説明

接着剤組成物

【課題】
フラットパネルディスプレイ(FPD)用の高度な透明性を有する機能フィルター用粘・接着剤として好適であり、アクリル、ポリエステル、ポリカーボネートなどのプラスチックに優れた接着性を示し、基板ガラスに対して貼合初期のリワーク粘着性と経時で徐々に強くなる粘・接着性を有する接着剤組成物を提供する
【解決手段】
分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(A)を幹ポリマーとし、
【化1】


(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(B)を枝ポリマーとする
【化2】


(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
数平均分子量5〜50万のアクリル樹脂(C)を含む接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時での粘・接着力保持性、耐湿熱性、耐熱性、リワーク粘着性に優れた接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、透明性、耐光性に優れ、フラットパネルディスプレイ(FPD)用粘着剤、接着剤として着実に需要を伸ばしている。一方で、耐熱性、耐湿熱性、粘着力、接着力の保持性という点ではまだ課題が多く、完全に解決できているとは言い難いのが現状である。
【0003】
プラズマディスプレイパネル(PDP)のフィルター本体に設けられる粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に提案されている技術は、C4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(1)を全モノマーに対して50重量%以上含有するモノマー材料を部分的に重合してなる重合体・単量体混合物100重量部に対して、モノマー単位として(メタ)アクリル酸アルキルエステル(2)を70重量%以上、および不飽和カルボン酸を1〜7重量%含有する重量平均分子量2000〜50000の低分子量ポリマーを0.1〜2重量部、および(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを0.1〜1.0重量部含有するものである。このものはリワーク性(再剥離性)、耐湿熱保存性、および衝撃緩和特性に優れているとされている。提案されている技術は、組成から明らかなように、架橋密度、分子量も低く、非架橋ポリマーも多く含んでいる。また、膜厚を0.5〜2mmと設定していることからも、粘着剤というよりも基材上にのっかっている強度の小さいいわゆるゲル状物質である。このものはポリマーの凝集力が低く、基材に対する強い付着性を発揮し得ない。また、リワーク性(再剥離性)も剥離条件によってはポリマーの凝集破壊や、粘着剤層の糸引きが起こる。さらに、連続して高い温度環境下に置かれた場合や、ポリマーにとって有害な紫外線照射下に曝された場合に耐久性が不足するのは自明である。
【0004】
電磁波シールド性を有するディスプレイ用フィルムの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に提案されている技術は、透明プラスチック基材に接着層を介して接着層への貼合わせ面が粗面化されている導電性材料の金属箔を貼り合わせて接着層に金属箔の貼合わせ面の粗面形状が転写される工程と、貼り合わせた金属箔にケミカルエッチングプロセスによってライン幅が40μm以下、ライン間隔が200μm以上、ライン厚みが40μm以下である金属箔からなる幾何学図形を形成する工程と、金属箔を除去して形成した幾何学図形を含む接着層の粗面形状が転写された部分をその接着層との屈折率差が0.14以下である接着剤で被覆する工程とを含むことを特徴とする電磁波シールド性と透明性を有するディスプレイ用フィルムの製造法に関するものである。
【0005】
特許文献2に示されているとおり、銅メッシュのような導電性メッシュを使用した電磁波シールドフィルムでは、電磁波シールド性はもちろんのこと、シートの透明性(可視光線透過性)はきわめて重要な性質である。市販されている導電性メッシュはより高い開口率、より高い視認性を確保するためにライン幅(10μm前後)、ライン間隔(250ミクロン前後)、ライン厚み(25μm前後)に最新の研究成果が投入されている。これらの改良研究は、画像の鮮映性や視認性を向上することにあり、すべて電磁波シールドフィルムの透明性をより高くし、ヘイズをより小さくすることにある。このためには、特許文献2に提案されている技術をもとに説明すれば、透明プラスチック上に位置する粗面化された接着剤表面での光の散乱、屈折をなくすこと、および、この粗面プロフィールをカバーする接着剤がトレースしないこと、および導電性物質(例えば銅)でできた微少な器(幾何学図形で囲まれた升)の中にまで接着剤が完璧に浸透し、器に隙間や気泡が残らないことがきわめて重要な要件となる。
【0006】
接着剤表面(界面)で光が屈折、散乱されると透過光量が減少し、ヘイズ悪化の原因となる。すなわち、フィルムの透明性、鮮鋭性が損なわれる。これを改善するために、特許文献2の提案ではオーバーコートする接着剤の屈折率を規定している。
【0007】
粗面プロフィールをオーバーコートする接着剤がトレースした場合には、オーバーコートする接着剤表面で光の散乱が起こり、透過光量が減少してフィルムの可視光線透過率、ヘイズ悪化する。特許文献2の提案ではオーバーコートする接着剤が特徴のない溶剤希釈された接着剤であり、粗面プロフィールを修復し、平滑な表面を形成することができない。
【0008】
器に隙間や気泡が残ると、空隙部、気泡含有部で光が屈折、散乱され、フィルムの透明性が大きく損なわれる。もはやディスプレイ用としては不適切なものとなる。特許文献2の提案ではオーバーコートする接着剤が特徴のない溶剤希釈された接着剤であり、「接着剤で被覆する工程」として示されている通り、メッシュ内部にまで接着剤が浸透することはない。
【0009】
特許文献2に提案されている技術では、屈折率差が小さいことが重要であるとされており、対応は、屈折をなくすことにのみに限定されている。粗面プロフィールをカバーする接着剤が粗面プロフィールをトレースしないことに関しては、接着剤が有機溶剤で希釈されて使用されるため、乾燥時の体積収縮にともない素地の凹凸をトレースすることは避けられず、全く対策がとれていない。導電性物質(例えば銅)でできた微少な器の中にまで接着剤が完璧に浸透し、器に隙間や気泡が残らないことについては、特許文献2の特許請求項1に示されているとおり、特許文献2の技術は「接着剤で被覆する工程とを含む」ものであって、導電性物質(例えば銅)でできた微少な器の中にまで接着剤が浸透していくものではない。また、特許文献2が開示する接着剤は導電性物質が形成する凹上の器内に浸透する能力を有していない。
【0010】
特許文献2には、実用的な銅メッシュ(ライン幅(10μm前後)、ライン間隔(250ミクロン前後)、ライン厚み(25μm前後))に本技術を適用した結果が実施例に示されており、可視光線透過率はせいぜい70%前半でしかなく、重要要件であるヘイズに関しては全く評価されていない。可視光透過率70%程度では、ヘイズは少なくとも10以上になり、可視光線透過率と合わせ、実用性に欠ける技術であると推定される。
【0011】
これは、粗面プロフィールをカバーする接着剤がトレースしないこと、導電性物質(例えば銅)でできた微少な器の中にまで接着剤が完璧に浸透し、器に隙間や気泡が残らないことに対する対策が全くなされていないためであり、屈折がなく、粗面プロフィールをカバーする接着剤が粗面プロフィールをトレースしないこと、導電性物質(例えば銅)でできた微少な器の中にまで接着剤が完璧に浸透し、器に隙間や気泡が残らないことが強く望まれていた。
【0012】
非特許文献1には、既述の接着剤層圧着方法の改良技術として、導電性メッシュに透明な樹脂溶液を直接塗布、硬化させて電磁波シールドフィルムを製造する技術が開示されている。塗布技術にも様々な改善が施され、実施されていることが散見される。前記粗面プロフィールをカバーする接着剤がトレースしないこと、導電性物質(例えば銅)でできた微少な器の中にまで接着剤が完璧に浸透し、器に隙間や気泡が残らないことの対策技術の一部も含まれている。
【0013】
塗布する透明樹脂としては、乾燥時の体積(原文は堆積)収縮による膜厚の減少にともなって下地の格子模様が浮き出て平面性が確保できないため、溶剤で希釈されたものは好ましくなく、無溶剤の樹脂でなければならないことが示されている。無溶剤型で流動性があり、基材に塗布できるものとしては粘度調節が比較定簡便に行えるアクリル系紫外線硬化型樹脂が上げられるが、これらはヌレ性、浸透性、レベリング性などの接着剤の塗装作業性に係わるレオロジー適性が悪く、前記圧着方式に比べ改善されたとはいえ、まだ不十分であった。例えば、メッシュコーナー部への泡付着、硬化時の残留歪みに起因する透明性のゆがみなど、十分満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開2005−23133号公報
【特許文献2】特開平10−41682号公報
【非特許文献1】野村、今泉、高橋、林、日立化成テクニカルレポート No.42“PDP用電磁波シールドフィルム”、[online]、2004年1月、日立化成工業株式会社、[平成18年5月30日検索]、インターネット<URL:http://www.hitachi-chem.co.jp/japanese/report/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
フラットパネルディスプレイ(FPD)用の高度な透明性を有する機能フィルター用粘・接着剤として好適であり、アクリル、ポリエステル、ポリカーボネートなどのプラスチックに優れた接着性を示し、基板ガラスに対して貼合初期のリワーク粘着性と経時で徐々に強くなる粘・接着性を有する接着剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(A)を幹ポリマーとし、
【0016】
【化1】

【0017】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(B)を枝ポリマーとする
【0018】
【化2】

【0019】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
数平均分子量5〜50万のアクリル樹脂(C)を含む接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の接着剤組成物は、フラットパネルディスプレイ(FPD)に使用される機能フィルター用として、基体フィルムへの優れた付着性と基板ガラスへの良好なリワーク粘着性を有する粘着剤として使用することができる。
【0021】
本発明の接着剤組成物は、粘・接着性に優れるのはもちろんであるが、高温高湿度などの過酷な環境に置かれた場合でも接着剤の外観、被着体の外観変化、劣化を伴うことなく、かつ初期と変わらず良好な粘・接着性が維持され、発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(A)を幹ポリマーとし、
【0023】
【化3】

【0024】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(B)を枝ポリマーとする
【0025】
【化4】

【0026】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
数平均分子量5〜50万のアクリル樹脂(C)を含む接着剤組成物である。
【0027】
本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂(C)は、アクリル共重合体(A)を幹ポリマー(以下、マトリックスとも言う)、アクリル共重合体(B)を枝ポリマー(以下、ブランチとも言う)とするグラフト共重合体である。
【0028】
本発明のアクリル樹脂(C)(グラフト共重合体)は、下記構造式で示される酸性官能基含有単量体混合物とこれと共重合可能なアクリル単量体、および、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(以下、MMともいう)との共重合により製造することができる。(マクロモノマー法によるグラフト共重合体の製造方法の参考文献;「ラジカル重合ハンドブック」蒲池幹治、遠藤剛監修、エヌ・ティー・エス発行(1999)、p156−p158、p191−p194)
【0029】
【化5】

【0030】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
上記構造式で示される酸性官能基含有単量体混合物は、式中mが0または1〜5の整数から任意に選択される2種類以上の単量体混合物である。酸性官能基含有単量体混合物としては、アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリル酸トリマー、メタクリル酸、β−カルボキシエチルメタクリレート、メタクリル酸トリマーなどから任意に選択される2種類以上の単量体混合物が例示される。
【0031】
酸性官能基含有単量体混合物は、例えばm=0の単量体を20%、m=1の単量体を40%、m=2〜5の単量体を40%で混合し共重合されるとき、例えば仮にm=0の単量体(例えば、アクリル酸)を単独で使用した場合に比較し、優れた機能を発揮する傾向が強い。酸性官能基含有単量体混合物が共重合された場合には、アクリル樹脂の被着体への粘着性、接着性が飛躍的に向上する傾向が見られる。もっとも強調すべきことは、例えばm=0の単量体(例えば、アクリル酸)が単独で用いられた場合には、接着剤の耐水性、耐湿熱性がきわめて劣悪となる傾向が見られるが、例えば先のような混合物(m=0 20%、m=1 40%、m=2〜5 40%)(酸性官能基含有単量体混合物)として共重合された場合には、被着体への接着性、粘着性がきわめて良好となるばかりか、長期に渡る耐水性試験、耐湿熱性試験でも何らの変化を起こすことなく接着剤の優れた透明性、接着性、粘着性は試験前と同等以上に維持され、発揮される。
【0032】
酸性官能基含有単量体混合物は、アクリル樹脂(C)の酸価が、好ましくは1〜50mgKOH、より好ましくは1.2〜35mgKOH、さらに好ましくは1.5〜20mgKOHとなるよう共重合されるのが望ましい。酸価が1mgKOH未満の場合には、被着体への接着性、粘着性が悪化する場合があり、また耐水性、耐湿熱性が悪くなる傾向が見られる。酸価が50mgKOHを超える場合には、耐湿熱性、耐水性が悪化し、接着層が膨潤、白化、剥離を起こしやすくなる傾向が見られる。
【0033】
酸性官能基含有単量体混合物と共重合できるアクリル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、p−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、p−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが例示される。これらのアクリル単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。これらのアクリル単量体のなかでは、エステル基の炭素原子数が4〜12個のものが望ましい傾向が見られ、接着性、粘着性、耐水性が向上する場合がある。
【0034】
本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂(C)は、酸性官能基含有単量体混合物とこれと共重合可能なアクリル単量体、および、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(以下、MMともいう)との共重合により製造することができる。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)としては、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製アロンマクロマーAA−6)、ポリアクリル酸ブチルマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製アロンマクロマーAB−6)、ポリアクリル酸2−エチルヘキシルマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製アロンマクロマーAJ−7)、ポリメタクリル酸メチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)マクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製アロンマクロマーAA−714)などが例示される。これらの(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0036】
ラジカル重合で使用されるマクロモノマーは、分子鎖の片末端に(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性オリゴマーまたはポリマーを指す。一般的にその数平均分子量は数千から数万程度である。(参考文献;(1)「ラジカル重合ハンドブック」蒲池幹治、遠藤剛監修,エヌ・ティー・エス発行(1999),p189−p194、(2)「反応性高分子とその応用展開」,(株)東レリサーチセンター発行(1998),p48−p56、p231−232)
本発明では、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーとは、分子鎖片末端にラジカル重合性(メタ)アクリロイル基を有する高分子またはオリゴマーを指し、分子鎖(オリゴマーまたはポリマー)が、
(1)ポリ(メタ)アクリル酸エステルからなるもの、および
(2)(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なラジカル重合性単量体、例えば、スチレン、アクリロニトリルなど、が共重合されたオリゴマー、コポリマーからなるものを指す。
【0037】
本発明のアクリル樹脂(C)を含む接着剤組成物は、ポリマー粘性(レオロジー)が制御され、グラフト共重合体固有の自己構造化機能とも相まって、被着体へのなじみ、ヌレ性、浸透性が大きく改善、向上する傾向が強く見られる。また、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)が本来有する機械的性質が反映されて、接着剤の強靱性が向上する傾向が見られる。さらにまた、良好ななじみ性、ヌレ性、浸透性は、接着剤と被着体界面の空気層を排除し、良好な透明性と低ヘイズである接着物品を与える傾向が見られる。
【0038】
さらに驚くべきことは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の共重合によりアクリル樹脂(C)がグラフト共重合体化されることで、常態では、さらに配合されるポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂などと酸性官能基含有単量体混合物および水酸基含有化合物との不用意な反応性が制御され、貯蔵安定性に十分に優れた接着剤が製造されることである。また、適切な硬化反応条件下では、さらに配合されるポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂などと酸性官能基含有単量体混合物および水酸基含有化合物との反応性が著しく促進され、強靱で、耐熱性、耐湿熱性、耐衝撃性に優れた接着製品が得られる傾向が見られる。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)は、酸性官能基含有単量体混合物由来の連鎖を有するアクリル樹脂マトリックス100重量部に対し、好ましくは、0.2〜20重量%、より好ましくは、0.5〜12重量%、さらに好ましくは、0.5〜8重量%導入されるのが望ましい。(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の導入量が0.2重量%未満の場合には、ポリマー粘性制御が不十分である傾向が見られ、被着体へのなじみ、ヌレ性、浸透性が低下して、接着力がやや低下する場合がある。(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)導入量が20重量%を超える場合には、接着力が低下し、剥離しやすくなる傾向が見られる。
【0040】
本発明では、分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(A)
【0041】
【化6】

【0042】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
のガラス転移温度(以下、Tgとも言う)は、好ましくは、−80〜30℃、より好ましくは、−55〜10℃、さらに好ましくは、−55〜0℃であることが推奨される。アクリル共重合体(A)のTgが−80℃未満の場合には、ポリマー凝集力が小さくなりすぎ、接着剤が容易に凝集破壊を起こしやすくなって接着力の低下を招く傾向が見られる。アクリル共重合体(A)のTgが30℃を超える場合には、接着剤の靭性が損なわれ、耐衝撃性が悪化する傾向が見られる。
【0043】
ここで、本発明では、ガラス転移温度(Tg)は、「高分子の力学的性質」(J.E.Nielsen著、小野木重治訳)(化学同人、1975年発行)に記載されている方法(p15〜p27)に準じて算出した。すなわち、
1/Tg=Σ(wi/Tgi)
(ここで、Tgはアクリル樹脂のTg(絶対温度 K)、Wiはi単量体の共重合量(重量分率)、Tgiはi単量体から作製されたホモポリマーのガラス転移温度を表す。)
により算出した。また、共重合する単量体から作製されるホモポリマーのTgは前記文献「高分子の力学的性質」に記載されている値、およびアクリル単量体販売会社(例えば、三菱レイヨン、東亞合成、日本触媒工業、日本油脂など)カタログ記載値を採用し、用いた。
【0044】
アクリル樹脂(C)の数平均分子量(以下、Mnとも言う)は5〜50万である。アクリル樹脂(C)の数平均分子量は、好ましくは、8〜35万、さらに好ましくは10〜30万であるのが望ましい。アクリル樹脂(C)のMnが5万未満の場合には、ポリマー凝集力が弱く、接着力の低下、耐衝撃性の悪化をまねく。アクリル樹脂(C)のMnが50万を超える場合には、接着剤の粘性が強くなりすぎ、被着体へのヌレ性、なじみが悪化し、接着力が低下する。
【0045】
ここで、本発明では、アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製「HLC−8220 GPC」システム)を使用し、分子量が定められたポリスチレンスタンダード(例えば、ジーエル サイエンス社製の標準POLYSTYRENE)を分子量標準として測定した。
【0046】
本発明のアクリル樹脂(C)は、好ましくは、ラジカル共重合で製造され、塊状重合、懸濁重合、分散重合、沈殿重合、溶液重合、乳化重合などいずれの重合方法で実施されても目的を達成することができる。
【0047】
製造されたポリマーを使っての後工程を考慮した場合には、塊状重合、分散重合、沈殿重合、溶液重合などの無溶剤系または非水溶媒系で実施されるのが望ましい。
【0048】
アクリル樹脂(C)の製造は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス置換された重合系で実施されるのが望ましい。この際、重合系の酸素濃度は、好ましくは5vol%以下、より好ましくは2vol%以下、さらに好ましくは0.5vol%以下であることが望ましい。重合系中の酸素濃度が5vol%を超える場合には、ラジカル重合反応が系中の酸素の影響を受け、十分に進行しない場合が見られる。すなわち、重合速度が著しく遅くなり、酸素によるテロメリゼーションを受け低重合度のポリマーが多く生成する場合があり、接着剤の着色や耐水性の低下を招く傾向が見られる。
【0049】
アクリル樹脂(C)の製造は、重合温度が好ましくは、50〜150℃、より好ましくは、60〜140℃で実施されるのが望ましい。重合温度が50℃未満では、重合率が上がりにくく、製造にきわめて長時間を要する場合がある。さらに懸念されることは、製造されたポリマーの耐熱性が悪化する場合があることである。150℃を超えて重合が実施される場合には、ポリマー末端ラジカルの安定性が低下する傾向にあり、希望する分子量、分子量分布を有するポリマーの製造が困難となる場合がある。
【0050】
溶液重合の際溶媒として使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、などが例示される。これらの有機溶媒は単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。
【0051】
これらの溶媒の中では、ポリマーの着色や耐熱性の低下を予防する上で、また接着剤を製造する際脱溶媒を必要とする場合には、酢酸エチル、酢酸n−プロピルのような連鎖移動定数の小さいものが推奨される。
【0052】
本発明では、アクリル樹脂(C)は、望ましくはヒンダードアミン化合物と有機過酸化物の存在下に酸性官能基含有単量体混合物を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)をラジカル共重合し製造されるのが推奨される。より望ましくは、ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物との反応生成物の存在下に、酸性官能基含有単量体混合物を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)をラジカル共重合し製造されるのが望ましい。
【0053】
ラジカル共重合反応はリビングラジカル重合機構で進行し、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)を共重合するにもかかわらず分子量分布が狭く、高分子量のアクリル樹脂(C)が製造できる。本製造方法によって製造されたアクリル樹脂(C)を使用したとき、接着剤のレオロジーコントロールが容易で最適化され、塗布作業性が改善されるばかりでなく、被着体へのヌレ性、浸透性が改善され、接着剤の強靱性、機械的強度、耐熱性、接着力が向上する傾向が強く見られる。
【0054】
ヒンダードアミン化合物としては、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが例示される。該ヒンダードアミン化合物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0055】
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどが例示される。該有機過酸化物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0056】
ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物とは、ヒンダードアミン化合物1モルに対して有機過酸化物が、好ましくは1×10−4モル〜2.5モル、より好ましくは5×10−4モル〜2.0モルの割合となるよう使用される。
【0057】
有機過酸化物の使用量が、ヒンダードアミン化合物1モルに対して1×10−4モル未満の場合には、重合率が上がりにくくなり、重合効率が悪く、また分子量も小さいものしかできなくなる傾向にある。
【0058】
有機過酸化物の使用量が、ヒンダードアミン化合物1モルに対して2.5モルを超えて使用される場合には、重合のリビング性が失せられ、低分子量ポリマーが大きい割合で生成する傾向にあり、アクリル樹脂(C)の分子量分布が広がる傾向が見られる。
【0059】
ヒンダードアミン化合物は、酸性官能基含有単量体混合物を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の合計量100重量部に対して、好ましくは0.002〜20.0重量%、より好ましくは0.005〜15.0重量%、さらに好ましくは0.02〜12.0重量%使用されるのが望ましい。
【0060】
ヒンダードアミン化合物の使用量が、酸性官能基含有単量体混合物を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の合計量100重量部に対して、0.002重量%未満の場合には、重合率が上がりにくく、重合に長時間を必要とし実用性が失われる傾向にある。
【0061】
ヒンダードアミン化合物の使用量が、酸性官能基含有単量体混合物を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の合計量100重量部に対して、20.0重量%を超えて使用される場合には、ポリマーに着色が見られる場合があり、実用上問題になる場合がある。
【0062】
ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物との反応生成物は、例えば、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス置換された容器中で、ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物とを混合するだけで製造することができる。
【0063】
以下に、アクリル樹脂(C)製造の好ましい態様の一例を示す。当然ながら、本発明がこれに限定されるものではない。
【0064】
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついたフラスコに重合溶媒(例えば酢酸エチル/酢酸n−プロピル(80/20重量比)の混合溶媒)を仕込む。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持する。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.5vol%未満であることを確認する。
【0065】
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに所定量のヒンダードアミン化合物、例えば4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを仕込み、均一になるよう溶解する。溶解ができれば、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイルをヒンダードアミン化合物と等モル量仕込み攪拌を継続する。昇温を開始し、30分間で80℃に昇温、以下80℃に温度を保持する。
【0066】
モノマー、例えばメタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/酸性官能基含有単量体混合物(例えば、下記構造式で、m=0 20%、m=1 40%、m=2および3 40%の混合物)、
【0067】
【化7】

【0068】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
「アロンマクロマー AA−6」(東亞合成(株)製メタクリル酸メチルマクロモノマー)(=5/91/1/3;重量比)の混合モノマー、を2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了直後からサンプリングを行い、分子量と重合率を測定する。重合率が100%になった時点で重合を終了し、冷却を開始する。
【0069】
以上によりアクリル樹脂(C)が製造できる。
【0070】
本発明の接着剤は、アクリル樹脂(C)単独で使用することもでき、あるいは、アクリル樹脂(C)に硬化剤などを配合して使用することもできる。
【0071】
すなわち、一例を挙げれば、
(1)アクリル樹脂(C)を直接被着体の一方に塗布した後、室温〜150℃程度の温度で乾燥して有機溶剤を除去する。これにもう一方の被着体を熱プレスなどにより圧着し、必要であれば50〜150℃で加熱して、接着物品を製造する。
【0072】
(2)アクリル樹脂(C)に、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、エポキシジアクリレートオリゴマーなどのラジカル重合性希釈剤、架橋剤を添加し均一に混合する。さらに重合開始剤として、例えばクメンヒドロペルオキシド、オクチル酸コバルトなどのレドックス開始剤を添加してラジカル硬化性接着剤を製造する。レドックス開始剤に変え、ミヒラーケトンなどの光重合開始剤を添加すれば、光硬化型の接着剤を製造することができる。
【0073】
(3)アクリル樹脂(C)に、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシランとビスフェノールA型エポキシ樹脂などの硬化触媒、硬化剤を添加して2液硬化型接着剤を製造する。
【0074】
本発明の接着剤組成物は、アクリル樹脂(C)の他にも、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ石粉、ガラス粉、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、グラスウール、炭素繊維などの補強、充填用フィラー類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤などを配合することができる。
【0075】
本発明の接着剤組成物は、被着体に塗布し別の被着体を圧着し、あるいはシート状にしたものを貼合して、好ましくは加熱処理することで接着物品を得ることができる。また、接着剤を剥離可能な保護フィルム上に塗布し、好ましくは適切な温度、好ましくは60〜120℃、で適切な時間、好ましくは30秒〜10分、加熱しBステージを経た後、これを被着体に圧着した後、加熱硬化し接着物品を得ることもできる。
【0076】
本発明の接着剤組成物は、好ましくは、アクリル樹脂(C)の水酸基価10〜60mgKOH、酸価が1〜50mgKOHとなるよう水酸基含有アクリル単量体および酸性官能基含有単量体混合物を共重合し、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を配合して、FPD機能フィルター用粘・接着剤として使用することができる。
【0077】
本発明の接着剤組成物が適用される機能フィルターは、より好ましくは反射防止膜、色調調整膜、ネオン光カット膜、近赤外線カット膜などのプラズマディスプレイパネル(PDP)機能フィルター(前面フィルター)であり、さらに好ましくは、プラズマディスプレイパネル(PDP)用電磁波遮断シート(以下、EMIシートとも言う)である。
【0078】
本発明の接着剤組成物に含有される水酸基含有アクリル単量体としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、p−ヒドロキシメチルシクロヘキシルアクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの分子中に水酸基を有するアクリル単量体が例示できる。これらの水酸基含有アクリル単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であっても良い。
【0079】
水酸基含有アクリル単量体は、アクリル樹脂(C)の水酸基価が、好ましくは10〜60mgKOH、より好ましくは12〜55mgKOH、さらに好ましくは12〜35mgKOHとなるよう共重合されるのが望ましい。アクリル樹脂(C)の水酸基価が10mgKOH未満の場合には、架橋度が不足し、耐水性、耐湿熱性が悪化し、経時でヘイズが徐々に悪化する傾向が見られる。アクリル樹脂の水酸基価が60mgKOHを超える場合には、架橋度が高くなりすぎて接着面の耐衝撃性が悪化する場合がある。また、ポリイソシアネートで架橋した場合、基体フィルムへの付着性が損なわれる場合が見られる。
【0080】
ここで、本発明では、アクリル樹脂(C)の水酸基価は、共重合する水酸基含有アクリル単量体の分子量(M)、共重合量(Y%)を基に、
アクリル樹脂の水酸基価(mgKOH)=Y/M×561
により算出した。
【0081】
本発明の接着剤組成物に含有されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基(−NCO)を有する化合物が例示される。これらのポリイソシアネート化合物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0082】
ポリイソシアネート化合物は、アクリル樹脂(C)の水酸基モル数に対して、ポリイソシアネート中のNCOのモル数が、好ましくは、0.6〜2.0、より好ましくは、0.75〜1.6、さらに好ましくは、0.8〜1.2となるよう配合されるのが望ましい。(以下、アクリル樹脂(C)の水酸基モル数に対するポリイソシアネート中のNCOの使用モル数比を、以下NCOインデックスとも言う)。NCOインデックスが0.6未満の場合には、アクリル樹脂が有する未反応水酸基が多く残りやすく、耐水性、耐湿熱性が悪化する傾向が見られる。また、架橋密度が低くなるため、粘・接着剤の強靱性がやや低下する傾向がある。NCOインデックスが2.0を超える場合には、水分と反応して粘・接着剤が発泡しやすくなり、粘・接着面が脆くなる場合がある。また、架橋密度が高くなりすぎ、粘・接着力が低下する傾向が見られる。
【0083】
本発明の接着剤は、好ましくは、さらにタッキファイヤーを含有するものである。タッキファイヤーは、ガラス転移温度の低いバインダーのガラス転移温度を室温域に引き上げ、粘着性や接着性を改善、向上する化合物である。
【0084】
タッキファイヤーとしては、石油樹脂系、ロジン系、テルペン樹脂系、テルペンフェノール樹脂系などが例示される。これらのタッキファイヤーは単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0085】
タッキファイヤーは、アクリル樹脂に対して、好ましくは5〜40phr、より好ましくは8〜30phr、さらに好ましくは10〜25phr配合されるのが望ましい。
【0086】
タッキファイヤーのアクリル樹脂に対する配合量が5phr未満の場合には、期待する粘着性、接着性が得られない場合が見られる。タッキファイヤーのアクリル樹脂に対する配合量が40phrを超える場合には、耐候性の悪化が見られ、経時で黄変化傾向が見られるため、FPD用途としては若干不適切となる場合がある。
【0087】
本発明では、好ましくは、タッキファイヤーとして、テルペンフェノール樹脂を配合することが推奨される。テルペンフェノール樹脂が配合された場合、基板ガラスへの粘着性、接着性が任意にコントロールされうる傾向が見られる。
【0088】
テルペンフェノール樹脂としては、「YSポリスターT−145」、「YSポリスターT−130」、「YSポリスターT−115」(以上、ヤスハラケミカル(株)の製品)が例示される。これらのテルペンフェノール樹脂は単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。
【0089】
本発明の接着剤組成物は、グラフト共重合体(アクリル樹脂(C))を含むものである。被着体へのヌレ性、なじみ性に優れており、特に、フラットパネルディスプレイ(FPD)に使用されるガラス基板への良好な粘着性とリワーク性を有している。また本発明の接着剤組成物は、透明性にも優れたものである。このことから、本発明の接着剤組成物は、好ましくはフラットパネルディスプレイ(FPD)の前面機能フィルター接合用として推奨される。さらに特筆すべきは、グラフト共重合体固有の自己構造化現象を有し、接着剤は微細な凸凹面にも浸透、侵入する性質を有している。したがって、先に述べた典型的な電磁波遮断シート(実用的な銅メッシュ(ライン幅(10μm前後)、ライン間隔(250ミクロン前後)、ライン厚み(25μm前後))にも何らの障害なく浸透し、基材が有する凸凹面をも平滑に修復し、全光線透過率が80%以上と高く、ヘイズの小さい透明電磁波遮断シートを提供可能とする。
【0090】
また、下記構造式で示される連鎖は、
【0091】
【化8】

【0092】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
主鎖から距離を置いてCOOHを有するという特徴的な構造のカルボン酸ユニットであり、被着体への粘着性、接着性を飛躍的に改善、向上する傾向が強く見受けられる。ことさら、被着体が機能フィルターに多用されている光学ガラスの場合に顕著であり、リワーク粘着性を有する一方で、貼合初期から強い粘着性を発揮し、貼合経時でその粘着性は一段と強くなる傾向が見られる。この性質は、接合部材が例えば80℃以上の高温下に曝される場合でも、あるいは、60℃、90%RHという高温高湿下に曝される場合であっても、変化することなく発揮される。
【0093】
同時に、適度な水酸基価とこれがポリイソシアネートと反応し形成されたウレタン結合は、基体フィルムとして多く用いられているポリエステルフィルム(以下、PETとも言う)への付着性、接着性を向上し、透明性の向上やヘイズの低減、耐衝撃性の向上が見られる。
【0094】
さらに、アクリル樹脂中の下記構造式で示される連鎖
【0095】
【化9】

【0096】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
(ガラス基板への強い粘着力を発揮)、ポリイソシアネートとの反応により形成されるウレタン結合(PETへの強い付着性)、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーを枝にもつグラフト共重合体(接着剤の強靱化、被着体へのなじみ、ヌレ性向上、エントロピー弾性の発現)の機能が相互に強調しあって、機能フィルターが貼合されるガラス基板の耐衝撃性をも飛躍的に向上する傾向が見られる。この作用により、ガラス基板の耐衝撃性が向上し、機能フィルターのガラス基板への直貼りが可能となって画像の鮮映性が向上し、画像の歪みやゆがみがない良質な映像を可能とする傾向が見られる。
【0097】
以下、実施例を持って本発明を詳細に説明する。
【0098】
なお、実施例、比較例中、特に断りがなければ組成比は重量比を表す。
【0099】
(1)アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製「HLC−8220 GPC」システム)を使用し、分子量が定められたポリスチレンスタンダード(例えば、ジーエル サイエンス社製の標準POLYSTYRENE)を分子量標準として測定した。
【0100】
(2)加熱残分はJIS K 5400−1997に準拠し測定した。
【0101】
〔FPD機能フィルター用接着剤としての評価方法〕
(3)光線透過率、ヘイズは「NDH 2000」(日本電色工業製濁度計)を使用し、JIS K 7136(2000)に準拠して測定した。
【0102】
(4)粘着性はテンシロンを使用し、JIS Z 0237(2000)に準拠し、試験温度23℃で測定した。
【0103】
(5)接着剤の耐湿熱性試験は、試験片を60℃、90%RHの雰囲気下に1000時間静置した後、粘着性、光線透過率、ヘイズを測定した。
〔粘・接着剤のレオロジー評価方法(チキソトロピー性有無の評価)〕
(6)接着剤のレオロジーは、ジャスコインタナショナル製「VAR型ビスコアナライザー」を使用し、25℃で測定した。測定条件は以下の通りである。
【0104】
〔レオロジー測定条件〕
マニュアル 測定回数 1回、測定インターバル 2.000E4+0 s
剪断速度テーブル 剪断速度 1.000E+0 − 1.000E+3 1/s
ディレイタイム 1.015E+0 − 1.6000E+1 s
積算時間 1.030E+0 − 3.100E+1 s
剪断速度の増大にともなって粘度が低下するものをチキソトロピー性があるとした。
【実施例】
【0105】
〔アクリル樹脂の製造例〕
〔アクリル樹脂(1)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
【0106】
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
【0107】
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/酸性官能基含有単量体混合物(下記構造式において、R1=H、m=0(20%)、m=1(40%)、m=2(20%)、m=3(20%)の単量体混合物)
【0108】
【化10】

【0109】
/「アロンマクロマーAA−6」(東亞合成(株)のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー)(=5/91/1/3)の混合モノマー(「アロンマクロマーAA−6」を除いたTgは−48℃であった)400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後4時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(1)を製造した。アクリル樹脂(1)はメタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/酸性官能基含有単量体混合物(上記構造式)からなるポリマーを幹ポリマーとし、「アロンマクロマーAA−6」のポリマー部分(ポリメタクリル酸メチル)を枝ポリマーとするグラフト共重合体である。
【0110】
図1にアクリル樹脂(1)の重合挙動を示した。
【0111】
アクリル樹脂(1)はリビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(1)の加熱残分は50.2%、酸価は3.7mgKOH、数平均分子量は15万であった。
【0112】
〔アクリル樹脂(2)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
【0113】
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
【0114】
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/「β−CEA」(酸性官能基含有単量体混合物、ローヌ・プーラン(株)のモノマー)(下記構造式において、R1=H、m=0(20%)、m=1(40%)、m=2およびm=3(40%)の単量体混合物)
【0115】
【化11】

【0116】
/「アロンマクロマーAA−6」(=5/91/1/3)の混合モノマー(「アロンマクロマーAA−6」を除いたTgは−48℃であった)400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後4時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(2)を製造した。
【0117】
アクリル樹脂(2)はメタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/「β−CEA」からなるポリマーを幹ポリマーとし、「アロンマクロマーAA−6」のポリマー部分(ポリメタクリル酸メチル)を枝ポリマーとするグラフト共重合体である。アクリル樹脂(2)はアクリル樹脂(1)と同様な重合挙動を示した。
【0118】
アクリル樹脂(2)は、リビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(2)の加熱残分は50.3%、酸価は4.0mgKOH、数平均分子量は15万であった。
【0119】
〔アクリル樹脂(3)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
【0120】
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
【0121】
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/「β−CEA」/「アロンマクロマーAA−6」/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(=5/86/1/3/5)の混合モノマー(「アロンマクロマーAA−6」を除いたTgは−45℃であった)400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後4時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(3)を製造した。アクリル樹脂(3)は、メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/「β−CEA」/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルからなるポリマーを幹ポリマーとし、「アロンマクロマーAA−6」のポリマー部分(ポリメタクリル酸メチル)を枝ポリマーとするグラフト共重合体である。図2にアクリル樹脂(3)の重合挙動を示した。
【0122】
アクリル樹脂(3)は、リビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(3)の加熱残分は50.2%、酸価は3.8mgKOH、水酸基価は21.6mgKOH、数平均分子量は12万であった。
【0123】
〔アクリル樹脂(4)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
【0124】
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
【0125】
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸/「アロンマクロマーAA−6」(=5/91/1/3)の混合モノマー(Tg=−48℃)400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後4時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(4)を製造した。
【0126】
アクリル樹脂(4)は、酸性官能基含有単量体混合物の1原料(メタクリル酸)だけが共重合されたメタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸からなるポリマーを幹ポリマーとし、「アロンマクロマーAA−6」のポリマー部分(ポリメタクリル酸メチル)を枝ポリマーとするグラフト共重合体である。
【0127】
アクリル樹脂(4)の加熱残分は50.2%、酸価は6.5mgKOH、数平均分子量は12万であった。
【0128】
〔アクリル樹脂(5)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
【0129】
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
【0130】
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/「アロンマクロマーAA−6」(=5/87/5/3)の混合モノマー(Tg=−45℃)400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後4時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(6)を製造した。
【0131】
アクリル樹脂(5)は、酸性官能基含有単量体混合物が共重合されていないメタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルからなるポリマーを幹ポリマーとし、「アロンマクロマーAA−6」のポリマー部分(ポリメタクリル酸メチル)を枝ポリマーとするグラフト共重合体である。
アクリル樹脂(5)の加熱残分は50.5%、数平均分子量は12万であった。
【0132】
実施例1
アクリル樹脂(1)に「YSポリスターTH−130」(水添テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)の製品)を20phr配合し、さらに加熱残分が30%になるようトルエンで希釈して均一に溶解するまで攪拌を行なって接着剤(1)を製造した。接着剤(1)のレオロジー測定結果を図3に示した。図3に示したとおり、接着剤(1)は適度なチキソトロピー性を有していた。
【0133】
接着剤(1)を「ルミラーT−60−100」(東レ(株)製PETフィルム、透明グレード)に乾燥膜厚が25μmとなるよう塗布し、100℃で1分間乾燥した。粘着面に「セラピールWD#50」(東レフィルム加工(株)の剥離フィルム)を貼付し、23℃で1週間エージングを行った。1週間後、剥離フィルムをはがし、粘着面をガラス基板に2kgの荷重で圧着した後、1時間静置、テンシロンを用いて180°ピール試験で粘着力を測定した。結果を表1に示した。
【0134】
また、ガラス基板に貼合した試験片を用い、光線透過率、ヘイズを測定した後、耐湿熱性試験を行った。結果を表1に示した。
【0135】
実施例2
アクリル樹脂(2)に「YSポリスターTH−130」を20phr配合し、さらに加熱残分が30%になるようトルエンで希釈して均一に溶解するまで攪拌を行って接着剤(2)を製造した。接着剤(2)は接着剤(1)類似のレオロジー特性を示した。
【0136】
接着剤(2)を「ルミラーT−60−100」に乾燥膜厚が25μmとなるよう塗布し、100℃で1分間乾燥した。粘着面に「セラピールWD#50」を貼付し、23℃で1週間エージングを行った。1週間後、剥離フィルムをはがし、粘着面をガラス基板に2kgの荷重で圧着した後、1時間静置、テンシロンを用いて180°ピール試験で粘着力を測定した。試験結果を表1に示した。
【0137】
また、ガラス基板に貼合した試験片を用い、光線透過率、ヘイズを測定した後、耐湿熱性試験を行った。結果を表1に示した。
【0138】
実施例3
アクリル樹脂(3)を加熱残分が40%になるようトルエンで希釈し、「YSポリスターTH−130」を20phr配合して、均一に溶解するまで攪拌を行った。次いで、NCOインデックスが1.0となるよう硬化剤として、イソホロンジイソシアネートを配合しよく混合した。加熱残分を測定した後、トルエンを添加して加熱残分を30%に調整し接着剤(3)を製造した。
【0139】
接着剤(3)のレオロジー測定結果を図4に示した。図4に示したとおり、接着剤(3)は適度なチキソトロピー性を有していた。
【0140】
接着剤(3)を「ルミラーT−60−100」に乾燥膜厚が25μmとなるよう塗布し、100℃で1分間乾燥した。粘着面に「セラピールWD#50」を貼付し、23℃で1週間エージングを行った。1週間後、剥離フィルムをはがし、粘着面をガラス基板に2kgの荷重で圧着した後、1時間静置、テンシロンを用いて180°ピール試験で粘着力を測定した。試験結果を表1に示した。
【0141】
また、ガラス基板に貼合した試験片を用い、光線透過率、ヘイズを測定した後、耐湿熱性試験を行った。結果を表1に示した。
【0142】
接着剤(3)を、銅メッシュ(銅メッシュのライン幅10μm、ライン間隔250μm、ライン厚み10μm)(PETフィルム上に接着剤を介して銅メッシュが設けられたもの、例えば、日本フィルコン製のプラズマディスプレイ用電磁波シールドメッシュ)(以下銅メッシュとも言う)に乾燥膜厚が25μmとなるようバーコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥した。粘着面に「セラピールWD#50」を貼付し、23℃で1週間エージングを行った。このものの、全光線透過率は83.0%、ヘイズは2.8であった。接着剤(3)が塗布された銅メッシュシートはFPD用電磁波遮断シート(EMIシート)として高い透明性を有していた。
【0143】
「デジタルマイクロスコープ KH−3000VD」(マルトー(株)のCCDカメラ型デジタル顕微鏡)により、銅メッシュへの接着剤(3)の浸透状態、気泡の有無、粘着剤表面の平滑性を観察したところ、接着剤(3)は銅メッシュの隅々まで浸透しており、気泡は観察されなかった。また、粘着剤表面は平滑で、銅メッシュ用接着剤が有する凹凸プロフィールを完全に修復していた。接着剤(3)が適度なチキソトロピー性を有することで、銅メッシュへの良好な浸透性、表面平滑性に優れたEMIシートが製造された。
【0144】
【表1】

【0145】
表1に見られる通り、接着剤(1)、接着剤(2)、接着剤(3)は、FPD機能フィルターとしてのガラス基板に対する適度で、良好な粘着性を有していた。また、耐湿熱性試験後も、試験前と変わらず良好な粘着性、透明性を発揮した。
【0146】
比較例1
アクリル樹脂(4)に「YSポリスターTH−130」を20phr配合し、さらに加熱残分が30%になるようトルエンで希釈して均一に溶解するまで攪拌を行なって接着剤(4)を製造した。接着剤(4)のレオロジーは接着剤(1)に類似で適度なチキソトロピー性を有していた。
【0147】
接着剤(4)を「ルミラーT−60−100」に乾燥膜厚が25μmとなるよう塗布し、100℃で1分間乾燥した。粘着面に「セラピールWD#50」を貼付し、23℃で1週間エージングを行った。1週間後、剥離フィルムをはがし、粘着面をガラス基板に2kgの荷重で圧着した後、1時間静置、テンシロンを用いて180°ピール試験で粘着力を測定した。結果を表2に示した。
【0148】
また、ガラス基板に貼合した試験片を用い、光線透過率、ヘイズを測定した後、耐湿熱性試験を行った。結果を表2に示した。
【0149】
比較例2
アクリル樹脂(5)を加熱残分が40%になるようトルエンで希釈し、「YSポリスターTH−130」を20phr配合して、均一に溶解するまで攪拌を行った。次いで、NCOインデックスが1.0となるよう硬化剤として、イソホロンジイソシアネートを配合しよく混合した。加熱残分を測定した後、トルエンを添加して加熱残分を30%に調整し接着剤(5)を製造した。
【0150】
接着剤(5)を「ルミラーT−60−100」に乾燥膜厚が25μmとなるよう塗布し、100℃で1分間乾燥した。粘着面に「セラピールWD#50」を貼付し、23℃で1週間エージングを行った。1週間後、剥離フィルムをはがし、粘着面をガラス基板に2kgの荷重で圧着した後、1時間静置、テンシロンを用いて180°ピール試験で粘着力を測定した。試験結果を表2に示した。
【0151】
また、ガラス基板に貼合した試験片を用い、光線透過率、ヘイズを測定した後、耐湿熱性試験を行った。結果を表2に示した。
【0152】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、アクリル樹脂(1)の重合挙動を示す図である。
【図2】図2は、アクリル樹脂(3)の重合挙動を示す図である。
【図3】図3は、接着剤(1)のレオロジー測定結果を示す図である。
【図4】図4は、接着剤(3)のレオロジー測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(A)を幹ポリマーとし、
【化1】

(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(B)を枝ポリマーとする
【化2】

(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂(C)を含む接着剤組成物。
【請求項2】
接着剤組成物が、水酸基価10〜60mgKOH、酸価1〜50mgKOHのアクリル樹脂(C)、および、ポリイソシアネート化合物を含むものである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
さらにタッキファイヤーが配合される請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
フラットパネルディスプレイの前面機能フィルター接合用に使用される請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−106189(P2008−106189A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292215(P2006−292215)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】