説明

接ぎ木用把持具

【課題】把持力を与えるための金属製のバネが不要であり、また従来の金属製バネを使った小さなプラスチック製の接ぎ木ピンチの薄肉のヒンジ部のように割れやすいことがなく、台木や穂木の茎の径の大小にも1つで対応でき、さらに接ぎ木の接合部の目視による確認が容易な接ぎ木用把持具を提供する。
【解決手段】互いに茎保持部6の空間を隔てて配置され、非使用状態では先端の空間が開いている1対の挟持部1,2と、1対の挟持部1,2の基端部側にそれぞれ連設されたつまみ部4,5と、1対の把持部1,2の基端部同士を連結するU字形の連結部3とを有し、1対の挟持部1,2の対向する内面に、複数の突条1a,2aが突設されており、全体が一体の軟質プラスチック製、特に透明な結晶性樹脂製である接ぎ木用把持具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接ぎ木用把持具、特にキュウリ、スイカ、メロン等のウリ科の果菜の接ぎ木をする際に、台木と穂木との接ぎ部分を保持する接ぎ木用把持具に関する。
【背景技術】
【0002】
旧来より、栽培する果菜類の栽培施設の固定化による土壌伝染性病害や一部の虫害を避けたり、連作を可能にしたりするため、あるいは周年生産のために異常気象時に栽培を余儀なくされた場合の強健性、また台木の選択、例えばキュウリのブルームレス台木やカボチャを台木として用いることによって、果実の形質を変え高品質な果菜を生産するために接ぎ木という技術が用いられている。
【0003】
例えば、スイカはカンピョウを台木としてスイカの穂木を接ぎ木する。キュウリは台木として主にカボチャを用いている。メロンやナス、トマトでは、品質の異なる共台が用いられている。
【0004】
本出願人は先に、特許文献1において、接ぎ木後、苗が充分に成長するまで、支柱による支えを行うことができ、幼苗挿入ガイド口の確認が容易にでき、台木と穂木の切断面を確実に合わせることのできる構造のナス科(トマト、ナス、ピーマン)用の接ぎ木保持具を開示した。この接ぎ木保持具は、一側部に上端部から下端部までスリットを備えたプラスチックの筒状体と、スリットの上端部近傍にスリットの前方を塞ぐ状態に湾曲した腕を持つ支柱取付部材を備えた接ぎ木保持具であり、筒状体には指でつまむことができるつまみ部を一体的に形成し、筒状体の上端部に、内面が傾斜した半円状の穂木挿入ガイドを突出し、筒状体の下端部に、内面が傾斜した半円状の台木挿入ガイドを突出して設けたものである。これにより、台木の切断面と穂木の切断面を容易に合わせることができるようになり、活着率が向上した。
【0005】
さらに、接ぎ木活着後、苗が生長して筒状体が保持できる径よりも太くなったときでも、支柱取付部材の腕の内側で苗木が引き続き保持されるため、苗木が充分生長するまで、支柱による支持ができ、ナス科の接ぎ木の分野で、接ぎ木作業の省力化や高品質な接ぎ木苗の生産に一定の効果が見られた。
【0006】
果菜類の接ぎ木苗には、ナス科(ナス、ピーマン、トマト等)とウリ科(キュウリ、スイカ、メロン、ゴーヤ等)がある。ウリ科のキュウリ接ぎ木苗を作る場合、図8に示すように、断根されたカボチャ(断根部103)を台木100に使う。2枚の子葉101,102の内、図9に示すように1枚の子葉101を残し、他方の子葉102をカッターC等で斜め上方向に切断し、図10に示す切断面104付きの片葉の台木100とする。1枚の片葉101を残さないと、接ぎ木後の穂木の成長が悪く活着率が低下する。
【0007】
上述の特許文献1において開示された接ぎ木保持具はナス科に適した接ぎ木保持具であり、トマト、ナス、ピーマン等は、図11に示すように台木となる苗に子葉を残さずに斜め上方向に切断した台木110に、図12に示す接ぎ木保持具20を上から下方向へ挿入する。その後、図13に示すように接ぎ木保持具20が挿入された台木110に、切断された穂木120を挿し込むことで、接ぎ木作業を行うことができる。しかし、ウリ科の接ぎ木苗を生産する場合は、図8に示すように台木100となる苗の2枚の子葉101,102のうち図10に示すように1枚を残して接ぎ木保持具20を装着しなければならない。
【0008】
このように、ウリ科の接ぎ木作業の場合、台木100に1枚の子葉101を残しているので、図14に示すように、子葉101が邪魔をして接ぎ木保持具20を上から下方向へ挿し込むことができない。そこで、図10に示すウリ科接ぎ木用の台木100の切断面104と図15,図16に示す穂木130の茎133の切断面134を合わせて保持するものとして、図17、図18に示す、金属製バネを使った小さなプラスチック製のピンチ30等が多く接ぎ木生産業者間で使用されている。このピンチ30は、C字状の金属製バネ31と、一対の挟持部32とつまみ部33が薄肉のヒンジ部34で結合され、挟持部32の内面には円錐形の先が尖った突起35が形成されている。なお、穂木130には子葉131,132が付いており、茎133の下端が斜めに切断された切断面134となっている。
【0009】
また、鉄やステンレスバネを使わず、軟質プラスチックの弾性を利用した筒状の接ぎ木用クリップが特許文献3に示されている。この接ぎ木用クリップの基本構成は、図21に示すように、台木用苗の台部及び穂木用苗の穂部を内包し得る所定長さの円筒状からなる保持部41と、保持部41の長さ方向に亘るスリット42と、保持部41の背面に設けたスリット開閉用の把持部43,44とを有するものである。図22に示すように、接ぎ木用クリップ40に設けられたスリット42の反対側に設けられた把持部43,44を摘んでスリット42を開き、図23に示すように1枚の子葉101を残している台木100に横方向から挟み込む。さらに、図24に示すように、穂木130を保持穴45(図21参照)に挿し込んで、穂木130の切断面134(図15参照)が台木100の片方の葉の切断面104にくっつくようにする。
【0010】
筒状のつまみ付き保持具の中では特許文献2に記載されたものが商品化され、ウリ科接ぎ木保持具として使用されている。
【0011】
また、特許文献3には、図25に示すように、把持部51と開閉部52とを備える回動部を左右一対備え、把持部51と開閉部52との間に設けた第一接続部53と開閉部52の端部に設けた第二接続部54とにより左右一対の回動部を接続している接ぎ木クリップ50が開示されている。そして、把持部51の内周には凸条55が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3801578号公報
【特許文献2】実開平6−9434号公報
【特許文献3】特開2003−38030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した、図17,図18に示した金属製バネ31を使った小さなプラスチック製の接ぎ木ピンチ30は、プラスチックの挟持片32と金属のバネ31を使っているので組立が必要となり、コストが高く重量も重くなるので幼苗の接ぎ木苗には負担がかかる。
【0014】
また、接ぎ木ピンチ30では、薄肉のヒンジ部34が1回の接ぎ木苗の生産作業によって割れてしまい、再使用できないものが多く出る。
【0015】
クリップを再使用して接ぎ木を行う場合は、洗浄し消毒して使うが、金属製バネ31を使っている接ぎ木ピンチ30は、図18に示すように、何も挟んでいない時でもバネの閉まる力によって先端36が押さえられ接着しているので、1つ1つつまみ部33を摘み、挟持部32の先端36を開いて洗浄、消毒をする必要があり手間が掛かる。
【0016】
繁忙時にウリ科(キュウリ等)の接ぎ木苗を生産する場合、一時期に需要が集中するのでアルバイト等を雇用し、接ぎ木苗を生産する育苗業者も多い。
【0017】
上述した、図17に示した金属製バネ31を使った接ぎ木用ピンチ30は、切断された台木100の切断面104(図10参照)と穂木130の切断面134(図15、図16参照)を片手の指先で向かい合わせ、ずれないようにしたまま、もう一方の手で接ぎ木用ピンチ30のつまみ部33を摘み拡げて挟むために(図19参照)、熟練した作業者でなければ台木100と穂木130の切断面104,134をずれないように合わせて摘み、接ぎ木をするのが難しい。
【0018】
図21に示した接ぎ木用クリップ40では、台木や穂木の茎の太さにバラツキがあるので、苗の太さに合わせた保持穴45のサイズが必要であり、直径が2ミリ前後、3ミリ前後、4ミリ前後と3種類ほどあり、使い分けしなければならない。
【0019】
図25に示した接ぎ木用ピンチ50では、作業者が手で接ぎ木をする時は図19に示した従来と同じように、台木100と穂木130の切断面104,134を片手で合わせて摘んでおき、もう一方の手で接ぎ木用ピンチ50を茎に止めなければならない。また、ポリエチレン素材であるため、半透明しか作れないので、接合部のズレ等を確認することが難しい。
【0020】
そこで本発明は、把持力を与えるための金属製のバネが不要であり、また従来の金属製バネを使った小さなプラスチック製の接ぎ木ピンチの薄肉のヒンジ部のように割れやすいことがなく、台木や穂木の茎の径の大小にも1つで対応でき、さらに接ぎ木の接合部の目視による確認が容易な接ぎ木用把持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題を解決するため、本発明の接ぎ木把持具は、互いに茎保持部の空間を隔てて配置され、非使用状態では先端の空間が開いている1対の挟持部と、前記1対の挟持部の基端部側にそれぞれ連設されたつまみ部と、前記1対の把持部の基端部同士を連結するU字形の連結部とを有し、前記1対の挟持部の対向する内面に、複数の突条が突設されており、全体が一体の軟質プラスチック製である。
【0022】
本発明では、金属製バネを使わず弾性力を利用した一体成形の接ぎ木用把持具であるために、重量も軽く生産コストも安いので育苗業者にも安価に提供できる。また、1対の挟持部を連結するヒンジ部を薄肉としていないので、接ぎ木使用時に割れることがない。
【0023】
本発明の接ぎ木把持具は、前記茎保持部における前記連結部側の空間が先端部側の空間よりも広く、先端部側の空間が次第に狭くなっており、茎保持部が広がるので、小さめの茎は茎保持部奥で挟み、太めの茎は先端に近い部分で保持することができるので、ウリ科の接ぎ木作業は一種類の接ぎ木把持具でできる。
【0024】
本発明の接ぎ木把持具は、前記複数の突条の、隣接する突条間の間隔が、把持する穂木の茎の径と同程度である。キュウリ穂木の茎は、たとえば1.5mm程度であるが、突条の間隔をその程度とすることにより、熟練した作業者でなくても台木を挟んだ後、穂木を上部から突条の間の隙間に沿って挿入することができ、台木と穂木の切断面を、ずれずに合わせ、接ぎ木作業ができるため、初心者でも失敗のない接ぎ木作業ができる。
【0025】
本発明の接ぎ木把持具の材質である軟質プラスチックが、透明で結晶性樹脂である。結晶性樹脂は、製品として使用後、変形癖がついても温めると元の形状に戻ろうとする特性がある樹脂である。一度接ぎ木に使用された接ぎ木用把持具は、生長する茎を長時間挟んでおり、その間に次第に開いていく。そうすると、弾性力による挟み癖が付き、回収してそのまま再使用には適さない。そこで、回収した接ぎ木用把持具を多数、まとめてざる等に入れて洗浄、消毒した後、湯に浸けることで挟み癖が取れて元の把持部先端が狭くなった状態に戻るので、再使用も容易になる。
【0026】
また透明な軟質プラスチック製であるので台木と穂木の切断面の接合部の状態を容易に確認できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、互いに茎保持部の空間を隔てて配置され、非使用状態では先端の空間が開いている1対の挟持部と、1対の挟持部の基端部側にそれぞれ連設されたつまみ部と、1対の把持部の基端部同士を連結するU字形の連結部とを有し、1対の挟持部の対向する内面に、複数の突条が突設されており、全体が一体の軟質プラスチック製である接ぎ木用把持具であること、茎保持部における連結部側の空間が先端部側の空間よりも広く、先端部側の空間が次第に狭くなっていること、複数の突条の、隣接する突条間の間隔が、把持する穂木の茎の径と同程度であること、材料が透明で結晶性樹脂であることにより、把持力を与えるための金属製のバネが不要であり、また従来の金属製バネを使った小さなプラスチック製の接ぎ木ピンチの薄肉のヒンジ部のように割れやすいことがなく、台木や穂木の茎の径の大小にも1つで対応でき、さらに接ぎ木の接合部の目視による確認が容易であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る接ぎ木用把持具の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る接ぎ木用把持具の平面図である。
【図3】接ぎ木苗に使用した後の挟み癖の付いた接ぎ木用把持具の斜視図である。
【図4】カボチャ台木とキュウリ穂木の切断面を片手で合わせもう一方の手で接ぎ木用把持具により保持する状態を示す説明図である。
【図5】カボチャ台木に接ぎ木用把持具をセットしている説明図である。
【図6】接ぎ木把持具をセットされたカボチャ台木にキュウリ穂木を押し込む状態の作業図である。
【図7】接ぎ木用把持具で接ぎ木作業を終えた状態の接ぎ木苗の斜視図である。
【図8】断根された子葉が2葉付いている台木(カボチャ台木)の斜視図である。
【図9】断根されたカボチャ台木の子葉を1枚切断する様子を示す斜視図である。
【図10】子葉が1枚斜めに切断された台木の斜視図である。
【図11】ナス科(トマト)の台木を示す斜視図である。
【図12】ナス科(トマト)の台木に従来例の接ぎ木用保持具を挿入する状態を示す説明図である。
【図13】ナス科(トマト)の台木が挿入された接ぎ木用保持具にナス科(トマト)の穂木を挿入しようとする説明図である。
【図14】カボチャ台木にナス科用接ぎ木用保持具を挿入しようとする説明図である。
【図15】茎を切断されたキュウリ穂木の切断面の正面図である。
【図16】茎を切断されたキュウリ穂木の切断面の側面図である。
【図17】金属製バネを使ったプラスチック製の接ぎ木用ピンチの斜視図である。
【図18】金属製バネを使ったプラスチック製のピンチの平面図である。
【図19】カボチャ台木とキュウリ穂木の切断面を合わせて図17の接ぎ木用ピンチで保持する状態を示す説明図である。
【図20】図17の接ぎ木用ピンチをカボチャ台木とキュウリ穂木にセットした状態の説明図である。
【図21】従来のウリ科用接ぎ木用クリップを示すもので、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図22】図21の接ぎ木用クリップをカボチャ台木に取り付ける作業の説明図である。
【図23】図21の接ぎ木用クリップをカボチャ台木にセットした状態の説明図である。
【図24】図21の保持具をセットされたカボチャ台木にキュウリの穂木を挿し込む作業の説明図である。
【図25】特許文献3に記載された接ぎ木クリップの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明の実施の形態に係る接ぎ木用把持具10の構成を示す斜視図である。
この接ぎ木用把持具10は、一対の挟持部1,2と、両挟持部1,2の基部を連結する連結部3と、両挟持部1,2を連結部3をヒンジ部として開閉するつまみ部4,5とを有し、両挟持部1,2の間の茎保持部6の奥部6aよりも先端部6bが狭くなっているが、先端部6bがくっつかない状態となっている。両挟持部1,2の内側には突条1a,2aがそれぞれ3条、設けられている。つまみ部4,5の外側には、つまみ部4,5を押さえる時の、指のすべり止め部4a,5aが設けられている。接ぎ木用把持具10は結晶性樹脂で透明な軟質プラスチック製で一体成形されており、軟質プラスチック自体の弾性力で把持力を持たせている。茎保持部6の内側の突条1a,2aは、キュウリ穂木の茎の直径とほぼ同じ1.5mm間隔で設けられており、キュウリ穂木挿入時、台木を挟んだ後、台木の子葉の切断面に穂木の切断面をずれずに合わせて挿入できる。
【0030】
本実施の形態の接ぎ木把持具10を用いた接ぎ木作業は、熟練者は従来どおりの手慣れた方法により、断根された図10に示すカボチャ台木100の子葉102の切断面104と、図15に示した穂木130の茎切断面134を片手の指先で合わせ、切断面104,134がずれないようにしながらもう一方の手で接ぎ木把持具10のつまみ部4,5を摘み拡げて挟む接ぎ木方法を用いる(図4参照)。
【0031】
接ぎ木作業に不慣れなアルバイト等では、接ぎ木作業が容易になるように、図5に示すように片葉切断された断根カボチャ台木100に接ぎ木把持具10の茎保持部6の側面に片葉の切断面104を向けて挟む。台木100を挟んだ後、図6に示すように穂木130を上から下方向へ挿し込む。穂木130を挿し込む時、突条1a,2aがあるので、穂木130は横ずれせずに下方向へ入るので接ぎ木把持具10の挟持部1,2に挟まれている台木100の子葉の切断面104と穂木130の切断面134をずれずに合わせることができるので、活着率の高い接ぎ木作業がアルバイトでもできる。
【0032】
図7に示すように、台木100の子葉切断面104と、穂木130の茎の切断面134をずれないように接ぎ木把持具10で挟んだものを、台木100の茎の断根部103を培地に挿し込むことで、断根部103に新しい根が発根し接ぎ木苗が出来る。
【0033】
一度接ぎ木に使用された接ぎ木把持具10は接ぎ木苗の接合部を12日間ほど挟み、茎も育ち太くなり、弾性力を利用して挟んでいるので挟み癖が付く。そうすると、接ぎ木用把持具10を再使用する場合、台木100と穂木130の切断面104,134を合わせて挟む茎保持部6の先端が挟み癖のため開いているので、そのままでは把持力が弱い。そこで、接ぎ木把持具10を多数、まとめてざる等に入れ洗浄し消毒する。
【0034】
本物品は結晶性樹脂で一体成形されているので、洗浄、消毒後、60℃前後の湯に2〜3分間浸けることにより、接ぎ木使用前のクリップの先端の隙間と同じ0.7mmほどの状態に戻るので、再使用が容易になる。
【0035】
また、本実施の形態の接ぎ木把持具10は、挟持部の中心に図17,図18に示したような薄肉のヒンジ部34を有していないので、接ぎ木使用時に割れることがない。
【0036】
図21に示した筒状体の接ぎ木クリップ40では接ぎ木をする台木100と穂木130の太さに応じた保持穴サイズが必要となるが、接ぎ木把持具10は図2に示すように茎保持部6が奥と先端では間隔が異なるので、小さめの茎は茎保持部奥6aで挟み、太めの茎は先端6bで保持することができるので、ウリ科の接ぎ木作業は一種類の本接ぎ木把持具10でできる。また透明な軟質プラスチック製であるので台木100と穂木130の切断面104,134の接合部の状態を容易に確認できる。
【0037】
なお、従来の接ぎ木用ピンチや図25の接ぎ木用ピンチ50の把持面には幅0.5mm以下の突条55を設けているが、キュウリ苗の茎の太さの間隔で隙間を取っておらず、単に接ぎ木苗を把持して台木と穂木苗をずれ難くするものであり、キュウリ穂木を接ぎ木把持具に挿入する際のずれ防止ガイドとしての役目、効果はない。
【0038】
図17の接ぎ木ピンチ30は、苗の把持部には台木と穂木の接合部を浅く突き刺し、くわえ、ずれないように円錐形に尖った突起35が設けられているが、接ぎ木ピンチ30に台木を取り付けた後、穂木を上部から下方向へ挿し込むことはできない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
把持力を与えるための金属製のバネが不要であり、また従来の金属製バネを使った小さなプラスチック製の接ぎ木ピンチの薄肉のヒンジ部のように割れやすいことがなく、台木や穂木の茎の径の大小にも1つで対応でき、さらに接ぎ木の接合部の目視による確認が容易な接ぎ木用把持具として、特にウリ科の接ぎ木に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1,2 挟持部
1a,2a 突条
3 連結部
4,5 つまみ部
4a,5a すべり止め部
6 茎保持部
6a 奥部
6b 先端部
10 接ぎ木用把持具
100 台木
101,102 子葉
103 断根部
104 切断面
130 穂木
131,132 子葉
133 茎
134 切断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに茎保持部の空間を隔てて配置され、非使用状態では先端の空間が開いている1対の挟持部と、前記1対の挟持部の基端部側にそれぞれ連設されたつまみ部と、前記1対の把持部の基端部同士を連結するU字形の連結部とを有し、前記1対の挟持部の対向する内面に、複数の突条が突設されており、全体が一体の軟質プラスチック製である接ぎ木用把持具。
【請求項2】
前記茎保持部における前記連結部側の空間が先端部側の空間よりも広く、先端部側の空間が次第に狭くなっている請求項1記載の接ぎ木用把持具。
【請求項3】
前記複数の突条の、隣接する突条間の間隔が、把持する穂木の茎の径と同程度である請求項1または2に記載の接ぎ木用把持具。
【請求項4】
軟質プラスチックが、透明で結晶性樹脂である請求項1から3のいずれかの項に記載の接ぎ木用把持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−249542(P2012−249542A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122401(P2011−122401)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【特許番号】特許第5079123号(P5079123)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(598139852)