説明

接地棒を用いた接地工法

【課題】接地棒を容易に埋設することができ、かつ、低減剤の使用量を節約することができる接地棒を用いた接地工法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明に係る接地工法は、予め掘削された埋設穴Hに低減剤Sを供給する供給工程と、導電性を有し、一方向に長尺に形成され、地中に埋設されて接地電流を地中に逃がすための接地棒1を埋設穴Hの底部から地中に埋設する埋設工程とを備える接地工法であって、埋設工程で、凹部103が表面に形成された接地棒1を、該凹部103の少なくとも一部が地中に埋まるように埋設する。長手方向に連続する凹部103が表面に形成された接地棒1を用いる場合、供給工程と埋設工程とを逆にすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されて避雷器や変圧器等の設備(例えば、電柱上に設置された避雷器や変圧器等の柱上設備)に発生する虞がある非定常電流を地中に逃がすための接地棒を用いた接地工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、避雷器や変圧器等の設備に対しては、落雷等によって発生する虞がある非定常電流を地中に逃がし、機器の故障や感電事故を防ぐために接地対策が講じられることがある。その一態様として接地棒を用いた接地工法がある。そして、該接地工法で用いられる接地棒には種々のものがあり、その一つとして図6(a)に示すような接地棒1がある。
【0003】
かかる接地棒1は、導電性を有し、一方向に長尺に形成されており、その基端部は、図6(b)に示すように、非定常電流を誘導するリード線や接地線等の導線Lを電気的に接続するための端子Tや、別の接地棒1の先端部が着脱可能に構成されている。また、該接地棒1は、地中に埋設されるために基端部がハンマー等で叩きつけられるが、これに伴い、基端部が破損する虞があるため、基端部に楔部材(図示しない)を着脱可能に構成されている。
【0004】
そして、かかる接地棒1は、図7(a)に示すような予め掘削された埋設穴Hに接地棒1の先端部が突き立てられ、基端部をハンマー等で叩きつけられることによって図7(b)に示すように先端側が地中に埋設される(打ち込まれる)。その際、接地棒1は、前記楔部材が基端部に連結されているが、地中に接地棒1が埋設された後は、楔部材が取り外され、その代わりに、端子Tが連結される。そうすると、地中に埋設された接地棒1は、埋設された部分の表面が大地と接触した状態であるため、表面における地中と接触した部分から電流を逃がすことが可能になる。これにより、該接地棒1は、端子Tを介して流れ込む非定常電流を接地電流として地中と接触している部分から逃がすことが可能になる。従って、接地棒1は、非定常電流を地中に逃がすことで、機器の故障や感電事故を防ぐことができる。
【0005】
ところで、前記接地工法では、図7(c)に示すように、接地棒1の接地抵抗値を低減させるために前記埋設穴Hに低減剤Sを供給することがある。この場合、接地棒1は、低減剤Sが供給された埋設穴Hに埋設される。埋設された接地棒1は、埋設穴Hの底部から突き出た部分の少なくとも一部が低減剤Sと接触した状態になる。そうすると、接地棒1は、埋設された部分における大地と接触している部分に加え、低減剤Sが大地と接触している部分からも接地電流を放出することができるようになる。従って、接地棒1は、より多くの接地電流を大地に逃がすことができるようになるため、接地抵抗値が低減される。
【0006】
しかし、前記接地棒1を用いた接地工法では、低減剤Sと大地との接触面積を拡大して接地棒1の接地抵抗値をさらに低減するために低減剤Sを地中深くに供給しようとすると、接地棒1を埋設する前に埋設穴Hに連続する穴を掘削したり、接地棒1を埋設した後に、該接地棒1の周囲の大地を掘り返したりして低減剤Sを供給可能な空間を確保するための作業を行う必要があった。
【0007】
そこで、低減剤Sを供給可能な空間を確保するための作業を行うことなく地中深くに低減剤Sを供給するための接地棒が提供されている。該接地棒の一つとして、図8に示すような接地棒1がある(特許文献1、2、3参照)。該接地棒1は、導電性を有し、一方向に長尺に形成されており、長手方向における先端部に掘削部材20が連結可能に構成されている。また、該掘削部材20は、円錐状に形成され、外径が接地棒1の埋設される部分の外径よりも大きく設定されている。
【0008】
そして、かかる接地棒1を用いた接地工法では、図9(a)に示すような予め掘削された埋設穴Hに接地棒1を埋設する。これに伴い、掘削部材20は、図9(b)に示すように、外径と略同じ大きさの穴を掘削することになる。そのため、埋設された接地棒1は、埋設された部分の表面が大地と接触していない状態になる。すなわち、接地棒1の埋設された部分における表面と大地との間には、低減剤Sを供給可能な隙間が確保された状態になる。そして、該隙間に供給剤Lを供給することで、接地棒1は、図9(c)に示すように、埋設穴Hの底部と、掘削部材20によって掘削された隙間の外周とに低減剤Sを介して大地と接触した状態になる。従って、該接地棒1を用いた接地工法では、低減剤Sを供給可能な空間を確保するための作業を行うことなく地中深くに低減剤Sを供給することができる。
【0009】
さらに、低減剤Sを供給可能な空間を確保するための作業を行うことなく地中深くに低減剤Sを供給するための別の接地棒として、図10に示すようなものがある(非特許文献1参照)。該接地棒1は、導電性を有し、一方向に長尺に形成された筒状の筒状体12と、該筒状体12の先端に溶接された先端部21とを備えている。さらに、該接地棒1は、筒状体2の内外を貫通する貫通孔3が設けられている。
【0010】
そして、かかる接地棒1を用いた接地工法では、図11(a)に示すような予め掘削された埋設穴Hに接地棒1を埋設する。そして、図11(b)に示すような埋設された接地棒1の基端部から接地棒1の内部に低減剤Sを流し込むと、貫通孔3から低減剤Sが漏出し、図11(c)に示すように低減剤Sと地中深くの大地とが接触することになる。従って、低減剤Sを供給可能な空間を確保するための作業を行うことなく地中深くに低減剤Sを供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−188138号公報
【特許文献2】特開2000−195580号公報
【特許文献3】特開2001−338704号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】低減剤流入式接地棒、[online]、[平成22年7月29日検索]、インターネット<URL:http://www.osaka-dengu.co.jp/New Catalog Ver.3 PDF/pdf 77.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図8及び図9に示す接地棒1を用いた接地工法では、掘削部材20の外径が大きいため、埋設時(打ち込み時)の大地に対する抵抗が非常に大きく、容易に地中に打ち込むことができなかった。
【0014】
また、図10及び図11に示す接地棒1を用いた接地工法では、筒状体12に供給された低減剤Sが前記貫通穴3から漏出した部分でしか大地と接触しないため、低減剤Sの使用量に比して大地と接触可能な面積が少なく、低減剤Sの無駄が生じることが懸念されていた。
【0015】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、接地棒を容易に埋設することができ、かつ、低減剤の使用量を節約することができる接地棒を用いた接地工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る接地棒を用いた接地工法は、予め掘削された埋設穴に低減剤を供給する供給工程と、導電性を有し、一方向に長尺に形成され、地中に埋設されて接地電流を地中に逃がすための接地棒を前記埋設穴の底部から地中に埋設する埋設工程とを備える接地工法であって、埋設工程で、凹部が表面に形成された接地棒を、該凹部の少なくとも一部が地中に埋まるように埋設することを特徴とする。
【0017】
上記構成の接地工法によれば、接地棒の地中に埋設される部分の表面に凹部が形成されており、該凹部に低減剤が入り込むことができるようになっている。そして、接地棒は、低減剤が供給された埋設穴に埋設されるため、凹部に低減剤が入り込んだ状態で地中に埋設されていくことになる。これにより、埋設穴に供給された低減剤は、埋設穴を画定する大地に加えて、地中に埋設された凹部と対向する大地にも接触した状態となる。
【0018】
また、上記構成の接地工法によれば、接地棒と共に接地棒の最外径よりも大きいものを埋設することがない。そのため、接地棒を埋設する際に生じる大地からの抵抗が小さくなり、容易に接地棒を埋設することが可能になる。
【0019】
また、本発明に係る接地工法は、導電性を有し、一方向に長尺に形成され、地中に埋設されて接地電流を地中に逃がすための接地棒を予め掘削された埋設穴の底部から地中に埋設する埋設工程と、低減剤を前記埋設穴に供給する供給工程とを備える接地工法であって、埋設工程で、長手方向に連続する凹部が表面に形成された接地棒を、該凹部の一部が埋設穴の底部から露出するように埋設してもよい。
【0020】
上記構成の接地工法によれば、埋設工程が行われた後に供給工程が行われるため、接地棒が埋設された埋設穴に低減剤を供給することになるが、接地棒は、凹部の一部が大地から露出した状態で埋設されているため、埋設穴に供給された低減剤は、凹部の大地から露出している部分に入り込むことになる。そして、該凹部に入り込んだ低減剤は、凹部を伝って接地棒の基端側から先端側に向けて地中に流れ込むことになる。これにより、埋設穴に供給された低減剤は、埋設穴を画定する大地に加えて、地中に埋設された凹部と対向する大地にも接触した状態となる。
【0021】
また、上記構成の接地工法によれば、接地棒と共に接地棒の最外径よりも大きいものを埋設することがない。そのため、接地棒を埋設する際に生じる大地からの抵抗が小さくなり、容易に接地棒を埋設することが可能になる。
【0022】
さらに、本発明に係る接地工法の一態様として、埋設工程の後に、先に埋設された接地棒の基端部に少なくとも一本の別の接地棒を連結して埋設する連結埋設工程を行ってもよい。かかる構成の接地工法によれば、別の接地棒は、先に埋設された接地棒の基端部に連結され、低減剤が供給された埋設穴に埋設される。そうすると、別の接地棒は、先に埋設された接地棒と同様に凹部に低減剤が入り込んだ状態で地中に埋設されることになる。これにより、埋設穴に供給された低減剤は、埋設穴を画定する大地に加えて、地中に埋設された凹部と対向する大地にも接触した状態となる。さらに、該別の接地棒が埋設されると、先に埋設された接地棒はいっそう地中深くに埋設されることになる。すなわち、先に埋設された接地棒の凹部に入り込んでいる低減剤は、該接地棒と共にいっそう地中深くに埋設されることになる。
【0023】
また、本発明に係る別の態様として前記接地工法は、前記埋設工程の後に、先に埋設された接地棒の近傍に少なくとも一本の別の接地棒を埋設する追加埋設工程を行ってもよい。かかる構成の接地工法によれば、別の接地棒は、先に埋設された接地棒と同様に凹部に低減剤が入り込むことができるようになっている。これにより、埋設穴に供給された低減剤は、埋設穴を画定する大地に加えて、地中に埋設された凹部と対向する大地にも接触した状態となる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係る接地棒を用いた接地工法は、接地棒の埋設作業を容易に行うことができ、かつ、低減剤の使用量を節約することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る接地棒を示す図であって、(a)は、全体概略図を示し、(b)は、部分断面拡大図を示す。
【図2】同実施形態に係る接地工法を説明するための図であって、(a)は、埋設穴が掘削された状態を示し、(b)は、埋設穴に低減剤が供給された状態を示し、(c)は、埋設穴から地中に接地棒が埋設された状態を示す。
【図3】本発明の別の実施形態に係る接地工法を説明するための図であって、(a)は、埋設穴が掘削された状態を示し、(b)は、低減剤が供給された埋設穴から地中に接地棒が埋設された状態を示し、(c)は、先に埋設された接地棒の基端部に別の接地棒が連結されて埋設された状態を示す。
【図4】本発明のさらに別の実施形態に係る接地工法を説明するための図であって、(a)は、埋設穴が掘削された状態を示し、(b)は、低減剤が供給された埋設穴から地中に接地棒が埋設された状態を示し、(c)は、先に埋設された接地棒の近傍に別の接地棒が埋設された状態を示す。
【図5】本発明の各実施形態に係る接地棒の埋設状態での全体該略図であって、(a)は、埋設工程後の接地棒の状態を示し、(b)は、連結埋設工程後の接地棒の状態を示す。
【図6】従来の接地棒を示す図であって、(a)は、全体概略図を示し、(b)は、接地棒の基端部に端子が接続された状態を示す。
【図7】従来の接地棒を用いた接地工法を説明するための図であって、(a)は、埋設穴が掘削された状態を示し、(b)は、埋設穴から地中に接地棒が埋設された状態を示し、(c)は、埋設穴に低減剤が供給された状態を示す。
【図8】従来の別の接地棒を示す図であって、(a)は、掘削部材が連結される前の接地棒の状態を示し、(b)は、掘削部材が連結された後の接地棒の状態を示す。
【図9】従来の別の接地棒を用いた接地工法を説明するための図であって、(a)は、埋設穴が掘削された状態を示し、(b)は、埋設穴から地中に接地棒が埋設された状態を示し、(c)は、埋設穴に低減剤が供給された状態を示す。
【図10】従来のさらに別の接地棒の全体該略図を示す。
【図11】従来のさらに別の接地棒を用いた接地工法を説明するための図であって、(a)は、埋設穴が掘削された状態を示し、(b)は、埋設穴から地中に接地棒が埋設された状態を示し、(c)は、接地棒の内部に低減剤が供給された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る接地棒について添付図面を参照しながら説明する。
【0027】
本実施形態に係る接地棒は、導電性を有し、一方向に長尺に形成され、地中に埋設されて(打ち込まれて)接地電流を地中に逃がすためのものである。そして、該接地棒は、図1(a)に示すように、棒状に形成された棒状部材10と、筒状に形成された連結部材11とを備えてなり、該連結部材11の一端側に棒状部材10の基端部が連結されたものである。
【0028】
具体的に説明すると、前記棒状部材10は、一方向に長尺に形成された芯部100(図1(b)参照)と、該芯部100の表面を被覆する表層部101とを備えている。また、該芯部100は、導電性を有し、硬質な素材(例えば、鋼材)を用いて棒状に形成されている。そして、該芯部100は、基端面から先端に向けて穿設された嵌入部102が設けられている。また、該芯部100は、先端部が先鋭に形成されている。
【0029】
そして、図1(b)に示すように、前記表層部101は、前記芯部100の表面を導電性の高い素材(例えば、銅)で被覆することによって形成されている。また、該表層部101は、地中に埋設される部分における表面(先鋭になっている部分を除く)に螺旋状の溝103が形成されている。さらに、該溝103は、表層部101の表面から芯部100が露出しない深さに設定されている。
【0030】
なお、該溝103は、接地棒1が土砂等の粒度が粗い物質で構成されている場所に埋設される場合、幅が広く設定されていることが好ましい。さらに、該溝103は、接地棒1が粘土などの粒度が細かい物質で構成されている場所に埋設される場合、幅が狭く設定されていてもよい。
【0031】
前記連結部材11は、導電性を有した素材で筒状に形成された本体110を備えている。また、本体110の内周は、前記棒状部材10の外周よりも僅かに小さく形成されている。さらに、本体110は、筒状に形成されているため、中心線と同方向における一端部には開口部(差込部111a)が形成され、他端部には(差込部111b)が形成されている。さらに、連結部材11は、一端側の一部分がプレスされることによって内周が小さく形成された圧着部112が設けられている。
【0032】
ところで、本実施形態に係る接地棒1は、地中に埋設されるために基端部がハンマー等で叩きつけられるが、これに伴い、基端部が破損する虞があるため、楔部材(図示しない)が使用される。該楔部材は、棒状に形成されており、外周が前記連結部材11の内周よりも僅かに小さく設定されている。また、該楔部材は、先端部が前記差込部111bに差し込まれた状態において、基端部が連結部材11の他端面から突出する長さで形成されている。
【0033】
さらに、本実施形態に係る接地棒1は、設備等に発生した非定常電流が流れ込むリード線や接地線等の導線Lを電気的に接続するものとして、端子T(図5(a)参照)が使用される。該端子Tは、棒状に形成され、外周が連結部材11の内周よりも僅かに大きく設定されている。さらに、該端子Tは、先端部が前記差込部111bに差し込まれた状態において、基端側が連結部材11の他端面から突出する長さで形成されている。
【0034】
次に、本実施形態に係る接地棒1を用いた接地工法について説明する。
【0035】
本実施形態に係る接地工法は、予め掘削された埋設穴H(図2(a)参照)に低減剤Sを供給する供給工程と、低減剤が供給された埋設穴H(図2(b)参照)から地中に接地棒1を埋設する埋設工程とを備えている。
【0036】
また、本実施形態に係る接地工法は、前記埋設工程に先立って行われる埋設準備工程と、前記埋設工程後に行われる端子連結工程とを備えている。埋設準備工程では、楔部材が差込部111bに連結される。また、端子連結工程では、楔部材が差込部111bから引き抜かれた後に、該差込部111bに端子Tが差し込まれる。
【0037】
具体的に説明すると、前記埋設準備工程は、差込部111bに楔部材の長手方向における先端側を挿入することによって、楔部材を差込部111bに抜き差し可能に連結する。そして、楔部材は、外周が前記連結部材11の内周よりも僅かに小さく設定されているため、容易に取り外し可能な状態になっており、先端部が棒状部材10の基端部に設けられた嵌入部102に接触した状態にされる。
【0038】
なお、接地棒1は、棒状部材10と連結部材11とが連結されていない状態で提供されている場合がある。この場合、埋設準備工程で、差込部111aに棒状部材10の基端側を挿入する。そして、棒状部材10の基端側を圧着部112が施されている部分に圧入することによって、棒状部材10と連結部材11とを強固に連結させる作業を行う必要がある。
【0039】
次に、前記供給工程は、大地よりも高い導電率を有しており、液状やゲル状で提供されている低減剤を図2(b)に示すように埋設穴Hに供給する。なお、低減剤Sは、粉末状で提供されている場合もある。この場合、低減剤Sは、供給工程が行われる前に、液状又はゲル状にしておく必要がある。
【0040】
前記埋設工程は、接地棒1の先端部を埋設穴Hの底部に突き立てた状態にし、ハンマー等で基端部を叩きつけることによって埋設する。このとき、接地棒1は、埋設された棒状部材10の最外径の部分が大地と接触した状態になる。換言すると、該接地棒1は、大地に支えられながら埋設される状態になるため、長手方向に交差する方向に傾倒しにくくなる。さらに、接地棒1は、基端部に楔部材が連結されているため、楔部材の先端部が棒状部材10を地中に向けて押すことになり、地中に埋設されていく(図2(c)参照)。
【0041】
ここで、接地棒1の埋設される部分の表面には、上述のとおり、螺旋状の溝103が形成されており、該溝103に低減剤Sが入り込むことができるようになっている。また、接地棒1は、溝103が地中に埋まるように埋設される。従って、埋設穴Hに供給された低減剤Sは、溝103に入り込み、該溝103を伝って接地棒1の基端側から先端側に向けて地中に流れ込むことで、埋設穴Hを画定する大地に加えて、地中に埋設された溝103と対向する大地にも接触した状態となる。
【0042】
そして、前記端子接続工程では、楔部材が差込部111bから取り外される。この際、端子Tを差込部111bから圧入することによって、端子Tが連結部材11に強固に固定される。なお、端子Tは、先端部が前記嵌入部112に接触していることが好ましいが、連結部材11から容易に引き抜けない状態になっていれば、先端部が嵌入部112に接触していなくてもよい。
【0043】
また、端子接続工程では、図5(a)に示すように非定常電流を誘導するリード線や接地線等の導線Lを端子Tに電気的に接続する作業を行う。通常、該作業は、端子Tの連結部材11の他端面から突出する部分に長手方向と直交する方向に貫通する貫通穴(図示しない)が設けられており、該貫通穴の一端側から導線Lが差し込まれる。そして、端子Tは、導線Lが貫通穴の他端側から出た状態にされ、貫通穴の他端側が溶接されることで導線Lが電気的に接続される。そして、接地棒1は、端子Tを介して流れ込む非定常電流を接地電流として、大地に逃がすことが可能になる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る接地工法は、棒状部材10の先端部が先鋭に形成されている。また、該接地工法は、接地棒1と共に棒状部材10の最外径よりも大きいものを埋設することがない。これにより、接地棒1を埋設穴Hの底面から地中に埋設する際に大地から受ける抵抗が小さくなり、接地棒1の埋設作業を容易に行うことができる。さらに、本実施形態に係る接地工法は、低減剤Sが埋設穴Hを画定する大地に加えて、地中に埋設された凹部と対向する大地にも接触することになり、低減剤Sと大地とが充分に接触した状態になる。これにより、埋設穴Hに供給した低減剤Sを無駄なく大地と接触させることができるため、低減剤Sの使用量を節約することができるという優れた効果を発揮する。
【0045】
また、該接地棒1は、基端部に楔部材が連結されているため、ハンマー等で基端部を叩きつけても基端部が破損することがない。さらに、接地棒1は、埋設された棒状部材10の最外径の部分が大地と接触した状態になる。換言すると、該接地棒1は、大地に支えられながら埋設される状態になるため、該接地棒1の長手方向に交差する方向に傾倒しにくくなり、埋設作業をより簡易に行うことが可能になる。
【0046】
なお、本発明に係る接地工法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【0047】
例えば、上記実施形態において、接地棒1は、埋設される部分の表面に螺旋状の溝103が一条設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、二条、三条というように複数設けてもよい。
【0048】
また、上記実施形態において、接地棒1は、埋設される部分の表面に螺旋状の溝103が一条設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、接地棒1の埋設される部分の表面に部分的な窪みを複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態において、接地棒1は、埋設される部分の表面に螺旋状の溝103が一条設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、二条の螺旋状の溝を設け、各々の溝が交差し合うようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、接地棒1は、埋設される部分の表面に螺旋状の溝103が一条設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、長手方向と同方向に真っ直ぐに延びる溝を周方向に亘って複数設けてもよい。ただし、このようにした場合、接地棒1は、棒状体10の先端部が平滑になるようにし(棒状体10の先端部には該溝を設けないようにし)、かつ平滑に形成した部分が棒状体10の最外径(すなわち、棒状体10の溝103が形成されている箇所における断面の外接円形状)となるようにしなければならない。
【0051】
また、上記実施形態において、接地棒1は、埋設される部分の表面に螺旋状の溝103が設けられていた。換言すると、接地棒1は、螺旋状の溝103が設けられた部分が完全に地中に埋まるように埋設されていた。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、接地棒1は、螺旋状の溝103が設けられた部分の一部が埋設穴Hの底部から露出するように埋設されてもよい。
【0052】
そして、上記のように接地棒1を螺旋状の溝103が設けられた部分の一部が埋設穴Hの底部から露出するように埋設した場合、溝103が埋設穴Hの底部を画定する大地を跨いだ状態になる。そうすると、埋設穴Hに供給された低減剤Sは、前記溝103を伝って接地棒1の基端側から先端側に流れ込むことが可能になる。従って、上記実施形態において供給工程は、埋設工程の後に行ってもよい。
【0053】
また、上記実施形態において、接地工法は、接地棒1を埋設する工程としては埋設工程しか備えていなかったが、これに限定されるものではなく、例えば、図3(a)から図3(c)に示すように先に埋設された接地棒1(埋設工程において埋設された接地棒1)の基端部に別の接地棒1の先端部を連結した状態で該別の接地棒1を埋設する連結埋設工程を備えてもよい。このようにすれば、先に埋設された接地棒1は、いっそう地中深くに埋設されることになる。従って、先に埋設された接地棒1の溝103に入り込んだ低減剤Sも一層地中深くに供給されることになる。
【0054】
なお、前記連結埋設工程は、供給工程の後に埋設工程が行い、しかる後に行われることが好ましい。また、前記連結埋設工程は、埋設工程の後に供給工程が行い、しかる後に行ってもよいが、この場合、低減剤Sが先に埋設された接地棒1の溝103を伝って先端部付近に流れ込んだ状態で行うことが好ましい。
【0055】
また、上記実施形態において、接地工法は、接地棒1を埋設する工程としては埋設工程しか備えていなかったが、これに限定されるものではなく、例えば、図4(a)から図4(c)に示すように先に埋設された接地棒1(埋設工程において埋設された接地棒1)の近傍に別の接地棒1を埋設する追加埋設工程を備えていてもよい。このようにすれば、先に埋設された接地棒1と同様に別の接地棒1も溝103に低減剤103が入り込んだ状態で埋設されるため、低減剤Sと大地との接触面積を容易に拡大することができる。
【0056】
なお、追加埋設工程は、埋設工程の後に供給工程を行い、しかる後に行ってもよい。また、追加埋設工程は、供給工程の後に埋設工程を行い、しかる後に行ってもよい。さらに、追加埋設工程は、まず、埋設工程を行い、供給工程を行う前に行ってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…接地棒、3…貫通孔、10…棒状部材、11…連結部材、20…掘削部材、21…先端部、100…芯部、101…表層部、102…嵌入部、103…溝、103’…溝形成部、110…本体、111a、111b…差込部、112…圧着部、H…埋設穴、L…導線、S…低減剤、T…端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め掘削された埋設穴に低減剤を供給する供給工程と、導電性を有し、一方向に長尺に形成され、地中に埋設されて接地電流を地中に逃がすための接地棒を前記埋設穴の底部から地中に埋設する埋設工程とを備える接地工法であって、埋設工程で、凹部が表面に形成された接地棒を、該凹部の少なくとも一部が地中に埋まるように埋設することを特徴とする接地棒を用いた接地工法。
【請求項2】
導電性を有し、一方向に長尺に形成され、地中に埋設されて接地電流を地中に逃がすための接地棒を予め掘削された埋設穴の底部から地中に埋設する埋設工程と、低減剤を前記埋設穴に供給する供給工程とを備える接地工法であって、埋設工程で、長手方向に連続する凹部が表面に形成された接地棒を、該凹部の一部が埋設穴の底部から露出するように埋設することを特徴とする接地棒を用いた接地工法。
【請求項3】
埋設工程の後に、先に埋設された接地棒の基端部に少なくとも一本の別の接地棒を連結して埋設する連結埋設工程を行う請求項1に記載の接地棒を用いた接地工法。
【請求項4】
前記埋設工程の後に、先に埋設された接地棒の近傍に少なくとも一本の別の接地棒を埋設する追加埋設工程を行う請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の接地棒を用いた接地工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−48957(P2012−48957A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189702(P2010−189702)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】