説明

掛算回路

【課題】デジタル処理や対数処理を必要とすることなく、簡易で高速な掛算を行う掛算回路を提供する。
【解決手段】第1定電流源21が、第1コンデンサc1を第1定電流i1で充電する。コンパレータcp1が、第1コンデンサc1の両端電圧Vc1と第1電圧V1とを比較する。第2定電流源31が第2電圧V2に応じた大きさの第2定電流i2を供給して、第2コンデンサc2を充電する。制御回路5が、第1充電スイッチQ10及び第2充電スイッチQ22を制御して、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電を同時に開始させた後に第1コンデンサc1の両端電圧Vc1が第1電圧V1よりも大きくなった時点で第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電を終了させる。結果保持回路6が、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電が終了した時点の第2コンデンサc2の両端電圧Vc2を第1電圧V1と第2電圧V2との掛算値として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掛算回路に係り、特に、第1電圧と第2電圧との掛算値を出力する掛算回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した掛算回路としては、第1電圧と第2電圧とをアナログ/デジタル変換して、マイクロコンピュータのデジタル処理により第1電圧と第2電圧との掛算値を求めるものが知られている。このようなデジタルの掛算回路で高速に掛算を行うには、高速処理可能なマイクロコンピュータやアナログ/デジタル変換器が必要となり、コスト的に問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、対数変換を利用した掛算回路が提案されている。この対数変換を利用した掛算回路は、下記の式(10)に示す対数の性質を利用している。
logX+logY=log(X・Y) …(10)
【0004】
即ち、上記掛算回路は、第1電圧、第2電圧をそれぞれ対数変換した後、加算を行い最後に逆対数変換を行って第1電圧と第2電圧との掛算値を出力している。このように対数変換を利用すれば、掛算回路をアナログ回路で実現することができる。しかしながら、上述した対数変換を利用した掛算回路は、対数要素を処理する必要があり、簡易に掛算を行うことができない、という問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、デジタル処理を必要とすることなく、簡易で高速な掛算を行うことができる掛算回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、第1電圧と第2電圧との掛算値を出力する掛算回路において、第1定電流を供給する第1定電流源と、前記第1定電流により充電される第1コンデンサと、前記第1コンデンサの両端電圧と前記第1電圧とを比較するコンパレータと、前記第2電圧に応じた大きさの第2定電流を供給する第2定電流源と、前記第2定電流により充電される第2コンデンサと、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの充電を同時に開始させた後に前記コンパレータにより前記第1コンデンサの両端電圧が前記第1電圧に達したと判断された時点で前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの充電を終了させる充電制御回路と、前記充電制御回路による充電が終了した時点での前記第2コンデンサの両端電圧を前記第1電圧と前記第2電圧との掛算値として出力する出力回路と、を備えたことを特徴とする掛算回路に存する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、デジタル処理や対数処理を必要とすることなく、簡易で高速な掛算を行うことができる掛算回路を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る掛算回路について図面を参照して説明する。図1に示す構成の掛算回路1は、第1電圧V1と第2電圧V2との掛算値V1×V2を出力する回路である。図1に示すように、掛算回路1は、第1コンデンサ充電回路2と、コンパレータcp1と、第2コンデンサ充電回路3と、差動増幅回路4と、充電制御回路としての制御回路5と、出力回路としての結果保持回路6と、を備えている。
【0009】
第1コンデンサ充電回路2は、第1定電流源21と、第1コンデンサc1と、OPアンプA2と、第1充電スイッチQ10と、第1放電スイッチQ11と、を備えている。上記第1定電流源21は、ツェナーダイオードDzと、抵抗R1と、OPアンプA1と、抵抗Rchgと、から構成されている。
【0010】
上記ツェナーダイオードDzは、カソードが基準電位rに接続され、アノードが抵抗R1の一端に接続されている。抵抗R1は、他端に−Vs電圧(以下−Vsと略記)が供給されている。上記ツェナーダイオードDzは、アノード−カソード間に一定のVref電圧(以下Vrefと略記)が発生する。よって、ツェナーダイオードDzのアノードは、基準電位rからみると−Vrefとなる。そして、上記−Vrefは、OPアンプA1の+入力に供給されている。OPアンプA1は、−入力が出力に接続されたボルテージ・フォロアを構成している。よって、OPアンプA1の出力からは−Vrefが出力される。
【0011】
上記抵抗Rchgは、OPアンプA1の出力とOPアンプA2の−入力との間に設けられている。OPアンプA2の+入力は、基準電位rに接続されてる。OPアンプA2は+入力と−入力との電圧が等しくなるように動作するので、抵抗RchgのOPアンプA2側は基準電位rと等しくなる。よって、抵抗Rchgの両端電圧VchgがVrefと等しくなるため、抵抗Rchgには下記の式(1)に示す第1定電流i1が流れる。
i1=Vref/Rchg …(1)
上記Vref、Rchgは一定であるので、第1定電流i1は定電流となる。
【0012】
OPアンプA2は、−入力と出力との間に第1コンデンサc1が接続されたミラー積分回路を構成する。よって、上記抵抗Rchgに第1定電流i1が流れると、第1定電流i1により第1コンデンサc1が充電される。そして、OPアンプA2の出力から第1コンデンサc1の両端電圧Vc1(以下Vc1)が出力される。
【0013】
上記第1充電スイッチQ10は、抵抗Rchgと基準電位rとの間に設けられたスイッチングトランジスタである。第1充電スイッチQ10のベースには、抵抗R0を介して後述する充電信号/t1が供給されている。よって、Lレベルの充電信号/t1が供給されると第1充電スイッチQ10がオフして、第1定電流i1による第1コンデンサc1の充電が行われる。これに対して、Hレベルの充電信号/t1が供給されると第1充電スイッチQ10がオンして、第1定電流i1による第1コンデンサc1の充電が停止される。
【0014】
上記第1放電スイッチQ11は、第1コンデンサc1の両端間に設けられたスイッチングトランジスタである。第1放電スイッチQ11のベースには、抵抗R3を介して後述する放電信号dchが供給されている。よって、Hレベルの放電信号dchが供給されると第1放電スイッチQ11がオンして、第1コンデンサc1の両端が短絡され放電が行われる。これに対して、Lレベルの放電信号dchが供給されると第1放電スイッチQ11がオフして、第1コンデンサc1の放電が停止される。
【0015】
上記コンパレータcp1は、+入力に第1コンデンサc1の両端電圧であるVc1が供給され、−入力に第1電圧V1が供給される。コンパレータcp1は、Vc1と第1電圧V1とを比較して、Vc1<V1のときにLレベル、Vc1>V1のときにHレベルを出力する。
【0016】
第2コンデンサ充電回路3は、第2定電流源31と、第2コンデンサc2と、第2充電スイッチQ22と、第2放電スイッチQ23と、を備えている。第2定電流源31は、OPアンプA3と、抵抗R11と、スイッチQ21と、抵抗Ri2と、から構成されている。OPアンプA3は、+入力に第2電圧V2が供給されている。OPアンプA3は、出力が抵抗R11、スイッチQ21のベース−エミッタを介して−入力に帰還されている。OPアンプA3は、−入力が抵抗Ri2を介して基準電位rに接続されている。よって、OPアンプA3は、+入力と−入力との電圧が等しくなるように働くため、抵抗Ri2の両端には第2電圧V2が印加され、抵抗Ri2には、下記の式(2)に示す第2定電流i2が流れる。
i2=V2/Ri2 …(2)
上記V2、Ri2は一定であるので、第2定電流i2は第2電圧V2に応じた一定電流となる。
【0017】
第2コンデンサc2は、一端が+Vsに接続され、他端が第2充電スイッチQ22、スイッチQ21、抵抗Ri2を介して基準電位rに接続されている。第2充電スイッチQ22は、第2コンデンサc2とスイッチQ21との間に設けられている。第2充電スイッチQ22のベースには、抵抗R10を介して後述する充電信号/t1が供給されている。よって、Lレベルの充電信号/t1が供給されると、第2充電スイッチQ22がオンして、第2定電流i2による第2コンデンサc2の充電が行われる。これに対して、Hレベルの充電信号/t1が供給されると第2充電スイッチQ22がオフして、第2定電流i2による第2コンデンサc2の充電が停止される。
【0018】
上記第2放電スイッチQ23は、第2コンデンサc2の両端間に設けられたスイッチングトランジスタである。第2放電スイッチQ23のベースには、抵抗R13を介して放電信号/dchが供給されている。よって、Lレベルの放電信号/dchが供給されると第2放電スイッチQ23がオンして、第2コンデンサc2の両端が短絡され放電が行われる。これに対して、Hレベルの放電信号/dchが供給されると第2放電スイッチQ23がオフして、第2コンデンサc2の放電が停止される。
【0019】
上記差動増幅回路4は、OPアンプA4と、互いに等しい抵抗値となる4つの抵抗Rと、から構成されている。OPアンプA4の+入力は抵抗Rを介して第2コンデンサc2の基準電位r側の一端が接続されている。また、OPアンプA4の+入力は、抵抗Rを介して出力に接続されている。OPアンプA4の−入力は抵抗Rを介して第2コンデンサc2の+Vs側の他端が接続されている。また、OPアンプA4の−入力は抵抗Rを介して基準電位rが接続されている。以上の構成により、OPアンプA4の出力からは、第2コンデンサc2の両端電圧Vc2が出力される。
【0020】
次に、制御回路5と結果保持回路6とを説明する前に、本発明の掛算回路1の原理について説明する。上述したように第1コンデンサ充電回路2において第1コンデンサc1は、第1定電流源21から供給される第1定電流i1により充電される。よって、任意の充電時間tにおける第1コンデンサc1の両端電圧Vc1は下記の式(3)に示す値となる。なお、第1コンデンサc1の静電容量をc1としている。
Vc1=i1×t/c1 …(3)
【0021】
上述したコンパレータcp1は、Vc1>V1となった瞬間に出力がLレベルからHレベルに反転する比較器である。今、Vc1=V1となった時点からコンパレータcp1の出力が反転するまでの時間遅れを0とすれば、コンパレータcp1は、Vc1=V1となった時点で出力がLレベルからHレベルに反転すると考えられる。よって、Vc1が第1電圧V1に達したとき、即ちコンパレータcp1の出力が反転したときの第1コンデンサc1の両端電圧Vc1は下記の式(4)に示す値となる。なお、Vc1が第1電圧V1に達したときの充電時間t=tchとしている。
Vc1=i1×tch/c1 …(4)
【0022】
このとき、Vc1=V1であるので、これを式(4)に代入すると、式(5)が得られる。
V1=i1×tch/c1
tch=V1×c1/i1 …(5)
【0023】
上述したc1、i1は既知の定数である。よって、c1/i1=k1(定数)を式(5)に代入すると、式(6)が得られる。
tch=k1×V1 …(6)
以上のことから明らかなように、第1コンデンサc1の充電を開始してから第1コンデンサc1の両端電圧であるVc1が第1電圧V1に達するまでの充電時間tchは、第1電圧V1に比例することがわかる。即ち、充電時間tchは、第1電圧V1の電圧→時間変換が行われた結果である。
【0024】
一方、上記第2コンデンサ充電回路3において第2コンデンサc2は、第2定電流源31から供給される第2定電流i2により充電される。よって、上述した第1コンデンサc1の両端電圧であるVc1が第1電圧V1に達するまでの充電時間tchだけ第2定電流i2で第2コンデンサc2を充電したときの両端電圧Vc2は下記の式(7)に示す値となる。なお、c2は、第1コンデンサc2の静電容量とする。
Vc2=i2×tch/c2 …(7)
【0025】
上記式(2)に示すようにi2=V2/Ri2、式(6)に示すようにtch=k1×V1であるので、これを式(7)に代入すると、式(8)が得られる。
Vc2=V2×k1×V1/(c2×Ri2) …(8)
【0026】
上述したk1、c2、Ri2は既知の定数である。よって、k1/(c2×Ri2)=k2(定数)を式(8)に代入すると、式(9)が得られる。
Vc2=k2×V2×V1 …(9)
【0027】
よって、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電を同時に開始してから第1コンデンサc1の両端電圧Vc1が第1電圧V1に達するまでの充電時間tchにおける第2コンデンサc2の両端電圧Vc2は、第1電圧V1と第2電圧V2との掛算値となることが分かる。
【0028】
次に、上記式(1)〜(9)に具体的な数値例を代入して、充電時間tchにおける第2コンデンサc2の両端電圧Vc2が第1電圧V1と第2電圧V2との掛算値となることを確認してみる。ここでは、Vref=2.5V、Rchg=2.5kΩ、c1=1μF、Ri2=1kΩ、c2=1μF、V1=1V、V2=2Vとする。上記式(1)より第1定電流i1は、Vref/Rchg=2.5V/2.5kΩ=1mAとなる。よって、式(5)より第1定電流i1での第1コンデンサc1の充電を開始してから第1コンデンサc1の両端電圧Vc1が第1電圧V1と等しくなる充電時間tchは、V1×c1/i1=1V×1μF/1mA=1msecとなる。
【0029】
一方、上記式(2)より第2定電流i2は、V2/Ri2=2V/1kΩ=2mAとなる。よって、式(7)により充電時間tchにおける第2コンデンサc2の両端電圧Vc2は、Vc2=i2×tch/c2=2mA×1msec/1μF=2Vとなる。よって、Vc2=V1×V2=1V×2Vとなる。
【0030】
また、V1=3V、V2=2Vとして上記確認を行ってみる。上記式(1)により第1定電流i1は、Vref/Rchg=2.5V/2.5kΩ=1mAとなる。よって、式(5)より第1定電流i1での第1コンデンサc1の充電を開始してから第1コンデンサc1の両端電圧Vc1が第1電圧V1に達する充電時間tchは、V1×c1/i1=3V×1μF/1mA=3msecとなる。一方、上記式(2)より第2定電流i2は、V2/Ri2=2V/1kΩ=2mAとなる。よって、式(7)により充電時間tchにおける第2コンデンサc2の両端電圧Vc2は、Vc2=i2×tch/c2=2V×3msec/1μF=6Vとなる。よって、Vc2=V1×V2=3V×2Vとなる。
【0031】
次に、上記制御回路5について説明する。制御回路5は、充電信号/t1と、放電信号dch、/dchと、トランスファ信号tsf、/tsfと、を出力する回路である。充電信号/t1は、第1充電スイッチQ10及び第2充電スイッチQ22を制御して、第1定電流i1による第1コンデンサc1の充電を開始してからVc1が第1電圧V1に達するまでの充電時間tchだけ第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2を充電させる信号である。
【0032】
トランスファ信号tsf、/tsfは、後述する結果保持回路6のスイッチQ24、Q26を制御して、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電が終了した時点でのVc2を後述する結果保持回路6のホールドコンデンサc3に移してホールドコンデンサc3にVc2を保持させるための信号である。放電信号dch、/dchは、第1放電スイッチQ11、第2放電スイッチQ23をそれぞれ制御して、ホールドコンデンサc3にVc2を保持させた後に第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2を放電させる信号である。この制御回路5の制御により掛算回路1は、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電、Vc2をホールドコンデンサc3に移すトランスファ、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の放電、をこの順に繰り返し行う。
【0033】
制御回路5は、インバータinv1、フリップフロップ(以下F/F)回路51、積分回路52と、第1微分回路53と、第2微分回路54と、から構成されている。インバータinv1の入力には、抵抗R4及びダイオードD1からなるマイナス電圧保護回路を介してコンパレータcp1の出力が供給されている。インバータinv1は、コンパレータcp1の出力を反転して、F/F回路51の/s1入力に供給する。
【0034】
F/F回路51は、2つのNANDゲート51A及び51Bから構成されている。F/F回路51の/s1入力には、インバータinv1の出力が供給される。F/F回路51の/r1入力は、抵抗R6を介して基準電位rに接続されている。F/F回路51は、Lレベルトリガのフリップフロップ回路である。そして、このF/F回路51のq1出力から充電信号/t1が出力される。
【0035】
また、F/F回路51のq1出力と基準電位rとの間には、抵抗R7及びコンデンサcdLから構成される積分回路52が設けられている。積分回路52は、F/F回路51から出力される充電信号/t1を積分した出力delayをシュミットインバータinv2、インバータinv3を介してNANDゲート55に入力する。また、F/F回路51の/q1出力は、抵抗R5を介して後述する第1微分スイッチQ12及び抵抗R8を介して第2微分スイッチQ13のベースに各々接続されている。
【0036】
第1微分回路53は、Vsと基準電位rとの間に設けられた第1微分スイッチQ12、コンデンサcd11及び抵抗R6から成る直列回路から構成されている。よって、F/F回路51の/q1出力がLレベルになると、第1微分スイッチQ12がオンしてコンデンサcd11の充電が開始され、コンデンサcd11と抵抗R6との接続点からVsの微分値Vd1が出力される。このVsの微分値Vd1は、F/F回路51の/r1入力に供給される。Vsの微分値Vd1は、シュミットバッファBを介してNANDゲート55に供給される。NANDゲート55には、さらに後述するトランスファ信号/tsfが供給されている。このNANDゲート55の出力が放電信号/dchとなる。また、NANDゲート55の出力は、インバータinv4により反転されて放電信号dchとなる。
【0037】
また、第2微分回路54は、Vsと基準電位rと間に設けられた第2微分スイッチQ13、コンデンサcd12及び抵抗R9から成る直列回路から構成されている。よって、F/F回路51の/q1出力がLレベルになると、第2微分スイッチQ13がオンしてコンデンサcd12の充電が開始され、コンデンサcd12と抵抗R9との接続点からVsの微分値Vd2が出力される。Vsの微分値Vd2は、シュミットインバータinv5に供給される。このシュミットインバータinv5の出力がトランスファ信号/tsfとなる。また、シュミットインバータinv5の出力は、シュミットインバータinv6により反転されてトランスファ信号tsfとなる。
【0038】
上述した結果保持回路6は、スイッチQ24、Q25、Q27、Q26と、ホールドコンデンサc3と、OPアンプA5と、から構成されている。スイッチQ24は、エミッタがVsに接続され、コレクタが抵抗R19を介してOPアンプA4の出力に接続されている。また、スイッチQ24のベースには、抵抗R18を介してトランスファ信号tsfが供給されている。スイッチQ25は、エミッタがVsに接続され、コレクタがOPアンプA4の出力に接続され、ベースがスイッチQ24のコレクタに接続されている。
【0039】
スイッチQ26は、コレクタが抵抗R20を介してOPアンプA4の出力に接続され、エミッタが基準電位rに接続されている。また、スイッチQ26のベースには、抵抗R21を介してトランスファ信号/tsfが供給されている。スイッチQ27は、コレクタがOPアンプA4の出力に接続され、エミッタが基準電位rに接続され、スイッチQ26のコレクタに接続されている。また、ホールドコンデンサc3は、一端がスイッチQ27のコレクタに接続され、他端がスイッチQ27のエミッタに接続される。OPアンプA5は、+入力がホールドコンデンサc3の一端に接続され、−入力が出力に接続されている。よって、スイッチQ24、Q26がオフして、スイッチQ25、Q27がオンできる状態になると、差動増幅回路4から出力されるVc2がホールドコンデンサc3に移されて、OPアンプA5からはコンデンサc2の両端電圧が出力される。
【0040】
次に、上述した構成の掛算回路1の動作について図2に示すタイムチャートを参照して説明する。第1コンデンサc1、第2コンデンサc2、コンデンサcd11、cd12、cdL、c3に蓄積された電荷がない状態で、第1電圧V1、第2電圧V2が印加されたとする。第1電圧V1の印加に応じて、−入力>+入力となるためコンパレータcp1の出力はLレベルとなる。このコンパレータcp1のLレベル出力は、インバータinv1によりHレベルに反転されてF/F回路51の/s1入力に供給される。よって、/s1入力がHレベル、/r1入力がLレベルとなり、F/F回路51はq1出力をLレベル、/q1出力をHレベルにリセットする。
【0041】
これにより、F/F回路51のq1出力からLレベルの充電信号/t1が出力されて、このLレベルの充電信号/t1が第1充電スイッチQ10、第2充電スイッチQ22のベースに供給される。そして、第1充電スイッチQ10がオフ、第2充電スイッチQ22がオンして、第1定電流i1による第1コンデンサc1の充電と第2定電流i2による第2コンデンサc2の充電とが同時に開始される。この第1コンデンサc1の充電によってVc1が増加してVc1が第1電圧V1に達すると、コンパレータcp1の出力がLレベルからHレベルに反転する。
【0042】
このコンパレータcp1のHレベル出力は、インバータinv1によりLレベルに反転されてF/F回路51の/s1入力に供給される。よって、/s1入力がLレベル、/r入力がLレベルとなり、F/F回路51はq1出力をHレベル、/q1出力をLレベルにセットする。これにより、F/F回路51のq1出力からHレベルの充電信号/t1が出力されて、このHレベルの充電信号/t1が第1充電スイッチQ10、第2充電スイッチQ22のベースに供給される。そして、第1充電スイッチQ10がオン、第2充電スイッチQ22がオフして、第1コンデンサc1と第2コンデンサc2との充電が同時に停止される。このときの第2コンデンサc2の両端電圧Vc2が、上述したように第1電圧V1と第2電圧V2との掛算値となる。
【0043】
また、コンパレータcp1のHレベルへの反転に応じてF/F回路51の/q1出力がLレベルになると、第2微分スイッチQ13がオンして、第2微分回路54によりVsの微分が開始される。よって、Vsの微分値Vd2は、図2(H)に示すように、コンパレータcp1のHレベルへの反転に応じてVsとなり、このVsから減少していく。シュミットインバータinv5、inv6は、入力が2/3Vs以上のときに出力がHレベルからLレベルに反転し、入力が1/3Vs以下のときに出力がLレベルからHレベルに反転する。
【0044】
よって、シュミットインバータinv5から出力されるトランスファ信号/tsfは、図2(I)に示すように、コンパレータcp1のHレベルへの反転に応じてHレベルからLレベルに反転し、Vsの微分値Vd2が約1/3Vsを下回るとLレベルからHレベルに反転する信号となる。これとは逆にシュミットインバータinv6から出力されるトランスファ信号は、図2(J)に示すように、コンパレータcp1のHレベルの反転に応じてLレベルからHレベルに反転し、Vsの微分値Vd2が約1/3Vsを下回るとHレベルからLレベルに反転する信号となる。
【0045】
そして、トランスファ信号/tsfがLレベル、トランスファ信号tsfがHレベルの期間t12にスイッチQ24、Q26がオフすると共にスイッチQ25、Q27がオンできる状態となって、差動増幅回路4から出力されるVc2がホールドコンデンサc3に移される。第2微分回路54は、Vsの微分を開始してからVsの微分値Vd2が約1/3Vsを下回るまでの期間t12がホールドコンデンサc3にVc2を移すのに十分な期間となるように、時定数に設定されている。そして、OPアンプA5は、ホールドコンデンサc3にホールドされたVc2を第1電圧V1と第2電圧V2との掛算値として出力する。
【0046】
また、コンパレータcp1のHレベルへの反転に応じてF/F回路51の/q1出力がLレベルになると、第1微分スイッチQ12がオンして、第1微分回路53によりVsの微分が開始される。よって、Vsの微分値Vd1は、図2(E)に示すように、コンパレータcp1のHレベルへの反転に応じてVsとなり、このVsから減少していく。第1微分回路53の微分開始により/r1入力がHレベル、/s1入力がLレベルとなり、F/F回路51は、q1出力のHレベル、/q1出力のLレベルを保持する。シュミットバッファBは、入力が2/3Vs以上のときに出力がLレベルからHレベルに反転し、入力が1/3Vs以下のときに出力がHレベルからLレベルに反転する。
【0047】
よって、シュミットバッファBの出力は、図2(K)に示すように、コンパレータcp1のHレベルへの反転に応じてLレベルからHレベルに反転し、Vsの微分値Vd1が約1/3Vsを下回るとHレベルからLレベルに反転する信号となる。また、コンパレータcp1のHレベルへの反転に応じてF/F回路51のq1出力、即ち充電信号/t1がHレベルになると、積分回路52により充電信号/t1の積分が開始される。よって、積分回路52の出力delayは、図2(L)に示すように、コンパレータcp1のHレベルへの反転に応じて0から増加していく。
【0048】
シュミットインバータinv2、inv3は、その入力が2/3Vs以上のときに出力がHレベルからLレベルに反転し、入力が1/3Vs以下のときに出力がLレベルからHレベルに反転する。よって、シュミットインバータinv3の出力は、図2(N)に示すように、充電信号/t1を時間Δtだけ遅延させた信号となる。
【0049】
NANDゲート55は、Vc2がコンデンサc3にホールドされてトランスファ信号/tsfがHレベルに反転するとLレベルに反転する放電信号/dchを出力する。これに応じてLレベルの放電信号/dchが第2放電スイッチQ23のベースに供給され、Hレベルの放電信号dchが第1放電スイッチQ11のベースに供給される。そして、第1放電スイッチQ11及び第2放電スイッチQ23がオンして、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の放電が行われる。
【0050】
その後、NANDゲート55は、上記Vsの微分値Vd1が1/3・Vsを下回り、バッファBの出力がHレベルからLレベルに反転するとHレベルに反転する放電信号/dchを出力する。これに応じてLレベルの放電信号/dchが第2放電スイッチQ23のベースに供給され、Hレベルの放電信号dchが第1放電スイッチQ11のベースに供給される。そして、第1放電スイッチQ11及び第2放電スイッチQ23がオフして、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の放電が終了される。
【0051】
なお、上記第1微分回路53は、Vsの微分を開始してからVsの微分値Vd1が約1/3・Vsを下回るまでの期間t11が期間t12経過した後に第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2が放電されて両端電圧Vc1、Vc2が0Vになるのに十分な期間となるような時定数に設定されている(t11>t12)。
【0052】
また、Vsの微分値Vd1が1/3・Vsを下回ると、/r1入力がLレベルになり/s1入力がHレベルになるため、F/F回路51は、q1出力をLレベル、/q1出力をHレベルにリセットして、再び第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電を開始させる。そして、以下、上記動作を繰り返し行う。
【0053】
なお、図2のタイミングチャートに示すように、コンデンサc1及びc2の放電を指示するLレベルの放電信号/dch、Hレベルの放電信号dchの出力開始は、コンデンサc2の両端電圧のホールドコンデンサc3へのトランスファを指示するLレベルのトランスファ信号/tsf、Hレベルのトランスファ信号tsfの出力が終了した後でなければならない。また、上述したように上記第1微分回路53は、Vsの微分を開始してからVsの微分値Vd1が約1/3・Vsを下回るまでの期間t11(即ちバッファBの出力がHレベルとなる期間)が期間t12経過した後に第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2が放電されて両端電圧Vc1、Vc2が0Vになるのに十分な期間となるような時定数に設定されている。即ち、トランスファ信号/tsfとバッファBの出力とのANDでLレベルの放電信号/dchが出力される必要がある。ところで、/q1出力が論理Lレベルに移行した瞬間的にトランスファ信号/tsfはLレベルにシュミットバッファBの出力はHレベルに移行する。しかしながら、上記移行するに際し、時間=zeroで移行することはない。そのため、移行期間に放電信号/dchがLレベルを出力するのを避けるために、NANDゲート55を充電信号/t1を時間Δtだけ遅延させたインバータinv3の出力を入力する3NANDに構成して、コンパレータcp1の反転時にインバータinv3をLレベルにして、上記反転時に確実に放電信号/dchをHレベルに保持している。
【0054】
上述した構成の掛算回路1によれば、第1定電流源21が、第1定電流i1を供給する。第1コンデンサc1が、第1定電流i1により充電される。コンパレータcp1が、第1コンデンサc1の両端電圧Vc1と第1電圧V1とを比較する。第2定電流源31が、第2電圧V2に応じた大きさの第2定電流i2を供給する。第2コンデンサc2が、第2定電流i2により充電される。制御回路5が、第1充電スイッチQ10及び第2充電スイッチQ22を制御して、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電を同時に開始させた後にコンパレータcp1により第1コンデンサc1の両端電圧Vc1が第1電圧V1に達した時点で第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電を終了させる。結果保持回路6が、第1コンデンサc1及び第2コンデンサc2の充電が終了した時点の第2コンデンサc2の両端電圧Vc2を第1電圧V1と第2電圧V2との掛算値として出力する。従って、第1電圧V1を電圧→時間変換して時間の次元に置き換えるだけでデジタル処理や対数処理を必要とすることなく、簡易で高速な掛算を行うことができる。
【0055】
なお、図1に示す第1定電流源21は一例であり、第1定電流源21としては任意の第1定電流i1を供給できるものであれば、他の公知の構成を用いてもよい。
【0056】
また、図1に示す第2定電流源31は一例であり、第2定電流源31としては第2電圧V2に応じた第2定電流i2を供給できるものであれば、他の公知の構成を用いてもよい。
【0057】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の掛算回路の一実施形態を示す回路図である。
【図2】(A)はVc1、(B)はVc2、(C)はコンパレータcp1の出力、(D)は/s1入力、(E)/r1入力=Vsの微分値Vd1、(F)はq1出力=放電信号/t1、(G)は/q1出力、(H)はVsの微分値Vd2、(I)はトランスファ信号/tsf、(J)はトランスファ信号tsf、(K)はバッファBの出力、(L)は出力delay、(M)はインバータinv2の出力、(N)はインバータinv3の出力、(O)は放電信号/dch、(P)は放電信号dch、のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 掛算回路
5 制御回路(充電制御回路)
6 結果保持回路(出力回路)
21 第1定電流源
31 第2定電流源
c1 第1コンデンサ
c2 第2コンデンサ
cp1 コンパレータ
i1 第1定電流
i2 第2定電流
V1 第1電圧
V2 第2電圧
Vc1 第1コンデンサの両端電圧
Vc2 第2コンデンサの両端電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧と第2電圧との掛算値を出力する掛算回路において、
第1定電流を供給する第1定電流源と、
前記第1定電流により充電される第1コンデンサと、
前記第1コンデンサの両端電圧と前記第1電圧とを比較するコンパレータと、
前記第2電圧に応じた大きさの第2定電流を供給する第2定電流源と、
前記第2定電流により充電される第2コンデンサと、
前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの充電を同時に開始させた後に前記コンパレータにより前記第1コンデンサの両端電圧が前記第1電圧に達したと判断された時点で前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの充電を終了させる充電制御回路と、
前記充電制御回路による充電が終了した時点での前記第2コンデンサの両端電圧を前記第1電圧と前記第2電圧との掛算値として出力する出力回路と、
を備えたことを特徴とする掛算回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−61428(P2010−61428A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226895(P2008−226895)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)