説明

排泄物処理用介護装置

【課題】要介護者の日常の排泄物を十分な洗浄能力で清潔に処理すると共に、その処理作業を自動的に行うことができる構成とすることによって介護者の労働を削減するようにした排泄物処理用介護装置を提供する。
【解決手段】本発明の排泄物処理用介護装置は、排泄物の存在を感知するためのセンサ12と、本体2の内周側において要介護者8の尻部を支持する位置に配置され、センサ12で排泄物の存在を感知することによりバルーン10aが収縮をし、要介護者8の尻部の洗浄後バルーン10aを膨張させ、センサ12による排泄物の感知後に本体2内に洗浄水を放出する洗浄水放出装置と、本体2内に設けられた排水口14によって本体2内の排泄物と水分とを収容する装置を用いて排出すると、本体2内の水分を乾燥除去する乾燥装置とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝たきりの老人や病人等、排泄に関して介護を必要とする人(以下、要介護者と云う)の排泄物を自動的且つ清潔に処理することができる排泄物処理用介護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したような要介護者には、従来、介護用オムツを装着させることによって、日常の排泄物を処理することが行なわれている。ところが、要介護者が使用する介護オムツは、毎日使用するため、使用が嵩み、また、排泄後の作業は、介護者にとって非常に労力を要するものである。また、排泄後において、要介護者は、介護オムツを交換するまで、不快で不衛生な状態を強いられるという不都合もあった。
【0003】
そこで、従来、上記の問題点を解消するために、洗浄機能を備えた排泄物処理装置が提案されている。その例として、特許文献1に記載された、「患者用排泄物処理方法及びそれに用いる吸引型おしめカバー」について説明すると、寝たきりの患者に対して吸引型のおしめカバーを装着し、排泄センサで感知して患者の排泄物の吸引除去と温水による局部の洗浄と、温風による局部の乾燥とを行なう方法であって、おしめカバーの構造は、人の腰、臀部、肛門を覆うほぼパンツ形状にした適当な加圧と減圧に耐える材層からなる外カバーと、肌に密着する柔軟な内カバーと、その間のクッション材層とからなり、肛門付近には排泄センサと排泄物の吸引口と、その周囲の温水、温風吹出口及び内カバーとクッション材層との間へ送風する送風口を備えているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許平5−115514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術のように、介護用オムツに洗浄機能を備えたものは、その他にも種々の形態の介護用オムツとして開発されている。その開発内容は、排泄物の洗浄と、それに伴う吸引と乾燥とを効率的に行う機能を備えることによって、要介護者の日常の排泄に対処するようにしたものである。
【0006】
ところが、従来の介護用オムツは、肌に直接密着するものであって、肌と接触する部分を多く有するため、要介護者の体圧における密着部分の洗浄を十分に行うことができないという不都合があった。また、要介護者が、例えば横向きに寝ているとき、或いは起き上がる姿勢ができず、姿勢が長時間固定される状態にあるときには、寝たきりによる床ずれ等の障害が生じることになる。
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みて成されたもので、寝たきりの老人や病人等の要介護者の日常の排泄物を十分な洗浄能力で清潔に処理すると共に、その処理作業を自動的に行うことができる構成とすることによって介護者の労働を削減するようにした排泄物処理用介護装置を提供すことを目的とする、
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、本体をその開口部を上にしてベッドに設けられた凹所に収納し、ベッド上の要介護者の排泄物を前記本体で受ける状態で使用する排泄物処理用介護装置であって、排泄物の存在を感知するためのセンサと、前記本体の内周側において要介護者の尻部を支持する位置に配置され、前記センサで排泄物の存在を感知することにより収縮をし、要介護者の尻部の洗浄中に収縮を維持し、乾燥中に膨張停止させる座部と、前記センサによる排泄物の感知後に前記本体内に洗浄水を放出する洗浄水放出装置と、前記本体に設けられた排水口によって前記本体内の排泄物と水分とを収納する装置を用いて排出すると、前記本体内の水分を乾燥除去する乾燥装置とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、前記座部は、中央部に空所を有し上部に配置されたバルーンから成り、バルーンが収縮と膨張を繰り返すように構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記洗浄水放出装置として、前記本体にシャワーノズルが設けられていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記乾燥装置として、前記本体に温風ノズルが設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記座部を駆動する装置と、前記洗浄水放出装置と、前記乾燥装置と、これらを制御するコントローラとが収納箱に収納されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記座部を駆動する装置と、前記洗浄水放出装置と、前記乾燥装置と、これらを制御するコントローラとが収納箱に収納され、該収納箱に設置された前記コントローラの各種データ及びその他機器が動作しているデータを収集する機能と双方向性通信機能とを備えた装置を具備し、前記収納箱の外部の管理センターにデータを送信し、又は前記収納箱の外部から必要に応じて該収納箱の内部の機器を遠隔制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排泄物処理用介護装置によれば、従来の布製或いは紙製のオムツが不要であり、オムツに要する費用を削減すると共に、使用済みオムツの廃棄物処理費用をも削減することが可能となる。しかも、要介護者が本体内で排泄すると、その排泄物の存在をセンサで自動的に感知して洗浄水を放出する。また、排水口から本体内の排泄物と水分とを下部タンク又は排水溝に収納し、さらに本体内の水分を乾燥除去するものであり、排泄物の処理から要介護者の洗浄乾燥まで自動的に行うことができるため、要介護者は、迅速に排泄物が処理された清潔な状態に復帰でき、しかもオムツの交換や洗浄或いは拭き取り等の手間が全く不要となり、従来の要介護者に必要とされた介護者の労力が大幅に削減されると共に、要介護者の排泄物の処理に要していた費用も大幅に削減されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る排泄物処理用介護装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る排泄物処理用介護装置を示す平面図である。
【図3】(A)〜(E)はいずれも本発明の実施の形態に係る排泄物処理用介護装置の座部を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る排泄物処理用介護装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
本発明の実施の形態に係る排泄物処理用介護装置は、図1に示すように、本体2を備え、該本体2のほぼ全体をベッド4に設けられた凹所6に収納した状態で使用する。ベッド4は背中を支持する部分が起倒自在に構成され、この部分の起倒動作をコントローラ26によって制御できるように構成されている。本体2は開口部2aを備え。該開口部2aの上に、寝た状態の要介護者8の腰部8a及び脚部8bの尻周辺部が位置する。本体2の内周側に要介護者8の尻部を支持する座部10が配置され、該本体2の内底部に設けられたセンサ12で排泄物の存在を感知することにより、この座部10が収縮及び膨張を履行するように構成されている。
【0018】
本体2の内底部には、センサ12による排泄物の感知後に本体2内に洗浄水を放出する洗浄水放出装置と、本体2の底部に設けられた排水口14によって本体2内の排泄物と水分とを収納するタンク又は排水溝と、本体2内の水分を乾燥除去する乾燥装置とが設けられている。本体2は、プラスチック等の硬質材料によって形成され、寝た状態の要介護者の腰部8a及び両方の脚部8bの尻の周辺部の下側に位置する開口部2aを備えている。
【0019】
本体2の内周側に配置された座部10は、ポリウレタン等の樹脂を使用して空気を圧入することによってバルーン状に膨出する空気袋の形状に形成され、このバルーンに空気を圧入しない状態では座部10は収縮した状態にあるが、座部10に設けられた空気供給口16を介して空気が圧入されることにより、図1に示すように内方へ膨出する。この座部10は中央に上方から底部に至る空所11を有し、後述するように、本体2内に放出された洗浄水が本体2の底部に設けられた排水口14に流れるようにしている。
【0020】
前記座部10のバルーン10aには、空気供給口18が設けられ、配管20を介して圧気用コンプレッサー22に連通している。バルーン10aの形状は、本実施の形態では、図3(B)に示すように、両端が接続されていないU字状の形状をしているが、特にU字状に限定されるものではなく、図3(A)のように、円形のリング状の形状のものや、図3(C)のように、四角形のリング形状のものや、図3(D)のように、複数個のバルーンをリング状に並べたものや、図3(E)のように、弧状のバルーンを2個並べた形状、その他任意の形状とすることができる。また、座部10は1段構成に限定されるものではない。
【0021】
介護装置は、その動作や駆動の状態を検知するスイッチなどの動作を常に監視して安全を確保しなければならない。これらを具現するため、収納箱24(図1参照)に装置内のデータを収集する装置とそれらのデータを収納箱24の外部に送信できる機能を持った双方向通信制御装置を備え、収集箱24の内部のデータのみならず保守維持管理のため、収納箱24の外部より通信により制御することで、排泄物処理用介護装置を安全に管理することができるように構成されている。
【0022】
上記した構成において、洗浄、給水、乾燥を行なう各装置について述べると、図1に示すように、介護装置の本体2の底部のセンサ12で排泄物の存在を感知すると、センサ12に接続されたコントローラ26に信号が送られる。本体2の傾斜部にはシャワーノズル28とその両サイドに温風ノズル30が設けられている。温風ノズル30は配管20を介して温風圧装置32に接続され、シャワーノズル28は配管20を介して圧水用装置34に接続されている。温風圧装置32と圧水用装置34及び圧気用装置22はこれらに接続されたコントローラ26によって制御されるように構成されている。
【0023】
前記座部10を構成するバルーン10aに設けられた空気供給口16は配管20を介して圧気用装置22の供給口に接続されている。バルーン10aは、装置22のバルーン10a用の給排口をコントローラ26によって制御することにより、膨張と収縮を繰り返すことができるように構成されている。
【0024】
シャワーノズル28は上記したように圧水用装置34に接続され、この圧水用装置34に接続されたコントローラ26からの信号によって圧水用装置34が始動すると、圧水用装置34に接続された給水タンク36の洗浄水をシャワーノズル28から要介護者8の尻周辺部に向けて放出することができる。なお、給水タンク36には予め殺菌効果のある液体を混入させると共に、ヒータによって所定温度に保温した洗浄水が貯留されている。
【0025】
さらに、本体2の底部に設けられた排水口14に接続された汚水タンク40に接続され、
或いは排水溝を用いて排出する。
【0026】
以上のような各装置の動作について、図4のフローチャートを参照しながら説明すると、要介護者8の股間又は腰部8aの周辺は裸の状態であって、図1に示すようにベッド4に寝た姿勢で、要介護者8の尻の周辺部分がバルーン10aを介して、介護装置の本体2の開口部2aの上に位置する。
【0027】
通常、バルーン10aは膨らんだ状態にあり、該状態においてバルーン10aの上面は要介護者8の尻の周辺部分を楽な姿勢で支持するのに適した高さに設定され、該バルーン10aの上面は、ベッド4上の要介護者8の尻の周辺部分を支持する支持面を構成している。
【0028】
センサ12が排泄物を感知すると、その信号がコントローラ26に送られ、圧気用装置22が始動して、膨出状態で使用していた座部10の中、バルーン10aをいったん収縮し、要介護者8の尻部を本体2内に沈ませながら、同時に、ベッド4の背もたれが所定の傾斜角度まで起動され、要介護者の上半身が所定の角度まで起こされるが、並行して、座部バルーン10aが収縮する。
【0029】
次いで、圧水用装置34が始動すると、タイマースイッチがONにされ、シャワーノズル28から洗浄水が放出され、要介護者の尻部が洗浄される。このような洗浄は、タイマースイッチを所定時間セットしておき、タイマースイッチのOFF信号によって、自動的に圧水用装置34が停止すると、シャワーノズル28が停止することとなる。
【0030】
次いで、温風圧装置32が始動を開始すると、タイマースイッチがONにされると共に、温風ノズル30から乾燥空気が放出され、要介護者の肌に付着した水分や本体2内の乾燥を開始する。そして、その信号によってコントローラ26が制御され、シンクロするように、バルーン10aは膨張を始め、コントローラの制御によりベッド4の背もたれも元の平たんな状態に戻り、温風圧装置32が所定時間経過した後にタイマースイッチがOFFにされる。
【0031】
一方、本体2底部に流れ込んだ排泄物を排水口14から排出され、汚水タンク40に貯留又は排水溝に排出される。
【0032】
さらにコントローラ26から得られるデータや別途収納箱24内に設置された電子式温度センサ等(図示省略)のデータを収集し。外部と双方向性通信装置52を介して外部にデータを送出することができる。データ送受信端子54は、有線又は無線LAN端子であり、インターネットでデータを容易に収集できる。また、双方向性通信装置52を介して外部より内部のコントローラ26にアクセスすることができるため、保守作業を遠隔操作できるという利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の排泄物処理用介護装置は、寝たきりの老人や病人等の要介護者の日常の排泄物を十分な洗浄能力で清潔に処理すると共に、その処理作業を自動的に行うことができる構成とすることによって介護者の労働を削減するようにした排泄物処理用介護装置として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
2 本体
2a 開口部
4 ベッド
6 凹部
8 要介護者
10 座部
10a バルーン
11 空所
12 センサ
14 排水口
16 空気供給口
20 配管
22 圧気用装置
24 収納箱
26 コントローラ
28 シャワーノズル
30 温水ノズル
32 温風圧装置
34 圧水用装置
36 給水タンク
40 汚水タンク
52 双方向通信装置
54 データ送受信端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体をその開口部を上にしてベッドに設けられた凹所に収納し、ベッド上の要介護者の排泄物を前記本体で受ける状態で使用する排泄物処理用介護装置であって、
排泄物の存在を感知するためのセンサと、前記本体の内周側において要介護者の尻部を支持する位置に配置され、前記センサで排泄物の存在を感知することにより収縮をし、要介護者の尻部の洗浄中に収縮を維持し、乾燥中に膨張停止させる座部と、前記センサによる排泄物の感知後に前記本体内に洗浄水を放出する洗浄水放出装置と、前記本体に設けられた排水口によって前記本体内の排泄物と水分とを収納する装置を用いて排出すると、前記本体内の水分を乾燥除去する乾燥装置とを備えていることを特徴とする排泄物処理用介護装置。
【請求項2】
前記座部は、中央部に空所を有し上部に配置されたバルーンから成り、バルーンが収縮と膨張を繰り返すように構成したことを特徴とする請求項1に記載の排泄物処理用介護装置。
【請求項3】
前記洗浄水放出装置として、前記本体にシャワーノズルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排泄物処理用介護装置。
【請求項4】
前記乾燥装置として、前記本体に温風ノズルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排泄物処理用介護装置。
【請求項5】
前記座部を駆動する装置と、前記洗浄水放出装置と、前記乾燥装置と、これらを制御するコントローラとが収納箱に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の排泄物処理用介護装置。
【請求項6】
前記座部を駆動する装置と、前記洗浄水放出装置と、前記乾燥装置と、これらを制御するコントローラとが収納箱に収納され、該収納箱に設置された前記コントローラの各種データ及びその他機器が動作しているデータを収集する機能と双方向性通信機能とを備えた装置を具備し、前記収納箱の外部の管理センターにデータを送信し、又は前記収納箱の外部から必要に応じて該収納箱の内部の機器を遠隔制御することを特徴とする請求項1に記載の排泄物処理用介護装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−24641(P2011−24641A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170670(P2009−170670)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(506275564)
【Fターム(参考)】