説明

掛布団

【課題】 保温性を低下させることなく、布団内における身体の自由度を確保できる掛布団を提供する。
【解決手段】表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、前記袋体内を区分けするように長手方向の中心線を挟んで対称に位置付けられる少なくとも一組の仕切りを幅方向の中心線を跨ぐように襟元側から足元側まで伸ばし、当該一組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭にすることによって布団内に使用者の身体に合った錐体状の空間が形成されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掛布団に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、人が就寝中に繰り返す「寝返り」は、体重によって圧迫された身体の部分的痛みや血行不良を和らげる役割を果たしており、快眠を得るためには不可欠な行為と言われている。ところが、寝返りを繰り返すと、掛布団と身体との間に大きな隙間が生じ、この隙間から冷たい外気が侵入して布団内の温度が低下し、風邪をひく原因になる。このため、従来から寝返りを繰り返しても、身体との間に隙間が生じないように改良を施した掛布団が多数開発されている。
【0003】
例えば、後出特許文献1には、充填材を充填してなる掛布団において、掛布団の長手方向の中心線又は幅方向の中心線に向かって膨らむ曲線状であって、前記の中心線にて線対称の対をなす仕切線を施したことフィット性を向上させた掛布団が開示されている。
【0004】
また、後出特許文献2には、両側部と下部に中央に向けて山形の互いに交叉しないアーチ状キルティングを形成した掛布団とを具備した身体に密着して熱を逃さないようにすることにより保温性を高めた掛布団が開示されている。
【0005】
ところで、掛布団の身体に対する密着性が向上すればするほど、布団内への外気の侵入を減らすことができるが、これとは反対に布団内における身体の自由度は制限され、快眠に不可欠な寝返りを行い難くなる。
【特許文献1】特開2003−339501
【特許文献2】特開2004−160063
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は、保温性を低下させることなく、布団内における身体の自由度を確保できる掛布団を得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試作・実験を繰り返した結果、表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、前記袋体内を区分けするように長手方向の中心線を挟んで対称に位置付けられる少なくとも一組の仕切りを襟元側から足元側まで伸ばし、当該一組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭すれば、使用時に掛布団内に身体形状に合った錐体状の空間が形成されるため、身体の自由度が確保されると共に、保温性も低下しないという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0008】
即ち、本発明に係る掛布団は、表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、前記袋体内を区分けするように長手方向の中心線を挟んで対称に位置付けられる少なくとも一組の仕切りが襟元側から足元側まで伸びており、当該一組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭になっているものである。
【0009】
また、本発明に係る掛布団は、表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、前記袋体内を区分けするように長手方向の中心線を挟んで対称に位置付けられる複数組の仕切りが襟元側から足元側まで伸びており、当該複数組の仕切りの内で少なくとも一組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭になっており、当該一組の仕切りに対して他の組の仕切りが平行又は略平行になっているものである。
【0010】
また、本発明は、前記掛布団において、全ての組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭になっているものである。
【0011】
また、本発明における別の実施の形態は、前記いずれかの掛布団において、いずれの仕切りも幅方向の中心線を跨ぐように伸びているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長手方向の中心線を挟んで対称に位置付けられる少なくとも一組の仕切りを襟元側から足元側まで伸ばし、当該一組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭になるようにしたので、掛布団内に身体形状に合った錐体状の空間が形成され、掛布団の重みによる圧迫感が軽減される。これにより、掛布団内において身体の自由度が確保され、使用者は布団内においてスムーズに身体を回転させることができ、快眠に不可欠な寝返りを阻害されない。また、掛布団内の空間形状が身体形状に合った錐体状であるため、掛布団と身体との間に隙間が生じ難く、外気の侵入が防止される。
【0013】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0015】
実施の形態1.
【0016】
図1は本実施の形態に係る掛布団を示した平面図である。図2は図1に示す掛布団の仕切りを示した部分断面図である。図3は図1に示す掛布団の使用状態を示した斜視図である。図4は図3に示す掛布団をA,B,C箇所で切断した端面図であり、図4の(a)は図3に示す掛布団をA箇所にて切断した端面図であり、図4の(b)は図3に示す掛布団をB箇所にて切断した端面図であり、図4の(c)は図3に示す掛布団をC箇所にて切断した端面図である。これらの図において、1は、表地2と裏地3とを縫合してなる袋体4と、袋体4内に充填される羽毛(図示せず)とからなる掛布団である。なお、本発明において、長手方向とは襟元5から足元6へ向かう方向を示し、幅方向とは長手方向と直交する方向を示している。
【0017】
袋体4には、袋体4内を幅方向に区分けするように、長手方向の中心線Xを挟んで対称に位置付けられる二組の仕切り7,8が設けられている。そして、内側に位置する一組の仕切り7a,7bは、幅方向の中心線Yを跨ぐように襟元5から足元6まで伸びており、両仕切り7a,7bの間隔は、足元6へ向かうに伴って幅狭になり、幅方向の中心線Yに対して足元6側にて合致した後に長手方向の中心線Xに沿って伸びている。外側に位置する一組の仕切り8a、8bは、幅方向の中心線Yを跨ぐように襟元5から足元6まで伸びており、内側に位置する一組の仕切り7a,7bに対して略平行になっている。
【0018】
また、袋体4には、袋体4内を長手方向に区分けするように、長手方向に対して等間隔に位置付けられる四本の仕切り9が幅方向に伸びるように設けられている。
【0019】
仕切り7,8,9は、図2に示すように、表地2と裏地3との間にコの字状の襠片10を介在させて、襠片10の上辺を表地2に縫合すると共に、下辺を裏地3に縫合することによって袋体4に固定されている。
【0020】
次に、本実施の形態に係る掛布団1の使用状態を説明する。
【0021】
図3及び図4に示すように、使用者に掛布団1を掛けると、使用者の上半身の厚みにより、掛布団1の内側に位置する一組の仕切り7a,7bによって囲まれた逆三角形状の区画11が持ち上げられた状態となる。この時、内側に位置する一組の仕切り7a,7bと外側に位置する一組の仕切り8a,8bとによって挟まれた区画12a,12bが逆三角形状の区画11を支えるように立ち上がる(図4の(a)及び図4の(b)参照)。これによって、使用者の上半身は錐体状の空間に収まった状態となる。
【0022】
また、使用者の下半身の厚みにより、掛布団1の内側に位置する仕切り7a,7bと外側に位置する仕切り8a,8bとによって挟まれた区画12a,12bが内側に位置する仕切り7における長手方向の中心線に沿って伸びる部分を持ち上げるように立ち上がる(図4の(c)参照)。これによって、使用者の下半身は柱状の空間に収まった状態となる。
【0023】
本実施の形態に係る掛布団によれば、使用時に掛布団内に使用者の身体形状に合った錐体状の空間が形成されるため、掛布団の重みから生じる圧迫感が軽減され、使用者は掛布団内においてスムーズに身体を動かすことができる。また、当該空間形状が身体形状とほぼ一致しているため、掛布団と身体との間に隙間が形成され難く、外気の侵入が防止される。
【0024】
実施の形態2.
【0025】
本実施の形態は前記実施の形態1の袋体に設けられた仕切りの変形例であり、図5は本実施の形態に係る掛布団を示した平面図である。この図において、図1〜図4と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0026】
本実施の形態に係る掛布団1の袋体4には、図5に示すように、袋体4内を幅方向に区分けするように長手方向の中心線Xを挟んで対称に位置付けられる二組の仕切り13,14が設けられている。そして、内側に位置する一組の仕切り13a,13bは、幅方向の中心線Yを跨ぐように襟元5から足元6まで伸びており、両仕切り13a,13bの間隔は、足元6に近づくに伴って幅狭になっている。外側に位置する一組の仕切り14a,14bは、幅方向の中心線Yを跨ぐように襟元5から足元6まで伸びており、内側に位置する一組の仕切り13a,13bに対して略平行になっている。
【0027】
また、袋体4には、袋体4内を長手方向に区分けするように、長手方向に対して等間隔に位置付けられる四本の仕切り9が幅方向に伸びるように設けられている。各仕切り9は、僅かに足元6側へ向かって湾曲した形状になっている。
【0028】
本実施の形態に係る掛布団1を使用者に掛けると、使用者1の身体の厚みにより、掛布団1の内側に位置する一組の仕切り13a,13bによって囲まれた台形状の区画15が持ち上げられた状態となる。この時、内側に位置する一組の仕切り13a,13bと外側に位置する一組の仕切り14a,14bとによって挟まれた区画16a,16bが台形状の区画15を支えるように立ち上がる。これによって、使用者の身体は切頭錐体状の空間に収まった状態となる。
【0029】
本実施の形態に係る掛布団においても、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0030】
実施の形態3.
【0031】
図6は本実施の形態に係る掛布団を示した平面図である。図7は図6に示す掛布団の仕切りを示した部分断面図である。これらの図において、図1〜図4と同一符号は同一又は相当部分を示している。1は、表地2と裏地3とを縫合してなる袋体4と、袋体4内に充填されるポリエステル繊維綿(図示せず)とからなる掛布団である。
【0032】
袋体4には、袋体4内を幅方向に区分けするように長手方向の中心線Xを挟んで対称に位置付けられる三組の仕切り17,18,19が設けられている。そして、最も内側に位置する一組の仕切り17a,17bは、幅方向の中心線Yを跨ぐように襟元5付近から足元6付近まで伸びており、両仕切り17a,17bは、幅方向の中心線Yに対して足元6側にて交差している。また、最も外側に位置する一組の仕切り19a,19bは、幅方向の中心線Yに対して足元6側において長手方向に伸びており、両仕切り19a,19bは、足元6に近づくに伴って間隔が幅狭になっていると共に、足元6側の先端が最も内側に位置する一組の仕切り17a,17bと合致している。さらに、最も内側に位置する一組の仕切り17a,17bと最も外側に位置する一組の仕切り19a,19bとの中間に位置する仕切り18a,18bは、幅方向の中心線Yを跨ぐように襟元5付近から足元6付近まで伸びており、両仕切り18a,18bは、足元6に近づくに伴って幅狭となり、足元6付近にて合致している。
【0033】
仕切り17,18,19は、図7に示すように、表地2と裏地3とを直接縫製してなるキルティングからなっており、袋体4に充填されたポリエステル繊維綿と共に縫合されている。
【0034】
本実施の形態に係る掛布団1を使用者に掛けると、使用者の身体の厚みにより、掛布団の内側に位置する一組の仕切り17a,17bによって囲まれた略逆三角形状の区画20が持ち上げられた状態となる。この時、内側に位置する一組の仕切り17a,17bと中間に位置する一組の仕切り18a,18bとによって挟まれた区画21a,21bが略逆三角形状の区画20を支えるように立ち上がる。これによって、使用者の身体は錐体状の空間に収まった状態となる。
【0035】
本実施の形態に係る掛布団においても、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0036】
実施の形態4.
【0037】
本実施の形態は前記実施の形態3の袋体に設けられた仕切りの変形例であり、図8は本実施の形態に係る掛布団を示した平面図である。この図において、図1〜図4と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0038】
本実施の形態に係る掛布団1の袋体4には、袋体4内を幅方向に区分けするように、長手方向の中心線Xを挟んで対称に位置付けられる四組の仕切り22,23,24,25が設けられている。最も外側に位置する一組の仕切り25a,25bは、幅方向の中心線Yに対して足元6側において長手方向に伸びており、足元6に近づくに伴って間隔が幅狭になっている。また、他の組の仕切り22,23,24は、いずれも幅方向の中心線Yを跨ぐように襟元5付近から足元6付近まで伸びている。そして、他の組の仕切り22,23,24において、最も内側に位置する仕切り22a,22bは、足元6に近づくに伴って間隔が幅狭になって足元6付近にて合致しており、また、二番目に内側に位置する仕切り23a,23bは、足元6に近づくに伴って間隔が幅狭になって足元6付近にて交差しており、さらに、三番目に内側に位置する仕切り24a,24bは、足元6に近づくに伴って間隔が幅狭になって足元6付近にて二番目に内側に位置する仕切り23a,23bの足元6側の先端と合致している。なお、いずれの一組の仕切りも平行になっている。
【0039】
本実施の形態に係る掛布団1を使用者に掛けると、使用者の身体の厚みにより、掛布団1の最も内側に位置する一組の仕切り22a,22bによって囲まれた略逆三角形状の区画26が持ち上げられた状態となる。この時、最も内側に位置する一組の仕切り22a,22bと二番目に内側に位置する一組の仕切り23a,23bとによって挟まれた区画27a、27bが立ち上がると共に、使用者の体格によって、二番目に内側に位置する一組の仕切り23a,23bと三番目に内側に位置する一組の仕切り24a,24bとによって挟まれた区画28a,28bが選択的に立ち上がって略逆三角形状の区画26を支える。これによって、使用者の身体は錐体状の空間に収まった状態となる。
【0040】
本実施の形態に係る掛布団においては、使用者の体型によって、二番目に内側に位置する一組の仕切りと三番目に内側に位置する一組の仕切りとによって挟まれた区画が選択的に立ち上がるため、より使用者の身体に合った形状の空間が掛布団内に形成される。
【0041】
なお、本実施の形態に係る掛布団においても、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0042】
本発明における充填材としては、羽毛やポリエステル繊維綿に限定されず、羊毛、木綿綿などを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態1に係る掛布団を示した平面図である。
【図2】図1に示す掛布団の仕切りを示した部分断面図である。
【図3】図1に示す掛布団の使用状態を示した斜視図である。
【図4】図3に示す掛布団をA,B,C箇所で切断した端面図である。
【図5】実施の形態2に係る掛布団を示した平面図である。
【図6】実施の形態3に係る掛布団を示した平面図である。
【図7】図6に示す掛布団の仕切りを示した部分断面図である。
【図8】実施の形態4に係る掛布団を示した平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 掛布団
2 表地
3 裏地
4 袋体
5 襟元
6 足元
7,8,13,14,17,18,19,22,23,24,25 仕切り
9 仕切り
10 襠片
11,12,15,16,20,21,26,27,28 区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、前記袋体内を区分けするように長手方向の中心線を挟んで対称に位置付けられる少なくとも一組の仕切りが襟元側から足元側まで伸びており、当該一組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭になっていることを特徴とする掛布団。
【請求項2】
表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、前記袋体内を区分けするように長手方向の中心線を挟んで対称に位置付けられる複数組の仕切りが襟元側から足元側まで伸びており、当該複数組の仕切りの内で少なくとも一組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭になっており、当該一組の仕切りに対して他の組の仕切りが平行又は略平行になっていることを特徴とする掛布団。
【請求項3】
全ての組の仕切りの間隔が足元に近づくに伴って幅狭になっている請求項2記載の掛布団。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−305235(P2006−305235A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134441(P2005−134441)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(391014871)株式会社京都西川 (11)
【Fターム(参考)】