説明

排水管の通水試験方法及びその通水試験体

【課題】排水通水試験で試験体が排水管の途中の合流管又は分岐管に入らないようにする。
【解決手段】排水管の合流部又は分岐部に設けられた排水継手3は、合流管により便器などからの排水を受けるようになっている。その内部には、接続部31付近に旋回羽根32が備えられている。旋回羽根32は、垂設された排水管内に上から下へ水を流した場合に、水が旋回しながら流れ落ちるようにするものであり、水を旋回させることで排水管の中心部に空気の通り道を確保し、水と空気を分離して流すことを意図したものである。排水通水試験では、試験体が旋回羽根32に当たるなどによって合流管又は分岐管に飛び込むという問題を解消するために、低反発性材料からなる試験体を使用する。反発係数の小さい材料を試験体に用いることで、その試験体が旋回羽根32に当たったとしても、はね返ることなく下に落ちるので、合流管又は分岐管に飛び込むことはほとんどなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管の通水試験に適用する通水試験方法及び通水試験体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水通水試験を実施する場合には、排水管内に水とともに試験体を流し、その試験体を下流で回収することによって、排水管の施工状態の良否を判定している。試験体には、穴あきゴルフ練習球やゴムボール(スーパーボール)が一般的に使われている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−299709号公報(段落[0038])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、排水管が途中で合流又は分岐している場合には、試験体が合流管又は分岐管に入ってしまい、下流の回収地点に着かないことがあった。この場合、再度の試験とともに、未回収の試験体を追い水で流し出す作業が必要となる。
【0004】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、排水通水試験において、試験体が排水管の途中の合流管又は分岐管に入らないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、排水管の通水試験方法であって、途中に合流管又は分岐管を備えた排水管の、少なくとも1つの前記合流管又は分岐管の接続位置を挟んだ上流側の第1の箇所と下流側の第2の箇所のうち前記第1の箇所に、低反発性材料からなる試験体を投入する第1のステップと、前記第2の箇所で、前記第1の箇所に投入した前記試験体を回収したか否かを判定する第2のステップとを含むことを特徴とする。
この方法によれば、排水通水試験に低反発性材料からなる試験体を用いることによって、排水管内において試験体が合流管又は分岐管に入りにくくなるので、下流の箇所における試験体の回収率がよくなり、排水通水試験を効率よく行うことができる。
【0006】
また、本発明は、排水管の通水試験方法であって、前記試験体が、熱可塑性振動吸収材からなることを特徴とする。
この方法によれば、試験体に熱可塑性振動吸収材からなる球体を用いるため、特に試験体の反発係数が小さくなるので、さらに下流の箇所における試験体の回収率がよくなる。
【0007】
また、本発明は、排水管の通水試験方法であって、前記試験体が、エラステージ(登録商標)からなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、排水管の通水試験方法であって、前記試験体が、球体であることを特徴とする。
この方法によれば、試験体が球体であるので、排水管内における試験体の流れが円滑になる。
【0009】
また、本発明は、排水管の通水試験方法であって、前記試験体が、その中心から周縁に行くほど肉薄になる形状を有することを特徴とする。
この方法によれば、当該試験体は、上記の形状を有するので、排水管の一部を構成する排水継手の内管面に湾曲した旋回羽根が設けられていたとしても、旋回羽根に方向変更された排水の流れに従って回転し、その旋回羽根に引っ掛かることなく排水管の下まで落ちていく。また、横主管では、その底面と当該試験体周縁との間にすきまができるので、そのすきまに水が入り込むことによって当該試験体が浮き上がり、排水の流れに乗ってスムーズに下流へ移動する。
【0010】
また、本発明は、排水管の通水試験方法であって、前記試験体が、当該試験体に固有のID又は前記第1の箇所を示す情報を書き込み可能なICタグを備え、前記第2のステップは、前記第2の箇所に設置されたタグリーダが前記ID又は前記情報を読み取って判定することによって行われることを特徴とする。
この方法によれば、試験体がICタグを備えることによって、排水管の下流の箇所に設置されたタグリーダが、試験体のICタグに書き込まれたID又は情報を読み取るので、自動的に試験体が想定通りに回収されたか否かを判定することができる。
【0011】
また、本発明は、排水管の通水試験方法であって、前記低反発性材料が、球体に形成し、当該球体をコンクリート製の床に100cmの高さから落下させたときの反発高さが10cm以下であることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明は、排水管の通水試験体を含む。その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排水通水試験において、試験体が排水管の途中の合流管又は分岐管にほとんど入らないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本実施の形態では、低反発性材料からなる試験体を排水管の上流の箇所に投入し、排水管の下流の箇所で当該試験体の回収を確認するものである。試験体の投入及びその回収によって排水管内の施工状態の良否を判定することができる。
【0015】
<<第1実施形態>>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、排水管の合流部又は分岐部に設けられる排水継手の一例の外観を示す図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は平面図である。ここでは、排水継手3として、積水化学工業(株)の「ADスリム継手ハイパワー100A(超高層対応用)」を例にとる。排水継手3は、3方向(S方向、G方向、R方向)の接続部31を備えており、この接続部31に接続される合流管により便器などからの排水を受けるようになっている。ただし、本発明は排水管が合流管を備える場合に限らず、排水が分岐して流れる分岐管を備える場合にも適用可能である。図1(b)に示すように、排水継手3の内部の、接続部31付近に旋回羽根32が備え付けられている。旋回羽根32は、垂設された排水管内に上から下へ水を流した場合に、水が旋回しながら流れ落ちるようにするものである。これは、水を旋回させることによって、排水管の中心部に空間(空気の通り道)を確保し、水と空気を分離して流すことを意図したものである。
【0016】
本実施の形態の排水通水試験においては、試験体が旋回羽根32に当たるなどによって合流管又は分岐管に飛び込むことがあり、排水管に異常がないにもかかわらず、排水管の下流において試験体を回収できないことがあるという問題を解消するために、従来のゴルフ練習球やスーパーボールに代えて、低反発性材料からなる試験体(以下、低反発性試験球という)を使用する。反発係数の低い材料を試験体に用いることによって、その試験体が旋回羽根32に当たったとしても、はね返ることなく下に落ちていくので、分岐管に飛び込むことは少なくなると考えられる。試験体の形状については、立方体や球体などいろいろな形が適用可能であるが、排水管の下流における試験体の回収を効率よく行うためには、球体が望ましい。
【0017】
低反発性材料の実施例としては、太平化学製品株式会社製のエラステージ(登録商標)EDシリーズが適用可能である。エラステージEDシリーズは、熱可塑性振動吸収材であり、具体的には、エステル系ポリマー、ハロゲン系ポリマーをはじめとする複数のポリマーからなる種々の機能を有したポリマーアロイ型の材料であって、極めてゴムに近い性質を示す。また、熱可塑性を有するためリサイクルが可能である。
【0018】
以下、排水通水試験を模擬した比較実験及びその結果について説明する。なお、本実験は、試験体として、本発明の低反発性試験球を用いた場合(実施例)、ゴルフ練習球を用いた場合(比較例1)、スーパーボールを用いた場合(比較例2)について実施した。
【0019】
≪排水管の構成≫
図2は、比較実験で用いた排水管の構成を示す図である。実験配管(排水管1)は、排水立て管2と、2階以上の各階に設けられた排水継手3と、排水立て管2の1階部分に脚部継手4を介して接続された横主管5とにより構成されている。また、図3は、17階の排水継手3及び便器6の接続状態を示す図である。さらに、図4は、横主管5及びその周辺の構成を示す図である。
【0020】
排水立て管2は、内径が100mmの排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管である。排水継手3(図1参照)は、内径が100mmである。図3に示すように、実験配管の17階の排水継手3は、便器6(第1の箇所)に接続される。各階の排水継手3には、2つの接続部31(S方向及びG方向)に試験体回収用の短管(L=200mmの横枝管)及び袋体が設置される。残りの接続部31(R方向)は、塞がれている。2階の排水継手3では、さらに、S方向の接続部31に短管を設置することなく塞ぐものとする。横主管5は、内径が125mmの透明の塩化ビニル管である。図4に示すように、横主管5の末端部は、試験体回収位置51(第2の箇所)であり、その先には排水槽7(図2)が設置されている。
【0021】
≪比較実験の方法≫
比較実験の目的は、試験体の種類の違いによって試験体の回収状況がどう変わるかを観測し、その結果により本発明に係る低反発性試験球の効果を確認することである。上記のように、試験体には、ゴルフ練習球(直径41.5mm、比較例1)、スーパーボール(直径25.9mm、比較例2)及び低反発性試験球(直径24.9mm、実施例)を用いる。以下に、実験の手順を示す。
(1)17階の便器6の奥側に1の試験体をセットする。
(2)便器6の大側排水(8L/回)を行う。
(3)(1)及び(2)を繰り返す。
(4)横主管5の試験体回収位置51において、試験体を回収する。試験体を回収できなければ、各階における横枝管の袋の中にあるか否かを確認し、その階及び個数を記録する。
【0022】
なお、試験体に、当該試験体に固有のID又は当該試験体を投入した箇所を示す情報を書き込み可能なICタグを付して、(4)における試験体の確認を、横主管5の試験体回収位置51に設置されたタグリーダがID又は上記情報を読み取って判定することによって行うようにしてもよい。これによれば、自動的に試験体が想定通りに回収されたか否かを確認することができる。
【0023】
≪比較実験の結果及びその考察≫
図5は、比較実験の結果を示す図である。比較実験の結果は、試験体の途中階におけるG、S各方向の横枝管への飛び込み数である。
【0024】
図5の結果を、試験体の種類ごとに集約したものを表1に示す。
【表1】

【0025】
この結果によれば、低反発性試験球は、ゴルフ練習球及びスーパーボールと比較した場合に、明らかに横枝管への飛び込みを抑止できることが分かる。これにより、低反発性試験球は、排水通水試験に使用する試験体として、下流における回収を効率よく行うことができると言える。
【0026】
≪反発高さの測定と考察≫
各試験体の反発性を確認するために、反発高さ(跳ね返った床上最高高さ)を測定した。以下に、具体的な測定方法を示す。
(1)コンクリート製の床を使用する。
(2) 床上高さ100cmから試験体を自由落下させる。
(3)ビデオ撮影によりメジャーの目盛から反発高さを読取る。
(4)各試験体について10回ずつ測定し、平均値は最大値と最小値を除いた8回の平均をとる。
【0027】
その結果を、以下の表2に示す。
【表2】

【0028】
この結果によれば、低反発性試験球の反発高さは10cm以下(より詳細には、7cm以下)であって、おおむね5〜6cmであり、ゴルフ練習球と比較しても10分の1程度である。なお、低反発性試験球の4回目は、比較的大きく反発した。これは、ちょうどICタグの挿入口で硬くなっている部分が床面と接触したためであり、低反発性試験球の材料自体の特性を示すものではないと考えられる。ゴルフ練習球は、穴あき形状のため、跳ね方にばらつきがある。この結果に従えば、低反発性材料とは、その材料で作成した試験球を高さ100cmからコンクリート製の床に自由落下させた場合に、その試験球の反発高さが10cm以下となる材料であると言うことができる。
【0029】
以上説明した第1実施形態によれば、排水通水試験に低反発性材料からなる試験体を用いることによって、排水管1内において試験体が合流管又は分岐管にほとんど入らなくなるので、下流の箇所における試験体の回収率がよくなり、排水通水試験を効率よく行うことができる。
【0030】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態においては、(株)クボタ製の排水継手「HF形集合管」を用いて行った実験の内容を示す。
【0031】
図6は、本実施形態で用いた排水継手3aの一例を示す図である。図6(a)は排水継手の縦断面図であり、(b)は排水継手の平面図であり、(c)は断面A−Aを示す図であり、(d)は断面B−Bを示す図である。図6(a)に示すように、排水継手3aは、横枝管を接続するための接続部33が形成された合流部分に第1旋回羽根34が設けられ、さらに合流部分の下方に位置する箇所に第2旋回羽根35が設けられている。第1旋回羽根34は、上記第1実施形態における排水継手3の旋回羽根32(図1参照)と同様の平板形状を有する。一方、第2旋回羽根35は、後述するように湾曲した形状を有する。排水継手3aは、排水を第1旋回羽根34で第2旋回羽根35へ誘導し、第2旋回羽根35で旋回流にして、排水立て管2a(図7参照)へスムーズに排水する。
【0032】
第2旋回羽根35は、排水管の径方向内方へ向けて突設されている。そして、図6(d)に示すように、第2旋回羽根35の受水面35aは、排水継手3aの管内面36との接続部である根元部35bと、管内面36から離れた突端部35cとを備える。受水面35aの一部又は全部には、排水の流れを受水面35aの根元部35b側へ向ける指向手段35dが設けられている。第2旋回羽根35の受水面35aは、その長手方向の一部又は全部が凹状湾曲面に形成されている。すなわち、指向手段35dは、凹状湾曲面により形成されている。図6(d)に示すように、受水面35aは、管内面36側の根元部35bから突端部35cへ向けて徐々に一方側へ湾曲するようになった断面形状に形成されている。そして、この内曲がりとなる方の面(指向手段35d)により、排水流は方向を変えて旋回流となる。なお、第2旋回羽根35(旋回羽根)に関する詳細は、特開2001−208270号公報を参照されたい。
【0033】
図7は、実験で用いた排水管の構成を示す図である。排水管1aは、排水立て管2aと、2階以上の各階に設けられた排水継手3aと、排水立て管2aの1階部分に脚部継手4aを介して接続された横主管5aと、横主管5aの末端部に設置された排水槽7aとにより構成されている。実験では、試験体を10Fの便器6aから入れて、排水槽7aに到達すればOKとする。排水槽7aに到達しなければNGとするが、その場合には試験体がどこかに引っ掛かっているはずなので、その場所を特定する。試験体が引っ掛かり易いのは、例えば、各階の排水継手3aの横枝管や第2旋回羽根35である。
【0034】
図8は、実験で用いた試験体の形状を示す図である。図8に示す試験体は、いずれも抵反発性材料からなり、30mm強の内径の排水管に入れることができるという制約条件を満足する形状を有する。なお、図8の破線は、試験体に挿入されたICタグの概観を示す。図8(a)の試験体は、直径30mmの球である。これは、第1実施形態の試験体より少し直径を大きくしたものである。図8(b)の試験体は、長さ40mm及び直径10mmのカプセル型(両端が球面状に形成された棒型)である。図8(c)の試験体は、最大幅30mm、最小幅20mm及び厚さ10mmの扁平楕円球(小判型)である。楕円球とは、楕円を長軸又は短軸を回転軸として回転したときにできる回転体のことであり、ここでいう扁平楕円球とは、楕円球を回転軸と直角をなす方向に縮小した形状の立体である。なお、試験体は、必ずしも扁平楕円球でなくてもよく、中心から周縁に行くほど肉薄になるように形成されていればよく、その周縁は尖っていても丸まっていてもよい。例えば、碁石やクッションのような形状の立体であってもよい。
【0035】
実験では、図8に示した試験体以外に、第1実施形態で用いた低反発試験球(直径24.9mm)、スーパーボール及びゴルフ練習球も使用した。なお、試験体は、その内部にICタグを挿入する場合があるので、少なくともICタグのサイズ以上の大きさを有し、かつ、網で回収可能な大きさを有するものとし、また、排水槽7aにおいて人が視認可能であるものとする。さらに、試験体は、横主管5aを流れる水の力を受けて排水槽7aまで移動するので、水による浮力等を考慮すると、例えば水深約10〜20mmの水中に没して水面から出ない程度の大きさ及び比重を有するのが適当である。
【0036】
図9は、本実験及び追加実験の結果を示す図である。図9を参照しながら、実験の経過、結果及び考察について説明する。まず、第1実施形態で使用した直径24.9mmの試験球を用いて排水通水の実験を行った。その結果、図9の9a欄に示すように、40回中7回、試験球が排水継手3aの第2旋回羽根35に引っ掛かった。その原因は、排水継手3aに付設された第2旋回羽根35が湾曲していて、湾曲した受水面35aと管内面36との間のすきまが下方の位置ほど小さくなる形状になっているので、そこに試験球がはまってしまうからであった。
【0037】
そこで、図8に示した直径30mmの球、カプセル型及び扁平楕円球の試験体を用いて再度実験を行った。その結果、図9の9b欄に示すように、直径30mmの球は、40回中3回、第2旋回羽根35に(より正確には、第2旋回羽根35の受水面35aと、管内面36との間に;以下同様)引っ掛かった(図6(d)参照)。また、図9の9c、9d欄に示すように、カプセル型及び扁平楕円球の試験体は、第2旋回羽根35に引っ掛かることなく、下流の脚部継手4aまで流れ落ちた。
【0038】
その理由は、試験体が直径30mmの球の場合、直径が25mmより大きく、受水面35aの下部における管内面36との間のすきまにはまり難くなったと考えられる。なお、球はどの方向から見ても同じ形状なので、排水の流れによって回転したとしても第2旋回羽根35に対する形状が変化することはなく、球の直径が受水面35aの下部のすきまより若干大きい場合に、当該すきまにはまる可能性が最も高い。一方、試験体がカプセル型及び扁平楕円球の場合、その向きによって厚さや長さ等の寸法が異なるので、受水面35aの下部のすきまにはまり込もうとしても、指向手段35dによって旋回する排水の流れに従って試験体が向きを変えることによって、当該すきまにはまることなく、そこからすり抜けて落ちて行くと考えられる。そのためには、当該試験体のうち、少なくとも1つの断面のある径が第2旋回羽根35の下部のすきまより小さいことが必要である。
【0039】
さらに、横主管5aにおいて、カプセル型は流れにくく、常に4個前後が6000mmの横主管5a(図7参照)中に残っていた。また、扁平楕円球は流れやすく、すべてが排水槽7aまで到達した。その理由は、カプセル型の場合、その側面が円筒状なので、長さ方向と水の流れる方向とが一致すると横主管5aの底面に密着したようになり、水の流れに乗ることなく、底面との間の摩擦力を受けて移動し難いためと考えられる。一方、扁平楕円球の場合、その湾曲した形状のため、方向によらず横主管5aの底面と扁平楕円球周縁との間にすきまができるので、そのすきまに水が入り込むことによって、扁平楕円球が浮き上がり水の流れに乗ってスムーズに搬送されたと考えられる。なお、球の場合、横主管5aを一気に転がって排出される場合があった。
【0040】
図9の9e、9f欄には、試験体としてスーパーボール及びゴルフ練習球を用いた追加実験の結果も示している。スーパーボールやゴルフ練習球が第2旋回羽根35に引っ掛かることはなかったが、横枝管には飛び込むことがあった。
【0041】
以上説明した第2実施形態によれば、湾曲した第2旋回羽根35を有する排水継手3aを用いた実験では、低反発性材料からなる扁平楕円球の試験体を使用することによって、排水継手3aの第1旋回羽根34に当たって横枝管に入り込むことなく、かつ、第2旋回羽根35に引っ掛かることなく脚部継手4aまで通過し、さらに横主管5aの底面に留まることなくその中を排水槽7aまでスムーズに移動した。ここで、第1実施形態の排水継手3の旋回羽根32と、第2実施形態の排水継手3aの第1旋回羽根34とは、同様の平板形状を有する。従って、低反発性材料からなる扁平楕円球の試験体を使用すれば、積水化学工業(株)の排水継手3においても、旋回羽根32に当たってはね返って横枝管に飛び込むことはないと推定できる。また、低反発性材料からなる扁平楕円球の試験体を使用すれば、湾曲した旋回羽根を有する他の排水継手においても、旋回羽根に引っ掛かることはないと推定できる。なお、試験体は、必ずしも扁平楕円球でなくてもよく、その中心から周縁に行くほど肉薄になる形状を有する立体であればよい。
【0042】
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態で用いた排水継手の一例の外観を示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は平面図を示す。
【図2】排水通水試験を模擬した比較実験で用いた排水管の構成を示す図である。
【図3】17階の排水継手及び便器の接続状態を示す図である。
【図4】横主管及びその周辺の構成を示す図である。
【図5】比較実験の結果を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態で用いた排水継手の一例を示す図であり、(a)は排水継手の縦断面図を示し、(b)は排水継手の平面図を示し、(c)は断面A−Aを示し、(d)は断面B−Bを示す。
【図7】実験で用いた排水管の構成を示す図である。
【図8】実験で用いた試験体の形状を示す図であり、(a)は球の試験体を示し、(b)はカプセル型の試験体を示し、(c)は扁平楕円球の試験体を示す。
【図9】本実験及び追加実験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1、1a 排水管
2、2a 排水立て管
3、3a 排水継手
31 接続部
32 旋回羽根
33 接続部
34 第1旋回羽根
35 第2旋回羽根
35a 受水面
35b 根元部
35c 突端部
35d 指向手段
36 管内面
4、4a 脚部継手
5、5a 横主管
51 試験体回収位置
6、6a 便器
7、7a 排水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
途中に合流管又は分岐管を備えた排水管の、少なくとも1つの前記合流管又は分岐管の接続位置を挟んだ上流側の第1の箇所と下流側の第2の箇所のうち前記第1の箇所に、低反発性材料からなる試験体を投入する第1のステップと、
前記第2の箇所で、前記第1の箇所に投入した前記試験体を回収したか否かを判定する第2のステップと、
を含むことを特徴とする排水管の通水試験方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水管の通水試験方法であって、
前記試験体は、熱可塑性振動吸収材からなる
ことを特徴とする排水管の通水試験方法。
【請求項3】
請求項2に記載の排水管の通水試験方法であって、
前記試験体は、エラステージ(登録商標)からなる
ことを特徴とする排水管の通水試験方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の排水管の通水試験方法であって、
前記試験体は、球体である
ことを特徴とする排水管の通水試験方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の排水管の通水試験方法であって、
前記試験体は、その中心から周縁に行くほど肉薄になる形状を有する
ことを特徴とする排水管の通水試験方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の排水管の通水試験方法であって、
前記試験体は、当該試験体に固有のID又は前記第1の箇所を示す情報を書き込み可能なICタグを備え、
前記第2のステップは、前記第2の箇所に設置されたタグリーダが前記ID又は前記情報を読み取って判定することによって行われる
ことを特徴とする排水管の通水試験方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の排水管の通水試験方法であって、
前記低反発性材料は、球体に形成し、当該球体をコンクリート製の床に100cmの高さから落下させたときの反発高さが10cm以下である
ことを特徴とする排水管の通水試験方法。
【請求項8】
排水管の通水試験に用いられる試験体であって、
低反発性材料からなる
ことを特徴とする排水管の通水試験体。
【請求項9】
請求項8に記載の排水管の通水試験体であって、
熱可塑性振動吸収材からなる
ことを特徴とする排水管の通水試験体。
【請求項10】
請求項9に記載の排水管の通水試験体であって、
エラステージ(登録商標)からなる
ことを特徴とする排水管の通水試験体。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のいずれか一項に記載の排水管の通水試験体であって、
球体である
ことを特徴とする排水管の通水試験体。
【請求項12】
請求項8ないし請求項10のいずれか一項に記載の排水管の通水試験体であって、
その中心から周縁に行くほど肉薄になる形状を有する
ことを特徴とする排水管の通水試験体。
【請求項13】
請求項8ないし請求項12のいずれか一項に記載の排水管の通水試験体であって、
当該通水試験体に固有のID又は前記排水管に当該通水試験体を投入する箇所を示す情報を書き込み可能なICタグを備える
ことを特徴とする排水管の通水試験体。
【請求項14】
請求項8ないし請求項13のいずれか一項に記載の排水管の通水試験体であって、
前記低反発性材料は、球体に形成し、当該球体をコンクリート製の床に100cmの高さから落下させたときの反発高さが10cm以下である
ことを特徴とする排水管の通水試験体。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−25282(P2009−25282A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293548(P2007−293548)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)