説明

排水用ホース

【課題】 底面に形成された通孔にドレンホース等の排水用ホースを挿着するにあたり、排水用ホースが通孔から外部に脱落するのを防止するめに所定の厚みのフランジ部を有していても、良好な排水性を得られるようにする。
【解決手段】 排水用ホース22は、内部に排水通路26を有する筒状のホース本体24と、このホース本体24の前記排水通路26の一方の開口端近傍部位に形成され且つ前記ホース本体24が挿入される被挿入体の通孔21の内径よりも大きな外径を有するフランジ部25とより構成され、このフランジ部25の表面側に、その外縁より前記排水通路26の開口部に向けて延びる流水路30が形成されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両用空調ユニットに搭載されたエバポレータから生ずるドレン水等の水を外部に排出するための排水用ホースの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調ユニットの内部に生じたドレン水を外部に排出するために、空調ケースの底部にケース外方に突出した管状の排水部を一体形成し、更にこの排水部に可撓性を有する排水管を接続する構造については既に公知である(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平2003−254473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに対し、本願出願人は、図5に示されるように、排水部20をケース6外方に突出した管状とせず単なる通孔21とする一方で、この通孔21にケース6内側からフランジ部を有する可撓性の排水用ホース22を挿着することを考えているところ、このフランジ部の肉厚が薄すぎると排水用ホース22が外側に向けて強く引っ張られることでフランジ部も中央に集約される方向に変形し、排水用ホース22全体が通孔21から外に抜けるおそれがある。その一方で、このフランジ部の肉厚が厚すぎると、図5の分割線の図上左側の様に、ドレン水Aのホース開口端部への流入に対してフランジ部の外縁部位が壁となって排水性が悪くなり、ケース6の底面にドレン水Aが数ミリほど溜まってカビの発生やケース6の腐食等の原因となるという不具合が考えられる。
【0004】
そこで、本発明は、ケースの底面に形成された通孔に、ドレンホース等の排水用ホースを挿着するにあたり、排水用ホースが通孔から外部に脱落するのを防止するめに所定の厚みのフランジ部を有しても、良好な排水性を得ることができる排水用ホースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る排水用ホースは、内部に排水通路を有する筒状のホース本体と、このホース本体の前記排水通路の一方の開口端近傍部位に形成され且つ前記ホース本体が挿入される被挿入体の通孔の内径よりも大きな外径を有するフランジ部とより構成され、このフランジ部の表面側では、当該フランジ部の肉厚を相対的に薄くすることにより、その外縁より前記排水通路の開口部に向けて延びる流水路が形成されていることを特徴としている(請求項1)。そして、前記フランジ部は、前記排水通路の開口部から外縁側に向かうに従い肉厚を薄くしつつ前記ホース本体側に傾けることで、前記外縁部位をリップ状のシール部としたことを特徴としている(請求項2)。更には、本発明に係る排水用ホースは、前記被挿入体として空調ユニットが用いられ、冷却用熱交換器から生じたドレン水をこの空調ユニット外に排出するためのものである(請求項3)。
【発明の効果】
【0006】
よって、この発明によれば、被挿入体(空調ユニット)の底面に形成された通孔に排水用ホースを挿着して排水部を構成する場合であっても、フランジ部の表面に形成され且つ当該フランジ部の他の部位よりも相対的に低い流水路を通って排水されるため、自然蒸発しない量の水が被挿入体(空調ユニット)の底面に溜まることを防止することができるので、ケースの腐食やカビの発生を防止することができる。
【0007】
特に請求項2に記載の発明によれば、フランジ部に形成されたシール部によりフランジ部とケースの底面とが密着するので、水がフランジ部の下方に浸入するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施形態を図面により説明する。
【0009】
図1において、この発明に係る排水用ホース22が用いられる温調ユニット部1の実施形態の一例が示されている。この温調ユニット部1は、内外気導入口、内外気切換ドア、送風機を少なくとも有するブロワユニット部(図示せず)と連結されることで、車両のセンターコンソール部に搭載されるセミ一体型の縦置形式の空調ユニットを構成している。
【0010】
この温調ユニット部1は、ブロワユニット部から開口部2を介して送られてきた空気を冷却するエバポレータ等の冷却用熱交換器3、この冷却用熱交換器3で冷却された空気を再加熱するヒータコア等の加熱用熱交換器4、及び冷却用熱交換器3と加熱用熱交換器4との間に配置されて当該加熱用熱交換器4に送られる空気とバイパスする空気との割合を調整するエアミックスドア5をユニットケース6内に有している。
【0011】
また、この温調ユニット部1は、ユニットケース6内に、加熱用熱交換器4に対しその下流側にて、この加熱用熱交換器4で再加熱された空気が通過する温風通路7が形成されていると共に、冷却用熱交換器3の下流側で且つ加熱用熱交換器4及びエアミックスドア5に対し図上略上方となる側に冷風通路8が形成されている。
【0012】
そして、温調ユニット部1の温風通路7からの温風と冷風通路8からの冷風とが合流混合されるエアミックスチャンバ9よりも下流側において、デフ吹出用開口部10、ベント吹出用開口部11、フット吹出用開口部12が、ユニットケース6に適宜開口している。これら吹出用開口部10、11、12は図示しないダクトを介して車室内に開口した吹出口と連通している。このうち、デフ吹出用開口部10、ベント吹出用開口部11には、吹出モード切換ドア14、15が各開口部10、11を開閉するために回転可能に配置されている。更にまた、この実施形態では、加熱用熱交換器4の下流側からフット吹出用開口部12まで空気を案内するエアガイド17が形成され、このエアガイド17とユニットケース6との間の流路上に吹出モード切換ドア18が回転可能に配置されて、フット吹出用開口部12の開閉を可能にしている。
【0013】
上記温調ユニット部1の冷却用熱交換器3で生じたドレン水を排出するための排出部20は、図1及び図5に示されるように、ユニットケース6の底面のうち冷却用熱交換器3より下流側部位に通孔21を形成し、この通孔21に排水用ホース22を挿着することで構成されている。
【0014】
排水用ホース22は、ある程度の剛性を与えるために、例えばEPDM(エチレンプロピレンゴム)等の合成樹脂材で硬さHs60の素材より形成されているもので、図2から図4に示される様に、ホース本体24とフランジ部25とで一体的に構成されている。
【0015】
このうち、ホース本体24は、内部に排水通路26を有する筒状のもので、フランジ部25側において、ユニットケース6をフランジ部25とで挟持するための突起部27がホース本体24の周部から径方向に沿って環状に突出形成されている。この突起部27は、ユニットケース6の下面と密着するための密着面27aを有すると共に、この密着面27aから反フランジ部側にかけて突起幅が暫時小さくなって、ケース6内側からホース本体24を通孔21に挿入する際には妨げとならないようになっている。そして、この突起部27とフランジ部25との間の間隔は、ユニットケース6の底面における肉厚と略同じ寸法(例えば1.5mmの寸法)が採られている。尚、排水通路26は、この実施形態では、突起部27と略同位からフランジ部25側にかけて、徐々に拡径されて、ドレン水が排水通路26に流れ込み易くなっている。
【0016】
これに対し、フランジ部25は、ホース本体24に対し排水通路26の一方の開口端近傍部位に一体的に形成されてなるもので、排水用ホース22がユニットケース6の通孔21より抜け落ちないよう、この通孔21よりも大きな外形状を有している。すなわち、フランジ部25は、この実施形態では、図2(a)に示される様に、ホース軸方向から見て通孔21と同心であるがこの通孔21より大きな外径寸法の円形をなしている。
【0017】
そして、このフランジ部25は、排水通路26の開口端部近傍部位から外縁部側に向かうに従いその肉厚が次第に薄くなると共にその外縁部位が密着面27aよりも反フランジ部側に垂れ下がることでリップ状のシール部28となっている。このため、通孔21に未挿着時に、この排水用ホース22を側方から見た場合には、特に図2(b)に示されるように、前記突起部27の密着面27aがフランジ部25のシール部28により隠れる状態となる。
【0018】
これによって、排水用ホース22を通孔21に挿着した際には、突起部27とフランジ部25とでユニットケース6が挟持されると共に、フランジ部25の先端のシール部28にてユニットケース6の内側面と密着し、且つ突起部27の密着面27aにてユニットケース6の外側面と密着するので、水がフランジ部25とユニットケース6との隙間から浸入することがなく、仮に浸入しても上述のように突起部27の密着面27aとユニットケース6とが密着して、二重にシールされているので、水がユニットケース6外に漏れ出すことを防止できる。
【0019】
また、フランジ部25は、その表面側において、当該フランジ部25の外縁より前記排水通路26の開口部に向けて延びる流水路30が形成されている。この流水路30の底面は、フランジ部25のユニットケース6側からの肉厚を薄くすることにより、フランジ部25の他の部位の表面よりも相対的に低くなっている。そして、フランジ部25の本数は、この実施形態では6本であるが必ずしもこれに限定されず、排水部20の四方より適宜排水することが可能な本数(例えば4本)であれば良い。更には、流水路30は、この実施形態では、図2(b)、図3及び図4に示されるように、基本的には略平面状であるが、フランジ部25の外縁近傍では傾斜面状とすることでその先端が平面状の部位よりも相対的に低くなっており、ユニットケース6の底面上に溜まった水量が少なくても排出することを可能としている。
【0020】
これによって、図5の分割線の図上右側に示されるように、フランジ部25の流水路30以外の部位に対し、排水用ホース22が通孔21から外部に脱落するのを防止するために必要な所定の厚みを採っても、流水路30を通ってドレン水が排水通路26に円滑に送られるので、フランジ部25の外縁の立ち上がり部位によりドレン水の排水通路26への流れが妨げられて、自然蒸発しない量のドレン水がユニットケース6の底面に溜まるのを防止することができる。
【0021】
尚、排水部20が設けられる対象を温調ユニット部1として説明してきたが必ずしも限定されず、比較的に溜まり易い形態のケースの底面に通孔21を形成し、この通孔21にフランジ部25を有する排水用ホース22を挿着する態様の全てにこの発明は用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、この発明に係る排水用ホースが用いられた空調ユニットの一例を示す断面図である。
【図2】図2(a)は、同上の排水用ホースの構成を示す平面図であり、図2(b)は、同上の排水用ホースの構成を示す側面図である。
【図3】図3は、同上の排水用ホースの構成を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は、同上の排水用ホースの構成を示す図1のA−A線断面図であり、図4(b)は、同上の排水用ホースの構成を示す図1のB−B線断面図である。
【図5】図5は、分割線の図上左側において排水用ホースに流水路がない場合の不具合を示す説明図であり、分割線の図上右側において排水用ホースに流水路がある場合のドレン水の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 温調ユニット部(空調ユニット)
3 冷却用熱交換器(エバポレータ)
6 ユニットケース
20 排水部
21 通孔
22 排水用ホース
24 ホース本体
25 フランジ部
26 排水通路
28 シール部
30 流水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に排水通路を有する筒状のホース本体と、このホース本体の前記排水通路の一方の開口端近傍部位に形成され且つ前記ホース本体が挿入される被挿入体の通孔の内径よりも大きな外径を有するフランジ部とより構成され、
このフランジ部の表面側では、当該フランジ部の肉厚を相対的に薄くすることにより、その外縁より前記排水通路の開口部に向けて延びる流水路が形成されていることを特徴とする排水用ホース。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記排水通路の開口部から外縁側に向かうに従い肉厚を薄くしつつ前記ホース本体側に傾けることで、前記外縁部位をリップ状のシール部としたことを特徴とする請求項1に記載の排水用ホース。
【請求項3】
前記被挿入体として空調ユニットが用いられ、冷却用熱交換器から生じたドレン水をこの空調ユニット外に排出するためのものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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