説明

採寸尺と採寸方法と採寸カルテ及び採寸モデル

【課題】 身体に適合する衣服の選定や作成のための採寸を容易に且つ正確にできる方法と被採寸者固有のサイズの採寸モデルを正確に複製してインターネットや通販等でも利用可能とする。
【解決手段】 被採寸者固有の体躯や着衣の外側を採寸するのに、基幹1を基台としこれに水平方向の各種採寸尺2を適宜並行して設けることで、複数の水平採寸尺が軸方向に一体に体系化され採寸カルテ化、システム化される。該採寸カルテからのデータが、軸方向と水平方向に伸縮する採寸モデルの躯体で再現して被採寸者固有の体躯が採寸モデルに正確に複製される。 該採寸モデルはプラスチックシートを圧空成型するときのモデル型Pとしても使用され、被採寸者固有の中空プラスチックモデルが廉価に提供できる。 又採寸モデルの要所には必要な圧力センサを備え、被採寸者が感じるのと同等の着心地(体感圧力)を圧力センサのデータから読み取れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は衣服、即ちスーツ、制服、スポーツウエア、カジュアルウエア、ウエットスーツ等に適用ができる採寸尺と採寸方法と採寸カルテ及び採寸モデルに関し、特に専門知識が無くても容易且つ正確に採寸ができる採寸尺と採寸方法と採寸カルテ及び採寸モデルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
着心地の良い衣服を得るためには、可能な限り多数箇所、身体要部の寸法を測定(採寸)し、このデータに基づいて作成することが望ましい。
【0003】
この採寸の一例として図2、図4に示すように
B.首周り 喉骨を通る位置の水平周囲
C.肩囲 肩部の最も広い位置の水平周囲
D.胸囲(バスト) 胸部の最も高い位置の水平周囲
E.胴囲(ウエスト) 腹部の最も細い位置の水平周囲
F.腰囲(ヒップ) 腰部の最も厚い位置の水平周囲
G.太股囲 股から10cm程下の水平周囲
H.身長
I.肩幅 首の後ろ付け根を通り肩先まで
【0004】
更に、
上衣丈 後ろ衿ぐりから上衣裾まで
裄丈 首の後ろ付け根から肩先、肘を通り手首まで
右袖丈 右肩先から肘を通り右手首まで
左袖丈 左肩先から肘を通り左手首まで
股上 椅子に座ってウエストから椅子の面まで
股下 股からズボン裾まで
等が単独、或いは適宜組み合わせられ、採寸の要素を構成している。
即ち衣服の正確な採寸には、専門知識を持つ人が、巻尺等で被採寸者の身体の要所を正確に測定、採寸することが必要である。
【0005】
然しながらオーダー服は別格として、既製服、中でも制服、スポーツウエア、カジュアルウエア等の大量生産による大量販売(インターネットや通信販売)においては、専門知識を持つ人が巻尺等で顧客の身体の要所を直接測定して採寸することは現実には不可能である。
【0006】
従ってこれらの受発注には、この採寸に代わるサイズ合わせが行われる。
通常は、顧客の体型を標準体型A、肥満体型B、痩身体型Y 等で区分。
更に、これらの体型に対して、夫々SS.S.M.L.LL.等をサイズ表の記号に表示分類されたものから選定されることでサイズ合わせがなされる。
然しながらここに区分されるA.B.Y.及び分類されるSS.S.M.L.LL等の記号は、その基準と成る数値が極めて曖昧であって、実際にはメーカーが適当に自社の規格を設け、これに準拠した記号又は番号がサイズ表に表示されている状態である。
【0007】
上記からも明らかなように、既製服をサイズ表だけから選定して、体に適合する着心地の良いものを購入することは甚だ困難であった。
【0008】
この対策として特開平09−067711号では、被採寸者の身体のサイズを採寸するために、衣服の形態をなした服型を被採寸者に着用せしめ、前記身体に巻きつけて、折り返しによるサイズ合わせをする部分と、目視によりサイズ合わせをする部分の何れかを有し、且つ夫々のサイズ合わせをするための目盛りを有するものであるために、通販などで利用できない問題があった。
【0009】
特開平08−100317号のボデースメジャーは、被採寸者の身体の前面部を覆う矩形の前身頃と、後面部を覆う矩形の後身頃と、前記前身頃と後身頃の夫々脇部の間を調整可能な連結材と、これに接離可能な面ファスナーと、切り込みを設けたもので、被採寸者から立体的に計測したものを平面状に展開して、製作型紙として利用するもので、矢張り通販などで利用できない問題があった。
【0010】
特開平09−075187号ではマネキンの体躯(ヌード)を前部と後部に分割し、後で一体に組み立てるもので採寸には利用できない問題があった。
【0011】
特開平05−223551号、特開平11−776207号、特開2002−63438号及び特開2003−269936号は被採寸者の外観をカメラで得た画像データから自動採寸するシステムのため、被採寸者は必ず一度はカメラやセンサの前に立たなければならないため、通販などで利用できない問題があった。
【0012】
更に上記した従来の採寸方法と装置は、殆どが衣服の外側(着衣のまま)の採寸であるために、同一寸法であっても、衣服の厚みが大きい場合、衣服の厚みの小さいものよりも体躯(ヌード)(ブラジャーなど最低限の被着)に掛かる締め付けが当然強くなる。
反対に衣服の厚みが小さいものでは、体躯(ヌード)との間に余計な空間が生じる。
これらは夫々着心地に及ぶことになる。
【0013】
【特許文献1】特開平05−223551号
【特許文献2】特開平08−100317号
【特許文献3】特開平09−067711号
【特許文献4】特開平09−075187号
【特許文献5】特開2002−063438号
【特許文献6】特開2002−317322号
【特許文献7】特開2003−269936号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来の問題点を解決することである。
即ち、身体の寸法に近いサイズの衣服を選ぶのではなく、身体に適合した着心地の良い衣服を容易に選定、及び又は容易に作成せんとするものである。
【0015】
そして、上記課題を達成するために、採寸に不慣れな人でも取り扱いが容易で、且つ正確な身体の採寸ができる採寸尺と採寸方法によって得たデータで構成された採寸カルテから複製される採寸モデルを利用することによって、インターネットや通信販売などでも適用できることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明者は、体躯(ヌード)及び外側(着衣のまま)を採寸するのに、人の背骨に相当する軸方向の基幹1を基台とし、これに水平方向の各種採寸尺2を適宜並列して設けることによって、水平方向の採寸が軸方向に体系化されることに着目し、この発明を完成するに至ったものである。
【0017】
即ちこの課題は、従来被採寸者のバスト、ウエスト、ヒップ等水平方向周囲のデータが夫々独立して採寸されていたのに対し、この発明では基幹1に対し水平採寸尺2が並列して設けられ、且つ被採寸者のバスト、ウエスト、ヒップ等夫々の水平方向の周囲が採寸されてデータが体系化されることによって解決される。
【0018】
そして上記採寸されたデータは採寸カルテ化され、メーカー及び又は販売者が、予め統計などによって分類、規格化して製作されている既製服の中から、前記採寸に対応するサイズの衣服を選択、これを前記採寸に対応する採寸モデルに被着せしめてサイズ合わせができる。然してこれ等被着作業は経験を積むことによって、採寸カルテを読むだけで前記採寸に対応するサイズの衣服を選択でるようになる。
【0019】
ここに使用される採寸モデルはマネキンに似た体躯(ヌード)のもので、必要に応じて体躯の各部材が図4に示すように軸方向、及び図5に示すように水平方向(前後及び横方向)に伸縮調節が可能であり、且つその位置の少なくとも一部の水平方向周囲のサイズが被採寸者固有の採寸カルテのデータによって複製される。
【0020】
更に、採寸によって複製された採寸モデルの外側の要所(肩囲、バスト、ウエスト、ヒップ等)、及び肩等には、複数の圧力センサを設けることができる。
この圧力センサによって、各部分及び全体の体感圧力、即ち着心地がデータとして表示される。
【発明の効果】
【0021】
以上に説明したように、この発明の採寸尺と採寸方法で得られた採寸カルテから、被採寸者固有の体型が、該採寸データに対応する採寸モデル(サイズの変更ができる。圧力センサが付く)によって忠実に複製せしめられる。
即ちメーカー及び又は販売者は、被採寸者を直接採寸しなくても、被採寸者から提供される前記採寸カルテによって、被採寸者固有のサイズに複製された採寸モデルに対処することで、正確な採寸の目的を達成することができる。
そして予め作成している近似サイズの衣服を、該採寸モデルに被着せしめて前記被採寸者の採寸に対応した衣服の作成、或いはサイズ合わせ(修正を含む)ができる。
【0022】
この採寸モデルは圧力センサによって被採寸者の着心地までも検証ができる。
然して被採寸者の採寸が、専門知識の人、又はカメラ等の特殊な測定装置の採寸に依らなくても、被採寸者とその協力者とによって正確に体系化された測定が、被採寸者の自宅においてでも実施でき、このデータが配送、配信、更にはシステム化されることからインターネットや通信販売などでも利用できる。
更に、体躯(ヌード)の採寸による着心地優先と、着衣の採寸による外側(着衣のまま)ファッション優先、の何れか又は両方を測定して、着心地とファッションの両方を満足させる衣服が提供できる。
更にまた、被採寸者固有の体型の中空プラスチックモデルが廉価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下にこの発明の採寸尺と採寸方法と採寸カルテ及び採寸モデルを、実施例によって説明する。
図1、図3(イ)に示すように、人の背骨に相当する軸方向の基幹1には上端部から上
衣裾(下方向)Sに向かって、0〜70cmの連続した縦目盛りYが設けられている。
基幹1は首周り採寸尺Bに固定され、この固定部Aを縦目盛りYの起点0点として設定されている。これがこの発明の採寸尺と採寸方法と採寸カルテ及び採寸モデルの基準となる。基幹1には図2に示すように首周り採寸尺Bを始めとし、下方に順次、肩囲採寸尺C、胸囲(バスト)採寸尺D、胴囲(ウエスト)採寸尺E、腰囲(ヒップ)採寸尺F等の採寸尺2が夫々水平方向に並列して設けられ、且つ夫々が軸方向に移動が可能に取り付けられる。
然してこれらが軸方向に並列せしめられることにより体系化され、立体化された採寸モデルとなる。
【0024】
軸方向に並列して水平に設けられる各採寸尺2(B.C.E.F)には従来どおり、例えば特開2002−317322号でも公知の、夫々の採寸をするのに適切な長さと横目盛りXが、図3(ロ)に示すように設けられている。
【0025】
そして首周り採寸尺B、肩囲採寸尺C、胸囲採寸尺D、胴囲採寸尺E、腰囲採寸尺Fは、
夫々採寸尺2の略中央部が、夫々基幹1に、軸方向にスライド可能に固定できる。
固定手段としては、縦方向の基幹1と横方向の採寸尺2の双方を所定位置で直接重ねてから、両面テープで接着するか、ホチキスで2箇所止めるなどができる。
然して夫々の水平採寸尺2は、夫々の採寸位置で身体に巻きつけられて前方で交差し、その端部にある夫々の三角マークZが指す横目盛りXを読むようになっている。
【0026】
又基幹1の軸方向には上端部の固定点Aを起点0とし、上衣裾Sに向かって連続した縦目盛りYが設けられ、首周り採寸尺Bの固定点A、肩囲採寸尺Cの固定点3、胸囲採寸尺Dの固定点4、胴囲採寸尺Eの固定点5、腰囲採寸尺Fの固定点6等は、夫々の位置を基幹1の縦目盛りYの数値から読み取ることができる。
【0027】
然してこの発明に係る採寸尺、即ち基幹1及び水平採寸尺2は使い捨ての要があるため、材質は廉価な紙又はプラスチックでリサイクルできることが好ましい。
これらの採寸尺には上記横目盛りX及び縦目盛りYが設けられる。
また基幹1となる採寸尺は、夫々の水平方向採寸尺2が水平に取り付けられ、且つ正確に縦目盛りYを読み取る必要があるため、基幹1となる採寸尺部材は4〜6mm程度の幅で構成されることが好ましい。
そして夫々の採寸尺2と基幹1には、必要に応じて図3(イ)に示すように基幹1に対して、採寸尺部材が上下に移動しながら水平に取り付けられるスライド溝12を備えた ガイド10が設けられることが望ましい。
【0028】
水平方向採寸尺2を基幹1に固定する手段としては、前記ガイド10を両面テープ、接着テープで基幹1に固定する。
【0029】
基幹1は体躯(ヌード)に密着、背骨に沿って曲がる。
首周りB、肩囲C、胸囲D、胴囲E、腰囲Fの各採寸尺2は夫々が夫々の測定点の位置で固定され、図2に示すように全体の態様が骨格のように構成することができる。
この場合、夫々の測定点で水平位置の採寸尺2を固定すると同時に、その位置で水平方向のデータ(横目盛りX)と、基幹1の軸方向のデータ(縦目盛りY)から読み取ったデータを、図10に例示す採寸カルテVに記載する。
【0030】
この発明の他の例では、ガイド10は、基幹1を上下軸方向に移動して採寸することができることから、肩囲採寸尺Cを使用し、肩囲採寸尺C一つで胸囲採寸尺D、胴囲採寸尺E、腰囲採寸尺Fにも兼用する。
即ち、夫々の位置で夫々の採寸を行い夫々のデータを横目盛りXから読み取る。
【0031】
更にガイド10は、基幹1を上下軸方向にスライド溝12で移動することができるだけでなく、必要に応じて水平方向にも採寸尺2をスライド移動させることが好ましい。このためにガイド10にはスライド溝13が設けられている。
【0032】
尚上記では基幹1から被採寸者固有の体躯を体系的に採寸するものであるが、これらに劣らず大切な肩幅I、上衣丈、裄丈、も基幹1の固定点A即ち起点0から夫々の採寸尺で採寸することができる。肩先から採寸される右袖丈、左袖丈等は別途採寸される。
【0033】
上記では衣服の上衣の採寸について概略を説明したが、下衣即ちズボンについて、太股囲、股上、股下その他の採寸は公知の採寸方法が適用できる。
【0034】
この発明は、被採寸者を採寸するために人の背骨に相当する軸方向の基幹1を基台とし、これに水平方向の各種水平採寸尺2を適宜並列に設け、採寸が軸方向に体系化されることが要旨であるが、最小限の部材を身体に纏った体躯(ヌード)の採寸だけでなく、必要に応じて被採寸者が衣服を着用した外側(着衣のまま)、ファッションを重視した採寸にも併用できることは当然である。
【0035】
またこの発明を正確に具体化するための採寸モデルWは、図4〜5に示すように、例えばマネキンの体躯(ヌード)を用い、その要所(肩囲採寸尺C、胸囲採寸尺D、胴囲採寸尺E、腰囲採寸尺F)に対応する部分が夫々に分割されて、軸方向と水平方向、前後、左右、伸縮自在に調節設定されるようになっている。
そして採寸カルテVのデータを夫々の水平位置のデータ、及び又は固定点Aの起点0からの距離のデータに設定されることで、被採寸者固有の体躯(ヌード)を精密に複製した採寸モデルWが形成される。
以下実施例によってこの発明の詳細を説明するが、同一部材、同一の用途については同じ符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0036】
実施例は図1〜3に示す。基幹1は首周り(カラー)Bの背面に固定され、その固定点Aを起点0として下方の上衣裾Sに向かって長さ70cmの縦目盛りYが設けられている。
首周り(カラー)Bは同時に水平方向の採寸尺2であって、首に巻きつけられた端部の三角マークZが重複交差し、図3(ロ)に示すように首周りBの長さが横目盛りXで読めるようになっている。
この時採寸尺2である首周り(カラー)Bの端部の三角マークZは、首周り(カラー)Bに重複すると同時に横目盛りX上に、両面テープ又はマジックテープ(登録商標)、ホチキス、或いは安全ピン等で適切に固定される。
【0037】
肩囲採寸尺Cは肩部の最も広い位置の水平周囲を採寸するもので、横目盛りXのデータ3を端部の三角マークZから読み取ると共に、軸方向の位置を基幹1の起点0から縦目盛りYのデータを三角マークZ”から読み取ることで2つのデータが採寸され、採寸カルテVに記載される。
胸囲(バスト)採寸尺D、胴囲(ウエスト)採寸尺E、腰囲(ヒップ)採寸尺F等も夫々肩囲採寸尺Cと同様、基幹1の起点0からの縦目盛りYのデータと横目盛りXのデータとの2つのデータが夫々採寸され、採寸カルテVに記載される。
【0038】
以下に成人男性、身長170cmの各採寸データを例示する。
即ち図10に示す採寸カルテVには
身長、 H 170
X Y
首周り、 B 39× 0
肩囲、 C 100× 9
胸囲、 D 93× 25
胴囲、 E 83× 42
腰囲、 F 95× 58
太股囲、 G 54
と記載される。
そして別欄には必要に応じて
肩幅、上衣丈、裄丈、右袖丈、左袖丈、着丈、股上、股下、等が記載される。
【実施例2】
【0039】
この実施例も実施例1と同じように基幹1は、首周り(カラー)Bの背面に固定点Aで固定され、そして下方の上衣裾Sに向かって長さ70cmの縦目盛りYが設けられている。
首周り(カラー)Bは同時に採寸尺2であって首に巻きつけられて採寸される。
基幹1には縦目盛りYが設けられている。更に基幹1にはガイド10が上下にスライドしながら、ガイド10に設けられた端部の三角マークZ”で縦目盛りYを読み取り、起点0から軸方向の要所各部位(肩囲C、胸囲D、胴囲E、腰囲F)のデータとする。
即ちガイド10は、図3(イ)に示すように、基幹1に対して水平採寸尺2が傾斜しないで上下するように縦スライド溝12が設けられ、そして該採寸尺2が水平に安定して移動するように横スライド溝13が設けられている。
水平採寸尺2は図3(ロ)に示すように、その先端に三角マークZが記され、採寸尺2の横目盛りXを読み取るようになっている。
この実施例によると、首周り(カラー)Bの背面の固定点Aに固定された基幹1と、そしてガイド10と、一番長い肩囲水平採寸尺C一本によって、前記要所各部位全てのデータを採寸して読み取ることができる。
更に、固定点Aで固定される肩幅採寸尺Iから裄丈、袖丈等が採寸できる。
【実施例3】
【0040】
この実施例は、被採寸者をこの発明の体系化された採寸方法と採寸尺で採寸した採寸カルテVによって、被採寸者の体躯(ヌード)を複製して再現することができる採寸モデルWの一例である。
採寸モデルWは図4に示すように、首周りBと肩囲Cの間a(点線)、肩囲Cと胸囲Dの間b(点線)、胸囲Dと胴囲Eの間c(点線)、胴囲Eと腰囲Fの間d(点線)が必要に応じて軸方向に分離され、軸方向の距離が伸縮自在に調節されるようになっている。
点線は分割可能な位置を示している。
更に首周りB、肩囲C、胸囲D、胴囲E、腰囲Fを構成する各部材は図5に示すように
夫々が水平方向に分割され、前左部材20、前右部材21、後左部材22、後左部材23の4個に分割されるようになっている。
【0041】
一例として、図5に分割された胴囲Eが伸縮せしめられる態様を示す。
図5(イ)は胴囲Eの平面図で、(ロ)はB−B線側面図である。
先ず前左部材20と前右部材21が調節板30によって位置が決められ、ビス31で固定される。ビス31に対応するナットは、図示していないが横にスライドができ、横幅の伸縮ができるようになっている。
次に前左部材20と前右部材21に設けられた雌ネジ24.24に対して、後左部材22、後左部材23の穴25と穴25から調節ボルト26と26が捻じ込まれる。前左部材20と前右部材21には別途穴32.32が設けられ、その中にバネ33.33が埋設されている。
【0042】
前部部材の調節板30にはクランプリング36があって、背柱35に固定され、軸方向の位置決めができるようになっている。背柱35は少なくとも1方向(前後)に曲がるフレキシブルなパイプ構造で構成されることが好ましい。
【0043】
そして該背柱35には、基幹1の起点0からの縦目盛りYに対応する目盛りが刻まれている。即ちクランプリング36を背柱35の目盛りに合わせるだけで、胴囲Eを軸方向の指定位置に設定することができる。
【0044】
この位置決めと固定は胴囲Eだけでなく、首周りB、肩囲C、胸囲D、腰囲F等他の部材にも適用できる。
【0045】
首周りB、肩囲C、胸囲D、胴囲E、腰囲Fを構成する部材の表面の少なくとも一部及び肩など他の体の要所には圧力センサ37が設けられ、そのデータが測定され、体感圧力として採寸カルテVに表示される。
【実施例4】
【0046】
この実施例は図6に示す。躯体38は略人体の特徴を持った形状のもので、凡そ、大、中、小、程度の大きさに分けられて作られる。
この躯体38には縦目盛りYが刻まれている。そして採寸カルテVに示された胴囲Eのデータによって、図7(イ)に示すように胴囲Eに巻回されるテープTの長さが設定される。該テープTと躯体38の間には図7(ロ)に示すように、予め空気チューブTuが巻回設けられている。この空気チューブTuが空気圧で膨らませられることによって、テープTを緊張させ、所定位置(胴囲E)における設定サイズが得られる。
即ちテープTによって実施例5と同じサイズの胴囲Eが得られる。
胴囲Eの基本型は躯体38の断面形状で決められる。
圧力センサ37はテープT、空気チューブTuの上その他、適宜身体の表面に設置することができる。首周りB、肩囲C、胸囲D、胴囲E、腰囲F等同様である。
【実施例5】
【0047】
この実施例は図8に示す。躯体38は実施例4と同じ様に、略人体の特徴を持った形状のものを使用する。そして採寸カルテVのデータから、縦目盛りYの所定の位置に片面接着のクッションテープUを巻回して貼付し、この上にテープTを所定の長さで巻回する。 即ちクッションテープUを巻回して、空気チューブTuの代わりをさせる。圧力センサ37その他は実施例3〜4と同様である。
【実施例6】
【0048】
この実施例は上記で作成された採寸モデルWの体躯をプラスチックシートの成型の型(モデル型P)として利用することを特徴とする。
モデル型Pは、全体がプラスチックシート41の厚さ1.5mmだけ、採寸カルテVのデータよりも小さく作られている。
そして、加熱軟化させた厚さ1.5mmのプラスチックシート41を図9に示すように、3〜5kg/cmの圧縮空気40で圧空箱42、42”に入ったモデル型Pに密着させて成型し、前部半分の成型体43を得る。
後部半分も同様の手順で作成、後で一体に仕上げられる。
【0049】
圧空箱42”の中にはモデル型Pと、該モデル型Pを支える保持具45を備え、所定の
高さまで砂46が充填される。充填された砂46の露出している表面には石膏47で皮膜が作られる。
更にモデル型Pの下面には、モデル型Pに傷が付かないようにポリエチレンのラップシートが敷かれる。図中44はプラスチックシート41を押さえるダイスである。
【0050】
上記実施例3〜5の採寸モデルWは首周りB、肩囲C、胸囲D、胴囲E、腰囲F等の各部位の部材が切断分離で膨張、変形させられている。
このために生じている段差、隙間に紙粘土などを埋めて、表面を平滑にし、モデル型Pとすることが好ましい。かくして、プラスチックシートから成型された美麗な被採寸者固有の中空プラスチックモデルの体躯(ヌード)が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
基幹1の縦目盛りYと、水平採寸尺2の横目盛りXによって、首周りB、肩囲C、胸囲D、胴囲E、腰囲Fなどのデータを体系化したことにより、被採寸者固有の採寸カルテV及び採寸モデルWとなる。
【0052】
前記採寸モデルの複製に際して、採寸モデルの体躯を構成する分割された部材の軸方向及び、水平方向(前後及び左右)への伸縮が、例えば数値制御化されたモーター、シリンダー等でなされ、肩囲Cなど採寸カルテのデータが瞬時に採寸モデルに複製再現されることで、顧客に試着せしめたのと同様の効果が手軽に得られる。
この採寸尺と採寸方法と採寸カルテによる採寸モデルと衣服がシステム化され、インターネットや通信販売に利用できる。
【0053】
更に、被採寸者固有の体躯(ヌード)を写した中空プラスチックモデルが廉価に製造でき、中空プラスチックモデルの製作が一つの事業になる。
【0054】
前記被採寸者固有の採寸カルテで複製される中空プラスチックモデルは、水嚢などで体重の付加ができ、ヒータで加熱もできる。更には屈曲できる背柱によって、或は背柱の中を通したワイヤー等を操作することによって、ロボットのように自由に体位の変換ができる。下半身、下肢等はマネキンなどを利用できる。
更に設けられた圧力センサによって、人体に近いロボットとなり、精密な体感が必要な用途(例えば寝たきり状態の体の感覚の数値化の用途等)に利用できる。
上記構成から被採寸者固有サイズの擬人ロボットが極めて廉価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1はこの発明の基幹1を示す斜視図である。
【図2】図2は基幹1に各種水平採寸尺2と肩幅採寸尺Iを付けた斜視図である。
【図3】図3はガイド10による採寸の態様を示し、(イ)は背側から見たガイド10の三角マークZ”から基幹1の縦目盛りYを読む斜視図である。(ロ)は前方三角マークZから水平方向の横目盛りXを読む斜視図である
【図4】図4は軸方向にも伸縮できる採寸モデルの斜視図である。
【図5】図5は伸縮できる採寸モデルの(イ)は、分割できる腰囲Fの態様を示す図4のA−A線横断面図である。(ロ)は、図5のB−B線の正面図である。
【図6】図6は実施例4の採寸モデルの斜視図である。
【図7】図7(イ)は、図6のA−A線横断面図である。(ロ)は、図7(イ)B−B線横断面図である。
【図8】図8は、図7(イ)B−B線横断面図である。
【図9】図9は実施例6の圧空成型の模式図である。
【図10】図10は採寸カルテの模式図である。
【符号の説明】
【0056】
A.固定点
B.首周り
C.肩囲
D.胸囲
E.胴囲
F.腰囲
G.太股
I.肩幅
P.モデル型
S.上衣裾
T.テープ
Tu.チューブ
V.採寸カルテ
W.採寸モデル
X.横目盛り
Y.縦目盛り
Z.三角マーク
Z”.軸方向の三角マーク

1.基幹
2.水平採寸尺
3.肩囲採寸尺Cの固定点
4.胸囲採寸尺Dの固定点
5.胴囲採寸尺Eの固定点
6.腰囲採寸尺Fの固定点
10. ガイド
12. 縦スライド溝
13. 横スライド溝
20. 前左部材
21. 前右部材
22. 後左部材
23. 後右部材
24. 雌ネジ
25. 穴
26. 調節ボルト
30. 調節板
31. ビス
32. 穴
33. バネ
35. 背柱
36. クランプリング
37. 圧力センサ
38. 躯体
40. 空気
41. プラスチックシート
42. 圧空箱
42”. 圧空箱
43. 成型体
44. 押さえダイス
45. 保持具
46. 砂
47. 石膏

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被採寸者の体躯(ヌード)及び又は外側(着衣のまま)を採寸するのに、人の背骨に相当する軸方向の基幹1を基台とし、該基幹1の適宜要所に水平方向の各種採寸尺2を複数並列して設けることにより、水平方向の採寸を軸方向に一体に体系化せしめる事を特徴とする採寸尺と採寸方法。
【請求項2】
前記採寸尺と採寸方法において、一つの水平方向の採寸尺2が、基幹1を軸方向に上下して複数の採寸要所を採寸することで、水平方向の採寸を軸方向に一体に体系化、立体的に採寸するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の採寸尺と採寸方法。
【請求項3】
請求項1〜2に記載の採寸尺と採寸方法で採寸されたデータが記載される被採寸者固有の採寸カルテ。
【請求項4】
採寸モデルを構成する体躯(ヌード)の要所の部材が身長の方向(軸方向)及び、水平方向(前後及び横方向)に伸縮、移動が可能に構成され、任意のデータ或いは請求項1〜2で得られたデータに従って採寸モデルが創作或いは複製せしめられることを特徴とする採寸モデル。
【請求項5】
創作或いは複製された採寸モデルをモデル型Pとし、これに加熱軟化させたプラスチックシートを密着させて、前半身、後半身の成型をしてから所定の形状に一体化せしめられる請求項4に記載の中空プラスチック製の採寸モデル。
【請求項6】
上記採寸カルテのデータによって創作又は複製された採寸モデル、或いは中空プラスチックモデルの外側の要所(肩、肩囲、バスト、ウエスト、ヒップ、その他等)には、複数の圧力センサ等が設けられる請求項4〜5に記載の採寸モデル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−152456(P2006−152456A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340498(P2004−340498)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000130798)松本技研株式会社 (8)