説明

排泥再生処理装置および再生処理方法

【課題】排泥に適応して目標強度や、適用条件に応じた排泥再生処理を行えるようにする。
【解決手段】槽内を仕切部を介し複数の槽部に区画している混合槽を有し、地盤改良等で発生した排泥を所定槽部に投入し、水分調節するとともに、添加材を混合して流動性改良土に製造する排泥再生処理装置において、混合槽21の長手方向の一端に配されるバックホウ5、および他端付近に設けられて添加材を混合槽に自動投入する添加材供給装置24と、混合槽の長手方向に沿った一側付近に設けられた排泥貯蔵槽20、および他側付近に設けられて沈降分離した上層の泥水を溜める泥水貯蔵槽22とを備えている。バックホウは排泥貯蔵槽の排泥を混合槽へ移送可能、かつ前記混合槽内で沈降分離した上層の泥水を泥水貯蔵槽に移送可能である。添加材供給装置は混合槽に残った泥土の総量に応じ、固化材タンクや補助材タンクより、必要量を投入可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良や建設現場等で発生する排泥を、目標強度や適用条件に応じた流動性改良土として再生・製造する上で好適な排泥再生処理装置および再生処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の液状化および地盤の沈下防止対策として、砂等による圧縮(締め固め)工法、セメン等の固化材注入による固化工法がある。このうち、固化工法では、例えば、攪拌軸を地中貫入した後、引き抜きながら軸先端側に設けられたノズルからセメント系ミルクを高圧噴射する構成がある。この高圧噴射系では、セメント系ミルクが圧縮空気と共に噴射されるため地盤に対する粉砕作用も加わって均一に混合され易く高品質の改良杭を造成できる。ところで、高圧噴射系では、圧縮空気のエアーリフト作用により、泥水等を攪拌軸の軸周りに沿って地表に押上げる。この泥水等はセメント系ミルクを含むため排泥として回収しなかけばならない。この排泥は、性状が造成する杭の径や長さ等により大きく変化する。排泥の処理費用は施工費の2割以上となることもあり、経費増加の原因となっている。
【0003】
排泥の回収方法としては、通常、バキューム車、またはポンプとダンプの組合せにより、排出された排泥を回収運搬して産廃処理業者の所有する一時処理場にストックし、後日分離した水分を回収して水処理により再利用または河川などに放流するとともに、残余の泥土に固化材を投入して埋立材などとして使用されている。ところが、この構成では、輸送コストに加え、広い処理設備が必要であり、排泥中の土砂成分を沈降分離するまでに時間がかかる。そこで、従来技術には、特許文献1から3に例示されるごとく対象の排泥に固化材等を添加して強度を増した流動性改良土を製造する構成がある。特許文献1の構成は、粘土系残土や解泥された泥土を対象とし、縦型混練槽を用い、残土等を上側シュートから投入し、固化材を混練槽内の攪拌軸を通じて供給し、槽下部に達する迄に混合してプレミックス材に処理する。特許文献2の構成は、泥水製造部と運搬車や打設部との間に供給配管を配置し、該供給配管の吐出側に混練機およびその手前側の配管内に接続された導入部を有し、泥水製造部の泥水を供給配管を通じて圧送し、固化材を導入部から配管内に圧送して、泥水と共に混練機を介して混合しながら、運搬車や打設部へ吐出する。
【0004】
これに対し、特許文献3の構成は、特許文献1や2が有する次のような問題を解消するため本発明者らにより開発されたものである。すなわち、特許文献1や2の構成では、縦型混練槽が回転駆動される攪拌翼で混合したり、供給配管に接続された混練機で混合するため安定した稼働を維持しにくく、処理量が多くなると製造される改良土の性状がばらつきやすくなる。これは、処理対象の排泥として、杭造成を伴う地盤改良で発生するものを想定すると、貫入時に発生する排泥は水分量が多く 、杭造成時に発生する排泥はセメント等の添加材を含むため粘性が高くなる、つまり排泥の性状が大きく異なることが多く、しかも排泥中には石やガラなどが混在する場合も多く、攪拌翼やスタテックミキサ等の混合機構だと故障しやくメンテナンスに苦労し稼動率も悪くなるからである。
【0005】
そこで、特許文献3は、簡明な機構によって排泥を槽内に入れた状態で水分分離を行うとともに、目標強度・適用条件に応じた流動性改良土を確実に製造可能にしたり、機構を簡明化することで故障の虞を解消したものである。つまり、この再生処理装置は、混合槽およびバックホウを備え、混合槽に投入した排泥を、該排泥から泥水を分離して泥水を除去可能にしたり、バックホウを介した操作により混合槽外から槽内の排泥および添加材を混合することを前提とし、混合槽としては槽内を第1槽および第2槽に仕切部を介して区画しているとともに、該仕切部を各槽内の底面から湾曲状に立ち上がり、かつ互いの湾曲状の頂部を接合した状態に形成している。また、この処理方法は、前記装置を使用して、排泥を運搬車等から混合槽の第1槽側に投入する排泥投入工程と、第1槽の排泥をバックホウにより第2槽に移す操作に伴って、排泥成分のうち、比重の大きな泥土を第2槽側に多く溜め、比重の小さい泥水を第1槽側に溜めるとともに、第1槽側で上層の泥水と下層の沈降成分である泥土とに分離し、上層の泥水を槽外へ除去する泥水除去工程と、混合槽に残った泥土の総量を計測し、その総量に応じて添加材の総量を算出する算出工程と、混合槽内で泥土と添加材とをバックホウにより混ぜる混合工程とを経るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3150453号公報
【特許文献2】特許第3605709号公報
【特許文献3】特開2008−202273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3の構成では、地盤改良域や建設現場に混合槽を設置し、現場で使用したり用意されるバックホウを利用することにより、混合槽に投入した排泥から泥土だけを槽内に残し、該泥土に応じた添加材を加えて、バックホウの操作により効率よく混合し、かつ故障の虞もなく流動性改良土を製造容易となるが、次のような点から未だ問題があった。
【0008】
(1)混合槽としては、第1槽および第2槽の2つに区画して泥土を溜める槽と沈降分離する槽とに分けられため排泥から泥水を分離する操作が画一となる。対象の排泥は、運搬車から混合槽に投入することを前提としているため混合槽の一部に扉を開閉可能に設けなくてはならず、また、排泥の性状などに応じて1回の処理量を可変しようとしても的確に対処し難かった。
(2)泥水の除去は、混合槽で沈降分離した上層の泥水を回収装置であるポンプにより槽外へ移送することを前提としているため複雑化することに加え、例えばバックホウにより排泥を第1槽と第2槽との間で移送などを行っている途中で沈降分離した上層の泥水を槽外へ移送できなかった。要は、泥水除去工程では、ポンプを槽内に配置してからでないと操作できず、ポンプを槽内に配置した後はバックホウにより排泥を第1槽と第2槽との間で移送し難くなるため融通性に欠けていた。
(3)添加材の投入は、補助ミキサーを使用し、混合槽から移した泥土と添加材とを予備混合してから混合槽に戻す構成を開示しているが、添加材のストックおよび計量は混合槽から離れた箇所で行われるため搬送や管理などに煩わされる。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するものであり、その目的は、更なる簡易化を図っても、排泥の性状に適応して目標強度や、適用条件に応じた排泥再生処理を行えるようにした排泥再生処理装置および再生処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の本発明は、槽内を仕切部を介し複数の槽部に区画している混合槽を有し、地盤改良等で発生した排泥を、前記混合槽の複数の槽部のうち、所定槽部に投入し、バックホウにより前記所定槽部の排泥を他の槽部に移す操作を伴って槽部内で上層の泥水と下層の泥土とに沈降分離して、前記上層の泥水を槽外へ除去して水分調節するとともに、添加材を混合して流動性改良土に製造する排泥再生処理装置において、前記混合槽の長手方向の一端付近に配される前記バックホウ、および前記混合槽の長手方向の他端付近に設けられて前記添加材を前記混合槽に自動投入する添加材供給装置と、前記混合槽の長手方向に沿った一側付近に設けられた前記発生した排泥を溜める排泥貯蔵槽、および前記混合槽の長手方向に沿った他側付近に設けられて前記沈降分離した上層の泥水を溜める泥水貯蔵槽とを備えている。同時に、前記バックホウは前記排泥貯蔵槽の排泥を前記混合槽へ移送可能、かつ前記混合槽内で沈降分離した上層の泥水を前記泥水貯蔵槽に移送可能であり、前記添加材供給装置は前記添加材としてセメント等の固化材を入れた固化材タンク、および強度促進材等の補助材を入れた補助材タンクを有し、前記混合槽に残った泥土の総量に応じ、前記固化材タンクまたは/および前記補助材タンクより、必要量の前記固化材または、必要量の前記固化材および前記補助材を前記混合槽に投入可能となっていることを特徴としている。
【0011】
以上の本発明において、混合槽は、槽内を仕切部を介し複数の槽部に区画されていればよいが、例えば、形態のごとく3つに区画されていると、添加材供給装置側の槽部は泥土を溜める槽とし、他の2つの槽部は排泥を沈降分離する槽および主に泥水を溜める槽として利用できる。このため、混合槽は3以上の槽部に区画されていることが好ましい。排泥とは、自然沈降により比重の小さな泥水側および比重の大きな泥土側に分離可能な泥状物で、建設汚泥処理土利用技術基準(国土交通省)で規定している「建設汚泥」を含む。泥土や泥水には土および水以外に砂、小石、ガラ等が常識的な範囲で含まれている。
【0012】
以上の本発明は、請求項2,3のごとく具体化されることがより好ましい。すなわち、
(1)前記添加材供給装置は、前記固化材タンクおよび補助材タンクを独立して計測する各タンク用の荷重計測手段と、一端側が前記各タンクの下側排出部に開閉弁を介して接続され、他端側が前記混合槽内に開口しているスクリュ移送手段とを有している構成である(請求項2)。
(2)前記複数の槽部は、前記仕切部の高さ、または/および、槽底面の高さが異なるよう設けられることにより、前記排泥が沈降分離して上層の泥水を一方の槽部から他方の槽部へ流出容易になっている構成である。ことを特徴とする構成である(請求項3)。
【0013】
これに対し、請求項4の本発明方法は、地盤改良等で発生する排泥を集めて、該排泥を水分調節した後、添加材を混合して流動性改良土に製造する排泥再生処理方法において、請求項1から3の何れかに記載の排泥再生処理装置を使用して、前記排泥貯蔵槽内の排泥を前記バックホウにより前記混合槽の所定槽部に移送する排泥投入工程と、前記所定槽部の排泥を前記バックホウにより他の槽部に移す操作に伴って、比重の大きな泥土を多く溜める槽部と、比重の小さい泥水を溜めるとともに上層の泥水と下層の沈降成分である泥土とに分離する槽部とに分けた後、前記上層の泥水を前記バックホウにより前記泥水貯蔵槽に移す泥水除去工程と、前記混合槽に残った泥土の総量を計測し、前記泥土の総量に対応した前記添加材の投入量を前記添加材供給装置より混合槽内に供給する添加材投入工程と、前記混合槽で前記泥土と前記添加材とを前記バックホウにより目標の攪拌度まで混ぜる混合工程とを経ることを特徴としている。
【0014】
なお、以上の添加材投入工程において、泥土の総量は、例えば、各槽部内に底面から上に向かって、容量目盛を付しておき、該目盛を計測して各槽内に溜まっている泥土量を合算して求める方法、重量計を使用して混合槽と各槽内に溜まっている泥土量との総重量から混合槽分の重量を減じて求める方法の何れでもよい。また、前者では、泥土の総容量と当該泥土の平均的な密度から槽内泥土の総重量に換算することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1と4の各発明では、混合槽およびバックホウに加えて、添加材供給装置、排泥貯蔵槽、泥水貯蔵槽を組として構成されているため、同じバックホウにより請求項4の排泥投入工程、泥水除去工程、混合工程を的確に操作できる。また、添加材供給装置が混合槽の周囲のうちバックホウから最も離れている箇所にあるため邪魔にならず、かつ混合槽に固化材や補助材を直に投入できる。
【0016】
すなわち、各発明では、混合槽が特許文献3のごとく扉を必要といないため簡素化でき、排泥投入工程では排泥の性状を把握しながら1回の処理量を可変し易くなる。泥水除去工程ではポンプを使用しないため適当な時期に直ちに行うことができる。混合工程では添加材供給装置により固化材や補助材を効率よく投入できる。しかも、請求項4の発明では、同じバックホウ、ないしはバックホウの操作者により、排泥投入工程、泥水除去工程、添加材投入工程、混合工程を順に行うことで、待ち時間がなく、対象排泥の性状に応じて的確かつ効率よく操作できる。
【0017】
請求項2の発明では、添加材供給装置として、固化材タンクおよび補助材タンクを独立して計測する各タンク用の荷重計測手段、一端側が各タンクの下側排出部に開閉弁を介して接続され、他端側が混合槽内に開口しているスクリュ移送手段を有しているため、固化材または、固化材および補助材の添加量を設定すると、それに応じた量を混合槽内に自動的に投入することも容易に実現できる。
【0018】
請求項3の発明では、各槽部が仕切部の高さ、または/および、槽底面の高さが異なるよう設けられているため排泥が沈降分離して上層の泥水を一方の槽部から他方の槽部へ流出容易になり、引いては排泥の性状や処理量などに応じてより最適な操作性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明方法の全体の流れを示す説明用模式図である。
【図2】本発明の排泥再生処理装置を示す平面図である。
【図3】図2の排泥再生処理装置を混合槽だけ断面した模式側面図である。
【図4】攪拌槽内におけるバックホウのバケットの旋回軌跡を示す断面図である。
【図5】添加材供給装置の模式平面図である。
【図6】図5の装置の模式側面図である。
【図7】図5の装置を矢印A方向から見た模式図である。
【図8】(a)は図5の装置のB−B線に沿った模式断面図、(b)は図5の装置のC−C線に沿った模式部分断面図である。
【図9】添加材供給装置の自動投入動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な形態例について添付図面を参照して説明する。この説明では、全体の概要、排泥再生処理装置およびそれを用いた処理方法の順に詳述する。
【0021】
(概要)図1は本発明装置および処理方法の適用例として、地盤改良工法で発生した排泥を処理対象とし該地盤改良の関連設備を含めた全体のプラント構成を模式的に示したものである。同図において、地盤改良域の敷地内(紙面全体を敷地とみなす)は、一応、地盤改良工区1と、敷地内の一画に設けられた再生作業区2と、再生作業区2に隣接して再生処理された流動性再生処理土を一時保存する保存区3とに区画されている。
【0022】
地盤改良工区1には、施工機10が設置されるとともに、セメントミルク製造プラント11、水タンク12等が付設されている。施工機10は、模式化しているが、攪拌軸14を回転しながら貫入したり引き抜く機構である。攪拌軸14と関係して、特許第3389527号公報に示されるごとくセメントミルクを圧縮空気に同伴させて攪拌軸内に沿って送る配管部と該配管部の下側に接続された吐出部やノズル(これを第1構成という)、または、特許第3416774号公報に示されるごとくセメントミルクと圧縮空気とを攪拌軸内に沿ってそれぞれ独立して送る供給管と該配管部の下側に接続されてセメントミルクを圧縮空気に同伴して噴射する混合エジェクター(これを第2構成という)を有している。
【0023】
セメントミルク製造プラント11は、セメントおよび水などからセメントミルクを製造する。そして、施工機10による杭造成では、製造されたセメントミルクが攪拌軸14の上側に設けられた不図示のスイベルジョイント、前記第1構成または第2構成を介して地中に圧縮空気とともに噴出されて原位置土と混合され、攪拌軸14の引き抜き伴って改良杭として造成される。また、セメントミルク製造プラント11には、後述する処理対象の排泥から回収された水が掘削水として水貯槽12に貯留されており、例えば、該掘削水が攪拌軸14を地中に貫入する過程で高圧ポンプ13、前記したスイベルジョイント、攪拌軸14内の供給管へ圧送されて地中に噴出されるようになっている。以上の杭造成では、圧縮空気のエアーリフト作用により、泥水やセメントミルクを含む泥土として攪拌軸14の軸周りに沿って地表側へ押出されて、地盤Eの地表側にあって改良杭を造成する付近に予め設けられた釜場15に一時貯留される。一時貯留された排泥はバキュームタンク式回収車4に回収され、再生処理区2に設置された排泥貯蔵槽20に移し替えられる。つまり、この例では、回収車4が改良工区1と再生作業区2との間を往復するようになっている
【0024】
再生作業区2には、バックホウ5、排泥貯蔵槽20、混合槽21、泥水貯蔵槽22、添加材供給装置24が組として設けられており、バックホウ5が排泥貯蔵槽20の排泥を混合槽21の所定槽部に移す作業、混合槽21に入れられた排泥が沈降分離し、その上層の泥水を泥水貯蔵槽22に移す作業、混合槽21で排泥から泥水を除去した後の泥土と添加材供給装置24より投入された添加材とを混合攪拌する作業、混合槽21で製造された再生処理土を保存区3に移す作業を行う。また、保存区3に野積みされた再生処理土は、所定期間養生後、汎用ダンプトラック6に積替えられて敷地内、または、敷地外の他の造成工区に運搬されて有効利用されるようになっている。但し、保存区3は省略してもよい。その場合は、例えば、後述する混合槽20内を区画した複数の槽部のうち、任意槽部を製造された再生処理土用の仮保存部として利用し、そこからダンプトラック6に積み込むことが好ましい。
【0025】
(排泥再生処理装置)図2から図4に示される排泥再生処理装置は、上記したごとくバックホウ5、排泥貯蔵槽20、混合槽21、泥水貯蔵槽22、添加材供給装置24が組とし構成されている。この例では、バックホウ5を除く、排泥貯蔵槽20、混合槽21、泥水貯蔵槽22、添加材供給装置24が一つのパッケージとして、大型トラックなどに積載して施工現場まで搬送可能な大きさに設定されている。また、この装置構造の特徴は、混合槽21は中心に位置し、該混合槽20の周囲にあって、排泥貯蔵槽20が混合槽21の長手方向に沿った一側付近に設けられ、泥水貯蔵槽22が混合槽21の長手方向に沿った他側付近に設けられ、バックホウ5が混合槽21の長手方向の一端付近に配置され、添加材供給装置24が混合槽21の長手方向の他端付近に配設されている。
【0026】
ここで、バックホウ5は、既存ものであり、キャタピラ走行式ベースマシンの上部に設けられた操作室5a、操作室5aで操作される可動式の第1アーム5bおよび第2アーム5c、第2アーム5cの先端側にヒンジ軸を介して連結されたバケット5dを有している。第1アーム5bは、キャタピラ走行式ベースマシンの前部に対し傾動可能に軸支されていて、油圧式シリンダにより傾動調整される。第2アーム5cは、第1アーム5bの先端側に対し傾動可能に軸支されていて、油圧式シリンダにより傾動調整される。バケット5dは、第2アーム5cの先端側に対し支軸を介して枢支されていて、油圧式シリンダにより傾動調整される。
【0027】
排泥貯蔵槽20は、上開口した単純な槽構造であり、地盤改良工区1で発生した排泥を一時的に溜めるための槽である。なお、上記した改良杭の造成により排出される排泥には、水分の多いもの、少ないもの、固化材を多く含むもの、少ないものなど、地盤、施工方法、操作条件、改良杭の仕様によっても大きく変化する。それ故、この構造では、地盤改良工区1で発生した排泥を直に混合槽21に投入せず、一旦排泥貯蔵槽20に溜めることによって、混合槽21でバッチ毎に処理する排泥の性状、つまり1回に再生処理する総排泥としてそれなりに均一化されるようにし、作業手順や作業時間などがバッチ間で余りばらつかないようにした。
【0028】
混合槽21は、鋼板材の組み合わせによって作製され、上部開口した長方形の箱形容器となっているとともに、槽内が仕切部23a,23bを介して3つの槽部21a,21b,21cに区画されている。各槽部21a〜21cは、底面が横断面で概略円弧状に形成されているとともに、仕切部23a,23bが両側の円弧状の立ち上がり部によって断面山形ないしは断面略三角形となっている。これらの形状は、図4の模式図から推察されるように、バックホウ5のバケット5dを各槽の内面に沿って移動して排泥などをバケット内にすくい易くしたものである。また、槽部21aおよび槽部21cの各上部端縁には、図4の一部拡大図に示したごとく、槽内側に向けて傾斜した跳ね返り防止板21fが取付けられており、バックホウ5の攪拌操作により泥水の槽外への飛散を防止している。
【0029】
各槽部23a〜23cは、両側の内側面が垂直面となっており、その垂直面には底面から上に向かって、容量目盛(不図示)が付されている。このため、この構造では、各槽部23a〜23c内に溜まっている排泥量や泥土量が前記容量目盛を見ることで分かるようになっている。なお、この例では、槽部21a〜21cのうち、添加材供給装置24に最も近い槽部21aを添加材供給室とし、中間の槽部21bを主たる攪拌混合室とし、バックホウ5に近い槽部21cを泥水(水分)回収室とした設定である。但し、各槽部の使い方は任意であり、また、槽部の数は3以上でもよい。
【0030】
また、仕切部23a,23bの高さは一方が他方よりも高く形成されている。この例では、槽部21aと槽部21bとを区画している仕切部23aが槽部21bと槽部21cとを区画している仕切部23bより高く設けられ、それにより、排泥がバックホウ5により他の槽部に移し替えられたるとき、上層の泥水が背丈が低い仕切部23bを越流して槽部21bから槽部21cへ流出容易となる。具体的には、例えば図3において、バックホウ5により槽部21aの排泥中の沈降分離した上層の泥水部分を中間の槽部21bに移すと、流動性の高い泥水が仕切部23bを越流して槽部21c内へ流れ易くなる作用である。このような作用を得る他の構成としては、図示しないが、各槽部21a〜21cの高さが異なるようにすることである。
【0031】
泥水貯蔵槽22は、上開口した槽構造であり、混合槽21で沈降分離された上層の泥水を一時的に溜めるための槽である。また、泥水貯蔵槽22は、混合槽21を間に挟んで、排泥貯蔵槽20と略対向した状態に設けられている。泥水貯蔵槽22に溜まった泥水は、図1のごとく適当な箇所に設けられる分級槽16に配管およびポンプ17等を介して移送される。分級槽16では、前記泥水を濾過や沈殿作用により分級して、分級後の再生水を配管およびポンプ18を介して上記水貯槽12に移送する。但し、分級後の再生水は、多量に発生する場合だと、所定のPH処理等を行って河川に放流することもある。また、本発明の泥水貯蔵槽22は、泥水を溜める単純な槽でもよいが、分級槽16のような泥水を濾過や沈殿作用により分級する槽構造としてもよい。
【0032】
添加材供給装置24は、図2と図3に示されるごとく、矩形状に枠組みされたフレーム25の内側に支持された矩形タンク26と、これより容量が小さく設定された円筒タンク27と、各タンク26、27の下部に連通する横型スクリュ移送手段28と、このスクリュ移送手段28の搬送終端に立設された縦型スクリュ移送手段29と、このスクリュ移送手段29の上端に接続するとともに、吐出端を攪拌槽21内に向けた傾動式の吐出シュート30とを備えている。矩形タンク26内には粉体セメントが充填され、円筒タンク27内には強度促進剤等の補助材が充填されている。
【0033】
図5〜図8は添加材供給装置24の詳細構造を示している。矩形タンク26、円筒タンク27はともに下部が絞り込まれたホッパー形状をなし、それぞれフレーム25(25a,25b)の内側に複数のロードセル31を介して吊下状態に支持され、その下端は開閉弁であるバタフライ弁32,33を介して横型スクリュ移送手段28の供給口に接続している。なお、横型スクリュ移送手段28の供給口と、各タンク26,27の排出口は縁切りされているとともに、その接続部外周は遮蔽筒34a、又は遮蔽筒34bと弾性板34c等によって覆われている。
【0034】
このうち、ロードセル31、バタフライ弁32,33の開閉機構、横型スクリュ移送手段28および縦型スクリュ移送手段29の各駆動用モータMは、装置24の適宜位置に設けられた投入量設定手段としての制御部35に接続されている。この制御部35は、例えば、無線式の受信機36を介して受信した吐出量の設定データを元に図9に示した制御手順を実行し、各部を駆動して設定量のセメント、またはセメントおよび補助材を混合槽21内に吐出する。なお、設定データの発信元は、バックホウ5の操作オペレータ等であり、オペレータが排泥貯蔵槽20に投入された排泥や、混合槽21内で泥水除去後の泥土の流動性などを目視し、該目視結果と、目標強度、予定用途等に基づき、添加量を判断するか、または予め該当する排泥のスランプフロー値の測定値などを元にそれぞれの設定値が判断され、バックホウ側操作室5aに設けられ送信機を通じてその設定データが発信される。
【0035】
(再生処理方法)以下、以上の排泥再生処理装置を使用した具体的な排泥再生処理方法について説明する。この再生処理方法では、バックホウ5の操作によって、排泥貯蔵槽20内の排泥を混合槽21に移送する排泥投入工程と、混合槽21に投入された排泥を槽部間で移送しながら上層の泥水と下層の沈降成分である泥土とに分離した後、上層の泥水を泥水貯蔵槽22に移す泥水除去工程と、混合槽21に残った泥土の総量を計測し、それに対応した添加材の投入量を添加材供給装置24により混合槽21に自動供給する添加材投入工程と、バックホウ5を介して混合槽21で泥土と添加材とを目標の攪拌度まで混ぜる混合工程とを経る。
【0036】
このうち、排泥投入工程では、バックホウ5を使用して、排泥貯蔵槽20内の排泥をバックホウのバケット5dにより、混合槽21の所定槽部(例えば、槽部21b)に繰り返し移して目的とする概算的な排泥総量だけ投入する。
【0037】
泥水除去工程では、まず、バックホウ5を使用して、所定槽部(例えば、槽部21b)に投入された排泥をバケット5dにより例えば槽部21aに移したり、再び槽部21aから槽部21bに移す操作に伴って、比重の大きな泥土を多く溜める槽部21aと、比重の小さい泥水を溜めるとともに上層の泥水と下層の沈降成分である泥土とに分離する槽部21b,21cとに分けた後、同じくバックホウ5を使用して最も低い仕切壁23bを越流した槽部21c内の上層の泥水をバケット5dにより泥水貯蔵槽22に移す。
【0038】
添加材投入工程では、図9の手順で混合槽21に残った泥土の総量を計測し、その泥土の総量に対応した添加材の投入量を添加材供給装置24により混合槽21の槽部21a内に供給する。この場合は、まず泥土の総量が計測される。この計測方法は、例えば、各槽部21a,21cの内側面に付された容量目盛で読みとり、それを合算することで算出される。この場合、槽部21b,21cの泥土が少ないときは、測定誤差を抑えるため、槽部21bと槽部21cの泥土を槽部21aに移し、槽部21a側の容量目盛りで読みとるようにする。次に、添加材の投入総量(添加量)は、例えば、添加材がセメントの場合だと、予め当該排泥から分離される泥土を模擬した泥土を用いた事前配合試験により、セメント添加量−固化強度との関係をグラフに表示しておき、それを参照にして目標強度や適用条件に合わせた単位当りのセメント配合量を得てから、泥土の総量分に換算して求めることになる。添加材がセメントおよび補助材の場合も同様である。
【0039】
そして、この添加材供給装置24では、図9に示されるごとく制御部35(図6を参照)により、受信機を通じて受信されたデータに基づき投入量が設定される(ステップST1,2)。すると、縦型スクリュ移送手段29が起動するとともに、横型スクリュ移送手段28が起動し(ステップST3,4)、その後、バタフライ弁32,33を開動作させる(ステップST5,6)。これにより、セメントおよび補助材は、混練されつつ横型スクリュ移送手段28,縦型スクリュ移送手段29で送られて吐出シュート30から混合槽21の槽部21a内に吐出される。
【0040】
排出量が設定値に達すると、すなわち信号到達前のロードセル31の荷重計測値から現在の荷重計測値を減算した結果が一致すると(ステップST7でYes)、バタフライ弁32,33は閉じられ(ステップST8)る。そして、所定時間遅れた後(ステップST9)、各スクリュ移送手段28,29は停止し(ステップ10,11)、再度信号待ち状態となる。
【0041】
その後は、混合工程となり、バックホウ5の操作により、槽部21a内に投入された固化材、または固化材および補助材剤と泥土とを主として中間の槽部21b内に順次取り込んだり仕切部23a,23b上に落下しながら混練する動作が繰返される。この混練作業は目標の攪拌度になるまで混ぜて再生処理土を製造する。また、製造された再生処理土は、バックホウ5の操作により保存区3へ移送される。これにより、1バッチ分の再生処理土の再生作業を完了する。なお、この作業に先立ち、吐出シュート30は、図3の想像線で示したごとくシリンダ36等(図6を参照)を介してバケット5dに干渉しない角度まで傾けておくようにすることが好ましい。
【0042】
以上のように本発明は請求項で特定される構成を実質的に備えておればよく、細部は以上の形態例を参考にして種々変更可能なものである。
【符号の説明】
【0043】
1…地盤改良工区(10は施工機、14は攪拌軸、15は釜場)
2…再生作業区
3…保存区
4…回収車
5…バックホウ(5cはバケット)
16…分級槽
20…排泥貯蔵槽
21…混合槽(21a〜21cは槽部、23aと23bは仕切部)
22…泥水貯蔵槽
24…添加材供給装置
26…矩形タンク(セメント収容用タンク)
27…円筒タンク(補助材収容用タンク)
28…横型スクリュ移送手段
29…縦型スクリュ移送手段
31…ロードセル
32,33…バタフライ弁(開閉弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内を仕切部を介し複数の槽部に区画している混合槽を有し、地盤改良等で発生した排泥を、前記混合槽の複数の槽部のうち、所定槽部に投入し、バックホウにより前記所定槽部の排泥を他の槽部に移す操作を伴って槽部内で上層の泥水と下層の泥土とに沈降分離して、前記上層の泥水を槽外へ除去して水分調節するとともに、添加材を混合して流動性改良土に製造する排泥再生処理装置において、
前記混合槽の長手方向の一端付近に配される前記バックホウ、および前記混合槽の長手方向の他端付近に設けられて前記添加材を前記混合槽に自動投入する添加材供給装置と、
前記混合槽の長手方向に沿った一側付近に設けられた前記発生した排泥を溜める排泥貯蔵槽、および前記混合槽の長手方向に沿った他側付近に設けられて前記沈降分離した上層の泥水を溜める泥水貯蔵槽とを備えているとともに、
前記バックホウは前記排泥貯蔵槽の排泥を前記混合槽へ移送可能、かつ前記混合槽内で沈降分離した上層の泥水を前記泥水貯蔵槽に移送可能であり、
前記添加材供給装置は前記添加材としてセメント等の固化材を入れた固化材タンク、および強度促進材等の補助材を入れた補助材タンクを有し、前記混合槽に残った泥土の総量に応じ、前記固化材タンクまたは/および前記補助材タンクより、必要量の前記固化材または、必要量の前記固化材および前記補助材を前記混合槽に投入可能となっていることを特徴する排泥再生処理装置。
【請求項2】
前記添加材供給装置は、前記固化材タンクおよび補助材タンクを独立して計測する各タンク用の荷重計測手段と、一端側が前記各タンクの下側排出部に開閉弁を介して接続され、他端側が前記混合槽内に開口しているスクリュ移送手段とを有していることを特徴とする請求項1に記載の排泥再生処理装置。
【請求項3】
前記複数の槽部は、前記仕切部の高さ、または/および、槽底面の高さが異なるよう設けられることにより、前記排泥が沈降分離して上層の泥水を一方の槽部から他方の槽部へ流出容易になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排泥再生処理装置。
【請求項4】
地盤改良等で発生する排泥を集めて、該排泥を水分調節した後、添加材を混合して流動性改良土に製造する排泥再生処理方法において、
請求項1から3の何れかに記載の排泥再生処理装置を使用して、
前記排泥貯蔵槽内の排泥を前記バックホウにより前記混合槽の所定槽部に移送する排泥投入工程と、
前記所定槽部の排泥を前記バックホウにより他の槽部に移す操作に伴って、比重の大きな泥土を多く溜める槽部と、比重の小さい泥水を溜めるとともに上層の泥水と下層の沈降成分である泥土とに分離する槽部とに分けた後、前記上層の泥水を前記バックホウにより前記泥水貯蔵槽に移す泥水除去工程と、
前記混合槽に残った泥土の総量を計測し、前記泥土の総量に対応した前記添加材の投入量を前記添加材供給装置より混合槽内に供給する添加材投入工程と、
前記混合槽で前記泥土と前記添加材とを前記バックホウにより目標の攪拌度まで混ぜる混合工程
とを経ることを特徴とする排泥再生処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−242314(P2010−242314A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89277(P2009−89277)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)