の女性)が選択され、環境重み係数は、図4及び図5のα01(=1:宅地)、α13(=0.9:湿地近接)及びα23(=0.98:芝生)が選択されている。また、設備重み係数は、β11(=1.05:分流式下水)、β21(=0.95:合併浄化槽)、β31(=1:ポンプ設備あり)、β42(=0.9:逆止弁なし)が選択されている。アラート優先順位γはデフォルト「2」が設定されている。ケース2においては、人為重み係数は、図6のε23(=0.8:子供年齢2〜5歳)が選択され、環境重み係数は、図4及び図5のα01(=1:宅地)、α13(=0.9:湿地近接)及びα25(=0.9:植栽近接)が選択されている。また、設備重み係数は、β11(=1.05:分流式下水)、β21(=0.95:合併浄化槽)、β31(=1:ポンプ設備あり)、β42(=0.9:逆止弁なし)及びβ53(=0.95:和便器)が選択されている。また、対象設備が和便器なので、アラート優先順位γは「1」が設定されている。
【0048】
ε、α及びβについては、各々複数の係数を用いるが、ここでは、それら複数の係数を平均して用いる。具体的には、各係数を種別(α、β、ε)毎に加算平均するようにしている。図8は、ケース1の計算例であり、総合補正係数W(τ×ε×α×β)は0.69である。図3に示す5年前の点検結果では、風呂排水の総合ポイント(基礎ポイント)は10点であり、これに上記の総合補正係数Wを乗じた判定ポイントは6.9となる。16点満点の半分を閾値に設定していれば、アラート(警報出力)の対象となる。一方、図9はケース2の計算例であり、総合補正係数W(τ×ε×α×β)は0.58とケース1よりも低い。この要因は主に、対象設備が和便器(β53)で、しかも便器に異物等をいたずら投入しやすい小さな子供が家族に含まれていること(ε23)にある。図3に示す5年前の点検結果では、和便器の総合ポイント(基礎ポイント)は12点とケース1よりも良好であるが、これに上記の総合補正係数Wを乗じた判定ポイントは7.0となり、16点満点の半分を閾値に設定すれば、基礎ポイントが比較的高いにも拘わらず、やはりアラート(警報出力)の対象となる。
【0049】
なお、単独でハザード発生に大きくかかわってくるような係数は、値がゼロに近づけば平均値もゼロに近づけ、他の係数が頑張ってもアラート判定が出るようにしておくほうが望ましい場合もある。その場合は、各係数を、加算平均でなく幾何平均(各係数を掛け算した値の、係数の数に対応した累乗根により求める)を用いるようにすればよい。
【0050】
図10に示すように、上記のようにして計算された判定ポイント(補正後の点検結果ポイント)130は、契約別及び設備別に対応付けて排水ハザード評価データベース6hに記憶される。図10は、その内容のモニタ12への出力例も兼ねて表示しているが、判定ポイントが閾値以下となった設備については、設備名の表示セルの色を、他のセルとは異ならせることにより(例えば判定ポイントが閾値を超えるものは白や青で表示し、閾値以下のものは赤で表示する)により、アラート出力を行なう。また、アラート設定された設備については、図11に示すように、別画面50により、最終点検日の古いもの(アラート順位γが上位のものは、これに優先)から優先的に、契約者特定情報(契約番号及び契約者名)とアラート対象となっている設備名とともに、一覧リスト53(排水ハザード予測情報の出力形態の一例である)を表示する。
【0051】
上記のようなアラート情報を参照することで、アラートが設定された契約者については、対象設備を含む排水施設の再点検を推奨する通知を行なうことができる。また、図11の画面で通報サービスのコマンド52を実行すると(例えばボタンクリック)、図1のシステム1に通信ネットワーク(インターネットを含む)を介して接続された、契約者の端末(パソコンあるいは携帯電話)に、アラート対象となっている設備を含む警報通知情報を電子メール等により送信することもできる。この段階では、基礎ポイントを各重み係数で補正した判定ポイントにより、アラート判定を行っているのであるが、これはあくまで、最終点検日からの、人為、環境あるいは設備仕様に応じた推定によるアラート判定であり、現実に再点検を行った結果として得られる基礎ポイントを用いてアラート判定をやり直したほうが、信頼性が高いことは言うまでもない。
【0052】
図12は、上記のような状況を受けて図3から約5年後に再点検して得られた更新後の点検結果情報の一例を示すものである。いずれの設備も総合ポイントについては、一応、閾値(16点満点中8点)よりも大きな値が得られているが、和便器、汚水管、風呂排水の3つについては、閾値にかなり肉薄した要注意の点数(9点ないし10点)を示している。そして、その各々のポイントの内訳を見ると、和便器及び汚水管については、接続部品と接続状況の2つが2点(「可」判定)であり、風呂排水配管については、本体が2点(「可」判定)であり、接続部品は1点(「不可」判定)である。そこで、点検時に係員は、1点判定の風呂排水配管の接続部品については即時交換・修理を、和便器及び汚水管の接続部品と接続状況、及び風呂排水配管の本体については、例えば1年以内の配管清掃、修理、あるいは交換を契約者に助言することができる。当然、これを受けて契約者が清掃や修理などの保守を実行すれば、該当の設備の基礎ポイントを向上することができる。
【0053】
また、本実施形態のシステム1では、排水施設に対応する点検結果ポイントに基づいて当該排水施設に対する共済保証率を算出するようにしている。また、排水施設に対応するポイント補正情報(環境情報、仕様特定情報あるいはヒューマン因子情報:前述の重み係数α、β及びγ)を用いて、各設備(排水施設)に対する共済掛金を算出するようにしている。図15は、共済内容評価データベース6iに登録・記憶されている、個々の共済契約内容の係るデータレコード(以下、共済データレコードともいう)40の一例を示すものである。該共済データレコード40は、図2の保守点検契約のデータレコードにおいて、その保守点検内容情報23に含まれているものと同様の排水施設の一覧情報を有し、共済対象として定められた施設にマーク(○)が付与されている。このマークの付与されていない施設は、当該の建物に含まれていないか、又は含まれていても共済の対象外となっていることを示す。
【0054】
共済の方式としては、点検結果ポイントの低い施設についての掛け金を引き上げ、共済保証率は、全額補償とせず、基礎金額から一定の率(あるいは一律な上限金額でもよい)割り引いた保証しかしないようにする方式が考えられるが、これには次のような問題がある。すなわち、修理を勧められた契約者は、共済では修理費が全額補償されないので、修理負担額と、修理しなかった場合の共済料率の引上幅とを比較してしまい、目先の負担額に惑わされやすい(つまり、修理負担が高額になると、掛け金の引上幅が安上がりであれば、修理を拒んでそちらを選んでしまう)。他方、共済料率をむやみに引き上げたり、修理を強要したりすることは、顧客にとってマイナスイメージにつながりやすく、共済の落としどころが探り難くなる。
【0055】
そこで、本実施形態では、共済の掛け率を一定とし、点検結果ポイントの低い施設は、基礎金額に対する共済保証率を引き下げる共済方式を採用している。前述のアラート機能により、特定の施設が要点検ないし要修理になることは、施設の評価額が目減りしていくのとイメージ的には変わらず、顧客側の希望で修理等を見送れば、評価点の下落に合せて保証率が引き下げられるので、イメージ的にも納得しやすい共済システムが実現する。もし修理せずに施設を放置すれば、点検結果ポイントがどんどん下がり、浄化槽などの高価な施設の場合、自己負担額は激増する。しかし、点検結果ポイントが比較的高いうちに修理しておけば、早期対処のため修理費は安上がりであるし、共済保証率も高いままなので、ハザード発生時の己負担額を大幅に低減できる。また、修理費が安ければ、共済運用益でこれをカバーすることも容易であり、運用が赤字化する危険性も下がるメリットがある。結果、不具合施設の修理に契約者をスムーズに導くことができる。すなわち、状態が大幅に悪化する前に簡単な修理をまめに行って施設を長持ちさせることで、施設の資産継続価値が増加し、契約者サイドも共済運営者サイドもお互いにメリットが大きくなるのである。また、点検結果ポイントが高く維持されている間は、施設が全損するようなハザードの発生率は低いので、共済保証率を全額補償に近いところまで引き上げることも可能である。
【0056】
より具体的には、共済対象となっている個々の施設については、個別の評価により基礎金額が定められ、ハザードが発生したときの設備の修理や交換に要する費用を保障するための共済上限金額は、設備毎に定められた上記の基礎金額に対して、所定の共済保障率を乗ずることにより算出・決定される。また、共済の掛け金は、上記の基礎金額に所定の掛け率を乗じた値を、その施設の掛け金として求め、これを合計したものが、契約者が負担する掛け金として算出される。施設別の基礎金額は、例えば、その施設が全損した場合に、同等施設を復旧するのに必要な(例えば新品にて再設置するのに必要な)金額として設定することができる。
【0057】
個々の施設の共済保証率は、定期点検時に取得される基礎ポイント(その点検日が一定年数(例えば1年)以上古い場合は、前述の方法によりこれを補正して得られる判定ポイントの値から算出される。具体的には、点検結果ポイントの悪い排水施設ほど、共済保証率が低く算出されるようになっている。判定ポイントによりハザードに対するアラート判定が生じた場合、契約者には再点検が促される。再点検により基礎ポイントが最新のものに更新されれば、これに基づいて計算される共済保証率も、判定ポイントによる推定値から、再点検により内容が裏付けられた基礎ポイントにより、現状により即した計算値として更新されることとなる。
【0058】
また、アラートの対象となった施設については修理や交換が勧告される。契約者がこの勧告に応じなかった場合は、当該の施設のポイントは低いままなので、共済保障率も低くなり共済上限金額も目減りする。当然、悪くなった箇所を修繕しないのだから、ハザード発生のリスクは高くなる。そして、万一、復旧費用が多額となる大きなハザードを招来してしまった場合は、契約者の負担は非常に大きくなる。本実施形態では、図13に示すように、上記判定ポイントを満点で割り算して相対化し、さらに、これを2乗した値を共済保障率として算出している。これにより、判定ポイントの減少とともに共済保障率が加速度的に減少するので、早期に修繕対応することの必要性を契約者により強く意識させることができる。
【0059】
また、共済の掛率については、環境情報、仕様特定情報あるいはヒューマン因子情報に対応する前述のポイント補正情報、本実施形態では、環境重み係数α、設備重み係数β及び人為重み係数εを用いて算出される。点検結果ポイントを悪化させる効果の大きいポイント補正情報は、ハザード発生のリスクが大きいことを意味するから、対応する排水施設に対する共済掛け率が大きくなるように、掛け金の算出に組み込まれる。本実施形態では、図13に示すように、1−α・β・εの値に、共済加入者数等に応じて掛け金を適正化するための一定の係数(ここでは、1/10)を乗じて掛率を算出している。図14は、図12の和便器の点検結果ポイントに対する上記各共済パラメータの計算例を示している。点検結果が示す基礎ポイントは10点であり、アラート閾値に近いこともあって共済保障率は0.39とかなり目減りしている。しかし、接続部品の交換により、「*」を付与した項目のポイントが「2」から満点の「4」に上がると、共済保障率は0.77となり、共済上限金額も格段にアップする。
【0060】
以下、各ソフトウェアの処理の流れを、図16〜図20のフローチャートにより示す。図16は、保守点検契約管理ソフトウェアの処理の流れであり、S1でモニタ12(図1)にメニュー表示し、S2で契約のデータレコードの新規登録が選択された場合はS3に進み、入力画面を表示する。以下、これに従い、契約情報を入力し(S4)、データベース6fに確定登録したあと(S5)、メニューに復帰する(S6)。一方、メニューで、希望する契約のデータレコードの表示が選択された場合は、S7からS8に進み検索画面を表示する。そして、希望するデータレコードの検索情報を入力し、S10で検索処理を行ない、S11でヒットしたデータレコードを表示する。
【0061】
図17は、共済登録管理ソフトウェアの処理の流れを示すものである。S51では、保守点検契約者の中で共済登録していない契約者に対し、共済登録を斡旋する処理を行なうか否かの選択をする。斡旋処理を行なう場合はS52に進み、保守点検契約データベース6fにおいて、一戸建でかつ共済未登録の契約者を検索し、S53では、その検索結果を、最終点検日の古い順にソートし、S54でこれをモニタ12に表示する。その表示された契約者を斡旋対象者として定め、S55で実際に斡旋を行なう契約者を入力部11(キーボード又はマウス)を用いて選択する。S56では、選択された契約者に共済加入案内の電子メールを送信する(あるいは、郵送のためのダイレクトメール用レターをプリンタ13から印刷出力する)。一方、共済登録処理を行なう場合はS57からS58に進み、契約者特定情報と対応付けて、共済登録に必要な情報を入力ないし保守点検契約データベース6fから取得し、S59で、その登録情報を共済登録データベース6gに登録する。
【0062】
図18は、排水ハザード評価・管理ソフトウェアによる評価処理の流れを示すものである。この処理は、共済登録者の全員について個別になされる。まず、S101では、対象となる保守点検契約者を特定し、S102では対応する契約の各設備の重み係数α及びβを全てリードする。S103では、図6にて説明済みの計算式により、経年重み係数τを算出する。また、S104では、図6にて説明済みの人為重み係数εをリードする。S105では、各設備の基礎ポイントをリードし、S106で、該基礎ポイントと重み係数α、β、ε、τより、図7で説明済の計算式により判定ポイントを算出する。S107では、算出された判定ポイントを閾値と比較して、閾値未満の設備に対しアラート設定を行なう。
【0063】
図19は、排水ハザード評価・管理ソフトウェアによる管理処理の流れを示すものである。S151で、アラート設定がなされた共済登録者を検索し、S152及びS153では、これを図11にて説明済みのリスト53の形で出力する。S154及びS155では、その出力されたリスト上で選択された登録者のハザード評価情報を、データベース6hから読み出して出力する。一方、S158で前述の通報サービスコマンド52が実行された場合はS159に進み、対象者のアラート設定された設備の情報を取得し、また、S160,161では該設備の修理前後の共済上限金額を各々算出・取得して、S162にてこれら情報を取りまとめ、電子メールにて各対象者に送信するか、郵送用のダイレクトメール用レターを印刷出力する。
【0064】
図20は、共済内容評価ソフトウェアの処理の流れを示すものである。S201では、評価すべき共済登録者を特定し、S202では設備別の基礎金額を設定する。また、S203では設備別の前述の重み係数(ポイント補正情報)α、β及びεより、図13の計算式に従い、各設備の共済の掛率を算出する。S204では、上記掛率と基礎金額とから設備別の掛け金と、その合計とを算出する。また、S205では、各設備の判定ポイント(点検直後の場合は、その点検結果として得られる基礎ポイント)から共済保障率を計算し、S206では、上記の基礎金額と共済保障率とから設備別の共済上限金額を算出し、共済内容評価データベース6iに登録する。また、前述の通報サービスを行なう場合に必要となる、修理後の予想共済上限金額をS207にて算出する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の排水施設共済管理システムの一例を示すブロック図。
【図2】保守点検契約データベースのデータレコードの一例を示す概念図。
【図3】点検結果情報の内容の一例を示す図。
【図4】環境重み係数α、設備重み係数β及びアラート優先順位γの例を示す図。
【図5】環境重み係数α、設備重み係数β及びアラート優先順位γの数値設定例を示す図。
【図6】経年重み係数τと人為重み係数εの設定例を示す図。
【図7】判定ポイントの計算式の一例を示す図。
【図8】判定ポイントの第一計算例を示す図。
【図9】判定ポイントの第二計算例を示す図。
【図10】排水ハザード評価データベースに記憶される判定ポイントの契約別データレコードの一例を示す図。
【図11】アラート対象設備を含む契約の一覧リスト出力例を示す図。
【図12】再点検により更新された点検結果情報の内容の一例を示す図。
【図13】共済掛金及び共済保障率の計算式の一例を示す図。
【図14】共済掛金及び共済保障率の計算例を示す図。
【図15】共済内容評価データベースのデータレコードの一例を示す図。
【図16】保守点検契約管理ソフトウェアの処理の流れを示すフローチャート。
【図17】共済登録管理ソフトウェアの処理の流れを示すフローチャート。
【図18】排水ハザード評価・管理ソフトウェアの処理の流れを示す第一のフローチャート。
【図19】同じく第二のフローチャート。
【図20】共済内容評価ソフトウェアの処理の流れを示す第一のフローチャート。
【符号の説明】
【0066】
1 排水施設共済管理システム
2 コンピュータ
6a 保守点検契約ソフトウェア
6b 共済登録管理ソフトウェア(共済登録手段)
6c 排水ハザード評価・管理ソフトウェア(排水ハザード予測情報作成手段)
6d 共済内容評価ソフトウェア(共済保証率算出手段、掛金算出手段)
6f 保守点検契約データベース(排水ハザード予測情報作成手段)
12 モニタ(排水ハザード予測情報出力手段)
13 プリンタ(排水ハザード予測情報出力手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の排水施設の保守点検契約を締結した契約者の特定情報を、前記排水施設の点検結果情報と対応付けて記憶した保守点検契約データベースと、
前記保守点検契約データベースに登録された前記契約者を、前記排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムの加入者として登録する共済登録手段と、
前記排水施設の前記点検結果情報に基づいて、該排水施設のハザード発生の予測に寄与する排水ハザード予測情報を作成する排水ハザード予測情報作成手段と、
前記共済登録手段に加入登録済みの前記保守点検契約について、作成された前記排水ハザード予測情報を、当該契約者の特定情報と対応付けて出力する排水ハザード予測情報出力手段と、
を有することを特徴とする排水施設共済管理システム。
【請求項2】
前記保守点検契約データベースには前記排水施設に対する前記点検結果情報が、その点検日と対応付けて記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースにおける最終点検日から一定日数経過させたハザード予測対象日を設定するとともに、前記最終点検日を有する点検結果情報に対し前記ハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を施すことにより、前記排水施設の前記ハザード予測対象日における状態推定情報を作成し、当該状態推定情報に基づいて前記排水ハザード予測情報を作成する請求項1記載の排水施設共済管理システム。
【請求項3】
前記保守点検契約データベースには、前記排水施設の、ハザード発生に関与する設置環境因子を特定する環境特定情報が記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースに記憶されている前記点検結果情報と前記環境情報との双方に基づいて、前記排水ハザード予測情報を作成する請求項1又は請求項2に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項4】
前記保守点検契約データベースには、前記排水施設の、ハザード発生に関与する仕様因子を特定するための仕様特定情報が記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースに記憶されている前記点検結果情報と前記仕様特定情報との双方に基づいて、前記排水ハザード予測情報を作成する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項5】
前記保守点検契約データベースには、前記建物をなす家屋の居住者の性別、年齢層及び生活状態の少なくともいずれかを特定するヒューマン因子情報が記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースに記憶されている前記点検結果情報と前記ヒューマン因子情報との双方に基づいて、前記排水ハザード予測情報を作成する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項6】
前記点検結果情報は、前記排水施設の点検結果の優劣を数値の大小により表示する点検結果ポイントを含むものであり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、前記排水ハザード予測情報として、各前記排水施設のハザード予測情報を対応する点検結果ポイントに基づいて作成し、前記契約毎に排水ハザード評価データ記憶部に記憶する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項7】
前記保守点検契約データベースには、前記環境情報、前記仕様特定情報及び前記ヒューマン因子情報の少なくともいずれかに対応して、前記環境情報、前記仕様特定情報及び前記ヒューマン因子情報の内容に応じ、前記点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正を行なうためのポイント補正情報が記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記点検結果ポイントと、当該排水施設に対応するポイント補正情報とを読み出して、該ポイント補正情報により前記点検結果ポイントを補正する演算を行ない、その補正後の点検結果ポイントに基づいて前記ハザード予測情報を作成する請求項6記載の排水施設共済管理システム。
【請求項8】
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースにおける最終点検日から一定日数経過させたハザード予測対象日を設定するとともに、前記最終点検日を有する点検結果情報に対し前記ハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を、前記点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正として行なう請求項6又は請求項7に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項9】
前記排水ハザード予測情報作成手段は、前記点検結果ポイントの数値が示す前記排水施設の評価状態が予め定められた基準レベル以上に悪化したか否かの判定を行ない、その判定結果を前記ハザード予測情報として作成する請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項10】
前記排水施設に対応する前記点検結果ポイントに基づいて、当該排水施設に対する共済保証率を算出する共済保証率算出手段と、前記排水施設に対応する前記ポイント補正情報に基づいて、前記排水施設に対する共済掛金を算出する掛金算出手段とを備える請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項1】
建物の排水施設の保守点検契約を締結した契約者の特定情報を、前記排水施設の点検結果情報と対応付けて記憶した保守点検契約データベースと、
前記保守点検契約データベースに登録された前記契約者を、前記排水施設の保守に要する費用負担共済を目的とした共済システムの加入者として登録する共済登録手段と、
前記排水施設の前記点検結果情報に基づいて、該排水施設のハザード発生の予測に寄与する排水ハザード予測情報を作成する排水ハザード予測情報作成手段と、
前記共済登録手段に加入登録済みの前記保守点検契約について、作成された前記排水ハザード予測情報を、当該契約者の特定情報と対応付けて出力する排水ハザード予測情報出力手段と、
を有することを特徴とする排水施設共済管理システム。
【請求項2】
前記保守点検契約データベースには前記排水施設に対する前記点検結果情報が、その点検日と対応付けて記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースにおける最終点検日から一定日数経過させたハザード予測対象日を設定するとともに、前記最終点検日を有する点検結果情報に対し前記ハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を施すことにより、前記排水施設の前記ハザード予測対象日における状態推定情報を作成し、当該状態推定情報に基づいて前記排水ハザード予測情報を作成する請求項1記載の排水施設共済管理システム。
【請求項3】
前記保守点検契約データベースには、前記排水施設の、ハザード発生に関与する設置環境因子を特定する環境特定情報が記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースに記憶されている前記点検結果情報と前記環境情報との双方に基づいて、前記排水ハザード予測情報を作成する請求項1又は請求項2に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項4】
前記保守点検契約データベースには、前記排水施設の、ハザード発生に関与する仕様因子を特定するための仕様特定情報が記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースに記憶されている前記点検結果情報と前記仕様特定情報との双方に基づいて、前記排水ハザード予測情報を作成する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項5】
前記保守点検契約データベースには、前記建物をなす家屋の居住者の性別、年齢層及び生活状態の少なくともいずれかを特定するヒューマン因子情報が記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースに記憶されている前記点検結果情報と前記ヒューマン因子情報との双方に基づいて、前記排水ハザード予測情報を作成する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項6】
前記点検結果情報は、前記排水施設の点検結果の優劣を数値の大小により表示する点検結果ポイントを含むものであり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、前記排水ハザード予測情報として、各前記排水施設のハザード予測情報を対応する点検結果ポイントに基づいて作成し、前記契約毎に排水ハザード評価データ記憶部に記憶する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項7】
前記保守点検契約データベースには、前記環境情報、前記仕様特定情報及び前記ヒューマン因子情報の少なくともいずれかに対応して、前記環境情報、前記仕様特定情報及び前記ヒューマン因子情報の内容に応じ、前記点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正を行なうためのポイント補正情報が記憶されてなり、
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記点検結果ポイントと、当該排水施設に対応するポイント補正情報とを読み出して、該ポイント補正情報により前記点検結果ポイントを補正する演算を行ない、その補正後の点検結果ポイントに基づいて前記ハザード予測情報を作成する請求項6記載の排水施設共済管理システム。
【請求項8】
前記排水ハザード予測情報作成手段は、ハザード予測対象となる排水施設について、前記保守点検契約データベースにおける最終点検日から一定日数経過させたハザード予測対象日を設定するとともに、前記最終点検日を有する点検結果情報に対し前記ハザード予測対象日に至るまでに予測される経時的な劣化補正を、前記点検結果ポイントを予め定められた程度にて増減させる補正として行なう請求項6又は請求項7に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項9】
前記排水ハザード予測情報作成手段は、前記点検結果ポイントの数値が示す前記排水施設の評価状態が予め定められた基準レベル以上に悪化したか否かの判定を行ない、その判定結果を前記ハザード予測情報として作成する請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【請求項10】
前記排水施設に対応する前記点検結果ポイントに基づいて、当該排水施設に対する共済保証率を算出する共済保証率算出手段と、前記排水施設に対応する前記ポイント補正情報に基づいて、前記排水施設に対する共済掛金を算出する掛金算出手段とを備える請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の排水施設共済管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−11606(P2007−11606A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190301(P2005−190301)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(505246804)野崎工業有限会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(505246804)野崎工業有限会社 (1)
【Fターム(参考)】
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